JP2020093667A - 車両用構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】引張荷重による溶接部近傍での破断の発生を抑制できる車両用構造体を得る。【解決手段】本ロッカ10の下側フランジ部26R1の車両前側端28R1と下側フランジ部26R2の車両後側端30R1との溶接部32では、溶接線が車両前側に対して車両上側へ54度以上55度以下で、好ましくは、54.7度以上54.8度以下の角度で傾斜されている。これによって、車両前後方向の引張荷重による溶接部32と、溶接部32の近傍での両下側フランジ部26R1、R2の母材部分との歪みの差が小さくなる。このため、溶接部32の近傍での両下側フランジ部26R1、R2の母材部分での破断の発生を抑制できる。【選択図】図1
Description
本発明は、第1部材と第2部材とを溶接することによって構成される車両用構造体に関する。
下記特許文献1には、2枚の板材を長手方向又は幅方向に対向させ、これらの板材の互いに対向する端部を溶接して形成されたテーラードブランク材が開示されている。この特許文献1では、2枚の板材が厚さ方向に互いに重ね合わされた状態で非直線状に切断され、これによって、両板材を溶接する際の両板材の対向端が非直線状に形成されている。このように両板材の対向端が形成されることで、両板材の対向端の形状の誤差が小さくなり、溶接精度及び溶接品質が安定する。
ところで、このようなテーラードブランク材又はテーラードブランク材によって形成された車両用構造体に対して両板材を引き離すような引張荷重が作用すると、板材が引張荷重によって引張荷重の方向へ充分に伸びる前に溶接部の溶接線の端部近傍で板材が破断する可能性がある。
本発明は、上記事実を考慮して、引張荷重による溶接部近傍での破断の発生を抑制できる車両用構造体を得ることが目的である。
請求項1に記載の車両用構造体は、第1部材と、前記第1部材とは厚さ寸法及び機械特性の少なくとも1つが異なり、前記第1部材に対して対向配置された第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との互いに対向する対向端を溶接して一体にすると共に、溶接線の端部を含んだ部分では、前記溶接線が前記第1部材と前記第2部材との対向方向の前記第2部材側に対して前記対向方向に直交する直交方向の内側へ鋭角状に傾斜された溶接部と、を備えている。
請求項1に記載の車両用構造体は、第1部材と、この第1部材とは厚さ寸法及び機械特性の少なくとも1つが異なる第2部材とを含んで構成される。第1部材と第2部材との各々の対向端は、溶接され、これによって第1部材と第2部材とが一体にされる。ここで、第1部材及び第2部材の各々の対向端の溶接部の溶接線の端部を含んだ部分では、溶接線は、第1部材と第2部材との対向方向に対して、当該対向方向に直交する直交方向の内側へ鋭角状に傾斜されている。
このため、第1部材と第2部材の対向方向に第1部材と第2部材とを引き離すような引張荷重が第1部材及び第2部材に付与された際に、第1部材及び第2部材の母材部分における溶接部の近傍である溶接近傍部分に発生する歪みと、溶接部に発生する歪みとの差を小さくできる。これによって、溶接近傍部分に応力が集中することを抑制でき、溶接近傍部分が引張荷重によって局所的に変形されることを抑制できる。
以上、説明したように、請求項1に記載の車両用構造体では、第1部材及び第2部材の母材部分における溶接部の近傍である溶接近傍部分が引張荷重によって局所的に変形されることを抑制できる。このため、上記のような引張荷重が第1部材及び第2部材に作用した際に、溶接部と溶接近傍部分は、引張荷重の方向側へ充分に変形でき、溶接近傍部分での破断の発生を抑制できる。
次に、本発明の実施の形態を図1から図4の各図に基づいて説明する。なお、各図において矢印FRは、本実施の形態に係る車両用構造体としてのロッカ10が適用された車両の前側(車両前側)を示し、矢印LHは、車幅方向左側を示し、矢印UPは、車両上側を示す。
<本実施の形態の構成>
図1及び図2に示されるように、ロッカ10は、第1ロッカ部材12及び第2ロッカ部材14を含んで構成されている。さらに、図3(A)に示されるように、第1ロッカ部材12は、各々が第1部材としての第1右側ロッカパネル16R1と第1左側ロッカパネル16L1とを備えている。なお、第1右側ロッカパネル16R1及び第1左側ロッカパネル16L1のうち、相対的に車幅方向内側に配置される方は、ロッカパネルインナと称されることもあり、相対的に車幅方向外側に配置される方は、ロッカパネルアウタと称されることもある。
図1及び図2に示されるように、ロッカ10は、第1ロッカ部材12及び第2ロッカ部材14を含んで構成されている。さらに、図3(A)に示されるように、第1ロッカ部材12は、各々が第1部材としての第1右側ロッカパネル16R1と第1左側ロッカパネル16L1とを備えている。なお、第1右側ロッカパネル16R1及び第1左側ロッカパネル16L1のうち、相対的に車幅方向内側に配置される方は、ロッカパネルインナと称されることもあり、相対的に車幅方向外側に配置される方は、ロッカパネルアウタと称されることもある。
第1右側ロッカパネル16R1は、縦壁部18R1を備えている。縦壁部18R1は、略平板状とされており、縦壁部18R1の長手方向は、概ね、車両前後方向とされ、縦壁部18R1の厚さ方向は、概ね、車幅方向とされている。縦壁部18R1の車両上側の端部からは、上壁部20R1が車幅方向左側(更に詳細には、車両左上側)へ向けて延びている。
上壁部20R1は、略平板状とされており、上壁部20R1の長手方向は、概ね、車両前後方向とされ、上壁部20R1の厚さ方向は、概ね、車両上下方向(更に詳細には、上壁部20R1の縦壁部18R1からの延出方向に対して略直交する方向)とされている。上壁部20R1の車幅方向左側の端部からは、上側フランジ部22R1が車両上側へ向けて延びている。上側フランジ部22R1は、略平板状とされており、上側フランジ部22R1の長手方向は、概ね、車両前後方向とされ、上側フランジ部22R1の厚さ方向は、概ね、車幅方向とされている。
一方、縦壁部18R1の車両下側の端部からは、下壁部24R1が車幅方向左側(更に詳細には、車両左下側)へ向けて延びている。下壁部24R1は、略平板状とされており、下壁部24R1の長手方向は、概ね、車両前後方向とされ、下壁部24R1の厚さ方向は、概ね、車両上下方向(更に詳細には、下壁部24R1の縦壁部18R1からの延出方向に対して略直交する方向)とされている。
下壁部24R1の車幅方向左側の端部からは、下側フランジ部26R1が車両下側へ向けて延びている。下側フランジ部26R1は、略平板状とされており、下側フランジ部26R1の長手方向は、概ね、車両前後方向とされ、下側フランジ部26R1の厚さ方向は、概ね、車幅方向とされている。図2に示されるように、下側フランジ部26R1の車両前側端28R1の車両下側端は、車両前側端28R1の車両上側端よりも車両後側に配置されるように、車両前側端28R1は、傾斜されている。車両前側端28R1の車両前側に対する車両上側への傾斜角度θ1は、例えば、54度以上55度以下で、好ましくは、54.7度以上54.8度以下とされている。
これに対して、第1左側ロッカパネル16L1は、基本的に、第1右側ロッカパネル16R1を車幅方向に左右反転させた構造となっている。このため、第1左側ロッカパネル16L1の構成については、第1右側ロッカパネル16R1の構成の符号の「R1」を「L1」に置き換えることで詳細な説明を省力する。
第1右側ロッカパネル16R1の上側フランジ部22R1の車幅方向左側の面と、第1左側ロッカパネル16L1の上側フランジ部22L1の車幅方向右側の面とは、車幅方向に対向されて互いに当接されている。さらに、上側フランジ部22R1と上側フランジ部22L1とは、例えば、スポット溶接等によって上側フランジ部22R1、L1の長手方向に断続的溶接されて一体にされている。
これに対して、第1右側ロッカパネル16R1の下側フランジ部26R1の車幅方向左側の面と、第1左側ロッカパネル16L1の下側フランジ部26L1の車幅方向右側の面とは、車幅方向に対向されて互いに当接されている。さらに、下側フランジ部26R1と下側フランジ部26L1とは、例えば、スポット溶接等によって下側フランジ部26R1、L1の長手方向に断続的溶接されて一体にされている。これによって、第1ロッカ部材12の長手方向に対して直交する方向に第1ロッカ部材12を切った第1ロッカ部材12の断面形状は、閉じ断面形状とされている。
一方、図3(B)に示されるように、第2ロッカ部材14は、各々が第2部材としての第2右側ロッカパネル16R2と第2左側ロッカパネル16L2とを備えている。なお、第2右側ロッカパネル16R2及び第2左側ロッカパネル16L2のうち、相対的に車幅方向内側に配置される方は、ロッカパネルインナと称されることもあり、相対的に車幅方向外側に配置される方は、ロッカパネルアウタと称されることもある。
第2右側ロッカパネル16R2は、第1ロッカ部材12の第1右側ロッカパネル16R1と基本的に同じ構成であるため、第2右側ロッカパネル16R2の構成については、第1右側ロッカパネル16R1の構成の符号の「R1」を「R2」に置き換えることで詳細な説明を省力する。但し、第2右側ロッカパネル16R2を構成する鋼板は、第1右側ロッカパネル16R1を構成する鋼板とは機械特性(例えば、引張強度)及び板厚の少なくとも1つが異なる点で、第2右側ロッカパネル16R2は、第1右側ロッカパネル16R1とは異なる。また、第2右側ロッカパネル16R2の下側フランジ部26R2の車両後側端30R2は、傾斜されている点で、第2右側ロッカパネル16R2は、第1右側ロッカパネル16R1とは異なる。
すなわち、図2に示されるように、下側フランジ部26R2の車両後側端30R2の車両下側端は、車両後側端30R2の車両上側端よりも車両後側に配置されるように、車両後側端30R2は、傾斜されている。車両後側端30R2の車両前側に対する車両上側への傾斜角度θ2は、第1右側ロッカパネル16R1を構成する下側フランジ部26R1の車両前側端28R1の傾斜角度θ1と同じ角度に設定されている。
これに対して、第2左側ロッカパネル16L2は、基本的に、第2右側ロッカパネル16R2を車幅方向に左右反転させた構造となっている。このため、第2左側ロッカパネル16L2の構成については、第2右側ロッカパネル16R2の構成の符号の「R2」を「L2」に置き換えることで詳細な説明を省力する。
第2右側ロッカパネル16R2の上側フランジ部22R2の車幅方向左側の面と、第2左側ロッカパネル16L2の上側フランジ部22L2の車幅方向右側の面とは、車幅方向に対向されて互いに当接されている。さらに、上側フランジ部22R2と上側フランジ部22L2とは、例えば、スポット溶接等によって両上側フランジ部22R2、L2の長手方向に断続的溶接されて一体にされている。
これに対して、第2右側ロッカパネル16R2の下側フランジ部26R2の車幅方向左側の面と、第2左側ロッカパネル16L2の下側フランジ部26L2の車幅方向右側の面とは、車幅方向に対向されて互いに当接されている。さらに、下側フランジ部26R2と下側フランジ部26L2とは、例えば、スポット溶接等によって両下側フランジ部26R2、L2の長手方向に断続的溶接されて一体にされている。これによって、第2ロッカ部材14の長手方向に対して直交する方向に第2ロッカ部材14を切った第2ロッカ部材14の断面形状は、閉じ断面形状とされている。
以上の構成の第1ロッカ部材12の車両前側の端部と、第2ロッカ部材14の車両後側の端部とはレーザ溶接やアーク溶接等の溶接によって一体とされている。更に詳細には、本実施の形態では、第1右側ロッカパネル16R1を形成する平板状の板材の車両前側端と、第2右側ロッカパネル16R2を形成する平板状の板材の車両後側端とが突き合わされた状態でレーザ溶接やアーク溶接等によって溶接されることで1枚のテーラードブランク材にされる。このテーラードブランク材がプレス成形されることで車両前後方向に一体に繋がった第1右側ロッカパネル16R1及び第2右側ロッカパネル16R2が形成される。また、第1左側ロッカパネル16L1及び第2左側ロッカパネル16L2についても同様である。
ここで、図1には、第1ロッカ部材12と第2ロッカ部材14との車幅方向右側の溶接部(溶接線)32が示されている。図1に示されるように、溶接部32の長手方向は、第1ロッカ部材12の下側フランジ部26R1と第2ロッカ部材14の下側フランジ部26R2との溶接部32を除いて、第1ロッカ部材12及び第2ロッカ部材14の長手方向に対して直交する方向とされている。
これに対して、下側フランジ部26R1と下側フランジ部26R2との溶接部では、溶接部32は、車両前側に対して車両上側へ傾斜されている。この溶接部32の傾斜角度θは、下側フランジ部26R1の車両前側端28R1の傾斜角度θ1及び下側フランジ部26R2の車両後側端30R2の傾斜角度θ2と同じ角度とされ、例えば、54度以上55度で、好ましくは、54.7度以上54.8度以下に設定されている。
また、図示は省略するが、第1ロッカ部材12と第2ロッカ部材14との車幅方向左側も、第1ロッカ部材12と第2ロッカ部材14との車幅方向右側と同様にレーザ溶接やアーク溶接によって溶接されている。したがって、第1ロッカ部材12の下側フランジ部26L1と第2ロッカ部材14の下側フランジ部26L2との溶接部は、車両前側に対して車両上側へ傾斜されている。この溶接部の傾斜角度は、上記の溶接部32における下側フランジ部26R1と下側フランジ部26R2との溶接部32での傾斜角度θと同じとされている。
<本実施の形態の作用、効果>
以上の構成の本ロッカ10が適用された車両が車両前側の障害物等に衝突した場合、すなわち、車両正面衝突等の車両前面衝突が生ずると、車両の車両前側端部には、車両前側からの衝突荷重F(図1参照)が入力される。衝突荷重Fがロッカ10に伝わると、衝突荷重Fは、ロッカ10に対してロッカ10の長手方向(すなわち、概ね、車両前後方向)に沿った軸力として入力される。このため、衝突荷重Fがロッカ10に入力されると、ロッカ10の車両後側部分に対して車両前側部分を車両上側へ回動させるようなモーメントM(図1参照)がロッカ10に生ずる。
以上の構成の本ロッカ10が適用された車両が車両前側の障害物等に衝突した場合、すなわち、車両正面衝突等の車両前面衝突が生ずると、車両の車両前側端部には、車両前側からの衝突荷重F(図1参照)が入力される。衝突荷重Fがロッカ10に伝わると、衝突荷重Fは、ロッカ10に対してロッカ10の長手方向(すなわち、概ね、車両前後方向)に沿った軸力として入力される。このため、衝突荷重Fがロッカ10に入力されると、ロッカ10の車両後側部分に対して車両前側部分を車両上側へ回動させるようなモーメントM(図1参照)がロッカ10に生ずる。
このようなモーメントMがロッカ10に生ずると、第1ロッカ部材12の各上側フランジ部22R1、L1及び第2ロッカ部材14の各上側フランジ部22R2、L2には、ロッカ10の長手方向に沿った圧縮荷重が作用する。これに対して、上記のようなモーメントMがロッカ10に生ずることで、第1ロッカ部材12の各下側フランジ部26R1、L1及び第2ロッカ部材14の各下側フランジ部26R2、L2には、ロッカ10の長手方向に沿った引張荷重が作用する。
ところで、図4(A)に示されるように、例えば、長方形の板材50に対して板材50の長手方向外側(図4(A)の矢印X方向及びその反対方向)への引張荷重Fxが付与されると、図4(B)に示されるように、板材50の長手方向寸法が大きくなり、板材50の幅方向(図4(B)の矢印Y方向及びその反対方向)寸法が小さくなるように板材50は、伸びようとする(変形しようとする)。一方、図4(C)には、長方形状とされた2枚の板材52、板材54が長手方向に並べられ、板材52、4の互いに対向する端部がレーザ溶接やアーク溶接等によって溶接された構成が示されている。このような構成の場合、溶接部56は、一般的に直線状とされ、溶接部56の長手方向は、板材52、54の幅方向(図4(C)の矢印Y方向及びその反対方向)とされる。
このような溶接部56は、一般的に、板材52、54の母材部分52A、54A(板材52、54における溶接部56以外の部分)に比べて硬くなる。このため、板材52、54を長手方向に引き離すような引張荷重Fxが板材52、54に付与された場合の溶接部56の板材52、54の幅方向内側への伸び(変形量)は、板材52、54の母材部分52A、54Aの伸び(変形量)よりも小さくなる。
これによって、図4(D)に示されるように、溶接部56と、母材部分52A、54Aとで板材50の幅方向の「歪み差」が生じる。この「歪み差」に起因して、板材52、54における溶接部56の端部56Aの近傍部分に局所的な変形が生じ、板材52、54における溶接部56の端部56Aの近傍部分に応力が集中する。このため、板材52、54における溶接部56の端部56Aの近傍部分は、引張荷重Fxによる破断起点になる可能性が高い。
本ロッカ10の場合、上述したように、ロッカ10にモーメントMが生ずることによって、第1ロッカ部材12の各下側フランジ部26R1、L1及び第2ロッカ部材14の各下側フランジ部26R2、L2に、ロッカ10の長手方向に沿った引張荷重が作用する。しかしながら、本ロッカ10の場合、下側フランジ部26R1、R2の溶接部32及び下側フランジ部26L1、L2の溶接部は、車両前側に対して車両上側へ例えば、54度以上55度以下で、好ましくは、54.7度以上54.8度以下に設定されている。
ここで、両下側フランジ部26R1、R2での溶接部32の近傍における両右側ロッカパネル16R1、R2の母材部分に生ずる歪みについて以下に説明する。なお、両下側フランジ部26L1、L2での溶接部の近傍における両左側ロッカパネル16L1、L2の母材部分に生ずる歪みについては、基本的に両下側フランジ部26R1、R2での溶接部32の近傍における両右側ロッカパネル16R1、R2の母材部分に生ずる歪みと同様であるため、説明を省略する。また、以下の説明においては、以下の仮定が前提とされる。
先ず、第1に車両前後方向の引張荷重による両下側フランジ部26R1、R2の変形は、単軸引張変形と仮定する。第2に下側フランジ部26R1、R2の溶接部32を直線とみなした溶接線(溶接部32)の傾きθは、下側フランジ部26R1、R2の車両下側端の接線と、溶接線とが成す角度の鋭角側と仮定する。第3に車両前後方向の引張荷重が両下側フランジ部26R1、R2に付与される前と、車両前後方向の引張荷重が両下側フランジ部26R1、R2に付与された後とで上記の傾斜角度θは、ほぼ変化しないものと仮定する。
第4に溶接部32の近傍における両右側ロッカパネル16R1、R2の母材部分に生ずる歪みの引張荷重による引張方向(図1の矢印FR方向)成分をdεx1、引張方向に対して直交する方向(図1の矢印UP方向)成分をdεy1とし、dεx1は、引張荷重による最大歪み、dεy1は、引張荷重による最小歪みと仮定する。第5に溶接部32の近傍における両右側ロッカパネル16R1、R2の母材部分に生ずる歪みの角度θ方向側の成分をdεy2とし、このdεy2に対してdεx1側へ90度傾斜した成分をdεx2とする。dεy2と、dεx1及びdεy1とは、テンソルの座標変換から以下の式(1)の関係が成立するものと仮定する。
第6に溶接部32は、両下側フランジ部26R1、R2における溶接部32以外の部分(すなわち、両下側フランジ部26R1、R2の母材部分)に比べて硬く、引張荷重による変形が生じ難いものと仮定する。
以上のような仮定を前提とすると、溶接部32と溶接部32の近傍における両右側ロッカパネル16R1、R2の母材部分との相対歪みを小さくするには、歪みのθ方向成分dεy2を小さくすればよい。すなわち、引張荷重が作用しても溶接部32に変形(溶接部32の長手方向の変形)が生じないとするのであれば、両右側ロッカパネル16R1、R2の母材部分における歪みのθ方向成分、すなわち、歪みのdεy2成分が0であれば、溶接部32の長手方向に沿った溶接部32の歪みと溶接部32の長手方向に沿った両右側ロッカパネル16R1、R2の母材部分の歪みとで差が生じないことになる。このことから、dεy2が0になるような角度θを求める。単軸引っ張りの歪み比であるdεy1/dεx1は、−0.5であるため、dεy2が0になるような角度θは、以下の式(2)のようになる。
ここで、本ロッカ10の両下側フランジ部26R1、R2における溶接部32の傾斜角度θ及び両下側フランジ部26L1、L2における溶接部の傾斜角度は、54度以上55度以下で、好ましくは、54.7度以上54.8度以下に設定されている。このため、溶接部32での角度θ方向側の歪みの成分と、溶接部32の近傍における両右側ロッカパネル16R1、R2の母材部分での角度θ方向側の歪みの成分との差が小さくなる。これによって、上記のような車両前後方向の引張荷重が両下側フランジ部26R1、R2に作用した場合に、溶接部32の車両下側端部近傍における両右側ロッカパネル16R1、R2の母材部分での応力集中を抑制できる。このため、溶接部32の車両下側端部近傍における両右側ロッカパネル16R1、R2の母材部分での破断を抑制できる。
また、次の条件に基づく引張試験による延性の評価を行なった。試験片の形状は、「JIS Z 2241 金属材料引張試験方法」に基づく5号試験片とされている(第1の条件)。試験片の長手方向(引張荷重の引張方向)中央を境に一方の側は、590MPa級の高張力鋼板とされ、他方の側は、780MPa級の高張力鋼板とされている(第2の条件)。両鋼板の溶接線(溶接部)は、試験片の長手方向及び幅方向の両中央を通るように配置され、長手方向に対して幅方向側へ傾斜している(第3の条件)。50mmの評点距離の伸び計が用いられている(第4の条件)。
この引張試験の結果、溶接部の溶接線の傾斜角度が90度の場合(すなわち、溶接線の長手方向が試験片の幅方向とされた場合)には、試験片は、11%の伸びを示した後に破断された。これに対して、溶接部の溶接線の傾斜角度が54度の場合及び55度の場合には、試験片は、15%の伸びを示した後に破断された。
この結果から、両下側フランジ部26R1、R2の溶接部32の近傍における両右側ロッカパネル16R1、R2の母材部分は、溶接部32の長手方向(溶接線の長手方向)が車両上下方向とされた場合に比べて両下側フランジ部26R1、R2は、引っ張り荷重によって大きく伸びる(変形する)ことができ、溶接部32の車両下側端部近傍における両右側ロッカパネル16R1、R2の母材部分での破断の開始を遅らせることができる。
なお、本実施の形態では、本発明に係る車両用構造体を車両のロッカ10に適用した構成であった。しかしながら、本発明に係る車両用構造体を、例えば、車両のセンターピラーを構成する部材等の他の車体構成部材に適用してもよい。
また、本実施の形態では、上述した傾斜角度θ、傾斜角度θ1、傾斜角度θ2は、54度以上55度以下で、好ましくは、54.7度以上54.8度以下とされていた。しかしながら、これらの傾斜角度θ、θ1、θ2は、90度未満の鋭角状であればよい。このような構成では、傾斜角度θ、θ1、θ2を上記の数値範囲に設定した場合に比べて劣るものの傾斜角度θ、θ1、θ2が90度の場合に比べて上記のような効果を得ることができる。
さらに、本実施の形態は、第1右側ロッカパネル16R1と第1左側ロッカパネル16L1とは左右対称の形状とされていた。しかしながら、第1左側ロッカパネル16L1が第1右側ロッカパネル16R1に対して左右対称形状とは異なる形状のハット形状としてもよい。また、第1右側ロッカパネル16R1及び第1左側ロッカパネル16L1の一方を平板状として、他方の開口側に配置される構成であってもよい。さらに、この点に関しては、第2右側ロッカパネル16R2と第2左側ロッカパネル16L2との関係であっても同じである。
また、本実施の形態では、溶接されることによってロッカ10を閉じ断面とする下側フランジ部26R1、R2の溶接及び下側フランジ部26L1、L2の溶接に本発明が適用される構成であった。しかしながら、本発明がこのような構成に限定されるものではない。すなわち、本発明は、溶接された2つの部材の対向方向に沿った引張荷重が作用する車両用構造体又はこのような引張荷重の作用が想定される車両用構造体に対して、溶接線の端部近傍部分が引張荷重方向又は2つの部材の対向方向に対して鋭角状に傾斜されていれば、車両用構造体そのものの具体的な形状等に限定されるものではない。
10 ロッカ(車両用構造体)
16L1 第1左側ロッカパネル(第1部材)
16R1 第1右側ロッカパネル(第1部材)
16L2 第2左側ロッカパネル(第2部材)
16R2 第2右側ロッカパネル(第2部材)
28R1 車両前側端(対向端)
30R2 車両後側端(対向端)
32 溶接部(溶接線)
16L1 第1左側ロッカパネル(第1部材)
16R1 第1右側ロッカパネル(第1部材)
16L2 第2左側ロッカパネル(第2部材)
16R2 第2右側ロッカパネル(第2部材)
28R1 車両前側端(対向端)
30R2 車両後側端(対向端)
32 溶接部(溶接線)
Claims (1)
- 第1部材と、
前記第1部材とは厚さ寸法及び機械特性の少なくとも1つが異なり、前記第1部材に対して対向配置された第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との互いに対向する対向端を溶接して一体にすると共に、溶接線の端部を含んだ部分では、前記溶接線が前記第1部材と前記第2部材との対向方向の前記第2部材側に対して前記対向方向に直交する直交方向の内側へ鋭角状に傾斜された溶接部と、
を備える車両用構造体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018232986A JP2020093667A (ja) | 2018-12-12 | 2018-12-12 | 車両用構造体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018232986A JP2020093667A (ja) | 2018-12-12 | 2018-12-12 | 車両用構造体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020093667A true JP2020093667A (ja) | 2020-06-18 |
Family
ID=71085445
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018232986A Pending JP2020093667A (ja) | 2018-12-12 | 2018-12-12 | 車両用構造体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2020093667A (ja) |
-
2018
- 2018-12-12 JP JP2018232986A patent/JP2020093667A/ja active Pending
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