図1Aは、実施例1に係る発光装置10の断面図である。図1Bは、発光装置10の模式的な上面図である。図1Aは、図1Bの1A−1A線に沿った断面図である。また、図1Cは、図1Aの破線で囲まれた部分Aを拡大して示す拡大断面図である。図1A乃至図1Cを用いて、発光装置10の構成について説明する。
発光装置10は、基板11と、基板11上に並置された複数の発光素子12と、接合部材13を介して発光素子12の各々に接合された透光部材14とを有する。本実施例においては、発光素子12は、その底面が基板11の上面上に配置されている。また、接合部材13は、発光素子12の上面に接している。また、透光部材14は、その底面が接合部材13の上面に接している。
また、発光装置10は、基板11上に形成され、発光素子12、接合部材13及び透光部材14の各々から離間して、発光素子12、接合部材13及び透光部材14の各々を取り囲む枠体15を有する。また、発光装置10は、基板11上における隣接する透光部材14間の領域に配置され、透光部材14の各々の側面を覆う被覆体16を有する。被覆体16は、外部に露出する表面S1を有する。本実施例においては、被覆体16は、基板11上における枠体15の内側の領域であって、基板11が発光素子12から露出した表面上に一体的に形成されている。
以下、発光装置10の詳細な構成について説明する。まず、本実施例においては、基板11は、発光素子12の載置面(実装面)を有し、発光素子12を実装する実装基板である。また、基板11は、当該載置面に形成されかつ発光素子12に接続された第1の配線及び第2の配線(図示せず)を有する。また、基板11は、当該載置面とは反対側の面(裏面)に形成され、第1の配線及び第2の配線にそれぞれ電気的に接続された第1の接続電極及び第2の接続電極(図示せず)を有する。
発光素子12の各々は、例えば、発光ダイオードなどの半導体発光素子である。本実施例においては、発光素子12の各々は、支持基板12Aと、支持基板12Aに支持され、発光層を含む半導体層12Bと、を有する。例えば、支持基板12Aはシリコン基板からなる。また、例えば、半導体層12Bは、窒化物系半導体からなる。発光素子12の各々は、例えば、420〜470nmの波長の光(以下、青色光と称する場合がある)を放出する。
例えば、発光素子12は、支持基板12A、支持基板12Aの第1の主面上に形成された半導体層12B、支持基板12Aの第1の主面とは反対側の第2の主面上に形成された第1及び第2の電極(図示せず)を有する。発光素子12は、当該第2の主面から基板11の載置面に載置される。また、当該第1及び第2の電極は、導電性接着材(例えば金属バンプ、金属共晶部材、はんだ、金属ナノ焼結部材、導電性ペーストなど)を介して基板11の第1及び第2の配線にそれぞれ接続されている。
また、本実施例においては、発光装置10は、発光素子12の各々を独立して駆動するように構成されている。例えば、発光素子12の各々の第1の電極は、他の第1の電極から絶縁されている。従って、発光素子12の各々は、互いに無関係に点消灯を行う。
なお、発光素子12の構成はこれに限定されない。例えば、発光素子12は、半導体層12Bの結晶成長に用いられる成長基板を有していてもよい。この場合、例えば、発光素子12は、成長基板、当該成長基板上に成長された半導体層12B、当該半導体層12B上に形成された第1の電極及び第2の電極を有する。また、この場合、発光素子12は、成長基板が基板11に接着される。発光素子12の第1及び第2の電極は、金ワイヤを介して基板11の第1及び第2の配線に接続される。
また、発光素子12の他の構成としては、半導体層12Bが基板11の載置面に載置されていてもよい。この場合、発光素子12は、半導体層12B上に形成された第1及び第2の電極を有する。また、発光素子12の第1及び第2の電極は、導電性接着材を介して基板11に接合される(フリップチップ接合ともいう)。この場合、基板11上には半導体層12Bが配置され、半導体層12B上に支持基板12Aが配置されることとなる。
また、本実施例においては、発光素子12の各々は、基板11における発光素子12の載置面に垂直な方向から見たときに矩形(本実施例においては正方形)の上面形状を有する場合について説明する。しかし、発光素子12の上面形状は、矩形に限定されず、例えば円形状、楕円形状及び長方形状など、種々の形状であってもよい。本実施例においては、発光素子12の上面(例えば半導体層12B又は支持基板12Aにおける基板11とは反対側の表面)は、発光素子12の光取り出し面として機能する。
接合部材13は、発光素子12から放出された光を透過させる特性を有する。接合部材13は、例えば少なくとも可視光を透過させる。例えば、接合部材13としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、低融点ガラスなどが用いられることができる。本実施例においては、接合部材13はシリコーン樹脂からなる。
接合部材13は、発光素子12から放出された光の波長を変換する波長変換体、例えば蛍光体を含んでいてもよい。例えば、当該蛍光体としては、青色光を緑色光に変換する緑色蛍光体、青色光を黄色光に変換する黄色蛍光体、青色光を赤色光に変換する赤色蛍光体などが用いられることができる。
なお、接合部材13の構成はこれに限定されない。例えば、透光部材13は、発光素子12から放出された光、及び波長変換体によって変換された光を透過させる金属酸化物のナノ粒子焼結体から構成されていてもよい。
透光部材14は、接合部材13の上面上に配置されている。例えば、透光部材14は、板状の形状を有する。また、透光部材14は、発光素子12から放出された光、及び/又は波長変換体によって変換された光を透過させる特性、例えば少なくとも可視光を透過させる特性を有する。例えば、透光部材14としては、ガラスプレート、サファイアプレート、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)プレートなどが用いられることができる。
また、透光部材14は、発光素子12から放出された光の波長を変換する波長変換体、例えば蛍光体を含んでいてもよい。例えば、当該蛍光体としては、青色光を緑色光に変換する緑色蛍光体、青色光を黄色光に変換する黄色蛍光体、青色光を赤色光に変換する赤色蛍光体などを用いることができる。本実施例においては、透光部材14は、YAGプレートからなる。
なお、透光部材14の構成はこれに限定されない。例えば、透光部材14は、発光素子12から放出された光、及び波長変換体によって変換された光を透過させるアクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、又は金属酸化物のナノ粒子焼結体から構成されていてもよい。
透光部材14の上面は、発光装置10の光取り出し面として機能する。本実施例においては、透光部材14の上面は、発光素子12の上面と同様の形状、例えば矩形の形状を有する。しかし、透光部材14の上面形状は、矩形に限定されず、また、発光素子12の上面形状とは異なる形状であってもよい。また、例えば、透光部材14の側面は、階段状に形成されていてもよいし、上面に対して傾斜していてもよい。
枠体15は、発光素子12、接合部材13及び透光部材14の各々から離間して発光素子12、接合部材13及び透光部材14の各々を取り囲むように基板11上に配置されている。なお、枠体15は、基板11の外周を囲むように配置されていてもよい。また、本実施例においては、枠体15は、基板11と一体的に形成され、基板11とともに、発光素子12を収容する凹部を有するランプハウスを形成する。枠体15は、例えばアルミナ成形体からなる。
被覆体16は、基板11上における発光素子12、接合部材13及び透光部材14の外側の領域でありかつ枠体15に囲まれた領域に形成されている。なお、被覆体16は、枠体15の上面の一部の領域を覆っていてもよいし、また枠体15の全体を覆っていてもよい(枠体15を埋設していてもよい)。また、枠体15は設けられていなくてもよく、被覆体16の外側面が露出していてもよい。
以下、被覆体16について詳細に説明する。被覆体16は、表面S1において外部に露出している。具体的には、被覆体16は、基板11上において、透光部材14の上面(すなわち光取り出し面)の端部から、枠体15の内壁面又は上端面に亘って連続的に配置されている。また、被覆体16は、透光部材14の側面を取り囲むように形成されている。
被覆体16は、基板11に接する底面と、透光部材14の側面に接する内側面と、枠体15の内壁面に接する外側面と、当該内側面及び外側面間に設けられて外部に露出する表面S1と、を有する。なお、本実施例においては、被覆体16は、熱硬化性樹脂を含む。従って、被覆体16の表面S1は、硬化後の熱収縮によって、わずかに基板11側に窪んだ形状を有する。
また、本実施例においては、被覆体16が透光部材14の側面全体に接する場合について説明する。しかし、被覆体16は、透光部材14の側面の一部のみに接していてもよい。例えば、被覆体16は、透光部材14の上面(光取り出し面)の端部から透光部材14の底面に亘る透光部材14の側面の一部の領域(すなわち透光部材14の側面の上方の領域)のみを覆っていてもよい。
次に、図1C及び図1Dを用いて、被覆体16の内部構造について説明する。まず、図1Cに示すように、被覆体16は、被覆体16内に分散された複数の酸化チタン粒子(図1Cには第1、第2及び第3の酸化チタン粒子P1、P2及びP3を示した)を含む粒子群16PTを有する。
本実施例においては、被覆体16は、粒子群16PTを分散させる媒質(マトリックス)を含む。当該媒質としては、例えば熱硬化性のシリコーン樹脂及びエポキシ樹脂などが挙げられる。すなわち、被覆体16は、粒子を含有する樹脂体からなる。また、本実施例においては、当該媒質としての樹脂体は、可視光を透過させる特性を有する。なお、本実施例においては、被覆体16は、発光素子12及び基板11上の配線等を封止する封止体として機能する。
また、図1Dに示すように、第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3の各々は、酸化チタンP10、P20及びP30と、酸化チタン(粒子本体)P10、P20及びP30をそれぞれ被覆する被覆膜P11、P21及びP31と、を有している。
具体的には、本実施例においては、第1の酸化チタン粒子P1は、酸化チタンP10と、酸化チタンP10の表面を被覆して酸化チタンP10を保護する被覆膜P11と、を有する。被覆膜P11は、例えば、アルミナ、シリカ、ポリオールなどの有機物からなる膜である。同様に、第2及び第3の酸化チタン粒子P2及びP3の各々は、酸化チタンP20及びP30と、酸化チタンP20及びP30の表面を被覆する被覆膜P21及びP31と、を有する。
次に、図1Dに示すように、粒子群16PTのうち、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3の各々は、各粒子内(各酸化チタンP10及びP30内)において他の部分よりもバンドギャップが小さい部分P00を有する。当該部分P00は、酸化チタンにおける酸素が欠損した部分である。以下においては、部分P00を酸素欠損部と称する。
また、図1Cに示すように、本実施例においては、粒子群16PTは、被覆体16の表面S1から基板11に向かって、各粒子内における酸素欠損部P00の平均密度が低くなるように分散された第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3を含む。なお、図の明確さのため、図1Cにおいては、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3にハッチングを施している。本実施例においては、酸化チタン粒子P1〜P3の各々は、ルチル型の結晶構造を有する二酸化チタン(TiO2)P10、P20及びP30からなる。
なお、第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3の各々内における酸素欠損部P00の密度とは、例えば、各粒子内における酸素欠損部P00が占める割合であり、例えば、各酸化チタンP10〜P30の表面における酸素欠損部P00の占有面積である。
本実施例においては、粒子群16PTのうち、被覆体16内における最も表面S1側の領域に分散された第1の酸化チタン粒子P1においては、第1の酸化チタン粒子P1内における酸素欠損部P00の密度が最も高い(第1の密度で酸素欠損部P00を有する)。
例えば、第1の酸化チタン粒子P1の酸素欠損部P00は、可視光のエネルギー(詳細には可視光の波長のエネルギー)よりも小さなバンドギャップエネルギーを有する。例えば、第1の酸化チタン粒子P1における酸素欠損部P00は、発光素子12からの放出光(本実施例においては青色光)及び透光部材14からの出射光(本実施例においては青色光及び黄色光)のエネルギーよりも小さなバンドギャップエネルギー(例えば約1.5eV)を有する。
また、粒子群16PTのうち、被覆体16内における最も基板11側の領域に分散された第2の酸化チタン粒子P2においては、第2の酸化チタン粒子P2内における酸素欠損部P00の密度が最も低い(第2の密度で酸素欠損部P00を有する)。
例えば、第2の酸化チタン粒子P2は、図1Dに示すように、酸素欠損部P00をほとんど有さない。従って、例えば、第2の酸化チタン粒子P2は、いずれの部分においても(ほぼ全体において)、発光素子12からの放出光のエネルギーよりも大きなバンドギャップエネルギーを有する。
例えば、第2の酸化チタン粒子P2(酸化チタンP20)がルチル型の結晶構造を有する場合、第2の酸化チタン粒子P2は、3.0eVのバンドギャップエネルギーを有する。なお、第2の酸化チタン粒子P2がアナターゼ型の結晶構造を有する場合、第2の酸化チタン粒子P2は、3.2eVのバンドギャップエネルギーを有する。
また、粒子群16PTのうち、第1及び第2の酸化チタン粒子P1及びP2間に分散された第3の酸化チタン粒子P3においては、第3の酸化チタン粒子P3内における酸素欠損部P00(例えば1.5eVのバンドギャップエネルギーを有する部分)は、第1の酸化チタン粒子P1と第2の酸化チタン粒子P2との間の密度(第3の密度(第1の密度と第2の密度との間の密度))で、設けられている。
なお、酸化チタンの結晶は、酸素欠損によってバンドギャップが小さくなると解されている。より詳細には、酸素欠損によって、酸化チタンの価電子帯と導電帯との間に中間準位が形成される。ここでいうバンドギャップとは、この中間準位と価電子帯又は導電帯との間のエネルギーギャップである。
ここで、第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3におけるバンドギャップ(各粒子内における局部的なバンドギャップ)について説明する。バンドギャップを有する結晶は、そのバンドギャップエネルギーよりも大きなエネルギーの波長の光を吸収し、これよりも小さなエネルギーの波長の光を透過させる光学特性を有する。
本実施例においては、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3の各々における酸素欠損部P00は、可視光の波長に相当するバンドギャップエネルギーよりも小さなバンドギャップエネルギーを有する。従って、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3の各々は、酸素欠損部P00によって、可視光を吸収する。
また、酸素欠損部P00の密度が高いほど、可視光の吸収率は大きくなる。従って、本実施例においては、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3は、白色の可視光を用いた観察下では、可視光が吸収されるために、黒色又は灰色を呈している。また、第1の酸化チタン粒子P1は、酸素欠損部P00の密度が第3の酸化チタン粒子P3よりも高いため、第3の酸化チタン粒子P3よりも濃い黒色又は灰色を呈している。
なお、本実施例においては、第2の酸化チタン粒子P2の各々は酸素欠損部P00を有さない(ほとんど有さない)ため、可視光を透過及び散乱させる。従って、本実施例においては、第2の酸化チタン粒子P2の各々は、白色の可視光を用いた観察下では、白色を呈している。
また、本実施例においては、被覆体16における第1、第2及び第3の酸化チタン粒子P1、P2及びP3の各々が分散された領域をそれぞれ第1、第2及び第3の領域(又は第1、第2及び第3の粒子層)16A、16B及び16Cとした場合、第1及び第3の領域16A及び16Cは、可視光を吸収する可視光吸収領域(以下、単に吸収領域と称する)16ABとして機能する。一方、第2の領域16Bは、可視光を散乱及び反射させる可視光散乱反射領域(以下、単に散乱反射領域と称する)16SCとして機能する。
また、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3は、被覆体16の表面S1の近傍の領域のみに分散されている。例えば、第1及び第3の酸化チタン粒子P1及びP3は、表面S1から20μm以下の厚さ(深さ)の範囲内の領域のみに分散されている。従って、被覆体16は、表面S1の近傍では吸収領域16ABとして機能し、その内部では散乱反射領域16SCとして機能する。
また、本実施例においては、第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3は、被覆体16内(媒質内)において、全体として均一な分散密度で分散されている。しかし、第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3は、被覆体16の表面S1から基板11に向かって分散密度(含有量)が徐々に高くなるように、分散されていてもよい。例えば、粒子群16PTは、被覆体16における基板11に近い領域(下部領域)においては、表面S1に近い領域(上部領域)よりも高い密度で分散されていてもよい。
なお、第1、第2及び第3の酸化チタン粒子P1、P2及びP3は、それぞれ被覆膜P11、P21及びP31を有する。これによって、第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3に、紫外線による黄変への耐性(耐黄変性)や、耐候性を持たせることができる。しかし、紫外線による黄変への耐性や耐候性を必要としない場合、第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3は被覆膜P11〜P31を有していなくてもよい。
図2A、図2B及び図2Cの各々は、発光装置10の製造方法の各工程を示す図である。図2A乃至図2Cの各々は、各工程中における図1Aと同様の断面図である。図2A乃至図2Cを用いて、発光装置10の製造方法について説明する。
まず、図2Aは、発光素子12、接合部材13、透光部材14、枠体15及び粒子含有樹脂16Pが形成された基板11を示す図である。本実施例においては、まず、枠体15が接合されかつ配線を有する基板11上に複数の発光素子12を配置して接合する(工程1)。次に、発光素子12の各々上に接合部材13としてシリコーン樹脂を塗布する(工程2)。また、接合部材13の各々上に透光部材14としてYAGプレートを配置し、接着する(工程3)。
続いて、基板11上における透光部材14間の領域を含む枠体15の内側の領域に、粒子含有樹脂16Pとして、第2の酸化チタン粒子P2と同様の酸化チタン粒子P0を含有するシリコーン樹脂を充填する(工程4)。そして、粒子含有樹脂16Pを加熱して硬化させる(工程5)。本実施例においては、酸化チタン粒子P0として、平均粒径が250nm、バンドギャップエネルギーが3.0eVのルチル型の二酸化チタンを用いた。そして、粒子含有樹脂16Pにおける酸化チタン粒子P0の濃度は16wt%とした。
図2Bは、粒子含有樹脂16Pの上面S0にレーザ光の照射を行っている際の粒子含有樹脂16Pの基板11を示す図である。まず、粒子含有樹脂16Pを加熱して硬化させる(工程6)。
そして、基板11を支持しつつ、粒子含有樹脂16Pの上面S0に対し、レーザ光LBを照射する(工程7)。本実施例においては、355nmの波長のレーザ光LBを出射するレーザ光源LSを準備した。また、レーザ光LBを走査しつつ粒子含有樹脂16Pの上面S0に照射する。
本実施例においては、φ45μmのビーム径及び50kW/cm2の出力のレーザ光LBを、1000mm/secの速度で移動させつつ、粒子含有樹脂16Pの上面S0に照射した。なお、355nmの波長の光のエネルギーは約3.5eVであり、ルチル型の二酸化チタンのバンドギャップエネルギーは3.0eVである。従って、レーザ光LBのエネルギーは酸化チタン粒子P0のバンドギャップエネルギーよりも大きい。従って、レーザ光LBは、酸化チタン粒子P0に吸収される。
これによって、レーザ光LBに照射された酸化チタン粒子P0が変質し、粒子内の酸素原子が脱離する。また、レーザ光LBの照射強度、照射時間及び焦点位置などを調節することで、レーザ光LBは上面S0の近傍の酸化チタン粒子P0のみに照射される。従って、粒子含有樹脂16Pにおける上面S0の近傍で最も酸素欠損の多い酸化チタン粒子が生成され、上面S0から離れるに従ってその酸素欠損の程度が小さい酸化チタン粒子が生成される。
これによって、粒子含有樹脂16Pの上面S0の近傍におけるレーザ光LBが比較的強く照射された酸化チタン粒子P0は、高密度で酸素欠損部P00を有する酸化チタン粒子、すなわち第1の酸化チタン粒子P1となる。そして、粒子含有樹脂16Pの上面S0から少し離れた酸化チタン粒子P0は、酸素欠損部P00が比較的少ない第3の酸化チタン粒子P3となる。
また、上面S0から所定の距離(レーザ光LBが酸化チタン粒子によって遮光される距離)以上離れると、レーザ照射の影響を受けず、酸化チタン粒子P0は変質しない。従って、例えば基板11の近傍に存在する酸化チタン粒子P0は、酸素欠損部P00をほとんど有しない酸化チタン粒子、すなわち第2の酸化チタン粒子P2となる。
このようにして、レーザ照射によって、酸素欠損部P00の密度が徐々に低くなるように分散された複数の酸化チタン粒子(粒子群16PT)を含む被覆体16及びこれを含む発光装置10を製造することができる(図2C)。
なお、レーザ光LBの照射工程(工程7)においては、他の材料、例えば被覆体16の媒質(例えばシリコーン樹脂)、接合部材13及び透光部材14などを変質させないようにレーザ光源LSの出力調節を行うことが好ましい。例えば上記した条件でレーザ光LBを照射することで、他の材料の変質を抑制しつつ、酸化チタン粒子P0のみを変質させることができる。
本願の発明者らは、当該条件(及び25〜75kW/cm2の範囲内の出力)のレーザ光LBが被覆体16の媒質としてのシリコーン樹脂、接合部材13、及び透光部材14としてのYAGプレートを変質させないことを確認している。なお、本実施例においては、被覆体16の媒質として、355nmの波長の光に対して60%以上の透過率を有するシリコーン樹脂を用いた。
なお、発光装置10の製造方法はこれに限定されない。例えば、粒子含有樹脂16Pを塗布し、所定時間静置した後、粒子含有樹脂16Pを加熱することによって酸化チタン粒子P0を沈降させる。これによって、表面S1側の酸化チタン粒子P0の分散密度を低くした被覆体16を形成することもできる。
図3は、発光装置10内における光の進路を模式的に示す図である。まず、発光素子12から放出された光のうち、大部分の光は、光L1のように、接合部材13及び透光部材14を通過して透光部材14の上面(光取り出し面)から外部に取り出される。
次に、透光部材14の側面から被覆体16の散乱反射領域16SCに進入する光(光L2のような光)は、散乱反射領域16SCによって反射されて透光部材14に戻って来る。そして、光L2のような光は、透光部材14の上面から外部に取り出される。
一方、透光部材14の上面の近傍の領域から被覆体16に入射した光の一部は、光L3のように、被覆体16内を伝搬することが想定される。このような光は、吸収領域16ABに進入し、吸収領域16ABによって吸収される。
より具体的には、被覆体16の表面S1の近傍に入射した光は、被覆体16の表面S1で全反射を起こすことで、被覆体16の表面S1の近傍を表面S1に沿って伝搬しやすくなる。すなわち、被覆体16の表面S1の近傍には、表面S1に沿った意図しない光の伝搬経路が形成されやすい。従って、仮に被覆体16の全体が散乱反射性を有する場合、被覆体16の表面S1の近傍の領域を介して隣接する透光部材14間で光が伝搬する場合がある。すなわち、被覆体16の表面S1の近傍の領域は、透光部材14間、すなわち発光領域間の光のクロストークが発生しやすい領域となる。
従って、被覆体16が表面S1の近傍に吸収領域16ABを有することで、発光領域間の光のクロストークが抑制される。また、光L3のような光は、吸収領域16ABに進入することで、完全に吸収されなかった場合でも、十分に減衰される。従って、光のクロストークが抑制される。
なお、被覆体16の吸収領域16AB以外の大部分の領域は散乱反射領域16SCである。従って、上記したように散乱反射領域16SCに進入しようとする光(光L2のような光)は発光素子12又は透光部材14側へ反射された後、外部に取り出される。従って、光出力をほとんど犠牲にすることなく、被覆体16の全体で確実に光のクロストークが抑制される。
図4は、発光装置10からの光出力の分布を示す図である。図4の横軸は図1Bの1A−1A線に沿った発光装置10の位置を示し、縦軸は光出力(輝度を最大値で規格化した値)を示している。
なお、図4には、比較例として被覆体16に代えて第2の酸化チタン粒子P2のみが分散された被覆体を有する発光装置からの出力の測定結果を破線で示し、発光装置10の測定結果を実線で示している。
図4に示すように、発光装置10においては、発光装置100に比べ、発光素子12(透光部材14)の領域以外からの出力が大きく抑えられ、発光素子12の領域からは高い出力の光が出射されていることがわかる。また、透光部材14の外側においては、透光部材14の領域の1/100程度にまで急峻に光強度が低下していることがわかる。また、発光装置10及び100の最大出力値はほぼ同一であった。
すなわち、発光装置10は、出力を低下させることなく、発光領域間の光のクロストークが抑制された発光装置であることがわかる。なお、本願の発明者らは、透光部材14の各々を200μm程度の間隔で配置した場合でも、十分に光のクロストークが抑制されたことを確認している。
このように、被覆体16は、発光素子12、接合部材13及び透光部材14から被覆体16に入射した光のほとんどに対しては高い反射性を有し、わずかに存在する被覆体16の表面S1の近傍に進入した光に対しては吸収性を有する。従って、発光装置10は、光の出力低下を犠牲にすることなく、所望の配光特性の光を出射することができる。
例えば、発光装置10は、発光素子12の各々の点灯及び非点灯を切替えることによって、照射領域(例えば配光領域)を変化させることが好ましい用途、例えば車両の前照灯などの照明用途に用いられることができる。この場合、1の発光素子12に対応する照射領域に向けて出射される光が他の照射領域に向けて出射されないことが求められる。本実施例においては、発光装置10は、このような用途に好適な構成を有する。
また、被覆体16の吸収領域16ABは、レーザ光LBの照射工程(工程7)を加えるだけで、容易に形成することができる。従って、容易に発光領域間のクロストークが抑制された発光装置10を提供することが可能となる。
なお、本実施例においては、粒子群16PTの分散媒質である樹脂体は、一体的に形成されている。すなわち、例えば、被覆体16は、第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3の各々を担持する1つの樹脂マトリクスを有する。また、第1〜第3の領域16A〜16C間の各々には媒質の境界が存在しない。従って、吸収領域16ABを設けた場合でも被覆体16の機械的強度が維持され、また上記したように光学機能も安定する。従って、高品質及び高寿命な被覆体16及び発光装置10となる。
また、本実施例においては、粒子群16PTは、被覆体16内において、全体として均一な分散密度を有する。従って、第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3の各々は、互いに同程度の範囲内の密度で被覆体16内に分散されている。従って、吸収領域16ABを設けた場合でも被覆体16の全体としての熱膨張係数が均一化され、これによって、被覆体16の機械的強度が維持される。従って、高品質及び高寿命な被覆体16及び発光装置10となる。
なお、上記したように、粒子群16PTにおける被覆体16内の分散密度は基板11に向かって徐々に低くなっていてもよい。例えば、基板11側における第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3の分散密度を高くし、表面S1側における第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3の分散密度を低くした場合には、被覆体16の表面S1の樹脂割れを抑制することができる。この場合、表面S1付近を導光する光L3を増加させる可能性があるが、吸収領域16ABによってこの光L3の導光は抑制される。
より具体的には、例えば、上記した工程4を実行する際に、酸化チタン粒子P0の含有量を32wt%とした粒子含有樹脂16Pを用いて、静置工程(酸化チタン粒子P0を沈降させる工程)を経て被覆体16を形成する。この工程により、被覆体16における表面S1の近傍の酸化チタン粒子(第1の酸化チタン粒子P1)の含有量を16wt%程度とすることができる。この場合、表面S1の近傍における吸収領域16ABでの光吸収特性及び散乱反射領域16SCでの光散乱特性を維持することができ、さらに被覆体16の樹脂割れを防止することが可能となる。
また、本実施例においては、被覆体16は、樹脂媒質として、1.4〜1.55の範囲内の屈折率を有する熱硬化性のエポキシ樹脂又はシリコーン樹脂を有する。また、粒子群16PTは、例えば、約2.5の屈折率を有するアナターゼ型の酸化チタン粒子、又は約2.7の屈折率を有するルチル型の酸化チタン粒子を含む。このように、被覆体16内で光を散乱させることを考慮すると、粒子群16PT(特に第2の酸化チタン粒子P2)は、樹脂媒質よりも高い屈折率を有していることが好ましい。
また、被覆体16の粒子群16PTにおける第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3の各々の粒径(平均粒径)は、例えば可視光領域(例えば380〜780nmの範囲)において良好な拡散反射を得ることを考慮すると、150〜350nmの範囲内であることが好ましい。また、被覆体16内に進入した光(可視光)の波長(例えばシリコーン樹脂の媒質内の波長)に対し、第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3の平均粒径を1〜1/4程度の範囲内とすることで、後方散乱割合が高いミー散乱を生じさせ、極めて良好な拡散反射を得ることができる。
例えば、樹脂媒質の屈折率が1.5である場合、空気中で380nmの波長の光は樹脂媒質内で253nmの波長となり、空気中で780nmの光は樹脂媒質内で520nmの波長となる。この場合、例えば酸化チタン粒子P1〜P3は、例えば195nm〜253nmの範囲内の平均粒径を有することで、良好な拡散反射を行う。同様に、空気中で420nm〜680nmの波長の光の場合、酸化チタン粒子P1〜P3の粒径は、170nm〜280nmの範囲内の場合、良好な拡散反射を行う。
これらを考慮して粒子群16PT内の粒子の平均粒径を調節することで、散乱反射領域16SCでの反射率を高めることができる。また、吸収領域16ABにおいても、光が散乱することで光が高確率で粒子に取り込まれて吸収されるため、吸収率を高めることができる。
また、被覆体16における粒子群16PTの濃度は、所望の光反射性及び光吸収性を得ることを考慮すると、5〜70wt%の範囲内であることが好ましく、製造の容易さ(粒子含有樹脂16Pの塗布の容易さ)や製造コストを考慮すると、8〜30wt%の範囲内であることがさらに好ましい。なお、被覆体16における上記した粒子群16PT及び媒質の構成は一例に過ぎない。
また、図1Dに示したように、第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3の各々が被覆膜P11〜P31を有すること(すなわち各粒子の形成用に用いる酸化チタン粒子P0が被覆膜を有すること)で、発光装置10の製造時におけるレーザ光LBの照射工程(工程7)において、355nmの波長の高出力レーザを用いて、効果的にかつ安定して各酸化チタンP10〜P30の表面に酸素欠損部P00を生じさせることができる。従って、被覆体16の表面S1から数μm〜20μmの薄い領域のみに安定して吸収領域16ABを形成することができる。
また、レーザ光LBの粒子含有樹脂16P内での波長に対して、酸化チタン粒子P0の粒径が略等しい場合は、粒子含有樹脂16P内の領域では酸化チタン粒子P0によって後方散乱割合の大きいミー散乱が生ずる。これによって、レーザ光LBは粒子含有樹脂16Pの表面S1の近傍で散乱反射される。その結果、被覆体16の表面S1の近傍(表面S1から数μm〜20μmの薄い領域)のみに均一にレーザ光LBを照射することができ、安定して吸収領域16ABを形成することができる。
また、レーザ光LBとして、粒子含有樹脂16P内の酸化チタン粒子P0のバンドギャップエネルギーよりも大きなエネルギーの波長の光を用いることで、レーザ光LBを酸化チタン粒子P0に吸収させることができる。従って、被覆体16の表面S1から離れた位置へのレーザ光LBの照射が抑制される。従って、被覆体16の表面S1の近傍のみに安定して吸収領域16ABを形成することができる。
図5Aは、実施例1の変形例1に係る発光装置10Aの断面図である。発光装置10Aは、接合部材13Aの構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。本変形例においては、接合部材13Aは、発光素子12の側面の一部を覆っている。すなわち、接合部材13Aは、発光素子12の上面及び側面上に形成されている。本変形例においては、被覆体16は、発光素子12の側面の下方領域においては発光素子12に接し、その上方領域においては接合部材13Aを介して発光素子12を覆っている。
発光装置10Aにおいては、被覆体16が発光素子12の側面の上方において発光素子12の側面に接しない部分を有する。このように被覆体16が構成されている場合、発光素子12の側面から放出された光を、接合部材13Aによって導光させ、透光部材14の外縁部に入射させることができる。従って、透光部材14の外縁部から取り出される光を増大させることができる。従って、高コントラストかつ低クロストークな発光装置10Aとなる。
図5Bは、実施例1の変形例2に係る発光装置10Aの断面図である。発光装置10Bは、接合部材13Bの構成を除いては、発光装置10及び10Aと同様の構成を有する。本変形例においては、接合部材13Bは、発光素子12の側面の全体を覆っている。すなわち、接合部材13Bは、発光素子12の上面及び側面の全体に接している。本変形例においては、被覆体16は、接合部材13Bを介して発光素子12の側面を覆っている。
発光装置10Bにおいては、被覆体16が発光素子12の側面に完全に接しない。このように被覆体16が構成されている場合、発光素子12の側面から放出された光のほぼ全てを、接合部材13Bによって透光部材14の外縁部に入射させることができる。従って、透光部材14の外縁部から取り出される光を増大させることができる。従って、高コントラストかつ低クロストークな発光装置10Bとなる。
図5Cは、実施例1の変形例3に係る発光装置10Cの断面図である。発光装置10Cは、接合部材13C及び透光部材14Aの構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。本変形例においては、透光部材14Aが発光素子12の上面よりも大きな上面を有する。また、接合部材13Cは、発光素子12の側面から透光部材14Aの底面に亘って形成されている。
本変形例においては、発光素子12から放出された光は、接合部材13Cを介して透光部材14Aの底面全体に入射した後、透光部材14Aの上面から外部に取り出される。また、被覆体16は、接合部材13Cの側面及び透光部材14Aの側面を覆っている。従って、例えば、発光素子12の側面から放出された光を接合部材13Cによって透光部材14Aの外縁部に入射させることができる。従って、例えば、発光素子12のサイズを変えることなく光取り出し面のサイズを拡大し、かつクロストークが抑制された発光装置10Cを提供することができる。
図5Dは、実施例1の変形例4に係る発光装置10Dの断面図である。発光装置10Dは、接合部材13D及び透光部材14Bの構成を除いては、発光装置10と同様の構成を有する。本変形例においては、透光部材14Bは、発光素子12の上面よりも小さな上面を有する。また、接合部材13Dは、発光素子12の上面から透光部材14Bの側面に亘って形成されている。
本変形例においては、発光素子12から放出された光は、接合部材13Dを介して透光部材14Bの底面及び側面に入射した後、透光部材14Bの上面から外部に取り出される。また、被覆体16は、発光素子12及び接合部材13Dの側面と、透光部材14Bの側面の上方部分を覆っている。従って、例えば、発光素子12のサイズを変えることなく光取り出し面のサイズを縮小し、高出力かつ低クロストークな発光装置10Dを提供することができる。
図5Eは、実施例1の変形例5に係る発光装置10Eの断面図である。発光装置10Eは、透光部材14を有さない点を除いては発光装置10と同様の構成を有する。発光装置10Eは、基板11と、基板11上に並置された複数の発光素子12と、発光素子12の側面を覆う被覆体16とを有する。
被覆体17は、発光素子12の側面を覆う点を除いては、被覆体16と同様の構成を有する。被覆体17は、基板11上における隣接する発光素子12間の領域に配置され、発光素子12の側面を覆う。また、被覆体17は、被覆体16と同様に、表面S1から基板11に向かって各粒子内の酸素欠損部P00の平均密度が低くなるように層状に分散された複数の酸化チタン粒子(例えば第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3)を含む粒子群16PTを有する。
本変形例においては、発光素子12の上面が外部に露出している。この場合、発光素子12からの放出光は、他の媒体を介さずに直接外部に取り出される。発光装置10Eにおいても、被覆体17が粒子群16PTを含むことで、クロストークが抑制された発光装置となる。
なお、本実施例においては、被覆体16が可視光に対する吸収性を有する吸収領域16AB及び可視光に対して反射性を有する散乱反射領域16SCを有する場合について説明した。しかし、被覆体16の構成はこれに限定されない。例えば、発光素子12は、可視光以外の帯域の光を放出する構成を有していてもよい。この場合、被覆体16の吸収領域16AB及び散乱反射領域16SCは、当該他の波長帯域の光及び/又は波長変換体によってさらに他の波長に変換された光に対し、それぞれ吸収性及び反射性を有していればよい。
換言すれば、例えば、発光素子12からの放出光、並びに接合部材13又は透光部材14に含まれる波長変換体からの出射光の波長に応じた光吸収性及び光反射性を有する領域を有するように被覆体16内の粒子及びそのバンドギャップ構成、並びに媒質が調節されていればよい。
また、この場合、被覆体16内において効果的に吸収領域16AB及び散乱反射領域16SCを設けることを考慮すると、例えば、粒子群16PTにおける酸化チタン粒子は、発光素子12からの放出光及び/又は接合部材13若しくは透光部材14に含まれる波長変換体からの出射光の被覆体16内の波長に対応する平均粒径を有していることが好ましい。
また、被覆体16は、機械的強度を維持させること考慮すると、粒子群16PTの複数の酸化チタン粒子を分散させる一体的に形成された樹脂媒質(例えばシリコーン樹脂)を有していることが好ましい。
また、本実施例においては、粒子群16PTが第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3を有する場合について説明したが、粒子群16PTの構成はこれに限定されない。例えば、粒子群16PTは、例えば2種類の酸化チタン粒子P1及びP2のみから構成されていてもよい。
この場合、例えば、被覆体16内における被覆体16の表面S1の近傍の第1の領域16Aに分散された第1の酸化チタン粒子P1における酸素欠損部P00の平均密度は、被覆体16の第1の領域16Aよりも基板11側の第2の領域16Bに分散された第2の酸化チタン粒子P2における酸素欠損部P00の平均密度よりも大きければよい。
また、例えば、被覆体16は、最も表面S1に近い位置に配置され、発光素子12からの放出光のエネルギーよりも小さいバンドギャップを有する部分(酸素欠損部P00)を高密度で有する複数の第1の酸化チタン粒子P1と、第1の酸化チタン粒子P1よりも基板11側に配置され、発光素子12からの放出光のエネルギーよりも小さいバンドギャップを有する部分(酸素欠損部P00)を低密度で有する複数の第2の酸化チタン粒子P2と、を含んでいればよい。
また、例えば、粒子群16PTは、少なくとも第1の酸化チタン粒子P1を含んでいればよい。すなわち、粒子群16PTにおける被覆体16の表面S1の近傍において分散された第1の酸化チタン粒子P1は、酸素欠損部P00を有していればよい。
また、粒子群16PTにおいて吸収領域16AB及び散乱反射領域16SCを構成する粒子は、酸化チタン粒子に限定されない。例えば、酸化亜鉛(ZnO)は、酸化チタンと同様の性質を有する。例えば、酸化亜鉛のバンドギャップエネルギーは3.37eVであり、可視光を透過する。また、酸化亜鉛は、波長355nmの紫外線(例えばレーザ光LB)を吸収する性質を有する。さらに、酸化亜鉛の屈折率は2.0であり、シリコーン樹脂の屈折率(1.4〜1.55)より大きい。そして、酸化亜鉛は、酸素欠損によって、深いドナー順位を形成してバンドギャップが小さくなり(バンドギャップが小さい部分P00に対応する部分が形成され)、可視光を吸収する性質を有する。
従って、粒子群16PTには、例えば酸化チタン粒子及び酸化亜鉛粒子など、酸素欠損がない結晶状態において可視光などの所定の波長の光を散乱又は反射させ、酸素欠損によって当該波長の光を吸収する性質を有する金属酸化物結晶を用いることができる。例えば、このような性質を有する金属酸化物の粒子は、第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3に置き換えられてもよいし、第1〜第3の酸化チタン粒子P1〜P3に加えて粒子群16PTに含有されていてもよい。
また、粒子群16PTには、酸化チタン粒子又は酸化亜鉛粒子の他に、発光素子12からの放出光及び/又は接合部材13若しくは透光部材14に含まれる波長変換体からの出射光を散乱する粒子が添加されていてもよい。当該粒子としては、炭化ケイ素(SiC)、窒化珪素(Si2N3)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)などの金属炭化物、また、金属酸化物、金属窒化物などの粒子が挙げられる。
すなわち、被覆体16は、少なくとも、被覆体16内に分散された光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群16PTを有していればよい。例えば、粒子群16PTが酸化チタン粒子及び酸化亜鉛粒子以外の粒子を含む複数の粒子を含んでいる場合、当該複数の粒子が被覆体16内で均一な密度で分散されているか、又は表面S1から基板11に向かって徐々に密度が高くなるように分散されていればよい。また、例えば、粒子群16PTに含まれる粒子の全体が上記した濃度で分散されていればよい。
また、本実施例においては、被覆体16の表面S1の近傍の領域全体に吸収領域16ABが設けられる場合について説明した。しかし、吸収領域16ABは、被覆体16の表面S1の近傍の領域の一部のみに設けられていてもよい。例えば、出力及びクロストーク抑制のうち、出力を優先する場合、被覆体16が表面S1の近傍の領域の一部のみに吸収領域16ABを有していてもよい。
また、本実施例においては、被覆体16が枠体15の内側に充填されるように設けられ、透光部材14の側面全体を覆う場合について説明した。しかし、被覆体16は、少なくとも隣接する透光部材14間(又は発光素子12間)において透光部材14の側面を覆っていればよい。すなわち、透光部材14における他の透光部材14に隣接しない側面には被覆体16及び吸収領域16ABは設けられていなくてもよい。
なお、例えば、発光装置10が照射する光の領域の外縁部の明暗を明確にすることが求められる場合、本実施例のように、被覆体16が透光部材14の全ての側面を覆い、その表面S1に吸収領域16ABを有することが好ましい。
このように、例えば、発光装置10は、基板11と、基板11上に並置された複数の発光素子12と、各々が発光素子12の各々上に配置された複数の透光部材14と、基板11上における隣接する透光部材14間の領域に配置され、透光部材14の各々の側面を覆う被覆体16と、を有する。
また、被覆体16は、被覆体16内に分散された光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群16PTを有する。また、粒子群16PTにおける被覆体16の表面S1の近傍に分散された金属酸化物粒子(例えば第1の酸化チタン粒子P1)は、酸素が欠損した部分P00を有する。従って、単純な構成で発光領域間の光のクロストークが抑制された発光装置10を提供することができる。
また、例えば、発光装置10Eは、基板11と、基板11上に並置された複数の発光素子12と、基板11上における隣接する発光素子12間の領域に配置され、発光素子12の各々の側面を覆い、外部に露出する表面S1を有する被覆体17と、を有する。また、被覆体17は、被覆体17内に分散された光散乱性の複数の金属酸化物粒子を含む粒子群16PTを有する。また、粒子群16PTにおける被覆体16の表面S1の近傍に分散された金属酸化物粒子(例えば第1の酸化チタン粒子P1)は、酸素が欠損した部分P00を有する。従って、単純な構成で発光領域間の光のクロストークが抑制された発光装置10Eを提供することができる。
また、例えば、この酸素欠損部P00は、レーザ光LBの照射によって金属酸化物粒子の酸素が欠損した部分である。すなわち、被覆体16又は17は、被覆体16又は17の表面S1にレーザ光LBが照射された領域を有する。これによって、被覆体16又は17の表面S1にコントラストを高める吸収領域16AB又は17ABを形成することができる。従って、容易に製造することが可能であり、単純な構成で発光領域間の光のクロストークが抑制された発光装置10を提供することができる。