JP2020090578A - 構造色可変弾性粉体 - Google Patents
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Abstract
【課題】色調変化型材料に応力が加えられると有効に作動し、応力を除去すると色調の変化が不可逆的でなく可逆的に構造色が変化し可視光の変化で容易に認識することができる構造色可変弾性粉体を提供する。【解決手段】架橋ポリスチレン粒子の表面の少なくとも一部に(A)メタアクリルポリマ層を有し、更に、前記(A)表面の少なくとも一部に前記(A)とは異なる(B)(メタ)アクリルポリマ層とが設けられた粉体であり、ブラッグ反射領域を有し、圧力によりブラッグ反射領域が変化する平均粒径が5〜500nmである構造色可変弾性粉体。【選択図】なし
Description
本発明は、圧力により構造色が変化する構造色可変弾性粉体に関する。
近年、微細周期構造からなる構造色は色素等の劣化しない色を示す材料として注目を集めており、人工的に構造色を形成する技術開発が進められている。
屈折率の異なる2種類の高分子を積層することによって色調の変化する積層型高分子ポリマが提案、報告されている(例えば、非特許文献1、2参照)。この積層型ポリマは、構成する高分子ポリマの種類や各層の膜厚を制御することによって任意の構造色が呈され、かつ変化することから各種装飾材料に使用される色調変化材料として注目されている。しかし、この提案されてなる構造色変化材料は、塑性変形を起こすことにより引張応力が印加されると構造色が変化するが、その変化は不可逆的であり、そのため初期の構造色へ戻すことができないものであった。
屈折率の異なる2種類の高分子を積層することによって色調の変化する積層型高分子ポリマが提案、報告されている(例えば、非特許文献1、2参照)。この積層型ポリマは、構成する高分子ポリマの種類や各層の膜厚を制御することによって任意の構造色が呈され、かつ変化することから各種装飾材料に使用される色調変化材料として注目されている。しかし、この提案されてなる構造色変化材料は、塑性変形を起こすことにより引張応力が印加されると構造色が変化するが、その変化は不可逆的であり、そのため初期の構造色へ戻すことができないものであった。
これに対して、上記積層型材料とは別のタイプの構造色変化材料も知られている。すなわち、粒子間をハイドロジェルで充填した水分を多量に含んだコロイド結晶を含む材料であって、圧縮応力が加えられると色が変化するタイプのもので、各種学術文献に提案、報告されている(非特許文献3、4)。しかしながら、このようなハイドロジェルタイプの構造色変化材料は弾性率が低いこと、実際の市販の利用を考えた場合、使用形態に自ずと制限があった。
更に、構造色を呈するサブミクロンサイズの粒子の集積体も報告されている。非特許文献5ではシリカ粒子の集積体を使用し、構造色を呈する粉体を作製している。また、特許文献1、2では大きいサイズの粒子表面とサブミクロンサイズの粒子を噴霧乾燥し、構造色を呈する粉体を作製することが報告されている。しかし、まだ、構造色を変えることができる粉体については殆ど報告されていない。
T.C.Wang et al.,Adv.Mater.,14,p.1534 (2002)
C.Osuji,Adv.Functional Mater.,vol.12,p.753(2002)
Y.Iwayama et al.,Langmuir,vol.19,p.977(2003)
S.H.Foulger et al.,Adv.Mater.vol.15,p.685(2003)
Scientific Reports 3, Article number: 2371 (2013)
このような状況に鑑み、本発明は、色調変化型材料における材料設計において、上記従来技術による材料のように色調の変化が不可逆的であったり、使用形態に制約があったりするといった不都合のない、すなわち、どのような状況、環境においても応力が加えられると有効に作動し、可逆的に弾性変形し、ひずみや引張応力あるいは圧縮応力に対しても可逆的に構造色が変化し、ひずみ変形をはじめ各種応力を可視光の変化で容易に認識することができる構造色可変弾性粉体を提供しようというものである。
更に、この特有な色調変化現象を積極的に利用することによって単に装飾材料としての使用に止まらず、例えば、特段の高価な測定器を使用することなく、簡単に視覚的に視認することができる安価で全く新しいタイプの新規なひずみセンサーや、光の伝播を阻害するヒューズ素子、簡易型の重量計といった各種機能性部材や、機器類、各種玩具等各種分野に使用されうる粉体を提供しようというものである。
そのため本発明者らは、上記目的に添った条件を満たす色調変化型材料を提供すべく、鋭意研究をした結果、弾性体中に単分散粒子を光の波長程度の周期構造を以って規則的に配列させることによって、弾性体に加えられる応力によって弾性変形を生じると共に、構造色が可逆的に変化しうることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、その構成は以下に記載のとおりである。
本発明は、[1] 架橋ポリスチレン粒子の表面の少なくとも一部に(A)メタアクリルポリマ層を有し、更に、前記(A)表面の少なくとも一部に前記(A)とは異なる(B)(メタ)アクリルポリマ層とが設けられた粉体であり、ブラッグ反射領域を有し、圧力によりブラッグ反射領域が変化する平均粒径が5〜500μmである構造色可変弾性粉体である。
また、本発明は、[2] 構造色可変弾性粉体が、圧力によりブラッグ反射領域が変化した後、圧力を除荷することにより、圧力負荷前の元の色に戻る上記[1]に記載の構造色可変弾性粉体である。
また、本発明は、[3] 架橋ポリスチレン粒子が、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼンを含む架橋ポリスチレンである上記[1]又は[2]に記載の構造色可変弾性粉体である。
また、本発明は、[4] 前記(B)(メタ)アクリルポリマ層のTgが、30℃以下である上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体である。
また、本発明は、[5] 前記(A)メタアクリルポリマ層が、アリルメタアクリレートを含む上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体である。
また、本発明は、[6] 前記(B)(メタ)アクリルポリマが、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼンを含む上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体である。
また、本発明は、[7] 前記架橋ポリスチレン粒子の平均粒径が、150〜750nmである上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体である。
更に、本発明は、[8] 構造色可変弾性粉体中に更に、カーボン粒子を含有する上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体である。
また、本発明は、[2] 構造色可変弾性粉体が、圧力によりブラッグ反射領域が変化した後、圧力を除荷することにより、圧力負荷前の元の色に戻る上記[1]に記載の構造色可変弾性粉体である。
また、本発明は、[3] 架橋ポリスチレン粒子が、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼンを含む架橋ポリスチレンである上記[1]又は[2]に記載の構造色可変弾性粉体である。
また、本発明は、[4] 前記(B)(メタ)アクリルポリマ層のTgが、30℃以下である上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体である。
また、本発明は、[5] 前記(A)メタアクリルポリマ層が、アリルメタアクリレートを含む上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体である。
また、本発明は、[6] 前記(B)(メタ)アクリルポリマが、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼンを含む上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体である。
また、本発明は、[7] 前記架橋ポリスチレン粒子の平均粒径が、150〜750nmである上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体である。
更に、本発明は、[8] 構造色可変弾性粉体中に更に、カーボン粒子を含有する上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体である。
本発明による構造色可変弾性粉体は、空間的かつ周期的に配列された架橋ポリスチレン粒子(コアシェル粒子)と、その周りに位置する弾性体((A)メタアクリルポリマ層と(B)(メタ)アクリルポリマ層)とを含むものであり、圧力により弾性体が弾性変形し、その弾性変形に応じて架橋ポリスチレン粒子(単分散粒子)の配列周期が所定の収縮率で収縮する。その結果、収縮後の架橋ポリスチレン粒子(ポリマ粒子)の配列周期に対応して光がブラッグ反射をするため、構造色変化を発現することができる。架橋ポリスチレン粒子(ポリマ粒子)の分散媒として弾性体を用いているため、圧力を除去すれば、本発明の材料は初期状態に容易に戻りうる。したがって、可逆的弾性変形を有し、それによって色調も可逆的に変化する材料を提供することができるものである。
本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル及びそれに対応するメタアクリルの少なくとも一方を意味する。また、(メタ)アクリレート等の他の類似表現についても同様である。
(架橋ポリスチレン粒子)
本発明の構造色可変弾性粉体は、架橋ポリスチレン粒子、(A)メタアクリルポリマ層、(B)(メタ)アクリルポリマ層からなる。
架橋ポリスチレンの架橋剤は、耐溶剤性の観点から1質量%から20質量%であることが好ましい。1質量%未満の場合、ポリスチレン粒子が溶融し、変形する可能性があり、構造色の色彩が低下する。20質量%を超える場合、粒子を合成する際に凝集しやすくなったり、架橋ポリスチレン粒子の屈折率が低下するため、構造色の色彩が低下する。
架橋剤はラジカル重合性の官能基を二つ以上有するものであれば使用でき、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール系ジ(メタ)アクリレート;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,7−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオール系ジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート等が挙げられる。
(架橋ポリスチレン粒子)
本発明の構造色可変弾性粉体は、架橋ポリスチレン粒子、(A)メタアクリルポリマ層、(B)(メタ)アクリルポリマ層からなる。
架橋ポリスチレンの架橋剤は、耐溶剤性の観点から1質量%から20質量%であることが好ましい。1質量%未満の場合、ポリスチレン粒子が溶融し、変形する可能性があり、構造色の色彩が低下する。20質量%を超える場合、粒子を合成する際に凝集しやすくなったり、架橋ポリスチレン粒子の屈折率が低下するため、構造色の色彩が低下する。
架橋剤はラジカル重合性の官能基を二つ以上有するものであれば使用でき、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール系ジ(メタ)アクリレート;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,7−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオール系ジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート等が挙げられる。
なお、市販品の製品名としては新中村化学工業株式会社製のNKエステル[A−TMPT−6P0、A−TMPT−3E0、A−TMM−3LMN、A−GLYシリーズ、A−9300、AD−TMP、AD−TMP−4CL、ATM−4E、A−DPH]等が挙げられる。上記架橋剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼンを使用することが架橋度を効率よく上げる観点から好ましい。
架橋ポリスチレン粒子の平均粒径は、構造色を示す粒径の観点から150〜750nmであることが好ましい。
なお、本明細書において平均粒径は、レーザ回折散乱法粒度分布測定装置(例えば大塚電子株式会社製 ELSZ)により測定される体積平均粒径である。
架橋ポリスチレン粒子の平均粒径は、構造色を示す粒径の観点から150〜750nmであることが好ましい。
なお、本明細書において平均粒径は、レーザ回折散乱法粒度分布測定装置(例えば大塚電子株式会社製 ELSZ)により測定される体積平均粒径である。
((A)メタアクリルポリマ層、(B)(メタ)アクリルポリマ層)
架橋ポリスチレン粒子は、その表面にメタアクリルモノマからなるメタアクリルポリマ層(A)((A)層)と(メタ)アクリルモノマからなる(メタ)アクリルポリマ層(B)((B)層)を有する。(A)層、(B)層は、単独重合体、共重合体、グラフト重合体であってもよい。グラフトは、一般的なgrafting from法であれば使用することができる。例として、ラジカル重合性のメタアクリルモノマに対し、アリル基を有するメタアクリルモノマを共重合したポリマ層下地を一層形成した後、追加で重合することによりグラフトポリマ層を形成することができる。グラフト相形成に使用できるメタアクリルモノマの例として以下のものが挙げられる。メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等のメタアクリル酸エステルなどが挙げられる。
グラフト層を簡便に形成する観点より、アリルメタアクリレートを含むことが好ましい。架橋ポリスチレン粒子に対するメタアクリルポリマ層(A)の量は10〜50質量%が好ましい。
架橋ポリスチレン粒子は、その表面にメタアクリルモノマからなるメタアクリルポリマ層(A)((A)層)と(メタ)アクリルモノマからなる(メタ)アクリルポリマ層(B)((B)層)を有する。(A)層、(B)層は、単独重合体、共重合体、グラフト重合体であってもよい。グラフトは、一般的なgrafting from法であれば使用することができる。例として、ラジカル重合性のメタアクリルモノマに対し、アリル基を有するメタアクリルモノマを共重合したポリマ層下地を一層形成した後、追加で重合することによりグラフトポリマ層を形成することができる。グラフト相形成に使用できるメタアクリルモノマの例として以下のものが挙げられる。メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等のメタアクリル酸エステルなどが挙げられる。
グラフト層を簡便に形成する観点より、アリルメタアクリレートを含むことが好ましい。架橋ポリスチレン粒子に対するメタアクリルポリマ層(A)の量は10〜50質量%が好ましい。
(メタ)アクリルポリマ層(B)は、構造色の応答性の観点よりガラス転移温度が30℃以下となるポリマを形成することが好ましい。例としてアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸オクチル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ヘキサデシル、メタアクリル酸オクタデシル等が挙げられる。
また、架橋ポリスチレンに対して100〜250質量%形成することが好ましい。(B)(メタ)アクリルポリマ層は、弾性粉体の取り扱いの観点から架橋されていることが好ましく、上記架橋剤を使用することができる。また、ポリマ層の形成でも同様にアルキレンジオールジ(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼンを使用することが架橋度を効率よく上げる観点から好ましい。また、得られた構造色可変弾性粉体の粒子を後に集積体とする際に、粒子間の結合強度を向上する目的で架橋剤に対して反応性を有する官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基)を導入する事もできる。
また、架橋ポリスチレンに対して100〜250質量%形成することが好ましい。(B)(メタ)アクリルポリマ層は、弾性粉体の取り扱いの観点から架橋されていることが好ましく、上記架橋剤を使用することができる。また、ポリマ層の形成でも同様にアルキレンジオールジ(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼンを使用することが架橋度を効率よく上げる観点から好ましい。また、得られた構造色可変弾性粉体の粒子を後に集積体とする際に、粒子間の結合強度を向上する目的で架橋剤に対して反応性を有する官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基)を導入する事もできる。
(構造色可変弾性粉体の製造法)
本実施形態の構造色可変弾性粉体の製造法は、特に限定されず、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、マイクロサスペンジョン重合法、ミニエマルション重合法及び分散重合法等公知の方法が使用できる。中でも粒径の制御が容易であり、工業生産にも適する点から、沈殿重合や乳化重合法により製造することが好ましい。
本実施形態の構造色可変弾性粉体の製造法は、特に限定されず、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、マイクロサスペンジョン重合法、ミニエマルション重合法及び分散重合法等公知の方法が使用できる。中でも粒径の制御が容易であり、工業生産にも適する点から、沈殿重合や乳化重合法により製造することが好ましい。
このような重合法における、反応溶液中の重合性モノマの含有量は、全反応溶液中1〜50質量%とすることが好ましく、より好ましくは2〜30質量%、更に好ましくは3〜20質量%である。このような重合法では、反応系中のモノマ量を多くしても粒子の凝集物が極端に増大することはないが、原料モノマの含有量が、50質量%を超えると、粒子を単分散化した状態で高収率で得ることが困難になる。一方、1質量%未満であると、反応が完結するまでに長時間を要し、また工業的観点から、実用的ではない。
重合時の反応温度は、使用する溶媒の種類によっても変わるものであり、一概には規定できないが、通常、10〜200℃程度であり、好ましくは30〜130℃、より好ましくは40〜90℃である。また、反応時間は、目的とする反応がほぼ完結するのに要する時間であれば特に限定されるものではなく、モノマ種及びその配合量、官能基の種類、溶液の粘度、その濃度並びに目的の粒径等に大きく左右されるが、例えば、40〜90℃の場合、1〜72時間、好ましくは2〜24時間程度である。
モノマの重合には、例えば、以下のような開始剤を使用することができる。2´−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミジノプロパン、2,2´−アゾビス[2−(フェニルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−545、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2´−アゾビス{2−[N−(4−クロロフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド(VA−546、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2´−アゾビス{2−[N−(4−ドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド(VA−548、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2´−アゾビス[2−(N−ベンジルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−552、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2´−アゾビス[2−(N−アリルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−553、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(V−50、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2´−アゾビス{2−[N−(4−ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド(VA−558、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−041、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−044、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−054、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−058、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−059、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド(VA−060、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](VA−061、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2´−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン](VA−057、富士フイルム和光純薬株式会社製)、ペルオキソ二硫酸カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)及びペルオキソ二硫酸アンモニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
上記ラジカル重合開始剤の配合量は、通常、重合性モノマ100mol%に対して、0.1〜10mol%であり、好ましくは0.1〜5mol%、更に好ましくは0.1〜2mol%である。高分子分散剤、界面活性剤により官能基を付与しても構わない。
上記ラジカル重合開始剤の配合量は、通常、重合性モノマ100mol%に対して、0.1〜10mol%であり、好ましくは0.1〜5mol%、更に好ましくは0.1〜2mol%である。高分子分散剤、界面活性剤により官能基を付与しても構わない。
構造色可変弾性粉体を製造するためのポリマ粒子の分散性を向上するために乳化剤を併用することができる。本実施形態にて使用できる乳化剤としては、アニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤が挙げられる。
アニオン系乳化剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム及びオレイン酸カリウム等が挙げられるが、特にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好適に用いられる。
ノニオン系乳化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルやポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
アニオン系乳化剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム及びオレイン酸カリウム等が挙げられるが、特にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好適に用いられる。
ノニオン系乳化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルやポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
(構造色可変弾性粉体)
本実施形態の構造色可変弾性粉体は、架橋ポリスチレン粒子の表面に上記(A)層と(B)層を積層した本ポリマ粒子を集積化して粉体化したものであり、その平均粒径は5〜500μmである。製造法の例としては水に分散した本ポリマ粒子を、水が溶けない疎水性溶媒中で加熱しながら攪拌し、水分を蒸発させることにより作製することができる。また、水分を蒸発させる温度は50〜200℃であることが好ましい。また、集積化する際に構造色の色彩を明確にするためにカーボン粒子を一緒に集積化することが好ましい。カーボン粒子の添加量は0.5質量%以下であることが、色彩を明確にするという観点で好ましい。また、集積化する際に(B)(メタ)アクリルポリマ層に架橋剤に対して反応性を有する官能基が含まれている場合、集積化する溶媒中にその官能基と反応性を有する架橋剤を添加することにより、弾性粉体の強度を向上させることもできる。
本実施形態の構造色可変弾性粉体は、架橋ポリスチレン粒子の表面に上記(A)層と(B)層を積層した本ポリマ粒子を集積化して粉体化したものであり、その平均粒径は5〜500μmである。製造法の例としては水に分散した本ポリマ粒子を、水が溶けない疎水性溶媒中で加熱しながら攪拌し、水分を蒸発させることにより作製することができる。また、水分を蒸発させる温度は50〜200℃であることが好ましい。また、集積化する際に構造色の色彩を明確にするためにカーボン粒子を一緒に集積化することが好ましい。カーボン粒子の添加量は0.5質量%以下であることが、色彩を明確にするという観点で好ましい。また、集積化する際に(B)(メタ)アクリルポリマ層に架橋剤に対して反応性を有する官能基が含まれている場合、集積化する溶媒中にその官能基と反応性を有する架橋剤を添加することにより、弾性粉体の強度を向上させることもできる。
以下の実施例は、あくまでも本発明を説明するための一つの具体例であって本発明はこれによって限定されるものではない。
(実施例1)
(架橋ポリスチレン粒子の合成)
スチレン63g、ブタンジオールジアクリレート(BDDA)7g、ドデシル硫酸ナトリウム水溶液(0.3質量%)200gを1Lフラスコに添加後、75℃に昇温した。その後ペルオキソ二硫酸カリウム0.35g添加し、4h重合を続けた。
(実施例1)
(架橋ポリスチレン粒子の合成)
スチレン63g、ブタンジオールジアクリレート(BDDA)7g、ドデシル硫酸ナトリウム水溶液(0.3質量%)200gを1Lフラスコに添加後、75℃に昇温した。その後ペルオキソ二硫酸カリウム0.35g添加し、4h重合を続けた。
((A)メタアクリルポリマ層の形成)
上記の重合後得られた分散液にメタアクリル酸アリル3g、メタアクリル酸メチル27g、0.3質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液40gを添加し、75℃にて4h重合を続け、(A)メタアクリルポリマ層を形成した。
上記の重合後得られた分散液にメタアクリル酸アリル3g、メタアクリル酸メチル27g、0.3質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液40gを添加し、75℃にて4h重合を続け、(A)メタアクリルポリマ層を形成した。
((B)(メタ)アクリルポリマ層の形成)
上記の(A)メタアクリルポリマ層を形成した粒子分散液に、アクリル酸エチル127.4g、ブタンジオールジアクリレート(BDDA)2.6g、0.3質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液140g添加し、75℃で4h重合を続け(B)(メタ)アクリルポリマ層を形成した。
上記の(A)メタアクリルポリマ層を形成した粒子分散液に、アクリル酸エチル127.4g、ブタンジオールジアクリレート(BDDA)2.6g、0.3質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液140g添加し、75℃で4h重合を続け(B)(メタ)アクリルポリマ層を形成した。
(構造色可変弾性粉体の作製)
得られた粒子分散液に水分散カーボン粒子(平均粒径100nm)を粒子に対し0.3質量%混合した液を60℃の500mLのシリコーンオイル中に滴下し、6h攪拌し、粒子分散液の水分を蒸発させた。その後、120℃で追加の加熱を行った。ろ過し、得られた弾性粉体(ポリマ粒子)をヘキサンで洗浄後、乾燥した。粒径は攪拌速度にて調整した。
得られた粒子分散液に水分散カーボン粒子(平均粒径100nm)を粒子に対し0.3質量%混合した液を60℃の500mLのシリコーンオイル中に滴下し、6h攪拌し、粒子分散液の水分を蒸発させた。その後、120℃で追加の加熱を行った。ろ過し、得られた弾性粉体(ポリマ粒子)をヘキサンで洗浄後、乾燥した。粒径は攪拌速度にて調整した。
(反射スペクトル測定)
弾性粉体を、セルに入れ、400〜800nmの範囲で反射スペクトルを測定した。その後、スライドガラスに粉体を挟み、色の変化を確認できるまで圧力を加えた。また、負荷を加えた後の圧縮除去後の弾性粉体の反射スペクトルを再度測定した。
弾性粉体を、セルに入れ、400〜800nmの範囲で反射スペクトルを測定した。その後、スライドガラスに粉体を挟み、色の変化を確認できるまで圧力を加えた。また、負荷を加えた後の圧縮除去後の弾性粉体の反射スペクトルを再度測定した。
(実施例2)
実施例1の架橋ポリスチレン粒子合成、(B)(メタ)アクリルポリマ層の形成においてブタンジオールジアクリレートの代わりにヘキサンジオールジアクリレートを使用した以外は同様にして合成、評価を行った。
実施例1の架橋ポリスチレン粒子合成、(B)(メタ)アクリルポリマ層の形成においてブタンジオールジアクリレートの代わりにヘキサンジオールジアクリレートを使用した以外は同様にして合成、評価を行った。
(実施例3)
実施例1の架橋ポリスチレン粒子合成、(B)(メタ)アクリルポリマ層の形成においてブタンジオールジアクリレートの代わりにジビニルベンゼンを使用した以外は同様にして合成、評価を行った。
実施例1の架橋ポリスチレン粒子合成、(B)(メタ)アクリルポリマ層の形成においてブタンジオールジアクリレートの代わりにジビニルベンゼンを使用した以外は同様にして合成、評価を行った。
(実施例4)
実施例1の弾性粉体の作製時に攪拌速度を高くする以外は同様にして合成、評価を行った。
実施例1の弾性粉体の作製時に攪拌速度を高くする以外は同様にして合成、評価を行った。
(比較例1)
実施例1において(B)(メタ)アクリルポリマ層を形成しなかった以外は同様にして合成し、評価を行った。
実施例1において(B)(メタ)アクリルポリマ層を形成しなかった以外は同様にして合成し、評価を行った。
(比較例2)
実施例1において(A)メタアクリルポリマ層を形成しなかった以外は同様にして合成し、評価を行った。
実施例1において(A)メタアクリルポリマ層を形成しなかった以外は同様にして合成し、評価を行った。
(比較例3)
実施例1の(B)(メタ)アクリルポリマ層形成時にアクリル酸エチルのみを使用した。得られた弾性粉体は凝集物となってしまい同様の測定はできなかった。
実施例1の(B)(メタ)アクリルポリマ層形成時にアクリル酸エチルのみを使用した。得られた弾性粉体は凝集物となってしまい同様の測定はできなかった。
実施例1〜4、比較例1〜3で用いた架橋ポリスチレン粒子の組成と平均粒径、(A)メタアクリルポリマ層と(B)(メタ)アクリルポリマ層の組成及び弾性粉体の平均粒径をまとめて表1に示した。
表1中の用いたモノマ(単量体)の記号は、以下のとおりである。
BDDA:ブタンジオールジアクリレート
ST:スチレン
PAM:メタアクリル酸アリル
MMA:メタアクリル酸メチル
PEA:アクリル酸エチル
HDDA:ヘキサンジオールジアクリレート
DVB:ジビニルベンゼン
BDDA:ブタンジオールジアクリレート
ST:スチレン
PAM:メタアクリル酸アリル
MMA:メタアクリル酸メチル
PEA:アクリル酸エチル
HDDA:ヘキサンジオールジアクリレート
DVB:ジビニルベンゼン
表2に、実施例1〜4、比較例1〜3で用いたカーボン粒子の添加量、圧縮前の反射ピーク波長と、圧縮時の色変化の有無と、圧縮除荷後の反射ピーク波長をまとめて示した。
上記の結果から本発明の弾性粉体は、加圧により色変化を生じることから圧力により良好に構造色が変化し、除圧することで加圧前の色を呈することが分かった。
Claims (8)
- 架橋ポリスチレン粒子の表面の少なくとも一部に(A)メタアクリルポリマ層を有し、更に、前記(A)表面の少なくとも一部に前記(A)とは異なる(B)(メタ)アクリルポリマ層とが設けられた粉体であり、ブラッグ反射領域を有し、圧力によりブラッグ反射領域が変化する平均粒径が5〜500μmである構造色可変弾性粉体。
- 構造色可変弾性粉体が、圧力によりブラッグ反射領域が変化した後、圧力を除荷することにより、圧力負荷前の元の色に戻る請求項1に記載の構造色可変弾性粉体。
- 架橋ポリスチレン粒子が、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼンを含む架橋ポリスチレンである請求項1又は請求項2に記載の構造色可変弾性粉体。
- 前記(B)(メタ)アクリルポリマ層のTgが、30℃以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体。
- 前記(A)メタアクリルポリマ層が、アリルメタアクリレートを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体。
- 前記(B)(メタ)アクリルポリマが、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼンを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体。
- 前記架橋ポリスチレン粒子の平均粒径が、150〜750nmである請求項1〜6のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体。
- 構造色可変弾性粉体中に更に、カーボン粒子を含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の構造色可変弾性粉体。
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JP2018227211A JP2020090578A (ja) | 2018-12-04 | 2018-12-04 | 構造色可変弾性粉体 |
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JP7472755B2 (ja) | 2020-10-27 | 2024-04-23 | artience株式会社 | 積層体 |
-
2018
- 2018-12-04 JP JP2018227211A patent/JP2020090578A/ja active Pending
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