JP2020090447A - 口腔用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】露出した象牙質の表面における象牙質細管の開口部を即効的かつ十分に封鎖して、象牙質知覚過敏症に起因する痛みを効果的に防止することのできる象牙質知覚過敏用の口腔用組成物に関する。【解決手段】次の成分(A)並びに(B):(A)炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はそのアルカリ金属塩 0.01質量%以上1質量%以下(B)カリウム化合物を含有し、かつ25℃におけるpHが6.1以上9.3以下である象牙質知覚過敏用口腔用組成物。【選択図】図2

Description

本発明は、口腔用組成物に関する。
歯面に機械的、温度的或いは化学的刺激が与えられた際に疼痛が誘発される象牙質知覚過敏症は、歯周炎の進行や加齢、強い歯磨処理等によって、歯肉の退縮や歯牙のエナメル質の損傷が生じ、これらに被覆されていた歯牙の象牙質が露出することが要因となる疾患として知られる。従来より、こうした象牙質知覚過敏症の予防又は治療を可能とし得る口腔用組成物の実現が望まれており、種々の開発がなされている。
例えば、特許文献1には、特定の炭化水素基を有する脂肪酸又はそのアルカリ金属塩、硝酸カリウム等の脱感作剤及び水を含有し、かつ特定のpH領域下とする象牙質知覚過敏用口腔用組成物が開示されており、生成される脂肪酸カリウム塩によって象牙質細管の開口部を封鎖する効果が発揮されている。
一方、アニオン界面活性剤の一種であるN−アシルアミノ酸又はその塩は、洗浄作用に加え、良好な泡立ちや使用感をもたらすことで知られており、種々の口腔用組成物に用いられている。例えば、特許文献2には、N−アシルアミノ酸又はその塩等のアミノ酸系界面活性剤を配合した口腔用組成物が開示されており、歯牙を損傷することのないステイン形成の阻害を試みている。また、特許文献3では、知覚過敏症状を抑制する有効成分としての硝酸カリウムと、アミノ酸系アニオン性界面活性剤と、ノニオン性界面活性剤及びイソプロピルメチルフェノールを併用した口腔用組成物が開示されており、良好な泡立ちを確保しつつ、知覚過敏抑制効果と口腔バイオフィルム殺菌効果の向上を図っている。
特開2015−124216号公報 特開平10−17444号公報 特開2016−222579号公報
しかしながら、象牙質細管の開口部を封鎖することによって、象牙質知覚過敏症による痛みを効果的に防止しようとするにあたり、上記特許文献1に記載のような生成される脂肪酸カリウム塩の生成に依存する技術以外の、新たな技術の出現も大いに望まれるところである。
こうしたなか、N−アシルアミノ酸又はその塩を用いる技術としては、上記特許文献2のように、ステイン形成を阻害する効果を発揮するに留まり、或いは上記特許文献3に記載の技術であっても、カリウムイオンの溶出により知覚神経周辺のイオンバランスを変化させて神経を鈍感にさせるものであり、実際のところカリウムイオンの溶出性と舌への刺激性を評価するに留まり、依然として充分に象牙質知覚過敏症による痛みを低減できないおそれがある。
すなわち、本発明は、露出した象牙質の表面における象牙質細管の開口部を即効的かつ十分に封鎖して、象牙質知覚過敏症に起因する痛みを効果的に防止することのできる象牙質知覚過敏用の口腔用組成物に関する。
そこで本発明者は、種々検討したところ、特定の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はその塩を特定量含有しつつ、さらにカリウム化合物を含有し、かつ特定のpH領域とすることで、予想外にもN−アシルアミノ酸又はその塩が、露出した象牙質の表面における象牙質細管の開口部の効率的かつ効果的な封鎖に大いに寄与し、象牙質知覚過敏症に起因する痛みを迅速に防止することができる象牙質知覚過敏用口腔用組成物が得られることを見出した。
したがって、本発明は、次の成分(A)並びに(B):
(A)炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はそのアルカリ金属塩 0.01質量%以上1質量%以下
(B)カリウム化合物
を含有し、かつ25℃におけるpHが6.1以上9.3以下である象牙質知覚過敏用口腔用組成物を提供するものである。
本発明の口腔用組成物によれば、露出した象牙質の表面における象牙質細管の開口部を効率的かつ効果的に封鎖するため、象牙質知覚過敏症に起因する痛みを迅速に防止することができる。すなわち、象牙質知覚過敏症に起因する痛み抑制効果に優れる口腔用組成物として、有用性の高い組成物である。
図1は、実施例2の口腔用組成物を用いた際における、象牙質の表面の電子顕微鏡写真である。 図2は、実施例7の口腔用組成物を用いた際における、象牙質の表面の電子顕微鏡写真である。 図3は、実施例8の口腔用組成物を用いた際における、象牙質の表面の電子顕微鏡写真である。 図4は、比較例1の口腔用組成物を用いた際における、象牙質の表面の電子顕微鏡写真である。 図5は、比較例3の口腔用組成物を用いた際における、象牙質の表面の電子顕微鏡写真である。 図6は、実施例11の口腔用組成物を用いた際における、象牙質の表面の電子顕微鏡写真である。
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において、「象牙質細管」は「象牙細管」ともいう。また、「象牙細管を封鎖する」とは、象牙細管を物理的に封鎖することであって、象牙質の表面において象牙細管の開口を覆う状態だけでなく、象牙細管の表面近傍の細管内に充填して蓋をする(栓をする)状態をも含む意味である。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、成分(A)として、炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はそのアルカリ金属塩を0.01〜1質量%含有する。かかる成分(A)を含有することにより、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物を口腔内に適用した際、後述する成分(B)からのカリウムイオンとともに炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸カリウム塩を速やかに形成することにより、かかる塩を口腔内の隅々まで充分に行き渡らせて、所望の象牙質の表面まで容易に到達させることができる。さらに、かかる塩が象牙質の表面に到達した際には、かかるN−アシルアミノ酸のカリウム塩からN−アシルアミノ酸のカルシウム塩への置換が迅速に進み、炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸のカルシウム塩による析出物が象牙質の表面にて堅固に固着するため、効果的かつ極めて迅速に象牙細管を封鎖することができる。
成分(A)における炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸のアミノ酸部分としては、グルタミン酸、グリシン及びアラニンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、より効果的かつ迅速に象牙細管を封鎖する観点から、グルタミン酸及びグリシンから選ばれる1種又は2種がより好ましく、グリシンがさらに好ましい。また、これらのアミノ酸部分はD体、L体或いはD体とL体の混合物のいずれであってもよく、L体であるのが好ましい。
成分(A)におけるN−アシルアミノ酸のアシル基は、優れた象牙細管の開口部封鎖効果を発揮する観点、及びかかる効果を短時間のうちに十分に発揮させる観点から、炭素数14〜18の炭化水素基を有する。かかる炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はそのアルカリ金属塩としては、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸又はそれらの混合脂肪酸を由来としたものが好ましく、炭素数14〜16の炭化水素基を有するものがさらに好ましい。すなわち、かかる炭素数の炭化水素基を有するアシル基としては、上記炭素数の炭化水素基が複数種混在していてもよいが、優れた象牙細管の開口部封鎖効果を発揮する観点、及びかかる効果を短時間のうちに十分に発揮させる観点から、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ミリストイル基がさらに好ましい。
一方、炭素数12の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はそのアルカリ金属塩については、カリウム塩を良好に形成させる観点から、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中における含有量は少ない方がよく、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.08質量%以下であり、より好ましくは0.03質量%以下であり、さらに好ましくは炭素数12の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はそのアルカリ金属塩を含まないのがよい。
また、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中における炭素数12の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はアルカリ金属塩の含有量と、炭素数12〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はアルカリ金属塩の含有量との質量比(C12/(C12〜C18))は、効果的かつ迅速な象牙細管封鎖効果を発揮させる観点から、好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.8以下であり、さらに好ましくは0.7以下であり、0が好ましい。
成分(A)におけるアルカリ金属塩の塩としては、ナトリウム、カリウムが挙げられ、カリウムが好ましい。
成分(A)の含有量は、後述する成分(B)からのカリウムイオンとともに速やかに本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中で安定に溶解するN−アシルアミノ酸カリウム塩を形成し、かかる塩が象牙質の表面に作用することよって効果的かつ効率的に象牙細管を封鎖する観点から、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に0.01質量%以上であって、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.15質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、良好な風味を確保する観点から、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に1質量%以下であって、より好ましくは0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.6質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に0.01質量%以上1質量%以下であって、好ましくは0.05〜0.8質量%であり、より好ましくは0.1〜0.6質量%であり、さらに好ましくは0.15〜0.3質量%である。
なお、ココイル基のように、上記炭素数の炭化水素基が複数種混在しつつ、上記炭素数以外の炭素数の炭化水素基を含み得るアシル基を有するN−アシルアミノ酸又はそのアルカリ金属塩を本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物に用いる場合、そのうちの上記炭素数の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はそのアルカリ金属塩の含有量が、上記成分(A)の含有量となるように用いればよい。
成分(A)における炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸のアミノ酸部分がグリシンの場合、成分(A)の含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に0.01質量%以上であって、好ましくは0.02質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上%以上であり、1質量%以下であって、より好ましくは0.6質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
成分(A)における炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸のアミノ酸部分がグルタミン酸の場合、成分(A)の含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に0.01質量%以上であって、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、1質量%以下であって、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.6質量%以下である。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、成分(B)として、カリウム化合物を含有する。これにより、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の特定のpH領域への調整を可能にしつつ、組成物を口腔内に適用後、上記成分(A)とともに迅速に組成物中で安定に溶解するカリウム塩を形成し、かかる塩が象牙質の表面に作用することよって効果的かつ効率的に象牙細管を封鎖することができる。かかる成分(B)としては、上記成分(A)と相まった象牙細管の封鎖効果を高め、象牙質知覚過敏症に起因する痛み抑制効果の向上を図る観点から、具体的には、水酸化カリウム、硝酸カリウム、クエン酸三カリウム及び酢酸カリウムから選ばれる1種又は2種以上のカリウム化合物が好ましく、水酸化カリウム及び硝酸カリウムから選ばれる1種又は2種がさらに好ましく、これらを組み合わせて用いるのがより好ましい。
成分(B)の含有量は、成分(A)とともに迅速に組成物中で安定に溶解するカリウム塩を形成する観点から、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の特定のpH領域への調整を容易にする観点から、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下であり、ことさらに好ましくは0.5質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に、好ましくは0.001質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.01〜8質量%であり、さらに好ましくは0.05〜7質量%であり、ことさらに好ましくは0.05〜0.5質量%以下である。
成分(B)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((B)/(A))は、特定のpH領域への調整を可能としつつ、迅速な象牙細管の封鎖効果を実現する観点から、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.028以上であり、より好ましくは0.04以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上であり、好ましくは50以下であり、より好ましくは40以下であり、さらに好ましくは30以下であり、さらに好ましくは1.8以下であり、さらに好ましくは1.5以下である。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、成分(C)として、さらに水を含有することができる。これにより、成分(B)からのカリウムイオンを組成物中に存在させるとともに、成分(A)と成分(B)による安定溶解な炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸カリウム塩を存在させ、口腔内の隅々まで充分に行き渡らせながら有効に象牙細管を封鎖することが可能となる。
成分(C)の含有量は、成分(A)と成分(B)により安定溶解な炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸カリウム塩を効率的に形成させる観点、及び象牙細管の封鎖効果を向上する観点、適度なpHや良好な風味及び使用感並びに口腔内での組成物の分散性を保持する観点から、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が練り歯磨き組成物である場合、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に、好ましくは8質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、練り歯磨き組成物の保形性の観点から、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。
また、成分(C)の含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が液体歯磨き組成物である場合、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、成分(A)及び成分(B)とも相まって、象牙細管の封鎖効果をより増強させ、かつ迅速化させる観点から、さらに炭素数12〜18の炭化水素基を有する脂肪酸又はそのアルカリ金属塩(D)を含有することができる。成分(D)が有する炭化水素基の炭素数は、象牙細管の封鎖効果の増強及び迅速化とともに、良好な溶解性を保持する観点から、12〜18であって、好ましくは12〜16であり、さらに好ましくは14〜16である。
また、成分(D)が有する炭化水素基は、好ましくは飽和炭化水素基であり、より好ましくは直鎖飽和炭化水素基である。かかる炭化水素基としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、及びパルミチン酸から選ばれる1種又は2種以上であり、さらに好ましくはミリスチン酸、及びパルミチン酸から選ばれる1種又は2種である。成分(D)のアルカリ金属塩としては、カリウム塩が好ましい。
なお、成分(D)としては、例えば、ルナックP95(パルミチン酸96質量%、花王株式会社)等の、上記炭素数の炭化水素基を有する脂肪酸又はその塩を一部に含む混合物を用いてもよい。
成分(D)の含有量は、象牙細管の封鎖効果をより増強させ、かつ迅速に封鎖させる観点、及び良好な風味を保持する観点から、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に脂肪酸換算量で、好ましくは0.08質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.4質量%以上であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.8質量%以下である。
成分(D)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((D)/(A))は、良好な風味を保持しつつ、有効に象牙細管の封鎖効果の増強及び迅速化を図る観点から、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは1以上であり、さらに好ましくは2以上であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下である。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が練り歯磨き組成物である場合は、研磨剤を10質量%以下含有することができ、或いは研磨剤を含有しない。かかる研磨剤としては、研磨性シリカ、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酢酸マグネシウム、第2リン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト等の研磨剤等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、組成物のpHの過度な上昇を抑制する観点から、少なくとも研磨性シリカを含む研磨剤が好ましく、研磨性シリカのみからなる研磨剤がより好ましい。
なお、ここで研磨性シリカとは、吸油量が50〜150mL/100gのものをいい、吸油量はシリカが担持できる油量を示したものであり、測定方法はJIS K5101−13−2(2004年制定)により、吸収される煮あまに油の量により特定する。
研磨剤の含有量は、象牙細管の封鎖効果の観点、知覚過敏の使用者の本発明の組成物によるさらなる知覚過敏の進行を抑制する観点から、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは6質量%以下であり、好ましくは4質量%以下であり、象牙細管の封鎖効果と研磨性とを両立する観点から、好ましくは0質量%より多く、より好ましくは2質量%以上である。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、さらに湿潤剤を含有することができる。かかる湿潤剤としては、ソルビトール、プロピレングリコール、エリスリトール、グリセリン、ポリエチレングリコール、キシリトール、マルチトール、及びラクトール等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、ソルビトール、プロピレングリコール、及びエリスリトールから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。湿潤剤の合計含有量は、迅速かつ優れた象牙細管の封鎖効果を発揮しつつ、組成物の良好な保存安定性や風味を確保する観点から、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、さらに粘結剤を含有することができる。かかる粘結剤としては、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、及びグアーガム等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、カルボキシメチルセルロースナトリウムがとりわけ好ましい。
かかる粘結剤の含有量は、迅速かつ優れた象牙細管の封鎖効果を発揮する観点から、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.4質量%以上であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.8質量%以下である。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が練り歯磨き組成物である場合は、上記粘結剤とともに、さらに増粘性シリカを併用することが好ましい。増粘性シリカとは、吸油量が200〜400mL/100gのシリカである。ここで、吸油量とは、シリカが担持できる油量を示したものであり、測定方法はJIS K5101−13−2(2004年制定)により、吸収される煮あまに油の量により特定する。増粘性シリカの含有量は、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物中に、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは2〜8質量%である。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物は、上記成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、ラウリル硫酸ナトリウムやラウロイルメチルタウリンナトリウム等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤等の界面活性剤;サッカリンナトリウム等の甘味剤;香料;薬効成分等を適宜含有することができる。
またさらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、象牙質知覚過敏用の他の成分を含有することもできる。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の25℃におけるpHは、成分(A)と成分(B)による微細な粒子状の塩の形成を促進する観点から、6.1以上であって、好ましくは6.5以上であり、より好ましくは7以上であり、良好な風味を保持しつつ口腔内の粘膜への為害性の低減させる観点、及び組成物の変色や香料の変調を防止する観点から、9.3以下であって、好ましくは9以下であり、より好ましくは8.8以下であり、さらに好ましくは8.5以下である。
なお、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物のpHは、pH電極を用いて25℃で測定した値であり、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が液体歯磨き組成物である場合には、組成物を希釈せずにそのまま測定した値を意味し、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物が練り歯磨き組成物である場合には、イオン交換水又は蒸留水からなる精製水により10質量%の濃度の水溶液に調整した後に測定した値を意味する。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物であれば、迅速に象牙細管を封鎖することができ、5分、好ましくは1分の適用時間で効果を十分に得ることができる。
本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法は、特に制限されず、情報により上記成分を適宜混合すればよい。
ただし、成分(D)を用いる場合には、成分(B)、成分(D)、及び少なくとも成分(C)の一部を含み、25℃におけるpHが9以上の混合物を得て加熱する工程(I)、並びに得られた混合物に成分(A)を混合する工程(II)を備えるのが好ましい。工程(I)における混合物の加熱温度は、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは55℃以上であり、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは80℃以下である。
この工程(II)において、工程(I)で得られた混合物に他の水溶性成分を混合することもできる。かかる他の水溶性成分としては、例えば、フッ素イオン供給化合物、サッカリンナトリウム等の水溶性成分が挙げられる。また、粘結剤を添加し、混合することもできる。
また、本発明の象牙質知覚過敏用口腔用組成物の製造方法は、工程(II)を経た後、さらに工程(II)で得られた混合物に界面活性剤及び研磨剤等の粉体を添加する工程(III)を備えるのが好ましい。この工程(II)又は工程(III)において、成分(C)の残部を添加して混合してもよい。
さらに、工程(III)を経た後、15〜30℃の室温において、工程(III)で得られた混合物に香料を添加し、混合する工程(IV)を含んでもよい。
また、本発明は、次の成分(A)並びに(B):
(A)炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はそのアルカリ金属塩 0.01質量%以上1質量%以下
(B)カリウム化合物
を含有し、かつ25℃におけるpHが6.1以上9.3以下である口腔用組成物を口腔内に適用する、象牙質細管の封鎖方法を提供する。
本発明の象牙質細管の封鎖方法であれば、象牙質細管の封鎖効果の増強及び迅速化を図ることが可能である。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
[実施例1〜10、比較例1〜4]
表1に示す実施例1〜9、表2に示す比較例1〜4の液体歯磨き組成物について、常法により各成分を混合することにより製造した。なお、表1に示す実施例10は、各成分を常法にしたがって混合した後、約60℃に加熱して成分(D)が溶解することを確認することにより製造した。
得られた各組成物と下記象牙質サンプルを用い、以下に示す方法により、象牙細管の開口部封鎖状態の評価を行った。
評価結果を表1〜2に示す。
《象牙質サンプルの作製》
牛歯の象牙質の約1cm各切片(厚さ約500μm)の表面を砥粒サイズ40μmのサンドペーパー、及び砥粒サイズ3μmのサンドペーパーを用いて鏡面研磨した後、10分間超音波処理を施した。次いで、1%クエン酸水溶液にて20秒間エッチング処理を施し、再度10分間超音波処理を施すことによりスメア層を完全に除去して、牛歯の象牙質の象牙細管の開口部を露出させた。
《象牙細管の開口部封鎖状態の評価》
得られた象牙質サンプルを各組成物10mLに1分間又は5分間浸漬した後、かかるサンプルを蒸留水で10秒間洗浄した。洗浄後、充分に乾燥させたサンプルの表面に白金蒸着させて、表面における象牙細管の開口部を、電子顕微鏡(VE−7800、KEYENCE社製、加速電圧2kV)を用いて倍率2000倍で観察し、最表面の象牙細管の開口状態を観察し、下記の基準により評価した。
AA:象牙細管の開口が充分に覆われている
A :象牙細管の開口がほぼ覆われている
B :象牙細管の開口が覆われている部分と、象牙質が露出している部分とを確認できる
C :象牙質の表面に付着物を確認できるが、象牙質がほぼ露出している
D :象牙細管が露出している(象牙質の表面に付着物を確認できない)
なお、実施例2、実施例7〜8、比較例1及び比較例3における象牙質の表面の電子顕微鏡写真を各々図1〜5に示す。
上記結果より、例えば図4に示す象牙細管が全て露出して象牙質の表面にも細管内にも付着物を確認できない比較例1、並びに図5に示す、比較例1よりは若干象牙質細管内に付着物を僅かに確認できるものの象牙細管が未だ露出している比較例3に比して、実施例1〜10では象牙細管の開口部が微細な形成物により封鎖され、良好に覆われていることがわかる。
また、最近1か月の間で歯がしみるのが毎日である者、又は週に2,3回である者をパネラーとして、3名のパネラーに実施例2及び4の液体歯磨き組成物を30秒間含漱させ、その後冷水を口に含み、象牙質知覚過敏症に起因する痛みの評価を行った。その結果、知覚過敏官能評価は実施例2が平均3(ほとんどしみない)、実施例4が平均3.7
(4が全くしみない)であった。
4 :全くしみない
3 :ほとんどしみない
2 :少々しみる
1 :しみる
[実施例11〜12]
表3に示す実施例11〜12の練り歯磨き組成物について、上記記載の工程(I)〜(IV)を経ることにより製造した。
得られた象牙質サンプルを各練り歯磨き組成物2gと蒸留水6gを混合した溶液8gに1分間又は5分間浸漬した以外は、実施例1と同様にして象牙細管の開口部封鎖状態の評価を行った。
評価結果を表3に示す。なお、実施例11における象牙質の表面の電子顕微鏡写真を図6に示す。

Claims (10)

  1. 次の成分(A)並びに(B):
    (A)炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はそのアルカリ金属塩 0.01質量%以上1質量%以下
    (B)カリウム化合物
    を含有し、かつ25℃におけるpHが6.1以上9.3以下である象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
  2. 炭素数12の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はアルカリ金属塩の含有量と、炭素数12〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はアルカリ金属塩の含有量との質量比(C12/(C12〜C18))が、0.9以下である請求項1に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
  3. 炭素数12の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はそのアルカリ金属の含有量が、0.1質量%以下である請求項1又は2に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
  4. 成分(A)におけるN−アシルアミノ酸のアミノ酸部分が、グルタミン酸、グリシン及びアラニンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
  5. 成分(B)の含有量が、0.001質量%以上10質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
  6. 成分(B)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((B)/(A))が、0.01以上50以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
  7. さらに、水(C)を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
  8. さらに、炭素数12〜18の炭化水素基を有する脂肪酸又はそのアルカリ金属塩(D)を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
  9. 成分(D)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((D)/(A))が、0.5以上10以下である請求項8に記載の象牙質知覚過敏用口腔用組成物。
  10. 次の成分(A)並びに(B):
    (A)炭素数14〜18の炭化水素基を有するN−アシルアミノ酸又はそのアルカリ金属塩 0.01質量%以上1質量%以下
    (B)カリウム化合物
    を含有し、かつ25℃におけるpHが6.1以上9.3以下である口腔用組成物を口腔内に適用する、象牙質細管の封鎖方法。
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