JP2020090174A - 車両の走行制御方法及び走行制御装置 - Google Patents

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恭平 坂上
Kyohei Sakagami
恭平 坂上
和典 宮田
Kazunori Miyata
和典 宮田
祐樹 岡田
Yuki Okada
祐樹 岡田
清志 若松
Kiyoshi Wakamatsu
清志 若松
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Abstract

【課題】主駆動輪のタイヤの弾性滑り限界を正確に予測して直進時における動力伝達効率の急激な低下や挙動の不安定化を防止し、且つ、旋回時における実走行軌道の目標走行軌道に対する追従性を向上させる。【解決手段】駆動源(E)からの動力が伝達される主駆動輪(Wf,Wf)と副駆動輪(Wr,Wr)とを備え、主駆動輪(Wf,Wf)のみに動力を伝達する駆動状態と主駆動輪(Wf,Wf)及び副駆動輪(Wr,Wr)に動力を伝達する駆動状態とが可能な車両(1)の走行制御方法であって、走行中の車両(1)の主駆動輪(Wf)のタイヤ(T)が弾性滑り限界を超えるまでは主駆動輪(Wf,Wf)のみに動力を伝達する駆動状態とし、走行中の車両(1)の主駆動輪(Wf)のタイヤ(T)が弾性滑り限界を超えると、主駆動輪(Wf,Wf)及び副駆動輪(Wr,Wr)に動力を伝達する駆動状態とする制御を行う。【選択図】図13

Description

本発明は、駆動源からの駆動力が伝達される主駆動輪と副駆動輪とを備え、主駆動輪のみに駆動力を伝達する駆動状態と主駆動輪及び副駆動輪に駆動力を伝達する駆動状態とが可能な車両の走行制御方法及び走行制御装置に関する。
例えば、特許文献1には、自動二輪車などの車両の駆動輪が最適なトラクションを発生するように、エンジンなどの駆動源の出力を制御して駆動輪のスリップを基準スリップに追従させるようにした車両のトラクション制御装置が提案されている。
特許第5945571号公報
しかしながら、従来の車両のトラクション制御においては、駆動輪のスリップ限界を正確に予測することは困難であった。また、基準スリップについては、算出の細分化が進んでいるものの、キャリブレーションデータの範疇であるため、駆動輪のタイヤの個体差や経年変化、路面状況の変化などに対応し切れず、予期せぬ状況下において制御の安全性を保障するためには、基準スリップに予め誤差を見込んだ一種の安全率を設ける必要があった。
したがって、駆動輪のタイヤの弾性滑り限界(グリップ限界)を正確に予測することができれば、トラクション制御における目標スリップを容易かつ的確に設定して精度の高いトラクション制御が可能となる。
ところで、四輪自動車などの車両には、駆動方式として主駆動輪のみに駆動力を伝達する二輪駆動(2WD)と、主駆動輪及び副駆動輪に駆動力を伝達する四輪駆動(4WD)とを選択して走行することができるものがあり、このような車両において、主駆動輪のタイヤの弾性滑り限界(グリップ限界)が正確に予測できなかったため、当該主駆動輪のタイヤが弾性滑り限界を超えても主駆動輪のみに駆動力が伝達される二輪駆動(2WD)状態で直進走行する場合には、車両の動力伝達効率の急激な低下や挙動の不安定化を招くおそれがあるという問題が発生する。
また、主駆動輪のタイヤが弾性滑り限界を超えた状態でステアリング操作によって旋回した場合には、主駆動輪がスリップするために、実走行軌道が目標走行軌道に対して大きく逸脱するおそれがあるという問題もある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、主駆動輪のタイヤの弾性滑り限界を正確に予測して直進時における動力伝達効率の急激な低下や挙動の不安定化を防止し、且つ、旋回時における実走行軌道の目標走行軌道に対する追従性を向上させることができる車両の走行制御方法及び走行制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、駆動源(E)からの動力が伝達される主駆動輪(Wf,Wf)と副駆動輪(Wr,Wr)とを備え、前記主駆動輪(Wf,Wf)のみに動力を伝達する駆動状態と前記主駆動輪(Wf,Wf)及び前記副駆動輪(Wr,Wr)に動力を伝達する駆動状態とが可能な車両(1)の走行制御方法であって、走行中の車両(1)の前記主駆動輪(Wf)のタイヤ(T)が弾性滑り限界を超えるまでは前記主駆動輪(Wf,Wf)のみに動力を伝達する駆動状態とし、走行中の車両(1)の前記主駆動輪(Wf)のタイヤ(T)が弾性滑り限界を超えると、前記主駆動輪(Wf,Wf)及び前記副駆動輪(Wr,Wr)に動力を伝達する駆動状態とする動力伝達切替制御を行うことを特徴とする。
また、上記動力伝達切替制御において、前記主駆動輪(Wf,Wf)及び前記副駆動輪(Wr,Wr)に動力を伝達する駆動状態は、前記主駆動輪(Wf)のタイヤ(T)が弾性滑り限界を超える分の動力を前記副駆動輪(Wr,Wr)に配分することで行われるようにしてもよい。すなわち、主駆動輪(Wf)のタイヤ(T)が弾性滑り限界を超えない分の動力は主駆動輪に配分し、残りの弾性滑り限界を超える分の動力のみを副駆動輪に配分することで行うようにすることができる。
ここで、前記車両(1)は、駆動源(E)からの動力を前記主駆動輪(Wf)に伝達する動力伝達手段(Df)を備えており、前記動力伝達手段(Df)の回転変動と前記主駆動輪(Wf)のホイール(W)の回転変動を検出し、
〔1〕前記動力伝達手段(Df)の回転変動振幅に対する前記ホイール(W)の回転変動振幅の比率(m)が急激に増加すること、
〔2〕前記動力伝達手段(Df)の回転変動に対する前記ホイール(W)の回転変動の位相遅れ(Ψ)が90degに接近すること、
の少なくとも一方をもって前記タイヤ(T)が前記弾性滑り限界を超えたと判定するようにしてもよい。
より詳細には、前記動力伝達手段(Df)の回転変動振幅に対する前記ホイール(W)の回転変動振幅の比率(m)と、前記動力伝達手段(Df)の回転変動に対する前記ホイール(W)の回転変動の位相遅れ(Ψ)とから前記タイヤ(T)の滑り状態の指標である滑り識別量(ζ)を算出し、該滑り識別量(ζ)に対する前記タイヤ(T)の弾性滑り限界の基準値(ζ)の比率である滑り状態識別子(IDslip)=1をもって前記タイヤ(T)の弾性滑り限界とするようにしてもよい。
また、本発明にかかる車両の走行制御装置は、駆動源(E)からの動力を主駆動輪(Wf)と副駆動輪(Wr)とに伝達する動力伝達手段(Df)と、前記動力伝達手段(Df)における前記駆動源(E)から前記主駆動輪(Wf)及び前記副駆動輪(Wr)への動力伝達の配分を制御することで、前記主駆動輪(Wf,Wf)のみに動力を伝達する駆動状態と前記主駆動輪(Wf,Wf)及び前記副駆動輪(Wr,Wr)に動力を伝達する駆動状態とが可能な動力配分手段(C)と、前記主駆動輪(Wf)のタイヤ(T)が弾性滑り限界を超えるか否かを判断する弾性滑り限界判断手段と、前記弾性滑り限界判断手段の判断に基づいて前記動力配分手段(C)を制御する制御手段(100)と、を備え、前記制御手段(100)は、走行中の車両(1)の前記主駆動輪(Wf)のタイヤ(T)が弾性滑り限界を超えるまでは前記主駆動輪(Wf,Wf)のみに動力を伝達する駆動状態とし、走行中の車両(1)の前記主駆動輪(Wf)のタイヤ(T)が弾性滑り限界を超えると、前記主駆動輪(Wf,Wf)及び前記副駆動輪(Wr,Wr)に動力を伝達する駆動状態とする動力伝達切替制御を行うことを特徴とする。
また、上記走行制御装置において、前記主駆動輪(Wf,Wf)及び前記副駆動輪(Wr,Wr)に動力を伝達する駆動状態は、前記主駆動輪(Wf)のタイヤ(T)が弾性滑り限界を超える分の動力を前記副駆動輪(Wr,Wr)に配分することで行われるようにすることができる。
また、この車両の走行制御装置では、前記制御手段(100)は、前記車両(1)の少なくとも加減速を自動的に制御する自動運転制御を行う自動運転制御部(110)を有し、前記制御手段(100)による前記動力伝達切替制御は、前記自動運転制御部(110)による前記自動運転制御の実施中に行われるようにしてもよい。
本発明によれば、車両の主駆動輪のタイヤの弾性滑り限界を正確に予測し、主駆動輪が弾性滑り限界に達する前に主駆動輪のみに動力を伝達する駆動状態から主駆動輪及び副駆動輪に動力を伝達する駆動状態に切り替えるようにしたため、車両の直進走行時における動力伝達効率の急激な低下や挙動の不安定化を防ぐことができ、また、車両の旋回時における実走行軌道の目標走行軌道に対する追従性を向上させることができる。
本発明に係る走行制御方法が実施される車両の基本構成を模式的に示す平面図である。 車両の制御装置のシステム構成を示すブロック図である。 モデル化した車輪を示す図である。 タイヤの転動に伴う弾性滑りを説明する図である。 タイヤの静ねじり特性を示す図である。 駆動トルクとタイヤの滑り率との関係を示す図である。 弾性滑りと移動滑りにおける駆動トルクとタイヤの滑り率との関係を示す図である。 タイヤと路面間の摩擦係数とタイヤの滑り率との関係を示す図である。 駆動輪の力学モデルを示す図である。 差動装置と駆動輪間の回転変動伝達特性を示す図である。 タイヤの滑り状態と振動モードとの関係を示す図である。 弾性滑りモードと移動滑りモードの根軌跡を示す図である。 本発明に係る車両の走行制御手順を示すフローチャートである。 直進走行する車両の駆動トルクに対する滑り状態識別子と効率の変化を示す図である。 旋回走行する車両の前輪の操舵角に対する滑り状態識別子とスリップ角との関係を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[車両の基本構成]
先ず、本発明に係る走行制御方法が実施される車両の基本構成を図1に基づいて以下に説明する。
すなわち、図1は車両の基本構成を模式的に示す平面図であり、図示の車両1は、自動運転が可能なフロントエンジン・フロントドライブ(エンジン前置き・前輪駆動)方式(FF方式)を採用するものである。この車両1は、駆動方式として、主駆動輪である前輪のみに動力を伝達する二輪駆動(2WD)と、主駆動輪である前輪及び副駆動輪である後輪に動力を伝達する四輪駆動(4WD)とを選択することができるものであって、その前部には駆動源であるエンジンEが配置されている。
上記エンジンEの横にはトランスミッションMが一体的に設置されており、エンジンEの不図示の出力軸は、トランスミッションMと、動力伝達手段である前側の差動装置Dfおよび左右の前車軸Sfを経て主駆動輪(あるいは本発明の駆動輪)としての左右の前輪Wfに連結されている。また、エンジンEの出力軸は、トランスミッションMと、差動装置Dfと、プロペラシャフトPSと、クラッチC、後側の差動装置Drおよび左右の後車軸Srを経て副駆動輪としての左右の後輪Wrに連結されている。
上記クラッチCは、プロペラシャフトPSから差動装置Drへの駆動力伝達経路を断接するための前後トルク配分用クラッチであって、このクラッチCには、不図示の油圧回路から当該クラッチCへと供給される油圧を制御するための制御装置100が接続されている。
上記制御装置100は、クラッチCへの供給油圧を制御することによって、該クラッチCで左右の後輪Wrに配分する駆動力を制御する。すなわち、クラッチCが切断(OFF)されているときには、プロペラシャフトPSの回転が差動装置Dr側に伝達されず、エンジンEのトルクの全てが左右の前輪Wfに伝達されることによって、車両1の駆動方式として前輪駆動(2WD)が選択される。これに対して、クラッチCが接続(ON)されているときには、プロペラシャフトPSの回転が差動装置Dr側に伝達されるため、エンジンEのトルクが左右の前輪Wfと後輪Wrの双方に配分されて伝達され、車両1の駆動方式として四輪駆動(4WD)が選択される。
また、車両1の左右の前輪Wfと後輪Wrには、ブレーキ装置94がそれぞれ設けられており、これらのブレーキ装置94は、その作動が制御装置100によって個別に制御される。そして、制御装置100には、前側の差動装置Dfの回転数を検出する回転数センサS1と、左右の前輪Wfの車輪速を検出するための車輪速センサS2と、左右の後輪Wrの車輪速を検出するための車輪速センサS3がそれぞれ接続されている。
[制御装置のシステム構成]
次に、図1に示す車両1に設けられた制御装置100のシステム構成を図2に基づいて以下に説明する。
すなわち、図2は制御装置のシステム構成を示すブロック図であり、図示の制御装置100は、外部状況取得部12、経路情報取得部13、走行状態取得部14などの車両1(図1参照)の外部から各種情報を取り入れるための手段を備えている。
また、制御装置100は、アクセルペダル70、ブレーキペダル72、ステアリングホイール(ハンドル)74、切替スイッチ80などの操作デバイスと、アクセル開度センサ71、ブレーキ踏量センサ(ブレーキスイッチ)73、ステアリング操舵角センサ(ステアリングトルクセンサ)75などの操作検出センサと、報知装置(出力部)82と、乗員識別部(車内カメラ)15とを備えている。
さらに、制御装置100は、車両1の駆動と駆動力配分や操舵などを行うための装置として、走行駆動力出力装置(駆動装置)90と、ステアリング装置92と、ブレーキ装置94および前記クラッチC(図1参照)を備えている。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線などの多重通信線やシリアル通信線、無線通信網などによって互いに接続されている。なお、例示した操作デバイスについてはあくまで一例であり、ボタン、ダイヤルスイッチ、GUI(Graphical User Interface)スイッチなどが車両1に搭載されていても構わない。
ここで、各種構成要素について説明する。
(外部状況取得部)
外部情報取得部12は、車両1の外部状況、例えば、走行路の車線や車両周辺の物体などの車両1の周辺の環境情報を取得するものであって、例えば、各種カメラ(単眼カメラ、ステレオカメラ、赤外線カメラなど)や各種レーダ(ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、レーザレーダなど)などを備えている。ここで、カメラによって得られた情報とレーダにより得られた情報を統合するフュージョンセンサを使用することも可能である。
(経路情報取得部)
経路情報取得部13は、ナビゲーション装置を含んでおり、ナビゲーション装置は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機や地図情報(ナビ地図)、ユーザインターフェースとして機能するタッチパネル式表示装置、スピーカ、マイクなどを備えている。ここで、ナビゲーション装置は、GNSS受信機によって車両1の位置を特定し、その特定した位置からユーザによって指定された目的地までの経路を導出する。そして、ナビゲーション装置によって導出された経路は、経路情報144として記憶部140に格納される。なお、車両1の位置は、走行状態取得部14の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。
また、ナビゲーション装置は、制御装置100が手動運転モードを実行している際に、目的地に至る経路について音声やナビ表示によって案内を行う。なお、車両1の位置を特定するための構成は、ナビゲーション装置とは独立して設けられていてもよい。また、ナビゲーション装置は、例えば、ユーザが保有するスマートフォンやタブレット端末などの端末装置の一機能によって構成されてもよい。この場合、端末装置と制御装置100との間で無線または有線による通信によって情報の送受信が行われる。
(走行状態取得部)
走行状態取得部14は、車両1の現在の走行状態を取得するものであって、走行位置取得部26と、車速取得部28と、ヨーレート取得部30と、操舵角取得部32および走行軌道取得部34を備えている。
<走行位置取得部>
走行位置取得部26は、走行状態の1つである車両1の走行位置と走行姿勢(進行方向)を取得するものであって、各種測位装置、例えば、衛星や路上装置から送信される電磁波を受信して位置情報(緯度、軽度、高度、座標など)を取得する装置(GPS受信機、GNSS受信機、ビーコン受信機など)やジャイロセンサや加速度センサなどを備えている。なお、車両1の走行位置は、当該車両1の特定部位を基準として測定される。
<車速取得部>
車速取得部28は、車両1の走行状態の1つである車速を取得するものであって、前輪Wfと後輪Wr(図1参照)にそれぞれ車輪速センサS2,S3(図1参照)などを備えている。
<ヨーレート取得部>
ヨーレート取得部30は、走行状態の1つである車両1のヨーレートを取得するものであって、例えば、ヨーレートセンサなどを備えている。
<操舵角取得部>
操舵角取得部32は、車両1の走行状態の1つである操舵角を取得するものであって、例えば、ステアリングシャフトに設けられたステアリング操舵角センサ75などを備えている。なお、ステアリング操舵角センサ75によって取得された操舵角に基づいて操舵角速度と操舵角加速度も取得される。
<走行軌道取得部>
走行軌道取得部34は、走行状態の1つである車両1の実走行軌道の情報(実走行軌道)を取得するものであって、メモリを備えており、メモリは、実走行軌道に含まれる一連の点列の位置情報を記憶する。ここで、実走行軌道とは、実際に車両1が走行した軌道(軌跡)を含んでおり、これから走行する予定の軌道、例えば、走行した軌道(軌跡)の進行方向前側の延長線を含んでいてもよい。この場合、延長線は、コンピュータなどにより予測可能である。
(アクセル開度センサ、ブレーキ踏量センサおよびステアリング操舵角センサ)
ところで、操作検出センサであるアクセル開度センサ71、ブレーキ踏量センサ73、ステアリング操舵角センサ75は、検出結果としてのアクセル開度、ブレーキ踏量、ステアリング操舵角をそれぞれ制御装置100に対して出力する。
(切替スイッチ)
切替スイッチ80は、車両1の乗員によって操作されるスイッチであって、乗員の操作を受け付け、受け付けた操作内容から運転モード(例えば、自動運転モードと手動運転モード)の切り替えを行う。例えば、切替スイッチ80は、乗員の操作内容から、車両1の運転モードを指定する運転モード指定信号を生成し、この運転モード指定信号を制御装置100に対して出力する。
(シフト装置)
シフト装置60は、運転者によって不図示のシフトレバーを介して操作されるものであって、このシフト装置60におけるシフトレバーのポジションには、P(パーキング)、R(後進走行)、N(ニュートラル)、D(自動変速モード(ノーマルモード)での前進走行)、S(スポートモードでの前進走行)などがある。そして、シフト装置60の近傍には、シフトポジションセンサ205が設けられており、このシフトポジションセンサ205は、ドライバによって操作されるシフトレバーのポジション(シフトポジション)を検出する。
(パドルスイッチ)
パドルスイッチ65は、ステアリングホイール74の近傍に設けられており、手動運転時(手動運転モード)での手動変速モードでシフトダウンを指示するための−スイッチ(マイナスボタン)66と、手動変速モードでシフトアップを指示する+スイッチ(プラスボタン)67を備えている。
手動運転モードにおける手動変速モード(マニュアルモード)では、−スイッチ66と+スイッチ67の操作信号は、制御装置100に対して出力され、車両1の走行状態に応じてトランスミッションM(図1参照)において設定される変速段のシフトアップまたはシフトダウンが行われる。
(報知装置)
報知装置82は、情報を出力することができる種々の装置であって、例えば、車両1の乗員に対して、自動運転モードから手動運転モードへの移行を促すための情報を出力する。この報知装置82としては、例えば、スピーカ、バイブレータ、表示装置、発光装置などの中から少なくとも1つが用いられる。
(乗員識別部)
乗員識別部15は、例えば、車両1の車室内を撮像可能な車内カメラを備えており、この車内カメラとしては、例えば、CCDやCMOSなどの個体撮像素子を利用したデジタルカメラや近赤外光源と組み合わされた近赤外カメラなどが使用される。制御装置100は、車内カメラによって撮像された画像を取得し、その画像に含まれるドライバの顔の画像から、現在の車両1のドライバを識別する。
(走行駆動力出力装置)
走行駆動力出力装置(駆動装置)90は、エンジンE(図1参照)および該エンジンEを制御する不図示のFI−ECU(Electronic Control Unit)と、トランスミッションM(図1参照)と該トランスミッションMを制御するAT−ECUを備えて構成されている。なお、これ以外にも、走行駆動力出力装置90としては、車両1が電動機を駆動源とする電気自動車である場合には、走行用モータおよび該走行用モータを制御するモータECUによって構成されるものが使用される。また、車両1がハイブリッド自動車である場合には、走行駆動力出力装置90は、エンジンEおよびエンジンECUと走行用モータおよびモータECUで構成されるものが使用される。
本実施の形態のように、走行駆動力出力装置90がエンジンEとトランスミッションMを備えて構成されている場合には、FI−ECUとAT−ECUは、後述の走行制御部120から入力される情報に従って、エンジンEのスロットル開度やトランスミッションMのシフト段などを制御し、車両1が走行するための走行駆動力(トルク)を出力する。そして、走行駆動力出力装置90が走行用モータのみを含む場合、モータECUは、走行制御部120から入力される情報に従って、走行用モータに与えるPWM信号のデューティ比を調整し、車両1が走行するための走行駆動力(トルク)を出力する。また、走行駆動力出力装置90がエンジンEと走行用モータを含む場合、FI−ECUとモータECUの双方は、走行制御部120から入力される情報に従って、車両1が走行するための走行駆動力(トルク)を互いに協調して出力する。
(ステアリング装置)
ステアリング装置(EPS)92は、例えば、駆動源として電動モータを備えており、電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて操舵輪である左右の前輪Wf(図1参照)を転舵させる。すなわち、ステアリング装置92は、走行制御部120から入力される情報に従って電動モータを駆動して左右の前輪Wfを転舵させる。
(ブレーキ装置)
ブレーキ装置94は、例えば、ブレーキキャリパと、該ブレーキキャリパに油圧を供給する油圧シリンダと、該油圧シリンダに油圧を発生させる電動モータと、制動制御部とを備えた電動サーボブレーキ装置である。この電動サーボブレーキ装置の制動制御部は、走行制御部120から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じた制動力を左右の前輪Wfと後輪Wrに対してそれぞれ出力する。
電動サーボブレーキ装置は、ブレーキペダル72の操作によって発生する油圧をマスタシリンダを介して油圧シリンダに供給する機構をバックアップとして備えていてもよい。なお、ブレーキ装置94は、以上に説明した電動サーボブレーキ装置に限らず、電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。この電子制御式油圧ブレーキ装置は、走行制御部120から入力される情報に従ってアクチュエータを制御し、マスタシリンダで発生した油圧を油圧シリンダへと伝達する。また、ブレーキ装置94は、走行駆動力出力装置90が走行用モータを備える場合は、当該走行用モータによる回生ブレーキを含んでもよい。
[制御装置]
次に、制御装置100について説明する。この制御装置100は、自動運転制御部110と、走行制御部120および記憶部140を備えている。
(自動運転制御部)
自動運転制御部110は、自車位置認識部112と、外界認識部114と、行動計画生成部116および目標走行状態設定部118を備えている。ここで、自動運転制御部110の各部、走行制御部120の一部または全部は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。また、これらのうちの一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Circuit)などのハードウェアによって実現されてもよい。
自動運転制御部110は、切替スイッチ80からの信号の入力に従って運転モードを切り替えて制御を行う。ここで、運転モードとしては、車両1の加速度および操舵を自動的に制御する自動運転モードや、車両1の加速度をアクセルペダル70やブレーキペダル72などの操作デバイスに対する操作に基づいて制御し、操舵をステアリングホイール74などの操作デバイスに対する操作に基づいて制御する手動運転モードがあるが、これらに限定されるものではない。他の運転モードとしては、例えば、車両1の加減速と操舵のうちの一方を自動的に制御し、他方を操作デバイスに対する操作に基づいて制御する半自動運転モードを設定してもよい。
<自車位置認識部>
自動運転制御部110の自車位置認識部112は、記憶部140に格納されている地図情報142と、外部状況取得部12、経路情報取得部13または走行状態取得部14から入力される情報とに基づいて、車両1が走行している車線(走行車線)および走行車線に対する車両1の相対位置を認識する機能を果たす。
自車位置認識部112は、例えば、車両1の基準点(重心など)の走行車線中央からの乖離および車両1の進行方向の走行車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する車両1の相対位置として認識する。なお、これに代えて、自車位置認識部112は、走行車線の何れかの側端部に対する車両1の基準点の位置などを、走行車線に対する車両1の相対位置と認識してもよい。
<外界認識部>
外界認識部114は、外部状況取得部12などから入力される情報に基づいて、周辺車両の位置や速度、加速度などの状態を認識する機能を果たす。本実施の形態における周辺車両とは、車両1の周辺を走行する他の車両であって、車両1と同じ方向に走行する車両である。周辺車両の位置は、車両1の重心やコーナーなどの代表点で表されてもよく、車両1の輪郭で表現された領域によって表されてもよい。ここで、「周辺車両の状態」とは、前記各種機器の情報に基づいて周辺車両の加速度、車線変更をしているか否か(あるいは車線変更をしようとしているか否か)を含んでもよい。また、外界認識部114は、周辺車両に加えて、ガードレールや電柱、駐車車両、歩行者、その他の物体の位置を認識してもよい。
<行動計画生成部>
行動計画生成部116は、自動運転の開始地点、自動運転の終了予定地点、および/または自動運転の目的地を設定する機能を果たす。ここで、自動運転の開始地点は、車両1の現在位置であってもよく、車両1の乗員によって自動運転を指示する操作がなされた地点であってもよい。
行動計画生成部116は、自動運転の開始地点と終了予定地点との間の区間や、開始地点と自動運転の目的地との間の区間において行動計画を生成する。なお、これに限定されるものではなく、行動計画生成部116は、任意の区間について行動計画を生成してもよい。
行動計画は、例えば、順次実行される複数のイベントで構成される。ここで、イベントには、例えば、車両1を減速させる減速イベントや、車両1を加速させる加速イベント、走行車線を逸脱しないように車両1を走行させるレーンキープイベント、走行車線を変更させる車線変更イベント、車両1に前走車両を追い越させる追い越しイベント、分岐ポイントにおいて所望の車線に変更させたり、現在の走行車線を逸脱しないように車両1を走行させたりする分岐イベント、本線に合流するための合流車線において車両1を加減速させ、走行車線を変更させる合流イベントなどが含まれる。例えば、有料道路(高速道路など)においてジャンクション分岐点が存在する場合、制御装置100は、車両1を目的地の方向に進行するように車線を変更したり、車線を維持したりする。したがって、行動計画生成部116は、地図情報142を参照して経路上にジャンクションが存在していると判明した場合、現在の車両1の位置(座標)から当該ジャンクションの位置(座標)までの間に、目的地の方向に進行することができる所望の車線に車線変更するための車線変更イベントを設定する。なお、行動計画生成部116によって生成された行動計画を示す情報は、行動計画情報146として記憶部140に格納される。
(目標走行状態設定部)
目標走行状態設定部118は、行動計画生成部116によって生成された行動計画と、外部状況取得部12、経路情報取得部13および走行状態取得部14によって取得された各種情報に基づいて、車両1の目標とする走行状態である目標走行状態を設定する機能を果たす。この目標状態設定部118は、目標値設定部52と、目標軌道設定部54と、偏差取得部42および補正部44を備えている。
<目標値設定部>
目標値設定部52は、車両1が目標とする走行位置(緯度、経度、高度、座標など)の情報(単に「目標位置」とも言う)、車速の目標値情報(単に「目標車速」とも言う)、ヨーレートの目標値情報(単に「目標ヨーレート」とも言う)を設定するように構成されている。
<目標軌道設定部>
目標軌道設定部54は、外部状況取得部12によって取得される外部状況と経路情報取得部13によって取得される走行経路情報に基づいて、車両1の目標軌道の情報(単に「目標軌道」とも言う)を設定するように構成されている。ここで、目標軌道は、単位時間毎の目標位置の情報を含む。そして、各目標位置には、車両1の姿勢情報(進行方向)が対応づけられる。また、各目標位置に、車速、加速度、ヨーレート、横G、操舵角、操舵角速度、操舵角加速度などの目標値情報が対応づけられていてもよい。なお、上述の目標位置、目標車速、目標ヨーレートおよび目標軌道は、車両1の目標走行状態を示す情報である。
<偏差取得部>
偏差取得部42は、目標走行状態設定部118で設定される車両1の目標走行状態と、走行状態取得部14で取得される車両1の実走行状態とに基づいて、車両1の目標走行状態に対する実走行状態の偏差を取得する機能を果たす。
<補正部>
補正部44は、偏差取得部42によって取得される偏差に応じて車両1の目標走行状態を補正する機能を果たすものである。
(走行制御部)
走行制御部120は、車両1の走行を制御する機能を果たすものであって、加減速指令部56と、操舵指令部58および2WD/4WD切替指令部59を備えており、車両1の走行状態を、目標走行状態設定部118によって設定された車両1の目標走行状態または補正部44によって設定された新たな目標走行状態に一致或いは近づけるように走行制御の指令値を出力する。
<加減速指令部>
加減速指令部56は、車両1の走行制御のうち、加減速制御を行うように構成されている。具体的には、加減速指令部56は、目標走行状態設定部118または補正部44によって設定された目標走行状態(目標加減速度)と実走行状態(実加減速度)とに基づいて、車両1の走行状態を目標走行状態に一致させるための加減速度指令値を演算する。
<操舵指令部>
操舵指令部58は、車両1の走行制御のうち、操舵制御を行うように構成されている。具体的には、操舵指令部58は、目標走行状態設定部118または補正部44によって設定された目標走行状態と実走行状態とに基づいて、車両1の走行状態を目標走行状態に一致させるための操舵角速度指令値を演算する。
<2WD/4WD切替指令部>
2WD/4WD切替指令部59は、駆動方式を二輪駆動(2WD)から四輪駆動(4WD)に切り替え、或いは四輪駆動(4WD)から二輪駆動(2WD)に切り替える指令を出力するものである。具体的には、2WD/4WD切替指令部59は、前輪WfのタイヤT(図3参照)が弾性滑り限界を超えるまでは二輪駆動(2WD)で走行し、前輪WfのタイヤT(図3参照)が弾性滑り限界を超えると、駆動方式を四輪駆動(4WD)に切り替える指令を出力するが、これについての詳細は後述する。
(記憶部)
記憶部140は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどで構成されており、これには地図情報142と、経路情報144および行動計画情報146が格納されている。なお、プロセッサが実行するプログラムは、予め記憶部140に格納されていてもよく、車載インターネット設備などを介して外部装置からダウンロードされてもよい。また、プログラムは、当該プログラムを格納した可般型記憶媒体が不図示のドライブ装置に装着されることによって、記憶部140にインストールされてもよい。
ここで、地図情報142は、例えば、経路情報取得部13が有するナビ地図よりも高精度な地図情報であり、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報などを含んでいる。より具体的には、地図情報142には、道路情報や交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれる。道路情報には、高速道路、有料道路、国道、都道府県道といった道路の種別を表す情報や、道路の車線数、各斜線の幅員、道路の勾配、道路の位置(経度、緯度、高さを含む3次元座標)、車線のカーブの曲率、車線の合流および分岐ポイントの位置、道路に設けられた標識などの情報が含まれる。また、交通規制情報には、工事や交通事故、渋滞などによって車線が封鎖されているといった情報が含まれる。
次に、本発明に係る車両の走行制御方法について説明する。
[車両の走行制御方法]
本発明に係る車両1の走行制御方法は、走行中の車両1の前輪(主駆動輪)WfのタイヤT(図3参照)が弾性滑り限界を超えるまでは前輪Wfのみに動力を伝達する二輪駆動(2WD)とし、走行中の車両1の前輪WfのタイヤTが弾性滑り限界を超えると、前輪Wf及び後輪Wrに動力を伝達する四輪駆動(4WD)とすることを特徴とする。またここでの前輪Wf及び後輪Wrに動力を伝達する四輪駆動(4WD)は、前輪WfのタイヤTが弾性滑り限界を超える分の動力を後輪Wrに配分することで行われる。ここで、前輪WfのタイヤTの弾性滑り限界を求める手法について説明する。
(タイヤの摩擦特性)
まず、図3に示すモデル化した車輪のタイヤTの摩擦特性について説明する。
通常、車輪のホイールWは、アルミニウムや鋼などの金属製であって、円環構造を有していることから、その剛性(バネ定数)はゴム製のタイヤTのそれに対して高い値を示す。このため、ホイールWに駆動トルクが与えられると、タイヤTのサイドウォール部とトレッド部に弾性変形が生じる。このタイヤTの弾性変形を表現するために、ホイールWとタイヤTのトレッド表面(接地面からなる円環)とをそれぞれ剛体質量に置き換え、両者のねじれを抑制する方向にバネ力が作用する状態について考察する。
タイヤTと路面との接地部においては、車両1の重量のためにタイヤTが変形し、或る一定幅(接地幅)でタイヤTと路面とが接触した状態となり、接地面には次式で表される摩擦力Fが作用する。
F=μ・N …(1)
ここに、μはタイヤTと路面との間の摩擦係数(タイヤTの経年変化や路面、環境条件などによって変化する)、NはタイヤTの接地荷重である。摩擦力Fは、車両1を走行抵抗に抗して走行(加速、減速、等速走行)させるために必要な力である。
次に、ホイールWに駆動トルクが与えられてタイヤTが転動して車両1が走行する状態を図4(A)〜(D)に基づいて以下に説明する。
すなわち、図4(A)〜(D)はタイヤTの転動に伴う弾性滑りを説明する図であり、ホイールWに駆動トルクが与えられた瞬間には、タイヤTにトルクは伝達されておらず、タイヤTは、未だ転動しない。このとき、タイヤTは、弾性変形し、ホイールWとタイヤTとの間にはねじれ角が生じる(図4(A)参照)。この状態においては、タイヤTは、ホイールWに与えられる駆動トルクの大きさに比例するねじれ角を生じる静ねじり状態にあり、図5に示す特性を示す。ここで、図5はタイヤTの静ねじり特性(駆動トルクとねじれ角との関係)を示す図である。なお、ここでは、簡単化のために粘弾性などの非線形性は無視している。
タイヤTにねじれが生じると、その反力として該タイヤTにトルクが伝達され、このトルクによってタイヤTが転動を開始する(図4(B)参照)。このようにタイヤTが転動すると、弾性変形を生じていたタイヤTの1要素は、接地面を離れるとともに、これに蓄えられていた弾性ひずみが解放される。このとき、解放された弾性ひずみに対応する反力の大きさは、ホイールWの駆動トルクを伝達するために必要な大きさに対して不足しているため、タイヤTの転動は一時的に止まろうとする。
しかしながら、接地面を離れたタイヤTの1要素と交代に新たな要素が路面に接地し、弾性ひずみを生じることによって失われた反力が回復するため、この反力によってタイヤTが再び転動する。このように、タイヤTの個々の要素に係る境界条件が各要素に固有ではなく、要素の運動に伴って移動する場合を特に「移動境界」と呼ぶ。
実際のタイヤTが継続して転動するときには、上述のような現象が連続して起こるため(図4(C)参照)、ホイールWの回転角に対して一定の割合でタイヤTの転動角は減少する。単位時間当たりのホイールWの回転角は、回転数(回転角速度)に比例するため、タイヤTの転動角もホイールWの回転数に比例して減少し、一定の回転伝達ロスが生じる(図4(D)参照)。この現象は、タイヤTの弾性変形に起因してホイールWと路面との間に見掛け上滑りが生じることから、「弾性滑り」と呼はれる。
ところで、弾性滑り量は、ホイールWの回転数に対して一定の割合で生じるため、滑りによる回転数ロスΔωとホイールWの回転数ωwheelとの比Sr=Δω/ωwheelで表すのが便利であり、この比Sを「滑り率」と呼ぶ。この滑り率Sは次式で表される。
=Δω/ωwheel …(2)
タイヤTの弾性すべりの特性を図示すると図6に示すようになる。ここで、図6は駆動トルクとタイヤTの滑り率との関係を示す図であり、特に、タイヤTと路面との間の摩擦係数が十分高い(あるいはタイヤTの接地荷重が十分大きい)場合の特性を示している。
当然ながら、タイヤTと路面との間の摩擦力にも限界があるため、ホイールWの駆動トルクが増加していくと、遂にはタイヤTの接地面が路面上を滑り始める。この現象を「弾性滑り」と区別して「移動滑り」と呼ぶこととする。すなわち、ホイールWの駆動トルクを増加していくと、図7に示すように、最初は弾性すべりが進展し、最終的には移動すべりに至り、駆動輪は、そのグリップ力を失う。
図7に示す駆動トルクを式(1)を用いて無次元化した摩擦係数がタイヤTの摩擦特性として一般的に用いられる(図8の破線参照)。ところで、これらは理想的な状態での特性であり、タイヤTの構造やゴムの粘弾性による弾性変形の非線形性に加え、接地面が滑り動摩擦状態になると一般的には摩擦係数が低下することを考慮すると、実際の摩擦特性は図8に実線にて示すようになる。しかしながら、弾性滑りから移動滑りに至るまでの状態変化(「滑り状態」と呼ぶ)に起因する摩擦メカニズムと物理的特性は同様である。
以上より、タイヤTの最大グリップ力を得るためには、弾性滑り状態と移動滑り状態との境界の滑り状態を維持することが望ましい。また、弾性滑り状態内では接地面に滑りは生じていないことから、耐磨耗性向上の観点からも弾性滑り状態の限界(移動滑り状態との境界)内で滑り状態を維持することが望ましい。
しかしながら、タイヤTの個体差および経年変化、路面などの環境条件の変化によって図8に実線にて示す特性(滑り率や摩擦係数)は変化するため、滑り率を検出する従来の手法では、滑り率の進展を捉えたとしても、その境界(弾性滑り限界)を判断することはできず、明らかな移動滑り状態しか判断することができない。したがって、このような課題を解決するためには、滑り状態の検出手法が必要になる。
(滑り状態の検出原理)
次に、滑り状態を検出する原理について説明する。
図4(A)に示すような弾性滑り状態のうち、弾性変形によってホイールWとタイヤTとの間にねじれ角φが生じ、接地面が接地長さだけ移動した状態(タイヤTが接地長さだけ転動した状態、接地面が丁度入れ替わった状態)を考える。このとき、タイヤTの転動前の接地面には、弾性変形によるひずみエネルギ(k・φ /2:kはタイヤ剛性)が蓄えられており、該タイヤTの転動によってこのひずみエネルギは解放される。このひずみエネルギは、車両1の走行に関して仕事をしないため、ホイールWから当該タイヤTに与えられた駆動エネルギをひずみの生成と解放というサイクルで散逸している状態であると考えることができる。このようなエネルギの散逸が見掛け上の滑り(弾性滑り)によって生じるものと捉えれば、接地面に作用する摩擦力Fは、次式によって表され、エネルギの散逸を摩擦力と見掛け上の滑りによる仮想仕事に置き換えることができる。
・φ /2=F・R・φ=T・φ …(3)
ここに、R:タイヤTの動半径
:接地面に生じる摩擦トルク
一方、ねじれ角φに対応してタイヤTが転動したとき、ねじれ角φを含めてホイールWの回転角がφwheelであったとすると、滑り率Sは、幾何学的関係から次式によって表される。
S=φ/φwheel …(4)
式(2)と式(4)より、
φ=(φwheel/ωwheel)Δω (5)
となり、これを式(3)に代入すると、
=(k・φwheel/2ωwheel)Δω=c・Δω …(6)
となり、摩擦トルクTは、ホイールWと路面との間に生じる滑り(回転ロス)Δωに比例する粘性抵抗力として表される。ここで、cは粘性係数に相当し、タイヤ剛性kに比例する。したがって、差動装置Dfから見たタイヤ接触面までの力学的モデルを図9に示すように表すことができる。
いま、差動装置Dfから一定の回転数で左右の車軸Sfが回転駆動されて左右の前輪Wfの各タイヤTの駆動力が釣り合った状態にあるとき、差動装置Df、前輪WfのホイールWとタイヤTに相当する剛体質点の平衡点からの変位角をそれぞれθ,θ,θ、ホイールWとタイヤTの慣性モーメントをそれぞれI,Iとすると、次の状態方程式が成立する。
ここで、式(7)を、
の変数変換によって無次元化し、状態変数(ベクトル量)を、
と表すことにすると、式(7)の状態方程式を次のように表すことができる。
ここで、差動装置Dfの回転数変動に対するホイールWの回転数の周波数応答を式(8)より求めると、図10に示すようになる。
図10(A)は差動装置Dfの回転変動振幅に対するホイールWの回転数変動振幅の比率(振幅比)mの変化を示し、図10(B)は差動装置Dfの回転変動に対するホイールWの回転変動の位相遅れΨの変化を示している。
式(6)より、滑り状態は、摩擦粘性係数cの値が小さくなるほど移動滑りに近づくことが分かる。図10において、(a)は弾性滑り状態の応答を示し、(c)は移動滑り状態の応答を示している。また、(b)は両滑り状態の境界(弾性滑り限界)での応答を示している。
図10における(a)と(c)とを比較すると、移動滑り状態となるに伴って応答のピーク(振幅比)が低周波数側に移行していることが分かる。このときの応答がピークとなる振動モードを「弾性滑りモード(a)」、「移動滑りモード(c)」と呼ぶこととし、それぞれの振動モードの違いを図11に示す。
弾性滑りモードにおいては、タイヤTの弾性変形によって駆動力を路面に伝達するため、タイヤ剛性kによって生じた弾性力は、ホイールWにも反力として作用する。このため、ホイールWが前車軸Sfの剛性kおよびタイヤ剛性kによって生じる弾性力の合力を受けて振動する。
他方、移動滑りモードにおいては、タイヤTと路面とが動的に滑ることから、タイヤ剛性kによって生じる弾性力は、滑りによって解放され、ホイールWに作用する反力も消失する。このため、ホイールWとタイヤTとが一体となって前車軸Sfの剛性kによって生じる弾性力のみを受けて同相で振動する。
以上より、弾性滑りから移動滑りへと移行するに伴って弾性滑りモードが消失し、移動滑りモードが発現する。したがって、この移動滑りモードに対応する周波数帯の差動装置Dfの回転変動とホイールWの回転変動とを監視することによって移動滑り状態を判定することができる。移動滑りモードにおいては、振幅比mが急激に増加し、また、図10から位相遅れが0degから90degに近づくことが分かる。
したがって、
(1)差動装置Dfの回転変動振幅に対するホイールWの回転変動振幅の比率(振幅比)mが急激に増加すること、
(2)差動装置Dfの回転変動に対するホイールWの回転変動の位相遅れΨが90degに接近すること、
の少なくとも一方をもってタイヤTの移動滑り状態を判定することができる。
移動滑りモードに対応する周波数は、図9に示すモデルの設計諸元、すなわち、車軸剛性k、タイヤ剛性k、ホイールWの慣性モーメントIおよびタイヤTの慣性モーメントIによって決まり、式(8)に示すヤコビ行列Aの固有値および固有ベクトルを計算することによって求めることができる。
ところで、車両1の駆動源であるエンジンEには一般的にはトルク変動が生じ、このトルク変動は、差動装置Dfから左右の前輪Wfの各タイヤTにも伝達される。トルク変動の要因としては、エンジンEの筒内圧の変動が挙げられるが、差動装置Dfには、入力されたトルク変動に起因する回転変動が生じる。このとき、差動装置Dfの回転変動が、
で表されたとすると、式(8)は、境界条件での強制振動と捉えることができる。式(8)におけるAは差動装置Dfの回転変動振幅、Ωは加振力(エンジンEのトルク変動)の角振動数、tは時間である。このような強制加振状態において、式(8)に示す状態方程式は次のようになる。
式(9)において、Bは外力(加振入力)を表し、元々の系が持つ固有の振動モード(以下、「固有モード」と呼ぶ)は、ヤコビ行列Aによって決まる。ヤコビ行列Aを決定するパラメータは、ρ,ω,ω,ζであるが、これらのパラメータのうち、ρ,ω,ωは設計諸元(機知数)であるため、結局、固有モードは、滑り識別量に対応する無次元量ζで決まる(固有モードのうち、どのモードが励起されるかは加振入力Bによって異なる)。したがって、無次元量ζを何らかの方法で知ることができれば、滑り状態を指標化することができる筈である。ここで、式(9)の周期解を次のように仮定する。
この周期解を式(9)に代入し、ガラーキン法に立脚して係数決定を行えば、次の関係式が得られる。
上式(10)において、mは差動装置Dfの回転変動振幅に対するホイールWの回転変動振幅の比率(振幅比)であり、Ψは差動装置Dfの回転変動に対するホイールWの回転変動の位相遅れであるため、差動装置Dfの回転変動とホイールWの回転変動を計測することによって、式(10)から無次元量ζを求めることができる。
ここで、式(10)に示す関係式は2つであることから、最大2つの未知数を求めることができる。そこで、無次元量ζに加えてωを同時に求めることができ、タイヤ剛性kや摩擦係数μが個体差や経年変化、路面状況などによって変化しても、現状に適合した値を求めることができる。
次に、無次元量ζと固有モードとの関係について説明する。
固有モードの振る舞いは、ヤコビ行列Aの固有値λを求めることによって記述することができる。ここで、移動滑りモードに対応する固有値λの振る舞い(根軌跡)を図12に示す。図12(a)〜(c)は、図10の(a)〜(c)および図11の(a),(c)に対応している。
図12の横軸は実軸、縦軸は虚軸であり、虚数部は振動解を示す。弾性滑り状態(図12の(a)参照)において、根は実軸上にあり、振動解が存在しないことを示している。これに対して、移動滑り状態(図12(c)参照)においては、根は虚数部を有して振動を発生することが示されている。すなわち、無次元量ζ<0.86(図12の(b)参照)となったときに移動滑りモードが発現することが分かる。
ここで、移動滑りモードが発現するとき、つまり、弾性滑り限界における無次元量(以下、「滑り識別量」と称する)ζを弾性滑り限界の基準値ζ(=0.86)とし、この弾性滑り限界の基準値ζの滑り識別量ζに対する比率を滑り状態識別子IDslipとして次式のように定義する。
IDslip=ζ/ζ …(11)
したがって、上式(11)にて求められる滑り状態識別子IDslipの値に基づいて下記のように滑り状態を判定することができる。
IDslip<1のとき、弾性滑り状態
IDslip=1のとき、弾性滑り限界(グリップ限界)
IDslip>1のとき、移動滑り状態
なお、弾性滑り限界の基準値ζは、設計諸元によって異なる値を示し、本実施の形態ではζ=0.86である。
以上より、差動装置Dfの回転変動とホイールWの回転変動を計測して滑り識別量ζを求め、設計諸元によって決定される弾性滑り限界の基準値ζの滑り識別量ζに対する比率IDslipを算出し、式(11)によって求められる滑り状態識別子IDslipの値によって左右の前輪Wfの滑り状態を判定することができる。
(車両の走行制御方法)
本発明に係る車両の走行制御方法は、前述のように、走行中の車両1の前輪(主駆動輪)WfのタイヤTが弾性滑り限界を超えるまでは前輪Wfのみに動力を伝達する二輪駆動(2WD)とし、前輪WfのタイヤTが弾性滑り限界を超えて移動滑り状態となると、前輪Wf及び後輪Wrに動力を伝達する四輪駆動(4WD)とすることを特徴とする。ここで、前輪WfのタイヤTの移動滑り状態は、車両1が前輪Wfのみに動力を伝達する二輪駆動(2WD)で走行しているときの差動装置Dfの回転変動と前輪WfのホイールWの回転変動を検出し、
(1)差動装置Dfの回転変動振幅に対するホイールWの回転変動振幅の比率(振幅比)mが急激に増加すること、
(2)差動装置Dfの回転変動に対するホイールWの回転変動の位相遅れΨが90degに接近すること、
の少なくとも一方をもって判定される。より具体的には、差動装置Dfの回転変動振幅に対する前輪WfのホイールWの回転変動振幅の比率(振幅比)mと、差動装置Dfの回転変動に対する前輪WfのホイールWの回転変動の位相遅れΨとからタイヤTの滑り状態の指標である滑り識別量ζを算出し、この滑り識別量ζに対するタイヤTの弾性滑り限界に対応する基準値ζの比率(=ζ/ζ)である滑り状態識別子IDslip=1をもってタイヤTの弾性滑り限界とする。
以下、本発明に係る車両の走行制御方法を図13〜図15に従って更に具体的に説明する。
図13は、本発明に係る車両の走行制御手順を示すフローチャート、図14は、車両の直進走行時における駆動トルクに対する滑り状態識別子IDslipと効率の変化を示す図、図15は、車両の旋回(左旋回)走行時における左前輪の操舵角に対する滑り状態識別子IDslipとスリップ角との関係を示す図である。
図13のフローチャートに示すように、図2に示す制御装置100による制御が開始されると、まず、車両1が走行中であるか否かが判定される(ステップS1)。車両が走行中である場合(ステップS1:Yes)には、前述の手法によって滑り状態識別子IDslipが算出され(ステップS2)、その算出された滑り状態識別子IDslipが1を超えたか否か、つまり、左右の前輪WfのタイヤTが移動滑り状態にあるか否かが判定される(ステップS3)。その判定の結果、滑り状態識別子IDslipが1を超えて前輪WfのタイヤTが移動滑り状態にあるものと判定された場合(ステップS3:Yes)には、前輪Wfのみに動力を伝達する状態から前輪Wf及び後輪Wrに動力を伝達する状態とすることで、車両1の駆動方式を四輪駆動(4WD)とする(ステップS4)。ここでの車両1の駆動方式を四輪駆動(4WD)とすることは、前輪WfのタイヤTが弾性滑り限界を超える分の動力(のみ)を後輪Wrに配分することで行われる。すなわち、前輪WfのタイヤTが弾性滑り限界を超えない分の動力はそのまま前輪Wfに配分し、残りの弾性滑り限界を超える分の動力のみを後輪Wrに配分する。これにより、車両1は、四輪駆動(4WD)状態となり、左右の前輪Wfと後輪Wrの四輪からの回転駆動力を受けて走行する。
すなわち、図2に示す制御装置100においては、走行制御部120に設けられた2WD/4WD切替指令部59からクラッチC(図1参照)に対して切替指令が出力される。これにより、エンジンEからトランスミッションMへと伝達される動力の一部は、差動装置Dfによって左右の前車軸Sfに分配されて伝達され、左右の前輪Wfが回転駆動される。この左右の前車軸Sfに分配されて伝達される動力は、既述のように前輪WfのタイヤTが弾性滑り限界を超えない分の動力である。そして、エンジンからの残りの動力は、プロペラシャフトPSからクラッチCを経て差動装置Drへと伝達され、差動装置Drによって左右の後車軸Srに分配されて伝達され、左右の後輪Wrも同時に回転駆動される。この左右の後車軸Srに分配されて伝達される動力は、前輪WfのタイヤTが弾性滑り限界を超える分の(残りの)動力である。したがって、車両1は、左右の前輪Wfと後輪Wrの四輪からの回転駆動力を受けて走行する。
他方、ステップS3での判定の結果、滑り状態識別子IDslipが1以下である(IDslip≦1)場合(ステップS3:No)、つまり、前輪Wfのタイヤが弾性滑り状態にある場合には、前輪Wfのみに動力を伝達する状態から前輪Wf及び後輪Wrに動力を伝達する状態へ移行、すなわち車両1の駆動方式の二輪駆動(2WD)から四輪駆動(4WD)への切り替えはなされず、車両1はそのまま二輪駆動(2WD)で走行する(ステップS5)。このように、前輪WfのタイヤTが弾性滑り状態にあるときには、車両1の駆動方式を二輪駆動(2WD)とすることによって、後輪Wrの駆動ロスを小さく抑えて燃費の向上を図ることができる。
以上の一連の走行制御が車両1が走行している間は常になされるが、車両1が停止すると(ステップS1;No)、車両1に対する走行制御は終了する(ステップS6)。
図14に示すように、車両が直進走行しているとき、前輪Wfのみに動力を伝達する二輪駆動(2WD)で走行している車両1の効率は、図14(A),(B)に示すように滑り状態識別子IDslipが1を超えた段階で大きく低下する。なお、図14(A)は、摩擦係数μ=1.0の乾燥したアスファルト上を車両1が走行している場合、図14(B)は、摩擦係数μ=0.3の雪道上を車両1が走行している場合の値をそれぞれ示す。
本発明に係る走行制御方法においては、滑り状態識別子IDslipが1を超えて(IDslip>1)前輪WfのタイヤTが移動滑り状態にあるものと判定されると、前輪WfのタイヤTが弾性滑り限界を超える分の動力を後輪Wrに配分することで、前輪Wfのみに動力を伝達する二輪駆動(2WD)から前輪Wf及び後輪Wrに動力を伝達する四輪駆動(4WD)へ移行するようにしたので、前輪Wfに移動滑りが発生する前に後輪Wrに動力を配分することができる。したがって、図14(A),(B)に示すように、車両が直進走行しているときに滑り状態識別子IDslipが1を大きく超過せず、効率最大点が維持されるとともに、前輪Wfの移動滑りに伴う車両1の挙動の乱れが効果的に防がれる。
また、ステアリング操作がなされて車両1が旋回している状態においても、滑り状態識別子IDslipが1を超えて(IDslip>1)前輪WfのタイヤTが移動滑り状態にあるものと判定されると、前輪WfのタイヤTが弾性滑り限界を超える分の動力を後輪Wrに配分することで、前輪Wfのみに動力を伝達する二輪駆動(2WD)から前輪Wf及び後輪Wrに動力を伝達する四輪駆動(4WD)へ移行するようにした。これにより、操舵輪である前輪Wfを弾性滑り状態に保持でき、図15に示すようにニュートラル特性を維持することができるため、アンダーステアを防止して車両1の実走行軌道の目標走行軌道に対する追従性を向上することができる。
以上の説明で明らかなように、本発明に係る車両1の走行制御方法によれば、車両1が直進走行しているときに、車両1の前輪WfのタイヤTが弾性滑り限界を超えるまでは二輪駆動(2WD)で走行し、車両1の前輪WfのタイヤTが弾性滑り限界を超えると四輪駆動(4WD)で走行することで、動力伝達効率の急激な低下や挙動の不安定化を防ぐことができるという効果が得られる。
また、車両1が旋回走行しているときに、車両1の前輪WfのタイヤTが弾性滑り限界を超えるまでは二輪駆動(2WD)で走行し、車両1の前輪WfのタイヤTが弾性滑り限界を超えると四輪駆動(4WD)で走行することで、アンダーステアの発生を防いで実走行軌道の目標走行軌道に対する追従性を向上することができるという効果も得られる。
なお、以上は本発明をエンジンを駆動源とする車両の走行制御方法について説明したが、本発明は、電動機を駆動源とする電気自動車や、エンジンと電動機を駆動源とするハイブリッド自動車の走行制御方法に対しても同様に適用可能である。
本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、車両1の前輪Wf,Wfが本発明の主駆動輪であり、後輪Wr,Wrが本発明の副駆動輪である場合を示したが、これ以外にも、図示及び詳細な説明は省略するが、本発明は、後輪を主駆動輪とし前輪を副駆動輪とする車両に適用することも可能である。このとき、車両の旋回時における本発明の動力伝達切替制御は、後輪のスリップによるオーバステアの発生を防いで実走行軌道の目標走行軌道に対する追従性を向上する。
1 車両
59 2WD/4WD切替指令部
94 ブレーキ装置
100 制御装置(制御手段)
120 走行制御部
C クラッチ(動力配分手段)
Df 差動装置(動力伝達手段)
E エンジン(駆動源)
T タイヤ
W ホイール
Wf 前輪(駆動輪、主駆動輪)
Wr 後輪(副駆動輪)
IDslip 滑り状態識別子
ζ 滑り識別量
ζ 弾性滑り限界の基準値

Claims (7)

  1. 駆動源からの動力が伝達される主駆動輪と副駆動輪とを備え、
    前記主駆動輪のみに動力を伝達する駆動状態と前記主駆動輪及び前記副駆動輪に動力を伝達する駆動状態とが可能な車両の走行制御方法であって、
    走行中の車両の前記主駆動輪のタイヤが弾性滑り限界を超えるまでは前記主駆動輪のみに動力を伝達する駆動状態とし、
    走行中の車両の前記主駆動輪のタイヤが弾性滑り限界を超えると、前記主駆動輪及び前記副駆動輪に動力を伝達する駆動状態とする制御を行う
    ことを特徴とする車両の走行制御方法。
  2. 前記主駆動輪及び前記副駆動輪に動力を伝達する駆動状態は、前記主駆動輪のタイヤが弾性滑り限界を超える分の動力を前記副駆動輪に配分することで行われる
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御方法。
  3. 前記車両は、駆動源からの動力を前記主駆動輪に伝達する動力伝達手段を備えており、
    前記動力伝達手段の回転変動と前記主駆動輪のホイールの回転変動を検出し、
    〔1〕前記動力伝達手段の回転変動振幅に対する前記ホイールの回転変動振幅の比率が急激に増加すること、
    〔2〕前記動力伝達手段の回転変動に対する前記ホイールの回転変動の位相遅れが90degに接近すること、
    の少なくとも一方をもって前記タイヤが前記弾性滑り限界を超えたと判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の走行制御方法。
  4. 前記動力伝達手段の回転変動振幅に対する前記ホイールの回転変動振幅の比率と、前記動力伝達手段の回転変動に対する前記ホイールの回転変動の位相遅れとから前記タイヤの滑り状態の指標である滑り識別量を算出し、
    該滑り識別量に対する前記タイヤの弾性滑り限界の基準値の比率である滑り状態識別子=1をもって前記タイヤの弾性滑り限界とすることを特徴とする請求項3に記載の車両の走行制御方法。
  5. 駆動源からの動力を主駆動輪と副駆動輪とに伝達する動力伝達手段と、
    前記動力伝達手段における前記駆動源から前記主駆動輪及び前記副駆動輪への動力伝達の配分を制御することで、前記主駆動輪のみに動力を伝達する駆動状態と前記主駆動輪及び前記副駆動輪に動力を伝達する駆動状態とが可能な動力配分手段と、
    前記主駆動輪のタイヤが弾性滑り限界を超えるか否かを判断する弾性滑り限界判断手段と、
    前記弾性滑り限界判断手段の判断に基づいて前記動力配分手段を制御する制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、
    走行中の車両の前記主駆動輪のタイヤが弾性滑り限界を超えるまでは前記主駆動輪のみに動力を伝達する駆動状態とし、
    走行中の車両の前記主駆動輪のタイヤが弾性滑り限界を超えると、前記主駆動輪及び前記副駆動輪に動力を伝達する駆動状態とする動力伝達切替制御を行う
    ことを特徴とする車両の走行制御装置。
  6. 前記主駆動輪及び前記副駆動輪に動力を伝達する駆動状態は、前記主駆動輪のタイヤが弾性滑り限界を超える分の動力を前記副駆動輪に配分することで行われる
    ことを特徴とする請求項5に記載の車両の走行制御装置。
  7. 前記制御手段は、前記車両の少なくとも加減速を自動的に制御する自動運転制御を行う自動運転制御部を有し、
    前記制御手段による前記動力伝達切替制御は、前記自動運転制御部による前記自動運転制御の実施中に行われる
    ことを特徴とする請求項6に記載の車両の走行制御装置。
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