JP6904844B2 - タイヤの滑り状態判定方法および車両の走行制御方法 - Google Patents
タイヤの滑り状態判定方法および車両の走行制御方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6904844B2 JP6904844B2 JP2017151424A JP2017151424A JP6904844B2 JP 6904844 B2 JP6904844 B2 JP 6904844B2 JP 2017151424 A JP2017151424 A JP 2017151424A JP 2017151424 A JP2017151424 A JP 2017151424A JP 6904844 B2 JP6904844 B2 JP 6904844B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- slip
- tire
- wheel
- vehicle
- state
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)
- Control Of Driving Devices And Active Controlling Of Vehicle (AREA)
- Regulating Braking Force (AREA)
Description
[本発明が適用される車両]
図1に示すように、内燃機関Eを走行用の駆動源とする四輪の車両は、駆動輪である左右一対の前輪Wf,Wfと、従動輪である左右一対の後輪Wr,Wrとを備えており、内燃機関Eの駆動力は変速機M、差動装置Dおよび左右のドライブシャフトSd,Sdを介して左右の前輪Wf,Wfに伝達される。
[タイヤの摩擦特性]
つぎに、図2に示す簡易なモデルを用いてタイヤTの摩擦特性を説明する。通常ホイールWはアルミや鋼などの金属製であり円環構造を持つことからゴム製のタイヤTに比べて十分剛である。すなわち、ホイールWに駆動トルクが与えられた際にはタイヤTのサイドウォール部およびトレッド部に変形が生じている。この弾性変形を表現するためにホイールWとタイヤTのトレッド表面(接地面から成る円環)とを剛体質量で代表し、両者のねじれを抑制する方向にばね力が作用する状態を考える。タイヤTと路面との接地部においては車両の質量のためタイヤTが変形し、ある一定幅(接地幅)にてタイヤTと路面とが接触(接地面)した状態となる。接地面にはゴムと路面との間に摩擦力Fが作用し、この摩擦力Fは次式で表される。
μはゴムと路面との間の摩擦係数(タイヤTの経年変化や路面、環境条件などにより変化する)、NはタイヤTの接地荷重である。摩擦力Fは走行抵抗に対抗して車両を走行(加速、減速、等速走行)させるために必要な力、すなわち駆動力とその合力の大きさが釣り合う必要がある。
で表すのが便利である。この比Sr を滑り率と呼ぶ。
タイヤTの弾性滑りの特性を図示すると図5のようになるが、これはタイヤTと路面との間の摩擦係数が十分高い(あるいはタイヤTの接地荷重が十分大きい)場合である。当然ながらタイヤTと路面との間の摩擦力にも限界があるので、ホイールWの駆動トルクを増加していくとついにはタイヤTの接地面と路面とが滑り始める。これを弾性滑りと区別して移動滑りと呼ぶことにする。すなわち、ホイールWの駆動トルクを増加していくと図6に示すように最初は弾性滑りが進展し、最終的は移動滑りに至り駆動輪はそのグリップを失う。
[滑り状態の検出原理]
本発明の滑り状態を検出する原理について説明する。図3のような弾性滑り状態のうち、弾性変形によりホイールWとタイヤTとの間にねじれ角φE が生じ、接地面が接地長さだけ移動した状態(タイヤTが接地長さだけ転動した状態、接地面がちょうど入れ替わった状態)を考える。このとき転動前の接地面には弾性変形によるひずみエネルギ(kT φE 2 /2)が蓄えられており、転動によってこのひずみエネルギは解放される。このひずみエネルギは車両の走行に関して仕事をしないので、ホイールWから与えられた駆動エネルギをひずみの生成と解放というサイクルで散逸している状態と考えることができる。このようなエネルギ散逸が見かけ上の滑り(弾性滑り)によって生じるものと捉えれば、接地面に作用する摩擦力をFとして、次式のように書ける。
すなわち、エネルギ散逸を式(3) のように摩擦力と見かけ上の滑りによる仮想仕事に置き換えることができる。kT はタイヤTのねじり剛性(以下、「タイヤ剛性」という。)、RはタイヤTの動半径であり、Tf は接地面に生じる摩擦トルクに相当する。一方、ねじれ角φE に対応してタイヤTが転動したとき、ねじれ角φE を含めてホイールWの回転角がφwheel であったとすると滑り率Sr は幾何学的関係より、
Sr =φE /φwheel …(4)
となる。式(2) および式(4) より、
φE =(φwheel /ωwheel )Δω …(5)
となり、これを式(3) に代入すると、
Tf =(kT φwheel /2ωwheel )Δω=cT Δω …(6)
となり、摩擦トルクTf はホイールWと路面との間に生じる滑り(回転数ロス)Δωに比例した粘性抵抗力で表される。ここで、cT は粘性係数に相当しタイヤ剛性kT に比例する。したがって、差動装置Dから見たタイヤ接触面までの力学的モデルを図8のように表すことができる。
無次元量ζ2 =0.86のとき、弾性滑り限界(グリップ限界)
無次元量ζ2 <0.86とき、移動滑り状態
ただし、弾性滑り限界となる無次元量ζ2 の値がζ2 =0.86となるのは本実施の形態の場合であり、この値は設計諸元によって異なる。
[滑り状態に応じた車両制御]
図1に示す車両において、差動装置回転数検出手段S3により検出した差動装置Dの回転変動と、前輪回転数検出手段S4,S4により検出した前輪Wf,WfのホイールWの回転変動とに基づいて、電子制御ユニットUは無次元量ζ2 の値を監視し、ζ2 >ζS となった場合に移動滑り状態への移行を判定し、電子制御スロットルバルブを介して内燃機関Eの駆動力を制限するトラクション制御を行い、あるいは液圧モジュレータHを介して前輪ブレーキキャリパCf,Cfの制動力を制限するアンチロックブレーキ制御を行う。内燃機関Eの駆動力を制限する代わりに、変速機Tのダウンシフトを制限することで駆動力を制限してもよい。これによりタイヤTのグリップ性能を最大限に活かした加減速を得ることができ、同時に不要なホイールスピンを防止することで車両の挙動が不安定になる状況を回避することができる。さらには、移動滑りの発生を最小限に抑えることによりタイヤTの摩耗を抑制することができる。
ω2 /ζS =kT /cT =2Δω/φE …(11)
となり、ホイールWと路面との間に生じる滑りΔωを無次元量を用いて表すことができる。
ΔωS =2φE (ω2 /ζS ) …(12)
であるから式(11)、(12)より、
Δω/ΔωS =ζS /ζ2 …(13)
となり、無次元量ζ2 を求めることで弾性滑り限界に対する現在の滑りの割合を求めることができる。これにより滑り状態の判定に加え、弾性滑り限界に対する現在の滑りの余裕度を定量的に表すことができる。
ζ2 の値が1になったときタイヤと路面との間に移動滑りが発生する。図12の関係のうち、標準タイヤと一般的なドライ環境の平坦路面との間で得られる特性を基準特性とすれば、タイヤと路面との摩擦係数が低下するに従い、加減速Gが小さいにも関わらずにζS
/ ζ2 の値は上昇する。したがって、加減速Gとの関係が図12の左上領域となったとき、低摩擦係数路面を判定することができる。不感帯領域は、加減速GおよびζS / ζ2 が測定ばらつきやノイズの影響により変動した場合に、誤検知するのを防止する目的で設定する。また加減速Gはブレーキ液圧(制動力に比例する)で代替しても良い。
kT =ω2 2 I2 …(14)
を用いてタイヤ剛性を推定することができ、このタイヤ剛性の推定結果に基づき空気圧の低下あるいはタイヤTに損傷の疑いがあると判断した場合においては乗員にその旨を警告することで安全なトラクション制御を提供できる。
E 内燃機関(駆動源)
kT タイヤ剛性
m 振幅比
T タイヤ
W ホイール
Wf 前輪(車輪)
Ψ1 位相遅れ
ζ2 無次元量(滑り識別量)
ζS 基準値
Claims (8)
- 駆動源(E)に動力伝達部材(D)を介して接続される車輪(Wf)のタイヤ(T)の路面に対する滑り状態を判定するタイヤの滑り状態判定方法であって、
前記動力伝達部材(D)の回転変動および前記車輪(Wf)のホイール(W)の回転変動を検出し、前記動力伝達部材(D)の回転変動振幅に対する前記ホイール(W)の回転変動振幅の振幅比(m)と、前記動力伝達部材(D)の回転変動に対する前記ホイール(W)の回転変動の位相遅れ(Ψ1 )とに基いて、前記ホイール(W)及び前記タイヤ(T)の振動モードが、弾性滑り状態の周波数応答を表す弾性滑りモードか、移動滑り状態の周波数応答を表す移動滑りモードかを評価し、移動滑りモードの発現をもって前記タイヤ(T)の移動滑り状態を判定することを特徴とするタイヤの滑り状態判定方法。 - 前記回転変動は前記移動滑りモードの発現周波数に対応する周波数成分を抽出したものであって、
(1) 前記振幅比(m)が1を超えること、
(2) 前記位相遅れ(Ψ1 )が略90degとなること、
の少なくとも一方をもって前記移動滑りモードの発現を判定することを特徴とする請求項1に記載のタイヤの滑り状態判定方法。 - 前記回転変動は任意の周波数に対応する周波数成分を抽出したものであって、
前記振幅比(m)と、前記位相遅れ(Ψ1 )と、前記周波数とから前記タイヤ(T)の滑り状態の指標である滑り識別量(ζ2 )を算出し、前記滑り識別量(ζ2 )を前記タイヤ(T)の弾性滑り限界に対応する基準値(ζS )と比較することで前記移動滑りモードの発現を判定することを特徴とする請求項1に記載のタイヤの滑り状態判定方法。 - 滑り識別量(ζ2 )<基準値(ζS )となった場合に前記タイヤ(T)の移動滑り状態を判定することを特徴とする、請求項3に記載のタイヤの滑り状態判定方法。
- 請求項4に記載のタイヤの滑り状態判定方法を用いた車両の走行制御方法であって、
滑り識別量(ζ2 )=基準値(ζS )となるように車両の駆動力あるいは制動力を増減することを特徴とする車両の走行制御方法。 - 請求項4に記載のタイヤの滑り状態判定方法を用いた車両の走行制御方法であって、
基準値(ζS )/滑り識別量(ζ2 )の値から弾性滑り限界に対する現在の滑り余裕度を求め、この滑り余裕度が任意の値となるように車両の駆動力あるいは制動力を制御することを特徴とする車両の走行制御方法。 - 基準値(ζS )/滑り識別量(ζ2 )の値から低摩擦係数路面を走行中であると判定したとき、自動ブレーキの開始タイミングを早め、あるいは自動ブレーキの制動力を弱めることを特徴とする、請求項6に記載の車両の走行制御方法。
- 滑り識別量(ζ2 )から推定したタイヤ剛性(kT )が閾値以下になったときに警報を発することを特徴とする、請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の車両の走行制御方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017151424A JP6904844B2 (ja) | 2017-08-04 | 2017-08-04 | タイヤの滑り状態判定方法および車両の走行制御方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017151424A JP6904844B2 (ja) | 2017-08-04 | 2017-08-04 | タイヤの滑り状態判定方法および車両の走行制御方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019031112A JP2019031112A (ja) | 2019-02-28 |
JP6904844B2 true JP6904844B2 (ja) | 2021-07-21 |
Family
ID=65522899
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017151424A Active JP6904844B2 (ja) | 2017-08-04 | 2017-08-04 | タイヤの滑り状態判定方法および車両の走行制御方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6904844B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020090174A (ja) * | 2018-12-05 | 2020-06-11 | 本田技研工業株式会社 | 車両の走行制御方法及び走行制御装置 |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7158456B2 (ja) * | 2020-12-02 | 2022-10-21 | 本田技研工業株式会社 | 走行制御システム及び走行制御方法 |
JP7421577B2 (ja) * | 2022-01-13 | 2024-01-24 | 本田技研工業株式会社 | タイヤの滑り状態判定方法 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH08182119A (ja) * | 1994-12-22 | 1996-07-12 | Toyota Motor Corp | 電気自動車用走行用モータの制御方法 |
JP3870878B2 (ja) * | 2002-08-29 | 2007-01-24 | トヨタ自動車株式会社 | 原動機の制御装置および原動機の制御方法 |
JP5840464B2 (ja) * | 2011-11-11 | 2016-01-06 | Ntn株式会社 | 電気自動車 |
-
2017
- 2017-08-04 JP JP2017151424A patent/JP6904844B2/ja active Active
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020090174A (ja) * | 2018-12-05 | 2020-06-11 | 本田技研工業株式会社 | 車両の走行制御方法及び走行制御装置 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2019031112A (ja) | 2019-02-28 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP2543566B1 (en) | Vehicle control device | |
WO2013011992A1 (ja) | 路面状態推定方法、及び路面状態推定装置 | |
JP4459561B2 (ja) | コーナリングパワー制御装置およびコーナリングパワー制御方法 | |
JP6904844B2 (ja) | タイヤの滑り状態判定方法および車両の走行制御方法 | |
US9227605B2 (en) | Vehicle state calculating device and vehicle control device | |
WO2013111617A1 (ja) | 車両制御装置 | |
KR102030714B1 (ko) | 전기 또는 하이브리드 차량의 회생 제동 제어 | |
JP2006034012A (ja) | 車輪のスリップ率演算方法及び車輪の制駆動力制御方法 | |
US20120031696A1 (en) | Method for stabilizing a motor vehicle, in particular a two-wheeled motor vehicle | |
JP7158456B2 (ja) | 走行制御システム及び走行制御方法 | |
US7725235B2 (en) | Slip-control method and device | |
US20150224978A1 (en) | Braking/driving force control device | |
JP2018197070A (ja) | 車両制御装置 | |
JP2005059800A (ja) | 路面状態推定方法及び路面状態推定装置 | |
JP7011998B2 (ja) | 車両用制御装置 | |
JP2011079419A (ja) | タイヤ状態推定装置 | |
JP2011068256A (ja) | 推定加速度演算装置 | |
KR20020081368A (ko) | 차량의 곡선 구간 주행 상태의 감시를 위한 시스템 및 방법 | |
JP7169461B2 (ja) | 制御装置 | |
JP2023004904A (ja) | 大型車の推進を制御するための方法 | |
JP4876759B2 (ja) | タイヤの制駆動時動特性評価方法および装置 | |
US20230222851A1 (en) | Tire slip state determination method | |
JP2023172331A (ja) | 走行制御システム及び走行制御方法 | |
JP2006510544A (ja) | 間接的測定によりタイヤ圧検出システムを改良する方法 | |
KR20230091217A (ko) | 타이어 마찰 한계 추정기 및 이를 이용한 토크벡터링 제어 방법 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20191209 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20201117 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20201202 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20210129 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20210609 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20210624 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6904844 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |