<概要>
従来の自覚式検眼装置では、上記の検査サイクルが実行される頻度を減少させることは困難であった。そこで、本願の発明者は、ライトフィールドディスプレイ(以下、「LFD」という場合もある)を利用した自覚式検眼装置について検討を行った。LFDは、各々の画素集合単位から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線を再現することができる。LFDを用いると、例えば、被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または順次に被検眼に呈示することも可能であると考えられる。また、LFDは、円柱度数の矯正量等を調整した複数の視標画像を被検眼に呈示することもできると考えられる。従って、LFDを備えた自覚式検眼装置によると、従来に比べて検査の工数が減少する可能性がある。
上記のようなLFDを用いた自覚式検眼装置によって自覚式検査を行う場合には、被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または順次に被検眼に呈示し、検者が確認できた視標画像を回答してもらうことが想定される。また、その後、検者は、回答された視標画像に対応する眼屈折力を算出し、算出した眼屈折力に対応する矯正量(矯正値)にて矯正手段の調整(設定)を行い、再び視標画像を確認させて、被検者から回答を得るという流れで自覚式検査が進められることが想定される。
しかしながら、本願の発明者は、上記のように自覚式検査を進めた場合に、視標画像と眼屈折力との対応関係がわかりづらいため、検者は、視標画像に対応する眼屈折力を算出する際に誤った値を算出してしまうこと、眼屈折力に対応する矯正値を算出する際に誤った値を算出してしまうこと、算出した矯正値にて矯正手段の設定を行う際に誤った矯正値を入力してしまうこと、等があり、良好に検査が行えなくなることがあると考えた。また、本願の発明者は、上記の一連の検査を検者が進める場合には時間や手間がかかることや、不慣れな検者の場合には、手順がわかりづらく、良好に検査を進めることができないことがあると考えた。
以下、被検眼の光学特性の自覚的検査を、ライトフィールドディスプレイを用いて、容易に良好な自覚式検査を行うことができる自覚式検眼装置の典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。図1〜図・・は本実施形態に係る自覚式検眼装置について説明するための図である。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立又は関連して利用されうる。
なお、以下の説明においては、自覚式検眼装置の奥行き方向(被検者の測定の際の被検者の前後方向)をZ方向、奥行き方向に垂直(被検者の測定の際の被検者の左右方向)な平面上の水平方向をX方向、鉛直方向(被検者の測定の際の被検者の上下方向)をY方向として説明する。
なお、本開示においては、本実施形態に記載した装置に限定されない。例えば、下記実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体等を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。
例えば、本実施形態の自覚式検眼装置(例えば、自覚式検眼装置1)は、被検眼の眼屈折力を自覚的に測定することで被検者の自覚眼屈折力を取得するために用いられる。例えば、眼屈折力としては、球面情報(例えば、球面度数(S))、乱視情報(例えば、乱視度数(C)と乱視軸角度(A)との少なくともいずれか等)等の少なくともいずれかであってもよい。なお、本実施形態の自覚式検眼装置は、自覚眼屈折力とは異なる光学特性が得られてもよい。例えば、自覚的に測定される被検眼の光学特性としては、コントラスト感度、両眼視機能(例えば、斜位量、立体視機能等)等の少なくともいずれかであってもよい。
例えば、自覚式検眼装置は、各々の画素集合単位から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線を再現するライトフィールドディスプレイ(例えば、ライトフィールドディスプレイ20)を有し、ライトフィールドディスプレイから出射された視標光束を被検眼に向けて投影することで、被検眼に視標画像を呈示する投光光学系(例えば、投光光学系10)を備える。また、例えば、自覚式検眼装置は、自覚的検査が実行される際に、被検眼に対する呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれかの特徴値が互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または順次にライトフィールドディスプレイに出力させる制御手段(例えば、制御部80)を備える。
また、例えば、自覚式検眼装置は、投光光学系の光路中に配置され、視標光束の光学特性を変化させる矯正手段(例えば、検眼ユニット50)を備える。また、例えば、自覚式検眼装置は、矯正手段を制御する矯正制御手段(例えば、制御部80)を備える。また、例えば、自覚式検眼装置は、複数の視標画像の中から被検者が回答した視標画像を示す回答視標情報を入力する入力手段(例えば、コントローラ81)を備える。
なお、例えば、回答視標情報とは、被検者に対して複数の視標画像を呈示した際に、被検者が確認できたとして回答した視標画像に対応する視標情報を示す。例えば、入力手段には、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル、マイク等の少なくともいずれかを用いればよい。
例えば、矯正制御手段は、入力手段によって入力された回答視標情報に基づいて、矯正手段の設定を行う。このような構成によって、例えば、複数の視標画像の中から被検者が回答した視標画像を示す回答視標情報を入力し、入力した回答視標情報に基づいて、矯正手段の設定が行われることで、検者は、被検者が確認できた視標画像に対応する視標情報(回答視標情報)を入力するような直観的な操作を行うだけで、容易に矯正手段の設定を行うことができ、容易に良好な自覚式検査を進めることができる。すなわち、例えば、検者は、被検者が確認できた視標画像から、視標画像に対応する矯正量を算出し、その矯正量に応じた操作を行い、矯正手段の制御を行う、といった一連の作業の必要がなくなるため、操作に不慣れな検者であっても容易に自覚式検査を進めることができる。また、例えば、視標画像に対応する矯正度数を算出する際の誤った矯正量を算出してしまうことや、算出した矯正量を入力する際に誤った矯正量を入力しまうことを抑制することができ、容易に良好な自覚式検査を行うことができる。
例えば、入力手段による回答視標情報の入力は、音声によって回答視標情報を入力するようにしてもよい。この場合、例えば、視標情報として、音声情報が用いられる。すなわち、回答視標情報として、回答音声情報が用いられる。一例として、例えば、入力手段としてマイクを用いる場合に、検者がマイクに対して、被検者が回答した視標画像を示す回答視標情報を発音する(例えば、被検者の回答がマルであった場合に、検者はマイクに対してマルと発音する)ようにしてもよい。もちろん、回答視標情報は、検者ではなく、被検者が直接入力するようにしてもよい。
また、例えば、入力手段による回答視標情報の入力は、文字の入力によって回答視標情報を入力するようにしてもよい。この場合、例えば、視標情報として、入力された文字(単語)情報が用いられる。すなわち、回答視標情報として、回答文字情報が用いられる。一例として、例えば、入力手段としてキーボードを用いる場合に、検者がキーボードを操作して、被検者が回答した視標画像を示す回答視標情報をうちこむ(例えば、被検者の回答がマルであった場合に、検者は、キーボードを操作して、マルをうちこむ)ようにしてもよい。もちろん、回答視標情報は、検者ではなく、被検者が直接入力するようにしてもよい。
また、例えば、入力手段による回答視標情報の入力は、表示手段(例えば、モニタ81a)に表示された複数の視標情報の中から回答視標情報を選択することで、回答視標情報を入力するようにしてもよい。例えば、自覚式検眼装置は、複数の視標画像に対応する複数の視標情報を表示手段に表示させる表示制御手段(例えば、制御部80)を備えるようにしてもよい。この場合、例えば、矯正制御手段は、表示手段に表示された複数の視標情報の中から入力手段によって選択された回答視標情報に基づいて、矯正手段の設定を行うようにしてもよい。このような構成によって、例えば、検者は、表示手段に表示された複数の視標情報の中から視標情報を選択するだけで矯正手段の設定を行うことができ、より簡易的な入力によって容易に良好な自覚式検査を行うことができる。
例えば、表示手段は、装置本体に搭載されたディスプレイであってもよいし、本体に接続されたディスプレイであってもよい。パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)のディスプレイを用いてもよい。複数のディスプレイが併用されてもよい。また、表示手段は、タッチパネルであってもよい。なお、表示手段がタッチパネルである場合に、表示手段が入力手段として機能する。例えば、表示手段には、複数の視標情報が表示される。
なお、例えば、表示手段に表示する視標情報としては、視標画像を文字で表現した文字画像を用いてもよい。すなわち、例えば、回答視標情報として、回答文字画像を用いてもよい。一例として、例えば、表示手段に表示された複数の文字画像の中から、入力手段によって回答文字情報が選択される。上記のように、例えば、視標情報として視標画像を文字で表現した文字画像を用いる場合に、表示制御手段は、複数の視標情報として、複数の視標画像をそれぞれ文字で表現した視標情報(この場合、文字画像)を表示手段に表示させるようにしてもよい。一例として、例えば、視標画像を文字で表現した視標情報として、視標画像に丸画像が表示されていた場合に、マルという文字の視標情報が表示されるようにしてもよい。
また、例えば、表示手段に表示する視標情報としては、視標画像を模した視標マークを用いてもよい。すなわち、例えば、回答視標情報として、回答視標マークを用いてもよい。一例として、例えば、表示手段に表示された複数の視標マークの中から、入力手段によって回答視標マークが選択される。上記のように、例えば、視標情報として視標画像を模した視標マークを用いる場合に、表示制御手段は、複数の視標情報として、複数の視標画像のそれぞれを模した複数の視標情報(この場合、視標マーク)を表示手段に表示させるようにしてもよい。一例として、複数の視標画像のそれぞれを模した複数の視標情報は、視標画像が縮小された画像を視標情報として用いる構成であってもよい。また、一例として、複数の視標画像のそれぞれを模した複数の視標情報は、視標画像を示すイラストを視標情報として用いる構成であってもよい。上記のような構成によれば、例えば、視標情報が、被検者に呈示されている視標画像を模した視標情報であるため、検者は、より直観的に視標情報の選択を行いやすくなり、より容易に良好な自覚式検査を進めることができる。なお、例えば、表示手段に表示される視標情報は、上記構成に限定されない。例えば、表示手段に表示される視標情報は、被検眼に呈示される複数の視標画像との対応関係が把握できる視標情報であればよい。
なお、例えば、ライトフィールドディスプレイに表示させる視標画像を変更した場合に、表示手段に表示される視標情報を変更するようにしてもよい。この場合、例えば、制御手段は、LFDに出力させる複数の視標画像を変更させるようにしてもよい。この場合、例えば、表示制御手段は、制御手段によって、複数の視標画像の変更が行われた場合に、変更された複数の視標画像に対応する複数の視標情報を表示手段に表示させるようにしてもよい。このような構成によって、例えば、呈示される視標画像の変更に合わせて視標情報が自動的に変更されるため、検者は、手間なくスムーズに自覚式検査を行うことができる。
なお、表示手段に視標情報を表示する構成の場合に、例えば、表示制御手段は、被検眼に呈示される複数の視標画像に対応する複数の視標情報とともに、呈示される複数に視標画像には対応していない複数の視標情報を表示手段に表示させるようにしてもよい。この場合、例えば、検者が、被検眼に呈示される複数の視標画像に対応する複数の視標情報が識別できるように表示手段の表示を制御するようにしてもよい。一例として、例えば、被検眼に呈示される複数の視標画像に対応する複数の視標情報が、他の複数の視標情報よりも、強調して表示されるようにしてもよい。
なお、表示手段に視標情報を表示する構成の場合に、例えば、表示制御手段は、被検眼に呈示される複数の視標画像に対応する複数の視標情報のみを表示手段に表示させるようにしてもよい。例えば、ライトフィールドディスプレイを用いた場合に、複数の視標画像が同時又は順次に呈示されることになるため、検者は、被検者に呈示されている複数の視標画像がわかりづらくなる。この際に、検者は呈示されていない視標画像に対応する視標情報を選択してしまい、自覚式検査に時間がかかる。また、例えば、呈示されている以外の視標情報が表示される場合には、被検者が回答した視標画像に対応する視標情報を選択する際に、検者は、多くの視標情報の中から、該当する視標情報をさがすことになるため、時間がかかる。例えば、上記構成によれば、検者は、被検者に呈示されている視標画像に対応する視標情報のみが選択可能となるため、視標情報を探す必要がなく、呈示されている視標画像に対応する視標情報のみの中から選択を行うことができるため、誤った視標情報を選択してしまうことを抑制し、スムーズに自覚式検査を行うことができる。また、例えば、検者は、被検者に呈示されている視標画像に対応する視標情報のみが選択可能となるため、視標情報を探す必要がなく、呈示されている視標画像に対応する視標情報のみの中から選択を行うことができるため、該当する視標情報をさがすことが容易となり、スムーズに自覚式検査を行うことができる。
なお、例えば、複数の視標情報を表示手段に表示する場合に、同一画面上に複数の視標情報の内、少なくとも1つ以上の視標情報が表示されるようにしてもよい。この場合、例えば、表示手段に表示される少なくとも1つ以上の視標情報が切り換えられて表示されるようにしてもよい。一例として、検者が操作手段を操作し、視標情報の切り換えスイッチを選択することで、表示制御手段が表示手段に表示されている視標情報を切り換えるようにしてもよい。
また、この場合、例えば、表示制御手段は、複数の視標情報を同一の画面上に配列表示させるようにしてもよい。このような構成によって、例えば、同一画面上で選択できる視標情報を確認することができるため、視標情報を選択する際に、表示手段の表示画面を切り換えて視標情報を選択する必要がなく、手間なく自覚式検査を行うことができる。
<矯正制御手段>
例えば、矯正制御手段は、入力手段によって入力された回答視標情報に基づいて、矯正手段の設定を行うための矯正量を算出し、矯正量に基づいて、矯正手段の設定を行うようにしてもよい。例えば、本実施形態において、矯正量は、入力された回答視標情報に対応する被検者の眼屈折力(例えば、球面度数(S)、乱視度数(C)、乱視軸角度(A)の少なくともいずれか)を、矯正手段によって矯正するための矯正量であってもよい。すなわち、入力された回答視標情報に対応する被検者の眼屈折力に相当する矯正量であってもよい。一例として、例えば、矯正量は、入力された回答視標情報に対応する被検者の球面度数がー2D(ディオプタ)であった場合に、−2Dに相当する矯正量(例えば、球面度数―2Dを0Dとする球面度数)であってもよい。
例えば、矯正制御手段は、入力された回答視標情報に基づいて矯正手段の設定を行う際に、入力された回答視標情報に基づいて、眼屈折力の算出を介して、矯正量の設定を行うようにしてもよい。この場合、例えば、矯正制御手段は、入力された回答視標情報に基づいて、回答視標情報に対応する被検者の眼屈折力を算出する。例えば、矯正制御手段は、算出した眼屈折力に基づいて矯正量を算出し、算出した矯正量となるように矯正手段の設定(制御)を行う。なお、例えば、眼屈折力の算出方法としては、視標情報と眼屈折力が対応付けされたテーブルがメモリ(例えば、メモリ82)に記憶されており、眼屈折力を算出する際に、入力された回答視標情報に対応する眼屈折力をメモリから呼び出すことによって眼屈折力を算出するようにしてもよい。なお、例えば、矯正量の算出方法としては、眼屈折力と矯正量が対応付けされたテーブルがメモリに記憶されており、矯正量を算出する際に、算出された眼屈折力に対応する矯正量をメモリから呼び出すことによって矯正量を算出するようにしてもよい。なお、眼屈折力から矯正量を算出する際に、眼屈折力の結果を矯正量として用いるようにしてもよい。
また、例えば、矯正制御手段は、入力された回答視標情報に基づいて矯正手段の設定を行う際に、入力された回答視標情報に基づいて、矯正量の設定を行うようにしてもよい。すなわち、矯正制御手段は、入力された回答視標情報に基づいて矯正手段の設定を行う際に、入力された回答視標情報に基づいて、眼屈折力の算出を介することなく、矯正量の設定を行うようにしてもよい。この場合、例えば、矯正制御手段は、入力された回答視標情報から、矯正手段の設定を行うための矯正量を算出し、算出結果に基づいて矯正手段の設定を行うようにしてもよい。すなわち、例えば、矯正制御手段は、入力された回答視標情報から、矯正手段の設定を行うための矯正量を算出し、算出した矯正量となるように矯正手段の設定(制御)を行う。なお、例えば、矯正量の算出方法としては、視標情報と矯正量が対応付けされたテーブルがメモリに記憶されており、矯正量を算出する際に、入力された回答視標情報に対応する矯正量をメモリから呼び出すことによって矯正量を算出するようにしてもよい。
<投光光学系>
例えば、ライトフィールドディスプレイ(以下、「LFD」という場合もある)は、各々の画素集合単位から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線(例えば、物体によって反射される光線等)を再現することができる。つまり、LFDは、見る位置に応じた物体からの反射光または光源を再現することができる。また、LFDは、被検眼の光学特性(例えば、球面度数、乱視度数、および乱視軸の方向等の少なくともいずれか)に応じて、出力する画像の特徴値(例えば、呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれか)を適宜設定することも可能である。例えば、被検眼に対する呈示距離が異なる複数の画像をLFDが出力した場合、被検者は、複数の画像のうち、被検眼の球面度数に対応する呈示距離に呈示された画像を観測することができる。
例えば、LFDは、画像源とマイクロレンズアレイを備えていてもよい。画像源は、二次元の方向に並べられた複数の画素を有する。マイクロレンズアレイは、画像源よりも被検眼側に配置されており、二次元の方向に並べられた複数のマイクロレンズを有する。マイクロレンズは、画像源における複数の画素を含む画素集合単位に対応して設けられる。制御部は、マイクロレンズの焦点距離を変更してもよい。マイクロレンズの焦点距離を長くすると、設定可能な視標画像の特徴値の最大幅は小さくなるが、特徴値のピッチをより細かく設定することができる。逆に、マイクロレンズの焦点距離を短くすると、特徴値の最小ピッチは大きくなってしまうが、設定可能な特徴値の最大幅は大きくなる。従って、制御部は、マイクロレンズの焦点距離を変更することで、特徴値が異なる複数の視標画像を適切にLFDに出力させることができる。
なお、マイクロレンズの焦点距離を変更するための具体的方法は、適宜選択できる。例えば、焦点距離を変更することが可能な液晶レンズがマイクロレンズとして使用されていてもよい。この場合、制御部は、液晶レンズを駆動して焦点距離を変更してもよい。また、制御部は、アクチュエータ等を駆動し、マイクロレンズの焦点距離が互いに異なる複数のマイクロレンズアレイを入れ替えることで、マイクロレンズの焦点距離を変更してもよい。また、マイクロレンズアレイは、ユーザによって入れ替え可能な状態で設けられていてもよい。この場合、ユーザは、マイクロレンズの焦点距離が異なる複数のマイクロレンズアレイを入れ替えることで、特徴値のピッチ等を変更することができる。
例えば、LFDは、前述した画像源と微小素子アレイを備えていてもよい。微小素子アレイは、画像源よりも被検眼側に配置されており、二次元の方向に並べられた複数の微小素子を有する。微小素子は、画像源における複数の画素を含む画素集合単位に対応して設けられる。制御部は、微小素子アレイと画像源の間の距離を変更してもよい。微小素子アレイと画像源の間の距離を長くすると、設定可能な視標画像の特徴値の最大幅は小さくなるが、特徴値のピッチをより細かく設定することができる。逆に、微小素子アレイと画像源の間の距離を短くすると、特徴値の最小ピッチは大きくなってしまうが、設定可能な特徴値の最大幅は大きくなる。従って、制御部は、微小素子アレイと画像源の間の距離を変更することで、特徴値が異なる複数の視標画像を適切にLFDに出力させることができる。
なお、例えば、微小素子アレイが備える複数の微小素子は、例えば、レンズ(マイクロレンズ)、ピンホール(マイクロホール)、回折素子、偏光素子、屈折素子等のいずれであってもよい。また、微小素子アレイと画像源の間の距離を変更するための具体的方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、アクチュエータ等を駆動し、微小素子アレイと画像源の少なくともいずれかを移動させることで、距離を変更してもよい。また、微小素子アレイと画像源の少なくともいずれかがユーザによって移動されてもよい。
例えば、投光光学系は、LFDから出射された視標光束を被検眼に向けて投影することで、被検眼に視標画像を呈示する。例えば、投光光学系は、視標光束を被検眼に向けて投影する少なくとも1つ以上の光学部材等を有してもよい。もちろん、投光光学系としては、LFDのみを備える構成されていてもよい。つまり、投光光学系は、LFDであってもよい。
例えば、投光光学系が、光学部材を有する場合に、光学部材としては、ミラー、レンズ、プリズム、等の少なくともいずれかであってもよい。もちろん、光学部材としては、上記光学部材に限定されず、種々の光学部材を用いることができる。
例えば、投光光学系は、左右一対に設けられた右眼用投光光学系と左眼用投光光学系を有するようにしてもよい。この場合、例えば、左右一対に設けられたLFDを用いるようにしてもよい。例えば、右眼用投光光学系と左眼用投光光学系は、右眼用投光光学系を構成する部材と左眼用投光光学系を構成する部材とが、同一の部材によって構成されていてもよい。また、例えば、右眼用投光光学系と左眼用投光光学系は、右眼用投光光学系を構成する部材と左眼用投光光学系を構成する部材とで少なくとも一部の部材が異なる部材によって構成されていてもよい。例えば、右眼用投光光学系と左眼用投光光学系は、右眼用投光光学系を構成する部材と左眼用投光光学系を構成する部材とで少なくとも一部の部材が兼用されている構成であってもよい。また、例えば、右眼用投光光学系と左眼用投光光学系は、右眼用投光光学系を構成する部材と左眼用投光光学系を構成する部材とが、別途それぞれ設けられている構成であってもよい。
<制御手段>
例えば、制御手段は、自覚的検査が実行される際に、被検眼に対する呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれかの特徴値が異なる複数の視標画像を、同時に、または順次にLFDに出力させるようにしてもよい。制御手段は、LFDに出力させる視標画像の特徴値のピッチ、および、視標画像の数の少なくともいずれかを変更する。なお、本開示における特徴値のピッチとは、LFDが出力する複数の視標画像の各々の特徴値のうち、値が隣接する2つの特徴値の差の最小値である。
例えば、特徴値のピッチを小さくすると、被検者は、出力される複数の視標画像を区別し辛くなるが、被検眼の光学特性を細かい精度で検査することができる。一方で、特徴値のピッチを大きくすると、被検眼の光学特性の検査精度は粗くなるが、被検者は視標画像を区別しやすい。また、同時または順次に出力する視標画像の数を多くすると、被検者は複数の視標画像を区別し辛くなるが、広い範囲で効率よく光学特性の検査を行うことができる。従って、本開示で例示する自覚式検眼装置によると、視標画像における特徴値のピッチ、および、出力する視標画像の数の少なくともいずれかを、検査の進行状況または検査内容等に応じて変更することで、LFDを用いた自覚的検査をより適切に実行することができる。
例えば、呈示距離の異なる複数の視標画像を呈示する場合、制御手段は、自覚的検査が実行される際に、被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または順次にLFDに出力させてもよい。被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を、同時にまたは順次にLFDに出力させると、被検眼の球面度数に応じて、呈示された複数の視標画像の各々の見え方が異なる。従って、被検者の球面度数の検査が適切に行われる。
例えば、制御手段は、二次元の領域内の同一の領域に、呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を同時にLFDに呈示させてもよい。複数の視標画像が互いに重複しないように、別々の領域に複数の視標画像を呈示させると、視標画像毎に被検眼の調節力が働きやすくなってしまい、球面度数の検査に影響が出てしまう可能性がある。自覚式検眼装置は、呈示距離が異なる複数の視標画像を同一の領域に同時に呈示することで、被検眼の調節力によって検査の精度が悪化することを抑制することができる。
ただし、呈示距離が互いに異なる複数の視標画像の出力方法を変更することも可能である。例えば、制御部は、二次元の領域内の同一の領域に、呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を、時間的に順次に呈示させてもよい。前述したように、呈示距離が互いに異なる複数の視標画像を、同一の領域に同時に呈示すると、複数の視標画像間の呈示距離のピッチ等によっては、複数の視標画像が重なった状態で被検眼によって視認されてしまい、視標画像がぼけてしまう可能性もある。複数の視標画像を順次に呈示させることで、複数の視標画像が重なって視認されてしまうことが抑制される。また、後述するように、制御部は、二次元の領域内の別々の領域に、複数の視標画像の各々を呈示させてもよい。
例えば、制御手段は、自覚的検査が実行される際に、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくともいずれかが互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または順次にLFDに出力させてもよい。この場合、被検眼の乱視に関する自覚的検査が、効率よく適切に実行される。
例えば、制御手段は、完全には互いに重複しない複数の領域の各々に、複数の視標画像を別々にLFDに呈示させてもよい。この場合、被検眼の光学特性(例えば、球面度数の検査、または乱視の検査等)の自覚的検査が、同時または順次に呈示される複数の視標画像を用いて円滑に実行される。なお、複数の視標画像を別々の領域に呈示する場合には、複数の視標画像が重なって被検眼に視認されてしまう可能性が低下する。
なお、複数の領域に別々に呈示される複数の視標画像は、被検眼への呈示距離が異なる視標画像であってもよいし、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくともいずれかが異なる視標画像であってもよい。また、複数の領域に別々に呈示される複数の視標画像は、複数の領域に同時に(つまり、並行して)表示されてもよいし、複数の領域の各々に順次に表示されてもよい。また、本開示における「順次に」とは、同一の視標画像を、少なくともいずれかの特徴値を連続的に変化させてLFDに出力される場合も含む。
<矯正手段>
例えば、矯正手段は、視標光束の光学特性(例えば、球面度数、柱面度数(乱視度数)、乱視軸角度、偏光特性、及び収差量、等の少なくともいずれか)を変更する構成であればよい。例えば、視標光束の光学特性を変更する構成として、光学素子を制御する構成であってもよい。例えば、光学素子としては、球面レンズ、円柱レンズ、クロスシリンダレンズ、ロータリープリズム、波面変調素子等の少なくともいずれかを用いる構成であってもよい。もちろん、例えば、光学素子としては、上記記載の光学素子とは異なる光学素子を用いるようにしてもよい。
例えば、矯正手段は、被検者眼に対する視標の呈示位置(呈示距離)が光学的に変えられることにより、被検眼の球面度数が矯正される構成であってもよい。この場合、例えば、視標の呈示位置(呈示距離)が光学的に変更する構成としては、LFDを光軸方向に移動させる構成であってもよい。また、この場合、例えば、光路中に配置された光学素子(例えば、球面レンズ)を光軸方向に移動させる構成であってもよい。もちろん、矯正手段は、光学素子を制御する構成と光路中に配置された光学素子を光軸方向に移動させる構成と組み合わせた構成であってもよい。
例えば、矯正手段としては、被検眼の眼前に配置される光学素子を切り換えて配置する検眼ユニット(フォロプタ)であってもよい。例えば、検眼ユニットは、検査窓に光学素子を切り換え配置する左右一対のレンズ室ユニットを備える構成であってもよい。例えば、検眼ユニットは、複数の光学素子が同一円周上に配置されたレンズディスクと、レンズディスクを回転させるための駆動手段と、を有し、駆動手段(例えば、モータ)の駆動により光学素子を電気的に切り換える構成であってもよい。
例えば、矯正手段としては、投光光学系から視標光束を被検眼に向けて導光するための光学部材と、投光光学系のLFDと、間に光学素子を配置して、光学素子を制御することによって、視標光束の光学特性を変更する構成であってもよい。すなわち、矯正手段としては、ファントムレンズ屈折計(ファントム矯正手段)の構成であってもよい。この場合、例えば、矯正手段によって矯正された視標光束が光学部材を介して被検眼に導光される。
例えば、本実施形態において、矯正手段は、左右一対に設けられた右眼用矯正手段と左眼用矯正手段を有する。例えば、右眼用矯正手段と左眼用矯正手段は、右眼用矯正手段を構成する部材と左眼用矯正手段を構成する部材とが、同一の部材によって構成されていてもよい。また、例えば、右眼用矯正手段と左眼用矯正手段は、右眼用矯正手段を構成する部材と左眼用矯正手段を構成する部材とで少なくとも一部の部材が異なる部材によって構成されていてもよい。例えば、右眼用矯正手段と左眼用矯正手段は、右眼用矯正手段を構成する部材と左眼用矯正手段を構成する部材とで少なくとも一部の部材が兼用されている構成であってもよい。また、例えば、右眼用矯正手段と左眼用矯正手段は、右眼用矯正手段を構成する部材と左眼用矯正手段を構成する部材とが、別途それぞれ設けられている構成であってもよい。
なお、本実施形態において、制御手段と、矯正制御手段と、表示制御手段と、が兼用された構成であってもよい。また、例えば、制御手段と、矯正制御手段と、表示制御手段と、が別途それぞれ設けられている構成であってもよい。もちろん、上記各制御手段は、複数の制御手段によって構成されてもよい。
<実施例>
以下、本実施例における自覚式検眼装置の構成について説明する。例えば、図1は、自覚式検眼装置1を正面側から示す斜視図である。例えば、図2は、本実施例に係る自覚式検眼装置1を背面側から示す斜視図である。なお、本実施例においては、後述する呈示窓3が位置する側を自覚式検眼装置1の正面、後述する観察窓41が位置する側を自覚式検眼装置1の背面として説明する。例えば、図1(a)は、自覚式検眼装置1を正面の左方側から示す斜視図である。また、例えば、図1(b)は、自覚式検眼装置1を正面の右方側から示す斜視図である。
例えば、自覚式検眼装置1は、筐体2、呈示窓3、保持ユニット4、第1操作部8、第2操作部9、投光光学系10、観察ユニット40、検眼ユニット50等を備える。例えば、本実施例においては、被検者が筺体2の正面に対向する。例えば、筐体2は、その内部に投光光学系10を収納する。例えば、呈示窓3は、被検者眼(以下、被検眼と記載)に検査視標を呈示するために用いる。例えば、呈示窓3は、投光光学系10における視標光束を透過する。このため、被検眼には、呈示窓3を介した視標光束が投影される。例えば、呈示窓3は、埃などの侵入を防ぐために透明パネルで塞がれている。例えば、透明パネルとしては、アクリル樹脂やガラス板等の透明な部材を用いることができる。
なお、検眼ユニット50が、呈示窓3と被検眼との間に配置されている場合、被検眼には、呈示窓3及び検眼ユニット50の検査窓53を介した視標光束が投影される。
例えば、保持ユニット4は、検眼ユニット50を保持する。例えば、保持ユニット4によって、検眼ユニット50が、退避位置あるいは検査位置に支持される。例えば、本実施例における退避位置は、図1に示すように、筺体2の上部に検眼ユニット50が上昇した状態である。また、本実施例における検査位置は、図9に示すように、筺体2の正面に検眼ユニット50が下降した状態である。このような退避位置と検査位置の切り換えは、保持ユニット4が有する移動ユニット6によって、保持ユニット4の保持アーム35が上下移動されることによって行われる。なお、本実施例においては、保持アーム35と移動ユニット6が一体的に構成された保持ユニット4を備えている。もちろん、保持アーム35と移動ユニット6は、別途独立して設けられていてもよい。例えば、移動ユニット6の駆動部30(例えば、モータ)(図‥参照)が駆動されることによって、検眼ユニット50が、退避位置あるいは検査位置に移動される。例えば、駆動部30の回転方向を制御することで、検眼ユニット50が退避位置あるいは検査位置へ移動される方向が切り換えられる。
<第1操作部及び第2操作部>
以下、第1操作部8及び第2操作部9について説明する。例えば、第1操作部8は、上下移動スイッチ(検眼ユニット50の移動スイッチ)である。また、例えば、第2操作部9は、上下移動スイッチ(検眼ユニット50の移動スイッチ)である。すなわち、本実施例において。第1操作部8と第2操作部9は、同一の操作をするための操作部である。例えば、第1操作部8又は第2操作部9が操作されることによって、検眼ユニット50を被検眼の眼前の検査位置と、退避位置と、の間で移動させることができる。
例えば、第1操作部8は、筐体2の左側面に配置されている。例えば、第2操作部9は、筐体2の右側面に配置されている。例えば、第1操作部と第2操作部は、左右側面における上方に配置されている。なお、本実施例においては、例えば、第1操作部と第2操作部は、筐体2の中心を基準として、左右対称な位置に配置されている。
なお、本実施例において、例えば、第1操作部8と第2操作部9は、同一の形状を有する操作部である。例えば、第1操作部8と第2操作部9とで同一の形状であるため、第1操作部8又は第2操作部9の一方を操作する際に他方と同様の操作で、自覚式検眼装置1を操作することができるため、検者が誤った操作を行う可能性を抑制でき、操作しやすくなる。
なお、本実施例においては、検眼ユニット50を被検眼の眼前の検査位置と、退避位置と、の間で移動させるための操作部として、第1操作部8と第2操作部9が設けられる構成としたがこれに限定されない。例えば、検眼ユニット50を被検眼の眼前の検査位置と、退避位置と、の間で移動させるための操作部としては、少なくとも1つ以上の操作部を有する構成であってもよい。一例として、1つの操作部を用いる場合、操作部は、自覚式検眼装置1の左右側から操作が可能な位置に配置されるようにしてもよい。
<投光光学系>
以下、投光光学系10について説明する。例えば、図3は、投光光学系10を左側面(図1における矢印方向C1)からみた図である。例えば、投光光学系10は、視標呈示部を有し、視標呈示部から出射された視標光束を被検眼Eに向けて投影する。例えば、本実施例において、視標呈示部として、ライトフィールドディスプレイ(LFD)20が用いられる。
例えば、LFD20から出射された視標光束は、光軸L1を通って、呈示窓3及び検眼ユニット50の検査窓53を介して、被検者の被検眼Eに投影される。すなわち、例えば、LFD20から出射された視標光束は、呈示窓3を介して筺体2の内部から外部へと射出され、検査窓53を介して被検眼Eに投影される。
以下、LFD20について説明する。LFD20は、各々の画素集合単位(詳細は後述する)から、方向毎に異なる光を出射することで、物体が放つ光線(例えば、物体によって反射される光線等)を再現することができる。つまり、LFD20は、見る位置に応じた物体からの反射光または光源を再現することができる。また、LFD20は、被検眼の光学特性(例えば、球面度数、乱視度数、および乱視軸の方向等の少なくともいずれか)に応じて、出力する画像の特徴値(例えば、呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれか)を適宜設定することも可能である。
例えば、被検眼に対する呈示距離が異なる複数の画像をLFD20が出力した場合、被検者は、複数の画像のうち、被検眼の球面度数に対応する呈示距離に呈示された画像を観測することができる。また、被検眼の乱視度数および乱視軸の方向に応じて、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向が適切に設定された画像をLFD20が出力した場合、被検者は、乱視の影響が抑制された状態で、呈示された画像を観測することができる。
現在、光線を再現する方式が互いに異なる複数種類のLFDが提案されている。LFDの方式には、例えば、微小素子アレイ方式、複数ディスプレイ方式、およびバリア基盤方式等がある。
例えば、微小素子アレイ方式のLFDは、画像源(例えばディスプレイ等)の正面側(画像を視認するユーザ側)に微小素子アレイを備える。微小素子アレイとは、複数の画素集合単位の各々に対応して設けられる複数の微小素子が、二次元上に並べて(例えば格子状に)配置された光学部材である。微小素子アレイには、例えば、複数のマイクロレンズを備えるマイクロレンズアレイ、複数のマイクロホールを備えるマイクロホールアレイ、複数の回折素子を備える回折素子アレイ、複数の偏光素子を備える偏光素子アレイ、および、複数の屈折素子を備える屈折素子アレイ等の少なくともいずれかを採用できる。
また、例えば、複数ディスプレイ方式のLFDでは、複数のディスプレイがスタック状に組み合わされている。複数ディスプレイ方式のLFDには、例えばテンソルディスプレイ等がある。バリア基盤方式のLFDでは、細かいスリットが形成されたバリア基盤が、画像源(例えばディスプレイ等)の背面側(画像を視認するユーザ側の反対側)に設けられている。なお、LFDの構成は、画素からの光を被検眼に向けて出射する構成でもよいし、スクリーンに画素を投影する構成でもよい。また、LFDは、光を走査させることで画像を出力してもよい。
例えば、自覚式検眼装置1には、いずれの方式のLFDを採用することも可能である。本実施形態では、マイクロレンズアレイを備えた微小素子アレイ方式のLFD20を採用する場合を例示して説明を行う。図4に示すように、本実施形態のLFD20は、画像源21、バックライト22、微小素子アレイ25、および分解能変更部100を備える。なお、図1では、LFD20の構成の理解を容易にするために、画像源21、バックライト22、および微小素子アレイ25の各々が分解された状態が示されている。
例えば、画像源21は、画像を視認するユーザ(本実施例では被検者)の視線方向に交差する二次元の方向(つまり、ディスプレイの表示面に平行な二次元方向)に並べられた複数の画素を有する。一例として、本実施形態の画像源21には、多数の画素を備えた(つまり、高解像度の)ディスプレイが使用されている。しかし、ディスプレイ以外の画像源が使用されてもよい。例えば、物体が放つ光線を再現するための所定の画像が印刷された印刷媒体(紙等)が、画像源21として使用されてもよい。この場合、印刷媒体が交換されることで、LFD20によって出力(呈示)される画像が変更されてもよい。
例えば、バックライト22は、画像源21の背面側に設けられており、画像源21を背面側から照明する。なお、画像源21自体が十分な強さで発光可能な場合等には、バックライト22を省略することも可能である。
例えば、微小素子アレイ(本実施形態ではマイクロレンズアレイ)25は、複数の微小素子26(本実施形態ではマイクロレンズ)を備える。複数の微小素子26は、二次元上に並べて(本実施形態では格子状に)配置されている。各々の微小素子26には、画像源21における複数の画素に対応する。詳細には、画像源21のうち、各々の微小素子26の領域を背面側に投影した領域内に配置された複数の画素が、1つの画素集合単位23となる。画素集合単位23内の画素から出射される光は、画素集合単位23に対応する微小素子26(つまり、画素集合単位23の正面側に配置された微小素子26)を通過して、正面側に出射される。
ここで、図5を参照して、LFD20によって出力される画像の特徴値(例えば、呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれか)を変更するための方法の一例について説明する。図5は、被検眼に対する呈示距離(本実施形態では、LFD20から画像の呈示位置までの距離)が互いに異なる複数の視標画像をLFD20が出力している場合の一部の光線の状態を、模式的に示す図である。図5(A)は、視標画像の呈示位置(つまり、結像面の位置)を、図5(B)の呈示位置PP2比べて被検眼の位置EPに近い位置PP1とした場合の、光線の状態の一例である。
図5(A)、(B)に示すように、LFD20は被検眼に対する視標画像の呈示位置を、前後方向(図5における左右方向)に変化させることができる。一例として、本実施形態のLFD20は、各々の画素集合単位23のうち、発光させる画素の集合の数を変化させることで、視標画像の呈示位置(つまり、視標画像の結像面の位置)を変化させることができる。また、LFD20は、各々の画素集合単位23のうち、発光させる画素の位置を変えることで、画角を変更することも可能である。
また、LFD20は、被検眼の視線方向に交差する二次元の領域内の同一の領域に、被検眼に対する呈示距離が互いに異なる複数の視標画像(例えば、図5(A)の視標画像と、図5(B)の視標画像)を同時に呈示させることも可能である。この場合、被検者は、呈示された複数の画像のうち、被検眼の球面度数に応じた視標画像を観測することができる。従って、自覚式検眼装置1は、呈示距離が異なる複数の視標画像をLFD20に出力させることで、被検眼の球面度数の自覚的検査を適切に行うことができる。また、複数の視標画像を同一の領域に呈示する場合、視標画像毎に被検眼の調節力が働いてしまう可能性が、複数の視標画像を別々の領域に呈示させる場合よりも低い。
なお、LFD20は、呈示距離が異なる複数の視標画像の各々を、異なる領域に別々に呈示することも可能である。また、LFD20は、呈示距離が異なる複数の視標画像の各々を、順次に呈示することも可能である。また、LFD20が1つの視標画像のみを、設定された呈示距離に呈示できることは言うまでもない。これらの場合でも、球面度数の自覚的検査は適切に実行される。
また、LFD20は、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向を調整して視標画像を呈示することも可能である。つまり、LFD20は、表示面に平行な平面上に視標画像を呈示するだけでなく、円柱軸を中心に湾曲させた面上に視標画像を呈示することも可能である。さらに換言すると、LFD20は、円柱軸からの距離に応じてフォーカスを変化させた視標画像を呈示することもできる。被検眼の乱視度数および乱視軸の方向に応じて、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向が適切に設定されたている場合、被検者は、乱視の影響が抑制された状態で、呈示された画像を観測することができる。
LFD20は、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくとも一方が互いに異なる複数の視標画像を、同時に、または順次に出力することができる。この場合、被検眼の乱視に関する自覚的検査が、効率よく適切に実行される。なお、円柱度数の矯正量および円柱軸の方向の少なくとも一方が互いに異なる複数の視標画像は、異なる領域に別々に呈示されてもよいし、順次に呈示されてもよい。
なお、画像の特徴値(例えば、呈示距離、円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれか)が互いに異なる複数の画像を呈示するための具体的な方法は、適宜選択されればよい。例えば、図5(A)、(B)に示す例では、各々の画素集合単位23(つまり、各々のマイクロレンズ25)から、複数の視標画像用の光線が出射される。従って、被検者によって観測される視標画像の解像度が低下し難い。しかし、LFD20は、特徴値が互いに異なる視標画像毎に、光線を出射させる画素集合単位23を区別してもよい。この場合、特徴値が互いに異なる複数の視標画像用の光線が、重複して被検眼に観測されてしまう可能性が低下する。また、LED20は、画像の表示面(本実施形態ではマイクロレンズアレイ25)とユーザの間に、各々の画素集合単位23から出射される複数の光線がいずれも通過する光学素子(例えばレンズ等)を備えていてもよい。
図4の説明に戻る。分解能変更部100は、視標画像の特徴値の分解能を変更する。特徴値の分解能とは、LFD20が調整することが可能な特徴値の最小ピッチである。LFD20は、分解能変更部100によって分解能を高くすることで、細かいピッチで視標画像の特徴値を調整することができる。また、LFD20は、分解能変更部100によって分解能を低くすることで、設定可能な視標画像の特徴値の最大幅(最大範囲)を大きくすることができる。
分解能変更部100の具体的な構成は、適宜選択できる。一例として、本実施形態の分解能変更部100は、微小素子アレイ(マイクロレンズアレイ)25が備える複数の微小素子(マイクロレンズ)26の焦点距離を変更することで、視標画像の特徴値の分解能を変更することができる。詳細には、本実施形態では、焦点距離を変更することが可能な焦点距離可変レンズ(例えば液晶レンズ等)が、微小素子アレイ25のマイクロレンズとして使用されている。分解能変更部100は、焦点距離可変レンズを駆動させることで、焦点距離を変更する。マイクロレンズの焦点距離を長くすると、特徴値の分解能が高くなる。逆に、マイクロレンズの焦点距離を短くすると、設定可能な特徴値の最大幅が大きくなる。
また、本実施形態の分解能変更部100は、微小素子アレイ25と画像源21の間の距離を変更することで、視標画像の特徴値の分解能を変更することができる。一例として、本実施形態の分解能変更部100は、アクチュエータ(例えばモータ等)を駆動し、微小素子アレイ25と画像源21の少なくともいずれかを、表示面に垂直な方向に移動させる。その結果、微小素子アレイ25と画像源21の間の距離が変更されて、特徴値の分解能が変更される。微小素子アレイ25と画像源21の間の距離を長くすると、特徴値の分解能が高くなる。逆に、微小素子アレイ25と画像源21の間の距離を短くすると、設定可能な特徴値の最大幅が大きくなる。
なお、微小素子アレイ25と画像源21の間の距離を長くした際に、光線を通過させる物質(例えば、ガラスおよび樹脂等の少なくともいずれか)が、微小素子アレイ25と画像源21の間に挿入されてもよい。この場合、微小素子アレイ25と画像源21の間の位置調整(所謂「アライメント」)等が容易になる。また、微小素子アレイ25と画像源21の間の距離を変更して特徴値の分解能を変更する場合、マイクロレンズアレイ以外の微小素子アレイ25(例えば、マイクロホールアレイ、回折素子アレイ、偏光素子アレイ、または、屈折素子アレイ等)が使用されていてもよい。
<観察ユニット>
以下、観察ユニット40について説明する。図6は、観察ユニットについて説明するための図である。例えば、本実施例における観察ユニット40は、呈示窓3を介して、後述する検眼ユニット50と被検眼Eとの位置関係を観察するために用いる。例えば、本実施例において、観察ユニット40は、観察窓41、遮蔽部42、カバー43、検出器(検出手段)45等を備える。なお、観察ユニット40としては、少なくとも観察窓41を備える構成であってもよい。
例えば、観察窓41は、検眼ユニット50と被検眼Eとの位置関係を、筐体2の外部から呈示窓3を介して観察するために用いる。例えば、本実施例における観察窓41は、検者眼OEから被検眼Eの瞳孔位置を確認することが可能な位置に配置されている。
例えば、カバー43はヒンジ44によって筺体2に固定されており、観察窓41に対して開閉することができる。例えば、カバー43は、検者が図示なきノブを押し引きすることで開閉可能である。
例えば、検出器45は、観察ユニット40におけるカバー43の開閉を検出する。例えば、検出器45はフォトインタラプタ等の光センサを用いて構成される。すなわち、本実施例における検出器45は、発光素子と受光素子が対向する凸部45aを有し、凹部45bにはカバー43に設けられた突出部46が嵌合する。例えば、検出器45は、凹部45bに突出部46が嵌合することによって発光素子からの光が遮光されると、カバーが閉じた状態であることを検出する。また、例えば、検出器45は、凹部45bから突出部46が離れ、発光素子からの光が受光素子に受光されると、カバーが開いた状態であることを検出する。
<検眼ユニット>
以下、検眼ユニット50について説明する。例えば、検眼ユニット50は、筐体2と近接している(図3参照)。例えば、本実施例においては、検眼ユニット50における検査窓53から、筐体2に配置された呈示窓3までの距離W(図3参照)が135mm程度に設計されている。なお、検査窓53から呈示窓3までの距離Wは、本実施例に限定されない。例えば、距離Wが検者の頭長よりも短い場合において、検眼ユニット50と筐体2との間に、検者が頭を入り込ませることができなくなるため、検眼ユニット50と被検眼Eとの位置関係を観察することが困難となる。このため、距離Wが検者の頭長よりも短い場合において、観察窓41を効果的に用いることができる。
例えば、図7は、検眼ユニット50を示す図である。例えば、検眼ユニット50は、額当て51、左右一対のレンズ室ユニット52、検査窓53、駆動部54、駆動部55、移動ユニット56、角膜位置照準光学系60等を備える。例えば、額当て51は被検者の額に当接し、被検眼Eと検眼ユニット50との距離を一定に保つために用いられる。
例えば、レンズ室ユニット52は、検査窓53に光学素子を切り換えて配置する。例えば、レンズ室ユニット52の内部には、レンズディスク57が備えられている。レンズディスク57は、同一円周上に多数の光学素子(球面レンズ、円柱レンズ、分散プリズム等)を配置する。例えば、レンズディスク57は、駆動部54(アクチュエータ等)によって回転制御される。これによって、検者が所望する光学素子が検査窓53に配置される。例えば、検査窓53に配置された光学素子は、駆動部55(モータやソレノイド等)によって回転制御される。これによって、光学素子は検者が所望する回転角度で検査窓53に配置される。
例えば、レンズディスク57は、1枚のレンズディスク、または複数枚のレンズディスクからなる。例えば、複数枚のレンズディスク(レンズディスク群)を備える場合には、各レンズディスクに対応する駆動部がそれぞれ設けられる。例えば、レンズディスク群の各レンズディスクは、開口(または0Dのレンズ)及び複数の光学素子を備える。各レンズディスクの種類としては、度数の異なる複数の球面レンズを有する球面レンズディスク、度数の異なる複数の円柱レンズを有する円柱レンズディスク、補助レンズディスクが代表的である。また、本実施例におけるレンズディスクは、十字線が付された位置合わせ用のレンズを備える。例えば、補助レンズディスクには、赤フィルタ/緑フィルタ、プリズム、クロスシリンダレンズ、偏光板、マドックスレンズ、オートクロスシリンダレンズの少なくともいずれかが配置される。なお、レンズディスクの詳細な構成については、特開2007−68574号公報及び特開2011−72431号公報を参考にされたい。
例えば、移動ユニット56は、レンズ室ユニット52の間隔を調整する。例えば、左右レンズ室ユニットの間隔は、スライド機構を有する駆動部58によって調整される。これによって、検査窓53の間隔を、被検眼のPDに合わせて変更することができる。また、移動ユニット56は、左右レンズ室ユニットの輻輳角(内寄せ角)を調整する。例えば、左右検眼ユニットの輻輳角は、輻輳機構を有する駆動部59によって調整される。なお、移動ユニットの詳細な構成については、特開2004−329345号公報を参考にされたい。
なお、検眼ユニット50は、上記構成に限定されない。例えば、検眼ユニット50は、視標光束の光学特性(例えば、球面度数、円柱度数、円柱軸、偏光特性、及び収差量、等の少なくともいずれか)を変更する構成であればよい。例えば、視標光束の光学特性を変更する構成として、光学素子を制御する構成であってもよい。例えば、波面変調素子を用いる構成であってもよい。
<制御部>
例えば、図8は、自覚式検眼装置1における制御系の概略構成図である。例えば、制御部80には、第1操作部8、第2操作部9、LFD20、検出器45、コントローラ81、不揮発性メモリ82、等が接続されている。また、例えば、制御部80には、移動ユニット6が備えるモータ30、検眼ユニット50の各部材が備える駆動部(駆動部54、55、58、59)等が接続されている。
例えば、制御部80は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備える。例えば、CPUは、自覚式検眼装置1における各部材の制御(例えば、LFD20による視標画像の出力制御等)を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、自覚式検眼装置1の動作を制御するための各種プログラム(例えば、眼屈折力を検査するための検査処理プログラム等)や、視標画像のデータ等が記憶されている。なお、制御部80は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
例えば、コントローラ81は、LFD20の表示や、検眼ユニット50における光学素子の配置等を切り換える際に用いる。例えば、コントローラ81から入力された信号は、図示なきケーブルを介して制御部80に入力される。なお、本実施例においては、コントローラ81からの信号が、赤外線等の無線通信を介すことによって制御部80へ入力される構成としてもよい。
例えば、コントローラ81には、キーボード、マウス、タッチパネル等の少なくともいずれかを使用できる。なお、コントローラ81と共に、またはコントローラ81に代えて、各種指示および応答を入力するためのマイク等が使用されてもよい。
なお、例えば、制御部80およびコントローラ81は、自覚式検眼装置1の筐体とは別の筐体に設けられていてもよい。例えば、自覚式検眼装置1に接続されたパーソナルコンピュータの制御部が、自覚式検眼装置1の制御部80として機能してもよい。
例えば、不揮発性メモリ82は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、不揮発性メモリ82としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、自覚式検眼装置、USBメモリ等を使用することができる。例えば、不揮発性メモリ82には、検査視標画像データ(視標画像)、視標画像に対応する視標情報が多数記憶されている。また、例えば、不揮発性メモリ82には、視標情報と検眼ユニット50による矯正量とが対応付けされたテーブルが記憶されている。
例えば、本実施例において、制御部80は、検出器45の検出結果に基づいて自覚式検眼装置1の測定モードを切り換える。例えば、本実施例において、制御部80は、カバー43の開閉に連動して、測定モードの切り換えを自動的に行う。例えば、検出器45によってカバー43が開いたことが検出されると、制御部80は、測定モードを被検者の瞳孔位置を確認するための第2モードに設定する。また、例えば、検出器45によってカバー43が閉じたことが検出されると、制御部80は、測定モードを被検者の自覚的な検査を行うための第1モードに設定する。なお、本実施例では、カバー43の開閉に連動して、測定モードの切り換えが自動的に行われる構成としたがこれに限定されない。例えば、測定モードの切り換えは、検者によって手動で行われてもよい。この場合には、後述するコントローラ81を用いて、測定モードを切り換えるための信号を制御部80へ入力する構成であってもよい。
<制御動作>
以下、上記の自覚式検眼装置1を用いた自覚式検査の動作について説明する。なお、本実施例においては、自覚式検査として、被検者の球面度数を算出する場合を例に挙げて説明する。もちろん、自覚式検査として、被検者の乱視度数、乱視軸角度を算出するようにしてもよい。なお、以下、被検者が確認できた視標画像の回答結果を入力する際の視標情報として、視標画像を模した視標マークが表示される場合を例に挙げて説明する。もちろん、視標情報としては、視標マークに限定されず、種々の視標情報を用いることができる。また、以下、視標マークと検眼ユニット50の矯正量が対応付けされており、視標マークが選択されることで、矯正量が算出される場合を例に挙げて説明する。
初めに、例えば、検者は、第1操作部8を操作して、検眼ユニット50を図9に示す検査位置に下降させる。例えば、第1操作部8が操作されると、制御部80は、モータ30を駆動する。例えば、モータ30の駆動によって、検眼ユニット50が検査位置へ向けて下降する。例えば、モータ30が駆動されることによって、検眼ユニット50が検査位置まで移動される。これによって、図9に示されるように、眼屈折力測定ユニット50の検査位置への移動が完了されて、検眼ユニット50を用いた自覚検査が可能な状態となる。また、自覚式検眼装置1には、コントローラ81が接続されている。
上記のようにして、検眼ユニット50が検査位置へ移動される。次いで、例えば、検者は、自覚式検査を実施する前に、予め、被検者のPDを測定しておき、自覚式検眼装置1において、測定したPDを入力する。これによって、制御部80は、駆動部58を駆動させ、左右レンズ室ユニット52の間隔を調整し、検査窓53の間隔を被検眼のPDに合わせて変更する。例えば、制御部80は、左右の検査窓53の光軸間の水平方向(X方向)における距離がPDと同一になるように調整をする。なお、本実施例において、同一とは略同一も含む。
次いで、検者は、被検者に検査窓53を覗くように指示する。ここで、例えば、検者は、被検眼Eの瞳孔間距離PDを確認するためにカバー43を開く。このとき、検出器45はカバー43が開いたことを検出し、制御部80が測定モードを被検者の瞳孔位置を確認するための第2モードに切り換える。
本実施例において、コントローラ81は、モニタ81a(表示手段)を有する。例えば、検者は、必要に応じて、コントローラ81を操作して左右レンズ室ユニット52の間隔を調整する。次いで、検者は、被検眼Eの角膜頂点位置を確認するために、角膜位置照準光学系60を用いて、眼屈折力測定ユニット50に対する被検眼Eの位置合わせを行う。
例えば、検眼ユニット50に対する被検眼Eの位置合わせが終了すると、検者はカバー43を閉じて自覚式検査を開始する。このとき、制御部80は、検出器45によって、カバー43が閉じたことを検出し、測定モードを被検者の自覚的な検査を行うための第1モードに切り換える。
例えば、自覚式検査では、被検眼のディオプタ(球面度数)の検査が、被検者の左眼および右眼の少なくとも一方に対して実行される。制御部80は、ディオプタの自覚式検査の開始指示を入力すると、自覚式検査処理を実行する。
初めに、例えば、制御部80は、同時または順次に呈示させる複数の視標画像における特徴値のピッチを設定する。なお、本実施例においては、複数の視標画像が同時に呈示される場合を例に挙げて説明する。例えば、ピッチとは、複数の視標画像の各々の特徴値(本実施例においては、呈示距離(球面度数))のうち、値が隣接する2つの特徴値の差の最小値である。特徴値のピッチを大きい値に設定した場合、被検眼の球面度数が大まかに把握される。一例として、例えば、本実施例において、被検眼の球面度数の0.5ディオプタ(D)の差に対応する呈示距離の差が、ピッチとして設定される。
次いで、制御部80は、分解能変更部100の駆動を制御することで、視標画像の特徴値の分解能の値を設定する。前述したように、特徴値の分解能を低い値とすると、複数の視標画像における特徴値の最大幅(最大範囲)が大きくなる。本実施例においては、視標画像における特徴値の最大幅(最大範囲)が0D〜−3.5Dの範囲となるように、視標画像の特徴値の分解能の値が設定される。
次いで、制御部80は、同時または順次に出力する視標画像の数(以下、「出力画像数」という場合もある)Nを設定する。出力画像数Nを大きい値に設定した場合、被検眼の眼屈折力(本実施例では、球面度数)を広い範囲で検査することができる。一例として、本実施形態では、出力画像数Nは「8」に設定される。
次いで、制御部80は、被検眼に対する呈示距離が互いに異なる8個の視標画像をLFD20に出力させる。詳細には、本実施例では、8個の視標画像が同一領域内に同時に呈示される。その結果、視標画像毎に被検眼の調節力が働いてしまう可能性が低下する。呈示される複数の視標画像によると、被検眼の球面度数が大まかに効率よく検査される。
例えば、本実施例においては、上記に記載したように、視標画像間のピッチ(本実施例においては、複数の視標画像間の球面度数の間隔)を−0.5D、視標画像の範囲を0D〜−3.5Dの範囲、視標画像の数を8個とした場合を例に挙げて説明する。本実施例において、例えば、被検眼に呈示される8個の視標画像としては、四角形、三角形、菱形、三本線、マル、バツ、六角形、ホシ、の視標画像が表示される。例えば、それぞれの視標画像において、−0.5D間隔で呈示距離(球面度数)が設定されている。例えば、四角形に0D、三角形に−0.5D、菱形に−1.0D、三本線に−1.5D、マルに−2.0D、バツに−2.5D、六角形に−3.0D、ホシに−3.5D、の視標画像が表示され、視標画像間の球面度数は、−0.5D間隔となっている。もちろん、視標画像は上記視標画像に限定されず、種々の画像を用いることができる。
例えば、上記のような複数の視標画像が同時に被検者に呈示される。一例として、例えば、被検者の眼屈折力における球面度数が0Dであった場合には、被検者には0Dに相当する視標画像である四角形が確認できる。また、例えば、被検者の球面度数が−2.0Dである場合に、被検者には、−2.0Dに相当する視標画像であるマルが確認できる。
図10は、コントローラ81のモニタ81aの表示画面の一例について説明する模式図である。例えば、コントローラ81の表示画面には、視標画像に対応する視標情報が表示される。例えば、検者は、被検者が回答した視標画像に対応する視標情報を選択することで、検眼ユニット50の検査窓53に配置される光学素子を切り換えることができる。例えば、検眼ユニット50の検査窓53に配置される光学素子の矯正量(球面度数、乱視度数、乱視軸角度等)は、矯正量表示欄75に表示される。本実施例においては、視標情報として、視標画像を模した視標マーク70a〜70hを用いる。例えば、視標マーク70a〜70hは、視標マーク欄70に配列表示されている。
例えば、視標マーク70aは、四角形の視標画像を模した(四角形の視標画像に対応した)視標マークである。例えば、視標マーク70bは、三角形の視標画像を模した(三角形の視標画像に対応した)視標マークである。例えば、視標マーク70cは、菱形の視標画像を模した(菱形の視標画像に対応した)視標マークである。例えば、視標マーク70dは、三本線の視標画像を模した(三本線の視標画像に対応した)視標マークである。例えば、視標マーク70eは、マルの視標画像を模した(マルの視標画像に対応した)視標マークである。例えば、視標マーク70fは、バツの視標画像を模した(バツの視標画像に対応した)視標マークである。例えば、視標マーク70gは、六角形の視標画像を模した(六角形の視標画像に対応した)視標マークである。例えば、視標マーク70hは、ホシの視標画像を模した(ホシの視標画像に対応した)視標マークである。
例えば、矯正量表示欄75における球面度数表示欄76は、検眼ユニット50の検査窓53に配置される光学素子の球面度数(検眼ユニット50の矯正量)を表示するための表示欄である。本実施例においては、矯正量表示欄75における球面度数表示欄76を例に挙げて制御動作について説明する。
例えば、被検眼に対して、上記のような複数の視標画像が同時に被検者に呈示される。例えば、被検者に対して検者はどのような視標画像が観察できているか確認をする。検者は、被検者からの回答に基づいて、視標マーク欄70の中から被検者が回答をした視標画像を示す視標マーク(回答視標マーク)を選択する。なお、本実施例におけるコントローラ81のモニタ81aは、タッチパネル式のモニタとなっている。このため、検者は、視標マーク欄70の中から被検者が回答をした視標画像を示す視標マークを、タッチ操作によって、入力することができる。
例えば、検者によって、視標マークが選択されると、選択された視標マークに基づいて、検眼ユニット50の設定が行われる。例えば、制御部80は、検者によって選択された視標マークに基づいて、メモリ82から視標マークに対応する検眼ユニット50の矯正量を呼び出し、矯正量に基づいて、検眼ユニット50の検査窓53に配置される光学素子を切り換える。なお、本実施例において、視標マークと矯正量とは予め対応付けされており、メモリ82に記憶されている。本実施例において、例えば、矯正量としては、視標マークに対応する被検眼の眼屈折力を0Dに矯正するための矯正量が用いられる。もちろん、矯正量としては、上記構成に限定されず、被検者の眼屈折力に基づいて設定される矯正量であればよい。
一例として、例えば、被検者がマルが観察できると回答をした場合に、検者は、視標マーク欄70の中から、マルの視標画像を模した視標マーク70e(回答視標マーク)を選択する。図11は、視標マーク選択後における、コントローラ81のモニタ81aの表示画面の一例について説明する模式図である。例えば、検者によって、視標マーク70eが選択されると、制御部80は、メモリ82から視標マーク70eに対応する矯正量(本実施例においては、球面度数)を呼び出し、検眼ユニット50の設定を行う。本実施例において、例えば、視標マーク70eに対応する視標画像の球面度数(被検者の球面度数)は−2.0Dであり、その被検者の球面度数を矯正するための矯正量として、−2.0Dを0Dに矯正するための球面度数を設定する。例えば、制御部80は、コントローラ81のモニタ81aの球面度数表示欄76に、被検者の球面度数−2.0Dを矯正するための検眼ユニット50の球面度数値として、−2.0Dを表示させる。また、例えば、制御部80は、検眼ユニット50の検査窓53において、−2.0Dを0Dに矯正する光学素子を配置させる。このようにして、視標マークの選択によって、検眼ユニット50の設定が行われる。
例えば、検眼ユニット50の設定が完了すると、検者は被検者に再び視標画像を確認させ、どのような視標画像が観察できるか確認をする。例えば、検眼ユニット50の設定によって、被検者の球面度数を0Dへ矯正できていた場合に、被検者は四角形が観察できるようになる。すなわち、被検者は、マルが観察できた状態から、四角形が観察できる状態となる。上記のようにして、0Dの視標画像が観察できた状態の矯正量を被検者の眼屈折力(例えば、球面度数S、乱視度数C、乱視軸角度A等)として取得することができる。
なお、被検者によって0Dの視標画像(例えば、上記の四角形の視標画像)とは異なる視標画像が観察できると回答された場合には、検者は、コントローラ81を操作して、追加検査の実行指示を行うようにしてもよい。このように、例えば、追加検査の実行指示が入力されている場合、制御部80は、特徴値のピッチ、出力画像数N、および特徴値の分解能を状況に応じて再設定し、追加検査を実行する。
例えば、自覚式検査が終了すると、検者は被検眼に対して仮枠検査を実施する。例えば、検者は、第1操作部8の上スイッチ8aを操作して、検眼ユニット50を図1に示す退避位置まで上昇させる。例えば、第1操作部8の上スイッチ8aが操作されると、制御部80は、モータ30を駆動する。なお、例えば、検眼ユニット50を退避位置へ移動させる場合に、制御部80は、検眼ユニット50を検査位置へ移動させる場合のモータ30の回転方向と反対の回転方向にモータ30を回転させる。
例えば、検眼ユニット50の退避位置への移動が完了すると、検者は、被検者に仮枠(トライアルフレームあるいはテストフレーム)を装着させ、様々な度数のレンズ(トライアルレンズ)を取り換えながら、装用感を確認する。
以上のように、本実施例における自覚式検眼装置は、LFDによって、複数の視標画像を被検者に呈示する構成を備える。また、例えば、自覚式検眼装置は、複数の視標画像の中から被検者が回答した視標画像を示す回答視標情報を入力する入力手段(例えば、コントローラ81)と、入力手段によって入力された回答視標情報に基づいて、矯正手段(例えば、検眼ユニット50)の設定を行う矯正制御手段(例えば、制御部80)を備える。これによって、例えば、複数の視標画像の中から被検者が回答した視標画像を示す回答視標情報を入力し、入力した回答視標情報に基づいて、矯正手段の設定が行われることで、検者は、被検者が確認できた視標画像に対応する視標情報(回答視標情報)を入力するような直観的な操作を行うだけで、容易に矯正手段の設定を行うことができ、容易に良好な自覚式検査を進めることができる。すなわち、例えば、検者は、被検者が確認できた視標画像から、視標画像に対応する矯正量を算出し、その矯正量に応じた操作を行い、矯正手段の制御を行う、といった一連の作業の必要がなくなるため、操作に不慣れな検者であっても容易に自覚式検査を進めることができる。また、例えば、視標画像に対応する矯正度数を算出する際の誤った矯正量を算出してしまうことや、算出した矯正量を入力する際に誤った矯正量を入力しまうことを抑制することができ、容易に良好な自覚式検査を行うことができる。
また、例えば、本実施例において、自覚式検眼装置は、複数の視標画像に対応する複数の視標情報を表示手段(例えば、モニタ81a)に表示させる表示制御手段(例えば、制御部80)を備えていてもよい。また、矯正制御手段は、表示手段に表示された複数の視標情報の中から入力手段によって選択された回答視標情報に基づいて、矯正手段の設定を行うようにしてもよい。これによって、例えば、検者は、表示手段に表示された複数の視標情報の中から視標情報を選択するだけでより容易に良好な自覚式検査を行うことができる。
また、例えば、本実施例において、制御手段は、LFDに出力させる複数の視標画像を変更させるようにしてもよい。また、例えば、表示制御手段は、制御手段によって、複数の視標画像の変更が行われた場合に、変更された複数の視標画像に対応する複数の視標情報を表示手段に表示させるようにしてもよい。これによって、例えば、呈示される視標画像の変更に合わせて視標情報が自動的に変更されるため、検者は、手間なくスムーズに自覚式検査を行うことができる。
また、例えば、本実施例において、表示制御手段は、被検眼に呈示される複数の視標画像に対応する複数の視標情報のみを表示手段に表示させるようにしてもよい。これによって、例えば、ライトフィールドディスプレイを用いた場合に、複数の視標画像が同時又は順次に呈示されることになるため、検者は、被検者に呈示されている複数の視標画像がわかりづらくなる。この際に、検者は呈示されていない視標画像に対応する視標情報を選択してしまい、自覚式検査に時間がかかる。また、例えば、呈示されている以外の視標情報が表示される場合には、被検者が回答した視標画像に対応する視標情報を選択する際に、検者は、多くの視標情報の中から、該当する視標情報をさがすことになるため、時間がかかる。例えば、上記構成によれば、検者は、被検者に呈示されている視標画像に対応する視標情報のみが選択可能となるため、視標情報を探す必要がなく、呈示されている視標画像に対応する視標情報のみの中から選択を行うことができるため、誤った視標情報を選択してしまうことを抑制し、スムーズに自覚式検査を行うことができる。また、例えば、検者は、被検者に呈示されている視標画像に対応する視標情報のみが選択可能となるため、視標情報を探す必要がなく、呈示されている視標画像に対応する視標情報のみの中から選択を行うことができるため、該当する視標情報をさがすことが容易となり、スムーズに自覚式検査を行うことができる。
また、例えば、本実施例において、表示制御手段は、複数の視標情報として、複数の視標画像のそれぞれを模した複数の視標情報を表示手段に表示させるようにしてもよい。これによって、例えば、視標情報が、被検者に呈示されている視標画像を模した視標マークであるため、検者は、より直観的に視標情報の選択を行いやすくなり、より容易に良好な自覚式検査を進めることができる。
また、例えば、本実施例において、表示制御手段は、複数の視標情報を同一の画面上に配列表示させるようにしてもよい。これによって、例えば、同一画面上で選択できる視標情報を確認することができるため、視標情報を選択する際に、表示手段の表示画面を切り換えて視標情報を選択する必要がなく、手間なく自覚式検査を行うことができる。
なお、本実施例においては、眼屈折力として球面度数を取得する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、眼屈折力として、乱視度数や乱視軸角度を取得するようにしてもよい。例えば、乱視度数や乱視軸角度を求める場合、視標画像の特徴値のうち、被検眼に対する円柱度数の矯正量、および円柱軸の方向の少なくともいずれかが異なる視標画像を被検者に呈示するようにすればよい。この場合、被検者に呈示した複数の視標画像の中から被検者が回答した視標画像を示す回答視標情報を入力するようにすればよい。制御部80は、入力された回答視標情報に基づいて、検眼ユニット50の設定を行うようにすればよい。
なお、上記構成においては、特徴値のピッチと出力画像数Nが共に変更される。しかし、ピッチPと出力画像数Nの一方のみが変更されてもよい。また、本実施例においては、複数の視標画像が同一領域内に呈示される。しかし、複数の視標画像が異なる領域に別々に呈示されてもよい。なお、本実施例においては、分解能が変更される構成を例に挙げているがこれに限定されない。例えば、分解能は常に変更されなくてもよい。