JP2020084022A - 多孔フィルム - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の実施形態の一例に係る多孔フィルム(以下、「本フィルム」と称することがある)は、プロピレン系樹脂を主成分とし、空孔率が10〜40%、透気度が20,000秒/dL以上、突刺強度(P1)が20gf/μm以上である多孔フィルムである。
本フィルムの厚みは特に制限されるものではないが、5〜100μmであることが好ましい。下限については、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。一方で上限として、90μm以下が好ましく、75μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましい。厚みが5μm以上であれば、フィルムとして十分な強度を保持することができる。また、厚みが100μm以下であれば、低い水蒸気透過性と高い酸素透過性を維持することができる。
本フィルムの空孔率は、多孔フィルムの空間部分の割合を示す数値であり、10〜40%であることが重要である。下限としては、12%以上がより好ましく、14%以上がさらに好ましく、16%以上が特に好ましい。一方で上限として、38%以下がより好ましく、36%以下がさらに好ましく、34%以下が特に好ましい。空孔率が10%以上であれば、高い酸素透過度とすることができる。また、空孔率が40%以下であれば、フィルム中の空孔による厚み方向への連通孔形成を妨げ、低い水蒸気透過度とすることができる。
従って、空孔率を10〜40%の範囲とすることにより、低い水蒸気透過度と高い酸素透過度を両立することが出来る。
一般的な空孔率の調整方法として、発泡剤や各種フィラーの添加量、または後に抽出を前提として添加される溶剤量に代表される材料面での調整と、その材料を加工する際の温度や圧力、時間、延伸倍率などの条件調整が考えられ、材料面と加工面を共に調整することで、空孔率を調整することができる。
空孔率の測定方法は以下のとおりである。
測定試料の実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度に基づいて空孔率が0%の場合の質量W0を計算し、これらの値から下記式に基づいて空孔率を算出する。
空孔率(%)={(W0−W1)/W0}×100
本フィルムの透気度は、20,000秒/dL以上であることが好ましく、40,000秒/dL以上であることがより好ましく、60,000秒/dL以上であることが特に好ましい。多孔フィルムの透気度を20,000秒/dL以上とすることで、過度な水蒸気透過性を有することを防ぐことができ、酸素透過性とのバランスを保持することができる。
透気度は多孔フィルムの厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mlの空気が当該多孔フィルムを通過するのに必要な秒数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方が当該多孔フィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方が当該多孔フィルムの厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とは当該多孔フィルムの厚み方向の孔のつながり度合いである。透気度(秒/100ml)は、JISP8117に準拠して測定でき、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
本フィルムの突刺強度は、20gf/μm以上であることが好ましく、22gf/μm以上であることがより好ましく、24gf/μm以上であることがさらに好ましく、26gf/μm以上であることが特に好ましい。
本フィルムの突刺強度が20gf/μm以上であれば、本フィルムはフィルム中に粗大な孔径が少なく、膜内部の孔構造が均一かつ微細であるため、低い水蒸気透過性と高い酸素透過性を有することになると考えている。上限については特に制限はないが、通常40gf/μm以下である。
突刺強度については、例えば、延伸工程、延伸後の熱処理工程を適当な条件にして、孔径が微細且つ均一なフィルムとすることで高い突刺強度を有する多孔フィルムを得ることができる。
本フィルムは、多孔フィルムの突刺強度(P1)と、多孔フィルムを熱プレスした後の突刺強度(P2)が、以下の式(1)を満たすことが好ましい。
式(1): P1/P2 > 1.3
式(1)は熱プレス後のフィルムと比べて、空孔が存在する多孔フィルムであるにも関わらず突刺強度が高いことを示す。式(1)を満たす場合、孔構造が微細かつ均一に存在する多孔フィルムになっていると考えている。
ここで、多孔フィルムの熱プレスは具体的には実施例に記載の条件で行われる。
また突刺強度は具体的には実施例に記載の条件で測定されるものである。
本フィルムの平均光線透過率は、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、45%以上であることが特に好ましい。本フィルムの平均光線透過率を30%以上とすることで、多孔フィルムは透明性を有しているということができる。上限については特に制限はないが、通常98%以下である。
光線透過率は分光光度計にて測定でき、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
光線透過率はフィルム厚みにより多少変化するが、本発明においては厚み15μmあたりの平均光線透過率が上記の範囲であることが好ましい。
本フィルムの酸素透過度は、1,000,000cc/m2・24hr・atm以上であることが好ましく、5,000,000cc/m2・24hr・atm以上であることがより好ましく、10,000,000cc/m2・24hr・atm以上であることが特に好ましい。多孔フィルムの酸素透過度を1,000,000cc/m2・24hr・atm以上であることで、十分な酸素透過性を有するといえる。上限は特に定めないが、通常1,000,000,000cc/m2・24hr・atm以下である。酸素気透過度はJIS K7126−2:2006に基づいて測定でき、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
本フィルムの水蒸気透過度は、1,000g/m2・24hr以下であることが好ましく、750g/m2・24hr以下であることがより好ましく、500g/m2・24hr以下であることが特に好ましい。水蒸気透過度を1,000g/m2・24hr以下であることで、水蒸気の通過を抑制しているといえる。下限は特に定めないが、通常1g/m2・24hr以上である。水蒸気透過度はJIS K7129:2008に基づいて測定でき、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
本発明は、プロピレン系樹脂を主成分とし、適度な空孔率を有し、適当な突刺強度を有するフィルムが、低い水蒸気透過性と高い酸素透過性、良好な透明性を有することを見出したものである。このメカニズムについては以下のように現在考えている。
つまり、本フィルムは、突刺強度20gf/μm以上、透気度20,000秒/cc以上であるフィルムであることから、ナノオーダー単位の微細な空孔が多数あるフィルムとなっていると考えている。この場合、酸素については、フィルム中での酸素拡散を促し、高い酸素透過性が実現されている。一方、水蒸気は溶解律速であるのでポリプロピレン系樹脂に対しては不溶性であり、さらに本フィルムは微細な空孔を有するフィルムであり孔間を容易に移動できるものではないため、フィルム透過が困難である。その結果、本フィルムは高い酸素透過選択性を有しているものと考えている。
本発明は、高い酸素透過性、低い水蒸気透過性を両立するためには、ナノオーダーの孔を空孔率10〜40%の範囲でそろえることが重要であることを見出したものである。
<プロピレン系樹脂>
これらの中でも、アミド化合物、テトラオキサスピロ化合物、及びキナクリドン類からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
以下、本発明の多孔フィルムの製造方法について説明するが、以下の説明は、本発明の多孔フィルムを製造する方法の一例であり、本フィルムはかかる製造方法により製造される多孔フィルムに限定されるものではない。
他の樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
材料樹脂を加熱溶融する方法として、例えばTダイ法、インフレーション法などを挙げることができ、中でもTダイ法を採用するのが好ましい。実用的には、Tダイから材料樹脂を溶融押出してキャストロールによりキャスト成形するのが好ましい。
混練物を冷却しながらフィルムに成形する際、キャストロールの温度は100℃以上が好ましい。より好ましくは110℃以上で、更に好ましくは120℃以上である。本発明ではフィルム中のプロピレン系樹脂の結晶部分と非晶部分での延伸工程時による開孔によっても、空孔率の調整が可能であるため、キャストロールの温度を100℃以上とし、高い結晶化度の無孔膜状物を得ることが好ましい。
未延伸フィルム厚さが20μm以上であれば、フィルムが薄すぎるために延伸時に破断を起こすのを防ぐことができ、未延伸フィルムの厚さが400μm以下であれば、フィルムが剛直になり過ぎて延伸を行い難くなるのを防ぐことができる。
ついで、得られた無孔膜状物を一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。一軸延伸は縦一軸延伸であってもよいし、横一軸延伸であってもよい。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。本発明の目的である多孔フィルムを作製する場合には、各延伸工程で延伸条件を選択できるが、孔径が微細で、かつ空孔率の過度な上昇を生じない横一軸延伸がより好ましい。なお、膜状物の流れ方向(MD)への延伸を「縦延伸」といい、流れ方向に対して垂直方向(TD)への延伸を「横延伸」という。
さらに、本発明の多孔フィルムには、本発明を損なわない範囲で必要に応じてコロナ処理、プラズマ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面加工、更にはミシン目加工などを施した積層体にしてもよい。また、用途に応じて本フィルムを数枚重ねることも可能である。
本発明の多孔フィルムは、包装用途や医療用途、水処理用途等の水蒸気透過性と酸素透過性のバランスを調整する必要がある用途に使用でき、透明性も有することから切り傷等の各種怪我の治癒促進や、薬剤の経皮吸収を目的とした用途に好適に使用することができる。具体的には、本発明の多孔フィルムと薬剤とを複合化することによって、本フィルムを備えた創傷保護材とすることができる。この創傷保護材は不織布を複合化することもできる。」
・A−1;ホモポリプロピレン(ノバテックPP FY6HA、MFR:2.4g/10分[230℃、2.16kg荷重]、Mw/Mn=3.2、日本ポリプロ社製)
(β晶核剤)
・B−1:2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド;「エヌジェスターNU−100」(新日本理化株式会社製)
(酸化防止剤)
・C−1;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトとテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリスリトールとの1:1混合物(IRGANOX−B225、BASF社製)
プロピレン系樹脂(A−1)100質量部、β晶核剤(B−1)0.2質量部、酸化防止剤(C−1)0.1質量部を混合して、二軸押出機にて280℃で溶融押出することで混合物1を得た。リップ開度0.8mmのTダイで押出機に前記混合物1を用いて成形を行い、キャストロールに導かれて無孔膜状物を得た。その後、フィルムテンター設備(京都機械社製)にて、予熱温度100℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度100℃で横方向に7.0倍延伸した後、100℃で熱処理を行い、多孔フィルムを得た。得られた多孔フィルムの評価結果を表1に纏める。
リップ開度0.8mmのTダイで押出機に前記混合物1を用いて成形を行い、キャストロールに導かれて無孔膜状物を得た。得られたフィルムの評価結果を表1に纏める。
リップ開度0.8mmのTダイで押出機に前記混合物1を用いて成形を行い、キャストロールに導かれて無孔膜状物を得た。その後、105℃に設定したロール間において、ドロー比65%を3段(縦延伸倍率4.5倍)掛けて縦延伸を行った。得られた多孔フィルムの評価結果を表1に纏める。
リップ開度0.8mmのTダイで押出機に前記混合物1を用いて成形を行い、キャストロールに導かれて無孔膜状物を得た。その後、105℃に設定したロール間において、ドロー比65%を3段(縦延伸倍率4.5倍)掛けて縦延伸を行った。その後、フィルムテンター設備(京都機械社製)にて、予熱温度150℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度150℃で横方向に2.0倍延伸した後、150℃で熱処理を行い、多孔フィルムを得た。得られた多孔フィルムの評価結果を表1に纏める。
測定試料から直径40mmの試料片を切り出し、目量1/1000mmのダイヤルゲージにて、フィルム面内の任意の5箇所で厚みを測定し、その平均値を求めた。
測定試料の実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度に基づいて空孔率が0%の場合の質量W0を計算し、これらの値から下記式に基づいて空孔率を算出した。
空孔率(%)={(W0−W1)/W0}×100
25℃の空気雰囲気下にて、JIS P8117に準拠して透気度を測定した。測定機器として、デジタル型王研式透気度専用機(旭精工社製)を用いた。
厚み測定で作製した測定試料をホルダー(測定部:直径10mmの円形)に固定し、直径1mm、先端曲率半径0.5mmの金属(SUS440C)製針を厚み方向に300mm/分の速さで突き刺し、穴が開口する最大荷重を測定し、この値を突刺強度とした。また厚み1μm当たりに換算することで、突刺強度(P1)とした。上記突刺強度測定後の試料を220℃に設定した熱プレスにてプレスを行い、内部に空孔を有さない状態とした後、再び同様の方法で突刺強度を測定し、厚み1μm当たりに換算することで、突刺強度(P2)を測定した。
算出した厚み1μm当たりの突刺強度(P1)(P2)について、以下の式(1)を用いて判断した。
式(1): P1/P2 > 1.3
P1、P2が式(1)を満たす場合、多孔フィルム中の孔構造が微細かつ均一に存在することの指標となり、その孔構造が微細なため多孔化後も十分な強度を有すると判断することができる。
分光光度計(「U―4000」、(株)日立製作所製)に積分球を取付け、波長300〜800nmまでの光に対する透過率を測定した。なお、測定前にアルミナ白板を使用し反射率が100%となるよう分光光度計を設定した。波長300〜800nmの各波長における透過率を平均した値を平均光線透過率とした。
JIS K7126−2:2006に基づき、モダンコントロール社製のOXY−TRAN100型酸素透過率測定装置を用いて、23℃、50%RHの雰囲気下において多孔フィルムの酸素透過度を測定した。前記方法にて測定上限範囲を超えるフィルムについては、JIS K7126−2:2006に基づき、ガスクロマトグラフ法にて多孔フィルムの酸素透過度を測定した。
JIS K7129:2008に基づき、MOCON社製PERMATRANを用いて、40℃、90%RHの雰囲気下において多孔フィルムの水蒸気透過度を測定した。
(8)酸素/水蒸気分離能
酸素透過度が1,000,000cc/m2・24hr・atm以上、かつ、水蒸気透過度が1,000g/m2・24hr以下であったものを「○」評価、それ以外のものを「×」評価とした。
一方、比較例1より、空孔を有しないフィルムでは酸素透過度が測定下限を下回り、十分な酸素透過度は得られなかった。また、比較例2,3では十分な酸素透過度を有しているものの、水蒸気透過度についても測定上限以上の透過量を示し、低い水蒸気透過性の発現がされていない。
Claims (9)
- プロピレン系樹脂を主成分とし、空孔率が10〜40%、透気度が20,000秒/dL以上、突刺強度(P1)が20gf/μm以上である多孔フィルム。
- 厚みが5〜100μmである請求項1に記載の多孔フィルム。
- β晶活性を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多孔フィルム。
- 多孔フィルムの突刺強度(P1)と、多孔フィルムを熱プレスした後の突刺強度(P2)が以下の式(1)を満たす請求項1〜3のいずれかに記載の多孔フィルム。
式(1): P1/P2 > 1.3 - 平均光線透過率が30%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の多孔フィルム。
- 酸素透過度が1,000,000cc/m2・24hr・atm以上である請求項1〜5のいずれかに記載の多孔フィルム。
- 水蒸気透過度が1,000g/m2・24hr以下である請求項1〜6のいずれかに記載の多孔フィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の多孔フィルムと薬剤とを複合化してなる創傷保護材。
- プロピレン系樹脂及びβ晶核剤を含む未延伸フィルムを作成し、延伸することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の多孔フィルムの製造方法。
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JP2008150628A (ja) * | 2008-03-19 | 2008-07-03 | Chisso Corp | ポリオレフィン樹脂多孔膜 |
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