JP2020084006A - 円偏光発光材料および円偏光発光材料を用いた物品 - Google Patents

円偏光発光材料および円偏光発光材料を用いた物品 Download PDF

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修造 平田
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雅裕 濱田
昌厳 金子
Shogen Kaneko
昌厳 金子
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Abstract

【課題】大きな円偏光発光の2色性と大きな発光量子収率を示す円偏光発光材料およびそれを用いた物品を提供する。【解決手段】下記一般式で表される化合物を含む円偏光発光材料。[式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表し、n1およびn2は、それぞれ環r1に連結されたR1の数および環r2に連結されたR2の数を表し、それぞれ0、1、2、3および4のいずれかを表し、R3は、アルキル基またはアリール基を表し、環r1または環r2と連結して環状構造を形成してもよく、X1は、CR4R5を表し、R4およびR5は、それぞれ独立してアリール基を表し、R4およびR5は、それぞれ互いにカルボニル基を介して結合して、環状構造を形成し、Cはキラル中心である。]【選択図】なし

Description

本発明は、円偏光発光材料および円偏光発光材料を用いた物品に関する。
近年、直接円偏光発光が放射される材料が注目されている。このような材料は、偏光シートなどの特殊光学素子を用いることなく3次元画像を表示させることが可能になるため、安価なセキュリティー媒体が作成可能である。また、光学素子の導入が困難とされる生体内の光学活性な情報をイメージングする色素としても期待されている。さらに、高効率な発光収率と大きな2色性を示す円偏光材料は、薄膜ディスプレイのコントラストを向上させる上でも重要な材料である。
円偏光発光材料の性能を表すための代表的な2つの因子として発光量子収率(ΦPL)と円偏光発光の2色性因子(glum)が挙げられる。glumは左回り円偏光発光の発光収率(ΦPL,L)と右回りの円偏光発光の発光収率(ΦPL,R)を用いて以下の式で表される。
lum=2(ΦPL,L−ΦPL,R)/(ΦPL,L+ΦPL,R
完全に左回りの円偏光発光が放射された場合が−2、完全に右回りの円偏光発光が放射された場合が+2、そして円偏光発光が放射されない際はglumは0となる。それゆえ、|glum|が大きくなる材料の探索がなされ、非特許文献1に示すように一般的に重原子を用いない単分子の|glum|値は10−3程度であるといわれている。
非特許文献2には、高二色性の円偏光発光を示す材料として、|glum|値が1を超える希土類錯体が報告されている。これまでに希土類由来の大きな磁気双極子を利用して、大きな|glum|値を示す分子が各種報告されている。
非特許文献3には、重原子を用いることなく分子の凝集状態を利用して|glum|値を向上させた例が報告されている。このような重原子フリーの凝集材料では10−2を超えるような|glum|値を有する材料が報告されてきている。
Chem. A Euro. J., 2015, 21, 13488-13500 J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 13814-13815. J. Phys. Chem. Lett., 2015, 6, 3445-3452.
しかし、非特許文献2に開示される円偏光発光材料は、発光量子収率が20%以下と小さいことが課題として挙げられる。発光収率が43%以下の高2色性の円偏光発光は、100%の非円偏光発光材料上に既存の偏光板を用いることで安価に作り出すことができるため、ディスプレイ用途などに用いる際には発光効率の改善が必要となっている。また、希少金属を用いており、非重原子分子からなる分子材料と比較してコストが高い点が問題点としてあげられる。
また、非特許文献3に開示される円偏光発光材料は、希少金属を用いることなく、10−2を超えるような|glum|値を有する円偏光発光特性を得ることが可能であるが、分子が剛直なH会合状態を取ることで発光量子収率が低下するという課題がある。
本発明は、上記の既存発明における課題の解決を目指して為されたものであり、その目的は、大きな円偏光発光の2色性と大きな発光量子収率を示す円偏光発光材料およびそれを用いた物品を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の化合物からなる材料が上記課題を解決するものであることを見出し本発明に至った。
すなわち本発明は、下記の1)〜8)に関するものである。
1)
下記一般式(1−1)で表される化合物を含む円偏光発光材料。
[式(1−1)中、
およびRは、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表し、
n1およびn2は、それぞれ環r1に連結されたRの数および環r2に連結されたRの数を表し、それぞれ0、1、2、3および4のいずれかを表し、
は、アルキル基またはアリール基を表し、環r1または環r2と連結して環状構造を形成してもよく、
は、CRを表し、
およびRは、それぞれ独立してアリール基を表し、
およびRは、それぞれ互いにカルボニル基を介して結合して、環状構造を形成し、
Cはキラル中心である。]
2)
下記一般式(1−2)で表される化合物を含む、1)に記載の円偏光発光材料。
[式(1−2)中、
およびRは、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表し、
n1およびn2は、それぞれ環r1に連結されたRの数および環r2に連結されたRの数を表し、それぞれ0、1、2、3および4のいずれかを表し、
は、アリール基を表し、環r1または環r2と連結して環状構造を形成してもよく、
およびRは、それぞれ独立して、アルキル基を表すか、またはR同士もしくはR同士が互いに結合して環状構造を形成する置換基を表し、
n6およびn7は、それぞれ環r6に連結されたRの数および環r7に連結されたRの数を表し、それぞれ0、1、2、3および4のいずれかを表し、
はキラル中心を表す。]
3)
下記一般式(1−3)で表される化合物を含む、1)に記載の円偏光発光材料。
[式(1−3)中、
12およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表し、
は、アリール基を表し、環r1の*1で示される炭素原子と、または環r2の*2で示される炭素原子と、連結して環状構造を形成してもよく、
61、R62、R71およびR72は、それぞれ独立して、水素もしくはアルキル基を表すか、または、R61およびR62が互いに結合してもしくはR71およびR72が互いに結合して環状構造を形成する置換基を表し、
はキラル中心を表す。]
4)
下記一般式(1−4)で表される化合物を含む、1)に記載の円偏光発光材料。
[式(1−4)中、
12およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表し、
31は、水素、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表し、
環r1の*1で示される炭素原子と、環r3の*31で示される炭素原子と、が連結して環状構造を形成してもよく、
環r2の*2で示される炭素原子と、環r3の*32で示される炭素原子と、が連結して環状構造を形成してもよく、
61、R62、R71およびR72は、それぞれ独立して、水素もしくはアルキル基を表すか、または、R61およびR62が互いに結合してもしくはR71およびR72が互いに結合して環状構造を形成する置換基を表し、
はキラル中心を表す。]
5)
前記化合物の分散状態におけるkが2.0×10−1以下である、1)〜4)のいずれかに記載の円偏光発光材料。
6)
1)〜5)のいずれかに記載の円偏光発光材料を用いたディスプレイ。
7)
1)〜5)のいずれかに記載の円偏光発光材料を用いたセキュリティー媒体。
8)
1)〜5)のいずれかに記載の円偏光発光材料を用いた立体映像表示装置。
本発明によれば、大きな円偏光発光の2色性と大きな発光量子収率を示す円偏光発光材料およびそれを用いた物品を提供することができる。
(R)−CPDF3および(S)−CPDF3の1×10−5Mのトルエン溶液におけるCPLスペクトルである。 (R)−CPDF3および(S)−CPDF3の結晶薄膜のCPLスペクトルである。 (R)−CPDF1および(S)−CPDF1の1×10−5Mのトルエン溶液におけるCPLスペクトルである。 (R)−CPDF1および(S)−CPDF1の結晶薄膜のCPLスペクトルである。 (R)−CPDF3の最低一重項励起状態で構造最適化を行った場合のHOMOおよびLUMOを表す図である。計算はGaussian09を用い、構造最適化および軌道計算ともにB3LYPと6−31G(d,p)をそれぞれ汎関数と基底関数に用いて行った。 (R)−CPDF1の最低一重項励起状態で構造最適化を行った場合のHOMOおよびLUMOを表す図である。計算はGaussian09を用い、構造最適化および軌道計算ともにB3LYPと6−31G(d,p)をそれぞれ汎関数と基底関数に用いて行った。 DCMの最低一重項励起状態で構造最適化を行った場合のHOMOおよびLUMOを表す図である。計算はGaussian09を用い、構造最適化および軌道計算ともにB3LYPと6−31G(d,p)をそれぞれ汎関数と基底関数に用いて行った。 図8の(a)は分散状態でkが大きい分子の結晶化前後での最低一重項励起状態(S)のエネルギーおよびkとkicの変化の例を示す図である。図8の(b)は分散状態でkが小さい分子の結晶化前後でのSエネルギーおよびkとkicの変化の例を示す図である。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
[一般式(1−1)で表される化合物]
本発明の一つの実施形態に係る円偏光発光材料は、下記一般式(1−1)で表される化合物を含む。
一般式(1−1)において、RおよびRは、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表す。
およびRがとり得るアルキル基の例としては、置換または無置換の炭素数1〜20の直鎖状、炭素数3〜20の分岐鎖状または炭素数3〜20の環状アルキル基が挙げられる。
当該アルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数6〜40のアリール置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは上記に例示した置換基等により置換されていてもよい。
およびRがとり得るアルキル基は、無置換の炭素数1〜20の直鎖状または無置換の炭素数3〜20の分岐鎖状のアルキル基であると好ましく、無置換の炭素数1〜12の直鎖状または無置換の炭素数3〜12の分岐鎖状のアルキル基であるとさらに好ましい。当該アルキル基の好ましい例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−メチルブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基がさらに好ましく、メチル基またはtert−ブチル基が特に好ましい。
およびRがとり得るアリール基の例としては、置換または無置換の炭素数6〜40のアリール基が挙げられる。当該アリール基が置換基を有する場合の置換基としては、上記のアルキル基で挙げたものと同様のものが挙げられる。当該アリール基としては、置換または無置換の炭素数6〜20のアリール基が好ましく、置換または無置換の炭素数6〜12のアリール基がさらに好ましい。当該アリール基の好ましい例としては、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基などが挙げられ、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
およびRがとり得るアミノ基の例としては、置換または無置換のアミノ基が挙げられる。当該アミノ基が置換基を有する場合の置換基としては、上記のアルキル基で挙げたものと同様のものが挙げられる。当該アミノ基としては、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数6〜20のアリール置換アミノ基が好ましい。当該アミノ基の好ましい例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基などが挙げられ、ジフェニルアミノ基がさらに好ましい。
一般式(1−1)において、n1およびn2は、それぞれ環r1に連結されたRの数および環r2に連結されたRの数を表し、それぞれ0、1、2、3および4のいずれかを表す。n1およびn2は、互いに異なると好ましく、それぞれ0、1、2のいずれかであると好ましく、0または1であるとさらに好ましい。
一般式(1−1)において、Rは、アルキル基またはアリール基を表し、環r1または環r2と連結して環状構造を形成してもよい。当該アルキル基またはアリール基としては、RおよびRにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。Rは、アリール基であると好ましく、置換アリール基であるとさらに好ましい。置換アリール基の置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜40のアリール置換アミノ基、炭素数6〜40のアリール基が好ましい。置換アリール基の置換基の好ましい例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられ、メチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ジフェニルアミノ基がさらに好ましい。
一般式(1−1)において、Xは、CRを表し、RおよびRは、それぞれ独立してアリール基を表し、RおよびRは、それぞれ互いにカルボニル基を介して結合して、環状構造を形成し、Cはキラル中心である。当該アリール基としては、RおよびRにおいて説明したものと同様のものが挙げられる。
一般式(1−1)で表される化合物にキラル中心が存在することから、一般式(1−1)で表される化合物では、立体異性体が存在する。一方で、一般式(1−1)で表される化合物を含む円偏光発光材料は、少なくとも円偏光発光を示す材料である。そのため、例えば一般式(1−1)で表される化合物のラセミ体で構成されて円偏光発光を示さない材料は、本実施形態の円偏光発光材料には含まれない。
一般式(1−1)で表される化合物のうち好ましい態様の一つは、RおよびRがフェニル基であり、それぞれ互いにカルボニル基を介して結合して、6員の環状構造を形成する下記一般式(1−2)で表される化合物である。
一般式(1−2)におけるR、R、n1およびn2は、一般式(1−1)で説明したものと同じである。
一般式(1−2)におけるRは、アリール基を表し、環r1または環r2と連結して環状構造を形成してもよい。当該アリール基としては、一般式(1−1)のRに関して説明したものと同じである。
一般式(1−2)におけるRおよびRは、それぞれ独立して、アルキル基を表すか、またはR同士もしくはR同士が互いに結合して環状構造を形成する置換基を表す。当該アルキル基としては、置換または無置換の炭素数1〜20の直鎖状、炭素数3〜20の分岐鎖状または炭素数3〜20の環状アルキル基が挙げられる。当該アルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、一般式(1−1)にRおよびRに関して説明したものと同じものが挙げられる。
当該アルキル基としては、無置換の炭素数1〜20の直鎖状または無置換の炭素数3〜20の分岐鎖状のアルキル基であると好ましく、無置換の炭素数1〜12の直鎖状または無置換の炭素数3〜12の分岐鎖状のアルキル基であるとさらに好ましい。当該アルキル基の好ましい例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−メチルブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
同士もしくはR同士が互いに結合して形成する環状構造は、芳香環であっても脂肪環であってもよく、例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタエン環などを挙げることができる。当該環状構造は、さらに置換基を有していてもよい。当該置換基としては、一般式(1−1)のRおよびRに関して説明したものと同じものが挙げられる。
一般式(1−2)における、n6およびn7は、それぞれ環r6に連結されたRの数および環r7に連結されたRの数を表し、それぞれ0、1、2、3および4のいずれかを表し、はキラル中心を表す。n6およびn7は、互いに異なると好ましく、それぞれ0、1、2のいずれかであると好ましい。
一般式(1−1)で表される化合物のうち好ましい態様の一つは、下記一般式(1−3)で表される化合物である。
一般式(1−3)において、R12およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表す。当該アルキル基、アリール基またはアミノ基としては、一般式(1−1)のRおよびRに関して説明したものと同じものが挙げられる。また、一般式(1−3)において、Rは、アリール基を表し、環r1の*1で示される炭素原子と、または環r2の*2で示される炭素原子と、連結して環状構造を形成してもよい。当該アリール基は、一般式(1−1)のRに関して説明したものと同じである。
一般式(1−3)において、R61、R62、R71およびR72は、それぞれ独立して、水素もしくはアルキル基を表すか、または、R61およびR62が互いに結合してもしくはR71およびR72が互いに結合して環状構造を形成する置換基を表し、はキラル中心を表す。当該アルキル基は、一般式(1−2)のRおよびRに関して説明したものと同じである。R61およびR62が互いに結合してもしくはR71およびR72が互いに結合して形成する環状構造としては、一般式(1−2)のRおよびRに関して説明したものと同じものが挙げられる。
一般式(1−1)で表される化合物のうち好ましい態様の一つは、下記一般式(1−4)で表される化合物である。
一般式(1−4)において、R12およびR22は、一般式(1−3)において説明したものと同じである。
一般式(1−4)において、R31は、水素、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表し、環r1の*1で示される炭素原子と、環r3の*31で示される炭素原子と、が連結して環状構造を形成してもよく、環r2の*2で示される炭素原子と、環r3の*32で示される炭素原子と、が連結して環状構造を形成してもよい。当該アルキル基、アリール基およびアミノ基は、一般式(1−1)のRおよびRに関して説明したものと同じである。
61、R62、R71およびR72は、それぞれ独立して、水素もしくはアルキル基を表すか、または、R61およびR62が互いに結合してもしくはR71およびR72が互いに結合して環状構造を形成する置換基を表し、はキラル中心を表す。R61、R62、R71およびR72は、一般式(1−3)で関して説明したものと同じである。
本実施形態において一般式(1−1)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(1−1)で表される化合物の分散状態におけるkは、2.0×10−1以下であると好ましい。この分散状態とは、溶液中に溶解、分散した状態や、固体中に低濃度でドープ(分散)された状態を指す。ここで、kについて説明する。
分子材料からの蛍光は一般的にプロンプト成分と遅延成分から構成される。プロンプト成分の蛍光量子収率(Φpf)は一般的に以下の式Xで表される(Nature materials,2015、14,330−336)。
Φpf=k/(k+kic+kisc) (式X)
ここでkは最低一重項励起状態(S)から基底状態(S)の間の蛍光速度定数、kicはSからSの間の振動に由来した失活速度定数、kiscはSから三重項状態への項間交差の測定定数である。式Xからkが大きい場合、一般的に大きなΦpfが得られることが知られている。
またkはSとSの間でコンフォメーションが大きく変化しない場合は、SとS間の吸収のモル吸光係数ε(ν)を用いて式Yで表される(Nature materials,2015、14,330−336)。
ここで、nは屈折率、νは吸収エネルギーに相当する波数、
は蛍光エネルギーの平均値に相当する波数である。またε(ν)は以下式Zと式Pを用いて一般的にあらわされる(Nature materials,2015、14,330−336)。
ε(ν)∝Q (式Z)
Q=<Ψ|er|Ψ> (式P)
ここで、Qは遷移双極子モーメント、ΨはHOMO、ΨはLUMO、rは空間座標、eは電子の電荷である。
式Pと式ZからHOMOとLUMOの重なりが大きな分子ではQが大きくなり、式Yから結果としてkが大きくなる。そのkの増加は式Xに基づいて大きなΦpfにつながる。なお、遅延蛍光を放射しない分子の場合はΦpfが蛍光量子収率(ΦPL)となり、遅延蛍光が発生する場合はΦpfと遅延蛍光の量子収率の和がΦPLとなる。
これに対し、本実施形態の円偏光発光材料が含む、一般式(1−1)化合物の分散状態におけるkは、2.0×10−1以下で小さいと好ましく、1.0×10−1以下であるとさらに好ましく、8.0×10−1以下であるとさらに一層好ましく、5.0×10−1以下であると特に好ましい。kが小さいキラル分子を凝集結晶化させた場合には、励起子相互作用が弱いために大きなΦPLが得られ、さらに大きな|glum|も得られて、好ましい。
[一般式(1−1)で表される化合物の合成方法]
一般式(1−1)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。例えば、上記具体例に示す化合物の1つは、以下の式の左辺の2つの化合物をアルキルリチウム化合物によって反応させ、得られた中間体を酸で処理することにより閉環させることで、合成することが可能である。また、既知の光学分割カラムを用いることで、R体およびS体の分割が可能である。
ここで、上記反応式の左辺のトリフェニルアミン誘導体は、例えば、ジフェニルアミン誘導体と、1−ブロモ−2−ヨードベンゼンと、をカップリングさせることで、合成することができる。上記の反応は、公知の反応を応用したものであり、公知の反応条件を適宜選択して用いることができる。上記の反応の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。また、一般式(1−1)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することができる。
[円偏光発光材料]
本実施形態に係る円偏光発光材料は、一般式(1−1)で表される化合物のR体、S体またはこれらの混合物を含む材料であり、好ましくは、当該化合物のR体およびS体のいずれか一方を含む材料であり、さらに好ましくは、当該化合物のR体およびS体のいずれか一方からなる材料である。
本実施形態の円偏光発光材料の態様としては、一般式(1−1)で表される化合物を含む固体を成形して板状、薄膜状、筒状、ブロック状などの固体材料とした態様、一般式(1−1)で表される化合物を溶媒等の媒体に溶解又は分散させた液体を封止して板状、薄膜状、筒状、ブロック状などの材料(液体封止材料)とした態様、一般式(1−1)で表される化合物を気化させて封止して板状、薄膜状、筒状、ブロック状などの材料(気体封止材料)とした態様のものが挙げられる。なお、本実施形態の円偏光発光材料の形状としては特に限定されるものではなく、円偏光発光を応用し得る態様の物であればいずれの形状であってもよい。
本実施形態の円偏光発光材料が固体材料の場合、当該材料は一般式(1−1)で表される化合物のみから構成されていてもよく、一般式(1−1)で表される化合物以外に高分子材料や添加剤等を含んでいてもよい。本実施形態の円偏光発光材料が液体封止材料の場合、当該材料は一般式(1−1)で表される化合物および溶媒等の媒体のみから構成されていてもよく、一般式(1−1)で表される化合物以外に添加剤等を含んでもよい。本実施形態の円偏光発光材料が気体封止材料の場合、当該材料は一般式(1−1)で表される化合物のみから構成されていてもよく、一般式(1−1)で表される化合物以外に窒素ガス、希ガス等の媒体や添加剤等を含んでもよい。
例えば、円偏光発光材料の様態が液体の場合、水、アルコール、テトラヒドロフラン、その他の有機溶剤や樹脂等を媒体として用いる。この場合、媒体中に一般式(1−1)で表される化合物を溶解及び/または分散させて溶液または分散液を得る方法によって、円偏光発光材料を製造することができる。必要に応じて、超音波分散機、ビーズミル、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、ロールミル、マイクロ波分散機等の公知の分散機を単独または組み合わせて使用し、一般式(1−1)で表される化合物を微粉砕、微分散して、溶液または分散液を得てもよい。
例えば、円偏光発光材料の様態が固体の場合、硬化性樹脂を硬化させたものが好ましい。この場合、硬化性樹脂中に一般式(1−1)で表される化合物を溶解させ、または分散させ、その後熱又は光によって硬化性樹脂を硬化することで、円偏光発光材料を製造することができる。硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物、メタクリル樹脂組成物やそれらの混合物が挙げられる。また、円偏光発光材料が、一般式(1−1)で表される化合物の結晶で構成されていると好ましい。
本実施形態の円偏光発光材料を応用できるものとしては、例えばディスプレイ(ELディスプレイ等)、生体内イメージング材料、セキュリティー媒体、立体映像表示装置等を挙げることができる。
本実施形態の円偏光発光材料を用いたELディスプレイは、ELディスプレイ表面に偏光板と1/4波長板を用いた反射防止膜が介挿された状態においても、偏光板に電界発光からの光が吸収される確率を低下させることが可能となる。そのため、ELディスプレイの省電力化を実現できる。
本実施形態の円偏光発光材料を用いたセキュリティー媒体は、低コスト化を可能とする。従来技術では三次元発光画像を形成するためには、発光材料が印刷された媒体上に偏光シートを挿入する必要があるが、本技術では偏光シートが挿入されない媒体から三次元発光画像を確認することができるようになる。そのため、セキュリティー媒体の低コスト化を実現できる。
本実施形態の円偏光発光材料を用いた立体映像表示装置は、偏光板を表面に挿入することなしに三次元映像を表示させることが可能である。そのため、表示装置の低コスト化を実現できる。
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(合成)
次の方法に従い、CPDF3(下記式(3)で示される化合物)を合成した。三ツ口フラスコに2.00g(10mmol)のジ(p−トリル)アミン(di(p-tolyl)amine)、1.42g(5mmol)の1−ブロモ−2−ヨードベンゼン(1-bromo-2-iodobenzene)、0.19g(1mmol)のヨウ化銅、0.26g(1mmol)の18−クラウン−6−エーテルおよび2.76g(20mmol)の炭酸カリウムを入れた。さらに溶媒として1,2−ジクロロベンゼン(1,2-dichlorobenzene)を4ml加えてアルゴン雰囲気下で200℃に加熱し24時間撹拌した。室温に冷却後、得られた反応溶液にクロロホルム50mlを加えて濾過を行うことで固体を取り除いた。濾液を水で3回洗浄した後、有機層をNaSOによって乾燥し、エバポレーターによって溶媒を除去した。得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)によって精製した。精製後、80℃の真空加熱乾燥を2時間行うことで下記式(1)で示される無色透明の粘性液体が得られた(1.15g、収率:66%)。
次に三ツ口フラスコに1.15g(3.3mmol)の2−ブロモ−N,N−ジ(p−トリル)アミン(2-bromo-N,N-di(p-tolyl)amine)を入れ、脱水THF30mlに溶かした。この溶液を窒素雰囲気下で撹拌した。ドライアイス−アセトンで−78℃まで冷却した。冷却した溶液にn−BuLi(1.6mmol in hexane)を2.1ml(3.3mmol)少しずつ加えていった後、−78℃で1.5時間撹拌した。反応溶液に2,3−ジメチルアントラキノン(2,3-dimethylanthraquinone)を0.78g(3.3mmol)加えて0℃で24時間撹拌した。室温にした後にクロロホルム200mlを加えて抽出し、水で3回有機層を洗浄した。さらに有機層をNaSOによって乾燥し、エバポレーターによって溶媒を除去した。この混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)によって精製することで下記式(2)で示される黄色固体を得た(1.22g)。
ナスフラスコに精製した黄色固体(1.22g)、酢酸10mlと塩酸(38%溶液)1mlを入れた。この分散液を120℃に加熱して4時間還流した。室温にした後クロロホルム300mlを加えて抽出し、水で3回有機層を洗浄した。さらに有機層をNaSOによって乾燥し、エバポレーターによって溶媒を除去した。この混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)によって精製した。精製後、70℃の真空加熱乾燥を24時間行うことで下記式(3)に示されるCPDF3を白色粉末として得た(0.97g、収率:60%)。同定は1H−NMR、FAB−MS、によって行った。
1H NMR (400MHz, ジメチルスルホキシド(DMSO)-d6) : δ (ppm) 1.93 (s, 3H), 2.19 (s, 3H), 2.33 (s, 3H), 2.54 (s, 3H), 6.26 (m, 2H), 6.34 (d, 1H), 6.45 (d, J=7.2, 1H), 6.53 (t, J=4.8, 1H), 6.68 (d, J=7.6, 1H), 6.86 (t, J=5.1, 1H), 7.13 (s, 1H), 7.36 (m, 7H), 8.15 (s, 1H), 8.39 (d, 1H);
HRMS-FAB (m/z): [M]+ calcd. for C36H25NO2, 491.22; found, 491.23.
下記式(4)および(5)で示されるCPDF3のR体およびS体を、CPDF3のラセミ体をLC−2000 plus Series System(Jasco製)およびキラルカラム CHIRALPAK ID (Daicel製)を用いて分割することにより得た。展開溶媒は酢酸エチル:ヘキサン:テトラヒドロフラン=20:1:1とした。
(評価)
上記式(4)に示す化学構造の(R)−CPDF3を9mg、ビス[2−(ジフェニルフォスフィノ)フェニル]エーテルオキシド(Bis[2-(diphenylphosphino)phenyl] ether oxide)(DPEPO)を91mg、トルエン溶液1ml中に溶解させた溶液を用意した。この溶液をスピンコート法により石英基板上に1000rpmの条件で石英基板上に塗布することで石英基板上に(R)−CPDF3が6%の濃度でDPEPO中にドープされた非晶薄膜を作成した。
この薄膜に対して、絶対発光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C9920−02G)を用いて300nmの波長での励起光を用いて蛍光スペクトルを測定したところ、502nmにピークを有する青色緑色蛍光が観測された。発光量子収率(ΦPL)は99%であった。
次にこの薄膜に対して300nmの励起光下での室温における発光寿命を、小型蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、Quantaurus−Tau)で測定したところ、277nsのプロンプト成分の蛍光寿命(τpf)と8.08μsの寿命を持つディレイ成分の蛍光寿命(τdf)が観測された。
このディケイシグナルからプロンプト成分の発光の割合が全体の発光の21%であることを用いて、プロンプト成分の蛍光量子収率(Φpf)は21%と算出された。k=Φpf/τpfの関係を用いて(R)−CPDF3および(S)−CPDF3の結晶膜におけるkを計算したところ、0.8×10−1あった。上記式(5)に示す化学構造の(S)−CPDF3に関しても上記と同様の蛍光量子収率および蛍光寿命測定を行いkを決定したところ、(R)−CPDF3と(S)−CPDF3に明確な違いは観測されなかった。
(R)−CPDF3の1×10−5Mのトルエン溶液および(S)−CPDF3の1×10−5Mのトルエン溶液に対して、円偏光発光装置(日本分光社製、CPL−200)を用いて円偏光発光スペクトルを測定したところ、図1に示すように(R)−CPDF3および(S)−CPDF3からはそれぞれ、正および負のコットン効果を示すCPL信号が検出された。CPL強度および発光強度から|glum|値を算出したところ、4×10−4であった。
次に(R)−CPDF3の1wt%のクロロホルム溶液をスピンコート法により石英基板上に1000rpmの条件で塗布することで石英基板上に(R)−CPDF3の非晶薄膜を作成した。次に150℃の窒素雰囲気下で12時間加熱することで、(R)−CPDF3および(S)−CPDF3の薄膜を結晶化させた。これら薄膜の大気中でのΦPLを絶対発光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C9920−02G)を用いて300nmの波長での励起光を用いて評価したところ、482nmにピークを有する青空色蛍光が観測され、ΦPLは40%であった。
次にこれら(R)−CPDF3および(S)−CPDF3の結晶化薄膜に対して、300nmの励起光下での室温大気中における発光寿命を、小型蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、Quantaurus−Tau)で測定したところ、160nsのτpfと1.84μsのτdfが観測された。このディケイシグナルからプロンプト成分の発光の全体の発光に対しての割合を用いて、プロンプト成分の蛍光量子収率(Φpf)は22%と算出された。k=Φpf/τpfの関係を用いて(R)−CPDF3および(S)−CPDF3の結晶膜におけるkを計算したところ、1.4×10−1であった。
これら(R)−CPDF3および(S)−CPDF3の結晶化薄膜に対して、300nmの励起光下で円偏光発光装置(日本分光社製、CPL−200)を用いて円偏光発光スペクトルを測定したところ、図2に示すように(R)−CPDF3および(S)−CPDF3からはそれぞれ、負および正のコットン効果を示す大きなCPL信号が検出された。CPL強度および発光強度から|glum|値を算出したところ4.0×10−2であった。
(比較例1)
(合成)
三ツ口フラスコに2−ブロモトリフェニルアミン(2-Bromotriphenylamine)を2.51g(7.8mmol)入れ、脱水THF60mlに溶かした。この溶液を窒素雰囲気下で撹拌した。ドライアイス−アセトンで−78℃まで冷却した。冷却した溶液にn−BuLi(1.6mmol in hexane)を4.8ml(7.8mmol)少しずつ加えていった後、−78℃で1.5時間撹拌した。反応溶液に5,12−ナフタセンキノン(5,12-naphthacenequinone)を1.83g(7.1mmol)加えて0℃で24時間撹拌した。室温にした後にクロロホルム200mlを加えて抽出し、水で3回有機層を洗浄した。さらに有機層をNaSOによって乾燥し、エバポレーターによって溶媒を除去した。この混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)および再結晶によって精製することで黄色固体を得た。精製後、70℃の真空加熱乾燥を12時間行うことで下記式(6)に示されるCPDF1の白色粉末が得られた(1.69g、収率34%)。同定は1H−NMR、FAB−MSによって行った。
1H NMR (400MHz, ジメチルスルホキシド(DMSO)-d6) : δ (ppm) 5.84 (dd, J=6.0 Hz, J=8.2 Hz, 4H), 6.18 (t, J=7.1 Hz, 1H), 6.29 (t, J=7.3 Hz, 2H), 6.69 (m, 4H), 6.91 (s 1H), 7.29 (t, J=7.3, 1H), 7.38 (t, J=7.8, 2H), 7.45 (t, J=7.8, 1H), 7.52 (q, J=7.6, 2H), 7.60 (t, J=7.3, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.80 (d, J=8.2, 1H), 7.86 (d, J=7.8, 1H), 7.94 (d, J=8.3 1H), 8.38 (s 1H), 8.77 (d, J=8.3 1H);
HRMS-FAB (m/z): [M]+ calcd. for C36H25NO2, 503.19; found, 503.19.
下記式(7)および(8)で示されるCPDF1のR体およびS体を、LC−2000 plus Series System(Jasco製)およびキラルカラム CHIRALPAK ID(Daicel製)を用いることで分割した。展開溶媒は、酢酸エチル:ヘキサン=1:4とした。
(評価)
上記式(7)に示す化学構造の(R)−CPDF1を6mg、1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(1,3-bis(carbazole-9-yl)benzene)(mCP)を94mg、トルエン溶液1ml中に溶解させた溶液を用意した。この溶液をスピンコート法により石英基板上に1000rpmの条件で石英基板上に塗布することで石英基板上に(R)−CPDF3が6%の濃度でmCP中にドープされた非晶薄膜を作成した。
絶対発光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C9920−02G)を用いて365nmの波長での励起光を用いて蛍光スペクトルを測定したところ、528nmにピークを有する緑色蛍光が観測された。発光量子収率(ΦPL)は26%であった。
次にこの薄膜に対して365nmの励起光下での室温における発光寿命を、小型蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、Quantaurus−Tau)で測定したところ、12.4nsのτpfと8.08μsのτdfが観測された。
このディケイシグナルからプロンプト成分の発光の割合を算出してΦPLからその割合を計算してΦpfは11%と算出された。k=Φpf/τpfの関係を用いて(R)−CPDF1および(S)−CPDF1の分散膜におけるkを計算したところ、8.9×10−1あった。上記式(8)に示す化学構造の(S)−CPDF1に関しても上記と同様の蛍光量子収率および蛍光寿命測定を行いkを決定したところ、(R)−CPDF1と(S)−CPDF1の間に明確な違いは観測されなかった。
(R)−CPDF1の1×10−5Mのトルエン溶液および(S)−CPDF1の1×10−5Mのトルエン溶液に対して、円偏光発光装置(日本分光社製、CPL−200)を用いて円偏光発光スペクトルを測定したところ、図3に示すように(R)−CPDF1および(S)−CPDF1からはそれぞれ、正および負のコットン効果を示すCPL信号が検出された。CPL強度および発光強度から|glum|値を算出したところ1.2×10−3であった。
次に(R)−CPDF1の1wt%のクロロホルム溶液をスピンコート法により石英基板上に1000rpmの条件で塗布することで石英基板上に(R)−CPDF1の非晶薄膜を作成した。同様にして石英基板上に(S)−CPDF1の非晶薄膜を作成した。次にこれら薄膜を150℃の窒素雰囲気下で12時間加熱することで、(R)−CPDF1および(S)−CPDF1の薄膜を結晶化させた。これら薄膜の大気中でのΦPLを絶対発光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C9920−02G)を用いて365nmの波長での励起光を用いて評価したところ、534nmにピークを有する黄緑色蛍光が観測され、ΦPLは7.3%であった。
次にこれら(R)−CPDF1および(S)−CPDF1の結晶化薄膜に対して、365nmの励起光下での室温大気中におけるτを、小型蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、Quantaurus−Tau)で測定したところ、19nsのτpfと209μsおよび2.54msのτdfが観測された。このディケイシグナルから全発光に対してのプロンプト成分の発光の割合を用いて、Φpfは3.6%と算出された。k=Φpf/τpfの関係を用いて(R)−CPDF3および(S)−CPDF3の結晶膜におけるkを計算したところ、1.9×10−1であった。
これら(R)−CPDF1および(S)−CPDF1の結晶化薄膜に対して、365nmの励起光下で円偏光発光装置(日本分光社製、CPL−200)を用いて円偏光発光スペクトルを測定したところ、図4に示すように(R)−CPDF1および(S)−CPDF1からはそれぞれ、負および正のコットン効果を示す大きなCPL信号が検出された。CPL強度および発光強度から|glum|値を算出したところ5.5×10−2であった。
(比較例2)
(評価)
下記式(9)に示す化学構造のDCMを酢酸エチル溶液中に1×10−5Mの濃度で溶解させた。この溶液を1cm角の石英セルに入れ、絶対発光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C9920−02G)を用いて470nmの波長での励起光を用いて蛍光スペクトルを測定したところ、588nmにピークを有するオレンジ色蛍光が観測されΦPLは27%であった。
次にこの酢酸エチル溶液に対して470nmの励起光下での室温における蛍光寿命(τ)を、小型蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、Quantaurus−Tau)で測定したところ、1.1nsの寿命を持つシグナルが観測された。DCMのトルエン溶液内でのkをk=ΦPL/τにより算出したところ2.6×10−1であった。
次にDCMの1wt%のクロロホルム溶液をスピンコート法により石英基板上に1500rpmの条件で塗布することで石英基板上にDCMの結晶薄膜を作成した。この薄膜の大気中でのΦPLを絶対発光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C9920−02G)を用いて470nmの波長での励起光を用いて評価したところ、781nmにピークを有する黄緑色蛍光が観測され、ΦPLは1.9%以下であった。
470nmの励起光下での室温大気中におけるτを、小型蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、Quantaurus−Tau)で測定したところ0.76nsであった。k=ΦPL/τの関係を用いてDCMの結晶状態におけるkは2.5×10−1であった。
(CPDF3,CPDF1,DCMの量子化学計算)
次に、CPDF3,CPDF1,DCMの量子化学計算に基づく解析を示す。計算はGaussian09を用い、構造最適化および軌道計算ともにB3LYPと6−31G(d,p)をそれぞれ汎関数と基底関数に用いて行った。
図5には(R)−CPDF3の蛍光に関与する電子軌道を示す。(R)−CPDF3は蛍光の過程でLUMOからHOMOへ電子遷移が生じる。しかし、HOMOとLUMOのオーバーラップが著しく小さい。この小さなオーバーラップにより分散状態の(R)−CPDF3のkは著しく小さくなっている。また、このHOMOとLUMOの小さなオーバーラップはSからSへの内部項間の速度(kic)を小さくするのにも寄与する。それゆえ、(R)−CPDF3ではkは小さいがkicも小さいことにより蛍光が放出されている。
図6に(R)−CPDF1の蛍光に関与する電子軌道を示す。(R)−CPDF1は蛍光の過程でLUMOからHOMOへ電子遷移が生じる。しかし、HOMOとLUMOのオーバーラップが小さいがCPDF3と比較すると若干大きい。それゆえ分散状態の(R)−CPDF1のkの値は(R)−CPDF3のそれよりも10倍程度大きい値になっている。また、DCMではHOMOとLUMOのオーバーラップがCPDF1よりもさらに大きいためkが著しく大きく(図7)、これが比較的大きなΦpfに寄与していると考えられる。
表1に実施例1、比較例1、比較例2の分散状態および結晶凝集状態における蛍光のピーク波長(Fmax)、Φpf、k、そして|glum|のデータをまとめる。
表1に記載の通り、実施例1における(R)−CPDF3のΦpfは分散状態から結晶凝集状態へと変化する過程で減少していない。また分散状態と結晶凝集状態のkの値を比較すると同様の値を維持している。このようにkが著しく小さい分子の場合、近距離にお互いの分子が存在したとしても励起子同士のカップリングが小さくなる。その結果、1分子状態から2分子状態にかけて最低一重項励起エネルギー(Sエネルギー)に大きな変化が生じない(図8(a):分散状態でkが大きい分子の結晶化前後での最低一重項励起状態(S)のエネルギーおよびkとkicの変化の例)。また強い励起相互作用が存在する際は、蛍光スペクトルが大きく長波長シフトするが、Fmaxをみると溶液分散時の1分子状態と結晶状態の多分子状態の間に大きな変化はない。この著しく小さなkに由来した弱い励起子相互作用により、結晶時においてもkが減少することなく、Φpfが薄膜状態においても低下しない。このΦpfが低下しないことは、大きなΦPLを得ることに寄与している。
一方で比較例1や比較例2では、表1に記載の通り分散状態から結晶凝集状態へと変化する過程でΦpfが減少する。比較例1や比較例2では分散状態でkがCPDF3と比較して大きい。kが大きい場合、結晶系においてH会合となる2分子の組み合わせが存在すると、そのSエネルギーは孤立分子よりも小さくなる(図8(b):分散状態でkが小さい分子の結晶化前後でのSエネルギーおよびkとkicの変化の例)。実際に比較例1や比較例2では分散状態から結晶凝集状態にかけて、Fmaxの長波長シフトが生じている。特にDCMでは分散状態におけるkが大きいため、H会合となる2分子状態での強い励起子相互作用が生じ、200nm近くにもおよぶ長波長シフトが生じている。このH会合状態における2分子のS−S遷移では遷移双極子が相殺し合うため、比較例1および比較例2とも結晶状態では分散状態と比較してkが著しく小さくなる。結晶化に伴いkが小さくなる一方で、kicに関してはこの相殺が生じない。そのため、結晶凝集状態ではk<kicとなり大きなΦPLが得られない。
また、実施例1における(R)−CPDF3の円偏光発光の|glum|値は著しく小さいのに対して、結晶時には100倍以上に増加している。このような結晶時における|glum|の増加は非特許文献3に示されるように、結晶構造において分子間で遷移磁気ダイポールモーメントが増幅する関係に分子が配置されていることに由来していると考えられる。このような結晶化に伴う|glum|の増幅は、表1に示すように比較例1においても確認される。
通常分散状態で高効率の蛍光特性を得るためには、kが大きい分子が設計されるが、比較例1のようにそのようなkが大きいキラル分子を凝集結晶化させた場合には、大きな|glum|は得られるが励起子相互作用によりΦPLが著しく低下する。一方で実施例1のようにkが小さいキラル分子を凝集結晶化させた場合には、そのような励起子相互作用が弱いために大きなΦPLが得られ、さらに大きな|glum|も得られる。それゆえ、kが小さいキラル分子の結晶材料は高二色性および高発光効率を有する円偏光発光材料となることが理解されよう。

Claims (8)

  1. 下記一般式(1−1)で表される化合物を含む円偏光発光材料。
    [式(1−1)中、
    およびRは、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表し、
    n1およびn2は、それぞれ環r1に連結されたRの数および環r2に連結されたRの数を表し、それぞれ0、1、2、3および4のいずれかを表し、
    は、アルキル基またはアリール基を表し、環r1または環r2と連結して環状構造を形成してもよく、
    は、CRを表し、
    およびRは、それぞれ独立してアリール基を表し、
    およびRは、それぞれ互いにカルボニル基を介して結合して、環状構造を形成し、
    Cはキラル中心である。]
  2. 下記一般式(1−2)で表される化合物を含む、請求項1に記載の円偏光発光材料。
    [式(1−2)中、
    およびRは、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表し、
    n1およびn2は、それぞれ環r1に連結されたRの数および環r2に連結されたRの数を表し、それぞれ0、1、2、3および4のいずれかを表し、
    は、アリール基を表し、環r1または環r2と連結して環状構造を形成してもよく、
    およびRは、それぞれ独立して、アルキル基を表すか、またはR同士もしくはR同士が互いに結合して環状構造を形成する置換基を表し、
    n6およびn7は、それぞれ環r6に連結されたRの数および環r7に連結されたRの数を表し、それぞれ0、1、2、3および4のいずれかを表し、
    はキラル中心を表す。]
  3. 下記一般式(1−3)で表される化合物を含む、請求項1に記載の円偏光発光材料。
    [式(1−3)中、
    12およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表し、
    は、アリール基を表し、環r1の*1で示される炭素原子と、または環r2の*2で示される炭素原子と、連結して環状構造を形成してもよく、
    61、R62、R71およびR72は、それぞれ独立して、水素もしくはアルキル基を表すか、または、R61およびR62が互いに結合してもしくはR71およびR72が互いに結合して環状構造を形成する置換基を表し、
    はキラル中心を表す。]
  4. 下記一般式(1−4)で表される化合物を含む、請求項1に記載の円偏光発光材料。
    [式(1−4)中、
    12およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表し、
    31は、水素、アルキル基、アリール基またはアミノ基を表し、
    環r1の*1で示される炭素原子と、環r3の*31で示される炭素原子と、が連結して環状構造を形成してもよく、
    環r2の*2で示される炭素原子と、環r3の*32で示される炭素原子と、が連結して環状構造を形成してもよく、
    61、R62、R71およびR72は、それぞれ独立して、水素もしくはアルキル基を表すか、または、R61およびR62が互いに結合してもしくはR71およびR72が互いに結合して環状構造を形成する置換基を表し、
    はキラル中心を表す。]
  5. 前記化合物の分散状態におけるkが2.0×10−1以下である、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の円偏光発光材料。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の円偏光発光材料を用いたディスプレイ。
  7. 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の円偏光発光材料を用いたセキュリティー媒体。
  8. 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の円偏光発光材料を用いた立体映像表示装置。
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