JP2020083750A - リチウム金属複合酸化物粉末、リチウム二次電池用正極活物質、正極、及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
リチウム二次電池は、既に携帯電話用途やノートパソコン用途などの小型電源だけでなく、自動車用途や電力貯蔵用途などの中型又は大型電源においても、実用化が進んでいる。
本発明は、体積容量と体積容量維持率が高いリチウム金属複合酸化物粉末、リチウム二次電池用正極活物質、正極、及びリチウム二次電池を提供することを目的とする。
[1]一次粒子が凝集して形成された二次粒子と、前記二次粒子とは独立して存在する単粒子と、から構成されたリチウム金属複合酸化物粉末であって、下記組成式(1)で表され、下記要件(A)、(B)及び(C)を満たすことを特徴とする、リチウム金属複合酸化物粉末。
Li[Lix(Ni(1−y−z−w)CoyMnzMw)1−x]O2 (1)
(ただし、MはFe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の元素であり、−0.1≦x≦0.2、0<y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦w≦0.1を満たす。)
(A)前記リチウム金属複合酸化物粉末のBET比表面積が2m2/g未満である。
(B)前記リチウム金属複合酸化物粉末は、下記式(2)により求められる円形度の個数基準の円形度分布において2つ以上のピークを有する。
円形度=4πS/L2 …(2)
(Sは前記粒子の投影画像の投影面積であり、Lは前記粒子の周囲長である。)
(C)前記リチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径D50が2μm以上20μm以下である。
[2]平均円形度が0.4以上0.8以下である、[1]に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[3]前記円形度分布において、円形度が0.4以上0.7以下の円形度範囲に第1のピークを有し、円形度が0.75以上0.95以下の円形度範囲に第2のピークを有する、[1]又は[2]に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[4]前記円形度分布において、円形度分布標準偏差が0.1以上0.4以下である[3]に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[5]前記第1のピークが単粒子に由来するピークであり、前記第2のピークが二次粒子に由来するピークである、[3]または[4]に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[6]平均粒子径が1.0μm以上5.0μm以下の単粒子を含む、[1]〜[5]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
[7][1]〜[6]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物粉末を含有するリチウム二次電池用正極活物質。
[8][7]に記載のリチウム二次電池用正極活物質を有する正極。
[9][8]に記載の正極を有するリチウム二次電池。
本発明において、「二次粒子」とは、前記一次粒子が凝集することにより形成された粒子である。
本発明において、「単粒子」とは、前記二次粒子とは独立して存在し、外観上に粒界が存在しない粒子であって、例えば粒子径が0.5μm以上の粒子を意味する。
本発明において、「粒子」と記載する場合には、単粒子又は二次粒子のいずれか一方又は両方が含まれる意味とする。
本実施形態は、一次粒子が凝集して形成された二次粒子と、前記二次粒子とは独立して存在する単粒子と、から構成されたリチウム金属複合酸化物粉末である。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、下記組成式(1)で表され、下記要件(A)、(B)及び(C)を満たす。
Li[Lix(Ni(1−y−z−w)CoyMnzMw)1−x]O2 (1)
(ただし、MはFe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の元素であり、−0.1≦x≦0.2、0<y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦w≦0.1を満たす。)
(A)前記リチウム金属複合酸化物粉末のBET比表面積が2m2/g未満である。
(B)前記リチウム金属複合酸化物粉末は、下記式(2)により求められる円形度の個数基準の円形度分布において2つ以上のピークを有する。
円形度=4πS/L2 …(2)
(Sは前記粒子の投影画像の投影面積であり、Lは前記粒子の周囲長である。)
(C)前記リチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径D50が2μm以上20μm以下である。
本実施形態の正極活物質は、下記組成式(1)で表される。
Li[Lix(Ni(1−y−z−w)CoyMnzMw)1−x]O2 ・・・(1)
(ただし、MはFe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、La及びVからなる群より選択される1種以上の元素であり、−0.1≦x≦0.2、0≦y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦w≦0.1を満たす。)
xの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
本実施形態においては、0<x≦0.1であることが好ましい。
本明細書において、「サイクル特性がよい」とは、充放電の繰り返しにより、電池容量の低下量が低い特性を意味し、初期容量に対する再測定時の容量比が低下しにくいことを意味する。
yの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
本実施形態においては、0<y≦0.4であることが好ましい。
zの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
wの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、BET比表面積が2m2/g未満であり、1.7m2/g以下が好ましく、1.5m2/g以下がより好ましく、1.4m2/g以下が特に好ましい。
本実施形態において、BET比表面積は、リチウム金属複合酸化物粉末1gを窒素雰囲気中、105℃で30分間乾燥させた後、マウンテック社製Macsorb(登録商標)を用いて測定した値とする(単位:m2/g)。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、円形度分布において、2つ以上のピークを有する。
測定対象とするリチウム金属複合酸化物粉末の円形度分布を測定する。本実施形態における円形度分布は、下記式(2)により求められる円形度の個数基準の円形度分布である。
まず、リチウム金属複合酸化物粉末のSEM画像を撮影し、リチウム金属複合酸化物粉末粒子の投影像である粒子画像を得る。次に、リチウム金属複合酸化物粉末を構成する個々の粒子について、下記式(2)により算出される円形度を測定する。得られた円形度を横軸に、粒子個数を縦軸とし、リチウム金属複合酸化物粉末の円形度分布が得られる。下記式(2)に示す円形度は、数値が1に近づくほど真円であることを意味する。
円形度=4πS/L2 …(2)
(Sは前記粒子の投影画像の投影面積であり、Lは前記粒子の周囲長である。)
なお、円形度分布の評価において、円形度が0〜1.0の間を20以上に分割したデータ範囲を設定してもよい。
図2Aは、二次粒子を単独で含むリチウム金属複合酸化物粉末の円形度分布の一例を示すグラフである。
図2Bは、単粒子を単独で含むリチウム金属複合酸化物粉末の円形度分布の一例を示すグラフである。
図2Cは、本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末の円形度分布の一例を示すグラフである。
なお、二次粒子を単独で含むリチウム金属複合酸化物粉末には、二次粒子が割れたことにより発生した一次粒子がわずかに含まれる可能性もあるが一次粒子の存在量はごく微量であるため、一次粒子に由来するピークは観察されないと考えられる。
本実施形態においては、円形度分布において2つ以上のピークを有していればよく、3つ以上のピークを有していてもよい。粒子形状が異なる粒子(例えば、楕円状粒子や板状粒子、繊維状粒子)を含む場合には、それぞれの粒子の円形度に由来する複数のピークが観測される場合がある。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、平均粒子径D50が2μm以上20μm以下であり、3μm以上18μm以下が好ましく、4μm以上15μm以下がより好ましい。
また、単粒子の平均粒子径の上限値は特に限定されない。一例を挙げると、単粒子の平均粒子径は5.0μm以下であってもよく、4.0μm以下であってもよく、3.0μm以下であってもよい。
まず、リチウム金属複合酸化物粉末を、サンプルステージ上に貼った導電性シート上に載せ、日本電子株式会社製JSM−5510を用いて、加速電圧が20kVの電子線を照射してSEM観察を行う。SEM観察により得られた画像(SEM写真)から任意に50個の単粒子又は二次粒子を抽出し、それぞれの単粒子又は二次粒子について、単粒子又は二次粒子の投影像を一定方向から引いた平行線ではさんだ平行線間の距離(定方向径)を単粒子又は二次粒子の粒子径として測定する。得られた単粒子又は二次粒子の粒子径の算術平均値が、リチウム金属複合酸化物粉末の平均単粒子径又は平均二次粒子径である。平均粒子径を算出するためのn数は50以上とする。
レーザー回折散乱法によって測定される。まず、リチウム金属複合酸化物粉末0.1gを、0.2質量%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液50mlに投入し、該粉末を分散させた分散液を得る。
次に、得られた分散液についてマイクロトラック・ベル株式会社製マイクロトラックMT3300EXII(レーザー回折散乱粒度分布測定装置)を用いて、粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得る。
本実施形態において、リチウム金属複合酸化物粉末の結晶構造は、層状構造であり、六方晶型の結晶構造又は単斜晶型の結晶構造であることがより好ましい。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、下記の製造方法1又は製造方法2によって製造できる。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末を製造するにあたって、まず、リチウム以外の金属、すなわち、少なくともNiを含み、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga、La及びVのうちいずれか1種以上の任意元素を含む金属複合化合物を調製し、当該金属複合化合物を適当なリチウム塩と、不活性溶融剤と焼成することが好ましい。金属複合化合物としては、金属複合水酸化物又は金属複合酸化物が好ましい。以下に、リチウム金属複合酸化物粉末の製造方法の一例を、金属複合化合物の製造工程と、リチウム金属複合酸化物の製造工程とに分けて説明する。
金属複合化合物は、通常公知のバッチ共沈殿法又は連続共沈殿法により製造することが可能である。以下、金属として、ニッケル、コバルト及びマンガンを含む金属複合水酸化物を例に、その製造方法を詳述する。
第1の共沈槽に供給する金属塩の濃度、攪拌速度、反応温度、反応pH、及び後述する焼成条件等を適宜制御することにより、単粒子前駆体を製造できる。
具体的には、反応槽の温度が例えば20℃以上80℃以下が好ましく、30〜70℃の範囲内で制御されることがより好ましく、後述する第2の反応槽に対し±20℃の範囲であることがさらに好ましい。また、反応槽内のpH値は例えばpH10以上pH13以下が好ましく、pH11以上pH12.5以下の範囲内で制御されることがより好ましく、後述する第2の反応槽に対し±pH2以内の範囲であることがさらに好ましく、第2の反応槽よりも低いpHであることが特に好ましい。
なお、上記の例では、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を製造しているが、ニッケルコバルトマンガン複合酸化物を調製してもよい。
単粒子前駆体、二次粒子前駆体としての上記金属複合酸化物又は金属複合水酸化物を乾燥した後、リチウム塩と混合する。単粒子前駆体および二次粒子前駆体を混合時に所定の質量比で混合することで、得られる単粒子と二次粒子の存在比率をおおよそ制御できる。
なお、混合以降の工程において単粒子前駆体および二次粒子前駆体がそれぞれ凝集、あるいは分離し単粒子前駆体を基にした二次粒子あるいは、二次粒子前駆体を基にした単粒子も存在し得るが、単粒子前駆体と二次粒子前駆体との混合比率および混合以降の工程の条件を調整することで、最終的に得られるリチウム金属複合酸化物粉末における単粒子と二次粒子の存在比率は制御することができる。
焼成における保持温度は、用いる遷移金属元素の種類、沈殿剤、に応じて適宜調整すればよい。
保持温度として、具体的には、200℃以上1150℃以下の範囲を挙げることができ、300℃以上1050℃以下が好ましく、500℃以上1000℃以下がより好ましい。
本実施形態のリチウム金属複合酸化物粉末は、単粒子から構成される第1のリチウム金属複合酸化物粉末と、二次粒子から構成される第2のリチウム金属複合酸化物粉末とを、それぞれ製造し、第1及び第2のリチウム金属複合酸化物粉末を混合することにより製造できる。
金属複合化合物は、通常公知のバッチ共沈殿法又は連続共沈殿法により製造することが可能である。以下、金属として、ニッケル、コバルト及びマンガンを含む金属複合水酸化物を例に、その製造方法を詳述する。
なお、上記の例では、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を製造しているが、ニッケルコバルトマンガン複合酸化物を調製してもよい。
上記金属複合酸化物又は金属複合水酸化物を乾燥した後、リチウム塩と混合する。また、第1のリチウム金属複合酸化物粉末を製造する場合には、この混合と同時に不活性溶融剤を混合することが好ましい。
金属複合酸化物若しくは金属複合水酸化物、リチウム塩及び不活性溶融剤を含む、不活性溶融剤含有混合物を焼成することにより、不活性溶融剤の存在下で、混合物を焼成することになる。不活性溶融剤の存在下で焼成することにより、一次粒子同士が焼結して二次粒子が生成することを抑制できる。また、単粒子の成長を促進できる。
焼成における保持温度は、用いる遷移金属元素の種類、沈殿剤、不活性溶融剤の種類、量に応じて適宜調整すればよい。
保持温度として、具体的には、200℃以上1150℃以下の範囲を挙げることができ、300℃以上1050℃以下が好ましく、500℃以上1000℃以下がより好ましい。
次いで、リチウム二次電池の構成を説明しながら、本実施形態の正極活物質粉末を含有するリチウム二次電池用正極活物質を用いた正極、およびこの正極を有するリチウム二次電池について説明する。
(正極)
本実施形態の正極は、まず正極活物質、導電材およびバインダーを含む正極合剤を調整し、正極合剤を正極集電体に担持させることで製造することができる。
本実施形態の正極が有する導電材としては、炭素材料を用いることができる。炭素材料として黒鉛粉末、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、繊維状炭素材料などを挙げることができる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きいため、少量を正極合剤中に添加することにより正極内部の導電性を高め、充放電効率および出力特性を向上させることができるが、多く入れすぎるとバインダーによる正極合剤と正極集電体との結着力、および正極合剤内部の結着力がいずれも低下し、かえって内部抵抗を増加させる原因となる。
本実施形態の正極が有するバインダーとしては、熱可塑性樹脂を用いることができる。
この熱可塑性樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。
)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;を挙げることができる。
本実施形態の正極が有する正極集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を用いることができる。なかでも、加工しやすく、安価であるという点でAlを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
(負極)
本実施形態のリチウム二次電池が有する負極は、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能であればよく、負極活物質を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなる電極、および負極活物質単独からなる電極を挙げることができる。
負極が有する負極活物質としては、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属又は合金で、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能な材料が挙げられる。
負極が有する負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を挙げることができる。なかでも、リチウムと合金を作り難く、加工しやすいという点で、Cuを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
本実施形態のリチウム二次電池が有するセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質膜、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができる。また、これらの材質を2種以上用いてセパレータを形成してもよいし、これらの材料を積層してセパレータを形成してもよい。
本実施形態のリチウム二次電池が有する電解液は、電解質および有機溶媒を含有する。
後述の方法で製造されるリチウム金属複合酸化物粉末の組成分析は、得られたリチウム複合金属化合物の粉末を塩酸に溶解させた後、誘導結合プラズマ発光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SPS3000)を用いて行った。
リチウム金属複合酸化物粉末1gを窒素雰囲気中、105℃で30分間乾燥させた後、マウンテック社製Macsorb(登録商標)を用いて測定した(単位:m2/g)。
リチウム金属複合酸化物粉末0.1gを、0.2質量%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液50mlに投入し、該粉末を分散させた分散液を得た。次に、得られた分散液についてマイクロトラック・ベル株式会社製マイクロトラックMT3300EXII(レーザー回折散乱粒度分布測定装置)を用いて、粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得た。そして、得られた累積粒度分布曲線において、全体を100%としたときに、微小粒子側からの累積体積が50%となる点の粒子径の値を50%累積体積粒度D50(μm)として求めた。
リチウム金属複合酸化物粉末を、サンプルステージ上に貼った導電性シート上に載せ、日本電子株式会社製JSM−5510を用いて、加速電圧が20kVの電子線を照射してSEM観察を行った。なお、導電性シートにリチウム複合金属酸化物粉末を載せる際には独立した粒子同士が重なって観察されないよう、導電性シートに載せる粉末量を調整した。SEM観察により得られた画像(SEM写真)から任意に50個の単粒子又は二次粒子を抽出し、それぞれの単粒子又は二次粒子について、投影像を一定方向から引いた平行線ではさんだ平行線間の距離(定方向径)を単粒子又は二次粒子の粒子径として測定した。
得られた単粒子又は二次粒子の粒子径の算術平均値を、リチウム金属複合酸化物粉末の平均単粒子径又は平均二次粒子径とした。
前記SEM面像をコンピュータに取り込み、画像解析ソフトImage Jを用い、該SEM画像中における最大輝度及び最小輝度の中間値で二値化処理を行い、該リチウム複合金属酸化物粉末、すなわち単粒子又は二次粒子を黒色とし、該単粒子又は二次粒子以外の部分を白色として変換した二値化処理済み画像を得た。前記二値化処理済み画像について、該単粒子又は二次粒子に該当する黒色部分それぞれについて、円形度を測定した。
上記の方法により得られたそれぞれの粒子における円形度を横軸、粒子個数を縦軸にした円形度分布において、円形度が0〜1.0の間で0.05毎に等間隔となるように20分割のデータ範囲を設定した際に、円形度が低い側から高い側へ向かって、粒子個数が増加から減少に転ずる箇所(ピーク)の数を測定した。
平均円形度は、以下のようにして算出した。
リチウム複合金属酸化物粉末における平均円形度 = 観察した全粒子の円形度の和/観察した全粒子個数
単粒子における平均円形度 = 観察した単粒子の円形度の和/観察した単粒子個数 二次粒子における平均円形度 = 観察した二次粒子の円形度の和/観察した二次粒子個数
該単粒子又は二次粒子における平均円形度を算出し、平均円形度が低い粒子に由来するピークから第1のピーク、第2のピークと呼ぶ。2つ以上のピークがある場合には、さらに続けて、第3のピーク、第4のピークと呼ぶ。
前記円形度分布より、円形度分布標準偏差を算出した。具体的には以下のようにして算出した。
・リチウム二次電池用正極の作製
後述する製造方法で得られるリチウム二次電池用正極活物質と導電材(アセチレンブラック)とバインダー(PVdF)とを、リチウム二次電池用正極活物質:導電材:バインダー=92:5:3(質量比)の組成となるように加えて混練することにより、ペースト状の正極合剤を調製した。正極合剤の調製時には、N−メチル−2−ピロリドンを有機溶媒として用いた。
以下の操作を、乾燥空気雰囲気のグローブボックス内で行った。
「リチウム二次電池用正極の作製」で作成した正極を、コイン型電池R2032用のコインセル(宝泉株式会社製)の下蓋にアルミ箔面を下に向けて置き、その上に積層フィルムセパレータ(ポリエチレン製多孔質フィルムの上に、耐熱多孔層を積層(厚み16μm))を置いた。ここに電解液を300μL注入した。用いた電解液は、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの30:35:35(体積比)混合液に、LiPF6を1.0mol/Lとなるように溶解して調製した。
次に、負極として金属リチウムを用いて、前記負極を積層フィルムセパレータの上側に置き、ガスケットを介して上蓋をし、かしめ機でかしめてリチウム二次電池(コイン型電池R2032。以下、「コイン型電池」と称することがある。)を作製した。
「リチウム二次電池(コイン型セル)の作製」で作製したコイン型電池を用い、以下に示す条件の50回サイクル試験にて、初期体積容量密度および50回サイクル体積容量密度維持率評価を実施し、50回後の体積容量密度維持率を以下の式にて算出した。なお、50回後の体積容量密度維持率が高いほど、電池としての寿命特性がよいことを示している。
初期体積容量密度(mAh/cc)=1回目の放電容量×正極密度
50回後の体積容量密度(mAh/cc)=50回目の放電容量×正極密度
50回後の体積容量密度維持率(%)=50回後の体積容量密度/初期体積容量密度×100
以下、50回後の体積容量密度維持率を『サイクル維持率』と記載することがある。
試験温度:25℃
充電時条件:充電時最大電圧4.3V、充電時間6.0時間、充電電流0.2CA充電後休止時間:10分
放電時条件:放電時最小電圧2.5V、放電時間6.0時間、放電電流0.2CA放電後休止時間:10分
本試験において、充電、充電休止、放電、放電休止を順に実施した工程を1回としている。
初期体積容量密度は、以下の方法により測定した。
後述の方法により得られた正極活物質を用いてリチウム二次電池(コイン型セル)を作製した。正極は、後述の方法により得られた正極活物質と導電材(アセチレンブラック)とバインダー(PVdF)とを、リチウム二次電池用正極活物質:導電材:バインダー=92:5:3(質量比)の組成となるように加えて混練することにより、ペースト状の正極合剤を調製した。
1.正極活物質A1の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を55℃に保持した。
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を50℃に保持した。
正極活物質A1と正極活物質B1とを質量比で20:80となるように秤量し、混合して正極活物質C1を得た。
正極活物質C1の分析結果、体積容量密度および50回サイクル体積容量密度維持率の測定結果を表2に示す。
1.正極活物質A2の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を55℃に保持した。
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を45℃に保持した。
正極活物質A2と正極活物質B2とを質量比で20:80となるように秤量し、混合して正極活物質C2を得た。
正極活物質C2の分析結果、体積容量密度および50回サイクル体積容量密度維持率の測定結果を表2に示す。
1.正極活物質A3の製造
ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子1と水酸化リチウム一水和物粉末と硫酸カリウム粉末を、Li/(Ni+Co+Mn)=1.15、K2SO4/(LiOH+K2SO4)=0.1(mol/mol)となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下840℃で10時間焼成して、リチウム金属複合酸化物粉末を得た。上記粉末と液温を5℃に調整した純水とを、全体量に対して上記粉末質量の割合が0.3になるように混合し作製したスラリーを20分間撹拌させた後、脱水し、さらに上記粉末の2倍の質量の液温を5℃に調整した純水でリンス後、単離し、150℃で乾燥することで正極活物質A3を得た。
正極活物質A3と正極活物質B2とを質量比で25:75となるように秤量し、混合して正極活物質C3を得た。
正極活物質C3の分析結果、体積容量密度および50回サイクル体積容量密度維持率の測定結果を表2に示す。
1.正極活物質B3の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を50℃に保持した。
正極活物質B3の分析結果、体積容量密度および50回サイクル体積容量密度維持率の測定結果を表2に示す。
1.正極活物質C4の製造
正極活物質B2と正極活物質B3とを質量比で80:20となるように秤量し、混合して正極活物質C4を得た。
2.正極活物質C4の評価
正極活物質C4の分析結果、体積容量密度および50回サイクル体積容量密度維持率の測定結果を表2に示す。
1.正極活物質B2の評価
正極活物質B2の分析結果、体積容量密度および50回サイクル体積容量密度維持率の測定結果を表1に示す。
1.正極活物質A3の評価
正極活物質A3の分析結果、体積容量密度および50回サイクル体積容量密度維持率の測定結果を表2に示す。
表2に、第1のピーク円形度、第2のピーク円形度、円形度分布標準偏差、第1のピーク由来の粒子、第2のピーク由来の粒子、単粒子平均粒子径、電極密度、初期体積容量密度、50回サイクル体積容量密度維持率をまとめて記載する。
Claims (9)
- 一次粒子が凝集して形成された二次粒子と、前記二次粒子とは独立して存在する単粒子と、から構成されたリチウム金属複合酸化物粉末であって、下記組成式(1)で表され、下記要件(A)、(B)及び(C)を満たすことを特徴とする、リチウム金属複合酸化物粉末。
Li[Lix(Ni(1−y−z−w)CoyMnzMw)1−x]O2 (1)
(ただし、MはFe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の元素であり、−0.1≦x≦0.2、0<y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦w≦0.1を満たす。)
(A)前記リチウム金属複合酸化物粉末のBET比表面積が2m2/g未満である。
(B)前記リチウム金属複合酸化物粉末は、下記式(2)により求められる円形度の個数基準の円形度分布において2つ以上のピークを有する。
円形度=4πS/L2 …(2)
(Sは前記粒子の投影画像の投影面積であり、Lは前記粒子の周囲長である。)
(C)前記リチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径D50が2μm以上20μm以下である。 - 平均円形度が0.4以上0.8以下である、請求項1に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
- 前記円形度分布において、円形度が0.4以上0.7以下の円形度範囲に第1のピークを有し、円形度が0.75以上0.95以下の円形度範囲に第2のピークを有する、請求項1又は2に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
- 前記円形度分布において、円形度分布標準偏差が0.1以上0.4以下である請求項3に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
- 前記第1のピークが単粒子に由来するピークであり、前記第2のピークが二次粒子に由来するピークである、請求項3または4に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
- 平均粒子径が1.0μm以上5.0μm以下の単粒子を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム金属複合酸化物粉末。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウム金属複合酸化物粉末を含有するリチウム二次電池用正極活物質。
- 請求項7に記載のリチウム二次電池用正極活物質を有する正極。
- 請求項8に記載の正極を有するリチウム二次電池。
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