以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
本発明の光学積層体は、本発明の一態様において、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む光学フィルムと、該光学フィルムの少なくとも片面に積層された機能層とを有する光学積層体であって、
前記光学フィルムを用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh及びvとし、前記投影法において前記光学フィルムを用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh’及びv’とし、ラインプロファイルhからラインプロファイルh’を引いて得たラインプロファイル(h−h’)の最大強度をY
mhとし、最大強度Y
mhを示す周波数をX
mhとし、ラインプロファイルvからラインプロファイルv’を引いて得たラインプロファイル(v−v’)の最大強度をY
mvとし、最大強度Y
mvを示す周波数をX
mvとすると、Y
mh及びY
mvはいずれも40以下であり、Y
mh、Y
mv、X
mh及びX
mvは、次の関係:
を満たす、光学積層体である。
本発明の光学積層体は、本発明の別の一態様において、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む光学フィルムと、該光学フィルムの少なくとも片面に積層された機能層とを有する光学積層体であって、
前記光学積層体を用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh及びvとし、前記投影法において前記光学積層体を用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh’及びv’とし、ラインプロファイルhからラインプロファイルh’を引いて得たラインプロファイル(h−h’)の最大強度をY
mhとし、最大強度Y
mhを示す周波数をX
mhとし、ラインプロファイルvからラインプロファイルv’を引いて得たラインプロファイル(v−v’)の最大強度をY
mvとし、最大強度Y
mvを示す周波数をX
mvとすると、Y
mh及びY
mvはいずれも40以下であり、Y
mh、Y
mv、X
mh及びX
mvは、次の関係:
を満たす、光学積層体である。ここで、方向h及び方向h’は互いに対応する方向であり、方向v及び方向v’は互いに対応する方向である。これら方向が対応するとは、方位角が同じであることを意味する。
本発明の光学積層体は、本発明の光学積層体に含まれる光学フィルム、又は、本発明の光学積層体を測定フィルムとして用い、上記Ymh等を評価した結果、上記の特徴を満たす光学積層体である。このような特徴を満たす本発明の光学積層体は、高い光学的均質性を有する。本発明の光学積層体は、優れた光学的均質性を有し、特に画像表示装置における光学積層体として好ましく使用される。ここで、フィルムの光学的均質性は、フィルムの面状ムラ、厚さムラ、配向ムラなどと密接に関係し、これらのムラが生じると光学的均質性が低下する。そのため、優れた光学的均質性を有する本発明の光学積層体は、面状ムラ、厚さムラ、配向ムラ等のムラが低減されたフィルムであるといえる。
本発明の光学積層体に含まれる光学フィルム、又は、本発明の光学積層体を測定フィルムとして用いて、投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像、及び、前記投影法において前記測定フィルムを用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像とは、それぞれ、投影画像及び背景画像からフーリエ変換により得たものである限り特に限定されないが、例えば、
(1)光源からの光を測定フィルム(光学フィルム又は光学積層体)に照射し、測定フィルムを透過した光を投影面に投影する投影法により投影画像を得る工程、
(2)工程(1)の投影法において測定フィルムを用いずに、光源からの光を投影面に投影して、背景画像を得る工程、
及び、
(3)工程(1)で得た投影画像及び工程(2)で得た背景画像をそれぞれグレースケール化により数値化し、数値化された画像データをフーリエ変換して逆空間像(フィルム逆空間像及び背景逆空間像)を得る工程、により得ることができる。上記逆空間像を用いて測定フィルムの面品質を評価することにより、ムラの濃淡と周期を解析することができる。
測定フィルムの投影法による投影画像からフーリエ変換により逆空間像を得る方法は、特に限定されないが、例えば、評価工程について後述する方法を用いてよい。
次に、(4)投影画像の逆空間像において直交する2方向の各ラインプロファイルから、背景画像の逆空間像において直交する前記2方向の各ラインプロファイルをそれぞれ引いて、ブランク補正されたラインプロファイルを得る工程、及び、(5)工程(4)で得たブランク補正されたラインプロファイルの最大強度Ymax(それぞれ、Ymh及びYmv)、ならびに各ラインプロファイルにおいて最大強度Ymax(Ymh及びYmv)を示す周波数Xmax(Xmh及びXmv)を測定する。例えば、逆空間像の中心を通る水平方向(h1方向)及び垂直方向(v1方向)のそれぞれの方向についてラインプロファイルを作成する場合について以下に説明する。ラインプロファイルは、例えば図3に示されるような、X軸に周波数、Y軸に強度を表すグラフとして示される。そして、水平方向(h1方向)のラインプロファイルにおける最大強度YmaxをYmh1とし、最大強度Ymh1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値XmaxをXmh1とする。また、垂直方向(v1方向)のラインプロファイルにおける最大強度YmaxをYmv1とし、最大強度Ymv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値XmaxをXmv1とする。なお、上記例においては、空間像の中心を通る水平方向(h1方向)及び垂直方向(v1方向)を直交する2方向として選択したが、該2方向(h方向及びv方向)は互いに直交していれば特に限定されず、中心を通らない二方向であってもよいし、水平方向及び垂直方向でなくてもよい。なお、本明細書において、「ブランク補正されたラインプロファイル」とは、投影画像の逆空間像において直交する2方向の各ラインプロファイルから、背景画像の逆空間像において直交する前記2方向の各ラインプロファイルをそれぞれ引いて得たラインプロファイルを意味する。上記の操作により、投影画像の逆空間像におけるラインプロファイルのベースラインを補正することができる。
本発明の光学積層体に含まれる光学フィルムを測定フィルムとして用いて得られる上記Ymh及びYmvは、いずれも40以下である。Ymh又はYmvが40を超える場合、光学フィルムの光学的均質性が十分であるとはいえず、光学積層体の光学的均質性が十分でない場合がある。特に、このような光学フィルムを含む光学積層体の光学的均質性が画像表示装置において使用するに十分であるとはいえず、画像の歪み等を十分に低減することができない。光学積層体の光学的均質性を高めやすく、画像表示装置において画像の視認性を向上しやすい観点から、Ymh及びYmvは、好ましくは35以下、より好ましくは32以下、さらに好ましくは30以下、さらに好ましくは28以下、特に好ましくは26以下である。Ymh及びYmvは小さければ小さいほどよく、その下限は特に限定されず0以上であればよく、通常は1以上である。本発明の光学積層体を測定フィルムとして用いて得られる上記Ymh及びYmvについても、上記好ましい記載が同様にあてはまる。
本発明の光学積層体に含まれる光学フィルムを測定フィルムとして用いて、上記のようにして得たY
mh、Y
mv、X
mh及びX
mvは、次の関係:
を満たす。(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値が30を超えると、光学的均質性が十分でないために画面の歪み等が生じやすい。(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値の上限は、光学的均質性をより高めやすい観点から、好ましくは25以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは20以下、さらに好ましくは19.5以下、さらに好ましくは19以下、さらに好ましくは18以下、さらに好ましくは17以下、さらに好ましくは16以下、さらに好ましくは14以下、さらに好ましくは13以下、特に好ましくは9以下である。(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値は小さければ小さいほどよく、その下限は特に限定されず0以上であればよく、通常は0.5以上である。本発明の光学積層体を測定フィルムとして用いて得られる上記Y
mh、Y
mv、X
mh及びX
mvについても、上記好ましい記載が同様にあてはまる。
測定フィルムとして、本発明の光学積層体に含まれる光学フィルム又は本発明の光学積層体を用いて、上記のようにして得たブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値をX
cenとする。例えば図3に示されるラインプロファイルにおいては、全周波数が90cm
−1であり、その中央値である45cm
−1がX
cenとなる。ここで、X
cenと上記のようにして得たX
mh及びX
mvとが、次の関係:
を満たすことが好ましい。なお、上記の式中、X
mはX
mh又はX
mvを表し、X
mh及びX
mvのいずれもが上記式を満たすことが好ましい。|X
m−X
cen|の下限は、より好ましくは0.5cm
−1以上、さらに好ましくは1.0cm
−1以上である。また、|X
m−X
cen|の上限は、より好ましくは8.0cm
−1以下、さらに好ましくは6.0cm
−1以下である。ムラとして視認されない光学的均質性を備えることと、生産性とを考慮すると、光学フィルム又は光学積層体におけるX
mh及びX
mvが上記関係を満たすことが好ましい。
本発明の光学積層体の少なくとも一方の面の鉛筆硬度は、好ましくはH以上、より好ましくは2H以上、さらに好ましくは3H以上、特に好ましくは4H以上である。光学積層体の少なくとも一方の面の鉛筆硬度が上記の硬度以上である場合、光学積層体の表面における傷等を防止しやすい。上記の鉛筆硬度は、本発明の光学積層体の機能層(好ましくはハードコート層)を有する面の鉛筆硬度であることが好ましい。なお、鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4:1999に準拠して測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の光学積層体の少なくとも一方の面の表面抵抗率は、好ましくは1.0×1013Ω/sq以下、より好ましくは5.0×1012Ω/sq以下、さらに好ましくは1.0×1012Ω/sq以下である。表面抵抗率が上記の上限以下である場合、十分な帯電防止機能を得やすい。本発明の光学積層体の少なくとも一方の面の表面抵抗率は、本発明の光学積層体をタッチパネルと組合せて使用する際に、タッチパネルの操作性を担保しやすい観点からは、好ましくは1.0×107Ω/sq以上、より好ましくは5.0×107Ω/sq以上、さらに好ましくは1.0×108Ω/sq以上である。上記の表面抵抗率は、本発明の光学積層体の機能層(好ましくは帯電防止機能層)を有する面の表面抵抗率であることが好ましい。なお、表面抵抗率は、JIS K 6911に準拠して測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の光学積層体において、機能層を有する面から光を入射した場合の光学積層体の反射率は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。なお、本明細書における反射率は、視感度補正反射率を意味し、具体的には、入射角12度で光を入射したときの反射角12度における波長350〜900nmの範囲の分光反射率(すなわち入射角12度における正反射率)をJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正した反射率をいう。反射率は、分光光度計等を用いて測定することができる。反射率の測定において、光を入射させる機能層面とは反対側の面からの反射が測定値に影響を及ぼす可能性を排除する目的、及び、光学積層体の反りを防止する目的のために、光学積層体の、光を入射させる機能層面とは反対側の面を、光学的に透明な粘着剤を用いて黒色板(黒色アクリル板等)に貼合した試料を、測定用試料として用いる。
本発明の光学積層体の黄色度(YI値)は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.7以下、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。光学積層体の黄色度が上記の上限以下であると透明性を向上させやすく、例えば表示装置の前面板に使用した場合に視認性を高めやすい。黄色度は、通常−5以上、好ましくは−2以上、より好ましくは0以上、さらに好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.7以上である。黄色度(YI)は、JIS K 7373:2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計を用いて300〜800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、YI=100×(1.2769X−1.0592Z)/Yの式に基づいて算出できる。
本発明の光学積層体の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率が上記の下限以上であると、光学積層体を画像表示装置に組み込んだ際に視認性を高めやすい。本発明の光学積層体は、光学的均質性が高く、高い透過率を示すので、例えば、透過率の低いフィルムを用いた場合と比べて、一定の明るさを得るため必要な表示素子等の発光強度を抑えることが可能となる。このため、消費電力を削減することができる。例えば、本発明の光学積層体を表示装置に組みこむ場合、バックライトの光量を減らしても明るい表示を得られる傾向があり、エネルギーの節約に貢献できる。全光線透過率の上限は、通常100%以下である。なお、全光線透過率は、例えばJIS K 7361−1:1997に準拠してヘイズコンピュータを用いて測定できる。全光線透過率は、後述する光学積層体の厚さの範囲における全光線透過率であってよい。
本発明の光学積層体のヘイズは、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらにより好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.3%以下である。光学積層体のヘイズが上記の上限以下であると透明性が良好となり、例えば画像表示装置の前面板に使用した場合に、画像の視認性を高めやすい。またヘイズの下限は通常0.01%以上である。なお、ヘイズは、JIS K 7136:2000に準拠してヘイズコンピュータを用いて測定できる。
本発明の光学積層体の厚さは、用途に応じて適宜調整してよいが、好ましくは25μm以上、より好ましくは27μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは85μm以下である。光学積層体の厚さは、膜厚計などで測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の光学積層体は、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む光学フィルムと、該光学フィルムの少なくとも片面に積層された機能層とを有する。Ymh等に関する上記特徴を有する均質性の高い光学フィルムを製造しやすい観点、及び/又は、上記特徴を有する均質性の高い光学積層体を製造しやすい観点からは、本発明の光学積層体における光学フィルムは、好ましくはキャストフィルムである。本明細書において、キャストフィルムとは、例えば、上記樹脂を含む溶液、分散液、又は溶融物を、適当な支持体上に流延、塗布等し、加熱、冷却、乾燥等により塗膜化させて、必要に応じて該塗膜を該支持体から剥離して得られるフィルムを表す。このようにして得たフィルムは、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を少なくとも含有し、場合により微量の溶媒を含有する。
本発明の光学積層体における光学フィルムは、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む。本発明の光学積層体において、光学フィルムは、1種類のポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂を含有してもよいし、2種以上のポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含有してもよい。
<ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂>
本発明の光学積層体において、光学フィルムは、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む。ポリイミド系樹脂とは、イミド基を含む繰返し構造単位を含有する樹脂(以下、ポリイミド樹脂ということがある)、並びにイミド基及びアミド基の両方を含む繰返し構造単位を含有する樹脂(以下、ポリアミドイミド樹脂ということがある)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を示す。また、ポリアミド系樹脂とは、アミド基を含む繰り返し構造単位を含有する樹脂を示す。
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(1)で表される構成単位を有するポリイミド樹脂であるか、又は、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。また、ポリアミド系樹脂は、式(2)で表される構成単位を有するポリアミド樹脂であることが好ましい。以下において式(1)及び式(2)について説明するが、式(1)についての説明は、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂の両方に関し、式(2)についての説明は、ポリアミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂の両方に関する。
式(1)で表される構成単位は、テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位であり、式(2)で表される構成単位は、ジカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位である。
式(2)において、Zは、2価の有機基であり、好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基又はフッ素置換された炭素数1〜8の炭化水素基で置換されていてもよい、炭素数4〜40の2価の有機基であり、より好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基又はフッ素置換された炭素数1〜8の炭化水素基で置換されていてもよい、環状構造を有する炭素数4〜40の2価の有機基である。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。Zの有機基として、後述する式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基及び炭素数6以下の2価の鎖式炭化水素基が例示され、Zのヘテロ環構造としてはチオフェン環骨格を有する基が例示される。光学フィルムの黄色度を抑制(YI値を低減)しやすい観点から、式(20)〜式(27)で表される基、及び、チオフェン環骨格を有する基が好ましい。
本発明の一実施形態において、ポリアミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂は、複数種のZを含み得、複数種のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。特に、光学フィルムの表面硬度を高めやすい観点及び光学特性を向上させやすい観点から、Zの少なくとも一部が、式(3)
[式(3)中、R
1〜R
8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R
1〜R
8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、互いに独立に、単結合、−O−、−CH
2−、−CH
2−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−SO
2−、−S−、−CO−又は−N(R
9)−を表し、R
9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、
mは0〜4の整数であり、
*は結合手を表す]
で表されることが好ましい。
式(3)において、Aは、単結合、−O−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−、−S−、−CO−又は−N(R9)−を表し、光学フィルムの耐屈曲性の観点から、好ましくは−O−又は−S−を表し、より好ましくは−O−を表す。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチル−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチル−プロピル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。光学フィルムの表面硬度及び柔軟性の観点から、R1〜R8は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。ここで、R1〜R8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
R9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチル−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチル−プロピル基、n−ヘキシル、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられ、これらはハロゲン原子で置換されていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂は、複数種のAを含み得、複数種のAは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
式(3)において、mは、0〜4の範囲の整数であり、mがこの範囲内であると、光学フィルムの耐屈曲性や弾性率が良好になりやすい。また、式(3)において、mは、好ましくは0〜3の範囲の整数、より好ましくは0〜2、さらに好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。mがこの範囲内であると、光学フィルムの耐屈曲性や弾性率を向上させやすい。また、Zは、式(3)で表される構成単位を1種又は2種類以上含んでいてもよく、光学フィルムの弾性率及び耐屈曲性の向上、黄色度(YI値)低減の観点から、特にmの値が異なる2種類以上の構成単位、好ましくはmの値の異なる2種類の構成単位を含んでいてもよい。その場合、光学フィルムの高い弾性率、耐屈曲性及び低い黄色度(YI値)を発現しやすい観点から、樹脂がZにおいて、mが0である式(3)で表される構成単位を含有することが好ましく、該構成単位に加えてmが1である式(3)で表される構成単位をさらに含有することがより好ましい。
本発明の好ましい一実施形態において、樹脂は、式(3)で表される構成単位として、m=0であり、かつR
5〜R
8が水素原子である構成単位を有する。より好ましい本発明の一実施形態において、樹脂は、式(3)で表される構成単位として、m=0であり、かつR
5〜R
8が水素原子である構成単位と、式(3’):
で表される構成単位を有する。この場合、光学フィルムの表面硬度及び耐屈曲性を向上させやすく、黄色度を低減しやすい。
光学積層体が、ポリアミドイミド樹脂を含む光学フィルムを有する、本発明の好ましい一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂の式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位の合計を100モル%としたときに、式(3)で表される構成単位の割合は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上、最も好ましくは60モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。式(3)で表される構成単位の割合が上記の下限以上であると、光学フィルムの表面硬度を高めやすく、かつ耐屈曲性や弾性率を高めやすい。式(3)で表される構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。
また、ポリアミドイミド樹脂がm=1〜4である式(3)の構成単位を有する場合、ポリアミドイミド樹脂の式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位の合計を100モル%としたときに、mが1〜4である式(3)の構成単位の割合は、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは7モル%以上、特に好ましくは9モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、特に好ましくは30モル%以下である。mが1〜4である式(3)の構成単位の割合が上記の下限以上であると、光学フィルムの表面硬度及び耐屈曲性を高めやすい。mが1〜4である式(3)の構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。なお、式(1)、式(2)又は式(3)で表される構成単位の含有量は、例えば1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリアミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂中のZの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、特に好ましくは70モル%以上が、mが0〜4である式(3)で表される構成単位である。Zの上記の下限以上が、mが0〜4である式(3)で表される構成単位であると、光学フィルムの表面硬度を高めやすいと共に、耐屈曲性及び弾性率も高めやすい。また、ポリアミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂中のZの100モル%以下が、mが0〜4である式(3)で表される構成単位であればよい。なお、樹脂中の、mが0〜4である式(3)で表される構成単位の割合は、例えば1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリアミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂中のZの、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上、特に好ましくは12モル%以上が、mが1〜4である式(3)で表される。ポリアミドイミド樹脂のZの上記の下限以上が、mが1〜4である式(3)で表されると、光学フィルムの表面硬度を高めやすく、かつ耐屈曲性及び弾性率を高めやすい。また、Zの、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、特に好ましくは30モル%以下が、mが1〜4である式(3)で表されることが好ましい。Zの上記の上限以下が、mが1〜4である式(3)で表されると、mが1〜4である式(3)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。なお樹脂中のmが1〜4である式(3)で表される構成単位の割合は、例えば1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
式(1)及び式(2)において、Xは、互いに独立に、2価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の2価の有機基、より好ましくは環状構造を有する炭素数4〜40の2価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。本発明の一実施形態において、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂は、複数種のXを含み得、複数種のXは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。Xとしては、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)及び式(18)で表される基;それらの式(10)〜式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
式(10)〜式(18)中、*は結合手を表し、
V1、V2及びV3は、互いに独立に、単結合、−O−、−S−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−、−CO−又は−N(Q)−を表す。ここで、Qはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、R9について上記に述べた基が挙げられる。
1つの例は、V1及びV3が単結合、−O−又は−S−であり、かつ、V2が−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−又は−SO2−である。V1とV2との各環に対する結合位置、及び、V2とV3との各環に対する結合位置は、互いに独立に、好ましくは各環に対してメタ位又はパラ位であり、より好ましくはパラ位である。
式(10)〜式(18)で表される基の中でも、光学フィルムの表面硬度及び耐屈曲性を高めやすい観点から、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)及び式(17)で表される基が好ましく、式(14)、式(15)及び式(16)で表される基がより好ましい。また、V1、V2及びV3は、光学フィルムの表面硬度及び柔軟性を高めやすい観点から、互いに独立に、単結合、−O−又は−S−であることが好ましく、単結合又は−O−であることがより好ましい。
本発明の好ましい一実施形態において、式(1)及び式(2)中の複数のXの少なくとも一部は、式(4):
[式(4)中、R
10〜R
17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R
10〜R
17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、*は結合手を表す]
で表される構成単位である。式(1)及び式(2)中の複数のXの少なくとも一部が式(4)で表される基であると、光学フィルムの表面硬度及び透明性を高めやすい。
式(4)において、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基としては、式(3)における炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基として例示のものが挙げられる。R10〜R17は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、ここで、R10〜R17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R10〜R17は、互いに独立に、光学フィルムの表面硬度、透明性及び耐屈曲性の観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、とりわけ好ましくはR10、R12、R13、R14、R15及びR16が水素原子、R11及びR17が水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、特に好ましくはR11及びR17がメチル基又はトリフルオロメチル基である。
本発明の好ましい一実施形態において、式(4)で表される構成単位は式(4’):
で表される構成単位であり、すなわち、複数のXの少なくとも一部は、式(4’)で表される構成単位である。この場合、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂中のXの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が式(4)、特に式(4’)で表される。ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂における上記範囲内のXが式(4)、特に式(4’)で表されると、フッ素元素を含有する骨格により樹脂の溶媒への溶解性が向上されやすく、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性も向上しやすい。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂中のXの100モル%以下が式(4)、特に式(4’)で表される。上記ポリアミドイミド樹脂中のXは式(4)、特に式(4’)であってもよい。上記樹脂中のXの式(4)で表される構成単位の割合は、例えば1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
式(1)において、Yは4価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の4価の有機基を表し、より好ましくは環状構造を有する炭素数4〜40の4価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基であり、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。Yとしては、以下の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基;それらの式(20)〜式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
式(20)〜式(29)中、
*は結合手を表し、
W1は、単結合、−O−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−Ar−、−SO2−、−CO−、−O−Ar−O−、−Ar−O−Ar−、−Ar−CH2−Ar−、−Ar−C(CH3)2−Ar−又は−Ar−SO2−Ar−を表す。Arは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。
式(20)〜式(29)で表される基の中でも、光学フィルムの表面硬度及び耐屈曲性の観点から、式(26)、式(28)又は式(29)で表される基が好ましく、式(26)で表される基がより好ましい。また、W1は、光学フィルムの表面硬度及び耐屈曲性を高めやすく、黄色度を低減しやすい観点から、互いに独立に、単結合、−O−、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−であることが好ましく、単結合、−O−、−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−であることがより好ましく、単結合、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−であることがさらに好ましい。
本発明の好ましい一実施形態において、式(1)中の複数のYの少なくとも一部は、式(5):
[式(5)中、R
18〜R
25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R
18〜R
25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す]
で表される構成単位である。式(1)中の複数のYの少なくとも一部が式(5)で表される基であると、ポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、ポリイミド系樹脂を含有するワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
式(5)において、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24及びR25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及び炭素数6〜12のアリール基としては、式(3)における炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基として上記に例示のものが挙げられる。R18〜R25は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、ここで、R18〜R25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。R18〜R25は、互いに独立に、光学フィルムの表面硬度、耐屈曲性及び透明性を向上しやすい観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、よりさらに好ましくはR18、R19、R20、R23、R24及びR25が水素原子、R21及びR22が水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、とりわけ好ましくはR21及びR22がメチル基又はトリフルオロメチル基である。
本発明の好ましい一実施形態においては、式(5)で表される構成単位は、式(5’):
で表される基であり、すなわち、複数のYの少なくとも一部は、式(5’)で表される構成単位である。この場合、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂中のYの、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が、式(5)、特に式(5’)で表される。ポリイミド系樹脂における上記範囲内のYが式(5)、特に式(5’)で表されると、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性を向上させやすい。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂中のYの100モル%以下が式(5)、特に式(5’)で表される。ポリイミド系樹脂中のYは式(5)、特に式(5’)であってもよい。ポリイミド系樹脂中のYの式(5)で表される構成単位の割合は、例えば1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂は、式(1)及び式(2)で表される構成単位の他に、式(30)で表される構成単位及び/又は式(31)で表される構成単位を含むことができる。
式(30)において、Y1は4価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Y1としては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基、それらの式(20)〜式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基、並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂は、複数種のY1を含み得、複数種のY1は、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
式(31)において、Y2は3価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Y2としては、上記の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基、及び3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂は、複数種のY2を含み得、複数種のY2は、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
式(30)及び式(31)において、X1及びX2は、互いに独立に、2価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。X1及びX2としては、上記の式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)及び式(18)で表される基;それら式(10)〜式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂は、式(1)及び/又は式(2)で表される構成単位、並びに場合により式(30)及び/又は式(31)で表される構成単位からなる。また、光学フィルムの光学特性、表面硬度及び耐屈曲性の観点から、上記ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂において、式(1)及び式(2)で表される構成単位は、式(1)及び式(2)、並びに場合により式(30)及び式(31)で表される全構成単位に基づいて、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。なお、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂において、式(1)及び式(2)で表される構成単位は、式(1)及び式(2)、並びに場合により式(30)及び/又は式(31)で表される全構成単位に基づいて、通常100%以下である。なお、上記割合は、例えば、1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の一実施形態において、光学フィルム中におけるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の含有量は、光学フィルム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、好ましくは99.5質量部以下、より好ましくは95質量部以下である。ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の含有量が上記範囲内であると、光学フィルムの光学特性及び弾性率を向上させやすい。
ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、光学フィルムの表面硬度及び耐屈曲性を高めやすい観点から、標準ポリスチレン換算で、好ましくは230,000以上、より好ましくは250,000以上、さらに好ましくは270,000以上、特に好ましくは300,000以上である。また、ポリアミド系樹脂又はポリイミド系樹の溶媒に対する溶解性を向上しやすいと共に、光学フィルムの延伸性及び加工性を向上させやすい観点から、該樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下、さらに好ましくは700,000以下、特に好ましくは500,000以下である。重量平均分子量は、例えばGPC測定を行い、標準ポリスチレン換算によって求めることができ、例えば実施例に記載の方法により算出してよい。
ポリアミドイミド樹脂において、式(2)で表される構成単位の含有量は、式(1)で表される構成単位1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.5モル以上、さらに好ましくは1.0モル以上、特に好ましくは1.5モル以上であり、好ましくは6.0モル以下、より好ましくは5.0モル以下、さらに好ましくは4.5モル以下である。式(2)で表される構成単位の含有量が上記の下限以上であると、光学フィルムの表面硬度を高めやすい。また、式(2)で表される構成単位の含有量が上記の上限以下であると、式(2)中のアミド結合間の水素結合による増粘を抑制し、光学フィルムの加工性を向上させやすい。
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の光学積層体における光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂は、例えば上記の含フッ素置換基等によって導入することができる、フッ素原子等のハロゲン原子を含んでよい。ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂がハロゲン原子を含む場合、光学フィルムの弾性率を向上させ、かつ黄色度(YI値)を低減させやすい。光学フィルムの弾性率が高いと、該光学フィルムを例えばフレキシブル表示装置において使用する際に、該フィルムにおける傷及びシワ等の発生を抑制しやすい。また、光学フィルムの黄色度が低いと、該光学フィルムの透明性及び視認性を向上させやすくなる。ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂にフッ素原子を含有させるために好ましい含フッ素置換基としては、例えばフルオロ基及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂におけるハロゲン原子の含有量は、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の質量を基準として、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である。ハロゲン原子の含有量が上記の下限以上であると、光学フィルムの弾性率をより向上させ、吸水率を下げ、黄色度をより低減し、透明性及び視認性をより向上させやすい。ハロゲン原子の含有量が上記の上限以下であると、樹脂の合成がしやすくなる。
ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは96%以上である。光学フィルム及び/又は光学積層体の光学的均質性を高めやすい観点から、イミド化率が上記の下限以上であることが好ましい。また、イミド化率の上限は100%以下である。イミド化率は、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値に対する、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。なお、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂がトリカルボン酸化合物を含む場合には、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値と、トリカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量との合計に対する、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。また、イミド化率は、IR法、NMR法などにより求めることができ、例えば、NMR法においては、実施例に記載の方法により測定できる。
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂は、市販品を使用してもよい。ポリイミド樹脂の市販品としては、例えば三菱瓦斯化学(株)製ネオプリム(登録商標)、河村産業(株)製KPI−MX300F等が挙げられる。
本発明の光学積層体の各種特性に関し、光学積層体の黄色度、表面硬度、光学特性、耐屈曲性、柔軟性、弾性率、透明性、視認性及び吸水率等の特性は、光学フィルムの黄色度、表面硬度、光学特性、耐屈曲性、柔軟性、弾性率、透明性、視認性及び吸水率等が向上する場合に、同様に向上させることが可能な傾向にある。光学積層体の、機能層を有する面の表面硬度及び鉛筆硬度等の特性は、機能層の種類等による影響を受けやすい。
<樹脂の製造方法>
ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造でき、ポリアミドイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造でき、ポリアミド樹脂は、例えば、ジカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造できる。ここで、ジカルボン酸化合物は少なくとも式(3”)で表される化合物を含むことが好ましい。
[式(3”)中、R
1〜R
8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R
1〜R
8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、単結合、−O−、−CH
2−、−CH
2−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−SO
2−、−S−、−CO−又は−N(R
9)−を表し、
R
9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、
mは0〜4の整数であり、
R
31及びR
32は、互いに独立に、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基又は塩素原子を表す。]
本発明の好ましい一実施形態において、ジカルボン酸化合物は、mが0である、式(3”)で表される化合物である。ジカルボン酸化合物として、mが0である式(3”)で表される化合物に加えて、Aが酸素原子である式(3”)で表される化合物を使用することがより好ましい。また、別の好ましい一実施形態においては、ジカルボン酸化合物は、R31、R32が塩素原子である、式(3”)で表される化合物である。また、ジアミン化合物に代えて、ジイソシアネート化合物を用いてもよい。
樹脂の製造に使用されるジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及びこれらの混合物が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基又はその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環及びフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環である。また「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン等の非環式脂肪族ジアミン、並びに1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミン及び4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の環式脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
芳香族ジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMBと記載することがある)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
芳香族ジアミンは、好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルであり、より好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルである。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
上記ジアミン化合物の中でも、光学フィルムの高表面硬度、高透明性、高柔軟性、高屈曲耐性及び低着色性の観点からは、ビフェニル構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上を用いることがより好ましく、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)を用いることがよりさらに好ましい。
樹脂の製造に用いられるテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物;及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。テトラカルボン酸化合物は、二無水物の他、酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体であってもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物及び縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDAと記載することがある)、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。また、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物及び4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられ、より好ましくは4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物及び4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式又は非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル3,3’−4,4’−テトラカルボン酸二無水物及びこれらの位置異性体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。また、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組合せて用いてもよい。
上記テトラカルボン酸二無水物の中でも、光学フィルムの高表面硬度、高透明性、高柔軟性、高屈曲耐性、及び低着色性の観点から、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、並びにこれらの混合物が好ましく、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、並びにこれらの混合物がより好ましく、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)がさらに好ましい。
樹脂の製造に用いられるジカルボン酸化合物としては、好ましくはテレフタル酸、4,4’−オキシビス安息香酸又はそれらの酸クロリド化合物が用いられる。テレフタル酸や4,4’−オキシビス安息香酸又はそれらの酸クロリド化合物に加えて、他のジカルボン酸化合物が用いられてもよい。他のジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、イソフタル酸;ナフタレンジカルボン酸;4,4’−ビフェニルジカルボン酸;3,3’−ビフェニルジカルボン酸;炭素数8以下である鎖式炭化水素、のジカルボン酸化合物及び2つの安息香酸が単結合、−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−若しくはフェニレン基で連結された化合物並びに、それらの酸クロリド化合物が挙げられる。具体例としては、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)、テレフタロイルクロリドが好ましく、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)とテレフタロイルクロリドとを組合せて用いることがさらに好ましい。
なお、上記ポリイミド系樹脂は、光学積層体の各種物性を損なわない範囲で、上記テトラカルボン酸化合物に加えて、テトラカルボン酸及びトリカルボン酸並びにそれらの無水物及び誘導体をさらに反応させたものであってもよい。
テトラカルボン酸としては、上記テトラカルボン酸化合物の無水物の水付加体が挙げられる。
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸の無水物;2,3,6−ナフタレントリカルボン酸−2,3−無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、−O−、−CH2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−SO2−若しくはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物及び/又はジカルボン酸化合物の使用量は、所望とするポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂の各構成単位の比率に応じて適宜選択できる。
樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物及びジカルボン酸化合物の反応温度は、特に限定されないが、例えば5〜350℃、好ましくは20〜200℃、より好ましくは25〜100℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば30分〜10時間程度である。必要に応じて、不活性雰囲気又は減圧の条件下において反応を行ってよい。好ましい態様では、反応は、常圧及び/又は不活性ガス雰囲気下、撹拌しながら行う。また、反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に影響を与えない限り特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組合せ(混合溶媒)などが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、アミド系溶媒を好適に使用できる。
ポリイミド系樹脂の製造におけるイミド化工程では、イミド化触媒の存在下で、イミド化することができる。イミド化触媒としては、例えばトリプロピルアミン、ジブチルプロピルアミン、エチルジブチルアミン等の脂肪族アミン;N−エチルピペリジン、N−プロピルピペリジン、N−ブチルピロリジン、N−ブチルピペリジン、及びN−プロピルヘキサヒドロアゼピン等の脂環式アミン(単環式);アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びアザビシクロ[3.2.2]ノナン等の脂環式アミン(多環式);並びにピリジン、2−メチルピリジン(2−ピコリン)、3−メチルピリジン(3−ピコリン)、4−メチルピリジン(4−ピコリン)、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3,4−シクロペンテノピリジン、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン、及びイソキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。また、イミド化反応を促進しやすい観点から、イミド化触媒とともに、酸無水物を用いることが好ましい。酸無水物は、イミド化反応に用いられる慣用の酸無水物等が挙げられ、その具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組合せた分離手段により単離(分離精製)してもよく、好ましい態様では、透明ポリアミドイミド樹脂を含む反応液に、多量のメタノール等のアルコールを加え、樹脂を析出させ、濃縮、濾過、乾燥等を行うことにより単離することができる。
<フィラー>
本発明の光学積層体において、光学フィルムは、少なくとも1種のフィラーを含んでよい。フィラーとしては、例えば有機粒子、無機粒子などが挙げられ、好ましくは無機粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物粒子、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物粒子などが挙げられ、これらの中でも、得られる光学フィルムの弾性率及び/又は引裂き強度を高め、耐衝撃性を向上しやすい観点から、好ましくはシリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子が挙げられ、より好ましくはシリカ粒子が挙げられる。これらのフィラーは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
本発明の光学積層体において、光学フィルムは、例えば平均一次粒子径が5〜35nmの少なくとも1種のフィラーを含んでよい。かかる光学フィルムは、高い光学特性を有することに加えて、高い引張弾性率も有する。光学フィルムの引張弾性率は、好ましくは4,000MPa以上、より好ましくは5,000MPa以上、さらに好ましくは5,500MPa以上、特に好ましくは6,000MPa以上である。引張弾性率が上記の下限以上であると、光学フィルムに凹み等の欠陥が生じにくくなると共に、光学フィルムの強度を高めやすく、耐久性を向上させやすい。引張弾性率は、好ましくは10,000MPa以下、より好ましくは9,000MPa以下である。引張弾性率が上記の上限以下であると、光学フィルムの耐屈曲性を向上させやすい。なお、光学フィルムの引張弾性率は、JIS K 7127に準拠して、室温で、引張試験機を用いて測定できる。光学フィルムの均質性、透明性、弾性率及び強度を高めやすい観点からは、フィラーの平均一次粒子径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、さらに好ましくは20nm以上である。また、光学フィルムの透明性を高めやすい観点から、フィラーの平均一次粒子径は、好ましくは30nm以下である。
フィラーの平均一次粒子径は、BET法により測定できる。具体的には、BET法(窒素吸着BET法)により測定した比表面積(BET比表面積)を、平均一次粒子径に換算して算出することができる。ここで、平均一次粒子径をd(nm)とし、フィラーの密度をρ(g/cm3)とし、BET比表面積をS(m2/g)とすると、これらの間には、d=6000/(S×ρ)の関係が成り立つ。例えばフィラーがシリカである場合、d=2070/Sの式より、BET比表面積から平均一次粒子径を算出することができる。なお、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)の画像解析により、一次粒子径(平均一次粒子径)を測定してもよい。光学フィルムに含まれるフィラーの平均一次粒子径は、原料として用いるフィラーの平均一次粒子径であってもよいし、光学フィルムから測定した平均一次粒子径であってもよい。光学フィルムからフィラーの平均一次粒子径を測定する場合、フィルムを測定試料として透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡の画像解析により、光学フィルム中のフィラーの平均一次粒子径を測定してもよいし、フィルムを必要に応じて粉砕し、破砕したフィルムを、フィルム中の樹脂を溶解可能な溶媒(例えばγ−ブチロラクトン)に溶解させた状態で、分散された粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して測定してもよいし、フィルムからフィラーを取り出し、乾燥させて、上記と同様にしてBET比表面積から平均一次粒子径を算出してもよい。平均一次粒子を例えば電子顕微鏡の画像解析により測定する場合、一定面積内に存在する100個の粒子のそれぞれについて一次粒子径を測定した結果の平均値を、平均一次粒子径としてよい。
フィラーの含有量は、光学フィルムの質量に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。フィラーの含有量が上記の下限以上であると、光学フィルムの耐衝撃性及び耐久性を向上させやすい。フィラーの含有量は、光学フィルムの質量に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。フィラーの含有量が上記の上限以下であると、光学フィルムのヘイズや黄色度を低減しやすく、透明性及び光学特性を向上させやすいと共に、耐屈曲性を向上させやすい。
<紫外線吸収剤>
本発明の光学積層体は、少なくとも1種の紫外線吸収剤を含んでもよい。紫外線吸収剤は、樹脂材料の分野で紫外線吸収剤として通常用いられているものから、適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、400nm以下の波長の光を吸収する化合物を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、及びトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。紫外線吸収剤は単独又は二種以上を組合せて使用できる。光学フィルムが紫外線吸収剤を含有することにより、樹脂の劣化が抑制されるため、本発明の光学フィルムを画像表示装置等に適用した場合に視認性を高めることができる。本明細書において、「系化合物」とは、当該「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。
本発明の光学積層体において、光学フィルムが紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有量は、光学フィルムに含まれる樹脂の質量に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは1〜8質量部、さらに好ましくは2〜7質量部である。紫外線吸収剤の含有量が上記の下限以上であると、紫外線吸収性を向上させやすい。紫外線吸収剤の含有量が上記の上限以下であると、基材製造時の熱による紫外線吸収剤の分解を抑制でき、光学特性を向上させやすく、例えばヘイズを低減させやすい。
<他の添加剤>
本発明の光学積層体は、フィラー、紫外線吸収剤以外の他の添加剤をさらに含有していてもよい。他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤、pH調整剤、シリカ分散剤、滑剤、増粘剤、及びレベリング剤等が挙げられる。他の添加剤を含有する場合、その含有量は、光学フィルムの質量に対して、好ましくは0.005〜20質量部、より好ましくは0.01〜15質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部であってよい。
<機能層>
本発明の光学積層体は、光学フィルムと該光学フィルムの少なくとも片面に積層された機能層とを有する。該機能層が有する機能は特に限定されず、ハードコート機能、帯電防止機能、防眩機能、低反射機能、反射防止機能、防汚機能、ガスバリア機能、プライマー機能、電磁波遮蔽機能、下塗り機能、紫外線吸収機能、粘着機能、色相調整機能等、光学フィルムに採用される一般的な機能であってよい。機能層は1種類の機能を有する層であってもよいし、2種以上の機能を兼ね備えた層であってもよい。フレキシブル表示装置の前面板として使用しやすい観点から、該機能層の少なくとも1つは、ハードコート機能、帯電防止機能、防眩機能、低反射機能、反射防止機能及び防汚機能からなる群から選択される少なくとも1つの機能を有する層であることが好ましい。機能層は、1層で複数の機能を有していてもよいし、各機能を有する層を2層以上積層してもよい。2層以上積層する場合、積層する順番はその機能に応じて適宜設定される。これらの層は、光学フィルムの片面又は両面に積層される。両面に積層される場合、それぞれ面に積層される層の厚さ、機能、積層の順番は同じであってもよいし異なっていてもよい。
機能層の厚さは、目的とする機能に応じて適宜設定してよいが、光学積層体の軽量化及び光学的均質性を高めやすい観点からは、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
(ハードコート機能)
ハードコート機能は、光学フィルムの表面に耐傷性、耐薬品性などを付与して光学フィルムを保護する機能である。本発明の光学積層体において、機能層はハードコート機能を有する層(ハードコート層)であってよい。ハードコート層としては、公知のものを適宜採用してよく、例えばアクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ベンジルクロライド系、ビニル系等の公知のハードコート層が挙げられる。これらの中でも光学積層体の広角方向の視認性の低下を抑制し、かつ耐屈曲性を向上させる観点から、アクリル系、ウレタン系、及びそれらの組合せのハードコート層が好ましい。例えば、ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する組成物の硬化物であってよい。活性エネルギー線硬化性化合物は、電子線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより硬化する性質を有する化合物である。このような活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、電子線を照射することにより硬化する電子線硬化性化合物や、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化性化合物などが挙げられる。これらの化合物は、通常のハードコート層の形成に用いられるハードコート剤の主成分と同様の化合物であり、例えば(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。特に、(メタ)アクリル系樹脂のうち、多官能(メタ)アクリレート系化合物を主成分とするものが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
多官能(メタ)アクリレート系化合物とは、分子中に少なくとも2個のアクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基を有する化合物であり、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ホスファゼン化合物のホスファゼン環に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたホスファゼン系アクリレート化合物又はホスファゼン系メタクリレート化合物、分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物、分子中に少なくとも2個のカルボン酸ハロゲン化物と少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレート化合物、並びに上記各化合物の2量体、3量体などのようなオリゴマーなどが挙げられる。
これらの化合物は、それぞれ単独又は2種以上を混合して用いてよい。なお、上記の多官能(メタ)アクリレート系化合物の他に、少なくとも1種の単官能(メタ)アクリレートを使用してもよい。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は単独又は2種類以上を混合して用いられる。単官能(メタ)アクリレート系化合物の含有量は、機能層形成用組成物(ハードコート層用塗料)に含まれる化合物の固形分に対して、好ましくは10質量%以下の量である。なお、本明細書において、固形分とは、硬化性組成物に含まれる溶媒を除く、全ての成分を意味する。
機能層には、例えば硬度を調整する目的で、重合性オリゴマーを添加してもよい。このようなオリゴマーとしては、末端(メタ)アクリレートポリメチルメタクリレート、末端スチリルポリ(メタ)アクリレート、末端(メタ)アクリレートポリスチレン、末端(メタ)アクリレートポリエチレングリコール、末端(メタ)アクリレートアクリロニトリル−スチレン共重合体、末端(メタ)アクリレートスチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体などのマクロモノマーが挙げられる。重合性オリゴマーを添加する場合、その含有量は、機能層形成用組成物の固形分に対して、好ましくは5〜50質量%である。
活性エネルギー線硬化性化合物は、溶剤と混合された溶液の状態で用いてもよい。活性エネルギー線硬化性化合物やその溶液は、ハードコート剤として市販されているものであってもよい。市販のハードコート剤としては、具体的には、「NKハードM101」(新中村化学(株)製、ウレタンアクリレート化合物)、「NKエステルA−TMM−3L」(新中村化学(株)製、テトラメチロールメタントリアクリレート)、「NKエステルA−9530」(新中村化学(株)製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、「KAYARAD(登録商標) DPCAシリーズ」(日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート化合物の誘導体)、「アロニックス(登録商標) M−8560」(東亜合成(株)製、ポリエステルアクリレート化合物)、「ニューフロンティア(登録商標) TEICA」(第一工業製薬(株)製、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート)、「PPZ」(共栄社化学(株)製、ホスファゼン系メタクリレート化合物)などが例示される。
ハードコート層の厚さは、適宜設定することができるが、光学積層体の耐屈曲性、表
面硬度及び光学的均質性の観点から、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
ハードコート層を光学フィルムの少なくとも片面に積層させる方法としては、例えば活性エネルギー線硬化性化合物(活性エネルギー線硬化性樹脂)を含有するハードコート層形成用組成物を基板(光学フィルム)の表面に塗布し、活性エネルギー線を照射すればよい。このような組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物を必要に応じて添加剤等と混合することにより得ることができる。該ハードコート層形成用組成物の硬化物がハードコート層を構成する。
ハードコート層形成用組成物は、溶剤を含むことが好ましく、該ハードコート層形成用組成物において、活性エネルギー線硬化性化合物が溶剤で希釈されていることが好ましい。この場合、該組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物と表面平滑性等を付与するための各種添加剤(例えばシリコーンオイル等)とを混合後に、得られた混合物を溶剤で希釈して製造してもよいし、活性エネルギー線硬化性化合物を溶剤で希釈後、添加剤を混合して製造してもよいし、活性エネルギー線硬化性化合物と予め溶剤で希釈された添加剤とを混合して製造してもよいし、予め溶剤で希釈された活性エネルギー線硬化性化合物と予め溶剤で希釈された添加剤とを混合して製造してもよい。混合後の組成物は更に攪拌されてもよい。
塗布を容易にする観点からも、ハードコート層形成用組成物が、適当な溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、セロソルブ類などから適宜選択して用いることができる。これらの有機溶剤は、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。ハードコート層形成用組成物を塗工後に加熱して、有機溶剤を蒸発させやすい観点から、溶剤の沸点は好ましくは70℃〜200℃の範囲である。溶剤の種類や使用量は、用いる活性エネルギー線硬化性化合物の種類や量、基材(光学フィルム)の材質、形状、塗布方法、目的とするハードコート層の厚さみなどに応じて適宜選択される。
ハードコート層形成用組成物を塗工後の、加熱して乾燥する温度(T1)は、該組成物に含まれる溶剤の沸点(T2)に対して、好ましくは±30℃、より好ましくは±20℃である。T1が前記の範囲にあると、溶剤が得られるハードコート層に残りにくく、また、密着性が低下しにくい傾向がある。
ハードコート形成用組成物の固形分は、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜55質量%、さらに好ましくは20〜50質量%、さらにより好ましくは25〜50質量%である。該固形分が前記の範囲にあると、塗工する膜厚が厚すぎず数式1の値が大きくなりすぎないため視認性が良好になり、また得られるハードコート層の表面の平滑性が良好となる傾向がある。
ハードコート層形成用組成物は重合開始剤を含有していてもよい。活性エネルギー線として紫外線や可視光線を用いる場合には、通常、重合開始剤として光重合開始剤が用いられる。
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、アセトフエノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフオリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラtert−ブチルパーオキシカルボニルベンゾフエノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルなどが挙げられる。また、光重合開始剤は色素増感剤と組合せて用いられてもよい。該色素増感剤としては、例えばキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリンなどが挙げられる。光重合開始剤と色素増感剤との組合せとしては、例えばBTTBとキサンテンとの組合せ、BTTBとチオキサンテンとの組合せ、BTTBとクマリンとの組合せ、BTTBとケトクマリンとの組合せなどが挙げられる。
光重合開始剤を用いる場合、その使用量は、活性エネルギー線硬化性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上である。該使用量が前記の範囲にあると十分な硬化速度を得やすい傾向にある。なお、光重合開始剤の使用量は、活性エネルギー線硬化性化合物100質量部あたり、好ましくは10質量部以下である。
ハードコート層形成用組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物の他に、帯電防止剤を含有していてもよい。該組成物が帯電防止剤を含有することにより、ハードコート層に帯電防止機能を付与することができる。帯電防止剤としては、例えば界面活性剤、導電性高分子、導電性粒子、アルカリ金属塩及び/又は有機カチオン−アニオン塩などが挙げられる。これらの帯電防止剤は、それぞれ1種又は2種以上を混合して使用される。
界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェンなどが挙げられる。
導電性粒子としては、例えばインジウム−スズ−複合酸化物(ITO)、アンチモンがドープされた酸化スズなどの粒子が挙げられる。
アルカリ金属塩としては、アルカリ金属の有機塩及び無機塩が挙げられる。アルカリ金属塩のカチオン部を構成するアルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムの各イオンが挙げられる。これらアルカリ金属イオンのなかでもリチウムイオンが好ましい。
アルカリ金属塩のアニオン部は有機物で構成されていてもよく、無機物で構成されていてもよい。有機塩を構成するアニオン部としては、例えば、CH3COO−、CF3COO−、CH3SO3 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)3C−、C4F9SO3 −、C3F7COO−、(CF3SO2)(CF3CO)N−、(FSO2)2N−、−O3S(CF2)3SO3 −、CO3 2−、式(A1)〜式(A4)、
(A1):(CnF2n+1SO2)2N− (nは1〜10の整数を表す)、
(A2):CF2(CmF2mSO2)2N− (mは1〜10の整数を表す)、
(A3):−O3S(CF2)lSO3 − (lは1〜10の整数を表す)、
(A4):(CpF2p+1SO2)N−(CqF2q+1SO2)、(但し、p及びqは、互いに独立に、1〜10の整数を表す)、
で表わされるアニオン部等が用いられる。特に、フッ素原子を含むアニオン部は、イオン解離性の良いイオン化合物が得られることから好ましく用いられる。無機塩を構成するアニオン部としては、Cl−、Br−、I−、AlCl4 −、Al2Cl7 −、BF4 −、PF6 −、ClO4 −、NO3 −、AsF6 −、SbF6 −、NbF6 −、TaF6 −、(CN)2N−などが用いられる。アニオン部としては、(FSO2)2N−、(CF3O2)2N−、(C2F5SO2)2N−が好ましく、(FSO2)2N−、(CF3SO2)2N−がより好ましい。
有機カチオン−アニオン塩は、カチオン部とアニオン部とから構成されており、前記カチオン部が有機物である、有機塩である。アニオン部は有機物であってもよいし、無機物であってもよい。「有機カチオン−アニオン塩」は、イオン性液体、イオン性固体と称される物質であってもよい。
カチオン成分として、具体的には、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンなどが挙げられる。アニオン成分としては、前記アルカリ金属塩のアニオン部と同じものが挙げられる。なかでも、フッ素原子を含むアニオン成分は、イオン解離性のよいイオン化合物が得られることから好ましく用いられる。
ハードコート層形成用組成物は、例えば臭素原子、フッ素原子、硫黄原子、ベンゼン環などを含む有機化合物、例えば酸化錫、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素などの無機酸化物微粒子などを含有してもよい。この場合、得られるハードコート層の屈折率を調整することができ、ハードコート層に低反射機能、反射防止機能等の光学的機能を付与することができる。
活性エネルギー線硬化性化合物を含有するハードコート層形成用組成物を光学フィルムの上に塗布したのち、乾燥することにより、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する層を形成することができる。塗布は、例えばマイクログラビアコート法、ロールコート法、ディッピングコート法、スピンコート法、ダイコート法、キャスト転写法、フローコート法、スプレーコート法といった通常の方法により行うことができる。光学積層体の光学的均質性を高めやすい観点からは、マイクログラビアコート法又はダイコート法によりハードコート層形成用組成物を積層させることが好ましい。
その後、活性エネルギー線を照射することにより、光学フィルムの表面に塗工された活性エネルギー線硬化性化合物が硬化して、目的とするハードコート層が得られる。活性エネルギー線としては、例えば電子線、紫外線、可視光線などが挙げられ、使用する活性エネルギー線硬化性化合物の種類に応じて適宜選択される。活性エネルギー線は、通常のハードコート層の形成におけると同様に照射すればよい。照射する活性エネルギー線の強度、照射時間などは、用いる硬化性化合物の種類、硬化性化合物を含有する層の厚さみなどに応じて適宜選択される。活性エネルギー線は、不活性ガス雰囲気中で照射してもよい。窒素雰囲気中で活性エネルギー線を照射するには、例えば不活性ガスでシールした容器の中で活性エネルギー線照射を行えばよく、不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガスなどが使用できる。
ハードコート層の表面に、後述する反射防止層や低反射層をさらに積層させることも有用である。この場合の反射防止層や低反射層は、ハードコート層の表面に単層で、又は、複層で、積層させることができる。
(帯電防止機能)
帯電防止機能は、光学フィルムの表面の帯電を防止する機能である。本発明の光学積層体において、機能層は帯電防止機能を有する層(帯電防止層)であってよい。帯電防止層を形成する方法としては、上記ハードコート層形成用組成物に帯電防止剤を添加してハードコート層に帯電防止機能を付与する方法以外に、帯電防止剤を溶剤等で希釈して得た帯電防止層形成用組成物を、光学フィルム又は光学フィルム上に積層された機能層上に塗工し、必要に応じて乾燥して、単独の膜として形成させる方法が挙げられる。帯電防止剤は、機能層を構成する樹脂(例えば前述した活性エネルギー線硬化性化合物の硬化物)の一部に、帯電防止機能を有する構成単位として含まれていてもよいし、機能層を形成する樹脂中に、添加剤として添加されていてもよい。帯電防止剤を添加剤として添加する場合には、その添加量は、機能層形成用組成物の固形分に対して、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
(防眩機能)
防眩機能は、光を散乱して反射させることで、外光の映り込みを防止する機能である。本発明の光学積層体において、機能層は防眩機能を有する層(防眩層)であってよい。防眩層としては、公知の物を適宜採用することができる。例えば、透光性樹脂中に1種類以上の透光性微粒子を含む樹脂組成物を用いて、表面に微細な凹凸形状を有する層を形成させることにより、防眩機能を付与してよい。より具体的には、このような防眩層は、例えば、フィラーとしての透光性微粒子を分散させた透光性樹脂溶液を光学フィルムの上に塗布し、透光性微粒子が防眩層の表面における凸形状部分となるように塗布の厚さを調整することで形成できる。なお、本明細書において、「透光性」とは、物質内部での散乱の有無を問わず、光がほぼ透過できることを意味する。
透光性微粒子
透光性微粒子としては、たとえば、(メタ)アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、有機シリコーン樹脂、アクリル−スチレン共重合体等の有機微粒子、及び、炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラス等の無機微粒子が挙げられる。透光性微粒子として1種又は2種以上の微粒子を使用することができる。所望の防眩性を得るために、透光性微粒子の種類、粒子径、屈折率、含有量などが適宜調整される。
透光性微粒子の粒径は、好ましくは0.5〜5μm、より好ましくは1〜4μmである。透光性微粒子の粒径が上記の範囲内であると、必要な光拡散効果を得やすく、また、防眩層の表面に凹凸が形成されやすいため、十分な防眩効果を得やすい。さらに、防眩層の表面形状が粗くなく、ヘイズ値が大幅に上昇しない傾向にある。
透光性微粒子と透光性樹脂との屈折率の差は、好ましくは0.02〜0.2、より好ましくは0.04〜0.1である。屈折率差が上記の範囲内であると、十分な光拡散効果を得やすく、また、光学積層体全体が白化しにくい。
透光性微粒子の添加量は、透光性樹脂100質量部に対して、好ましくは3〜30質部、より好ましくは5〜20質量部である。添加量が上記の範囲内であると、十分な光拡散効果を得やすく、また、光学積層体全体が白化しにくい。
透光性微粒子の粒径、添加量、及び/又は、透光性微粒子と透光性樹脂との屈折率差を上記のような範囲に調整する場合、防眩層のヘイズが高い領域でも、透過鮮明度を低下させることなく、表面のギラツキを防止しやすく、さらにはヘイズが低い領域でも、高透過鮮明度を維持した状態でギラツキを防止しやすい。
透光性樹脂
防眩層を構成する透光性樹脂としては、透光性を有するものであれば特に制限はなく、たとえば、上述のような活性エネルギー線硬化性化合物の硬化物のほか、熱硬化性樹脂の硬化物;熱可塑性樹脂;金属アルコキシド系ポリマー等が挙げられる。なかでも、活性エネルギー線硬化性化合物の硬化物が好適である。活性エネルギー線硬化性化合物として紫外線硬化性樹脂などを用いる場合には、上記と同様、塗工液には光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)を含有させてよく、活性エネルギー線を照射することにより塗工層を硬化させる。
熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂;アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。
金属アルコキシド系ポリマーとしては、珪素アルコキシド系の材料を原料とする酸化珪素系マトリックス等を使用することができる。具体的には、金属アルコキシド系ポリマーは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシランの加水分解物を脱水縮合して得られる無機系又は有機無機複合系マトリックスであることができる。
透光性樹脂として熱硬化性樹脂の硬化物、金属アルコキシド系ポリマーを用いる場合には、塗工液を塗工した後、加熱を要することがある。
また、一般に紫外線硬化性樹脂の屈折率は約1.5で、ガラスと同程度であるが、上記透光性微粒子の屈折率との比較において、用いる紫外線硬化性樹脂の屈折率が低い場合がある。この場合、透光性樹脂に、屈折率の高い微粒子であるTiO2(屈折率;2.3〜2.7)、Y2O3(屈折率;1.87)、La2O3(屈折率;1.95)、ZrO2(屈折率;2.05)、Al2O3(屈折率;1.63)等を、防眩層における光の拡散性を保持できる程度に加えて、透過性樹脂の屈折率を高め、好ましい範囲に調整することができる。
防眩層形成用組成物は、透光性樹脂と溶媒とを含有する組成物(例えば上記のハードコート層形成用組成物)に、透光性微粒子を分散させて製造することができる。透光性微粒子を分散させるタイミングや分散方法は特に限定されない。
この防眩層形成用組成物(塗工液)を、光学フィルムの表面又は光学フィルムに積層された機能層の表面に塗布し、乾燥することにより、防眩層を形成することができる。塗布は通常の方法、例えば、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ディッピングコート法、スピンコート法、ダイコート法、キャスト転写法、フローコート法、スプレーコート法などの方法により行うことができる。その後、紫外線を照射することにより紫外線硬化性樹脂を硬化させてもよい。照射する紫外線の強度、照射時間などは、用いる硬化性化合物の種類、硬化性化合物を含有する層の厚さなどに応じて適宜選択される。紫外線は、不活性ガス雰囲気中で照射してもよい。不活性ガス雰囲気中で紫外線を照射するには、例えば不活性ガスでシールした容器の中で活性エネルギー線照射を行えばよく、不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガスなどが使用できる。
防眩層を形成する別の方法として、エンボス処理を用いることができる。この方法では、光学フィルム又は光学フィルムに積層された機能層上に、防眩層形成用組成物を塗工した後、塗工層に所定の表面凹凸形状を有する金型(エンボスロール)を押し当てながら塗工層を必要に応じて硬化させて、塗工層の表面に凹凸を付与することができる。エンボスロールから防眩層を剥離した後、その防眩層の硬化反応をさらに促進させることを目的として、防眩層側からもう一度紫外線を照射する第二硬化工程を施すことも有効である。
防眩層のヘイズは、好ましくは0.1〜50%である。防眩層のヘイズは、JIS K 7361に準じた方法により測定される。防眩層の厚さは、例えば防眩層のヘイズが上記の範囲内となるように適宜調整してよいが、好ましくは2〜20μmである。防眩層の厚さが上記の範囲内であると、十分な防眩効果が得やすく、防眩層の割れを防止しやすく、また、防眩層の硬化収縮により防眩層がカールすることによる生産性の低下を防止しやすい。また、防眩層の厚さは、一般的には、分散させる透光性微粒子の重量平均粒子径に対して、好ましくは85%以上、より好ましくは100%以上である。防眩層の厚さが上記の範囲内であると、ヘイズが大きくなりすぎず視認性が低下しにくい傾向がある。
防眩層は、帯電防止剤を含有していてもよい。帯電防止剤を含有することにより、帯電防止機能を有する防眩層を得ることができる。帯電防止剤としては、上述のハードコート層に添加する帯電防止剤と同様のものが挙げられる。
防眩層は、その最表面、すなわち凹凸面側に低反射層を有していてもよい。低反射層がない状態でも、十分な防眩機能を発揮するが、最表面に低反射層を設けることにより、防眩性をさらに向上させることができる。低反射層としては、後述したものを適用することができる。
(反射防止機能及び低反射機能)
反射防止機能及び低反射機能は、外光の反射を防止又は低減する機能である。本発明の光学積層体において、機能層は外光の反射を防止する機能を有する層(反射防止層)であってよいし、外光の反射を低減する機能を有する層(低反射層)であってもよい。反射防止層及び低反射層は、単層であっても多層であってもよい。
反射防止層
反射防止層は、低屈折率層を備えていてよい。また、反射防止層は、低屈折率層と、該低屈折率層と光学フィルムとの間に積層された高屈折率層及び/又は中屈折率層をさらに備える多層構造を有する層であってもよい。反射防止層と光学フィルムとの間に、上述のハードコート層を設けてもよい。
反射防止層の厚さは、好ましくは0.01〜1μm、より好ましくは0.02〜0.5μmである。反射防止層としては、当該反射防止層を積層させる光学フィルム又は機能層の屈折率よりも小さい屈折率(例えば1.3〜1.45の屈折率)を有する低屈折率層;無機化合物からなる薄膜の低屈折率層と無機化合物からなる薄膜の高屈折率層とを交互に複数積層した層などが挙げられる。ここで、高屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率よりも大きければよいが、1.60以上であることが好ましい。
上記の低屈折率層を形成する材料は、屈折率の低い材料であれば特に制限されない。例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂(例えば紫外線硬化型アクリル樹脂)等の樹脂材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド材料、テトラエトキシシラン等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル材料等が挙げられる。これらの低屈折率層を形成する材料は、重合済みのポリマーであってもよいし、前駆体となるモノマーやオリゴマーであってもよい。また、反射防止層を構成する材料は、反射防止層に防汚機能を付与することができるため、フッ素を含有する化合物を含むことが好ましい。
高屈折率層は、上述の活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物や金属アルコキシド系ポリマー等の透光性樹脂と無機微粒子及び/又は有機微粒子とを含有する塗工液を塗工した後、塗工層を必要に応じて硬化させる方法によって形成することができる。無機微粒子としては、たとえば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化シラン、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化インジウム錫(ITO)などが挙げられる。これらの無機微粒子を含む高屈折率層は、帯電防止機能も兼ね備え得る。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜を製造する方法として、化学蒸着(CVD)法、物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾル/ゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法などが挙げられる。
一方、生産性を向上しやすい観点から、無機粒子をマトリックス中に分散させた薄膜を積層塗設して反射防止層を積層させることも好ましい。さらに、無機粒子をマトリックス中に分散させた反射防止層形成用組成物を塗工することにより、反射防止層を積層させる際に、塗工表面に微細な凹凸形状を形成することにより、反射防止層に防眩機能をさらに付与することも可能である。
低反射層
低反射層は、基材となる光学フィルムよりも屈折率の低い低屈折率材料で形成された層である。低屈折率層は、上述の活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物や金属アルコキシド系ポリマー等の透光性樹脂及び無機微粒子を含有する塗工液を塗工した後、塗工層を必要に応じて硬化させる方法によって形成することができる。そのような低屈折率材料として、具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、氷晶石(3NaF・AlF3又はNa3AlF6)等の無機材料微粒子を、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等に含有させた無機系低反射材料;フッ素系又はシリコーン系の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の有機系低反射材料が挙げられる。
(防汚機能)
防汚機能は、汚れを防止する機能であり、層に撥水性、撥油性、耐汗性、防汚性、耐指紋性などを付与することにより得られる機能である。本発明の光学積層体において、機能層は防汚機能を有する層(防汚層)であってよい。防汚層を形成するための材料は、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。高い撥水性と発油性をもたらす材料として、フッ素含有有機化合物、有機ケイ素化合物等が挙げられる。フッ素含有有機化合物としては、フルオロカーボン、パーフルオロシラン、これらの高分子化合物などが挙げられる。汚れ付着の防止効果を高めやすい観点からは、防汚層表面の純水に対する接触角度が90度以上、さらには100度以上となるような材料が好ましい。防汚層の形成方法は、形成する材料に応じて、蒸着やスパッタリングを代表例とする物理的気相成長法、化学的気相成長法、湿式コーティング法などを用いることができる。防汚層の平均厚さは、通常1〜50nm程度、好ましくは3〜35nmである。
(紫外線吸収機能)
本発明の光学積層体において、機能層は、紫外線吸収の機能を有する紫外線吸収層であってよい。紫外線吸収層は、例えば、紫外線硬化型の透光性樹脂、電子線硬化型の透光性樹脂、及び熱硬化型の透光性樹脂から選ばれる主材と、この主材に分散した紫外線吸収剤とから構成される。
(粘着機能)
本発明の光学積層体において、機能層は、光学フィルムを他の部材に接着させる粘着性の機能を有する粘着層であってよい。粘着層の形成材料としては、通常知られたものを用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物を用いることができる。この場合、事後的にエネルギーを供給することで熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物を高分子化し硬化させることができる。
粘着層は、感圧型接着剤(Pressure Sensitive Adhesive、PSA)と呼ばれる、押圧により対象物に貼着される層であってもよい。感圧型接着剤は、「常温で粘着性を有し、軽い圧力で被着材に接着する物質」(JIS K 6800)である粘着剤であってもよく、「特定成分を保護被膜(マイクロカプセル)に内容し、適当な手段(圧力、熱等)によって被膜を破壊するまでは安定性を保持できる接着剤」(JIS K 6800)であるカプセル型接着剤であってもよい。
(色相調整機能)
本発明の光学積層体において、機能層は、光学積層体を目的の色相に調整することができる機能を有する色相調整層であってよい。色相調整層は、例えば、樹脂及び着色剤を含有する層である。着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄、チタニウムオキサイド系焼成顔料、群青、アルミン酸コバルト、及びカーボンブラック等の無機顔料;アゾ系化合物、キナクリドン系化合物、アンスラキノン系化合物、ペリレン系化合物、イソインドリノン系化合物、フタロシアニン系化合物、キノフタロン系化合物、スレン系化合物、及びジケトピロロピロール系化合物等の有機顔料;硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等の体質顔料;並びに塩基性染料、酸性染料、及び媒染染料等の染料が挙げられる。
<光学積層体の製造方法>
上記特徴を有する本発明の光学積層体の製造方法は特に限定されないが、例えば、次の工程:
(a)ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂、ならびに溶媒を少なくとも含有するワニスを支持体上に塗布し、乾燥させ、塗膜を形成させる工程、
(b)支持体から塗膜を剥離する工程、
(c)剥離した塗膜を加熱し、フィルムを得る工程、及び
(d)フィルムの少なくとも片面に機能層を積層し、光学積層体を得る工程
を少なくとも含む製造方法により製造することができる。本発明は、上記の工程を少なくとも含む、光学積層体の製造方法も提供する。
本発明の光学積層体の製造方法は、工程(c)の後、又は工程(d)の後、
(e)得られたフィルム又は光学積層体を用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh及びラインプロファイルvとし、前記投影法において前記フィルム又は前記光学積層体を用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh’及びラインプロファイルv’とし、ラインプロファイルhからラインプロファイルh’を引いて得たラインプロファイル(h−h’)の最大強度をYmhとし、最大強度Ymhを示す周波数をXmhとし、ラインプロファイルvからラインプロファイルv’を引いて得たラインプロファイル(v−v’)の最大強度をYmvとし、最大強度Ymvを示す周波数をXmvとしたときの、Ymh及びYmvの値、並びに、Ymh、Ymv、Xmh及びXmvから算出される(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2の値に基づいて、フィルムを評価する工程
をさらに含んでもよい。
上記の工程(a)で使用するワニスは、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂及び溶媒を少なくとも含有する。ここで、ワニスの粘度(cps)とワニスの固形分濃度(質量%)は、次の関係:
を満たすことが好ましい。
まず、ワニスを支持体上に塗布し、乾燥させ、塗膜を形成させる工程(a)について説明する。ワニスに含有される樹脂としては、光学フィルムに含まれる樹脂として上記に記載した樹脂が挙げられる。また、ワニスには、上記に述べた紫外線吸収剤、フィラー、その他の添加剤が含有されていてもよい。
ワニスに含有される溶媒は、上記樹脂を溶解可能であれば特に限定されない。かかる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組合せ(混合溶媒)が挙げられる。これらの中でも、光学積層体の光学的均質性を高めやすい観点から、アミド系溶媒又はラクトン系溶媒が好ましい。これらの溶媒は単独又は二種以上組合せて使用できる。また、ワニスには水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、非環状エステル系溶媒、エーテル系溶媒などが含まれてもよい。ワニスの固形分濃度は、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは5〜20質量%である。
ワニスは、上記樹脂、溶媒及び必要に応じて用いられる紫外線吸収剤、フィラー及びその他の添加剤を混合し、撹拌することにより調製することができる。例えば、上記のジカルボン酸化合物、テトラカルボン酸化合物、及び/又はジアミン化合物、ならびに上記のその他の原料を反応させて得た、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の反応液を、溶媒及び場合により他の添加剤と共に混合し、撹拌することにより、ワニスを調製してよい。反応液からポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂を単離して、溶媒等と混合することにより、ワニスを調製してもよいし、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の溶液や固体を購入し、必要に応じて溶媒等と混合することにより、ワニスを調製してもよい。また、フィラーとしてシリカを用いる場合、シリカを含むシリカゾルの分散液を、前記樹脂が溶解可能な溶媒、例えば下記のワニスの調製に用いられる溶媒で置換したシリカゾルを用いてワニスを調製してもよい。
上記のようにして調製したワニスの粘度(cps)と、ワニスの固形分濃度(質量%)は特に限定されないが、優れた光学的均質性を有する光学積層体を得やすい観点からは、これらが次の関係:
を満たすことが好ましい。ここで、ワニスの粘度(cps)は、JIS K 8803:2011に従い、E型粘度計を用いて、25℃で測定される。また、ワニスの固形分濃度は、ワニスに含有される樹脂、フィラー及び添加剤等の濃度(質量%)を表し、ワニスの全質量に基づくワニスに含有される固形分の質量から算出される。上記式で表されるワニスの粘度とワニスの固形分濃度との積は、光学積層体の光学的均質性を高めやすい観点から、好ましくは3,000以上、より好ましくは3,500以上である。上記式で表されるワニスの粘度とワニスの固形分濃度との積の上限は特に限定されないが、ワニスのハンドリングの観点からは、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下である。
ワニスの粘度は、好ましくは5,000〜60,000cps、より好ましくは10,000〜50,000cps、さらに好ましくは15,000〜45,000cpsである。ワニスの粘度が上記の下限以上であると、本発明の効果を得やすく、上記の上限以下であると、ワニスのハンドリングを向上させやすい。
ワニスの固形分濃度は、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは10〜23質量%、さらに好ましくは14〜20質量%である。ワニスの固形分濃度が上記の下限以上であることが、厚い膜を得る観点から好ましく、上記の上限以下であることが、ワニスのハンドリングしやすさの観点から好ましい。
支持体としては、例えば樹脂基材、ステンテレス鋼ベルト、ガラス基材等が挙げられる。支持体として、樹脂フィルム基材を使用することが好ましい。樹脂フィルム基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、シクロオレフィン系(COP)フィルム、アクリル系フィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム等が挙げられる。中でも、平滑性、耐熱性に優れる観点から、PETフィルム、COPフィルム等が好ましく、さらに光学フィルムとの密着性及びコストの観点から、PETフィルムがより好ましい。
支持体の厚さは、特に制限されないが、好ましくは50〜250μm、より好ましくは100〜200μm、さらに好ましくは125〜200μmである。支持体の厚さが上記の上限以下である場合、フィルムの製造コストを抑え易いため好ましい。また、支持体の厚さが上記の下限以上であることが、溶媒の少なくとも一部を除去する工程で生じ得るフィルムのカールを抑制しやすいため好ましい。ここで、支持体の厚さは、接触式の膜厚計などにより測定される。光学積層体の面品質を向上させやすく、本発明の光学積層体を製造しやすい観点から、支持体の厚さ分布は、好ましくは±3μm以下、より好ましくは±2.5μm以下、さらに好ましくは±2μm以下である。支持体の厚さ分布は、上記厚さの測定方法に従い、フィルムの少なくとも20箇所において厚さを測定し、20箇所の平均厚さを算出し、各箇所における厚さと平均厚さとの差から算出する。
ワニスを支持体上に塗布する際、公知の塗布方法により支持体への塗布を行ってよい。公知の塗布方法としては、例えばワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、流涎成形法等が挙げられる。
次に、支持体上に塗布したワニスの塗膜を乾燥させることにより、塗膜を形成させることができる。乾燥は、ワニスの塗膜から少なくとも一部の溶媒を除去することにより行われ、乾燥方法は特に限定されない。例えば支持体上に塗布したワニスの塗膜を加熱することにより乾燥を行ってよい。以下において、工程(a)における乾燥を「第1乾燥」とも称し、乾燥後に支持体上に形成された塗膜を、「乾燥塗膜」とも称する。乾燥塗膜は、ワニスに含まれていた溶媒が全て乾燥された塗膜であってもよいし、一部の溶媒が乾燥された半乾燥状態の塗膜であってもよい。第1乾燥は、必要に応じて、不活性雰囲気又は減圧の条件下において実施してもよい。第1乾燥は比較的低温で時間をかけて行うことが好ましい。比較的低温で時間をかけて第1乾燥を行うと、上記の式におけるYmh及びYmvの値を低下させやすく、(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2の値を低下させやすく、光学積層体の光学的均質性を高めやすい。
特に本発明の光学積層体を工業的に製造する場合、ラボレベルでの製造環境と比較して実際の製造環境は光学的均質性を高めるに不利である場合が多く、その結果、光学積層体の光学的均質性を高めることが困難な場合がある。第1乾燥を比較的低温で時間をかけて行うことが好ましいことは上記に述べたとおりであるが、実験室レベルでは、第1乾燥を行う際に、乾燥を密閉した乾燥器内で行うことができるため、外的要因による光学積層体の表面の荒れは比較的生じにくい。これに対し、光学積層体を工業的に製造する場合には、例えば第一乾燥において広い面積を加熱する必要があるため、加熱の際に送風装置を使用することもある。その結果、光学フィルムの表面状態が荒れやすくなり、フィルムの光学的均質性を高めることが困難である。
加熱により乾燥を行う場合、特に光学積層体を工業的に製造する際の上記のような外的要因も考慮すると、第1乾燥の際の加熱温度は、好ましくは60〜150℃、より好ましくは60〜130℃、さらに好ましくは70〜120℃である。第1乾燥の時間は好ましくは5〜60分、より好ましくは10〜40分である。第1乾燥は、1段階又は多段階の条件下で実施してもよいが、特に光学積層体を工業的に製造する際の上記のような外的要因も考慮すると、3段階以上の加熱温度条件下で実施することが好ましい。多段階の条件下で乾燥を行う場合、好ましくは、それぞれの段階において、同一又は異なる温度条件及び/又は乾燥時間で乾燥を実施することができ、例えば3〜10段階、好ましくは3〜8段階の条件下で乾燥を行ってもよい。第1乾燥を多段階の条件で実施すると、光学積層体の光学的均質性を高めやすい。3段階以上の多段階の条件下で第1乾燥を行う本発明の好ましい一実施形態では、第1乾燥の温度プロファイルが昇温及び降温を含むことが好ましい。すなわち、工程(a)における乾燥条件が、温度プロファイルが昇温及び降温を含む3段階以上の加熱温度条件であることがより好ましい。このような温度プロファイルとして、4段階の場合を例に挙げると、第1乾燥の温度は、順に70〜90℃(第1の温度)、90〜120℃(第2の温度)、80〜120℃(第3の温度)及び80〜100℃(第4の温度)である。この例では、第1乾燥の温度は、第1の温度から第2の温度へ昇温し、次いで第2の温度から第3の温度へ降温し、さらに第3の温度から第4の温度に降温する。ここで第1乾燥の時間は各段階において、例えば、5〜15分である。乾燥塗膜の溶媒残存量が、乾燥塗膜の質量に対して、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは6〜12質量%となるように、第1乾燥を実施することが好ましい。溶媒残存量が上記の範囲であると、光学フィルム又は光学積層体の上記の式におけるYmh及びYmvの値を低下させやすく、(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2の値を低下させやすい。また、続く工程(b)において、支持体から塗膜を剥離する際の剥離性を高めやすい。その結果、光学積層体の光学的均質性を高めやすい。溶媒の残存量は、各工程の乾燥温度を高くすること及び乾燥時間を長くすることによって、低下する。そのため、所望の範囲の溶媒残存量となるように、乾燥温度や乾燥時間を調整し、光学積層体の光学的均質性を高めることができる。
次に、工程(b)において、支持体から乾燥させた塗膜を剥離する。剥離方法は特に限定されず、支持体を固定させた状態で塗膜を移動させて剥離を行ってもよいし、塗膜を固定させた状態で支持体を移動させて剥離を行ってもよいし、塗膜及び支持体の両方を移動させることにより剥離を行ってもよい。
次に、工程(c)において、工程(b)で剥離した塗膜を加熱することにより、光学フィルムを得ることができる。工程(c)における加熱工程を、以下において、「第2乾燥」又は「ポストベーク」とも称し、工程(b)で剥離した塗膜を、以下において、「剥離塗膜」とも称する。工程(c)において、剥離塗膜を面内方向に伸張させた状態で、ポストベークを実施することが好ましい。第2乾燥の際の加熱温度は、好ましくは150〜300℃、より好ましくは180〜250℃、さらに好ましくは180〜230℃である。第2乾燥における加熱時間は、好ましくは10〜60分、より好ましくは30〜50分である。乾燥塗膜を面内方向に均一に伸長させた状態でポストベーク処理を実施すると、光学フィルム又は光学積層体の上記の式におけるYmh及びYmvの値を低下させやすく、(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2の値を低下させやすい。
工程(3)において塗膜を加熱する際、塗膜に張力をかけて、塗膜を面内方向に伸張させた状態で加熱を行うことが好ましい。張力をかけながら加熱することにより、乾燥による塗膜の収縮により生じるフィルムの光学的均質性の低下を抑制しやすく、その結果、光学フィルム又は光学積層体の上記の式におけるYmh及びYmvの値を低下させやすく、(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2の値を低下させやすく、光学的均質性を高めやすい。
本発明の一実施形態において、ロール・ツー・ロール方式で光学フィルムを製造する場合、剥離塗膜を搬送方向に伸長させた状態で乾燥させてよい。また、枚葉式に光学フィルムを製造する場合、面内方向に均一に伸長させた状態で乾燥させてもよい。ロール・ツー・ロール方式における搬送速度は、光学積層体の光学的均質性を高めやすい観点から、好ましくは0.1〜10m/分、より好ましくは0.5〜8m/分、さらに好ましくは0.5〜5m/分である。
例えばロール・ツー・ロール方式により光学フィルムを製造する場合、所定の幅を有する長尺帯状の塗膜を搬送しながら加熱することにより、光学フィルムを得ることができる。ここで、塗膜に張力をかけながら加熱を行う場合、その方法は何ら限定されないが、例えば搬送される長尺帯状のフィルムの両端部をそれぞれ把持し、把持されたフィルムを搬送しつつ、把持されたフィルムの幅を所定の距離として、例えば乾燥機内を搬送しつつ、熱処理を行う。このときに、熱処理前のフィルムの幅(ただし、把持部を幅に含めない)に対する熱処理後のフィルムの幅(ただし、把持部を幅に含めない)の比を1.1以下とし、そして、乾燥機から出た樹脂フィルムの把持を解除することにより、工程(3)を行うことが好ましい。
熱処理前のフィルムの幅(ただし、把持部を幅に含めない)に対する熱処理後のフィルムの幅(ただし、把持部を幅に含めない)の比(以下、延伸倍率ということがある)は、好ましくは0.70〜1.10であり、より好ましくは0.80〜1.05であり、さらに好ましくは、0.85〜1.03である。
フィルムの把持は、例えば、複数のクリップを用いることによって行われる。
該複数のクリップは、搬送装置の大きさに応じて、所定の長さのエンドレスチェーンに固定されることができ、該チェーンがフィルムと同じ速度で動き、該チェーンの適切な位置に、クリップが設置されており、乾燥機に入る前に透明樹脂フィルムを把持し、乾燥機を出た時点で把持が解除される。
フィルムの一方端に設置される複数のクリップは、その隣接するクリップ間の空間が例えば、1〜50mm、好ましくは3〜25mm、より好ましくは5〜10mmとなるように、設置される。
また、フィルム搬送軸に直交する直線を、フィルムの一方端の任意のクリップの把持部中央に合わせたとき、該直線とフィルムの他端との交点と、該交点に最も近いクリップの把持部中央との距離が、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下となるようにできる。該距離が前記の範囲にあることにより、フィルムの特に左右での均質性を高めやすい。
熱処理前のフィルムの幅に対する熱処理後のフィルムの幅の比が前記の範囲にあると、フィルム外観が良好となる傾向がある。
熱処理後のフィルム中の溶媒量は、フィルムの質量を基準として、好ましくは0.001〜3質量%、より好ましくは0.001〜2質量%、さらに好ましくは0.001〜1.5質量%、とりわけ好ましくは0.001〜1.3質量%である。熱処理後のフィルム中の溶媒量が前記の範囲にあると、光学フィルムの外観が良好となる傾向がある。
熱処理が終わり、乾燥機からフィルムが出るとフィルムの把持が解除され、好ましくはすぐに、フィルム端部をスリットされる。スリットを行うことにより、フィルム端部における、把持部と把持されていなかった部分との間で生じやすい割れをフィルムから除去することにより、その後フィルムが搬送されてその温度が低下することによるフィルムの割れの広がりをあらかじめ防止できる。
フィルムが乾燥機を出ると、フィルムが急冷されて収縮し、割れが生じることがある。そのため、乾燥機出口からフィルムの把持が解放される位置までに一定割合のフィルムを弛緩する工程があることが好ましい。その割合は、乾燥機から出てきたフィルムの幅(但し、把持された幅を除く)(W)と乾燥機出口からフィルムを開放するまでに把持部が弛緩される距離(F)が、好ましくは1.7≦F/W×100≦6.9、より好ましくは1.8≦F/W×100≦6.8、さらに好ましくは1.9≦F/W×100≦6.7、さらにより好ましくは2.0≦F/W×100≦6.7である。
フィルムの搬送方向に対して一方端側の弛緩される距離をFa、他方端側の弛緩される距離をFbとし、それらを合せて弛緩される距離Fとする。
乾燥機出口からフィルムの把持が解放されるまでの距離は、好ましくは200〜2,000mm、より好ましくは300〜1,500mm、さらに好ましくは300〜1,300mm、さらにより好ましくは300〜1,000mmである。該距離が前記の範囲にあると、フィルムに割れが生じにくく、また垂水など外観不良が生じにくい傾向にある。
なお、本発明の製造方法においては、上記特徴を有する光学積層体を製造しやすい観点から、工程(b)において支持体から塗膜を剥離した後、工程(c)において剥離した塗膜を加熱することにより、フィルムを製造している。しかし、本発明の光学積層体は、光学フィルム又は光学積層体が、上記Ymh等に関する特徴を有する限り、いずれの製造方法により製造されたフィルムであってもよい。例えば、支持体から塗膜を剥離する前に塗膜をポストベークし、ポストベーク後のフィルムを支持体から剥離して製造したものであってもよい。
次に、工程(d)において、フィルムの少なくとも片面に機能層を積層し、本発明の光学積層体を得る。フィルムの少なくとも片面に機能層を積層させる方法としては、フィルムの少なくとも片面に、機能層形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥及び/又は硬化等させて積層させる方法、フィルムの少なくとも片面に、フィルム状の機能層を貼り合わせて積層させる方法が挙げられる。光学積層体の光学的均質性を高めやすい観点からは、機能層形成用組成物を塗工して、機能層を積層させることが好ましい。
本発明の製造方法は、上記工程(c)の後又は(d)の後に、後述するフィルム又は光学積層体を評価する工程(e)をさらに含んでいてもよい。工程(e)は、得られたフィルム又は光学積層体を用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh及びラインプロファイルvとし、前記投影法において前記フィルム又は前記光学積層体を用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh’及びラインプロファイルv’とし、ラインプロファイルhからラインプロファイルh’を引いて得たラインプロファイル(h−h’)の最大強度をYmhとし、最大強度Ymhを示す周波数をXmhとし、ラインプロファイルvからラインプロファイルv’を引いて得たラインプロファイル(v−v’)の最大強度をYmvとし、最大強度Ymvを示す周波数をXmvとしたときの、Ymh及びYmvの値、並びに、Ymh、Ymv、Xmh及びXmvから算出される(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2の値に基づいて、フィルム又は光学積層体を評価する工程である。
工程(e)において、Ymh及びYmvの値、並びに(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2の値に基づいて、フィルム又は光学積層体の光学的均質性を評価することができる。例えば、求める光学的均質性に応じて所定の値を設定し、該値と、フィルム又は光学積層体について得た結果とを比較することにより、フィルムの良否を判断し、フィルムを分別することにより、Ymh及びYmvの値、並びに(Ymh+Ymv)/(Xmh+Xmv)1/2の値が、所定の値以下である、優れた光学的均質性を有する光学フィルム又は光学積層体を製造することができる。また、上記値を評価しながら、乾燥条件等を調整し、上記特徴を有する本願発明の光学積層体を製造することもできる。
フィルムを評価する工程(e)において、上記本発明の評価方法により測定された最大強度Ymh及びYmvに基づいて、光学的均質性を評価し、光学フィルム又は光学積層体の品質の良否を判断することが、光学的均質性に優れた光学積層体を効率的に製造することができる観点から好ましい。光学フィルム又は光学積層体の品質の良否の判断基準は、最終的に得られる光学積層体の用途や、光学積層体に求められる光学的均質性に応じて適宜設定してよく、特に限定されない。光学フィルム等として好適に使用される、優れた均質性を有する光学積層体を得ることを目的に、光学フィルム又は光学積層体の品質の良否判断を行う場合には、本発明の光学積層体に含まれる光学フィルムについて、又は本発明の光学積層体について、上記に記載した特性を有するか否かを基準として、良否の判断を行うことが好ましい。
上記評価工程によれば、従来の評価方法と比べてより高い精度で光学的均質性を評価することが可能となる。具体的には、当該評価工程によれば、従来の評価方法では十分な精度で評価できなかったTD方向及びMD方向の両方向のムラや幅の広さが異なるムラなどに起因して生じる、光学的性質のばらつきを評価することができ、ムラの種類によらず精度よく光学的均質性を評価することが可能である。また、当該評価工程により、フィルム又は光学積層体の均質性を定量することも可能である。なお、本明細書において評価工程で測定対象とする光学フィルム又は光学積層体を、「測定フィルム」とも称する。工程(e)における評価工程は、具体的には、次の工程(1)〜(5):
(1)光源からの光を測定フィルムに照射し、測定フィルムを透過した光を投影面に投影する投影法により投影画像を得る工程、
(2)工程(1)の投影法において測定フィルムを用いずに、光源からの光を投影面に投影して、背景画像を得る工程、
(3)工程(1)で得た投影画像及び工程(2)で得た背景画像をそれぞれグレースケール化により数値化し、数値化された画像データをフーリエ変換して逆空間像(フィルム逆空間像及び背景逆空間像)を得る工程、
(4)投影画像の逆空間像において直交する2方向の各ラインプロファイルから、背景画像の逆空間像において直交する前記2方向の各ラインプロファイルをそれぞれ引いて、ブランク補正されたラインプロファイルを得る工程、
及び、
(5)工程(4)で得たブランク補正されたラインプロファイルの最大強度(Ymh及びYmv)を測定する工程
を少なくとも含む。
工程(1)において、光源からの光を測定フィルムに照射し、測定フィルムを透過した光を投影面に投影して投影画像を得る。工程(1)において、例えば図1に示されるように、測定フィルム、投影面等を配置してよい。具体的には、光源1、測定フィルム2及び投影面3を配置し、投影面3に投影された投影画像4をカメラ6にて撮影し、投影画像を得る。光源1から出力された光5は、測定フィルム2を透過し、透過した光が投影面3に投影画像4として投影される。光5が測定フィルム2を透過する際、測定フィルム2が均質であれば、光5は均質に測定フィルム2を透過し投影面3に達するが、測定フィルム2が均質でなく、面状ムラ、厚さムラ、配向ムラ等がある場合には、光5が測定フィルム2を透過する際に反射及び/又は屈折等を生じ、光源から出力された状態と比較して歪んだ状態の光が投影面3に達する。このようにして得られる投影画像4を後述する方法で評価することにより、測定フィルムの光学的均質性を高い精度で評価又は定量化することができる。鮮明な投影画像を得やすい観点から、暗室内で、光源からの光のみを測定フィルムに透過させて撮影を行うことが好ましい。光源の種類は特に限定されず、例えばLED光源やハロゲンランプ等を使用してよい。点光源に近い光源が好ましく、発光部は1cm径以下であることが好ましい。フィルターやレンズなどを通過すると投影像が不鮮明になりやすい傾向があるので、フィルターやレンズを通過させない光が好ましい。投影面としては、測定フィルムの投影画像が視認される限り特に限定されないが、例えばアクリル板、塩化ビニル板、ポリエチレン板、映画用のスクリーン等を使用してよい。投影面に投影された画像の撮影方法は特に限定されないが、例えば図1に示されるように、投影面3と測定フィルム2と光源1とを一直線上に配置し、投影面3に投影された投影画像4を斜めから撮影する位置にカメラ6を固定し撮影してよい。撮影モードは適宜設定してよく、例えば実施例に記載されるような設定を使用してよい。このようにして投影画像が得られる。
工程(2)において、工程(1)の投影法において測定フィルムを用いずに、光源からの光を投影面に投影して投影画像を得る。具体的には、例えば図1において、測定フィルム2のみを取り除いた状態で撮影を行い、背景画像を得る。
工程(3)において、工程(1)で得た投影画像及び工程(2)で得た背景画像をそれぞれグレースケール化により数値化し、数値化された画像データをフーリエ変換して逆空間像を得る。グレースケール化は、画像解析ソフト(例えばアメリカ国立衛生研究所製「Image−J」)を用いて、例えば8−bitのグレースケール化することにより行うことができる。グレースケール化により、投影画像及び背景画像を数値化することができる。次に、数値化された画像データをフーリエ変換して逆空間像(フィルム逆空間像及び背景逆空間像)を得る。数値化された画像データをフーリエ変換することにより、画像の濃淡の周期と振幅を得ることができる。フーリエ変換の方法としては、例えば画像解析ソフト(Image−J)のフーリエ変換機能を用いるなどが挙げられる。
工程(4)において、投影画像の逆空間像において直交する2方向の各ラインプロファイルから、背景画像の逆空間像において直交する前記2方向の各ラインプロファイルをそれぞれ引いて、ブランク補正されたラインプロファイルを得る。
工程(5)において、工程(4)で得たブランク補正されたラインプロファイルの最大強度Ymax(それぞれ、Ymh及びYmv)を測定する。Ymh及びYmvの測定方法は、上記において測定フィルムについて記載した通りであり、例えば、逆空間像の中心を通る水平方向(h1方向)及び垂直方向(v1方向)のそれぞれの方向についてラインプロファイルを作成する場合、例えば図3に示されるような、X軸に周波数、Y軸に強度を表すグラフとして示される。そして、水平方向(h1方向)のラインプロファイルにおける最大強度YmaxをYmh1とし、最大強度Ymh1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値であるXmaxをXmh1とする。また、垂直方向(v1方向)のラインプロファイルにおける最大強度YmaxをYmv1とし、最大強度Ymv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値であるXmaxをXmv1とする。なお、該2方向は互いに直交していれば特に限定されず、中心を通らない二方向であってもよいし、水平方向及び垂直方向でなくてもよい。
上記Ymh及びYmvを測定することにより、測定フィルムの2次元方向で均質性を評価することができる。測定フィルムの光学的均質性を低下させる一因となる面状ムラには、例えば縞状のムラ等のように、一次元の評価では十分に検出できない種類のムラがある。本発明の評価方法によれば、二次元方向で光学的均質性を評価することができるため、測定フィルムのムラの種類によらず高い精度で評価を行うことができる。また、上記Ymh及びYmvを測定して値を得ることにより、測定フィルムの均質性を定量することも可能である。
さらに、上記最大強度Ymh及びYmvに加えて、これらの最大強度を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値Xcenを引いた値であるXmh及びXmvを用いて評価を行うことで、測定フィルムの光学的均質性に影響する一因となる面状ムラが生じる周期を検出することもできる。
本発明の光学積層体は、巻芯に巻き取られたフィルムロールであってもよい。巻芯を構成する材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂等の合成樹脂;アルミニウム等の金属;繊維強化プラスチック(FRP:ガラス繊維等の繊維をプラスチックに含有させて強度を向上させた複合材料)等であってよい。巻芯の形状も特に限定されないが、円筒状又は円柱状の形状であることが好ましい。巻芯が円筒状又は円柱状である場合、その外直径は、強度および操作性の観点からは、好ましくは1〜12インチ、より好ましくは3〜10インチ、さらに好ましくは3〜6インチである。また、巻芯の縦の長さは、操作性の観点からは、巻き取る透明樹脂フィルムの幅方向の長さの好ましくは1.0〜2.0倍、より好ましくは1.0〜1.8倍、さらに好ましくは1.0〜1.5倍である。
本発明の光学積層体がフィルムロールの形態である場合、光学積層体の製造工程において、光学フィルム及び機能層、ならびに任意に保護フィルムを有する光学積層体が、巻芯にロール状に巻回された形態を有していてもよい。光学フィルムが支持体から剥離されず、支持体が共に巻回されていてもよい。本発明の光学積層体は、フィルムロールの形態の光学積層体であってもよいし、フィルムロール形態の光学積層体を裁断して得たフィルムであってもよい。
本発明の光学積層体は、光学的均質性を高めやすい観点から、幅方向の長さが好ましくは20cm以上、より好ましくは30cm以上、さらに好ましくは40cm以上、さらにより好ましくは50cm以上、特に好ましくは60cm以上である。幅方向の長さの上限は、特に限定されないが、例えば200cm以下程度であってよい。また、本発明の光学積層体は、光学的均質性を高めやすい観点から、長さ方向の長さが好ましくは1m以上、より好ましくは10m以上、さらに好ましくは100m以上、さらにより好ましくは200m以上、さらにより好ましくは300m以上、特に好ましくは400m以上である。長さ方向の長さの上限は、特に限定されず、例えば5000m以下程度であってよい。上記の大きさを有する光学フィルムに、少なくとも1つの機能層を積層させることにより、上記の大きさを有する光学積層体を製造することができる。上記大きさを有する光学積層体は、光学的均質性を高めやすい観点から、ロール・ツー・ロール方式により製造されたものであることが好ましく、すなわち、フィルムロールの形態であることが好ましい。得られたフィルムロールから、必要なフレキシブルデバイスのサイズに応じて、光学積層体を切り出して用いることができる。
光学積層体又は光学フィルムの大きさが例えば上記のように大きい場合には、所定の大きさ(例えば200mm×300mm)を有するフィルムを切り出して測定フィルムとし、当該測定フィルムについて求めたYmh等の値を評価してよい。複数枚について測定を行い、得られた値の平均値を用いて評価してもよい。当該平均値の好ましい範囲は、Ymh等に関する上記の範囲と同様である。
<保護フィルム>
本発明の光学積層体には、保護フィルムが積層されていてもよい。保護フィルムは、光学積層体の片面又は両面に積層されていてよい。光学積層体が一方の面に機能層を有し、他方の面には機能層を有さない場合、保護フィルムは、光学積層体の機能層側の表面に積層されていてもよいし、光学フィルム側の表面に積層されていてもよいし、両面に積層されていてもよい。光学積層体が両面に機能層を有する場合、保護フィルムは、片方の機能層側の表面に積層されていてもよいし、両方の機能層側の表面に積層されていてもよい。保護フィルムは、光学フィルム又は機能層の表面を一時的に保護するためのフィルムであり、光学フィルム又は機能層の表面を保護できる剥離可能なフィルムである限り特に限定されない。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム等が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム及びアクリル系樹脂フィルムからなる群から選択されることが好ましい。本発明の光学積層体に、保護フィルムが2つ積層される場合、各保護フィルムは同一又は異なっていてもよい。
保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、通常、10〜120μm、好ましくは15〜110μm、より好ましくは20〜100μmである。本発明の光学積層体に、保護フィルムが2つ積層される場合、各保護フィルムの厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。
<フレキシブル表示装置>
本発明は、本発明の光学積層体を備える、フレキシブル表示装置も提供する。本発明の光学積層体は、好ましくはフレキシブル表示装置において前面板として用いられ、該前面板はウインドウフィルムと称されることがある。該フレキシブル表示装置は、フレキシブル表示装置用積層体と、有機EL表示パネルとからなり、有機EL表示パネルに対して視認側にフレキシブル表示装置用積層体が配置され、折り曲げ可能に構成されている。フレキシブル表示装置用積層体は、さらに偏光板(好ましくは円偏光板)、タッチセンサ等を含有していてもよく、それらの積層順は任意であるが、視認側からウインドウフィルム、偏光板、タッチセンサの順、又は、ウインドウフィルム、タッチセンサ、偏光板の順に積層されていることが好ましい。タッチセンサよりも視認側に偏光板が存在すると、タッチセンサのパターンが視認されにくくなり表示画像の視認性が良くなるので好ましい。それぞれの部材は接着剤、粘着剤等を用いて積層することができる。また、フレキシブル表示装置は、前記ウインドウフィルム、偏光板、タッチセンサのいずれかの層の少なくとも一方の面に形成された遮光パターンを具備することができる。
<円偏光板>
本発明のフレキシブル表示装置は、上記の通り、偏光板、中でも円偏光板を備えることが好ましい。円偏光板は、直線偏光板にλ/4位相差板を積層することにより、右又は左円偏光成分のみを透過させる機能を有する機能層である。たとえば外光を右円偏光に変換して有機ELパネルで反射されて左円偏光となった外光を遮断し、有機ELの発光成分のみを透過させることで反射光の影響を抑制して画像を見やすくするために用いられる。円偏光機能を達成するためには、直線偏光板の吸収軸とλ/4位相差板の遅相軸は理論上45度である必要があるが、実用的には45±10度である。直線偏光板とλ/4位相差板は必ずしも隣接して積層される必要はなく、吸収軸と遅相軸の関係が前述の範囲を満足していればよい。全波長において完全な円偏光を達成することが好ましいが実用上は必ずしもその必要はないので本発明における円偏光板は楕円偏光板をも包含する。直線偏光板の視認側にさらにλ/4位相差フィルムを積層して、出射光を円偏光とすることで偏光サングラスをかけた状態での視認性を向上させることも好ましい。
直線偏光板は、透過軸方向に振動している光は通すが、それとは垂直な振動成分の偏光を遮断する機能を有する機能層である。前記直線偏光板は、直線偏光子単独又は直線偏光子及びその少なくとも一方の面に貼り付けられた保護フィルムを備えた構成であってもよい。前記直線偏光板の厚さは、200μm以下であってもよく、好ましくは0.5〜100μmである。直線偏光板の厚さが前記の範囲にあると直線偏光板の柔軟性が低下し難い傾向にある。
前記直線偏光子は、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略すことがある)系フィルムを染色、延伸することで製造されるフィルム型偏光子であってもよい。延伸によって配向したPVA系フィルムに、ヨウ素等の二色性色素が吸着、又はPVAに吸着した状態で延伸されることで二色性色素が配向し、偏光性能を発揮する。前記フィルム型偏光子の製造においては、他に膨潤、ホウ酸による架橋、水溶液による洗浄、乾燥等の工程を有していてもよい。延伸や染色工程はPVA系フィルム単独で行ってもよいし、ポリエチレンテレフタレートのような他のフィルムと積層された状態で行うこともできる。用いられるPVA系フィルムの厚さは好ましくは10〜100μmであり、前記延伸倍率は好ましくは2〜10倍である。
さらに前記偏光子の他の一例としては、液晶偏光組成物を塗布して形成する液晶塗布型偏光子が挙げられる。前記液晶偏光組成物は、液晶性化合物及び二色性色素化合物を含むことができる。前記液晶性化合物は、液晶状態を示す性質を有していればよく、特にスメクチック相等の高次の配向状態を有していると高い偏光性能を発揮することができるため好ましい。また、液晶性化合物は、重合性官能基を有することが好ましい。
前記二色性色素化合物は、前記液晶化合物とともに配向して二色性を示す色素であって、重合性官能基を有していてもよく、また、二色性色素自身が液晶性を有していてもよい。
液晶偏光組成物に含まれる化合物のいずれかは重合性官能基を有する。前記液晶偏光組成物はさらに開始剤、溶剤、分散剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、シランカップリング剤などを含むことができる。
前記液晶偏光層は、配向膜上に液晶偏光組成物を塗布して液晶偏光層を形成することにより製造される。液晶偏光層は、フィルム型偏光子に比べて厚さを薄く形成することができ、その厚さは好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜5μmである。
前記配向膜は、例えば基材上に配向膜形成組成物を塗布し、ラビング、偏光照射等により配向性を付与することにより製造される。前記配向膜形成組成物は、配向剤を含み、さらに溶剤、架橋剤、開始剤、分散剤、レベリング剤、シランカップリング剤等を含んでいてもよい。前記配向剤としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリアクリレート類、ポリアミック酸類、ポリイミド類が挙げられる。偏光照射により配向性を付与する配向剤を用いる場合、シンナメート基を含む配向剤を使用することが好ましい。前記配向剤として使用される高分子の重量平均分子量は、例えば、10,000〜1,000,000程度である。前記配向膜の厚さは、好ましくは5〜10,000nmであり、配向規制力が十分に発現される点で、より好ましくは10〜500nmである。
前記液晶偏光層は基材から剥離して転写して積層することもできるし、前記基材をそのまま積層することもできる。前記基材が、保護フィルムや位相差板、ウインドウフィルムの透明基材としての役割を担うことも好ましい。
前記保護フィルムとしては、透明な高分子フィルムであればよく前記ウインドウフィルムの透明基材に使用される材料や添加剤と同じものが使用できる。また、エポキシ樹脂等のカチオン硬化組成物やアクリレート等のラジカル硬化組成物を塗布して硬化して得られるコーティング型の保護フィルムであってもよい。該保護フィルムは、必要により可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料や染料のような着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤等を含んでいてもよい。該保護フィルムの厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは1〜100μmである。保護フィルムの厚さが前記の範囲にあると、該フィルムの柔軟性が低下し難い傾向にある。
前記λ/4位相差板は、入射光の進行方向に直行する方向(フィルムの面内方向)にλ/4の位相差を与えるフィルムである。前記λ/4位相差板は、セルロース系フィルム、オレフィン系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等の高分子フィルムを延伸することで製造される延伸型位相差板であってもよい。前記λ/4位相差板は、必要により位相差調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料や染料のような着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤等を含んでいてもよい。
前記延伸型位相差板の厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは1〜100μmである。延伸型位相差板の厚さが前記の範囲にあると、該延伸型位相差板の柔軟性が低下し難い傾向にある。
さらに前記λ/4位相差板の他の一例としては、液晶組成物を塗布して形成する液晶塗布型位相差板が挙げられる。
前記液晶組成物は、ネマチック、コレステリック、スメクチック等の液晶状態を示す液晶性化合物を含む。前記液晶性化合物は、重合性官能基を有する。
前記液晶組成物は、さらに開始剤、溶剤、分散剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、シランカップリング剤などを含むことができる。
前記液晶塗布型位相差板は、前記液晶偏光層と同様に、液晶組成物を下地上に塗布、硬化して液晶位相差層を形成することで製造することができる。液晶塗布型位相差板は、延伸型位相差板に比べて厚さを薄く形成することができる。前記液晶偏光層の厚さは、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜5μmである。
前記液晶塗布型位相差板は基材から剥離して転写して積層することもできるし、前記基材をそのまま積層することもできる。前記基材が、保護フィルムや位相差板、ウインドウフィルムの透明基材としての役割を担うことも好ましい。
一般的には、短波長ほど複屈折が大きく長波長になるほど小さな複屈折を示す材料が多い。この場合には全可視光領域でλ/4の位相差を達成することはできないので、視感度の高い560nm付近に対してλ/4となるように、面内位相差は、好ましくは100〜180nm、より好ましくは130〜150nmとなるように設計される。通常とは逆の複屈折率波長分散特性を有する材料を用いた逆分散λ/4位相差板は、視認性が良好となる点で好ましい。このような材料としては、例えば延伸型位相差板は特開2007−232873号公報等に、液晶塗布型位相差板は特開2010−30979号公報等に記載されているものを用いることができる。
また、他の方法としてはλ/2位相差板と組合せることで広帯域λ/4位相差板を得る技術も知られている(例えば、特開平10−90521号公報など)。λ/2位相差板もλ/4位相差板と同様の材料方法で製造される。延伸型位相差板と液晶塗布型位相差板の組合せは任意であるが、どちらも液晶塗布型位相差板を用いることにより厚さを薄くすることができる。
前記円偏光板には斜め方向の視認性を高めるために、正のCプレートを積層する方法が知られている(例えば、特開2014−224837号公報など)。正のCプレートは、液晶塗布型位相差板であっても延伸型位相差板であってもよい。該位相差板の厚さ方向の位相差は、好ましくは−200〜−20nm、より好ましくは−140〜−40nmである。
<タッチセンサ>
本発明のフレキシブル表示装置は、上記の通り、タッチセンサを備えることが好ましい。タッチセンサは入力手段として用いられる。タッチセンサとしては、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式等様々な様式が挙げられ、好ましくは静電容量方式が挙げられる。
静電容量方式タッチセンサは活性領域及び前記活性領域の外郭部に位置する非活性領域に区分される。活性領域は表示パネルで画面が表示される領域(表示部)に対応する領域であって、使用者のタッチが感知される領域であり、非活性領域は表示装置で画面が表示されない領域(非表示部)に対応する領域である。タッチセンサはフレキシブルな特性を有する基板と、前記基板の活性領域に形成された感知パターンと、前記基板の非活性領域に形成され、前記感知パターンとパッド部を介して外部の駆動回路と接続するための各センシングラインを含むことができる。フレキシブルな特性を有する基板としては、前記ウインドウフィルムの透明基板と同様の材料が使用できる。
前記感知パターンは、第1方向に形成された第1パターン及び第2方向に形成された第2パターンを備えることができる。第1パターンと第2パターンとは互いに異なる方向に配置される。第1パターン及び第2パターンは、同一層に形成され、タッチされる地点を感知するためには、それぞれのパターンが電気的に接続されなければならない。第1パターンは複数の単位パターンが継ぎ手を介して互いに接続された形態であるが、第2パターンは複数の単位パターンがアイランド形態に互いに分離された構造になっているので、第2パターンを電気的に接続するためには別途のブリッジ電極が必要である。第2パターンの接続のための電極には、周知の透明電極を適用することができる。該透明電極の素材としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、亜鉛酸化物(ZnO)、インジウム亜鉛スズ酸化物(IZTO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、カドミウムスズ酸化物(CTO)、PEDOT(poly(3,4―ethylenedioxythiophene))、炭素ナノチューブ(CNT)、グラフェン、金属ワイヤなどが挙げられ、好ましくはITOが挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して使用できる。金属ワイヤに使用される金属は特に限定されず、例えば、銀、金、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、チタン、テレニウム、クロムなどが挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
ブリッジ電極は感知パターン上部に絶縁層を介して前記絶縁層上部に形成されることができ、基板上にブリッジ電極が形成されており、その上に絶縁層及び感知パターンを形成することができる。前記ブリッジ電極は感知パターンと同じ素材で形成することもでき、モリブデン、銀、アルミニウム、銅、パラジウム、金、白金、亜鉛、スズ、チタン又はこれらのうちの2種以上の合金で形成することもできる。
第1パターンと第2パターンは電気的に絶縁されなければならないので、感知パターンとブリッジ電極の間には絶縁層が形成される。該絶縁層は、第1パターンの継ぎ手とブリッジ電極との間にのみ形成することや、感知パターン全体を覆う層として形成することもできる。感知パターン全体を覆う層の場合、ブリッジ電極は絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して第2パターンを接続することができる。
前記タッチセンサは、感知パターンが形成されたパターン領域と、感知パターンが形成されていない非パターン領域との間の透過率の差、具体的には、これらの領域における屈折率の差によって誘発される光透過率の差を適切に補償するための手段として基板と電極の間に光学調節層をさらに含むことができる。該光学調節層は、無機絶縁物質又は有機絶縁物質を含むことができる。光学調節層は光硬化性有機バインダー及び溶剤を含む光硬化組成物を基板上にコーティングして形成することができる。前記光硬化組成物は無機粒子をさらに含むことができる。前記無機粒子によって光学調節層の屈折率を高くすることができる。
前記光硬化性有機バインダーは、本発明の効果を損ねない範囲で、例えば、アクリレート系単量体、スチレン系単量体、カルボン酸系単量体などの各単量体の共重合体を含むことができる。前記光硬化性有機バインダーは、例えば、エポキシ基含有繰り返し単位、アクリレート繰り返し単位、カルボン酸繰り返し単位などの互いに異なる各繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
前記無機粒子としては、例えば、ジルコニア粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などが挙げられる。
前記光硬化組成物は、光重合開始剤、重合性モノマー、硬化補助剤などの各添加剤をさらに含むこともできる。
<接着層>
前記フレキシブル画像表示装置用積層体を形成する各層(ウインドウフィルム、円偏光板、タッチセンサ)並びに各層を構成するフィルム部材(直線偏光板、λ/4位相差板等)は接着剤によって接合することができる。該接着剤としては、水系接着剤、有機溶剤系、無溶剤系接着剤、固体接着剤、溶剤揮散型接着剤、湿気硬化型接着剤、加熱硬化型接着剤、嫌気硬化型、活性エネルギー線硬化型接着剤、硬化剤混合型接着剤、熱溶融型接着剤、感圧型接着剤(粘着剤)、再湿型接着剤等、通常使用されている接着剤等が使用でき、好ましくは水系溶剤揮散型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、粘着剤を使用できる。接着剤層の厚さは、求められる接着力等に応じて適宜調節することができ、好ましくは0.01〜500μm、より好ましくは0.1〜300μmである。前記フレキシブル画像表示装置用積層体には、複数の接着層が存在するが、それぞれの厚さや種類は、同じであっても異なっていてもよい。
前記水系溶剤揮散型接着剤としては、ポリビニルアルコール系ポリマー、でんぷん等の水溶性ポリマー、エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン−ブタジエン系エマルジョン等水分散状態のポリマーを主剤ポリマーとして使用することができる。前記主剤ポリマーと水とに加えて、架橋剤、シラン系化合物、イオン性化合物、架橋触媒、酸化防止剤、染料、顔料、無機フィラー、有機溶剤等を配合してもよい。前記水系溶剤揮散型接着剤によって接着する場合、前記水系溶剤揮散型接着剤を被接着層間に注入して被着層を貼合した後、乾燥させることで接着性を付与することができる。前記水系溶剤揮散型接着剤を用いる場合、その接着層の厚さは、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜1μmである。前記水系溶剤揮散型接着剤を複数層に用いる場合、それぞれの層の厚さや種類は同じであっても異なっていてもよい。
前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線を照射して接着剤層を形成する反応性材料を含む活性エネルギー線硬化組成物の硬化により形成することができる。前記活性エネルギー線硬化組成物は、ハードコート組成物に含まれるものと同様のラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有することができる。前記ラジカル重合性化合物は、ハードコート組成物におけるラジカル重合性化合物と同じ化合物を用いることができる。
前記カチオン重合性化合物は、ハードコート組成物におけるカチオン重合性化合物と同じ化合物を用いることができる。
活性エネルギー線硬化組成物に用いられるカチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物が特に好ましい。接着剤組成物としての粘度を下げるために単官能の化合物を反応性希釈剤として含むことも好ましい。
活性エネルギー線組成物は、粘度を低下させるために、単官能の化合物を含むことができる。該単官能の化合物としては、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系単量体や、1分子中に1個のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
活性エネルギー線組成物は、さらに重合開始剤を含むことができる。該重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等が挙げられ、これらは適宜選択して用いられる。これらの重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。ハードコート組成物の記載の中で活性エネルギー線照射によりラジカル重合又はカチオン重合の内の少なくともいずれか開始することができる開始剤を使用することができる。
前記活性エネルギー線硬化組成物はさらに、イオン捕捉剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、密着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動粘度調整剤、可塑剤、消泡剤溶剤、添加剤、溶剤を含むことができる。前記活性エネルギー線硬化型接着剤によって2つの被接着層を接着する場合、前記活性エネルギー線硬化組成物を被接着層のいずれか一方又は両方に塗布後、貼合し、いずれかの被着層又は両方の被接着層に活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、で接着することができる。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合、その接着層の厚さは、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.1〜10μmである。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を複数の接着層形成に用いる場合、それぞれの層の厚さや種類は同じであっても異なっていてもよい。
前記粘着剤としては、主剤ポリマーに応じて、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等に分類され何れを使用することもできる。粘着剤には主剤ポリマーに加えて、架橋剤、シラン系化合物、イオン性化合物、架橋触媒、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、染料、顔料、無機フィラー等を配合してもよい。前記粘着剤を構成する各成分を溶剤に溶解・分散させて粘着剤組成物を得て、該粘着剤組成物を基材上に塗布した後に乾燥させることで、粘着剤層接着層が形成される。粘着層は直接形成されてもよいし、別途基材に形成したものを転写することもできる。接着前の粘着面をカバーするためには離型フィルムを使用することも好ましい。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合、その接着層の厚さは、好ましくは0.1〜500μm、より好ましくは1〜300μmである。前記粘着剤を複数層用いる場合には、それぞれの層の厚さや種類は同じであっても異なっていてもよい。
<遮光パターン>
前記遮光パターンは、前記フレキシブル画像表示装置のベゼル又はハウジングの少なくとも一部として適用することができる。遮光パターンによって前記フレキシブル画像表示装置の辺縁部に配置される配線が隠されて視認されにくくすることで、画像の視認性が向上する。前記遮光パターンは単層又は複層の形態であってもよい。遮光パターンのカラーは特に制限されることはなく、黒色、白色、金属色などの多様なカラーであってもよい。遮光パターンはカラーを具現するための顔料と、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーンなどの高分子で形成することができる。これらの単独又は2種類以上の混合物で使用することもできる。前記遮光パターンは、印刷、リソグラフィ、インクジェットなど各種の方法にて形成することができる。遮光パターンの厚さは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜50μmである。また、遮光パターンの厚さ方向に傾斜等の形状を付与することも好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。例中の「%」及び「部」は、特記しない限り、質量%及び質量部を意味する。まず始めに物性値の測定方法を説明する。
<重量平均分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定
(1)前処理方法
試料をγ−ブチロラクトン(GBL)に溶解させて20質量%溶液とした後、DMF溶離液にて100倍に希釈し、0.45μmメンブレンフィルターろ過したものを測定溶液とした。
(2)測定条件
カラム:TSKgel SuperAWM−H×2+SuperAW2500×1(6.0mm I.D.×150mm×3本)
溶離液:DMF(10mMの臭化リチウム添加)
流量:0.6mL/分
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:20μL
分子量標準:標準ポリスチレン
<イミド化率>
イミド化率は、1H−NMR測定により以下のようにして求めた。
(1)前処理方法
試料を重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)に溶解させて2質量%溶液としたものを測定溶液とした。
(2)測定条件
測定装置:JEOL製 400MHz NMR装置 JNM−ECZ400S/L1
標準物質:DMSO−d6(2.5ppm)
試料温度:室温
積算回数:256回
緩和時間:5秒
(3)イミド化率解析方法
(3−1)ポリイミド樹脂Aのイミド化率
ポリイミド樹脂Aを含む測定溶液について得られた1H−NMRスペクトルにおいて観測されたベンゼンプロトンのうち、イミド化前後で変化しない構造に由来するベンゼンプロトンAの積分値をIntAとした。
また、ポリイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来するアミドプロトンの積分値をIntBとした。これらの積分値から以下の式に基づいてポリイミド樹脂Aのイミド化率を求めた。下記式において、αはポリアミド酸(イミド化率0%)の場合におけるアミドプロトン1個に対するベンゼンプロトンAの個数割合である。
イミド化率(%)=100×(1−α×IntB/IntA)
(3−2)ポリアミドイミド樹脂Aのイミド化率
ポリアミドイミド樹脂Aを含む測定溶液について得られた1H−NMRスペクトルにおいて観測されたベンゼンプロトンのうち、イミド化前後で変化しない構造に由来し、ポリアミドイミド樹脂中に残存するアミック酸構造に由来する構造に影響を受けないベンゼンプロトンCの積分値をIntCとした。
また、観測されたベンゼンプロトンのうちイミド化前後で変化しない構造に由来し、ポリアミドイミド樹脂A中に残存するアミック酸構造に由来する構造に影響を受けるベンゼンプロトンDの積分値をIntDとした。これらの積分値から以下の式に基づいてβ値を求めた。
β=IntD/IntC
次に、βをイミド化率に換算する相関式を得るために、イミド化率の異なる複数のポリアミドイミド樹脂について、上記と同様にしてβ値を求めると共に、HSQCスペクトルを用いてイミド化率を求め、これらの結果から以下の相関式を得た。
イミド化率(%)=k×β+100
上記相関式中、kは定数である。
次いで、ポリアミドイミド樹脂Aについて得たβを、上記相関式に代入してポリアミドイミド樹脂Aのイミド化率(%)を得た。
<平均一次粒子径>
シリカゾルを300℃で乾燥させた粉末の比表面積をユアサアイオクニス(株)製、比表面積測定装置モノソーブMS−16を用いて測定し、測定された比表面積S(m2/g)を用いて、D(nm)=2720/Sの式で平均一次粒子径を算出した。
<ワニスの粘度>
JIS K 8803:2011に準拠して、ブルックフィールド社製E型粘度計DV−II+Proを用いて測定した。測定温度は25℃とした。
<フィルムの厚さ>
(株)ミツトヨ製ID−C112XBSを用いて、10点以上のフィルムの厚さを測定し、その平均値を算出した。
<機能層の厚さ>
Filmetrics社製 F20卓上膜厚システムを用いて、機能層の厚さを測定した。
<フィルムの全光線透過率、Haze>
上記光学特性値を、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM−3700Aを用いて測定した。
<フィルムの黄色度>
光学フィルムの黄色度(Yellow Index:YI値)を、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM−3700Aを用いて測定した。具体的には、サンプルがない状態でバックグランド測定を行った後、光学フィルムをサンプルホルダーにセットして、300〜800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、下記式に基づいてYI値を算出した。
YI=100×(1.2769X−1.0592Z)/Y
JIS K 5600−5−4:1999に準拠して、光学積層体の機能層表面の鉛筆硬度を測定した。測定時の荷重は750g、測定スピードは4.5mm/秒とした。
<表面抵抗率の測定>
抵抗率計((株)三菱化学アナリテック製,ハイレスタUP MCP−HT450型)を使用して、JIS K 6911に準拠して光学積層体の表面抵抗率(Ω/sq)を測定した。サンプルを50mm×50mmの大きさに切断し、得られたサンプルを23℃、50%RHの下に24時間放置した。その後、光学積層体の機能層側の表面抵抗率を測定した。なお、該装置の測定上限は1.0E+14Ω/sqであり、それ以上の表面抵抗率を有する場合は、装置上にOVERと表記される。
<光学フィルム又は光学積層体の光学的均質性の評価方法>
1.投影画像及び背景画像の撮影
暗室中に、図2に示すように、光源1、測定フィルム2、投影面3及びカメラ6を配置し、投影画像4の撮影を行った。光源1と測定フィルム2との距離は250cmであり、測定フィルム2と投影面3との距離は30cmであり、測定フィルム2と投影面3とは平行に配置され、カメラ6は光源1からスクリーンへの法線の真下に設置しており、カメラ6と投影面3(スクリーン)との距離は30cmであり、カメラ角度7(カメラをスクリーンに対して垂直となるように向けた状態から、上側に傾斜させる角度)は25度であった。また、背景画像の撮影は、図2において測定フィルム2を取り除いたこと以外は投影画像の撮影と同様にして行った。測定条件及び撮影条件の詳細を以下に示す。
光源:LED光源(林時計工業(株)製「LA−HDF15T」)
測定フィルム:以下の実施例及び比較例で製造した光学フィルム又は光学積層体を200mm×300mmに切り出し、測定試料とした。
投影面:白色の市販の映画観賞用のスクリーン((株)シアターハウス製、「BTP600FHD−SH1000」)
カメラ:(株)ニコン製「COOLPIX(登録商標) P600」
カメラの詳細設定:撮影モード マニュアル撮影
画像サイズ 2M
フォーカス マニュアルフォーカス(距離0.3m)
シャッタースピード 1/2秒
絞り値(F値) 4.2
フラッシュ OFF
2.フーリエ変換
本実施例ではカメラを上記カメラ角度の位置に設置しているため、投影画像に傾斜が生じている。そのため、まず投影画像の傾斜を補正するために、傾斜補正条件を決定した。なお、投影像のゆがみがない場合には補正は不要である。
(傾斜補正条件の決定)
透明なフィルムに10cm×10cmの正方形を書き、上記1の条件にて基準投影画像を撮影した。得られた基準投影画像をAdobe Systems社製のPhotoshop(登録商標) CS4にて読み込み、レンズ補正のゆがみ補正機能を用いて、カメラとスクリーンとのが90度に相当するように補正し、TIFF形式で保存した。このときの条件を傾斜補正条件とした。傾斜補正後の基準投影画像から、縦、横それぞれのピクセルあたりの長さを計算した(縦:816pixel=10cm、横:906pixel=10cm)。
(フーリエ変換)
測定フィルムについて上記のようにして得た投影画像について、上記のようにして決定した傾斜補正条件で補正を行い、補正後の画像をTIFF形式で保存した。得られた傾斜補正後の投影画像を、画像解析ソフト「Image−J、ver.1.48」を用いて8−bitのグレースケールへ変換することにより数値化した。なお、傾斜補正後の基準投影画像から得た、縦、横それぞれのピクセルあたりの長さを、Set Scaleとして使用した。グレースケール画像中10.2cm×11.2cm(縦×横)のサイズの矩形の範囲を選択し、該選択された範囲の画像を、Imag撹拌e−Jを用いてフーリエ変換し、逆空間像を得た。フーリエ変換後の逆空間像について、Set Scaleに正しい値(水平方向:1pixel=11.3cm
−1、垂直方向:1pixel=12.55cm
−1)を入力した。
3.ブランク補正したラインプロファイルの最大強度(Y
mh1及びY
mv1)の測定
上記のようにして得た逆空間像において、逆空間像の中心を通る水平方向(h1方向)及び垂直方向(v1方向)のそれぞれの方向についてラインプロファイルを作成した。ライン幅は10ピクセルとした。得られたラインプロファイルをtext形式で保存した。次に、該text形式のデータをMicrosoft社のExcel(ver.14.0)で読み込み、次のようにしてラインプロファイルを規格化して、水平方向(h1方向)及び垂直方向(v1方向)のそれぞれの方向について、Y”のラインプロファイルを得て、各ラインプロファイルにおいて最大強度Y
maxをY
mh1及びY
mv1とし、最大強度Y
mh1及びY
mv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値X
cenを引いた値であるX
maxをそれぞれX
mh1及びX
mv1とした。規格化方法を実施例1で得た水平方向(h1方向)のラインプロファイルを例として用いて説明する。
(規格化方法)
Yの値が最大となる周波数をXの中心(X
cen)とし、その時のYの値をY
cenとする。次に、X
cenを中心とし、両端50ピクセル分ずつの合計100ピクセルの領域について、Yの平均値を求め、該平均値をベースライン(Y
base)とする。そして、Y
cen=100、Y
base=0となるように、次の式に従いデータYを補正しY’を得る。
図4に示される実施例1で得たラインプロファイル(データY)について、上記補正を行うことにより、図5に示されるようなラインプロファイルA(データY’)が得られる。
次に、1で得た背景画像についても同様の操作を行い、背景画像のラインプロファイルを得た。具体的には、図6に示されるようなラインプロファイルBが得られた。
次いで、上記のプロファイルAから、バックグラウンドのプロファイルBをExcelにより引いて、ブランク補正を行った。実施例1では、図5に示されるラインプロファイルAのデータY’から、図6に示されるようなラインプロファイルBのデータを引いて、図7に示されるようなブランク補正されたラインプロファイルA−Bを得た。
このようにして得たラインプロファイルをスムージングして、Y”のプロファイルを得、これをラインプロファイルの最大強度(Y
mh1及びY
mv1)の測定に使用した。グラフのスムージングは、次の式に従い、21個のデータの平均値であるy
iを算出して行った。
(視認性の官能評価)
50〜100ルクスに調光した室内環境にて、仰角80度の角度より、作製したフィルムを目視検査し、映り込む背景の歪みより視認性を評価した。その結果を表2に示す。なお、視認性の評価基準は以下の通りである。
◎:背景に歪みは全く確認されない。
〇:背景に歪みはほぼ確認されない。
△:背景に非常に僅かな歪みが確認されるが、問題のないレベル。
×:背景に明確な歪みが確認される。
<残溶媒量>
TG−DTA(SII(株)製 EXSTAR6000 TG/DTA6300)を用いて、実施例1及び2並びに比較例2で得られた透明樹脂フィルムを30℃から120℃まで昇温し、120℃で5分間保持し、その後5℃/分の昇温速度で400℃まで昇温した。120℃におけるフィルムの質量に対する120℃から250℃でのフィルムの質量減少の比を、溶媒の含有量(残溶媒量と称する)として算出した。
以下の製造例及び実施例において使用する略称は、次のとおりである。
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物
TPC:テレフタロイルクロリド
OBBC:4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
GBL:γ−ブチロラクトン
PET:ポリエチレンテレフタレート
<製造例>
製造例1:ポリアミドイミド樹脂1の製造
窒素ガス雰囲気下、セパラブルフラスコに撹拌翼を備えた反応容器と、オイルバスとを準備した。オイルバスに設置した反応容器に、TFMB45部と、DMAc768.55部とを投入した。反応容器内の内容物を室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させた。次に、反応容器内に6FDA19.01部を更に投入し、反応容器内の内容物を室温で3時間撹拌した。その後、OBBC4.21部、次いでTPC17.30部を反応容器に投入し、反応容器内の内容物を室温で1時間撹拌した。次いで、反応容器内に4−メチルピリジン4.63部と無水酢酸13.04部とを更に投入し、反応容器内の内容物を室温で30分間撹拌した。撹拌した後、オイルバスを用いて容器内温度を70℃に昇温し、70℃に維持してさらに3時間撹拌し、反応液を得た。
得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、沈殿物を析出させた。析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄した。次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂1を得た。得られたポリアミドイミド樹脂1の重量平均分子量は400,000、イミド化率は99.0%であった。
製造例2:ポリイミド樹脂1の製造
セパラブルフラスコにシリカゲル管、撹拌装置及び温度計を取り付けた反応器と、オイルバスとを準備した。このフラスコ内に、6FDA75.52部と、TFMB54.44部とを投入した。これを400rpmで攪拌しながらDMAc519.84部を加え、フラスコの内容物が均一な溶液になるまで撹拌を続けた。続いて、オイルバスを用いて容器内温度が20〜30℃の範囲になるように調整しながらさらに20時間撹拌を続け、反応させてポリアミック酸を生成させた。30分後、撹拌速度を100rpmに変更した。20時間撹拌後、反応系温度を室温に戻し、DMAc649.8部を加えてポリマー濃度が10質量%となるように調整した。さらに、ピリジン32.27部、無水酢酸41.65部を加え、室温で10時間撹拌してイミド化を行った。反応容器からポリイミドワニスを取り出した。得られたポリイミドワニスをメタノール中に滴下して再沈殿を行い、得られた粉体を加熱乾燥して溶媒を除去し、固形分としてポリイミド系樹脂1を得た。得られたポリイミド系樹脂1について、GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は320,000であった。また、ポリイミドのイミド化率は98.6%であった。
製造例3:シリカゾル1の調製
ゾル−ゲル法により作製された平均一次粒子径(BET法で測定された平均一次粒子径)12nmのアモルファスシリカゾルを原料とし、溶媒置換により、GBL置換シリカゾルを調製した。得られたゾルを目開き10μmのメンブレンフィルターでろ過し、GBL置換シリカゾル1を得た。得られたGBL置換シリカゾル1中、シリカ粒子の含有量は30〜32質量%であった。
製造例4:ワニス(1)の調製
製造例1で得たポリアミドイミド樹脂1、及び、製造例3で得たシリカゾル1を、GBL溶媒中でのポリアミドイミド樹脂:シリカ粒子の組成比が70:30になるように混合した。得られた混合液に、ポリアミドイミド樹脂とシリカ粒子の合計質量に対して2.0phrのUV−A紫外線吸収剤「Sumisorb(登録商標) 250」(分子量389、住化ケムテックス(株)製)及びポリアミドイミド樹脂とシリカ粒子の合計質量に対して35ppmのブルーイング剤「Sumiplast(登録商標) Violet B」(住化ケムテックス(株)製)を添加し、均一になるまで撹拌し、ワニス(1)を得た。ワニス(1)の固形分は9.7%であり、25℃における粘度は39,600cpsであった。
製造例5:ワニス(2)の調製
製造例2で得たポリイミド樹脂1、及び、該ポリイミド樹脂に対して2.0phrの紫外線吸収剤「Sumisorb 250」(分子量389、住化ケムテックス(株)製)を、GBL:DMAc=1:9の混合溶剤中に16.5質量%の濃度で溶解させてワニス(2)を得た。ワニス(2)の固形分は16.5%であり、25℃における粘度は36,800cpsであった。
製造例6:光硬化性樹脂組成物1
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学(株)製、A−TMPT)28.4質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学(株)製、A−TMMT)28.4質量部、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF(株)製、Irgacure(登録商標) 184)1.8質量部、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(東京化成工業(株)製、LiFSI)2.4質量部、レベリング剤(ビックケミージャパン(株)製、BYK(登録商標)−307)0.1質量部、並びにプロピレングリコール1−モノメチルエーテル(東京化成工業(株)製)39質量部を攪拌混合し、光硬化性樹脂組成物1を得た。
製造例7:光硬化性樹脂組成物2
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを混合しなかったこと以外は、製造例6と同様の化合物を撹拌混合し、光硬化性樹脂組成物2を得た。
実施例1
ワニス(1)を、PETフィルム(東洋紡(株)「コスモシャイン(登録商標) A4100」、厚さ188μm、厚さ分布±2μm)上に塗布し、流涎成形し、ワニスの塗膜を成形した。この時、線速は0.8m/分であった。ワニスの塗膜を、80℃で10分加熱した後、100℃で10分加熱し、次いで90℃で10分加熱し、最後に80℃で10分加熱するという乾燥条件で乾燥させ、乾燥塗膜を形成させた。その後、PETフィルムから塗膜を剥離し、厚さ58μm、幅700mm、長さ500mの、フィルムロールの形態の原料フィルム1を得た。原料フィルム1中の残存溶媒量は9.7質量%であった。次いで、原料フィルム1をフィルム横延伸装置(テンター)にて200℃で25分、延伸倍率0.98倍の条件で加熱することにより、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルム1を得た。ポリアミドイミドフィルム1中の残存溶媒量は0.7質量%であった。
得られたポリアミドイミドフィルム1の片面に、ロール・ツー・ロール方式で、光硬化性樹脂組成物1を乾燥後の厚さが10μmとなるようにバーコーターで塗工した。その後、80℃のオーブンで3分間乾燥を行い、高圧水銀灯500mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して硬化させることで、長さ400mのフィルムロールの形態の光学積層体1を得た。光学積層体1における機能層の厚さは10μmであった。
実施例2
光硬化性樹脂組成物1の代わりに、光硬化性樹脂組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、長さ400mのフィルムロールの形態の光学積層体2を得た。光学積層体2における機能層の厚さは11μmであった。
実施例3
ワニス(1)に代えてワニス(2)を用い、乾燥条件を75℃で7.5分加熱した後、120℃で7.5分加熱し、次いで70℃で7.5分加熱し、最後に80℃で7.5分加熱する条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ89μm、幅700mm、長さ600mのフィルムロール形態の原料フィルム2を得た。原料フィルム2中の残存溶媒量は9.6質量%であった。次いで、原料フィルム1に代えて原料フィルム2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ77μmのポリイミドフィルム1を得た。ポリイミドフィルム1中の残存溶媒量は1.1質量%であった。
ポリアミドイミドフィルム1の代わりにポリイミドフィルム1を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、長さ500mのフィルムロール形態の光学積層体3を得た。光学積層体3における機能層の厚さは9μmであった。
比較例2
ワニス(2)を用いて、乾燥条件を100℃で7.5分加熱した後、120℃で7.5分加熱し、次いで60℃で7.5分加熱し、最後に60℃で7.5分加熱する条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ89μm、幅700mm、長さ300mのフィルムロール形態の原料フィルム4を得た。原料フィルム4中の残存溶媒量は9.9質量%であった。次いで、原料フィルム1に代えて原料フィルム4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ77μmのポリイミドフィルム2を得た。ポリイミドフィルム2中の残存溶媒量は1.0質量%であった。
ポリアミドイミドフィルム1の代わりにポリイミドフィルム2を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、長さ190mのフィルムロール形態の光学積層体5を得た。光学積層体5における機能層の厚さは11μmであった。
実施例及び比較例で得た光学積層体について、上記測定方法に従い各種物性値を測定した結果を、表1及び表2に示す。なお、実施例及び比較例のフィルムのHazeはいずれも0.2であった。また、表2中の光学的均質性を評価するための各値について、測定試料がフィルムと記載されている値は、機能層を積層させる前のポリアミドイミドフィルム又はポリイミドフィルムについて測定した値であり、測定試料が積層体と記載されている値は、機能層を積層後の光学積層体について測定した値である。視認性の評価は、光学積層体について評価した結果である。
実施例1〜3の光学積層体、又は、光学積層体に含まれる光学フィルムは、Ymh及びYmvが40以下であり、A/Bが30未満であり、視認性の評価はいずれも◎又は〇と良好であった。これに対し、比較例2の光学積層体に含まれる光学フィルムは、Ymhが40を越え、A/Bが30以上であり、視認性の評価結果は×であった。なお、比較例2の光学積層体について、光学積層体を測定フィルムとして用いた場合のYmh等の結果は記載していないが、光学フィルムを測定フィルムとして得られた結果と同様に、Ymh等及びA/Bが本願発明の光学積層体について特定する範囲内とはならないと考えられる。また、実施例1の光学積層体における機能層には、ハードコート機能の他に帯電防止機能も付与することが可能であった。同様に、実施例1〜3の機能層は、ハードコート機能の他に、帯電防止機能、防眩機能、低反射機能、反射防止機能及び防汚機能等のさらなる機能を付与してもよいような層であった。