JP2020077576A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Han Zhang
涵 張
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Yusuke Shimizu
雄介 清水
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Hitoshi Onishi
仁志 大西
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Abstract

【課題】負極表面の状態に加え、正極表面の状態をも改善することで、電池性能の更なる改善を図ること。【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池では、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極及び負極と、セパレータと、電解液と、これら電池要素群を収容するケースと、を有するリチウムイオン二次電池であって、ケースへの収容前電解液中にヘキサフルオロリン酸リチウムとメタンジスルホニルジフルオリドとを有し、X線光電子分光法により、ケース内に電池要素群を収容し所定期間保存後のリチウムイオン二次電池の正極表面から検出される硫黄原子の原子組成百分率を、所定期間保存後のリチウムイオン二次電池の負極表面から検出される硫黄原子の原子組成百分率で除した値が2以上であることを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
近年、リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器、或いは電気自動車や電力貯蔵用の電源として広く使用されている。特に最近では、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載可能な、高容量で高出力かつエネルギー密度の高い電池の要望が急拡大している。このリチウムイオン二次電池は、使用される有機溶媒を含む電解液によって、その反応性が大きく異なり、電池特性に影響を及ぼすことがしられている。そこで、特許文献1では、電解液としての混合有機溶媒に添加剤としてメタンジスルホニルジフルオリド(以下、スルホン化合物と記載する。)を添加し、二次電池のサイクル特性や保存特性の改善を図っている。
特許第4538753号公報
しかしながら、発明者が鋭意検討した結果、上記添加剤を混合有機溶媒に添加する際に、正極表面と負極表面から検出される硫黄原子の原子組成百分率の比に着目することで電池性能の更なる改善が見込めることを見出した。特に、近年は、単にサイクル特性だけでなく、高出力化や大容量化の要求が拡大しており、その点からも電池の抵抗を低くすることや、正極表面に溶出する金属原子を抑制することは極めて重要である。
本発明は、電解液にスルホン化合物を添加するにあたり、負極表面の状態に加え、正極表面の状態をも改善することで、電池性能の更なる改善を図ることを目的とする。
本発明のリチウムイオン二次電池では、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極及び負極と、セパレータと、電解液と、これら電池要素群を収容するケースと、を有するリチウムイオン二次電池であって、ケースへの収容前電解液中にヘキサフルオロリン酸リチウムとスルホン化合物とを有し、X線光電子分光法により、ケース内に電池要素群を収容し所定期間保存後のリチウムイオン二次電池の正極表面から検出される硫黄原子の原子組成百分率(以下、Satom%)を、所定期間保存後のリチウムイオン二次電池の負極表面から検出されるSatom%で除した値が2以上であることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池は、電池の内部抵抗を低減し、正極表面での金属原子の溶出を抑制することで、電池性能の改善を図ることができる。
本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の断面図である。 電池0〜3の保存後における原子組成百分率を表す表である。 各電池における負極表面及び正極表面の硫黄原子Sの原子組成百分率を表すグラフである。 各電池における正極表面のNi,Co,Mnの原子組成百分率を表すグラフである。 電池0〜3の保存前後における直流抵抗DCIR及び交流抵抗EIS-Z"を、電池0を基準に規格化した表である。 電池0〜3の保存後のEIS-Z"(10Hz)を表すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本発明は負極集電体の少なくとも片面に負極合材層が塗布された負極と、正極と、セパレータと、リチウムイオンと、電解液と、を備える各種のリチウムイオン二次電池に広く適用され得る。以下、主として、電解液、およびこの電解液を備えるリチウムイオン二次電池を例として本発明をより詳しく説明するが、本発明の適用対象をかかる電解液または電池に限定する意図ではない。
[リチウムイオン二次電池の全体構成]
最初に、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の全体構成について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池を示す概略断面図である。このようなリチウムイオン二次電池は、積層型リチウムイオン二次電池と呼ばれる。なお、図1には積層型セルの構成を示すが、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極・負極・セパレータを重ねて層状に巻いた捲回型であってもよい。
図1に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、正極リード21及び負極リード22が取り付けられた電池素子10がラミネートフィルムで形成された外装体30(ケースに相当)の内部に封入された構成を有している。そして、本実施形態においては、正極リード21及び負極リード22が、外装体30の内部から外部に向かって、反対方向に導出されている。なお、図示しないが、正極リード及び負極リードが、外装体の内部から外部に向かって、同一方向に導出されていてもよい。また、このような正極リード及び負極リードは、例えば超音波溶接や抵抗溶接などにより後述する正極集電体及び負極集電体に取り付けることができる。
図1に示すように、電池素子10は、正極集電体11Aの両方の主面上に正極合材層11Bが形成された正極11と、セパレータ13と、負極集電体12Aの両方の主面上に負極活物質層12Bが形成された負極12とを複数積層した構成を有している。このとき、一の正極11の正極集電体11Aの片方の主面上に形成された正極合材層11Bと該一の正極11に隣接する負極12の負極集電体12Aの片方の主面上に形成された負極活物質層12Bとがセパレータ13を介して向き合う。このようにして、正極、セパレータ、負極の順に複数積層されている。
これに電解液を注液することより、隣接する正極合材層11B、セパレータ13及び負極活物質層12Bは、1つの単電池層14を構成する。従って、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、単電池層14が複数積層されることにより、電気的に並列接続された構成を有するものとなる。なお、正極及び負極は、各集電体の片面上に各活物質層が形成されているものであってもよい。
[リチウムイオン二次電池用負極]
負極12は、負極集電体12Aの片面に負極合材層12Bが設けられた構成を有する。ここで、負極合材層12Bは、負極活物質、導電助材、水分散性バインダを含む。負極合材層12B内でのこれらの物質は、電池内に注入された電解液と接触している。
本実施形態における負極合材層12Bは、負極集電体12Aの表面に所定の厚みで膜状に形成されている。負極集電体12Aは、各種のものを使用することができるが、通常は金属や合金が用いられる。具体的には、正極用の導電基材としては、アルミニウムやニッケル、SUS等が挙げられ、負極用の導電基材としては、銅やニッケル、SUS等が挙げられる。その中でも導電性の高さとコストのバランスからアルミニウム、銅が好ましい。なお、アルミニウムは、アルミニウム及びアルミニウム合金を意味し、銅は純銅および銅合金を意味する。本実施形態において、アルミニウム箔は二次電池正極側、二次電池負極側、銅箔は二次電池負極側に用いることができる。アルミニウム箔としては、特に限定されないが、純アルミ系であるA1085材や、A3003材など種々のものが使用できる。また、銅箔としても同様であり、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔が好んで用いられる。
本実施形態の負極合材層の厚みは、例えば5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上である。また200μm以下とすることが好ましく、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは75μm以下である。負極合材層の厚みが上記範囲であると、高い充放電レートでの充放電に対し、十分なリチウムの吸蔵・放出の機能が得られやすい。以下、負極合材層12Bを構成する負極活物質、導電助材、水分散性バインダ、について順に説明する。
(負極活物質)
負極活物質としては、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、および、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。前記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状いずれの形態であってもよい。また、その粒径も特に限定されないが、通常5〜50μm、好ましくは20〜30μm程度である。
前記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
前記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
(導電助材)
負極合材層は、導電助材を含むことが好ましい。本発明で用いる導電助材としては、公知の導電助材を使用することができる。公知の導電助材としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上を併せて使用することができる。市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975ULTRA等、PUER BLACK100、115、205等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000、LITX−50、LITX−200等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等、グラファイトとしては例えば人造黒鉛や燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(水分散性バインダ)
上記水分散性バインダとして、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロースから選ばれる1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、上記負極バインダとしてスチレンブタジエンゴムおよびカルボキシメチルセルロースを適宜混合したものを用いることが望ましい。
上記水分散性バインダは、負極合材層の物性(電解液浸透性・剥離強度)と電池性能との両立を図るため、負極合材層に対し0.1〜4wt%を使用することが望ましい。0.1wt%未満であると、活物質の接着力が弱くなり、これにより充放電過程で活物質の脱離が起こる恐れがある。4wt%を超えると、活物質の量が低減するので、電池容量の面で望ましくない。
(その他の成分)
本実施形態に係る負極合材層には、上記各成分に加えて、その他の適当な成分が含まれていてもよい。例えば、負極合材層が合剤スラリーから形成される場合、負極合材層には、その合剤スラリー由来の各種配合成分が含まれることがある。そのような合剤スラリー由来の各種配合成分の例として、増粘剤、並びに、界面活性剤、分散剤、濡れ剤、消泡剤などその他の添加剤が挙げられる。
(負極合材層の形成方法)
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極が備える合材層は、上述した負極活物質、導電助材、水分散性バインダを含む負極合材スラリーを集電体の表面に塗布して、乾燥することによって製造することができる。合材スラリーに含まれる溶媒は水を使用することが好ましいが、必要に応じて、例えば、集電体への塗工性向上のために、水と相溶する液状媒体を使用しても良い。水と相溶する液状媒体としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用しても良い。
集電体へ合剤スラリーを塗布・乾燥する上で、塗布・乾燥方法は特に限定されない。例えば、スロット・ダイコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、又はグラビアコーティングなどの方法が挙げられる。乾燥方法としては、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線などの乾燥法が挙げられる。乾燥時間や乾燥温度については、特に限定されないが、乾燥時間は通常1分〜30分であり、乾燥温度は通常40℃〜80℃である。
合材層の製造方法においては、集電体上に上記合剤スラリーを塗布乾燥後、金型プレスやロールプレスなどを用い、加圧処理により活物質層の空隙率を低くする工程を有することが好ましい。
(正極活物質)
正極活物質は、リチウムの吸蔵放出が可能な材料であれば特に限定されず、リチウムイオン二次電池に通常用いられる正極活物質でありうる。具体的には、リチウム(Li)とニッケル(Ni)とを構成金属元素とする酸化物のほか、リチウム及びニッケル以外に他の少なくとも一種の金属元素(すなわち、LiとNi以外の遷移金属元素及び/又は典型金属元素)を、原子数換算でニッケルと同程度またはニッケルよりも少ない割合で構成金属元素として含む酸化物をも包含する意味である。上記LiおよびNi以外の金属元素は、例えば、Co,Mn,Al,Cr,Fe,V,Mg,Ca,Na,Ti,Zr,Nb,Mo,W,Cu,Zn,Ga,In,Sn,LaおよびCeからなる群から選択される一種または二種以上の金属元素であり得る。これらの正極活物質は、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
好ましい実施形態において、上記正極活物質は、例えば、一般式(1):LiNi1−x−yCoAl(但し、式中において、0.95≦t≦1.15、0≦x≦0.3、0.1≦y≦0.2、x+y<0.5を満たす。)で表されるリチウムニッケルコバルトアルミニウム系酸化物(NCA)が挙げられる。NCAの具体例としては、LiNi0.8Co0.15Al0.05があげられる。
他の好ましい実施形態において、上記正極活物質は、例えば、一般式(2):LiNiCoMn(ただし式中、0<a<1、0<b<1、0<c<1であり、a+b+c=1を満たす)で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物(NCM)が挙げられる。NCMは体積当たりのエネルギー密度が高く、熱安定性にも優れている。
電極合材層中の正極活物質の含有量は、通常10wt%以上、好ましくは30wt%以上、更に好ましくは50wt%以上であり、特に好ましくは70wt%以上である。また、通常99.9wt%以下、好ましくは99wt%以下である。
なお、正極活物質層に用いてもよいバインダとしては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、フッ素樹脂及びゴム粒子が挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が挙げられる。ゴム粒子としては、スチレン−ブタジエンゴム粒子、アクリロニトリルゴム粒子等が挙げられる。これらの中でも、正極活物質層の耐酸化性を向上させること等を考慮すると、フッ素を含むバインダが好ましい。バインダは1種を単独で使用でき、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
[セパレータ]
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂からなる微多孔膜や多孔質の平板、更には不織布を挙げることができる。好適例として、一種または二種以上のポリオレフィン樹脂を主体に構成された単層または多層構造の多孔性樹脂シートが挙げられる。セパレータの厚みは、例えば15μm〜30μmとすることができる。好ましい一態様では、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる多孔性樹脂層を備えた、シャットダウン機能を有するセパレータである。この態様によれば、セパレータの温度が熱可塑性樹脂の軟化点に達すると樹脂が融解して細孔が目詰まりすることにより電流を遮断することができる。
[電解液]
電解液としては、例えば、通常リチウムイオン二次電池で用いられるものであることが好ましく、具体的には、有機溶媒に支持塩(リチウム塩)が溶解した形態を有する。ここで、リチウム塩として、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、六フッ化タンタル酸リチウム(LiTaF)、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl)、リチウムデカクロロデカホウ素酸(Li10Cl10)等の無機酸陰イオン塩、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CFSON)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li(CSON)等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩等を挙げることができる。その中でも、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)が好ましい。
また、有機溶媒としては、例えば、環状カーボネート類、含フッ素環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、含フッ素鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、含フッ素脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ラクトン類、含フッ素γ−ラクトン類、環状エーテル類、含フッ素環状エーテル類、鎖状エーテル類及び含フッ素鎖状エーテル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を用いることができる。
環状カーボネート類としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)を挙げることができる。また、含フッ素環状カーボネート類としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を挙げることができる。更に、鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)を挙げることができる。また、脂肪族カルボン酸エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチルを挙げることができる。更に、γ−ラクトン類としては、例えば、γ−ブチロラクトンを挙げることができる。また、環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンを挙げることができる。更に、鎖状エーテル類としては、例えば、1,2−エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを挙げることができる。その他としては、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類を挙げることができる。これらは、1種を単独で、2種以上を組み合わせて用いることができる。
(メタンジスルホニルジフルオリド)
ここで、実施形態において電解液には、添加剤としてメタンジスルホニルジフルオリド(以下、スルホン化合物と記載する。)が含まれる。スルホン化合物の含有量は、任意に設定可能であるが、中でも0.01重量%以上10重量%以下であるのが好ましい。電解液において高い化学的安定性が得られるからである。詳細には、0.01重量%よりも少ないと、電解液の化学的安定性が十分かつ安定に得られない可能性があり、10重量%よりも多いと、電気化学デバイスの主要な電気的性能(例えば電池における容量特性など)が十分に得られない可能性があるからである。
スルホン化合物と共に用いる溶媒は、他の有機溶媒などの非水溶媒のいずれか1種あるいは2種以上を含有しているのが好ましい。この非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N'−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、ジメチルスルホキシド、あるいはジメチルスルホキシド燐酸などが挙げられる。中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートからなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、特に、エチレンカーボネートあるいはプロピレンカーボネートなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)とジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートあるいはジエチルカーボネートなどの低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
また、溶媒は、不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含有していてもよい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。この不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、ビニレンカーボネート系化合物、ビニルエチレンカーボネート系化合物、あるいはメチレンエチレンカーボネート系化合物などが挙げられる。
ビニレンカーボネート系化合物としては、例えば、ビニレンカーボネート(1,3−ジオキソール−2−オン)、メチルビニレンカーボネート(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、エチルビニレンカーボネート(4−エチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オンあるいは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンなどが挙げられる。
ビニルエチレンカーボネート系化合物としては、例えば、ビニルエチレンカーボネート(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
メチレンエチレンカーボネート系化合物としては、4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは4,4−ジエチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが挙げられる。
これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、ビニレンカーボネートが好ましい。高い効果が得られるからである。
また、溶媒は、スルトン(環状スルホン酸エステル)や、酸無水物を含有していてもよい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。
スルトンとしては、例えば、プロパンスルトンあるいはプロペンスルトンなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、プロペンスルトンが好ましい。また、溶媒中におけるスルトンの含有量は、0.5重量%以上3重量%以下であるのが好ましい。いずれの場合においても、高い効果が得られるからである。
酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸あるいは無水マレイン酸などのカルボン酸無水物や、無水エタンジスルホン酸あるいは無水プロパンジスルホン酸などのジスルホン酸無水物や、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸あるいは無水スルホ酪酸などのカルボン酸とスルホン酸との無水物などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、無水スルホ安息香酸が好ましい。また、溶媒中における酸無水物の含有量は、0.5重量%以上3重量%以下であるのが好ましい。いずれの場合においても、高い効果が得られるからである。
溶媒の固有粘度は、25℃において10.0mPa・s以下であるのが好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。なお、溶媒に電解質塩を溶解させた状態の固有粘度(いわゆる電解液の固有粘度)も、同様の理由により、25℃において10.0mPa・s以下であるのが好ましい。
[実施例]
負極作製
1.スラリー調製
スラリー調製は5Lのプラネタリーディスパを用いた。
天然黒鉛960gと、Super−P(導電性カーボン、BET比表面積62m/g)10gに、1%CMC(CMCを純水で溶解させた)を450g加え30分間混合した。次いで、1%−CMC水溶液300gを加えて30分間混練した後、更に、1%−CMC250gを加えて30分間混練した。その後、バインダとなるSBR(40%乳化液)50gを加えて30分間混合した後、真空脱泡30分間を行った。こうして固形分濃度45%のスラリーを調製した。
2.塗工・乾燥
スラリー塗工にはダイコーターを用いた。乾燥後の塗布重量が11.0mg/cmになるように、上記スラリーを銅箔(厚み10μm)の片面に塗布し乾燥した。次いで、反対面(未塗工面)に、同様に塗布重量が11.0mg/cmになるように、上記スラリーを銅箔に塗布し乾燥した。こうして得た両面塗工(22.0mg/cm)した負極ロールを、真空乾燥オーブンで120℃、12時間乾燥し、電極を得た。
3.プレス
小型プレス機を用いた。上下ロールのギャップ(隙間)を調整し、上記負極をプレス密度が1.45±0.05g/cmになるように圧縮した。
4.スリット
電極塗布面積(表面:58mm×372mm、裏面:58mm×431mm)とタブ溶接余白が得られるように電極をスリットし、負極A−1を得た。
正極作製
1.スラリー調製
スラリー調製は5Lのプラネタリーディスパを用いた。NCM523(Umicore社製、組成式 LiNi0.5Co0.2Mn0.3)920gと、Super−P(TIMCAL社製導電性カーボン)20g、KS−6(TIMREX社製鱗片状黒鉛)20gを10分間混合した後、N−メチルピロリドン(NMP)を100g加え更に20分間混合した。
次いで、8%−バインダ溶液150gを加えて、30分間混練した後、更に8%−バインダ溶液150gを加えて30分間混練した。その後、8%−バインダ溶液200gを加えて30分間混練した。次いで、NMPに溶解した溶液を80g加えて30分間混練した。その後、粘度調整のためNMP27gを加えて30分間混合した後、真空脱泡30分間を行った。こうして固形分濃度60%のスラリーを調製した。
2.塗工・乾燥
スラリー塗工にはダイコーターを用いた。乾燥後の塗布重量が19.0mg/cmになるように、上記スラリーをアルミ箔(厚み20μm、幅200mm)の片面に塗布し乾燥した。次いで、反対面(未塗工面)に、同様に塗布重量が19.0mg/cmになるように、上記スラリーをアルミ箔に塗布し乾燥した。
こうして得た両面塗工(38.0mg/cm)した正極ロールを、真空乾燥オーブンで130℃、12時間乾燥した。
3.プレス
35トンプレス機を用いた。上下ロールのギャップ(隙間)を調整し、上記正極をプレス密度が2.9±0.05g/cmになるように圧縮した。
4.スリット
電極塗布面積(表面:56mm×334mm、裏:56mm×408mm)とタブ溶接余白が得られるように電極をスリットし正極C−1を得た。
電池作製
捲回型電池(設計容量1Ah)
1.捲回
セパレータには、前記多孔質耐熱層付セパレータ(60.5mm×450mm)を用いた。
負極A−1(表面/裏面)とセパレータ(多孔質絶縁層が正極C−1と接するように配置)と正極C−1(裏面/表面)とセパレータ(多孔質絶縁層が正極C−1と接するように配置)を重ねて捲回した後プレス成型した。次いで、正極C−1の余白部分にアルミニウム製タブを超音波接合機で接合し、負極A−1の余白部分にニッケル製タブを超音波接合機で接合した。これをラミネートシートで挟み込み、3辺を加熱シールした。
電解液作製
非水溶媒としてエチレンカーボネート(以下、EC)とジメチルカーボネート(以下、DMC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とを混合し、混合溶媒を作成した。電解液の作製にあたっては、電解液中に含まれるLiPF6を、最終的に得られる非水電解液中における電解質濃度が1モル/リットルとなるように溶解させて作成した。比較例の電解液として無添加の電解液を作成した。また、上記の混合溶媒にスルホン化合物を添加し、実施例の非水電解液を作成した。スルホン化合物の添加量(すなわち、最終的な非水電解液の全量に対する含有量)は、0.5質量%とした試料1、1.0質量%とした試料2、1.5質量%とした試料3を作成した。試料1〜試料3は実施例の電解液である。また、最終的な非水電解液において、EC、DMC及びEMCの質量比は、EC:DMC:EMC=30:35:35(質量比)となるように調整した。比較例の電池として無添加の電解液で作製した電池を電池0とし、実施例の電池として試料1〜3で作製した電池を電池1〜電池3とする。
2.電解液注液
電解液注液前に、上記を真空乾燥機にて、70℃×12h減圧乾燥した。電解液(1mol−LiPF6、EC/DEC=3/7(vol.比)、添加剤VC 1.0質量%)4.7±0.1gを注液した後、真空引きしながら加熱シールした。
3.エージング処理
電解液注液後の電池0〜3を40℃の雰囲気温度下で12h保持した。次いで、40℃雰囲気温度下で0.05Cで3.0Vまで定電流充電し、0.1Cで3.4Vまで定電流充電し、0.24Cで3.7Vまで定電流充電し、40℃雰囲気温度下で、24h休止した。その後、40℃雰囲気温度下で0.5Cで4.2Vまで定電流定電圧充電(0.5C−CCCV)し、30分間休止した後、3.0Vまで0.5Cで定電流放電(0.5C−CC)した。更に、0.5C−CCCVで4.2Vの充電と、0.5C−CCで3.7Vの放電を行い、3.7Vまで充電した。そして、40℃雰囲気温度下で7日間保存した。こうして電池0〜3を得た。
[XPSによる負極及び正極表面の電子状態分析]
リチウムイオン二次電池の負極や正極表面の電子状態は、1〜10nm程度の検出深さを持つX線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、以下、「XPS」と称する。)を用いて分析ができる。正極材の劣化は、電解液に接している活物質表面や、表面の結晶構造がダメージを受けることで進行する。正極活物質表面では、充電過程のたびに電解液が少しずつ酸化され、活物質表面に金属が溶出してしまうからである。活物質表面はリチウムイオンおよび電子の伝導に直接関わるため、その劣化は電池の容量低下や出力低下の原因となる。そこで、XPS測定では、負極や正極の表面に付着した元素の原子組成百分率(atom%)を検出し、負極表面や正極表面の状態を観測する。
図2は、電池0〜3の保存後における原子組成百分率を表す表、図3は、各電池における負極表面及び正極表面の硫黄原子Sの原子組成百分率を表すグラフ、図4は、各電池における正極表面のNi,Co,Mnの原子組成百分率を表すグラフである。
作製した電池を充電すると、負極表面においてスルホン化合物が電気化学反応し、SEIと呼ばれる安定被膜が形成される。保存後の電池1〜3では、0.1atom%程度のS原子が検出された。ここで、スルホン化合物の添加量が増加しても、負極表面において検出されるS原子の原子組成百分率はあまり変化しないことが分かる。
一方、正極には電気化学反応による安定な被膜が形成されることはないが、スルホン化合物の添加量の増加に伴い、負極表面よりも多くのS原子が検出された。このことから、正極表面では、以下の現象が生じていると考えられる。一つは、スルホン化合物の添加量の増加に伴い、負極表面における電気化学反応で十分に反応しなかったスルホン化合物のアニオンが正極表面に付着し、正極活物質表面をコーティングする場合である。もう一つは、負極表面に形成されたSEIの一部が保存中に化学反応により分解し、S原子を含むアニオンが正極に移動することで、正極活物質表面をコーティングする場合である。
いずれの場合も、正極活物質表面にスルホン化合物由来のS原子を含むアニオンが付着することを意味する。そして、図4に示すように、正極表面で検出されるNi,Co,Mnの原子組成百分率は、スルホン化合物の添加量増加に伴い、減少しており、特にNiとCoの減少が顕著である。これは、正極表面にスルホン化合物由来のS原子を含むアニオンが、正極表面における金属原子の溶出を抑制しているためであると推測される。以上から、スルホン化合物は、負極表面にSEIを形成するだけでなく、正極表面において金属溶出を抑制可能な被膜を形成しうることが理解された。
スルホン化合物を電解液に添加する際のスルホン化合物添加量は、負極表面において検出されるS原子の原子組成百分率で、正極表面において検出されるS原子の原子組成百分率を除した値が2以上となる添加量が好ましく、更に好ましくは3以上となる添加量が好ましい。
[電池の抵抗]
次に、電池0〜3の保存前後における直流抵抗DCIR及び交流抵抗EIS-Z"を測定した。図5は、電池0〜3の保存前後における直流抵抗DCIR及び交流抵抗EIS-Z"を、電池0を基準に規格化した表である。尚、規格化とは、各電池の値を電池0の値で除し、電池0を100としたときの相対値を示す。
(直流抵抗DCIR)
直流抵抗の測定にあっては、以下の方法で充放電を行った後、25℃にて初期の電池抵抗を測定した。
まず、SOC(State of Charge)50%から放電レート0.2CでCC10s放電を行い、充電レート0.2CでCC−CV10s充電を行った。
次に、放電レート1CでCC10s放電を行い、放電レート2CでCC−CV10s充電を行った。
次に、放電レート2CでCC10s放電を行い、充電レート2CでCC−CV10s充電を行った。
次に、放電レート5CでCC10s放電を行い、充電レート5CでCC−CV10s充電を行った。こうして各電池0〜3を得た。
なお、CC10s放電とは、定電流(Constant Current)にて10秒間放電することを意味する。CC−CV10s充電とは、定電流定電圧(Constant Current - Constant Voltage)にて10秒間充電することを意味する。
各充放電休止電流と各充放電休止電圧とから直流抵抗を求め、得られた直流抵抗を、電池の初期の電池抵抗とした。また、電池を60℃で1週間保管した後、上記の方法により、保存後の電池抵抗を求め、保存前後の直流抵抗を図5のDCIR欄に示した。各電池の値は、電池0を基準に規格化したものである。
(交流抵抗EIS-Z")
交流抵抗の測定にあっては、電池0〜3の交流インピーダンスを以下の方法によって測定した。電池のSOCを50%に調整し、25℃におけるBode-Plotを測定した(BioLogic社、VSP-300)。
周波数を0.1Hzから6MHzまで変化させ、虚数部の抵抗値と応答周波数からBode-Plotを求めた。さらに、Bode-Plotにより、10Hzにおける抵抗値を抽出した。また、電池を60℃で1週間保管した後、上記の方法により、保存後のEISを求め、保存前後の交流抵抗を図5のEIS-Z"(10Hz)欄に示した。各電池の値は、電池0を基準に規格化したものである。尚、EIS-Z"(10Hz)は、主に正極に由来する抵抗値として表される。
図5の表に示すように、電池1〜電池3における、保存前後の直流抵抗DCIRは、スルホン化合物の添加前の電池0に比べて低い値を取っている。よって、電池全体の抵抗が低下していることが分かる。また、保存前後のEIS-Z"(10Hz)は、スルホン化合物の添加前の電池0に比べて低い値を取っている。よって、特に正極に由来する抵抗が顕著に低下していることが分かる。また、電池1〜3では、スルホン化合物の添加量が1.5質量%の電池3の方が、0.5質量%の電池1よりも直流抵抗及び交流抵抗共に低下量が大きいため、スルホン化合物の添加による影響が顕著であるといえる。
図6は、電池0〜3の保存後のEIS-Z"(10Hz)を表すグラフである。このグラフから、スルホン化合物添加量が0.5wt%〜1.0wt%の範囲では、電池0(0wt%)に対して正極における保存後の抵抗値が15%以上低下している。また、電池1(0.5wt%)と電池2(1.0wt%)との間では、大きな変化はないが、電池2(1.0wt%)と電池3(1.5wt%)との間では、正極における抵抗値が大きく低下しており、電池0に対して40%以上低下していることが分かる。
よって、正極活物質表面における金属の溶出を抑制し、かつ、正極に由来する抵抗値を低下させるには、保存後の負極表面において検出されるS原子の原子組成百分率と正極表面において検出されるS原子の原子組成百分率との比が2以上となることが好ましく、3以上が更に好ましい。また、スルホン化合物添加量として0.5wt%以上が好ましく、更に好ましくは1.5wt%以上が好ましい。
1 リチウムイオン二次電池
10 電池素子
11 正極
12 負極
13 セパレータ
21 正極リード
22 負極リード

Claims (3)

  1. リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極及び負極と、セパレータと、電解液と、これら電池要素群を収容するケースと、を有するリチウムイオン二次電池であって、
    前記ケースへの収容前電解液中にヘキサフルオロリン酸リチウムとメタンジスルホニルジフルオリド(以下、スルホン化合物)とを有し、
    X線光電子分光法(以下、XPS)により、前記ケース内に前記電池要素群を収容し所定期間保存後のリチウムイオン二次電池の正極表面から検出される硫黄原子の原子組成百分率(以下、Satom%)を、前記所定期間保存後のリチウムイオン二次電池の負極表面から検出されるSatom%で除した値が2以上であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池において、
    前記除した値が3以上であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  3. 請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池において、
    前記正極の正極活物質は、LiNiaCobMncO2(ただし式中、0<a<1、0<b<1、0<c<1であり、a+b+c=1を満たす)であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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