JP2020073424A - α−Ga2O3単結晶、その製造装置、および、それを用いた半導体素子 - Google Patents

α−Ga2O3単結晶、その製造装置、および、それを用いた半導体素子 Download PDF

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【課題】 半導体素子に適用可能なα−Ga2O3単結晶、その製造装置、および、それを用いた半導体素子を提供すること。【解決手段】 本発明によるα−Ga2O3単結晶は、5×1018cm−3以下であり、波長300nm以上の光に対する吸収係数は、200cm−1以下である。【選択図】 図6

Description

本発明は、α−Ga単結晶、その製造装置、および、それを用いた半導体素子に関する。
酸化ガリウムは、α、β、δ、εおよびγの5つの結晶構造を有することが分かっている。そのうちβ−Gaは、4.9eVと大きなバンドギャップを有すること、ドーピングによって導電性を付与できること、熱力学的に最も安定であり、融液成長による単結晶基板を製造可能であることから高耐圧・低消費電力の次世代パワー半導体材料等として大きな注目を集めている。最近、ハライド気相成長法(HVPE)により大きな成長速度で良質なβ−Ga単結晶が得られることが報告されている(例えば、非特許文献1を参照。)。
一方、α−Gaのバンドギャップは約5.3eVであり、β−Gaのそれより大きく、α−Gaもまた有望な材料とされている。しかしながら、α−Gaは準安定相であるため、融液成長による単結晶基板の製造ができない。そのため、α−Gaの単結晶膜は、ミスト化学気相成長(CVD)法を用いた、異種基板上のエピタキシャル成長(ヘテロエピタキシャル成長)によって製造されている(例えば、非特許文献2〜4を参照。)。
しかし、非特許文献2〜4によれば、いずれも、原料に有機化合物を用いており、その製造温度が低温であるため、得られるα−Gaは炭素(C)、水素(H)等で汚染が著しく、実用には向かない。また、非特許文献2〜4によれば、得られるα−Gaには面内回転ドメインが混入しており、品質に問題がある。さらに、非特許文献2〜4によれば、ミストCVD法は、α−Gaの成長速度が最大約1μm/時間と非常に遅く、製造コストがかかるだけでなく、製造中にサファイア基板からAlが拡散するという問題もある。
Y.Oshimaら,Journal of Crystal Growth 410,53−58,2015 D.Shinoharaら,Jpn.J.Appl.Phys.47,2008,7311−7313 T.Kawaharamuraら,Jpn.J.Appl.Phys.51,2012,040207 K.Akaiwaら,Jpn.J.Appl.Phys.51,2012,070203
以上より、本発明の課題は、半導体素子に適用可能なα−Ga単結晶、その製造装置、および、それを用いた半導体素子を提供することである。
本発明によるα−Ga単結晶は、カーボン濃度が5×1018cm−3以下であり、波長300nm以上の光に対する吸収係数が200cm−1以下であり、これにより上記課題を解決する。
塩素濃度は、1×1018cm−3以下であってもよい。
4価の価数を有する元素をさらに含有してもよい。
本発明によるハライド気相成長法によりα−Gaを製造する製造装置は、反応炉と、前記反応炉を加熱するヒータとを備え、前記反応炉において、ガリウムのハロゲン化物と酸素原料とを反応させ、基板上にα−Gaを成長し、これにより上記課題を解決する。
前記反応炉は、ガリウム原料供給源と、酸素原料供給源と、ガス排出部と、前記基板を設置する基板ホルダとをさらに備え、前記ガリウム原料供給源は、内部にガリウム金属が設置されるようになっており、前記ガリウム原料供給源は、ハロゲンガスまたはハロゲン化水素ガスが前記ガリウム原料供給源に供給され、前記ガリウム原料供給源内にて前記ガリウム金属から前記ガリウムのハロゲン化物を生成し、前記ガリウムのハロゲン化物を前記反応炉に供給するよう制御され、前記酸素原料供給源は、O、HOおよびNOからなる群から少なくとも1つ選択されるガスを前記酸素原料として前記反応炉に供給するよう制御されてもよい。
前記ヒータは、前記反応炉内が250℃以上650℃未満の温度範囲となるよう制御されてもよい。
前記ガス排出部は、前記反応炉内の前記ガリウムのハロゲン化物の分圧が0.05kPa以上10kPa以下であり、前記酸素原料の分圧が0.25kPa以上50kPa以下となるよう制御されてもよい。
前記ガリウム原料供給源は、前記反応炉内の温度が成膜温度に到達してから、かつ、成膜中にのみ、前記ハロゲンガスまたはハロゲン化水素ガスを前記ガリウムガス供給源に供給し、前記ガリウムのハロゲン化物を前記反応炉に供給するよう制御され、前記酸素原料供給源は、前記反応炉の昇温から降温までの間、前記酸素原料を前記反応炉に供給するよう制御されてもよい。
本発明による半導体素子は、上述のα−Ga単結晶を備え、これにより上記課題を解決する。
前記半導体素子は、発光素子、ダイオード、紫外線検出素子、および、トランジスタからなる群から選択されてもよい。
本発明によるα−Ga単結晶は、カーボン濃度が5×1018cm−3以下に制御されているので、不純物濃度がきわめて低く、α−Ga本来の特性を発揮できる。このようなα−Ga単結晶は半導体素子に好適である。本発明によるα−Gaの製造装置によれば、ハライド気相成長法を用いることにより不純物濃度の低いα−Gaが得られる。さらに、その成長速度は極めて速いので、厚膜あるいは基板を得ることもできる。
本発明のハライド気相成長法(HVPE)を実施する気相成長装置を示す模式図 本発明のα−Ga単結晶を製造するフローチャートを示す図 本発明のα−Ga単結晶を備えた発光素子を示す模式図 本発明のα−Ga単結晶を備えたトランジスタを示す模式図 本発明のα−Ga単結晶を備えた紫外線検出素子を示す模式図 実施例1で得られた膜のω−2θスキャンX線回折パターンを示す図 比較例2で得られた膜のω−2θスキャンX線回折パターンを示す図 実施例1で得られた膜のX線極点図測定の結果を示す図 実施例1で得られた膜の光吸収係数スペクトルを示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明のα−Ga単結晶およびその製造方法について詳述する。
本発明のα−Ga単結晶によれば、結晶中に含有されるカーボン濃度は、5×1018cm−3以下に制御される。これにより、不純物濃度がきわめて低いので、α−Ga本来の特性、すなわち、大きなバンドギャップ(5.3eV)および高い光透過性を発揮するので、半導体素子、特に発光素子に適用できる。
好ましくは、本発明のα−Ga単結晶によれば、結晶中に含有されるカーボン濃度は、6×1017cm−3未満に制御される。これにより、大きなバンドギャップ(5.3eV)および高い光透過性が確実に得られるので、半導体素子、特に発光素子に有利である。
なお、下限に特に制限はないが、1×1015cm−3以上であってもよい。上述の範囲のカーボン濃度であれば、半導体素子へ適用しても、動作に支障はない。
本発明のα−Ga単結晶によれば、結晶中に含有される水素濃度は、5×1018cm−3以下に制御される。これにより、不純物濃度がきわめて低いので、α−Ga本来の特性を発揮するので、半導体素子に適用できる。
好ましくは、本発明のα−Ga単結晶によれば、結晶中に含有される水素濃度は、5×1017cm−3未満に制御される。これにより、大きなバンドギャップ(5.3eV)および高い光透過性が確実に得られるので、半導体素子、特に発光素子に有利である。
なお、下限に特に制限はないが、1×1016cm−3以上であってもよい。上述の範囲の水素濃度であれば、半導体素子へ適用しても、動作に支障はない。
本発明のα−Ga単結晶によれば、結晶中に含有されるアルミニウム濃度は、4×1016cm−3以下に制御される。これにより、不純物濃度がきわめて低いので、α−Ga本来の特性を発揮するので、半導体素子に適用できる。
好ましくは、本発明のα−Ga単結晶によれば、結晶中に含有されるアルミニウム濃度は、4×1015cm−3未満に制御される。これにより、大きなバンドギャップ(5.3eV)および高い光透過性が確実に得られるので、半導体素子、特に発光素子に有利である。
なお、下限に特に制限はないが、1×1014cm−3以上であってもよい。上述の範囲のアルミニウム濃度であれば、半導体素子へ適用しても、動作に支障はない。
本発明のα−Ga単結晶によれば、結晶中に含有される塩素濃度は、1×1018cm−3以下に制御される。これにより、不純物濃度がきわめて低いので、α−Ga本来の特性を発揮するので、半導体素子に適用できる。
好ましくは、本発明のα−Ga単結晶によれば、結晶中に含有される塩素濃度は、2×1017cm−3以下に制御される。これにより、大きなバンドギャップ(5.3eV)および高い光透過性が確実に得られるので、半導体素子、特に発光素子に有利である。
なお、下限に特に制限はないが、1×1015cm−3以上であってもよい。上述の範囲の塩素濃度であれば、半導体素子へ適用しても、動作に支障はない。
当然のことながら、α−Ga単結晶は、これら特定の不純物濃度をすべて満たすことが好ましいが、半導体素子用途を考慮すれば、少なくともカーボン濃度、さらには、カーボン濃度と水素濃度、さらには、カーボン濃度、水素濃度およびアルミニウム濃度を満たせばよい。後述する本発明の製造方法を採用すれば、例えば、カーボン濃度が6×1017cm−3未満であり、水素濃度が5×1017cm−3未満であり、アルミニウム濃度が4×1015cm−3未満であり、塩素濃度が1.5×1017cm−3以下であるα−Ga単結晶を提供できる。
本発明のα−Ga単結晶によれば、少なくともカーボン濃度が5×1018cm−3以下に制御されるので、波長300nm以上を有する紫外および可視光等の光に対する吸収係数は500cm−1以下である。これにより、本発明のα−Ga単結晶を半導体素子の中でも発光素子に適用する場合、光を効果的に透過できるので、有利である。より好ましくは、本発明のα−Ga単結晶における、波長300nm以上を有する紫外および可視光等の光に対する吸収係数は200cm−1以下である。これにより、本発明のα−Ga単結晶を発光素子に適用する場合、発光素子からの発光光をより効果的に取り出すことができる。
なお、下限に特に制限はないが、1cm−1上であればよい。上述の範囲の吸収係数を有するα−Ga単結晶を発光素子等の半導体素子へ適用すれば、高い発光効率を維持することができる。さらに、このようなα−Ga単結晶をトランジスタ等の半導体素子へ適用すれば、大きなバンドギャップ(5.3eV)に基づいて高耐圧・低損失を可能にするパワーデバイスが提供される。
本発明のα−Ga単結晶のサイズ(厚さおよび主面の面積)に制限はないが、例えば、本発明のα−Ga単結晶を異種基板上に形成したものを、異種基板を除去せずに半導体素子の基板として用いる場合、好ましくは、主面の面積が10cm以上であるサイズを有する。また、本発明のα−Ga単結晶を異種基板から分離して自立基板として用いる場合、さらに厚さが200μm以上30mm以下であることが望ましい。この範囲の厚さであれば、本発明のα−Ga単結晶は自立基板とすることができ、さらにスライスによって一度に複数の自立基板を製造することもできるので、取り扱いが簡便であり、実用的である。本発明のα−Ga単結晶が上述のサイズを有する自立基板である場合、この上に、本発明のα−Ga単結晶からなる膜(例えば、厚さ100nm〜50μm)が形成されてもよい。
本発明のα−Ga単結晶は、さらに、4価の価数を有する元素をさらに含有してもよい。これにより、α−Ga単結晶の抵抗率を制御することができる。詳細には、4価の価数を有する元素は、α−Ga単結晶中のGaと置換し得、n型ドーパントとして機能し得る。このような4価の価数を有する元素は、Si、Hf、Ge、Sn、TiおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。これらの元素はGaと容易に置換し得るので、導電率を制御しやすい。中でも、Siは、Gaと容易に置換し得るので好ましい。
さらに好ましくは、本発明のα−Ga単結晶における4価の価数を有する元素の濃度は、1×1015cm−3以上1×1019cm−3以下に制御される。この範囲であれば、本発明のα−Ga単結晶の電気抵抗率が低くなり得るので、半導体素子のn型基板として機能し得る。
上述してきたように、本発明のα−Ga単結晶によれば、含有されるカーボン等の不純物濃度がきわめて低く制御されているので、α−Ga単結晶本来の特性を優位に発揮し得る。さらに、4価の価数を有する元素を含有することにより、n型導電性を示すよう抵抗率が制御されるので、発光素子、ダイオード、紫外線検出素子およびトランジスタ等の半導体素子の半導体基板として機能し得る。このような本発明のα−Ga単結晶は、例えば、ハライド気相成長法(HVPE)を採用して製造され得る。
次に、本発明のα−Ga単結晶を、ハライド気相成長法(HVPE)を用いて製造する方法を図1および図2を参照して、説明する。
図1は、本発明のハライド気相成長法(HVPE)を実施する気相成長装置を示す模式図である。
図2は、本発明のα−Ga単結晶を製造するフローチャートを示す図である。
本発明の気相成長装置100は、少なくとも、密閉された反応炉110と、反応炉110を加熱するヒータ120とを備える。反応炉110は、原料と反応しない任意の反応炉が適用されるが、例示的には、石英管であり得る。ヒータ120は少なくとも700℃まで加熱可能な任意のヒータが適用されるが、例示的には、抵抗加熱式のヒータであり得る。
反応炉110は、少なくとも、ガリウム原料供給源130と、酸素原料供給源140と、ガス排出部150と、その上にα−Gaを成長させる基板を設置する基板ホルダ160とを備える。ガリウム原料供給源130には内部にガリウム金属170が載置されており、ハロゲンガスまたはハロゲン化水素ガスが供給される。一方、酸素原料供給源140から、O、HOおよびNOからなる群から選択される酸素源が供給される。なお、これらは不活性ガスであるキャリアガスとともに供給されてもよい。不活性ガスは、窒素(N)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等である。
ガス排出部150は、例えば、拡散ポンプ、ロータリーポンプ等の真空ポンプに接続されていてもよく、反応炉110内の未反応のガスの排出だけでなく、反応炉110内を減圧下に制御してもよい。これにより、気相反応の抑制、成長速度分布が改善され得る。
ステップS210:図1の気相成長装置100を用いて、ハライド気相成長法(HVPE)により、基板上に本発明のα−Gaを成長する。
ステップS210において、原料には、少なくとも、ガリウム原料と酸素原料とを用いる。ガリウム原料は、ガリウム(Ga)のハロゲン化物を含み、酸素原料は、O、HOおよびNOからなる群から少なくとも1つ選択される。ガリウムのハロゲン化物とこれらの酸素原料とは容易に反応し、酸化ガリウムを形成し得る。なお、Gaのハロゲン化物は、ガリウム金属170とハロゲンガスまたはハロゲン化水素ガスとが反応し、容易に形成される。
好ましくは、Gaのハロゲン化物は、GaClおよび/またはGaClを含む。これらのハロゲン化物は、反応性に優れており、酸化ガリウムの成長を促進し得る。
好ましくは、酸素原料は、Oおよび/またはHOである。これらの酸素原料は、例えば、GaClおよび/またはGaClとの反応性がよく、次式のいずれかにしたがって、酸化ガリウムの成長を促進し得る。
2GaCl(g)+(3/2)O(g)→Ga(s)+Cl(g)
2GaCl(g)+3HO(g)→Ga(s)+2HCl(g)+2H(g)
2GaCl(g)+(3/2)O(g)→Ga(s)+3Cl(g)
2GaCl(g)+3HO(g)→Ga(s)+6HCl(g)
ステップS210において、250℃より高く650℃未満の温度範囲の成長温度でα−Gaを成長する。250℃以下の成長温度では、成長速度が大きく低減するとともに、原料の表面マイグレーションの低下により結晶性が著しく低下する場合がある。650℃以上の成長温度では、安定なβ−Gaが生成し、α−Gaが得られない場合がある。
ステップS210において、好ましくは、350℃以上高く600℃以下の温度範囲の成長温度でα−Gaを成長する。この温度範囲であれば、β−Gaが成長することなく、α−Gaを得ることができる。
なお、ドーパントとして4価の価数を有する元素を含有したα−Gaを得る場合、4価の価数を有する元素を含有する原料を供給すればよい。4価の価数を有する元素を含有する原料がガスである場合には、ガリウム原料供給源から混合して流してもよいし、別途原料供給源を設けてもよい。4価の価数を有する元素を含有する原料が固体あるいは液体である場合には、ガリウム金属170のように載置してもよい。
このような4価の価数を有する元素は、上述したように、Si、Hf、Ge、Sn、TiおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。これらの元素はGaと容易に置換し得るので、導電率を制御しやすい。
例えば、4価の価数を有する元素がSiである場合、Siを含有する原料として、シラン(SiH)、四塩化ケイ素(SiCl)、トリクロロシラン(TCS)、ジクロロシラン(DCS)などを用いることができ、これらを窒素キャリアガスとともに流してもよい。あるいは、反応炉110として石英管を用いる場合、石英からSiを拡散させてもよい。
ステップS210において、ガリウム原料の分圧は、0.05kPa以上10kPa以下の範囲であり、酸素原料の分圧は、0.25kPa以上50kPa以下の範囲で行われる。この範囲であれば、反応が進み、α−Ga単結晶を得ることができる。詳細には、ガリウム原料の分圧が0.05kPa未満であり、酸素原料の分圧が0.25kPa未満であると、反応が進まず、α−Gaが成長しない場合がある。ガリウム原料の分圧が10kPaを超え、酸素原料の分圧が50kPaを超えると、成長速度が大きすぎるため、α−Gaの多結晶化、パーティクルの発生、あるいは、結晶性の低下が生じ得る。
ステップS210において、好ましくは、ガリウム原料の分圧は、0.1kPa以上2.0kPa以下の範囲であり、酸素原料の分圧は、0.5kPa以上10kPa以下の範囲で行われる。この範囲であれば、反応が進み、α−Ga単結晶を確実に得ることができる。
ステップS210において、α−Gaの成長速度は、5μm/時間以上1mm/時間の範囲に制御される。α−Gaの成長速度が5μm/時間未満である場合、成長速度が小さいため、反応が進まずα−Gaが得られない場合がある。α−Gaの成長速度が1mm/時間を超えると、成長速度が大きすぎるため、α−Gaが多結晶化する場合がある。
ステップS210において、基板は、サファイア基板であり得る。サファイア基板の結晶構造は、α−Gaのそれと同じコランダム型であるので、任意の面方位でα−Gaを得ることができる。具体的には、サファイア基板は、(0001)、M(10−10)、A(11−20)、R(10−12)、および、これらの傾斜基板からなる群から選択される基板である。これらの基板上であれば、基板と同じ面方位を有するα−Gaを確実に成長させることができる。ステップS210で得られたサファイア基板上のα−Gaを、異種基板を除去せずにそのまま引き続いて半導体素子等のデバイス製造に用いることができる。さらに、α−Ga自立基板を製造する場合には、後述するステップS220以降の工程により行うことができる。
続いて図2を参照する。
ステップS220:ステップS210の成長するステップに続いて、基板を除去する。
ステップS210において、例えば、α−Gaの厚さが200μm以上まで成長させた場合、ステップS220において基板を除去することにより、α−Gaの自立膜あるいは基板を得ることができる。上述の膜厚は、α−Gaが破損することなく基板を除去できる例示的な膜厚であり、これに限らない。
なお、ステップS220で得たα−Gaの自立膜あるいは基板を、ステップS210の基板として用いて、再度ステップS210を行ってもよい。これにより、α−Gaバルク単結晶が得られる。
ステップS230:ステップS220に続いて、基板から除去されたα−Gaをスライスする。
例えば、ステップS220で得たα−Gaの自立膜あるいは基板が十分に厚い場合(例えば、3mm以上)、これをマルチワイヤソー等によりスライスすることで、複数のα−Gaの自立膜あるいは基板を得ることができる。なお、ステップS230は、ステップS210に続いて行ってもよい。
上述したように、本発明によるα−Gaの製造方法によれば、ハライド気相成長法を用いることにより不純物濃度の低いα−Gaが得られる。さらに、その成長速度は極めて速いので、厚膜あるいは基板を得ることもできる。また、上述のステップS210の条件を適宜選択することにより、単結晶または多結晶のα−Gaを得ることができる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明のα−Ga単結晶を用いた半導体素子について詳述する。
上述したように本発明のα−Ga単結晶は、発光素子、ダイオード、紫外線検出素子およびトランジスタからなる群から選択される半導体素子に適用される。
図3は、本発明のα−Ga単結晶を備えた発光素子を示す模式図である。
発光素子300は、少なくとも、本発明のα−Ga単結晶310と、α−Ga単結晶310の一方の主面上に形成された発光層320と、α−Ga単結晶310のもう一方の主面上に形成されたn電極330と、発光層320上に形成されたp電極340とを備える。
α−Ga単結晶310は、実施の形態1で説明した本発明のα−Ga単結晶であるが、好ましくは、4価の価数を有する元素をさらに含有し、n型の導電性を示す。例えば、α−Ga単結晶310は、Si、Hf、Ge、Sn、TiおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する。α−Ga単結晶310の厚さは、例えば、100μm以上1000μm以下である。
発光層320は、例えば、n型クラッド層、活性層、p型クラッド層およびp型コンタクト層からなり、発光させるべき所望の波長を有する半導体材料が適宜選択される。例えば、青色発光の場合、n型クラッド層としてn型GaN(4μm)を選択し、活性層としてInGaN/GaNの多重子井戸構造を選択し、p型クラッド層としてp型AlGaN(100nm)を選択し、p型コンタクト層としてp型GaN(200nm)を選択し、活性層の組成と構造とを適宜選択すればよい。
さらに、発光素子300は、p電極340においてワイヤボンディング370によりリード380が接続されており、外部から電流が供給されるようになっている。
このような発光素子300の製造方法について説明する。発光素子300は、実施の形態1で得たα−Ga単結晶310上に、気相エピタキシャル成長法、液相エピタキシャル成長法、ハライド気相成長法、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)等の既存の成長技術を用いて、発光層320を形成し、次いで、真空蒸着、スパッタリング等の既存の電極形成技術により、n電極330およびp電極340を形成することによって製造される。
本発明の発光素子300によれば、実施の形態1で詳述したように、紫外、可視光に対して透明なα−Ga単結晶310を用いるので、紫外および可視光の発光光を、α−Ga単結晶310を通して高効率に外部へ取り出すことができる。また、本発明の発光素子300によれば、4価の価数を有する元素の添加量を制御することにより、α−Ga単結晶310の導電率を制御できるので、発光素子300の縦方向に電流を流すことができる。その結果、発光素子300の層構造および製造工程を簡略化できるので好ましい。
なお、本発明の発光素子は図3の構造に限らない。発光層320として、他のダブルヘテロ構造、量子井戸構造等既存の発光層を採用することができる。また、本発明のα−Ga単結晶310と発光層320との間に界面制御層を設けてもよい。例えば、発光層320がAlGaNである場合に、界面制御層としてAlGaNバッファ層をα−Ga単結晶310上に形成し、結晶性が高く、欠陥の少ないAlGaNを形成し、発光効率を向上させることができる。
図4は、本発明のα−Ga単結晶を備えたトランジスタを示す模式図である。
トランジスタ400は、少なくとも、本発明のα−Ga単結晶410と、α−Ga単結晶410の一方の主面の一部に形成されたソース420と、ソース420と対向して形成されたドレイン430と、ソース420とドレイン430との間に形成されたチャネル440と、チャネル440上に形成された絶縁膜450と、絶縁膜450上に形成されたゲート電極460とを備える。
α−Ga単結晶410は、実施の形態1で説明した本発明のα−Ga単結晶であるが、好ましくは、4価の価数を有する元素をさらに含有し、n型の導電性を示す。例えば、α−Ga単結晶410は、Si、Hf、Ge、Sn、TiおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する。α−Ga単結晶410の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。
なお、α−Ga単結晶410は、単一の単結晶体からなってもよいし、ノンドープα−Ga単結晶上にドープα−Ga単結晶膜からなる複数の単結晶体からなってもよい。図4に示すように、α−Ga単結晶410は、サファイア基板401上の単結晶膜であってもよい。
ソース420は、α−Ga単結晶410の一部に4価の価数を有する元素を高濃度に注入されたn+領域470aと、n+領域470a上に形成された電極480aとを備える。4価の価数を有する元素は、Si、Hf、Ge、Sn、TiおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、その注入濃度は、1×1015cm−3以上1×1019cm−3以下の範囲であり得る。電極480aは、Al、Ti、Pt、Ru、Au、および、これらの合金からなる群から選択される金属材料である。
ドレイン430は、α−Ga単結晶410の一部に4価の価数を有する元素を高濃度に注入されたn+領域470bと、n+領域470b上に形成された電極480bとを備える。n+領域470aと同様に、4価の価数を有する元素は、Si、Hf、Ge、Sn、TiおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、その注入濃度は、1×1015cm−3以上1×1019cm−3以下の範囲であり得る。電極480bは、Al、Ti、Pt、Ru、Au、および、これらの合金からなる群から選択される金属材料である。
絶縁膜450は、Al、SiO、HfO、SiN、および、SiONからなる群から選択される絶縁材料である。ゲート電極406は、Al、Ti、Pt、Ru、Au、および、これらの合金からなる群から選択される金属材料である。絶縁膜450の厚さは、例えば、例えば、1nm以上100nm以下である。
このようなトランジスタ400の製造方法について説明する。トランジスタ400は、既存のLSI製造プロセスによって製造される。例えば、トランジスタ400は、実施の形態1で得たα−Ga単結晶410上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、イオン注入によりn+領域470aおよび470bを形成し、次いで、気相エピタキシャル成長法、液相エピタキシャル成長法、ハライド気相成長法、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)等の既存の成長技術を用いて、絶縁膜450を形成し、次いで、真空蒸着、スパッタリング等の既存の電極形成技術により、電極480aおよび480bならびにゲート電極460を形成することによって製造される。
図示しないが、n型半導体として本発明のα−Ga単結晶を用いて、pn接合(ヘテロ接合であってもよい)を形成し、ダイオードを製造することができる。
図5は、本発明のα−Ga単結晶を備えた紫外線検出素子を示す模式図である。
図5(A)および(B)に示されるように、紫外線検出素子500、500’は、少なくとも、本発明のα−Ga単結晶510と、α−Ga単結晶510上に形成されたショットキー電極520と、α−Ga単結晶510に形成されたオーミック電極530とを備える。詳細には、図5(A)の紫外線検出素子500によれば、ショットキー電極520は、α−Ga単結晶510の一方の主面上に形成され、オーミック電極530は、α−Ga単結晶510のもう一方の主面(図5では裏面)上に形成される。一方、図5(B)の紫外線検出素子500’によれば、後述するように、サファイア基板540上にα−Ga単結晶510が位置するので、ショットキー電極520およびオーミック電極530は、いずれもα−Ga単結晶510の同一の主面上に形成される。
α−Ga単結晶510は、実施の形態1で説明した本発明のα−Ga単結晶であるが、好ましくは、4価の価数を有する元素をさらに含有し、n型の導電性を示す。例えば、α−Ga単結晶510は、Si、Hf、Ge、Sn、TiおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する。α−Ga単結晶510の厚さは、例えば、100μm以上1000μm以下である。
なお、α−Ga単結晶510は、図5(A)に示すように単一の単結晶体からなってもよいし、図5(B)に示すようにサファイア基板540上の単結晶膜であってもよい。ただし、サファイア基板540上の単結晶膜の場合は、オーミック電極530は、サファイア基板540の裏面ではなくα−Ga単結晶510主面上のショットキー電極520の付近に形成される。
ショットキー電極520は、Ni、Pt、Au、および、これらの合金からなる群から選択される金属材料であってもよい。
オーミック電極530は、Ti、In、および、これらの合金からなる群から選択される金属材料でありうる。
このような紫外線検出素子500の製造方法について説明する。紫外線検出素子500は、既存の大規模集積回路(LSI)製造プロセスによって製造される。例えば、紫外線検出素子500は、実施の形態1で得たα−Ga単結晶510の主面および裏面にそれぞれショットキー電極520およびオーミック電極530を、真空蒸着、スパッタリング等の既存の金属膜製膜技術とフォトリソグラフィとにより形成することによって製造される。紫外線検出素子500’も、同様に、サファイア基板540上に形成されたα−Ga単結晶510の主面に、ショットキー電極520およびオーミック電極530を上述の金属膜成膜技術とフォトリソグラフィとにより形成すればよい。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[実施例1]
実施例1では、図1の気相成長装置100を用いた、本発明によるハライド気相成長法(HVPE)により(0001)面(c面)サファイア基板上にα−Ga単結晶を製造した(図2のステップS210)。
具体的な製造条件は次のとおりである。気相成長装置100において、反応炉110は石英管であり、内部を大気圧に維持した。反応炉110内の基板ホルダ160にはc面サファイア基板(10cm以上の面積)を設置した。ヒータ120により反応炉110内を550℃に維持した。
ガリウム原料供給源130内部にガリウム(Ga)金属170(純度99.99999%以上)を配置し、ハロゲン化水素ガスとして塩化水素(HCl)ガス(純度99.999%以上)を供給した。これにより、Ga金属とHClとを反応させ、ガリウム原料であるGaClおよび/またはGaClのGaのハロゲン化物を生成した。酸素原料供給源140から酸素原料としてOガス(純度99.99995%以上)を供給した。これらGaのハロゲン化物およびOガスを、キャリアガスとしてNガス(純度99.9999%以上)でフローした。Gaのハロゲン化物(GaCl/GaCl)の分圧およびOの分圧を、それぞれ、0.25kPaおよび1.0kPaに維持した。なお、HClガスは、反応炉110内が550℃に達してから成膜中のみ導入したが、Oガスは、昇温から降温まで導入し続けた。成膜時間は7分であった。
このようにして得られたc面サファイア基板上の膜の膜厚を測定し、成長速度を算出した。また、ω−2θスキャンX線回折測定を行い、得られた膜がα−Gaであることを同定した。結果を図6に示す。さらに、得られた膜が単結晶であることを、α−Gaの(10−12)回折を用いたX線極点図(Pole Figure)測定を行い、確認した。結果を図8(A)に示す。得られた膜の不純物濃度を、二次イオン質量分析法(SIMS)を用いて測定した。結果を表2に示す。得られた膜の光吸収スペクトルを測定した。結果を図9に示す。
[比較例2]
比較例2では、成長温度を650℃にした以外は、実施例1と同様であった。実施例1と同様に、膜厚を測定し、成長速度を算出した。ω−2θスキャンX線回折測定により、このようにして得られた膜を同定した。結果を図7に示す。
[比較例3]
比較例2では、成長温度を250℃にした以外は、実施例1と同様であった。実施例1と同様に、膜厚を測定し、成長速度を算出した。
[実施例4]
実施例4では、基板にR(10−12)面サファイア基板を用いた以外は、実施例1と同様であった。実施例1と同様に、膜厚を測定し、成長速度を算出した。ω−2θスキャンX線回折測定およびX線極点図測定を行い、膜を同定した。
[実施例5]
実施例5では、基板にM(10−10)面サファイア基板を用いた以外は、実施例1と同様であった。実施例1と同様に、膜厚を測定し、成長速度を算出した。ω−2θスキャンX線回折測定およびX線極点図測定を行い、膜を同定した。
[実施例6]
実施例6では、基板にA(11−20)面サファイア基板を用いた以外は、実施例1と同様であった。実施例1と同様に、膜厚を測定し、成長速度を算出した。ω−2θスキャンX線回折測定およびX線極点図測定を行い、膜を同定した。
[実施例7]
実施例7では、基板にc面10度オフサファイア基板を用いた以外は、実施例1と同様であった。実施例1と同様に、膜厚を測定し、成長速度を算出した。ω−2θスキャンX線回折測定およびX線極点図測定を行い、膜を同定した。
以上の実施例/比較例1〜7の実験条件、ならびに、膜厚および成長速度を簡単のため表1にまとめ、結果を詳述する。
図6は、実施例1で得られた膜のω−2θスキャンX線回折パターンを示す図である。
図7は、比較例2で得られた膜のω−2θスキャンX線回折パターンを示す図である。
図6によれば、実施例1で得られた膜の回折パターンは、α−Gaの(0006)の回折ピーク、および、その高次の回折ピークのみを示した。このことから、実施例1で得られた膜は、β−Gaの混入のない、c面配向したα−Gaであることが分かった。なお、実施例4〜実施例7で得られた膜もまた、それぞれのサファイア基板と同じ面方位のα−Gaからの回折ピークのみが現れることを確認した。
図7によれば、比較例2で得られた膜の回折パターンは、図6の実施例1のそれとは異なり、α−Gaの(0006)の回折ピークがわずかに観察されたものの、β−Gaを示す回折ピークを示した。このことから、比較例2で得られた膜は、微量のα−Gaを含有するβ−Ga多結晶であることが分かった。
比較例3では、成長速度が著しく低下したため、結晶性を評価できる膜が得られなかった。成長速度の低下は、成長温度の低下に伴い、HClとGaとの反応効率が低下したことと、結晶析出反応の速度(反応速度律速)が低下したこととによる。
表1の実施例1および実施例4〜7の成長速度を参照すると、成長速度は、10μm/時間以上1mm/時間以下(具体的には、17μm/時間以上40μm/時間以下)であった。非特許文献2〜4によるミストCVD法によるα−Gaの成長速度(例えば、1μm/時間)と比較すると、本発明によるハライド気相成長法を採用すれば、少なくとも数10倍以上の大きな成長速度でα−Gaを製造できることが分かった。
以上より、本発明のハライド気相成長法(HVPE)を用いれば、250℃より高く650℃未満の温度範囲の成長温度において、任意の面を有するサファイア基板上にα−Ga膜を大きな成長速度で製造できることが分かった。
図8は、実施例1で得られた膜のX線極点図測定の結果を示す図である。
図8(A)は、実施例1で得られた膜(α−Ga膜)の(10−12)回折を用いたX線極点図測定の結果を示す図である。参考のため、図8(B)に、c面サファイア基板の(10−12)回折を用いたX線極点図測定の結果をあわせて示す。
図8(A)によれば、120度ずつ回転した位置に3か所のスポットを示した。この結果は、α−Gaの結晶構造がc面の法線まわりに3回の回転対称性を有することに一致し、実施例1で得られたα−Ga膜が、面内回転ドメイン等の異なる方位の領域を含まない単結晶であることを示す。
さらに、図8(A)に示される3か所のスポットの場所は、図8(B)の3か所のスポットと同じ場所であった。このことは、実施例1で得られたα−Ga膜が、c面サファイア基板の面方位にしたがって成長したことを示す。
図示しないが、実施例4〜実施例7で得られた膜もまた、単結晶膜に期待される、サファイア基板と同様の極点図を示すことを確認した。
以上より、本発明のハライド気相成長法(HVPE)を用いれば、250℃より高く650℃未満の温度範囲の成長温度において、任意の面を有するサファイア基板上にα−Ga単結晶膜を大きな成長速度で製造できることが分かった。
表2は、実施例1で得られたα−Ga膜の不純物濃度の結果を示す。
表2によれば、Al、CおよびHの濃度は、それぞれの元素に対する検出限界以下であることが分かった。Clの濃度は、1.5×1017cm−3であり、Siの濃度は、3.0×1016cm−3であった。参考例として示す非特許文献3に開示されるミストCVD法によって製造されたα−Ga膜の各不純物濃度と比較すると、本発明によるα−Ga膜によれば、とりわけ、Al、CおよびHの不純物量が、劇的に低減されていることが分かった。これは、本発明のハライド気相成長法(HVPE)によれば、C、Hによる汚染原因となる有機化合物を出発原料に用いないこと、ならびに、成長速度が非常に大きいためにサファイア基板からのAlの拡散が少ないことに起因する。
一方、Siは、反応炉110(図1)として用いた石英管からのSiの拡散によるものであるが、本発明によれば、4価の価数を有する元素としてSiを含有するα−Ga膜を得たい場合、Siを含有する原料を用いることなく、成長条件を操作するだけでよいことが示唆される。
図9は、実施例1で得られた膜の光吸収係数スペクトルを示す図である。
図9に示されるように、実施例1で得られたα−Ga膜(単結晶膜)の波長300nm以上の光に対する吸収係数は、500cm−1以下であることが分かった。詳細には、波長300nmの光に対する吸収係数は、200cm−1であった。この結果は、表2を参照して説明したように、本発明のハライド気相成長法(HVPE)によって得られたα−Ga膜の不純物濃度が、極めて低いことに一致する。
図示しないが、実施例4〜実施例7で得られた膜も同様の光吸収係数スペクトルを示し、不純物濃度が低いことを確認した。
以上より、本発明のハライド気相成長法(HVPE)を用いれば、カーボン濃度が5×1018cm−3以下であり、水素濃度が5×1018cm−3以下であり、アルミニウム濃度が4×1016cm−3以下であり、塩素濃度が1×1018cm−3以下であるα−Ga単結晶が得られることが分かった。本発明によるα−Ga単結晶は、波長300nmに対する吸収係数が小さいので、このようなα−Ga単結晶を発光素子の基板に用いれば、効率的に発光光を取り出すことができる。
[実施例8]
実施例8では、図1の気相成長装置100を用いた、本発明によるハライド気相成長法(HVPE)により、α−Ga単結晶自立基板を製造した。実施例8では、Gaのハロゲン化物(GaCl/GaCl)の分圧およびOの分圧を、それぞれ、0.5kPaおよび2.0kPaに維持し、成長時間を5時間(300分)にした以外は、実施例1と同様であった。
5時間成長後、c面サファイア基板上に厚さ600μm、10cm以上の面積を有する膜が得られた(図2のステップS210)。ω−2θスキャンX線回折測定およびX線極点図測定を行い、得られた膜がα−Ga単結晶であることを確認した。また、膜の成長速度は120μm/時間であった。
次いで、c面サファイア基板を除去した(図2のステップS220)。基板は、格別の装置を用いることなく、手作業により容易に除去された。基板が除去されたα−Ga単結晶の両面を研磨し、厚さ400μm、10cm以上の面積を有するα−Ga単結晶自立基板を得た。
以上より、本発明のハライド気相成長法(HVPE)を用いれば、α−Ga単結晶からなる自立基板を製造できることが分かった。
[実施例9]
実施例9では、図1の気相成長装置100を用いた、本発明によるハライド気相成長法(HVPE)により、複数のα−Ga単結晶自立基板を製造した。実施例9では、基板に実施例8で得た厚さ400μm、10cm以上の面積を有するα−Ga単結晶自立基板を用い、成長時間を30時間(1800分)にした以外は、実施例8と同様であった。
30時間成長後、α−Ga単結晶自立基板上に厚さ3mmを有する膜が得られた(図2のステップS210)。ω−2θスキャンX線回折測定およびX線極点図測定を行い、得られた膜もまたα−Ga単結晶であることを確認した。また、膜の成長速度は100μm/時間であった。
次いで、得られたα−Ga単結晶をマルチワイヤソーで4枚にスライスした(図2のステップS220)。スライスされた各α−Ga単結晶の両面を研磨し、厚さ400μmを有するα−Ga単結晶自立基板を4枚得た。
以上より、本発明のハライド気相成長法(HVPE)を用いれば、α−Ga単結晶からなる自立基板を成長基板として用い、その上に、α−Ga単結晶(バルク単結晶)を製造できることが分かった。さらに、α−Gaバルク単結晶から複数のα−Ga単結晶自立基板を得ることができることが分かった。
本発明の製造方法を採用すれば、不純物濃度が制御された、良質なα−Ga単結晶膜、さらには成長速度が大きいので、α−Ga単結晶基板が得られる。本発明のα−Ga単結晶は不純物濃度がきわめて低いので、α−Ga本来の特性を発揮できる。このようなα−Ga単結晶は、発光素子、ダイオード、トランジスタ、紫外線検出素子等の各種半導体素子に適用され得る。また、α−Ga単結晶はその大きなバンドギャップ、優れた透光性から、半導体素子の中でも発光素子や電力用用途に有効である。本発明のα−Ga単結晶はコランダム構造を有するので、同じコランダム構造を有するα−Alまたはα−Inとの混晶によるバンドギャップエンジニアリング、あるいは、α−Alまたはα−Inとのヘテロ構造も可能である。
100 気相成長装置
110 反応炉
120 ヒータ
130 ガリウム原料供給源
140 酸素原料供給源
150 ガス排出部
160 基板ホルダ
170 ガリウム金属
300 発光素子
310、410、510 α−Ga単結晶
320 発光層
330 n電極
340 p電極
370 ワイヤボンディング
380 リード
401、540 サファイア基板
400 トランジスタ
420 ソース
430 ドレイン
440 チャネル
450 絶縁膜
460 ゲート電極
470a、470b n+領域
480a、480b 電極
500、500’ 紫外線検出素子
520 ショットキー電極
530 オーミック電極

Claims (10)

  1. カーボン濃度は、5×1018cm−3以下であり、波長300nm以上の光に対する吸収係数は、200cm−1以下である、α−Ga単結晶。
  2. 塩素濃度は、1×1018cm−3以下である、請求項1に記載のα−Ga単結晶。
  3. 4価の価数を有する元素をさらに含有する、請求項1または2に記載のα−Ga単結晶。
  4. ハライド気相成長法によりα−Gaを製造する製造装置であって、
    反応炉と、
    前記反応炉を加熱するヒータと
    を備え、
    前記反応炉において、ガリウムのハロゲン化物と酸素原料とを反応させ、基板上にα−Gaを成長する、製造装置。
  5. 前記反応炉は、ガリウム原料供給源と、酸素原料供給源と、ガス排出部と、前記基板を設置する基板ホルダとをさらに備え、
    前記ガリウム原料供給源は、内部にガリウム金属が設置されるようになっており、
    前記ガリウム原料供給源は、ハロゲンガスまたはハロゲン化水素ガスが前記ガリウム原料供給源に供給され、前記ガリウム原料供給源内にて前記ガリウム金属から前記ガリウムのハロゲン化物を生成し、前記ガリウムのハロゲン化物を前記反応炉に供給するよう制御され、
    前記酸素原料供給源は、O、HOおよびNOからなる群から少なくとも1つ選択されるガスを前記酸素原料として前記反応炉に供給するよう制御される、請求項4に記載の製造装置。
  6. 前記ヒータは、前記反応炉内が250℃以上650℃未満の温度範囲となるよう制御される、請求項5に記載の製造装置。
  7. 前記ガス排出部は、前記反応炉内の前記ガリウムのハロゲン化物の分圧が0.05kPa以上10kPa以下であり、前記酸素原料の分圧が0.25kPa以上50kPa以下となるよう制御される、請求項5または6に記載の製造装置。
  8. 前記ガリウム原料供給源は、前記反応炉内の温度が成膜温度に到達してから、かつ、成膜中にのみ、前記ハロゲンガスまたはハロゲン化水素ガスを前記ガリウムガス供給源に供給し、前記ガリウムのハロゲン化物を前記反応炉に供給するよう制御され、
    前記酸素原料供給源は、前記反応炉の昇温から降温までの間、前記酸素原料を前記反応炉に供給するよう制御される、請求項5〜7のいずれかに記載の製造装置。
  9. 請求項1〜3のいずれかに記載のα−Ga単結晶を備えた半導体素子。
  10. 前記半導体素子は、発光素子、ダイオード、紫外線検出素子、および、トランジスタからなる群から選択される、請求項9に記載の半導体素子。
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