JP2020070228A - 高く構造制御された有機無機複合体 - Google Patents
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Abstract
Description
炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であって、
IR分析において1660cm−1〜1800cm−1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られない。
本発明の有機無機複合体は、炭素材料と無機酸化物を含む。炭素材料は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。無機酸化物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
(1)化合物(A)として1種の化合物を用いる場合には、化合物(A)のTG−DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)の縮合反応温度(T℃)と決定する。
(2)化合物(A)として2種以上の化合物の混合物を用いる場合には、該混合物のTG−DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)(2種以上の化合物の混合物)の縮合反応温度(T℃)と決定する。
本明細書で記載する「炭素材料」は、有機無機複合体に含まれる炭素材料部分を意味する。
(実施態様1)炭素材料の全てが溶媒に溶解する実施態様。すなわち、炭素材料が、溶媒に溶解する成分(成分A)のみからなる実施態様。
(実施態様2)炭素材料の一部が溶媒に溶解する態様。すなわち、炭素材料が、溶媒に溶解する成分(成分A)と溶媒に溶解しない成分(成分B)からなる実施態様。この場合、成分Bとしては、例えば、後述する無機酸化物と相互作用し溶解しない部分が挙げられる。
化合物(A)は、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きるので、化合物(A)と無機酸化物を含む組成物を加熱する加熱工程(I)によって、代表的には、化合物(A)は炭素材料となり得る。
化合物(A)の代表的な実施形態(実施形態1)は、加熱によって分解して芳香族環上にラジカルを発生する芳香族化合物である。芳香族環上にラジカルが発生した芳香族化合物が、同一分子間および/または異種分子間で縮合反応を起こし、炭素材料となり得る。
化合物(A)の代表的な実施形態(実施形態2)は、縮合反応によって、2種以上の基から1つの中性分子が形成されて脱離する化合物である。この実施形態2においては、1つの化合物が2種以上の基を有している場合であってもよいし、2つ以上の化合物のそれぞれの有する基を組み合わせて2種以上の基となる場合であってもよい。このような化合物(A)が、同一分子間および/または異種分子間で縮合反応を起こし、炭素材料となり得る。
(a)−H基と−OH基とからH2Oが形成されて脱離することによる縮合反応、
(b)−H基と−OR基(Rは任意の適切な置換または無置換のアルキル基)とからROHが形成されて脱離することによる縮合反応、
(c)−H基と−OOCR基(Rは任意の適切な置換または無置換のアルキル基)とからRCOOHが形成されて脱離することによる縮合反応、
などが挙げられる。特に、脱離した中性成分が該脱離温度(焼成温度)で気体成分であると、炭素材料に取り込まれることなく、気相部にあるため、不純物となりにくい。
(i)化合物(A)が、1個の炭素6員環構造からなる骨格を有する化合物(a1)である場合、
(ii)化合物(A)が、2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格を有する化合物(a2)である場合、
の2つの場合のいずれかを採り得る。
(i)化合物(A)が、1個の炭素6員環構造からなる骨格を有する化合物(a1)から選ばれる2種以上からなる場合、
(ii)化合物(A)が、2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格を有する化合物(a2)から選ばれる2種以上からなる場合、
(iii)化合物(A)が、1個の炭素6員環構造からなる骨格を有する化合物(a1)から選ばれる1種以上と2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格を有する化合物(a2)から選ばれる1種以上とからなる場合、
の3つの場合のいずれかを採り得る。
化合物(A)の代表的な実施形態(実施形態3)は、実施形態1と実施形態2の双方を同時に採用する形態である。すなわち、実施形態3は、加熱によって分解して芳香族環上にラジカルを発生する芳香族化合物であり、かつ縮合反応によって、2種以上の基から1つの中性分子が形成されて脱離する化合物である。このような化合物(A)が、同一分子間および/または異種分子間で縮合反応を起こし、炭素材料となり得る。
無機酸化物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な無機酸化物を採用し得る。このような無機酸化物としては、例えば、粒子状の無機酸化物(無機酸化物粒子)、非粒子状の無機酸化物(例えば、繊維状の無機酸化物、薄膜状の無機酸化物など)などを採用し得る。
本発明の有機無機複合体は、様々な応用展開が可能である。このような応用展開によって得られる代表的なものは、炭素材料含有粒子である。炭素材料含有粒子としては、代表的には、コアシェル粒子、高炭素化コアシェル粒子、中空炭素微粒子、高炭素化中空炭素微粒子などが挙げられる。
コアシェル粒子は、本発明の有機無機複合体を製造する際において、加熱工程(I)の後、化合物(A)の加熱によって生成する炭素材料の少なくとも一部を除去する炭素材料除去工程に付すことによって製造し得る。すなわち、加熱工程(I)を経て本発明の有機無機複合体を製造した後、本発明の有機無機複合体に含まれる炭素材料の少なくとも一部を除去する炭素材料除去工程に付すことによって製造し得る。炭素材料除去工程においては、本発明の有機無機複合体に含まれる炭素材料を溶解する溶媒によって処理する。これにより、図2に示すように、無機酸化物粒子20の表面に炭素材料結合領域(溶媒によって溶解しない領域)30がコーティングされたコアシェル粒子(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)200が得られ得る。
高炭素化コアシェル粒子は、本発明の有機無機複合体を製造する際において、加熱工程(I)の後、炭素材料除去工程を続いて行った後、さらに加熱する加熱工程(II)に付すことによって製造し得る。すなわち、炭素材料除去工程によって得られるコアシェル粒子(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)をさらに加熱する。この加熱工程(II)により、シェル部分を高炭素化させ得る。これにより、高炭素化コアシェル粒子(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:高炭素化物)が得られ得る。高炭素化することで、得られた高炭素化コアシェル粒子の強度や耐熱性を向上することができる。
中空炭素微粒子は、本発明の有機無機複合体を製造する際において、加熱工程(I)の後、無機酸化物を除去する無機酸化物除去工程を含むことによって製造し得る(製造形態1)。すなわち、加熱工程(I)を経て有機無機複合体を製造した後、該有機無機複合体に含まれる無機酸化物を除去する無機酸化物除去工程に付すことによって製造し得る。
高炭素化中空炭素微粒子は、本発明の有機無機複合体を製造する際において、加熱工程(I)の後、無機酸化物除去工程を続いて行った後、さらに加熱する加熱工程(II)を含むことによって製造し得る。すなわち、上述の製造形態1で得られる中空炭素微粒子をさらに加熱する。この加熱工程(II)により、炭素材料部分を高炭素化させ得る。これにより、高炭素化中空炭素微粒子が得られ得る。高炭素化することで、得られた炭素材料または炭素材料複合体の強度や耐熱性を向上することができる。
ラマン分光分析は以下の装置、条件により行った。
測定装置:顕微ラマン(日本分光NRS−3100)
測定条件:532nmレーザー使用、対物レンズ20倍、CCD取り込み時間1秒、積算64回(分解能=4cm−1)
なおラマン分析においてG’バンド、D+D’バンドは重なって現れることがあり、D+D’バンドが特にショルダーを持つブロードなピークとして分析されることがある。この場合はショルダーピークの変曲点をG’バンドのピークとみなす。
XRD測定は、全自動水平型X線回折装置(リガク社製、SMART LAB)を用いて、以下の条件により行った。
CuKα1線:0.15406nm
走査範囲:10°−90°
X線出力設定:45kV−200mA
ステップサイズ:0.020°
スキャン速度:0.5°min−1−4°min−1
なお、XRD測定は、試料をグローブボックス中にて気密試料台に装填することにより、不活性雰囲気を保った状態で行った。
C1sXPS測定は、光電子分光装置(AXIS−ULTRA、島津製作所製)を用いて、以下の条件により行った。
ソース:Mg(デュアルノード)
エミッション:10mA
アノード:10kV
アナライザー:Pass Energy:40
測定範囲:C1s:296〜270eV
積算回数:10回
解析条件:C1s軌道に由来するピークを官能基ごとに、下記に記載のエネルギーでピーク分離し、各面積から割合を算出した。官能基の種類は(1)−COO−、ラクトン、および一部のケトン@288.3eV、(2)C=Oおよびエポキシ基@286.2eV、(3)C−OHおよびC−O−C@285.6eV、(4)6員環性C=C@284.3eV、(5)C−C、C−Hおよび5員環性C=C@283.6eVの5ピークで分離した。ただし、割合算出上(4)と(5)はまとめて計算した。なおC1sXPSに係る部分の%は原子%を意味する。なお、表には、(1)、(2)、(3)のそれぞれに対応するピークの割合を(A)、(B)、(C)で示し、(4)および(5)に対応するピークの合計割合を(D)で示した。
TG−DTA分析は、以下の装置、条件により行った。
測定装置:示唆熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6200)
化合物(A)の縮合反応温度は、下記のように行った。
(1)化合物(A)として1種の化合物を用いる場合には、化合物(A)のTG−DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)の縮合反応温度(T℃)と決定した。
(2)化合物(A)として2種以上の化合物の混合物を用いる場合には、該混合物のTG−DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)(2種以上の化合物の混合物)の縮合反応温度(T℃)と決定した。
有機無機複合体の酸化開始温度は、空気雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で行い、DTAの立ち上がり温度のうち、最も低温側のDTAの立ち上がり温度より推定した。
FT−IR分析は以下の装置、条件により行った。
測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光製FT/IR−4200)
測定条件:拡散反射(DRIFT)法、MCT検出器、分解能4cm−1、積算回数128回
サンプル条件:試料とKBrを重量比=1:50で混合したものを使用した。
分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製HLC−8220GPC)を用いて、各炭素材料が0.02質量%となるようN,N−ジメチルホルムアミド(0.1%LiBr含有)に混合し、1時間超音波処理後、PTFE製濾紙(0.45μm)に通して前処理したのち、濾液をN,N−ジメチルホルムアミド(0.1%LiBr含有)を展開溶媒に使用し、ポリスチレン換算で分子量を算出した。炭素材料中の最大分子量はピークの立ち上がり点から算出した。
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):理論比表面積750m2/gがシリカ粒子に対して1.5層分となるようにシリカ粒子(富士シリシア化学株式会社製、商品名「Q−10HT60315」、比表面積259m2/g)と十分に混合した。
得られた混合物を石英アンプル管に真空封入した後、あらかじめ250℃に加熱していた電気炉にて1時間加熱した。
これにより、炭素材料(1A)と無機酸化物(1B)を含む有機無機複合体(1)を得た。
有機無機複合体(1)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(1)のIR分析を行った結果を図3、表1に示す。図3によれば、有機無機複合体(1)のIRスペクトルにおいては、C=O構造に由来する1660cm−1〜1800cm−1にピークが無く、高く構造が制御できていることがわかる。
得られた有機無機複合体(1)のC1sXPS分析の結果を図4(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(1)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は26%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は62%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は16%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
フロログルシノールの、窒素ガス雰囲気下、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、温度50℃における初期重量M50に対する温度500℃における重量M500の重量比(M500/M50)が0.49であった。このことから、フロログルシノールは炭素化後も十分に無機酸化物上に存在し得ることがわかる。
また、得られた有機無機複合体(1)のTG−DTA分析におけるDTA分析の結果を図5に示す。図5によれば、有機無機複合体(1)は、空気雰囲気下、40℃から、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、DTAの立ち上がり温度で示される酸化開始温度が200℃であった。このことから、耐酸化性が高いことがわかる。
さらに、得られた有機無機複合体(1)のラマンスペクトルを図6に示す。ラマンスペクトルにおいて1365cm−1、1590cm−1、2650cm−1、2835cm−1にピークを有することから、炭素材料(1A)はグラフェン構造を有し且つグラフェン構造が積層した構造の炭素系化合物を含む炭素材料であることがわかった。
以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
シリカ粒子をヘテロポリ酸粒子としてHPW(富士フイルム和光純薬株式会社製、12−タングスト(VI)リン酸n水和物、比表面積278m2/g)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(2A)と無機酸化物(2B)を含む有機無機複合体(2)を得た。
有機無機複合体(2)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(2)のIR分析を行った結果を図3、表1に示す。図3によれば、有機無機複合体(2)のIRスペクトルにおいては、C=O構造に由来する1660cm−1〜1800cm−1にピークが無く、高く構造が制御できていることがわかる。
得られた有機無機複合体(2)のC1sXPS分析の結果を図4(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(2)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は29%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は76%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は22%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
また、得られた有機無機複合体(2)のTG−DTA分析におけるDTA分析の結果を図5に示す。図5によれば、有機無機複合体(2)は、空気雰囲気下、40℃から、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、DTAの立ち上がり温度で示される酸化開始温度が300℃であった。このことから、耐酸化性が高いことがわかる。
さらに、得られた有機無機複合体(2)のラマンスペクトルを図6に示す。ラマンスペクトルにおいて1350cm−1、1585cm−1、2650cm−1、2810cm−1にピークを有することから、炭素材料(2A)はグラフェン構造を有し且つグラフェン構造が積層した構造の炭素系化合物を含む炭素材料であることがわかった。また、炭素材料(2A)部分の分子量を測定したところ、重量平均分子量は8000、最大分子量は50000であった。
以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
シリカ粒子をヘテロポリ酸粒子としてHPMo(富士フイルム和光純薬株式会社製、12−モリブド(VI)リン酸n水和物)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(3A)と無機酸化物(3B)を含む有機無機複合体(3)を得た。
有機無機複合体(3)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(3)のC1sXPS分析の結果を図7(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(3)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は27%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は63%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は17%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
シリカ粒子をヘテロポリ酸粒子としてHSiW(日本新金属株式会社製、ケイタングステン酸)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(4A)と無機酸化物(4B)を含む有機無機複合体(4)を得た。
有機無機複合体(4)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(4)のC1sXPS分析の結果を図7(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(4)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は29%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は72%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は21%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
シリカ粒子をヘテロポリ酸粒子としてHPVMo(日本新金属株式会社製、リンバナドモリブデン酸)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(5A)と無機酸化物(5B)を含む有機無機複合体(5)を得た。
有機無機複合体(5)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(5)のC1sXPS分析の結果を図7(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(5)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は29%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は55%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は16%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
シリカ粒子をヘテロポリ酸粒子としてHPWMo(日本新金属株式会社製、リンタングストモリブデン酸)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(6A)と無機酸化物(6B)を含む有機無機複合体(6)を得た。
有機無機複合体(6)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(6)のC1sXPS分析の結果を図7(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(6)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は27%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は70%であり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は19%であった。このことから、構造制御率が高いことがわかる。
以上のように、本発明によれば、溶媒に可溶であり、構造が精密に制御された、温和な条件で工業的に製造可能な有機無機複合体を提供することができる。
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):1gを200gのアセトンに溶解し、そこに銅粒子(ECKA Granules Germany GmbH製、粒子径:95vol%以上が36μm以下):20gを加え、超音波処理によって十分に混合した。
得られた混合物から常温真空乾燥によってアセトンを除去し、残った塊状物を解砕した後、300℃にて2時間加熱した。
これにより、炭素材料(7A)と無機酸化物(7B)を含む有機無機複合体(7)を得た。
得られた有機無機複合体(7)をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)にて処理した。これにより、炭素材料(7A)が除去され、無機酸化物(7B)の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたコアシェル粒子(7)(コア部分:無機酸化物粒子、シェル部分:炭素材料結合領域)が得られた。
コアシェル粒子(7)をさらに700℃で1時間焼成した。これにより、シェル部分の炭素材料が高炭素化され、高炭素化コアシェル粒子(7)が得られた。高炭素化コアシェル粒子(7)の表面のラマンスペクトルを図8に示した。図8により、高炭素化コアシェル粒子(7)の表面(シェル部分)が形状を損なうことなく高炭素化された炭素材料で構成されていることがわかる。
シリカ粒子をアルミナ粒子(一般社団法人触媒学会無償配布試料「JRC−ALO7」、比表面積180m2/g)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(C1A)と無機酸化物(C1B)を含む有機無機複合体(C1)を得た。
有機無機複合体(C1)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(C1)のIR分析を行った結果を図3、表1に示す。図3によれば、有機無機複合体(C1)のIRスペクトルにおいては、C=O構造に由来する1660cm−1〜1800cm−1にピークが存在しており、十分に高く構造が制御できていないことがわかる。
得られた有機無機複合体(C1)のC1sXPS分析の結果を図4(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(C1)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は29%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は59%であった。このことから、C1sXPS分析に基づく構造制御率は比較的高いものの、実施例1、2に比較すると、十分に高く構造が制御できていないことがわかる。
また、得られた有機無機複合体(C1)のTG−DTA分析におけるDTA分析の結果を図5に示す。図5によれば、有機無機複合体(C1)は、空気雰囲気下、40℃から、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、DTAの立ち上がり温度で示される酸化開始温度が230℃であった。このことから、耐酸化性が高いことがわかる。
さらに、得られた有機無機複合体(C1)のラマンスペクトルを図6に示す。ラマンスペクトルにおいて1340cm−1、1585cm−1、2650cm−1、2835cm−1にピークを有することから、炭素材料(C1A)はグラフェン構造を有し且つグラフェン構造が積層した構造の炭素系化合物を含む炭素材料であることがわかった。
シリカ粒子をチタニア粒子(一般社団法人触媒学会無償配布試料「JRC−TIO−4(2)」、比表面積50m2/g)に変更した以外は、実施例1と同様に行い、炭素材料(C2A)と無機酸化物(C2B)を含む有機無機複合体(C2)を得た。
有機無機複合体(C2)をNMP(N−メチルピロリドン)に分散させ、前述の手法により炭素成分の溶解性を確認したところ、溶媒に可溶であった。
得られた有機無機複合体(C2)のIR分析を行った結果を図3に示す。図3によれば、有機無機複合体(C2)のIRスペクトルにおいては、C=O構造に由来する1660cm−1〜1800cm−1にピークが存在しており、十分に高く構造が制御できていないことがわかる。
得られた有機無機複合体(C2)のC1sXPS分析の結果を図4(XPSスペクトル(C1s))、表1に示す。表1から、有機無機複合体(C2)が炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であることがわかり、全炭素結合(C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合)の合計量に対する全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量の割合は27%であり、全炭素−酸素結合(C−O結合とC=O結合)の合計量に対するエーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合は56%であった。このことから、C1sXPS分析に基づく構造制御率は比較的高いものの、実施例1、2に比較すると、十分に高く構造が制御できていないことがわかる。
また、得られた有機無機複合体(C2)のTG−DTA分析におけるDTA分析の結果を図5に示す。図5によれば、有機無機複合体(C2)は、空気雰囲気下、40℃から、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、DTAの立ち上がり温度で示される酸化開始温度が200℃であった。このことから、耐酸化性が高いことがわかる。
さらに、得られた有機無機複合体(C2)のラマンスペクトルを図6に示す。ラマンスペクトルにおいて1340cm−1、1580cm−1、2650cm−1、2820cm−1にピークを有することから、炭素材料(C2A)はグラフェン構造を有し且つグラフェン構造が積層した構造の炭素系化合物を含む炭素材料であることがわかった。
20 無機酸化物粒子
30 炭素材料結合領域
100 有機無機複合体
200 コアシェル粒子
Claims (9)
- 炭素材料と無機酸化物を含む有機無機複合体であって、
IR分析において1660cm−1〜1800cm−1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られない、
有機無機複合体。 - C1sXPS分析による、全結合、すなわち、C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合の合計量に対する、全炭素酸素結合、すなわち、C−O結合とC=O結合の合計量の割合が、10%以上である、請求項1に記載の有機無機複合体。
- C1sXPS分析による、全炭素酸素結合、すなわち、C−O結合とC=O結合の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合が、50%以上である、請求項1または2に記載の有機無機複合体。
- C1sXPS分析による、全結合、すなわち、C−C結合とC=C結合とC−H結合とC−O結合とC=O結合の合計量に対する、エーテル由来のC−O結合とアルコール由来のC−O結合の合計量の割合が、15%以上である、請求項1から3までのいずれかに記載の有機無機複合体。
- 空気雰囲気下、10℃/分の昇温条件によってTG−DTA分析を行ったときの、DTAの立ち上がり温度で示される酸化開始温度が200℃以上である、請求項1から4までのいずれかに記載の有機無機複合体。
- 前記無機酸化物が、表面に官能基を有する無機酸化物粒子である、請求項1から5までのいずれかに記載の有機無機複合体。
- 前記無機酸化物粒子が、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、ポリ酸粒子、その表面の少なくとも一部が酸化された金属粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の有機無機複合体。
- 前記無機酸化物粒子がポリ酸粒子である、請求項1から7までのいずれかに記載の有機無機複合体。
- 前記ポリ酸粒子を構成する金属元素が、モリブデン、バナジウム、タングステン、ニオブ、チタン、タンタルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の有機無機複合体。
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