JP2020069746A - インクジェットプリンタ - Google Patents

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Abstract

【課題】余分の電力を必要とすることなく、溶剤の気化を促進してインクの粘度を高めることができるインクジェットプリンタを提供する。【解決手段】本発明のインクジェットプリンタでは、ガター51とインクタンク2とを結ぶ配管5cに、配管5cから分岐した分岐管5jが取り付けられている。更に分岐管5jには、移送されるインクの流れによってインクと空気を攪拌・混合するスタティックミキサー10が直列に接続されている。プリントヘッド3に供給されるインクの粘度が、予め定めた値を下回った場合、切換弁66を分岐管5j側に切り換えて、ガター51で回収されたインクをスタティックミキサー10に導き、スタティックミキサー10を通過させることによってインク溶剤の気化を促進する。【選択図】図1

Description

本発明は、コンティニュアス方式のインクジェットプリンタに関し、更に詳しくは、ガターで回収されたインクの粘度を高める手段を備えたインクジェットプリンタに関する。
コンティニュアス方式のインクジェットプリンタにおいては、プリントヘッドのノズルから噴射されたインク滴のうち印刷に供されるものは偏向飛行して被印刷物の表面に噴射される。一方、飛行軌道の修正を受けない印字に無関係なインク滴はガターに収容され、配管を通してインクタンクに回収される。ガターで回収されたインクは、空気と一緒にインクタンクに運ばれ、そのうち空気はインクタンクから排気される。
コンティニュアス方式のインクジェットプリンタで使用されるインクは、一般にメチルエチルケトン等の揮発性の高い溶剤を用いており、インクタンクに回収される際にかなりの量の溶剤蒸気が大気中に排気され、インクの粘度が高まる。このため、不足する溶剤を補充してインクの粘度が高まるのを防止している。
一方、プリンタの使用環境によっては、朝、温度が最も低く、お昼にかけて温度が急速に上がる場合がある。その場合、インクの特性として温度が上がると粘度が下がるため、運転開始時に適正値に設定したインク粘度が、午後には適正値を下回ることになる。インクの粘度が適正値を下回ると、インク滴の一部が飛翔中に分離し、印字画像にスジが発生して印字の品位が劣化する。
また、用途に合わせて小口径のノズルを大口径のノズルに付け替える場合があるが、その場合、使用するインクの粘度を高める必要があることが知られている。従って、使用するノズルを大口径のものに付け替えた場合、単にノズルを付け替えるだけではインクの粘度が適正値を下回り、上述と同様の理由により、印字の品位を保つことが難しくなる。
低下したインクの粘度を高める方法として、出願人は、先に、ガターで回収されたインクを加熱することによって溶剤の気化を促進する方法を提案した(特許文献1参照)。
特開2008-137198号公報
特許文献1に記載の方法によれば、インクジェットプリンタの配管に加熱部材を付加するだけで、インクの粘度を高めることができるが、溶剤を気化させるためには、加熱部材に電力を供給する必要があり、印字以外の余分の電力を必要とするため、省エネの観点から改善が求められていた。
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、余分の電力を必要とすることなく、溶剤の気化を促進してインクの粘度を高めることができるインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェットプリンタは、
インクを貯留するインクタンクと、
当該インクタンクから供給されるインクを被印刷物の表面に向けて噴射するプリントヘッドと、
当該プリントヘッドのノズルから噴射されたインクのうち印刷に使用されないインクを回収するガターと、
前記インクタンクから前記プリントヘッドへのインクの移送および前記ガターで回収されたインクの前記インクタンクへの移送を行うポンプと、を備え、
前記ガターとインクタンクとを結ぶ配管には、当該配管から分岐した分岐管が取り付けられ、
かつ当該分岐管には、移送されるインクの流れによってインクと空気を攪拌・混合するスタティックミキサーが直列に接続されていることを特徴とする。
ここで、前記分岐管の分岐箇所には、インクの移送を切り換える切換弁が取り付けられ、インクの粘度が予め定めた値を下回ったとき、前記ガターで回収されたインクは、前記分岐管を通して前記インクタンクに移送されることが好ましい。
また本発明に係るインクジェットプリンタは、
前記インクタンクのインクを前記プリントヘッドに移送する配管の途中に取り付けられ、インクの圧力を検出する圧力センサと、
前記プリントヘッドに内蔵され、ノズルから噴射されるインク滴の速度を検出する速度検出手段と、
前記圧力センサで検出した圧力および前記速度検出手段で検出したインク滴の速度に基づいて、前記プリントヘッドに供給されるインクの粘度を算出すると共に、当該算出値に基づいて前記切換弁の動作を制御するコントローラと、を更に備えることが好ましい。
また前記コントローラの記憶装置には、インクの圧力およびインク滴の速度と、インク粘度との関係を示すデータが予め記憶されていることが好ましい。
本発明に係るインクジェットプリンタを用いれば、スタティックミキサーをインクの配管に付加するだけで、インク溶剤の気化を促進してインクの粘度を高めることができる。しかも、スタティックミキサーは加熱部品や可動部品を有さないために、余分の電力が消費されることもない。
本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタの配管図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタの制御系の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態の効果を説明するグラフである。
以下、本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタについて、図面を参照して説明する。
<インクジェットプリンタの構成>
図1に、本実施の形態に係るインクジェットプリンタの配管図を示す。また図2に、同プリンタの制御系のブロック図を示す。なお、本発明はインクの粘度を高めることを主たる目的としているため、図1および図2では、それに関係しない印刷関連の部材は省略している。
図1の配管図に示すように、インクジェットプリンタ(以降、「プリンタ」と略す)1は、インクIを貯留するインクタンク2、インクを噴出して被印刷物の表面に印刷を行うプリントヘッド3、インクを送出するポンプ4、これらの部材を連結する配管5a〜5i(以降、総称して「配管5」ともいう)、配管5cから分岐した分岐管5j、配管5の途中に配置され、配管を開閉する開閉弁61〜65、配管5cまたは分岐管5jのいずれかを選択する切換弁66、インクの各種状態を検出するセンサ71〜73、インクおよび溶剤の補給に用いられるタンク81および82、ならびに分岐管5jに直列に接続されたスタティックミキサー10で構成されている。
図2に示すように、プリンタ1の動作はコントローラ9によって制御される。そのためコントローラ9の入力側には、図1に示したセンサ71〜73以外にインク滴速度検出手段74が接続され、出力側には、ポンプ4を回転駆動するモータ45、配管5の開閉を行う開閉弁61〜65ならびに切換弁66が接続されている。
インクタンク2は、強化プラスチック等で作製され、上面が開放された直方体状のタンク本体21と、同じく強化プラスチック等で作製され、タンク本体21の上面を覆うように設置された平板状の蓋22で構成されている。
図1に示すように、蓋22には複数の配管5を通す孔、ならびに温度センサ72および液面検出センサ73を通す孔が形成されている。また配管5iの先端には凝集タンク83が取り付けられており、配管5iを通って放出されたインク溶剤の蒸気を収集し、それを凝集・液化させてインク溶剤を回収する。
蓋22に形成された孔は、配管等との間が封止されている。これらの孔は、タンク本体21および蓋22のいずれに設けてもよいが、本実施の形態では、取扱いの容易さから蓋22に設けている。
タンク本体21の開口部と蓋22との間は、パッキンを介した状態(図示せず)で、ボルト・ナット等を用いて締結されており、タンク本体21と蓋22との間は密閉されている。
本実施の形態では、インクとして、溶剤であるメチルエチルケトン(70〜90%)に、黒色の染料であるクロム錯塩(5〜10%)を加え、これに若干のシクロヘキサン(5〜10%)とイソプロピルアルコール(0.1〜1%)を加えたものを用いている。
プリントヘッド3の構成と動作について簡単に説明する。インクジェットプリンタは、コンティニュアス方式とオンデマンド方式に大別されるが、本発明では、コンティニュアス方式を採用している。
コンティニュアス方式のインクジェットプリンタのプリントヘッドの構造は周知であるため、図面を用いての説明は行わない。この方式では、ポンプ4を用いてインクを加圧し、プリントヘッド3に設けられたノズルからインクを噴射し、噴射したインクがインク滴に分離する位置においてインク滴を帯電させ、更に偏向電極によって帯電したインク滴の軌道を曲げて印刷面の所定の位置に衝突させて、インクドットを形成している。
同方式のプリンタにおいては、プリントヘッド3から噴射されたインク滴のうち印刷に使われなかったインクはガター51に回収され、後述するように配管5cを通ってインクタンク2に戻され、再利用される。
インクタンク2とプリントヘッド3を結ぶ配管5aの途中にポンプ4が配置されており、タンク内のインクをプリントヘッド3まで移送している。本実施の形態では、ポンプ4として4つのダイアフラムユニット41〜44が一体化され、これらを1つのモータ45(図2参照)で回転駆動するダイアフラム式のポンプを用いている。
ダイアフラムユニット41は、インクタンク2内のインクをプリントヘッド3に移送するため、ダイアフラムユニット42および43は、ガター51で回収したインクをインクタンク2に移送するために用いられる。
またダイアフラムユニット44は、インクを循環させてインクタンク2内のインクを攪拌するため、および補給用タンク81または82に収容されたインクまたは溶剤をインクタンク2に供給するために用いられる。
配管5a、5cの途中に設けられたフィルタ52、53および54はインク内の不純物を除去するもの、逆止弁56はインクの逆流を防止するものである。逆止弁56にはバネが内蔵されており、バネの作用によってインクの圧力が所定の値を超えないときはインクの移送を阻止し、所定の値を超えた時にだけインクが移送される。配管5には、これ以外にダンパー55および絞り57が取り付けられている。これらの機能については後述する。
配管5a、5c、5d、5e、5fおよび5gの途中には、上述した部材以外に、開閉弁61〜65、切換弁66およびインク排出弁67が配置されている。開閉弁61〜65は電磁弁で構成されており、図2のコントローラ9の指示に従って配管5を開閉してインクを移送し、または移送を停止する。
切換弁66は電磁弁で構成されており、ガター51で回収されたインクを配管5cまたは分岐管5jのいずれかを通してインクタンク2に移送するもので、図2のコントローラ9の指示に従って配管5cまたは分岐管5jのいずれか選択する。分岐管5jを選択した場合、インクはスタティックミキサー10を通過した後、配管5cに戻される。スタティックミキサー10の機能については後述する。
インク排出弁67は、プリンタ1の保守点検の際に、配管5aに残っているインクを排出するものであり、手動で開閉される。
配管5aに接続された圧力センサ71は、配管5aを流れるインクの圧力を検出する。またインクタンク2の蓋22に取り付けられた温度センサ72は、インクタンク2内のインクの温度を検出する。インクタンク2の蓋22に取り付けられた液面検出センサ73は、長さの異なる導電性の複数の棒を用い、それらの電気的な導通の有無によってインクの液面の高さを検出する。
図には示されていないが、プリントヘッド3には、ノズルから噴射されるインク滴の速度を検出するインク滴速度検出手段74(図2参照)が内蔵されている。インク滴速度検出手段74は、インク滴の飛行経路に沿って設置された一対の電極に誘起される電圧を検知することによって、インク滴の速度を検出している。
図2のコントローラ9は、圧力センサ71、温度センサ72、液面検出センサ73およびインク滴速度検出センサ74の出力信号に基づいて、ポンプ4を回転駆動するモータ45、開閉弁61〜66および切換弁66の動作を制御する。
図2に示すように、コントローラ9は、CPU91、ROM92、RAM93、入力・表示パネル94、記憶装置95およびバスライン96で構成されている。
CPU91は、プリンタ1の各部の動作を制御するのに必要な指示信号を作成する。ROM92には、CPU91が動作するのに必要なプログラムが記憶されている。RAM93は、プログラムの実行中に必要となるデータを一時的に記憶する、
記憶装置95は、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等で構成され、プリンタ1の制御に必要なデータを記憶する。入力・表示パネル94は液晶ディプレイ等で構成され、印刷の内容や設定値等を入力すると共に、入力されたデータや印刷内容等を表示する。バスライン96は、CPU91のデータ信号、アドレス信号およびコントロール信号を伝送する。
<インクの流れの説明>
次に、前述の図1に基づいてプリンタ1におけるインクの流れを説明する。図1において配管5に沿って表示した矢印は、インクの流れる方向を示している。
インクタンク2に収容されたインクIは、ダイアフラムユニット41によって吸引され、配管5aを通ってプリントヘッド3まで移送される。配管5aのダイアフラムユニット41の下流にはダンパ−55と逆止弁56が配置され、更にその手前で配管5aから配管5bが分岐し、先端がインクタンク2に接続されている。
ダイアフラムユニット41から送り出されたインクはダンパー55で脈流が取り除かれた後、逆止弁56に到達する。逆止弁56は、プリントヘッド3に供給されるインクの圧力を一定の値に保持するもので、ダンパー55を通過し、脈流が取り除かれたインクの圧力が、バネの弾性力によって定まる値を下回る場合、逆止弁56は閉じたままであるため、インクは分岐管5bを通ってインクタンクに戻る。分岐管5bの途中に設けられた絞り57は、インクタンク2に回収されるインクの流量を調整するものである。
逆止弁56の下流側の配管5aに取り付けられた圧力センサ71は、プリントヘッド3に供給されるインクの圧力を検出するものである。圧力センサ71で検出されたインク圧力は、インクの粘度を調節するために用いられる。
プリンタ1を用いて印刷される画像等の品位を一定にするためには、プリントヘッド3から噴射されるインク滴の速度を一定の値に保持する必要がある。プリントヘッド3に内蔵されたインク滴速度検出手段74は、そのために用いられる。
配管5aを移送されるインクの圧力とインク滴の速度は比例関係にあり、速度を維持するための圧力が高まった場合、インクの粘度が高まったと判断して、補給タンク82から溶剤の補給が行われる。
配管5aの途中に設けられた開閉弁61は、ポンプ4を駆動してプリンタによる印刷を開始する際に配管5aの流路を開き、印刷が終了してポンプ4の動作を停止する際に配管5aの流路を閉じる。
プリントヘッド3から噴射されたインク滴の一部は印刷に供され、その他のインク滴はガター51に回収される。ガター51に回収されたインクは、ダイアフラムユニット42および43によって配管5cを通って移送され、インクタンク2に戻る。
配管5cの途中に分岐管5jが取り付けられており、分岐管5jには、スタティックミキサー10が直列に接続されている。配管5cの分岐箇所に取り付けられた切換弁66を切り換えることにより、ガター51で回収されたインクは配管5cまたは分岐管5jのいずれかを通ってインクタンク2に移送される。
配管5cによるインクの移送に2つのダイアフラムユニット42および43を用いるのは、ダイアフラムユニットのインク移送能力を考慮したものであり、ダイアフラムユニットの移送能力が大きい場合は、1つのダイアフラムユニットを用いてインクを移送してもよい。
プリントヘッド3の下部から取り出された配管とインクタンク2との間が配管5dによって接続され、途中に開閉弁62が配置されている。この配管5dは、プリンタ1の電源をオンにした際にプリントヘッド3内に残っている空気を抜くためのものであり、開閉弁62を開くことによって空気を含んだインクが移送され、インクタンク2に戻される。
インク補給用タンク81から取り出されたインクを、ダイアフラムユニット44を用いてインクタンク2に移送する配管5eおよび5hが設けられており、配管5eの途中に開閉弁63が取り付けられている。
同様に、溶剤補給用タンク82から取り出された溶剤を、ダイアフラムユニット44を用いてインクタンク2に移送する配管5fおよび5hが設けられており、配管5fの途中に開閉弁64が取り付けられている。
更に、インクタンク2から取り出されたインクを、ダイアフラムユニット44を用いてインクタンク2に戻す配管5gおよび5hが設けられており、配管5gの途中に開閉弁65が取り付けられている。この配管5gは、インクタンク2内のインクを攪拌するために用いられる。
前述した3つの配管5e、5fおよび5gは、インク移送用のダイアフラムユニット44を兼用しており、このため、配管5e、5fおよび5gは合流して配管5hに連結されている。
インクタンク2にインクを補給する場合、コントローラ9の指示に従って、開閉弁63を開ける共に、開閉弁64および65を閉じ、ダイアフラムユニット44を駆動して補給用タンク81内のインクをインクタンク2に移送する。
インクタンク2に溶剤を補給する場合、コントローラ9の指示に従って、開閉弁64を開けると共に、開閉弁63および65を閉じ、ダイアフラムユニット44を駆動して補給用タンク82内の溶剤をインクタンク2に移送する。
インクの成分のうち染料は、時間の経過と共に沈下して下部に溜まる傾向があるため、インクタンク2内のインクを常時攪拌する必要がある。インクを攪拌する場合、コントローラ9の指示に従って開閉弁65を開けると共に、開閉弁63および64を閉じ、ダイアフラムユニット44を駆動してインクタンク2内のインクを配管5gで吸引し、配管5h内のインクをインクタンク2に放出する。
<インクの粘度調節>
本実施の形態では、プリントヘッド3に供給されるインクの粘度が予め定めた値を下回った場合、インク溶剤の気化を促進してインクの粘度を高めている。そのための手段として、ガター51で回収されたインクをインクタンク2まで移送する配管の途中にスタティックミキサー10を配置し、インクを、スタティックミキサー10を通すことによって溶剤の気化を促進している。
スタティックミキサー10は、駆動部を持たず、流体の流れを利用して攪拌を行う静止型の混合器であり、ミキサー内には、長方形の板を180度ねじったエレメントが複数配置されている。ミキサー内を通過する流体は、ねじれの方向が異なる複数のエレメントにより順次攪拌・混合される。
スタティックミキサーは、一般的に、高粘度流体(接着剤、食料品)の混合や、流体の熱交換、均熱化に用いられ、インク溶剤の気化促進用として用いられることはなかった。発明者等が、試みにガターで回収されたインクをスタティックミキサーに通したところ、インク溶剤の気化に顕著な効果を発揮することがわかった。
図3に、ガター51で回収されたインクをスタティックミキサー10に通過させたときとさせないときの溶剤の消費量を示す。溶剤消費量は、プリンタ内を循環するインクの濃度を一定値に維持するために補充する単位時間当たりの溶剤の量である。溶剤の気化が促進されると、必然的に溶剤消費量が増加する。
実験では、溶剤であるメチルエチルケトンに黒色の染料としてクロム錯塩を加えたインクを用い、ポンプ4を回転数160rpmで駆動してスタティックミキサー10を通過させた。図3の右側に示した溶剤消費量は、2回の実験の平均値である。
一方、図3の左側に、スタティックミキサーを通過させないときの溶剤消費量を示した。この溶剤消費量は、同じインクを用い、ポンプ4を回転数178rpmで駆動しながら行った5回の実験の平均値である。
実験の結果、スタティックミキサーを通過させることより、通過させない場合に比較し、溶剤消費量が約45%増加することがわかった。
なお、スタティックミキサーの構造は、上述したような長方形の板をねじったエレメントを複数配置したものに限定されない。流体の流れを利用して攪拌を行うものであれば、どのような構造を採用してもよい。
次に、前述の図1および図2を参照して、インクの粘度を高める際の手順を説明する。
インク溶剤の気化を促進させる前提として、インクの粘度を測定する必要がある。インクの粘度を測定する方法には、特許文献1に記載されたインク粘度を直接測定する方法と、プリントヘッドに供給されるインクの圧力から間接的にインク粘度を測定する方法がある。何れの方法を採用しても、インク溶剤の気化を促進させる効果に変わりはないが、本実施の形態では、検出手段の構成が簡素であることから後者の方法を採用している。
具体的には、プリントヘッド3のノズルから噴出されるインク滴の速度をインク滴速度検出手段74で検出し、プリントヘッド3に供給されるインクの圧力を圧力センサ71で検出している。コントローラ9の記憶装置95には、インク滴の速度およびインクの圧力と、粘度検出手段で検出したインクの粘度との関係を示すデータが、予め記憶されている。
コントローラ9のCPU91は、記憶装置95に記憶されたデータに基づき、インク滴速度検出手段74で検出したインク滴の速度と、圧力センサ71で検出した圧力とに対応した値を算出してインクの粘度とする。
コントローラ9は、算出したインク粘度が、予め定めた値を下回っている場合、切換弁66を分岐管5j側に切り換えて、ガター51で回収されたインクをスタティックミキサー10に導き、スタティックミキサー10を通過させることによってインク溶剤の気化を促進する。
図3に示したように、スタティックミキサー10を通過させることによってインク溶剤の気化が促進され、結果として、インクの粘度が高まる。
コントローラ9は、圧力センサ71で検出した圧力および速度検出手段74で検出した速度に対応したインク粘度が、予め定めた値を超え、適正であると判断したときは、切換弁66を切り換え、インクを、配管5cを通してインクタンク2に移送する。
以上説明したように、スタティックミキサーは、インク溶剤の気化を促進する効果が顕著であるため、インクの粘度を高める手段として最適である。しかも、インクは、インク移送手段であるポンプの駆動力によってスタティックミキサーを通過するため、無駄な電力を消費することもない。
なお、上述した実施の形態では、インク溶剤としてメチルエチルケトンを使用した場合について説明したが、溶剤の気化促進については、他の溶剤を用いた場合にも、同様の効果を発揮することは云うまでもない。
1 インクジェットプリンタ
2 インクタンク
3 プリントヘッド
4 ポンプ
5、5a〜5i 配管
5j 分岐管
9 コントローラ
10 スタティックミキサー
21 タンク本体
22 蓋
41〜44 ダイアフラムユニット
51 ガター
52〜54 フィルタ
55 ダンパー
56 逆止弁
57 絞り
61〜65 開閉弁
66 切換弁
67 インク排出弁
71 圧力センサ
72 温度センサ
73 液面検出センサ
74 インク滴速度検出手段
81、82 補給タンク
83 凝集タンク
91 CPU
92 ROM
93 RAM
94 入力・表示パネル
95 記憶装置
96 バスライン
I インク
図2のコントローラ9は、圧力センサ71、温度センサ72、液面検出センサ73およびインク滴速度検出センサ74の出力信号に基づいて、ポンプ4を回転駆動するモータ45、開閉弁61〜65および切換弁66の動作を制御する。
インクの成分に顔料を含む場合は、時間の経過と共に沈下して下部に溜まる傾向があるため、インクタンク2内のインクを常時攪拌する必要がある。インクを攪拌する場合、コントローラ9の指示に従って開閉弁65を開けると共に、開閉弁63および64を閉じ、ダイアフラムユニット44を駆動してインクタンク2内のインクを配管5gで吸引し、配管5h内のインクをインクタンク2に放出する。

Claims (4)

  1. インクを貯留するインクタンクと、
    当該インクタンクから供給されるインクを被印刷物の表面に向けて噴射するプリントヘッドと、
    当該プリントヘッドのノズルから噴射されたインクのうち印刷に使用されないインクを回収するガターと、
    前記インクタンクから前記プリントヘッドへのインクの移送および前記ガターで回収されたインクの前記インクタンクへの移送を行うポンプと、を備え、
    前記ガターとインクタンクとを結ぶ配管には、当該配管から分岐した分岐管が取り付けられ、
    かつ当該分岐管には、移送されるインクの流れによってインクと空気を攪拌・混合するスタティックミキサーが直列に接続されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
  2. 前記分岐管の分岐箇所には、インクの移送を切り換える切換弁が取り付けられ、インクの粘度が予め定めた値を下回ったとき、前記ガターで回収されたインクは、前記分岐管を通して前記インクタンクに移送される、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
  3. 前記インクタンクのインクを前記プリントヘッドに移送する配管の途中に取り付けられ、インクの圧力を検出する圧力センサと、
    前記プリントヘッドに内蔵され、ノズルから噴射されるインク滴の速度を検出する速度検出手段と、
    前記圧力センサで検出した圧力および前記速度検出手段で検出したインク滴の速度に基づいて、前記プリントヘッドに供給されるインクの粘度を算出すると共に、当該算出値に基づいて前記切換弁の動作を制御するコントローラと、を更に備えた、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
  4. 前記コントローラの記憶装置には、インクの圧力およびインク滴の速度と、インク粘度との関係を示すデータが予め記憶されている、請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
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