以下、図面を参照して本発明を適用した一実施形態を説明するが、本発明を適用可能な形態は以下の実施形態に限られるものではない。
[システム構成]
図1は、本実施形態における追加電源システムAPSの概略構成を示す図である。この追加電源システムAPSは、電化区間のみを走行する直流電気車の既存の電源システムに対して追加設備することで、非電化区間をも走行可能とするためのシステムである。
図1に示すように、追加電源システムAPSは、艤装機器類RASと、制御部CTRとを含んでいる。制御部CTRは、独立した制御装置として構成してもよいし、制御ボードとして構成して既存の制御装置内に組み込んで実現することもできる。
艤装機器類RASは、整流部RCUと、充放電部CDUと、蓄電部BTUとを備える。
整流部RCUは、整流器であるダイオードD1と、ダイオードD1に並列接続された短絡開閉装置SWSとを有し、集電器の一例であるパンタグラフPTと直流電力ラインとの間に接続される。ダイオードD1は、例えば、SiC(シリコンカーバイド)材料を用いたショットキーバリアダイオードによって実現することができる。ダイオードD1は、パンタグラフPTから直流電力ラインへ向かう通流を許容し、逆方向の通流を阻止するように接続される。短絡開閉装置SWSは、制御部CTRからの開閉指示信号WSに従って開閉動作(開放/投入)を行って、開放時にはダイオードD1を介した通流とし、投入時にダイオードD1を短絡して双方向の通流を可能とする開閉装置であり、例えば遮断器によって実現することができる。
蓄電部BTUは、第1蓄電池であるP形蓄電池BT1と、第2蓄電池であるE形蓄電池BT2と、蓄電部整流器であるダイオードD2とを有する。P形蓄電池BT1は、E形蓄電池BT2に比較してパワー密度(例えば重量出力密度[kW/kg]や体積出力密度[kW/L])は高いがエネルギー密度(例えば重量エネルギー密度[Wh/kg]や体積エネルギー密度[Wh/L])が低い蓄電池である。P形蓄電池BT1およびE形蓄電池BT2は、電気車に搭載可能な蓄電池の種類に応じて、パワー密度及びエネルギー密度の観点から選択することができ、例えばリチウムイオンバッテリ等のバッテリセルを複数接続したバッテリモジュールや、電気二重層キャパシタ(EDLC)、鉛蓄電池、リチウムイオンキャパシタ、スーパーキャパシタ、等から実現することができる。
ダイオードD2は、アノードがE形蓄電池BT2側に、カソードがP形蓄電池BT1側に接続され、E形蓄電池BT2からP形蓄電池BT1への通流を許容し、逆方向であるP形蓄電池BT1からE形蓄電池BT2への通流を阻止する。ダイオードD2は、例えば、SiC(シリコンカーバイド)材料を用いたショットキーバリアダイオードによって実現することができる。
蓄電部BTUは、蓄電電圧の最大値である満充電時の放電電圧が、電車線の電圧である架線電圧Vpより高い電圧に構成されている。詳細には、蓄電部BTUが有する2種類のP形蓄電池BT1およびE形蓄電池BT2のそれぞれの蓄電電圧の最大値である満充電時の放電電圧が、架線電圧Vpより高い電圧に構成されている。これにより、後述の架線ハイブリッドモードにおいて蓄電部BTUを浮動充電状態とすることができる。また、2種類のP形蓄電池BT1およびE形蓄電池BT2のそれぞれの電圧は、放電や充電によって異なり得るが、本実施形態では、P形蓄電池BT1の電圧を、蓄電部BTUの電圧である“蓄電電圧Vbat”として扱う。
充放電部CDUは、第1〜第3開閉装置SW1,SW2,SW3と、内部結線用端子TW1,TW2,TW3,TW4と、第2開閉装置SW2を介して一方側が内部結線用端子TW4に接続され、他方側が第3開閉装置SW3を介して蓄電部BTUに接続された充放電電圧変換回路PCと、電流センサ部である電流センサCT1,CT2と、既存の電源システムへの追設に用いられる接続端子部であって、直流電力ラインに接続される接続端子部TC1、および、補機回路XMCに接続される接続端子部TC2とを有する。
第1〜第3開閉装置SW1,SW2,SW3は、それぞれ制御部CTRからの開閉指示信号W1〜W3に基づいて開閉動作(開放/投入)を行う開閉装置であり、例えば、高速度遮断器や接触器を用いて構成することができる。第1〜第3開閉装置SW1,SW2,SW3を接触器等を用いて構成する場合、例えば図2(a)に示すように、充電抵抗CDRと充電抵抗用接触器MKとの直列接続に、充電抵抗バイパス用接触器LBを並列に接続した構成を採用することができる。図2(a)の構成を採用する場合、投入時に、先に充電抵抗用接触器MKを投入状態とした後に、充電抵抗バイパス用接触器LBを後から投入する。これにより、投入時の充放電電圧変換回路PC内の中間コンデンサへの突流を充電抵抗CDRによって防止し、中間コンデンサが所定電圧にほぼ達する段階でその後の電力損失低減のために充電抵抗CDRを短絡する。この動作は時素を持たせて一定時間後に短絡する従来の手法を採用することができる。また、図2(a)の回路の前段に高速度遮断器HBを更に直列に接続した図3(a)に示す回路構成を採用することもできる。更には、第1開閉装置SW1は、図3(b)に示す単体の高速度遮断器HBを用いて構成することもできる。第3開閉装置SW3は、図2(b)に示す単体の接触器LBを用いて構成することもできる。
内部結線用端子TW1,TW2,TW3,TW4は、互いにどの端子を電気的に接続するかで回路構成を変更することができるように設けられている。但し、内部結線用端子TW1は接続端子部TC1に接続されており、内部結線用端子TW3は接続端子部TC2に接続されており、内部結線用端子TW1と内部結線用端子TW2との接続は固定されている。また、内部結線用端子TW2は第1開閉装置SW1に接続されており、内部結線用端子TW4は第2開閉装置SW2に接続されている。
任意に接続できる端子間は、内部結線用端子TW1と内部結線用端子TW3との間、内部結線用端子TW2と内部結線用端子TW4との間、内部結線用端子TW3と内部結線用端子TW4の間、の3箇所である。本実施形態では、この3箇所のうち、(ア)内部結線用端子TW1と内部結線用端子TW3との接続、および、内部結線用端子TW2と内部結線用端子TW4との接続をするか、(イ)内部結線用端子TW3と内部結線用端子TW4との接続のみをするか、で異なる2つの回路を実現する。(ア)の接続による実施例を第1実施例とし、(イ)の接続による実施例を第2実施例として詳細に後述する。
図4に、充放電電圧変換回路PCの回路構成の一例を示す。図4に示すように、充放電電圧変換回路PCは、中間コンデンサFCHを挟んで、左側(一次側/一方側)の第1昇降圧回路、および、右側(二次側/他方側)の第2昇降圧回路を縦続接続した双方向昇圧降圧チョッパとして構成される。一次側(左側)が第2開閉装置SW2側に接続され、二次側(右側)が第3開閉装置SW3側に接続される。第1昇降圧回路のリアクトルCHL1と中間コンデンサFCHとによって一次側のフィルタ回路として機能し、第2昇降圧回路のリアクトルCHL2と中間コンデンサFCHとによって二次側のフィルタ回路として機能している。
充放電電圧変換回路PCは、一次側の供給電力を二次側に変換して出力する充電電圧変換動作と、二次側の供給電力を一次側に変換して出力する放電電圧変換動作とを行う。充電電圧変換動作では、先ず、一次側電圧VDC1に対して第1昇降圧回路が昇圧動作を行い、昇圧後の電圧、つまり、中間コンデンサFCHの両端電圧である中間コンデンサ電圧VDCHに対して、第2昇降圧回路が降圧動作を行うことで、一次側電圧VDC1を二次側電圧VDC2に変換する。また、放電電圧変換動作では、逆に、二次側電圧VDC2に対して第2昇降圧回路が昇圧動作を行い、昇圧後の電圧、つまり、中間コンデンサ電圧VDCHに対して、第1昇降圧回路が降圧動作を行うことで、二次側電圧VDC2を一次側電圧VDC1に変換する。何れの動作においても、昇圧後の電圧が中間コンデンサFCHに印加されることから、動作方向とは逆方向への通流が阻止される。
また、充放電電圧変換回路PCには、不図示であるが、一次側の電圧VDC1、二次側の電圧VDC2および中間コンデンサ電圧VDCHのそれぞれを検出する電圧センサや、一次側に流れる電流および二次側に流れる電流を検出する電流センサが備えられており、各センサの検出結果が制御部CTR乃至スイッチング動作制御を行う充放電電圧変換回路PC内の制御回路に入力されて、充放電電圧変換回路PCの動作制御に利用される。
充放電電圧変換回路PCのスイッチング動作は、適宜公知技術を利用して実現することができる。そのため、本実施形態では、充放電電圧変換回路PCは、制御部CTRから入力される通流率制御信号Sに基づいてスイッチング動作を行うこととして説明し、具体的な充放電電圧変換回路PCのスイッチング動作自体の制御についての説明は省略するが、スイッチング動作の制御は、充放電電圧変換回路PC内に制御回路を備えて実現することとしてもよいし、制御部CTRが行うこととしてもよい。
図1に戻り、電流センサCT1は、内部結線用端子TW1と内部結線用端子TW2との間を流れる電流であって、内部結線用端子TW1から内部結線用端子TW2に向かう方向を正方向として流れる電流の大きさおよび向きを検知するように設けられており、検知した電流は検知電流I1として制御部CTRに出力する。電流センサCT2は、内部結線用端子TW3と接続端子部TC2との間を流れる電流であって、内部結線用端子TW3から接続端子部TC2に向かう方向を正方向として流れる電流の大きさおよび向きを検知するように設けられており、検知した電流は検知電流I2として制御部CTRに出力する。電流センサCT1,CT2は、例えば変流器(CT:Current Transformer)によって実現することができる。制御部CTRは、電源モードの切り替え制御の際に、この検知電流I1,I2を参照して、充放電電圧変換回路PCの動作を制御する。
制御部CTRは、電源モードとして、蓄電部BTUの蓄電電力をもとに走行する蓄電池モードと、パンタグラフPTによって電車線から集電された架線電力および蓄電部BTUの蓄電電力をもとに走行する架線ハイブリッドモードとを切り替える制御を司る。電源モードの切り替えは、電気車の停車時又は惰行時に行うこととする。
以下、この追加電源システムAPSを、既存の直流電気車の電源システムに追加設備した電気車用電源システムの2つの実施例を順に説明する。
[第1実施例]
図5は、第1実施例における電源システムPS1の概略構成図である。この電源システムPS1は、既存の直流電気車の電源システムに、図1の追加電源システムAPSを追加設備した構成である。
1.1 システム構成
既存の電源システムは、パンタグラフPTによって電車線から集電された架線電力が主開閉装置SWMを介して供給される直流電力ラインに、主電動機Mに係る回路である主回路(A系主回路およびB系主回路)が接続されるとともに、パンタグラフPTから見て主開閉装置SWMの前段に、開閉装置SWXを介して補機回路XMCが接続された構成となっている。
主回路は、図5の電源システムPS1ではA系主回路とB系主回路との2系統としているが、1系統のみとしてもよいし、3系統以上の回路を並列に備える構成としてもよい。また、1つの系統が、1台の主変換回路で2台以上の主電動機Mに駆動電力を供給するいわゆる1C2Mや1C4M等の構成を採用することとしてもよい。
A系主回路は、主開閉装置SWAと、主フィルタリアクトルFLAと、主変換回路TCAとが直列に接続された構成を有する。B系主回路も同様に、主開閉装置SWBと、主フィルタリアクトルFLBと、主変換回路TCBとが直列に接続された構成を有する。主変換回路TCA,TCBは、単相電力を三相電力に変換して主電動機Mに駆動電力を供給するインバータ装置であり、入力段に不図示の主フィルタコンデンサを有して構成される。
A系主回路の主開閉装置SWAは、一般的には主変換回路TCAの制御部からの、あるいは制御部CTRからの開閉指示信号Aに基づいて、直流電力ラインとA系主回路との切り離し/接続を行う開閉装置であり、例えば接触器を用いて構成することができる。B系主回路の主開閉装置SWBも同様に、一般的には主変換回路TCBの制御部からの、あるいは制御部CTRからの開閉指示信号Bに基づいて、直流電力ラインとB系主回路との切り離し/接続を行う開閉装置であり、例えば接触器を用いて構成することができる。主開閉装置SWA,SWBは、例えば、図2に示した回路構成を採用することができる。これにより、投入時の主変換回路TCA,TCB内の主フィルタコンデンサへの突流を充電抵抗CDRによって防止することができる。
主開閉装置SWMは、一般的には主変換回路TCA,TCBの制御部からの、あるいは制御部CTRからの開閉指示信号Nに基づいて、パンタグラフPTと直流電力ラインとの切り離し/接続を行う開閉装置であり、例えば高速度遮断器によって実現することができる。
パンタグラフPTは、一般的には運転台からのパンタグラフPTの上昇スイッチや下降スイッチ、または制御部CTRからの状態遷移指示信号Pに基づいて集電状態および非集電状態に状態遷移可能な集電器の一例である。電車線を第3軌条方式とする場合には、パンタグラフPTの代わりに集電器を集電靴として構成することができる。
補機回路XMCは、車内照明や空調などの補機および補機に電力を供給する回路(例えば、静止型インバータ)等を含む電気回路である。
第1実施例の電源システムPS1では、開閉装置SWXは常時“開放状態”とされる。また、主開閉装置SWMと直流電力ラインとの間に、追加電源システムAPSの整流部RCUが設けられる。詳細には、ダイオードD1が、アノードを主開閉装置SWM側に、カソードを直流電力ライン側に接続して設けられ、パンタグラフPTから直流電力ラインに向かう通流を許容し、逆方向である直流電力ラインからパンタグラフPTに向かう通流を阻止する。ダイオードD1に並列接続されている短絡開閉装置SWSを投入しておくことで、この短絡開閉装置SWSを経由して、直流電力ラインからパンタグラフPTに向かう通流が許容され得る。
また、充放電部CDUの接続端子部TC1が直流電力ラインに接続されるとともに、接続端子部TC2が補機用追加接続線によって開閉装置SWXと補機回路XMCとの中間部、あるいは補機回路XMCに直接に接続される。また、内部結線用端子TW1,TW3間が結線され、内部結線用端子TW2,TW4間が結線され、内部結線用端子TW3,TW4間が開放される。
したがって、蓄電部BTUは、第1開閉装置SW1を介して直流電力ラインに接続されるとともに、更に、第1開閉装置SW1および第2開閉装置SW2を介して充放電電圧変換回路PCの一次側に接続され、第3開閉装置SW3を介して充放電電圧変換回路PCの二次側に接続された状態となっている。また、開閉装置SWXは常時開放状態とされるので、直流電力ラインに主回路と補機回路XMCとが並列接続された状態となっている。また、充放電電圧変換回路PCの一次側が、第2開閉装置SW2を介して直流電力ラインに接続され、二次側が、第3開閉装置SW3を介して蓄電部BTUに接続された状態となっている。そして、充放電電圧変換回路PCは、一次側に供給される直流電力ラインからの電力を二次側に変換して出力する充電電圧変換動作や、二次側に供給される蓄電部BTUの蓄電電力を一次側に変換して出力する放電電圧変換動作を行う。また、電流センサCT1は、直流電力ラインと蓄電部BTUとの間の第1通流電流を検知電流I1として検知し、電流センサCT2は、直流電力ラインと補機回路XMCとの間の第2通流電流を検知電流I2として検知する。
なお、第1実施例においては、2台の電流センサCT1,CT2による電流センサ部の代わりに、接続端子部TC1と内部結線用端子TW1の間に1台の電流センサを設けて電流センサ部とし、この電流センサの検知電流I、つまり、直流電力ラインと補機回路XMCとの接続箇所である内部結線用端子TW1よりも主開閉装置SWM寄りの直流電力ラインを流れる通流電流を、後述する制御部CTRによる電源モードの切り替え制御における電流ゼロ制御に用いることもできる。或いは、2台の電流センサCT1,CT2による電流センサ部の代わりに、蓄電部BTUから直流電力ラインへの通流電流である内部結線用端子TW1から内部結線用端子TW2に向かう方向を正方向とする電流と、直流電力ラインから補機回路XMCへの通流電流である内部結線用端子TW3から接続端子部TC2に向かう方向を正方向とする電流と、の合成電流を検知する1台の電流センサを設けて電流センサ部としても良い。
1.2 電源モード
第1実施例では、電源モードとして、架線ハイブリッドモード、蓄電池モード、純架線モード、の3種類のモードが切り替え可能である。それぞれの電源モードについて説明する。
1.2.1 架線ハイブリッドモード
架線ハイブリッドモードは、パンタグラフPTによって集電された架線電力および蓄電部BTUの蓄電電力をもとに走行するとともに、蓄電部BTUを充電するモードであり、電化区間のみに適用可能なモードである。
図6は、架線ハイブリッドモードにおける電気の流れを示す図である。図6において、通流状態にある経路を太線で示している。図6に示すように、架線ハイブリッドモードでは、パンタグラフPTは上昇しており、主開閉装置SWMは投入され、短絡開閉装置SWSは開放されている。つまり、架線電力が直流電力ラインに供給され、この電力をもとに主回路および補機回路XMCが動作可能になっている。また、第1開閉装置SW1が投入され、充放電電圧変換回路PCは動作を停止している。充放電電圧変換回路PCの回路構成上、動作停止により充放電電圧変換回路PCを経由した通流は抑止された状態となるため、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3は原理的には開放/投入の何れでも同じ状態にあるが、フェールセーフの観点から第2開閉装置SW2のみを開放状態としてもよい。つまり、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路としては、充放電電圧変換回路PCを経由しない、第1開閉装置SW1を経由した経路が開通した状態にある。架線ハイブリッドモードでは、架線電圧Vpと蓄電電圧Vbatが略等しく(Vp≒Vbat)なる方向に自然に充放電動作が発生し、架線電圧Vpが蓄電電圧Vbatより小さい場合には主に蓄電部BTUの蓄電電力をもとに、また架線電圧Vpが蓄電電圧Vbat以上の場合には主に架線電力をもとに、主回路および補機回路XMCが動作する。
また、蓄電部BTUが、架線電圧Vpと蓄電電圧Vbatとの大小に応じて自動的に放電および充電がなされる“浮動充電状態”となっている。つまり、力行時に、架線電圧Vpが蓄電電圧Vbatより低くなると(Vp<Vbat)、蓄電部BTUが放電して蓄電電力が直流電力ラインに供給される。この蓄電部BTUの放電は、パワー密度の関係から先ずP形蓄電池BT1が放電し、P形蓄電池BT1の放電電圧が低下すると、電圧差によってその低下分を補充するようにE形蓄電池BT2が放電を開始する。そして、蓄電部BTUの放電による蓄電電圧Vbatの低下や、或いは、一時的な架線電圧VPの上昇などによって、蓄電電圧Vbatが架線電圧Vpより低くなると(Vp>Vbat)、直流電力ラインに供給されている架線電力によって蓄電部BTUが充電される。ダイオードD2の整流作用により、この充電はP形蓄電池BT1のみとなる。つまり、直流電力ラインと蓄電部BTUとの間の電力経路は第1開閉装置SW1を経由する経路のみであるので、直流電力ラインからE形蓄電池BT2に向かう通流はダイオードD2に阻止されてE形蓄電池BT2は充電されない。また、回生時には、ダイオードD1の整流作用により、主電動機Mの回生電力は架線には戻されず、全ての回生電力が蓄電部BTU(詳細には、P形蓄電池BT1)に蓄電されることになる。
なお、架線ハイブリッドモードにおいてE形蓄電池BT2を架線電圧Vpまで充電したい場合には、後述する純架線モードと同様に、充放電電圧変換回路PCによって充電を行うことができる。すなわち、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3を投入し、充放電電圧変換回路PCに充電動作を行わせることで、直流電力ラインに供給されている電力(架線電力または回生電力)を、充放電電圧変換回路PCを経由して蓄電部BTUに蓄電させることができる。充放電電圧変換回路PCを経由する電力経路であるので、蓄電部BTUのP形蓄電池BT1およびE形蓄電池BT2の両方を充電することができるとともに、架線電圧Vpまで充電することができる。
1.2.2 蓄電池モード
蓄電池モードは、蓄電部BTUの蓄電電力をもとに走行するモードである。
図7は、蓄電池モードにおける電気の流れを示す図である。図7において、通流状態にある経路を太線で示している。図7に示すように、蓄電池モードでは、パンタグラフPTは下降しており、主開閉装置SWMおよび短絡開閉装置SWSは開放されている。また、第1開閉装置SW1は投入されており、充放電電圧変換回路PCは動作を停止している。動作停止により充放電電圧変換回路PCを経由した通流は抑止された状態となるため、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3は原理的には開放/投入の何れでも同じ状態にあるが、フェールセーフの観点から第2開閉装置SW2のみを開放状態としてもよい。つまり、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路としては、充放電電圧変換回路PCを経由しない、第1開閉装置SW1を経由した経路が開通した状態にある。蓄電部BTUが放電した蓄電電力のみが直流電力ラインに供給されており、この電力をもとに、主回路および補機回路XMCが動作可能になっている。蓄電部BTUの放電は、上述の架線ハイブリッドモードと同様に、先ずはP形蓄電池BT1が放電し、放電電圧の低下に応じて次にE形蓄電池BT2が放電する。また、回生時には、上述の架線ハイブリッドモードと同様に、全ての回生電力が蓄電部BTUのP形蓄電池BT1に蓄電されることになる。
1.2.3 純架線モード
純架線モードは、パンタグラフPTによる集電電力(架線電力)をもとに走行するモードであり、電化区間のみに適用可能なモードである。
図8は、純架線モードにおける電気の流れを示す図である。図8において、通流状態にある経路を太実線で示している。図8に示すように、純架線モードでは、パンタグラフPTは上昇しており、主開閉装置SWMおよび短絡開閉装置SWSは投入されている。直流電力ラインには、パンタグラフPTからの架線電力が供給され、この電力をもとに主回路および補機回路XMCが動作可能になっている。また、第2開閉装置SW2、第1開閉装置SW1の各開閉装置は開放されている。第3開閉装置SW3は、モードの切り替えまたは充放電電圧変換回路PCを経由したE形蓄電池BT2の充電がなされている場合には投入され、そうでないならば開放されている。また、充放電電圧変換回路PCは動作を停止している。回生電力は、短絡開閉装置SWSおよび主開閉装置SWMを介して架線に戻される。
純架線モードでは、更に、任意のタイミングで蓄電部BTUの充電を行う。蓄電部BTUの充電に係る電流経路を太点線で示している。つまり、純架線モードにおいて、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3を投入し、充放電電圧変換回路PCに充電動作を行わせることで、直流電力ラインに供給されている電力(架線電力または回生電力)が充放電電圧変換回路PCを経由して蓄電部BTUに蓄電される。充放電電圧変換回路PCを経由する電力経路であるので、蓄電部BTUのP形蓄電池BT1およびE形蓄電池BT2の両方を充電することができる。
1.3 制御動作
次に、図9〜図18を参照して制御部CTRによる電源モードの切り替えに関する制御動作を詳細に説明する。これらのモードの選択や切り替えは、運転台における乗務員の指示操作によって行われる。
1.3.1 架線ハイブリッドモードでの起動
図9は、停止している電源システムPS1を架線ハイブリッドモードで起動する際の制御手順を説明するフローチャートである。電源システムPS1が停止しているので、電気車は停車しており、原則、主開閉装置SWM,SWA,SWB、第1〜第3開閉装置SW1,SW2,SW3の各開閉装置は全て開放状態となっており、主変換回路TCA,TCB、補機回路XMC、充放電電圧変換回路PCの各回路も全て動作を停止している。
先ず、運転台からのパンタグラフPTの上昇スイッチの操作に応じてパンタグラフPTに状態遷移指示信号Pを出力することにより、または制御部CTRがパンタグラフPTに状態遷移指示信号Pを出力することにより、パンタグラフPTを集電状態へ遷移させるべく上昇させる(ステップA1)。次に、制御部CTRは、パンタグラフPTが上昇状態にあることを検知して、短絡開閉装置SWSを開放する(ステップA3)。このステップA3は、初期状態で開放となっていない場合に備えた念のためのステップである。
その後、運転台の前進後進スイッチが扱われることで主変換回路TCA,TCBの制御部から主開閉装置SWMに開閉指示信号Nが出力されることにより、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWMに開閉指示信号Nを出力することにより、主開閉装置SWMを投入する(ステップA5)。主開閉装置SWMが投入されることで、パンタグラフPTからの架線電力(架線電圧Vp)が直流電力ラインに供給され、補機類が動作を開始することができる。
次いで、第2開閉装置SW2を投入する(ステップA7)。第2開閉装置SW2が投入されることで、直流電力ラインと充放電電圧変換回路PCの一次側との電力経路が開通する。続いて、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1と、蓄電電圧Vbatとを比較する。一次側電圧VDC1は、実際の架線電圧Vpに相当する。
一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbat以上(VDC1≧Vbat)ならば(ステップA9:YES)、第3開閉装置SW3を投入する(ステップA11)。第3開閉装置SW3が投入されることで、充放電電圧変換回路PCの二次側電圧VDC2が、蓄電電圧Vbatとなる。次いで、充放電電圧変換回路PCの二次側に充電動作を開始させる(ステップA13)。この充電動作は、二次側の第2昇降圧回路の通流率を調整することで、二次側の電流(充電電流)を制御する動作である。中間コンデンサ電圧VDCH(実際の架線電圧Vpに相当)より二次側電圧VDC2(蓄電電圧Vbatに相当)のほうが低いので、充放電電圧変換回路PCの通流方向は一次側から二次側に向かう方向(充電方向)となる。充電動作は、蓄電電圧Vbatが一次側電圧VDC1(実際の架線電圧Vpに相当)に等しくなるまで継続する。
一方、一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbatより低い(VDC1<Vbat)ならば(ステップA9:NO)、充放電電圧変換回路PCの一次側の第1昇降圧回路の昇圧動作を開始させる(ステップA15)。そして、中間コンデンサ電圧VDCHが蓄電電圧Vbatまで上昇したならば、第3開閉装置SW3を投入する(ステップA17)。
このように充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1と蓄電電圧Vbatとの大小に応じた制御を行った後、充放電電圧変換回路PCの動作を停止させる(ステップA19)。次いで、第1開閉装置SW1を投入する(ステップA21)。これにより、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ経路は、充放電電圧変換回路PCを経由した経路から、充放電電圧変換回路PCを経由しない第1開閉装置SW1を経由する経路に切り替わる。更に、充放電電圧変換回路PCの回路構成上、動作停止により充放電電圧変換回路PCを経由した通流は抑止された状態となるため、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3は原理的には開放/投入の何れでも同じ状態にあるが、フェールセーフの観点から、第2開閉装置SW2を開放しても良い(ステップA23)。
その後、乗務員により運転台にある主幹制御器のノッチが扱われることにより主変換回路TCA,TCBの制御部から主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bが出力されることにより、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することにより、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップA25)。これにより、A系回路およびB系回路が直流電力ラインに接続され、架線電圧Vpが蓄電電圧Vbat以上ならばパンタグラフPTによる架線電力が、架線電圧Vpが蓄電電圧Vbatより低いならば蓄電部BTUの蓄電電力が、主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
1.3.2 蓄電池モードで起動
図10は、停止している電源システムPS1を蓄電池モードで起動する際の制御手順を説明するフローチャートである。電源システムPSが1停止しているので、電気車は停車しており、原則、主開閉装置SWM,SWA,SWB、第1〜第3開閉装置SW1,SW2,SW3の各開閉装置は全て開放状態となっており、主変換回路TCA,TCB、補機回路XMC、充放電電圧変換回路PCの各回路も全て動作を停止している。
制御部CTRは、蓄電池起動のトリガを検知すると、パンタグラフPTに状態遷移指示信号Pを出力して、パンタグラフPTを非集電状態へ遷移させるべく下降させる(ステップB1)。蓄電池起動のトリガとしては、運転台に設けたモード選択スイッチの操作や蓄電池投入スイッチの操作による手動トリガなどが考えられる。次に、短絡開閉装置SWSを開放する(ステップB3)。このステップB3は、初期状態で開放となっていない場合に備えた念のためのステップである。
次に、乗務員により運転台の前進後進スイッチが扱われると、制御部CTRは、主開閉装置SWMが開放されていることを確認して、第1開閉装置SW1を投入する(ステップB5)。第1開閉装置SW1が投入されることで、蓄電部BTUの放電電力が直流電力ラインに供給され、補機類が動作を開始することができる。
その後、乗務員により運転台にある主幹制御器のノッチが扱われることにより主開閉装置SWA、SWBに開閉指示信号A,Bが出力されることによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA、SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップB7)。これにより、A系回路およびB系回路が直流電力ラインに接続され、蓄電部BTUの放電電力が主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
1.3.3 架線ハイブリッドモードから蓄電池モードへの切り替え
図11は、架線ハイブリッドモードから蓄電池モードへの切り替え制御手順を説明するフローチャートである。架線ハイブリッドモードから蓄電池モードへの切り替えは、電気車の停車時又は惰行時に行うことが可能であるが、以下では停車時に行うこととして説明する。
架線ハイブリッドモードでは、第1開閉装置SW1および第3開閉装置SW3が投入されている。第2開閉装置SW2は、起動以降にモードの切り替えまたは充放電電圧変換回路PCを経由したE形蓄電池BT2の充電がなされている場合には投入され、そうでないならば開放されている。また、蓄電電圧Vbatが架線電圧Vp以上となっている(ステップC1)。また、電気車は停車しており、主開閉装置SWA,SWBが開放されて主回路は動作を停止しているが、補機回路XMCは、架線電力および蓄電部BTUの蓄電電力が供給されて動作可能又は動作中となっている。
制御部CTRは、蓄電池モードへの切り替えトリガを検知すると、先ず、第2開閉装置SW2を投入する(ステップC3)。これにより、蓄電電圧Vbatが充放電電圧変換回路PCの一次側(一方側)と二次側(他方側)の両方に印加される。蓄電池モードへの切り替えトリガとしては、運転台に設けたモード選択スイッチの操作による手動トリガとしても良いし、予め定められた蓄電池モードに切り替える地点に電気車が到達したことを検知する地点検知による自動トリガとしても良い。
続いて、充放電電圧変換回路PCの一次側の第1昇降圧回路の通流率を「1(全開)」にする(ステップC5)。これにより、充放電電圧変換回路PCを経由して蓄電部BTUの蓄電電力を直流電力ラインに供給する経路が開通する。次に、第1開閉装置SW1を開放する(ステップC7)。これにより、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路は、充放電電圧回路PCを経由する経路のみとなる。
その後、充放電電圧変換回路PCによる直流電力ライン電流ゼロ制御を開始させる(ステップC9)。この電流ゼロ制御は、通流率を調整することで、直流電力ラインに流れる電流Ipをゼロ電流とする制御である。詳細には、電流センサCT1の検知電流I1は内部結線用端子TW1から内部結線用端子TW2に向かう電流であり、電流センサCT2の検知電流I2は内部結線用端子TW3から接続端子部TC2に向かう電流であることから、検知電流I1,I2の合計電流は、接続端子部TC1から内部結線用端子TW1に向かう電流であり、電気車が停車していて主回路には電力消費や回生電力の発生が生じていないことを踏まえると、直流電力ラインに流れる電流Ipに相当する。つまり、電流ゼロ制御は、一次側の放電電流を徐々に増加させて、電流センサCT1,CT2それぞれの検知電流I1,I2の合計電流Ipをゼロ電流とするような制御である。また、この電流ゼロ制御は、充放電電圧変換回路PCの一次側の電流(放電電流)が補機回路XMCの消費電流に相当する状態とするような電流センサCT1,CT2の検知電流I1,I2にもとづく相当電流制御に従って、充放電電圧変換回路PCの二次側に供給される蓄電部BTUの蓄電電力を一次側(一方側)に放電させる放電電圧変換動作に相当する。
直流電力ラインに流れる電流Ipがゼロ電流となったことを検出すると、パンタグラフPTを非集電状態に遷移させるべく下降させる(ステップC11)。直流電力ラインに流れる電流Ipがゼロ電流のため、パンタグラフPTの下降に伴うアークは生じない。電流Ipがゼロ電流となった時点で、直流電力ラインへの供給電力が、パンタグラフPTからの架線電力から、充放電電圧変換回路PCを介した蓄電部BTUの放電電力にほぼ切り替わったことになる。続いて、充放電電圧変換回路PCの一次側の通流率を「1(全開)」に変更する(ステップC13)。これにより、充放電電圧変換回路PCの中間コンデンサ電圧VDCHが蓄電電圧Vbatに収束する。
次いで、第1開閉装置SW1を投入する(ステップC15)。第1開閉装置SW1を投入することで、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路が、充放電電圧変換回路PCを経由する経路と、第1開閉装置SW1を経由する経路との並列した2つの経路となる。2つの電力経路それぞれからの供給電圧は、何れも蓄電電圧Vbatである。そして、充放電電圧変換回路PCの動作を停止する(ステップC17)。これにより、蓄電部BTUから直流電力ラインへの電力経路が、第1開閉装置SW1を経由する経路のみとなる。つまり、蓄電部BTUの放電電力(蓄電電圧Vbat)は、第1開閉装置SW1のみを介して直流電力ラインに供給されることになる。更に、充放電電圧変換回路PCの回路構成上、動作停止により充放電電圧変換回路PCを経由した通流は抑止された状態となるため、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3は原理的には開放/投入の何れでも同じ状態にあるが、フェールセーフの観点から、第2開閉装置SW2を開放しても良い(ステップC19)。
その後、乗務員による運転台にある主幹制御器のノッチが扱われることにより主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bが出力されることによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップC21)。これにより、仮に主開閉装置SWA,SWBが開放された状態であった場合にも投入される。その結果、蓄電部BTUと、A系回路およびB系回路との電力経路が開通して、蓄電部BTUの放電電力が主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
最終的な蓄電池モードは、充放電電圧変換回路PCを経由しない電力経路を介して蓄電部BTUの蓄電電力を主変換回路TCA,TCB及び補機回路XMCに供給する形態となるが、架線ハイブリッドモードから蓄電池モードへ切り替える過程においては、補機回路XMCの動作を継続させるために、充放電電圧変換回路PCを経由する電力経路を介して蓄電部BTUの蓄電電力を補機回路XMCに供給する形態とすることができる。架線ハイブリッドモードと蓄電池モードとの切り替えは、停車時あるいは惰行時に行われるため、切り替えの過程では主電動機Mに駆動電力を供給する必要はない。したがって、充放電電圧変換回路PCを、主電動機Mの駆動電力に対応する容量とする必要が無く、補機回路XMCの動作電力に対応する容量で済むため、その分の小型化を実現できる。
1.3.4 蓄電池モードから架線ハイブリッドモードへの切り替え
図12は、蓄電池モードから架線ハイブリッドモードへの切り替え制御手順を説明するフローチャートである。蓄電池モードから架線ハイブリッドモードへの切り替えは、架線ハイブリッドモードから蓄電池モードへの切り替えと同様に、電気車の停車時又は惰行時に行うことが可能であるが、以下では停車時に行うこととして説明する。
蓄電池モードでは、第2開閉装置SW2が開放され、第1開閉装置SW1が投入された状態にある(ステップD1)。また、電気車は停車しており、主開閉装置SWA,SWBが開放されて主回路は動作を停止しているが、補機回路XMCは、蓄電部BTUの蓄電電力が供給されて動作可能又は動作中となっている。
制御部CTRは、架線ハイブリッドモードへの切り替えトリガを検知すると、先ず、第2開閉装置SW2を投入する(ステップD3)。架線ハイブリッドモードへの切り替えトリガとしては、運転台に設けたモード選択スイッチの操作による手動トリガとしても良いし、予め定められた架線ハイブリッドモードに切り替える地点に電気車が到達したことを検知する地点検知による自動トリガとしても良い。第2開閉装置SW2を投入することで、蓄電部BTUから充放電電圧変換回路PCの一次側までの電力経路が開通する。次に、第3開閉装置SW3が投入状態にある場合はそれを維持する。第3開閉装置SW3が投入状態でなければ投入する(ステップD5)。
続いて、充放電電圧変換回路PCに放電電圧変換動作を開始させて一次側の通流率を「1(全開)」に変更して(ステップD7)、二次側に供給される蓄電部BTUの蓄電電力を一次側(一方側)に放電させる。これにより、蓄電部BTUと直流電力ラインとの電力経路が、第1開閉装置SWを経由する経路と、充放電電圧変換回路PCを経由する経路との並列した2つの経路となる。
続いて、制御部CTRは第1開閉装置SW1を開放する(ステップD9)。第1開閉装置SW1を開放することで、蓄電部BTUの放電電力の供給経路が、充放電電圧変換回路PCを経由する経路のみとなる。次いで、充放電電圧変換回路PCの二次側の昇圧動作を開始させる(ステップD11)。そして、一次側電圧VDC1および中間コンデンサ電圧VDCHが架線電圧Vpの公称値より高い所定値(例えば、650V)まで上昇したならば、充放電電圧変換回路PCによる直流電力ライン電流ゼロ制御を開始させる(ステップD13)。この電流ゼロ制御は、通流率を制御することで、一次側の放電電流を徐々に増加させて、直流電力ラインに流れる電流、つまり、電流センサCT1,CT2の検知電流I1,I2の合計電流をゼロ電流とする制御である。
そして、パンタグラフPTを集電状態へ遷移させるべく上昇させる(ステップD15)。なお、パンタグラフPTを集電状態へ遷移させた直後は、架線電圧Vpの公称値と実際の値とが多少は異なることから、ダイオードD1による架線側への流出防止機能により、直流電力ラインへの架線電流の過渡的な流入のみが発生する場合があるが、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1が架線電圧Vpの公称値より高くなっていることから流入電流の値を低く抑えつつ、充放電電圧変換回路PCの一次側の直流電力ライン電流ゼロ制御によって、補機回路XMCへの供給電圧を実際の架線電圧Vpに収束させることができる。補機回路XMCへの供給電圧が架線電圧Vpに収束したと判断すると、充放電電圧変換回路PCの電流ゼロ制御を停止させる(ステップD17)。これにより、直流電力ラインへの供給電力が、全て架線電力に切り替わる。
続いて、制御部CTRは、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1と、蓄電電圧Vbatとを比較する。一次側電圧は、実際の架線電圧Vpに相当する。一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbat以上であるならば(ステップD19:YES)、短絡開閉装置SWSを投入する(ステップD21)。次いで、充放電電圧変換回路PCの二次側の充電動作を開始させる(ステップD23)。この充電動作は、二次側の第2昇降圧回路の通流率を調整することで、二次側の電流(充電電流)を制御する動作である。一次側電圧VDC1(実際の架線電圧Vpに相当)より二次側電圧VDC2(蓄電電圧Vbatに相当)のほうが低いので、充放電電圧変換回路PCの通流方向は一次側から二次側に向かう方向(充電方向)となる。また、この充電動作は、充放電電圧変換回路PCの一次側(一方側)に供給される直流電力ラインからの電力を二次側(他方側)に変換して出力させる充電電圧変換動作である。そして、充電動作によって蓄電電圧Vbatが一次側電圧VDC1(実際の架線電圧Vpに相当)まで上昇すると、充放電電圧変換回路PCの動作を停止させる(ステップD25)。次いで、短絡開閉装置SWSを開放する(ステップD27)。そして、第1開閉装置SW1を再投入する(ステップD29)。
一方、一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbat未満ならば(ステップD19:NO)、制御部CTRは第1開閉装置SW1を再投入する(ステップD31)。そして、充放電電圧変換回路PCの二次側の動作を停止させる(ステップD33)。
更に、充放電電圧変換回路PCの回路構成上、動作停止により充放電電圧変換回路PCを経由した通流は抑止された状態となるため、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3は原理的には開放/投入の何れでも同じ状態にあるが、フェールセーフの観点から、第2開閉装置SW2を開放しても良い(ステップD35)。
このように充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1と蓄電電圧Vbatとの大小に応じた制御を行うと、続いて、乗務員により運転台にある主幹制御器のノッチが扱われることにより主変換回路TCA,TCBの制御部から主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bが出力されることによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップD37)。これにより、A系回路およびB系回路が直流電力ラインに接続され、パンタグラフPTによる架線電力および蓄電部BTUからの蓄電電力が主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
なお、蓄電電圧Vbatが充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1より低い場合には、充放電電圧変換回路PCによる蓄電部BTUの充電を継続したまま、電気車の走行を開始することができる。すなわち、充放電電圧変換回路の二次側の充電動作を開始させた後(ステップD23)、蓄電電圧Vbatが一次側電圧VDC1まで上昇するのを待たずに、ステップD25〜D29をスキップして、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップD35)。この場合、直流電力ラインから充放電電圧変換回路PCを経由する電力経路で蓄電部BTUを充電することから、P形蓄電池BT1およびE形蓄電池BT2の両方を充電することができる。また、回生電力は、ステップD21で投入されている短絡開閉装置SWSを経由して架線に戻される。
そして、電気車の走行中に、充電によって蓄電電圧Vbatが架線電圧Vpより高い所定値まで上昇すると、制御部CTRは、スキップしたステップD25〜D29、つまり、充放電電圧変換回路PCの動作の停止(ステップD25)、短絡開閉装置SWSの開放(ステップD27)、第1開閉装置SW1の再投入(ステップD29)、を順に実行する。これにより、架線ハイブリッドモードとなり、蓄電部BTUは浮動充電状態となる。
最終的な架線ハイブリッドモードは、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路は充放電電圧変換回路PCを経由しない経路となるが、蓄電池モードから架線ハイブリッドモードへ切り替える過程においては、補機回路XMCの動作を継続させるために、充放電電圧変換回路PCを経由する電力経路を介して蓄電部BTUの蓄電電力を補機回路XMCに供給する形態とすることができる。蓄電池モードと架線ハイブリッドモードとの切り替えは、停車時あるいは惰行時に行われるため、切り替えの過程では主電動機Mに駆動電力を供給する必要はない。したがって、充放電電圧変換回路PCを、主電動機Mの駆動電力に対応する容量とする必要が無く、補機回路XMCの動作電力に対応する容量で済むため、その分の小型化を実現できる。
1.3.5 架線ハイブリッドモードでシステム停止
図13は、架線ハイブリッドモードで電源システムPS1を停止する際の制御手順を説明するフローチャートである。電源システムPS1の停止は、電気車の停車時に行われる。架線ハイブリッドモードでは、第1開閉装置SW1、および第3開閉装置SW3が投入されている。第2開閉装置SW2は、蓄電部BTUのE形蓄電池BT2を充電中ならば投入され、そうでないならば開放されている(ステップE1)。
先ず、乗務員により運転台の前進後進スイッチが中立位置に操作されることにより主変換回路TCA,TCBの制御部が主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することで、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBが開閉指示信号A,Bを出力することで、主開閉装置SWA,SWBを開放する(ステップE3)。次に、運転台のパンタグラフPTの下降スイッチが扱われることにより主変換回路TCA,TCBの制御部が主開閉装置SMWに開閉指示信号Nを出力することによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SMWに開閉指示信号Nを出力することによって、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3を開放する(ステップE5)。次いで、第1開閉装置SW1を開放する(ステップE7)。これにより、直流電力ラインへのパンタグラフPTからの架線電力の供給が遮断されて、補機類の動作が停止する。
その後、主変換回路TCA,TCBの制御部から、または制御部CRTからのパンタグラフPTの状態遷移指示信号Pにより、制御部CTRは、主開閉装置SWMを開放した後(ステップE9)、パンタグラフPTを非集電状態へ遷移させるべく下降させる(ステップE11)。これにより、全ての開閉装置が開放状態となり、電源システムPS1が停止する。
1.3.6 蓄電池モードでシステム停止
図14は、蓄電池モードで電源システムPS1を停止する際の制御手順を説明するフローチャートである。電源システムPS1の停止は、電気車の停車時に行われる。蓄電池モードでは、第1開閉装置SW1が投入され、第2開閉装置SW2が開放されている。第3開閉装置SW3は、起動以降にモードの切り替えまたは充放電電圧変換回路PCを経由したE形蓄電池BT2の充電がなされている場合には投入され、そうでないならば開放されている(ステップF1)。
先ず、例えば運転台の蓄電池投入スイッチの手動オフにより、制御部CTRは第3開閉装置SW3を開放する(ステップF3)。続いて、第1開閉装置SW1を開放する(ステップF5)。これにより、直流電力ラインへの蓄電部BTUの蓄電電力の供給が遮断されて、補機類の動作が停止する。その後、主開閉装置SWMを開放する(ステップF7)。これにより、全ての開閉装置が開放状態となり、電源システムPS1が停止する。
1.3.7 純架線モードで起動
図15は、停止している電源システムPS1を純架線モードで起動する際の制御手順を説明するフローチャートである。電源システムPS1が停止しているので電気車は停車しており、原則、主開閉装置SWM,SWA,SWB、第1〜第3開閉装置SW1,SW2,SW3の各開閉装置は全て開放状態となっており、主変換回路TCA,TCB、補機回路XMC、充放電電圧変換回路PCの各回路も全て動作を停止している。
運転台のパンタグラフPTの上昇スイッチが扱われることによりパンタグラフPTに状態遷移指示信号Pが出力されて、または制御部CTRがパンタグラフPTに状態遷移指示信号Pを出力することによって、パンタグラフPTを集電状態へ遷移させるべく上昇させる(ステップG1)。次に、制御部CTRは、パンタグラフPTが上昇状態にあることを検知して、短絡開閉装置SWSを投入する(ステップG3)。
そして、運転台の前進後進スイッチが扱われることで主変換回路TCA,TCBの制御部が主開閉装置SWMに開閉指示信号Nを出力することにより、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWMに開閉指示信号Nを出力することにより、主開閉装置SWMを投入する(ステップG5)。主開閉装置SWMが投入されることで、パンタグラフPTによる架線電力(架線電圧Vp)が直流電力ラインに供給され、補機類が動作を開始することができる。
その後、乗務員により運転台に設けられた主幹制御器のノッチが扱われたことで主変換回路TCA,TCBの制御部が主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することにより、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することにより、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップG7)。これにより、A系回路およびB系回路が直流電力ラインに接続され、パンタグラフPTによる架線電力が主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
そして、電気車の走行中に充電開始のトリガを検知すると(ステップG9)、制御部CTRは第2開閉装置SW2を投入する(ステップG11)。第2開閉装置SW2を投入することで、直流電力ラインと充放電電圧変換回路PCの一次側とを結ぶ電力経路が開通し、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1が架線電圧Vpとなる。充電開始のトリガとしては、蓄電部BTUの蓄電電圧Vbatを所定の蓄電開始閾値と比較することによる検知や、充電残量SOCを所定の蓄電開始閾値と比較することによる検知、あるいは電気車が充電を開始する地点として予め定められた地点に到達したことを検知したり、電気車が充電を開始する時刻として予め定められた時刻に達したことを検知するといった充電を開始させることを示す検知をトリガとすることが考えられる。
次いで、第3開閉装置SW3を投入する(ステップG13)。第3開閉装置SW3を投入することで、充放電電圧変換回路PCの二次側と蓄電部BTUとを結ぶ電力経路が開通し、充放電電圧変換回路PCの二次側の電力(蓄電電圧Vbat)が蓄電部BTUに供給されて蓄電部BTUの充電が開始される。以降は、充放電電圧変換回路PCの通流率を調整することで、蓄電部BTUの充電電流である二次側の電流の制御(充電動作)を行うことができる(ステップG15)。
その後、充電完了のトリガを検知すると(ステップG17)、充放電電圧変換回路PCの動作を停止させる(ステップG19)。そして、第2開閉装置SW2を開放する(ステップG21)。充電完了のトリガは、蓄電部BTUの蓄電電圧Vbatを所定の充電完了閾値と比較することによる検知や、充電残量SOCを所定の充電完了閾値と比較することによる検知、あるいは電気車が充電を完了する地点として予め定められた地点に到達したことを検知したり、電気車が充電を完了する時刻として予め定められた時刻に達したことを検知するといった充電を完了させることを示す検知をトリガとすることが考えられる。
1.3.8 純架線モードから蓄電池モードへの切り替え
図16は、純架線モードから蓄電池モードへ切り替える際の制御手順を説明するフローチャートである。純架線モードから蓄電池モードへの切り替えは、電気車の停車時又は惰行時に行うことが可能であるが、以下では停車時に行うこととして説明する。
純架線モードでは、第1開閉装置SW1および第2開閉装置SW2が開放されている。第3開閉装置SW3は、起動以降にモードの切り替えまたは充放電電圧変換回路PCを経由したE形蓄電池BT2の充電がなされている場合には投入され、そうでないならば開放されている(ステップH1)。また、電気車は停車しており、主開閉装置SWA,SWBが開放されて主回路は動作を停止しているが、補機回路XMCは、架線電力および蓄電部BTUの蓄電電力が供給されて動作可能又は動作中となっている。
制御部CTRは、蓄電池モードへの切り替えトリガを検知すると、先ず、第2開閉装置SW2を投入する(ステップH3)。第2開閉装置SW2が投入されることにより、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1が架線電圧Vpとなる。蓄電池モードへの切り替えトリガとしては、運転台に設けたモード選択スイッチの操作による手動トリガとしても良いし、地点検知による自動トリガとしても良い。
次いで、充放電電圧変換回路PCに直流電力ライン電流ゼロ制御を開始させる(ステップH5)。この電流ゼロ制御は、通流率を調整することで、一次側の電流(放電電流)を徐々に増加させることで、直流電力ラインに流れる電流Ipをゼロ電流とする制御である。充放電電圧変換回路PCからの放電電流の増加に伴い、補機回路XMCへの供給電力のうちのパンタグラフPTからの架線電力の割合が減少することから、直流電力ラインの電流Ipが減少することになる。直流電力ラインの電流Ipは、電流センサCT1,CT2のそれぞれの検知電流I1,I2の合計電流である。
制御部CTRは、直流電力ラインに流れる電流Ipがゼロ電流となったことを検出すると、パンタグラフPTを非集電状態に遷移させるべく下降させる(ステップH7)。電流Ipがゼロ電流となった時点で、直流電力ラインへの供給電力が、パンタグラフPTからの架線電力から、充放電電圧変換回路PCを介した蓄電部BTUの放電電力にほぼ切り替わったことになる。ゼロ電流のため、パンタグラフPTの下降に伴うアークは生じない。続いて、充放電電圧変換回路PCの一次側の第1昇降圧回路の通流率を「1(全開)」に変更する(ステップH9)。これにより、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1が、蓄電電圧Vbatとなる。
次いで、第1開閉装置SW1を投入する(ステップH11)。第1開閉装置SW1を投入することで、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路が、充放電電圧変換回路PCを経由する経路と、第1開閉装置SW1を経由する経路との並列した2つの経路となる。2つの電力経路それぞれからの供給電圧は、何れも蓄電電圧Vbatである。そして、充放電電圧変換回路PCの動作を停止する(ステップH13)。続いて、第2開閉装置SW2を開放する(ステップH15)。これにより、蓄電部BTUから直流電力ラインへの電力経路が、第1開閉装置SW1を経由する経路のみとなる。つまり、蓄電部BTUの放電電力(蓄電電圧Vbat)は、第1開閉装置SW1のみを介して直流電力ラインに供給されることになる。
その後、乗務員により運転台に設けられた主幹制御器のノッチが扱われることで主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bが出力されることによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップH17)。これにより、仮に主開閉装置SWA,SWBが開放された状態であった場合にも投入される。その結果、蓄電部BTUと、A系回路およびB系回路との電力経路が開通して、蓄電部BTUの放電電力が主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
1.3.9 蓄電池モードから純架線モードへの切り替え
図17は、蓄電池モードから純架線モードへ切り替える際の制御手順を説明するフローチャートである。蓄電池モードから純架線モードへの切り替えは、電気車の停車時又は惰行時に行うことが可能であるが、以下では停車時に行うこととして説明する。
蓄電池モードでは、第1開閉装置SW1が投入され、第2開閉装置SW2が開放された状態にある(ステップI1)。また、電気車は停車しており、主開閉装置SWA,SWBが開放されて主回路は動作を停止しているが、補機回路XMCは、蓄電部BTUの蓄電電力が供給されて動作可能又は動作中となっている。
制御部CTRは、純架線モードへの切り替えトリガを検知すると、先ず、第2開閉装置SW2を投入する(ステップI3)。純架線モードへの切り替えトリガとしては、運転台に設けたモード選択スイッチの操作による手動トリガとしても良いし、電気車が純架線モードへ切り替える地点として予め定められた地点に到達したことを検知する地点検知による自動トリガとしても良い。第2開閉装置SW2を投入することで、蓄電部BTUから充放電電圧変換回路PCの一次側までの電力経路が開通し、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbatとなる。
次に、第3開閉装置SW3が投入状態にあるならばそれを維持する。第3開閉装置SW3が投入状態でないならば投入する(ステップI5)。続いて、充放電電圧変換回路PCに放電電圧変換動作を開始させて一次側の通流率を「1(全開)」に変更する(ステップI7)。これにより、充放電電圧変換回路PCの二次側に供給される蓄電部BTUの蓄電電力が一次側(一方側)に放電されることになり、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路が、第1開閉装置SW1を経由する経路と、充放電電圧変換回路PCを経由する経路との並列した2つの経路となる。
次いで、制御部CTRは、第1開閉装置SW1を開放する(ステップI9)。第1開閉装置SW1を開放することで、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路が、充放電電圧変換回路PCを経由する経路のみとなる。続いて、充放電電圧変換回路PCの二次側の昇圧動作を開始させる(ステップI11)。そして、一次側電圧VDC1および中間コンデンサ電圧VDCHが架線電圧Vpの公称値より高い所定値(例えば、650V)まで上昇したならば、充放電電圧変換回路PCの一次側の直流電力ライン電流ゼロ制御を開始させる(ステップI13)。この電流ゼロ制御は、一次側の第1昇降圧回路の通流率を制御することで、一次側の放電電流を徐々に増加させて、直流電力ラインに流れる電流、つまり、電流センサCT1,CT2の検知電流I1,I2の合計電流をゼロ電流とする制御である。
そして、パンタグラフPTを集電状態へ遷移させるべく上昇させる(ステップI15)。なお、パンタグラフPTを集電状態へ遷移させた直後は、架線電圧Vpの公称値と実際の値とが多少は異なることから、ダイオードD1による架線側への流出防止機能により、直流電力ラインへの架線電流の過渡的な流入のみが発生する場合があるが、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1が架線電圧Vpの公称値より高くなっていること、および、充放電電圧変換回路PCの一次側の直流電力ライン電流ゼロ制御によって、補機回路XMCへの供給電圧を実際の架線電圧Vpに収束させることができる。
補機回路XMCへの供給電圧が架線電圧Vpに収束したと判断すると、充放電電圧変換回路PCの一次側の電流ゼロ制御を停止させる(ステップI17)。これにより、直流電力ラインへの供給電力が、全て架線電力に切り替わる。その後、主開閉装置SWSを投入する(ステップI19)。これにより、回生電力は、短絡開閉装置SWSおよび主開閉装置SWMを介して架線に戻される。
続いて、制御部CTRは、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1と、蓄電電圧Vbatとを比較する。一次側電圧は、実際の架線電圧Vpに相当する。一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbat以上であるならば(ステップI21:YES)、充放電電圧変換回路PCの二次側の充電動作を開始させる(ステップI23)。この充電動作は、二次側の第2昇降圧回路の通流率を調整することで、二次側の電流(充電電流)を制御する動作である。一次側電圧VDC1(実際の架線電圧Vpに相当)より二次側電圧VDC2(蓄電電圧Vbatに相当)のほうが低いので、充放電電圧変換回路PCの通流方向は一次側から二次側に向かう方向(充電方向)となる。また、この充電動作は、充放電電圧変換回路PCの一次側(一方側)に供給される直流電力ラインからの電力を二次側(他方側)に変換して出力させる充電電圧変換動作である。そして、充電動作によって蓄電電圧Vbatが一次側電圧VDC1(実際の架線電圧Vpに相当)まで上昇すると、充放電電圧変換回路PCの動作を停止させる(ステップI25)。
一方、一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbat未満ならば(ステップI21:NO)、制御部CTRは、充放電電圧変換回路PCの二次側の動作を停止させる(ステップI25)。
このように充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1と蓄電電圧Vbatとの大小に応じた制御を行った後、第1開閉装置SW1を開放する(ステップI27)。
その後、乗務員により運転台に設けられた主幹制御器のノッチが扱われることにより主変換回路TCA,TCBの制御部から主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bが出力されることによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、制御部CTRは主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップI29)。これにより、A系回路およびB系回路が直流電力ラインに接続され、パンタグラフPTからの架線電力および蓄電部BTUからの蓄電電力が主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
なお、蓄電電圧Vbatが充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1より低い場合には、充放電電圧変換回路PCによる蓄電部BTUの充電を継続したまま、電気車の走行を開始することができる。すなわち、充放電電圧変換回路の二次側の充電動作を開始させた後(ステップI23)、蓄電電圧Vbatが一次側電圧VDC1まで上昇するのを待たずに、ステップI25とI27をスキップして、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップI29)。この場合、直流電力ラインから充放電電圧変換回路PCを経由する電力経路で蓄電部BTUを充電することから、P形蓄電池BT1およびE形蓄電池BT2の両方を充電することができる。また、回生電力は、ステップI19で投入されている短絡開閉装置SWSを経由して架線に戻される。
そして、電気車の走行中に、充電によって蓄電電圧Vbatが架線電圧Vpより高い所定値まで上昇すると、制御部CTRは、スキップしたステップI25とI27、つまり、充放電電圧変換回路PCの動作の停止(ステップI25)、第1開閉装置SW1の開放(ステップI27)を実行する。これにより、純架線モードとなり、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路が遮断される。
1.3.10 純架線モードでシステム停止
図18は、純架線モードで電源システムPS1を停止する際の制御手順を説明するフローチャートである。電源システムPS1の停止は、電気車の停車時に行われる。純架線モードでは、第1開閉装置SW1および第2開閉装置SW2が開放されている。第3開閉装置SW3は、起動以降にモードの切り替えまたは充放電電圧変換回路PCを経由したE形蓄電池BT2の充電がなされている場合には投入され、そうでないならば開放されている(ステップJ1)。
先ず、乗務員により運転台の前進後進スイッチが中立位置に操作されることで主変換回路TCA,TCBの制御部が主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、制御部CTRは主開閉装置SWA,SWBを開放する(ステップJ3)。次に、運転台のパンタグラフPTの下降スイッチが扱われることで主変換回路TCA,TCBの制御部が短絡開閉装置SWSに開閉指示信号WSを出力することによって、あるいは制御部CTRが短絡開閉装置SWSに開閉指示信号WSを出力することによって、短絡開閉装置SWSを開放する(ステップJ5)。
その後、主変換回路TCA,TCBの制御部から、または制御部CRTからのパンタグラフPTの状態遷移指示信号Pにより、制御部CTRは主開閉装置SWMを開放した後(ステップJ7)、パンタグラフPTを非集電状態へ遷移させるべく下降させる(ステップJ9)。これにより、全ての開閉装置が開放状態となり、電源システムPS1が停止する。
1.4 作用効果
以上、第1実施例によれば、非電化区間に対応するための必要艤装空間の低減を図る新たな電気車用の電源システムPS1を実現することができる。具体的には、主回路および補機回路XMCが接続された直流電力ラインと、蓄電部BTUとを結ぶ電力経路として、充放電電圧変換回路PCを経由する経路と経由しない経路とを備える構成としている。これにより、非電化区間を走行する際の蓄電池モードや、電化区間を走行する際の架線ハイブリッドモードにおいては、蓄電部BTUからの放電電力を、充放電電圧変換回路PCを介さずに主変換回路TCA,TCBに供給することが可能となる。つまり、充放電電圧変換回路PCを、主電動機Mの駆動電力に対応する容量とする必要が無く、補機回路XMCの動作電力に対応する容量で済むため、その分の小型化を実現できる。
また、追加電源システムAPSによれば、電化区間にのみ対応していた電気車用電源システムの機器を利用して、非電化区間に対応可能となる。
更には、蓄電池モードへと架線ハイブリッドモードとへの切り替えの何れにおいても、突流発生や電車線への逆流を防止しつつ、車内照明や空調などの補機動作を継続させたままの切り替えを実現することができる。
[第2実施例]
次に、第2実施例を説明する。なお、以下の第2実施例において、上述の第1実施例と同一の構成要素については同符号を付し、詳細な説明を省略或いは簡略する。
2.1 システム構成
図19は、第2実施例における電源システムPS2の概略構成図である。この電源システムPS2は、既存の直流電気車の電源システムに、図1の追加電源システムAPSを追加設備した構成である。
既存の電源システムは、上述の第1実施例と同様である。つまり、パンタグラフPTによって電車線から集電された架線電力が主開閉装置SWMを介して供給される直流電力ラインに、主電動機Mに係る回路である主回路(A系主回路およびB系主回路)が接続されるとともに、パンタグラフPTから見て主開閉装置SWMの前段に、開閉装置SWXを介して補機回路XMCが接続された構成となっている。
第2実施例の電源システムPS2では、開閉装置SWXは常時“接続状態”とされる。また、充放電部CDUにおいて、内部結線用端子TW3,TW4間が結線され、内部結線用端子TW1,TW3間と、内部結線用端子TW2,TW4間とが開放される。
したがって、蓄電部BTUは、第1開閉装置SW1を介して直流電力ラインに接続され、第3開閉装置SW3を介して充放電電圧変換回路PCの二次側に接続された状態となっている。また、開閉装置SWXは常時接続状態とされるので、補機回路XMCは、パンタグラフから見て主開閉装置SWMの前段に接続された状態、つまり、主開閉装置SWMを介さずにパンタグラフPTに接続されたとなっている。また、充放電電圧変換回路PCは、一次側が、第2開閉装置SW2を介して補機回路XMCに接続され、二次側が、第3開閉装置SW3を介して蓄電部BTUに接続された状態となっている。
2.2 電源モード
第2実施例においても、上述の第1実施例と同様に、電源モードとして、架線ハイブリッドモード、蓄電池モード、純架線モード、の3種類のモードが切り替え可能である。それぞれの電源モードについて説明する。
2.2.1 架線ハイブリッドモード
架線ハイブリッドモードは、パンタグラフPTによって集電された架線電力および蓄電部BTUの蓄電電力をもとに走行するとともに、蓄電部BTUを充電するモードであり、電化区間のみに適用可能なモードである。
図20は、架線ハイブリッドモードにおける電気の流れを示す図である。図20において、通流状態にある経路を太線で示している。図20に示すように、架線ハイブリッドモードでは、パンタグラフPTは上昇しており、主開閉装置SWMは投入され、短絡開閉装置SWSは開放されている。つまり、架線電力が直流電力ラインに供給され、この電力をもとに主回路が動作可能になっている。また、開閉装置SWXは常時接続状態であるので、補機回路XMCは、開閉装置SWXを介して供給される架線電力をもとに動作可能又は動作中である。
また、第1開閉装置SW1が投入され、充放電電圧変換回路PCは動作を停止している。充放電電圧変換回路PCの回路構成上、動作停止により充放電電圧変換回路PCを経由した通流は抑止された状態となるため、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3は原理的には開放/投入の何れでも同じ状態にあるが、フェールセーフの観点から第2開閉装置SW2のみを開放状態としても良い。つまり、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路は、充放電電圧変換回路PCを経由しない、第1開閉装置SW1を経由した経路が開通した状態にある。主回路は、直流電力ラインに供給される架線電力および蓄電部BTUの蓄電電力の両方をもとに動作可能になっている。補機回路XMCは、短絡開閉装置SWSが開放されているのでパンタグラフPTからの架線電力のみをもとに動作可能になっている。
架線ハイブリッドモードでは、第1実施例と同様に、架線電圧Vpと蓄電電圧Vbatとが略等しく(Vp≒Vbat)なる方向に自然に充放電動作が発生し、蓄電部BTUは、架線電圧Vpと蓄電電圧Vbatとの大小に応じて自動的に放電および充電がなされる“浮動充電状態”となっている。つまり、力行時に、架線電圧Vpが蓄電電圧Vbatより低くなると(Vp<Vbat)、蓄電部BTUが放電して蓄電電力が直流電力ラインに供給され、逆に、蓄電電圧Vbatが架線電圧Vpより低くなると(Vp>Vbat)、直流電力ラインに供給されている架線電力によって蓄電部BTUが充電される。この充電はP形蓄電池BT1のみとなる。また、全ての回生電力が蓄電部BTU(詳細には、P形蓄電池BT1)に蓄電される。
なお、架線ハイブリッドモードにおいてE形蓄電池BT2を架線電圧Vpまで充電したい場合には、後述する純架線モードと同様に、充放電電圧変換回路PCによって充電を行うことができる。すなわち、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3を投入し、充放電電圧変換回路PCに充電動作を行わせることで、開閉装置SWXおよび補機用追加接続線を介して供給される架線電力を、充放電電圧変換回路PCを経由して蓄電部BTUに蓄電させることができる。充放電電圧変換回路PCを経由する電力経路であるので、蓄電部BTUのP形蓄電池BT1およびE形蓄電池BT2の両方を充電することができるとともに、架線電圧Vpまで充電することができる。
2.2.2 蓄電池モード
蓄電池モードは、蓄電部BTUの蓄電電力をもとに走行するモードである。
図21は、蓄電池モードにおける電気の流れを示す図である。図21において、通流状態にある経路を太線で示している。図21に示すように、蓄電池モードでは、パンタグラフPTは下降しており、主開閉装置SWMおよび短絡開閉装置SWSは投入されている。また、第1開閉装置SW1は投入されており、充放電電圧変換回路PCは動作を停止している。動作停止により充放電電圧変換回路PCを経由した通流は抑止された状態となるため、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3は原理的には開放/投入の何れでも同じ状態にあるが、フェールセーフの観点から第2開閉装置SW2のみを開放状態としても良い。つまり、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路は、充放電電圧変換回路PCを経由しない、第1開閉装置SW1を経由した経路が開通した状態にある。蓄電部BTUの蓄電電力をもとに、主回路および補機回路XMCが動作可能になっている。補機回路XMCへは、直流電力ライン、短絡開閉装置SWS、主開閉装置SWMおよび開閉装置SWXを介して、蓄電部BTUの蓄電電力が供給されている。
蓄電部BTUの放電は、上述の架線ハイブリッドモードと同様に、先ずはP形蓄電池BT1が放電し、放電電圧の低下に応じて次にE形蓄電池BT2が放電する。また、回生時には、上述の架線ハイブリッドモードと同様に、全ての回生電力が蓄電部BTUのP形蓄電池BT1に蓄電されることになる。
2.2.3 純架線モード
純架線モードは、パンタグラフPTによる架線電力をもとに走行するモードであり、電化区間のみで適用可能なモードである。
図22は、純架線モードにおける電気の流れを示す図である。図22において、通流状態にある経路を太実線で示している。図22に示すように、純架線モードでは、パンタグラフPTは上昇しており、主開閉装置SWMおよび短絡開閉装置SWSは投入されている。補機回路XMCは、開閉装置SWXを介して供給されるパンタグラフPTからの架線電力をもとに動作可能になっており、主回路は、直流電力ラインに供給されるパンタグラフPTからの架線電力をもとに動作可能になっている。また、第2開閉装置SW2および第1開閉装置SW1は開放されている。第3開閉装置SW3は、起動以降にモードの切り替えまたは充放電電圧変換回路PCを経由したE形蓄電池BT2の充電がなされている場合には投入され、そうでないならば開放されている。充放電電圧変換回路PCは動作を停止している。回生電力は、短絡開閉装置SWSおよび主開閉装置SWMを介して架線に戻される。
純架線モードでは、更に、任意のタイミングで蓄電部BTUの充電を行う。蓄電部BTUの充電に係る電流経路を太点線で示している。つまり、純架線モードにおいて、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3を投入し、充放電電圧変換回路PCに充電動作を行わせることで、開閉装置SWXおよび補機用追加接続線を介して供給されるパンタグラフPTからの架線電力が充放電電圧変換回路PCを経由して蓄電部BTUに蓄電される。充放電電圧変換回路PCを経由する電力経路であるので、蓄電部BTUのP形蓄電池BT1およびE形蓄電池BT2の両方を充電することができる。
2.3 制御動作
次に、図23〜図32を参照して制御部CTRによる電源モードの切り替えに関する制御動作を詳細に説明する。これらの電源モードの選択や切り替えは、運転台における乗務員の指示操作によって行われる。
2.3.1 架線ハイブリッドモードでの起動
図23は、停止している電源システムPS2を架線ハイブリッドモードで起動する際の制御手順を説明するフローチャートである。電源システムPS2が停止しているので、電気車は停車しており、原則、主開閉装置SWM,SWA,SWB、第1〜第3開閉装置SW1,SW2,SW3の各開閉装置は全て開放状態となっており、主変換回路TCA,TCB、補機回路XMC、充放電電圧変換回路PCの各回路も全て動作を停止している。
運転台からのパンタグラフPTの上昇スイッチの操作に応じてパンタグラフPTに状態遷移指示信号Pを出力することにより、または制御部CTRがパンタグラフPTに状態遷移指示信号Pを出力することにより、先ず、パンタグラフPTを集電状態へ遷移させるべく上昇させる(ステップK1)。パンタグラフPTが上昇されることで、架線電力(架線電圧Vp)が補機回路XMCに供給されて補機類が動作を開始することができる。次に、制御部CTRは、パンタグラフPTが上昇状態にあることを検知して、短絡開閉装置SWSを開放する(ステップK3)。このステップK3は、初期状態で開放となっていない場合に備えた念のためのステップである。
その後、運転台の前進後進スイッチが扱われることで主変換回路TCA,TCBの制御部から主開閉装置SWMに開閉指示信号Nが出力されることにより、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWMに開閉指示信号Nを出力することにより、主開閉装置SWMを投入する(ステップK5)。主開閉装置SWMが投入されることで、パンタグラフPTからの架線電力が直流電力ラインに供給される。
次いで、第2開閉装置SW2を投入する(ステップK7)。第2開閉装置SW2が投入されることで、パンタグラフPTから充放電電圧変換回路PCの一次側までの電力経路が開通して、充放電電圧変換回路PCの中間コンデンサFCHに架線電圧Vpが印加される。
続いて、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1と、蓄電電圧Vbatとを比較する。一次側電圧VDC1は、実際の架線電圧Vpに相当する。一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbat以上(VDC1≧Vbat)ならば(ステップK9:YES)、第3開閉装置SW3を投入する(ステップK11)。第3開閉装置SW3が投入されることで、充放電電圧変換回路PCの二次側電圧VDC2が、蓄電電圧Vbatとなる。次いで、充放電電圧変換回路PCの二次側に充電動作を開始させる(ステップK13)。充電動作は、二次側電圧VDC2(蓄電電圧Vbatに相当)が一次側電圧VDC1(実際の架線電圧Vpに相当)に等しくなるまで継続する。
一方、一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbatより低い(VDC1<Vbat)ならば(ステップK9:NO)、充放電電圧変換回路PCの一次側の第1昇降圧回路の昇圧動作を開始させる(ステップK15)。そして、中間コンデンサ電圧VDCHが蓄電電圧Vbatまで上昇したならば、第3開閉装置SW3を投入する(ステップK17)。
このように充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1と蓄電電圧Vbatとの大小に応じた制御を行った後、充放電電圧変換回路PCの動作を停止させる(ステップK19)。次いで、第1開閉装置SW1を投入する(ステップK21)。これにより、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路が、第1開閉装置SW1を経由する経路のみとなる。
更に、充放電電圧変換回路PCの回路構成上、動作停止により充放電電圧変換回路PCを経由した通流は抑止された状態となるため、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3は原理的には開放/投入の何れでも同じ状態にあるが、フェールセーフの観点から、第2開閉装置SW2を開放しても良い(ステップK23)。
その後、乗務員により運転台にある主幹制御器のノッチが扱われることにより主変換回路TCA,TCBの制御部から主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bが出力されることにより、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することにより、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップK25)。これにより、A系回路およびB系回路が直流電力ラインに接続され、パンタグラフPTによる架線電力が主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
2.3.2 蓄電池モードで起動
図24は、停止している電源システムPS2を蓄電池モードで起動する際の制御手順を説明するフローチャートである。電源システムPS2が1停止しているので、電気車は停車しており、原則、主開閉装置SWM,SWA,SWB、第1〜第3開閉装置SW1,SW2,SW3の各開閉装置は全て開放状態となっており、主変換回路TCA,TCB、補機回路XMC、充放電電圧変換回路PCの各回路も全て動作を停止している。
制御部CTRは、蓄電池起動のトリガを検知すると、パンタグラフPTに状態遷移指示信号Pを出力して、パンタグラフPTを非集電状態へ遷移させるべく下降させる(ステップL1)。蓄電池起動のトリガとしては、運転台に設けたモード選択スイッチの操作や蓄電池投入スイッチの操作による手動トリガとするなどが考えられる。次に、短絡開閉装置SWSを投入する(ステップL3)。このステップL3は、初期状態で開放となっていない場合に備えた念のためのステップである。
次に、乗務員により運転台の前進後進スイッチが扱われると、制御部CTRは、主開閉装置SWMが開放されていることを確認して、第1開閉装置SW1を投入する(ステップL5)。次いで、主開閉装置SWMを投入する(ステップL7)。これにより、蓄電部BTUの放電電力が補機回路XMCに供給されて補機類が動作を開始することができる。
その後、乗務員により運転台にある主幹制御器のノッチが扱われることにより主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bが出力されることによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA、SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップL9)。これにより、A系回路およびB系回路が直流電力ラインに接続され、蓄電部BTUの放電電力が主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
2.3.3 架線ハイブリッドモードから蓄電池モードへの切り替え
図25は、架線ハイブリッドモードから蓄電池モードへの切り替え制御手順を説明するフローチャートである。架線ハイブリッドモードから蓄電池モードへの切り替えは、電気車の停車時又は惰行時に行うことが可能であるが、以下では停車時に行うこととして説明する。
架線ハイブリッドモードでは、第1開閉装置SW1、第3開閉装置SW3および主開閉装置SWMが投入された状態となっている。第2開閉装置SW2は、蓄電部BTUのE形蓄電池BT2の充電中ならば投入され、そうでないならば開放されている(ステップM1)。また、電気車は停車しており、主開閉装置SWA,SWBが開放されて主回路は動作を停止しているが、補機回路XMCは、パンタグラフPTからの架線電力が供給されて動作可能又は動作中となっている。
制御部CTRは、蓄電池モードへの切り替えトリガを検知すると、先ず、第2開閉装置SW2を投入する(ステップM3)。これにより、架線電圧Vpが充放電電圧変換回路PCの一次側(一方側)に、蓄電電圧Vbat(より正確にはE形蓄電池BT2の電圧)が充放電電圧変換回路PCの二次側(他方側)に、架線電圧Vpと蓄電電圧Vbatのいずれか高い値が中間コンデンサFCHに印加される。蓄電池モードへの切り替えトリガとしては、運転台に設けたモード選択スイッチの操作による手動トリガとしても良いし、予め定められた蓄電池モードに切り替える地点に電気車が到達したことを検知する地点検知による自動トリガとしても良い。
次いで、充放電電圧変換回路PCの動作を開始させる(ステップM5)。この動作は、二次側に供給される蓄電部BTUの蓄電電力を一次側に変換して出力し、一次側電圧VDC1を架線電圧Vpとする電圧変換動作である。具体的には、電流センサCT2で計測される補機回路XMC側に流れ出る電流値Ixが、補機回路XMCの最大許容電力を架線電圧Vpの公称値で除した許容電流値の半分の値Ihalfとなる程度に、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1を調整して固定する制御を行う。これにより、補機回路XMCには、パンタグラフPTからの架線電力と、充放電電圧変換回路PCを介した蓄電部BTUの蓄電電力とが供給された状態となり、何れの供給電力も架線電圧Vpである。
続いて、パンタグラフPTを非集電状態に遷移させるべく下降させる(ステップM7)。これにより、補機回路XMCに供給される電力は、充放電電圧変換回路PCを介した蓄電部BTUの蓄電電力のみとなる。なお、架線電圧Vpと充放電変換回路PCの一次側電圧VDC1とがほぼ同じ値で、かつ補機回路XMCへの供給電力の半分以上が充放電電圧変換回路PCを経由して供給されていることから、パンタグラフPTを非集電状態へ遷移させる際のアーク発生は小さく抑えられる。
続いて、充放電電圧変換回路PCの一次側の通流率を「1(全開)」に変更する(ステップM9)。これにより、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbatとなる。次に、短絡開閉装置SWSを投入する(ステップM11)。これにより、蓄電部BTUと補機回路XMCとの電力経路が、第1開閉装置SW1および短絡開閉装置SWSを経由する経路と、充放電電圧変換回路PCを経由する経路との並列した2つの経路となる。そして、充放電電圧変換回路PCの二次側の動作を停止する(ステップM13)。
更に、充放電電圧変換回路PCの回路構成上、動作停止により充放電電圧変換回路PCを経由した通流は抑止された状態となるため、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3は原理的には開放/投入の何れでも同じ状態にあるが、フェールセーフの観点から、第2開閉装置SW2を開放しても良い(ステップM15)。
その後、乗務員により運転台にある主幹制御器のノッチが扱われることにより主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bが出力されることによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップM17)。これにより、仮に主開閉装置SWA,SWBが開放された状態であった場合にも投入される。その結果、蓄電部BTUと、A系回路およびB系回路との電力ラインが開通して、蓄電部BTUの放電電力が主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
最終的な蓄電池モードは、充放電電圧変換回路PCを経由しない電力経路を介して蓄電部BTUの蓄電電力を主変換回路TCA,TCB及び補機回路XMCに供給する形態となるが、架線ハイブリッドモードから蓄電池モードへ切り替える過程においては、補機回路XMCの動作を継続させるために、充放電電圧変換回路PCを経由する電力経路を介して蓄電部BTUの蓄電電力を補機回路XMCに供給する形態とすることができる。架線ハイブリッドモードと蓄電池モードとの切り替えは、停車時あるいは惰行時に行われるため、切り替えの過程では主電動機Mに駆動電力を供給する必要はない。したがって、充放電電圧変換回路PCを、主電動機Mの駆動電力に対応する容量とする必要が無く、補機回路XMCの動作電力に対応する容量で済むため、その分の小型化を実現できる。
2.3.4 蓄電池モードから架線ハイブリッドモードへの切り替え
図26は、蓄電池モードから架線ハイブリッドモードへの切り替え制御手順を説明するフローチャートである。蓄電池モードから架線ハイブリッドモードへの切り替えは、架線ハイブリッドモードから蓄電池モードへの切り替えと同様に、電気車の停車時又は惰行時に行うことが可能であるが、以下では停車時に行うこととして説明する。
蓄電池モードでは、第2開閉装置SW2が開放され、第1開閉装置SW1および短絡開閉装置SWSが投入された状態にある(ステップN1)。また、電気車は停車しており、主開閉装置SWA,SWBが開放されて主回路は動作を停止しているが、補機回路XMCは、蓄電部BTUの蓄電電力が供給されて動作可能又は動作中となっている。
制御部CTRは、架線ハイブリッドモードへの切り替えトリガを検知すると、先ず、第2開閉装置SW2を投入する(ステップN3)。架線ハイブリッドモードへの切り替えトリガとしては、運転台に設けたモード選択スイッチの操作による手動トリガとしても良いし、予め定められた架線ハイブリッドモードに切り替える地点に電気車が到達したことを検知する地点検知による自動トリガとしても良い。
次に、第3開閉装置SW3が投入状態にある場合はそれを維持する。第3開閉装置SW3が投入状態でなければ投入する(ステップN5)。続いて、充放電電圧変換回路PCに放電電圧変換動作を開始させて一次側の通流率を「1(全開)」に変更する(ステップN7)。これにより、補機回路XMCへの蓄電部BTUの蓄電電力の供給経路が、直流電力ラインを経由する経路と、充放電電圧変換回路PCを経由する経路と、の2つになる。
続いて、制御部CTRは、第1開閉装置SW1を開放する(ステップN9)。第1開閉装置SW1を開放することで、補機回路XMCへの蓄電部BTUの蓄電電力の供給経路が、充放電電圧変換回路PCを経由する経路のみとなる。そして、パンタグラフPTを集電状態へ遷移させるべく上昇させる(ステップN11)。これにより、パンタグラフPTからの架線電力が補機回路XMCに供給される。次いで、充放電電圧変換回路PCの一次側の動作を停止させる(ステップN13)。これにより、補機回路XMCへの供給電力が架線電力のみとなる。なお、パンタグラフPTの上昇直後には、パンタグラフPTにおける架線電流の過渡的な流入/流出が発生するが、充放電変換回路PCの一次側の第1昇降圧回路の動作停止(ステップN13)によって中間コンデンサ電圧VDCHから架線側への電流流出は止まり、また架線電圧Vpが蓄電電圧Vbatよりも低い場合は、中間コンデンサ電圧VDCHが架線電圧Vpまで瞬時に充電されることでそれ以降の流入は止まる。
続いて、制御部CTRは、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1と、蓄電電圧Vbatとを比較する。一次側電圧は、実際の架線電圧Vpに相当する。一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbat以上であるならば(ステップN15:YES)、充放電電圧変換回路PCの二次側の充電動作を開始させる(ステップN17)。この充電動作が、一次側に供給される架線電力を一次側に変換して出力させる充電電圧変換動作である。そして、充電動作によって蓄電電圧Vbatが一次側電圧VDC1(実際の架線電圧Vpに相当)まで上昇すると、充放電電圧変換回路PCの動作を停止させる(ステップN19)。次いで、短絡開閉装置SWSを開放する(ステップN21)。そして、第1開閉装置SW1を再投入する(ステップN23)。
一方、一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbat未満ならば(ステップN15:NO)、制御部CTRは、短絡開閉装置SWSを開放する(ステップN25)。次に、第1開閉装置SW1を再投入する(ステップN27)。そして、充放電電圧変換回路PCの二次側の動作を停止させる(ステップN29)。
更に、充放電電圧変換回路PCの回路構成上、動作停止により充放電電圧変換回路PCを経由した通流は抑止された状態となるため、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3は原理的には開放/投入の何れでも同じ状態にあるが、フェールセーフの観点から、第2開閉装置SW2を開放しても良い(ステップN31)。
このように充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1と蓄電電圧Vbatとの大小に応じた制御を行うと、続いて、乗務員により運転台にある主幹制御器のノッチが扱われることにより主変換回路TCA,TCBの制御部から主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bが出力されることによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップN33)。これにより、A系回路およびB系回路が直流電力ラインに接続され、パンタグラフPTによる架線電力が主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
なお、蓄電電圧Vbatが充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1より低い場合には、充放電電圧変換回路PCによる蓄電部BTUの充電を継続したまま、電気車の走行を開始することができる。すなわち、充放電電圧変換回路の二次側の充電動作を開始させた後(ステップN17)、蓄電電圧Vbatが一次側電圧VDC1まで上昇するのを待たずに、ステップN19〜N23をスキップして、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップN33)。この場合、パンタグラフPTから開閉装置SWXおよび充放電電圧変換回路PCを経由する電力経路で蓄電部BTUを充電することから、P形蓄電池BT1およびE形蓄電池BT2の両方を充電することができる。また、回生電力は、ステップD21で投入されている短絡開閉装置SWSを経由して架線に戻される。
そして、電気車の走行中に、充電によって蓄電電圧Vbatが架線電圧Vpより高い所定値まで上昇すると、制御部CTRは、スキップしたステップN19〜N23、つまり、充放電電圧変換回路PCの動作の停止(ステップN19)、短絡開閉装置SWSの開放(ステップN21)、第1開閉装置SW1の再投入(ステップN23)、を順に実行する。これにより、架線ハイブリッドモードとなり、蓄電部BTUは浮動充電状態となる。
最終的な架線ハイブリッドモードは、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路は充放電電圧変換回路PCを経由しない経路となるが、蓄電池モードから架線ハイブリッドモードへ切り替える過程においては、補機回路XMCの動作を継続させるために、充放電電圧変換回路PCを経由する電力経路を介して蓄電部BTUの蓄電電力を補機回路XMCに供給する形態とすることができる。蓄電池モードと架線ハイブリッドモードとの切り替えは、停車時あるいは惰行時に行われるため、切り替えの過程では主電動機Mに駆動電力を供給する必要はない。したがって、充放電電圧変換回路PCを、主電動機Mの駆動電力に対応する容量とする必要、補機回路XMCの動作電力に対応する容量で済むため、その分の小型化を実現できる。
2.3.5 架線ハイブリッドモードでシステム停止
図27は、架線ハイブリッドモードで電源システムPS2を停止する際の制御手順を説明するフローチャートである。電源システムPS2の停止は、電気車の停車時に行われる。架線ハイブリッドモードでは、第1開閉装置SW1および第3開閉装置SW3が投入されている。第2開閉装置SW2は、蓄電部BTUのE形蓄電池BT2の充電中ならば投入されており、そうでないならば開放されている(ステップO1)。
先ず、乗務員により運転台の前進後進スイッチが中立位置に操作されることにより主変換回路TCA,TCBの制御部が主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することで、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することで、主開閉装置SWA,SWBを開放する(ステップO3)。次に、運転台のパンタグラフPTの下降スイッチが扱われることにより主変換回路TCA,TCBの制御部が主開閉装置SWMに開閉指示信号Nを出力することによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SMWに開閉指示信号Nを出力することによって、第2開閉装置SW2および第3開閉装置SW3を開放する(ステップO5)。次いで、第1開閉装置SW1を開放する(ステップO7)。これにより、蓄電部BTUの蓄電電力の直流電力ラインへの供給が停止される。
その後、主変換回路TCA,TCBの制御部から、または制御部CRTからのパンタグラフPTの状態遷移指示信号Pにより、主開閉装置SWMを開放した後(ステップO9)、パンタグラフPTを非集電状態へ遷移させるべく下降させる(ステップO11)。これにより、補機回路XMCへのパンタグラフPTからの架線電力の供給が停止されて補機類の動作が停止する。そして、電源システムPS2が停止する。
2.3.6 蓄電池モードでシステム停止
図28は、蓄電池モードで電源システムPS2を停止する際の制御手順を説明するフローチャートである。電源システムPS2の停止は、電気車の停車時に行われる。蓄電池モードでは、第1開閉装置SW1が投入され、第2開閉装置SW2が開放されている。第3開閉装置SW3は、起動以降にモードの切り替えまたは充放電電圧変換回路PCを経由したE形蓄電池BT2の充電がなされている場合には投入され、そうでないならば開放されている(ステップP1)。
先ず、例えば運転台の蓄電池投入スイッチの手動オフにより、制御部CTRは第2開閉装置SW2を開放する(ステップP3)。続いて、第1開閉装置SW1を開放する(ステップP5)。これにより、直流電力ラインへの蓄電部BTUの蓄電電力の供給が遮断されて、補機類の動作が停止する。その後、主開閉装置SWMを開放する(ステップP7)。これにより、全ての開閉装置が開放状態となり、電源システムPS2が停止する。
2.3.7 純架線モードで起動
図29は、停止している電源システムPS2を純架線モードで起動する際の制御手順を説明するフローチャートである。電源システムPS2が停止しているので電気車は停車しており、原則、主開閉装置SWM,SWA,SWB、第1〜第3開閉装置SW1,SW2,SW3の各開閉装置は全て開放状態となっており、主変換回路TCA,TCB、補機回路XMC、充放電電圧変換回路PCの各回路も全て動作を停止している。
運転台からのパンタグラフPTの上昇スイッチが扱われることによりパンタグラフPTに状態遷移指示信号Pが出力されて、または制御部CTRがパンタグラフPTに状態遷移指示信号Pを出力することによって、パンタグラフPTを集電状態へ遷移させるべく上昇させる(ステップQ1)。これにより、パンタグラフPTによる架線電力が補機回路XMCに供給されて補機類が動作を開始することができる。次に、制御部CTRは、パンタグラフPTが上昇状態にあることを検知して、短絡開閉装置SWSを投入する(ステップQ3)。
そして、運転台の前進後進スイッチが扱われることで主変換回路TCA,TCBの制御部が主開閉装置SWMに開閉指示信号Nを出力することにより、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWMに開閉指示信号Nを出力することにより、主開閉装置SWMを投入する(ステップQ5)。主開閉装置SWMが投入されることで、パンタグラフPTによる架線電力が直流電力ラインに供給される。
その後、乗務員により運転台に設けられた主幹制御器のノッチが扱われたことで主変換回路TCA,TCBの制御部が主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することにより、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することにより、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップQ7)。これにより、A系回路およびB系回路が直流電力ラインに接続され、パンタグラフPTによる架線電力が主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
そして、電気車の走行中に充電開始のトリガを検知すると(ステップQ9)、制御部CTRは、第2開閉装置SW2を投入する(ステップQ11)。第2開閉装置SW2を投入することで、パンタグラフPTによる架線電力が充放電電圧変換回路PCの一次側に供給され、一次側電圧VDC1が架線電圧Vpとなる。充電開始のトリガとしては、蓄電部BTUの蓄電電圧Vbatを所定の蓄電開始閾値と比較することによる検知や、充電残量SOCを所定の蓄電開始閾値と比較することによる検知、あるいは電気車が充電を開始する地点として予め定められた地点に到達したことを検知したり、電気車が充電を開始する時刻として予め定められた時刻に達したことを検知するといった充電を開始させることを示す検知をトリガとすることが考えられる。
続いて、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1と、蓄電電圧Vbatとを比較する。一次側電圧VDC1は、実際の架線電圧Vpに相当する。一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbat以上(VDC1≧Vbat)ならば(ステップQ13:YES)、第3開閉装置SW3を投入する(ステップQ15)。第3開閉装置SW3を投入することで、充放電電圧変換回路PCの二次側と蓄電部BTUとを結ぶ電力経路が開通する。そして、充放電電圧変換回路PCの二次側の充電動作を開始させる(ステップQ17)。充電動作は、一次側に供給される架線電力を二次側に変換して出力する電圧変換動作であり、通流率を調整することで、蓄電部BTUの充電電流である二次側の電流を制御することができる。
一方、一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbat未満(VDC1<Vbat)ならば(ステップQ13:NO)、充放電電圧変換回路PCの一次側の昇圧動作を開始させて、中間コンデンサ電圧VDCHを蓄電電圧Vbatまで上昇させる(ステップQ19)。また、充放電電圧変換回路PCの二次側の通流率を「1(全開)」に変更する(ステップQ21)。次いで、第3開閉装置SW3を投入する(ステップQ23)。続いて、充放電電圧変換回路PCの動作を停止させる(ステップQ25)。
このように充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1と蓄電電圧Vbatとの大小に応じた制御を行う。その後、充電完了のトリガを検知すると(ステップQ27)、充放電電圧変換回路PCの動作を停止させる(ステップQ29)。そして、第2開閉装置SW2を開放する(ステップQ31)。充電完了のトリガは、蓄電部BTUの蓄電電圧Vbatを所定の充電完了閾値と比較することによる検知や、充電残量SOCを所定の充電完了閾値と比較することによる検知、あるいは電気車が充電を完了する地点として予め定められた地点に到達したことを検知したり、電気車が充電を完了する時刻として予め定められた時刻に達したことを検知するといった充電を完了させることを示す検知をトリガとすることが考えられる。
2.3.8 純架線モードから蓄電池モードへの切り替え
図30は、純架線モードから蓄電池モードへ切り替える際の制御手順を説明するフローチャートである。純架線モードから蓄電池モードへの切り替えは、電気車の停車時又は惰行時に行うことが可能であるが、以下では停車時に行うこととして説明する。
純架線モードでは、第1開閉装置SW1および第2開閉装置SW2が開放され、主開閉装置SWMが投入された状態にある。第3開閉装置SW3は、起動以降にモードの切り替えまたは充放電電圧変換回路PCを経由したE形蓄電池BT2の充電がなされている場合には投入され、そうでないならば開放されている(ステップR1)。また、電気車は停車しており、主開閉装置SWA,SWBが開放されて主回路は動作を停止しているが、補機回路XMCは、架線電力および蓄電部BTUの蓄電電力が供給されて動作可能又は動作中となっている。
制御部CTRは、蓄電池モードへの切り替えトリガを検知すると、先ず、第2開閉装置SW2を投入する(ステップR3)。次いで、第3開閉装置SW3を投入する(ステップR5)。これにより、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1が架線電圧Vpとなり、二次側電圧VDC2が蓄電電圧Vbatとなる。蓄電池モードへの切り替えトリガとしては、運転台に設けたモード選択スイッチの操作による手動トリガとしても良いし、地点検知による自動トリガとしても良い。
次いで、充放電電圧変換回路PCの動作を開始させる(ステップR7)。この動作は、一次側電圧VDC1を架線電圧Vpに維持するように、二次側に供給される蓄電部BTUの蓄電電力を一次側に変換して出力する電圧変換動作である。これにより、補機回路XMCには、パンタグラフPTによる架線電力と、蓄電部BTUの蓄電電力とが供給された状態となり、何れの供給電圧も架線電圧Vpである。そして、パンタグラフPTを非集電状態に遷移させるべく下降させる(ステップR9)。これにより、補機回路XMCへの供給電力は、充放電電圧変換回路PCを介した蓄電部BTUの蓄電電力のみとなる。
続いて、充放電電圧変換回路PCの通流率を「1(全開)」に変更する(ステップR11)。これにより、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbatとなり、補機回路XMCへの蓄電電力の供給電圧が蓄電電圧Vbatとなる。次いで、第1開閉装置SW1を投入する(ステップR15)。第1開閉装置SW1を投入することで、蓄電部BTUと直流電力ラインとを結ぶ電力経路が開通し、蓄電部BTUの蓄電電力が補機回路XMCに供給される。そして、充放電電圧変換回路PCの動作を停止する(ステップR17)。これにより、蓄電部BTUから補機回路XMCへの電力経路が、直流電力ラインを経由する経路のみとなる。
その後、乗務員により運転台に設けられた主幹制御器のノッチが扱われることで主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bが出力されることによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップR19)。これにより、仮に主開閉装置SWA,SWBが開放された状態であった場合にも投入される。その結果、蓄電部BTUと、A系回路およびB系回路との電力ラインが開通して、蓄電部BTUの放電電力が主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
2.3.9 蓄電池モードから純架線モードへの切り替え
図31は、蓄電池モードから純架線モードへ切り替える際の制御手順を説明するフローチャートである。蓄電池モードから純架線モードへの切り替えは、電気車の停車時又は惰行時に行うことが可能であるが、以下では停車時に行うこととして説明する。
蓄電池モードでは、第2開閉装置SW2が開放され、第1開閉装置SW1および短絡開閉装置SWSが投入された状態にある(ステップS1)。また、電気車は停車しており、主開閉装置SWA,SWBが開放されて主回路は動作を停止しているが、補機回路XMCは、蓄電部BTUの蓄電電力が供給されて動作可能又は動作中となっている。
制御部CTRは、純架線モードへの切り替えトリガを検知すると、先ず、第2開閉装置SW2を投入する(ステップS3)。純架線モードへの切り替えトリガとしては、運転台に設けたモード選択スイッチの操作による手動トリガとしても良いし、電気車が純架線モードへ切り替える地点として予め定められた地点に到達したことを検知する地点検知による自動トリガとしても良い。第2開閉装置SW2を投入することで、蓄電部BTUから充放電電圧変換回路PCの一次側までの電力経路が開通し、充放電電圧変換回路PCの一次側電圧VDC1が蓄電電圧Vbatとなる。
次に、第3開閉装置SW3を投入する(ステップS5)。第3開閉装置SW3を投入することで、蓄電部BTUから充放電電圧変換回路PCの二次側までの電力経路が開通し、充放電電圧変換回路PCの二次側電圧VDC2が蓄電電圧Vbatとなる。そして、充放電電圧変換回路PCの一次側の通流率を「1(全開)」に変更する(ステップS7)。これにより、補機回路XMCへの蓄電部BTUの蓄電電力の供給経路が、直流電力ラインを経由する経路と、充放電電圧変換回路PCを経由する経路と、の2つとなる。
続いて、第1開閉装置SW1を開放する(ステップS9)。第1開閉装置SW1を開放することで、補機回路XMCへの蓄電部BTUの蓄電電力の供給経路が、充放電電圧変換回路PCを経由する経路のみとなる。そして、パンタグラフPTを集電状態へ遷移させるべく上昇させる(ステップS11)。これにより、補機回路XMCに、パンタグラフPTによる架線電力が供給されるようになる。次いで、充放電電圧変換回路PCの一次側の動作を停止させる(ステップS13)。そして、第2開閉装置SW2を開放する(ステップS15)。これにより、補機回路XMCへの蓄電部BTUの蓄電電力の供給が停止され、補機回路XMCへの供給電力は架線電力のみとなる。
その後、乗務員により運転台に設けられた主幹制御器のノッチが扱われると主変換回路TCA,TCBの制御部が主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、主開閉装置SWA,SWBを投入する(ステップS17)。これにより、A系回路およびB系回路が直流電力ラインに接続され、パンタグラフPTからの架線電力が主変換回路TCA,TCBへ供給されて主電動機Mの駆動が可能となる。
2.3.10 純架線モードでシステム停止
図32は、純架線モードで電源システムPS2を停止する際の制御手順を説明するフローチャートである。電源システムPS2の停止は、電気車の停車時に行われる。純架線モードでは、第1開閉装置SW1および第2開閉装置SW2は開放されている。第3開閉装置SW3は、起動以降にモードの切り替えまたは充放電電圧変換回路PCを経由したE形蓄電池BT2の充電がなされている場合には投入され、そうでないならば開放されている(ステップT1)。
先ず、乗務員により運転台の前進後進スイッチが中立位置に操作されることで主変換回路TCA,TCBの制御部が主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、あるいは制御部CTRが主開閉装置SWA,SWBに開閉指示信号A,Bを出力することによって、主開閉装置SWA,SWBを開放する(ステップT3)。次に、運転台のパンタグラフPTの下降スイッチが扱われることで主変換回路TCA,TCBの制御部、あるいは制御部CTRよって、第3開閉装置SW3か開放されていなければ開放する(ステップT5)。続いて、短絡開閉装置SWSを開放する(ステップT7)。
その後、主変換回路TCA,TCBの制御部から、または制御部CRTからのパンタグラフPTの状態遷移指示信号Pにより、主開閉装置SWMを開放した後(ステップT9)、パンタグラフPTを非集電状態へ遷移させるべく下降させる(ステップT11)。これにより、全ての開閉装置が開放状態となり、電源システムPS2が停止する。
2.4 作用効果
以上、第2実施例によれば、非電化区間に対応するための必要艤装空間の低減を図る新たな電気車用の電源システムPS2を実現することができる。具体的には、主回路が接続された直流電力ラインと、蓄電部BTUとを結ぶ電力経路として、充放電電圧変換回路PCを経由する経路と経由しない経路とを備える構成としている。これにより、非電化区間を走行する際の蓄電池モードや、電化区間を走行する際の架線ハイブリッドモードにおいては、蓄電部BTUからの放電電力を、充放電電圧変換回路PCを介さずに主変換回路TCA,TCBに供給することが可能となる。つまり、充放電電圧変換回路PCを、主電動機Mの駆動電力に対応する容量とする必要が無く、補機回路XMCの動作電力に対応する容量で済むため、その分の小型化を実現できる。
また、追加電源システムAPSによれば、電化区間にのみ対応していた電気車用電源システムの機器を利用して、非電化区間に対応可能となる。
更には、蓄電池モードへと架線ハイブリッドモードとへの切り替えの何れにおいても、突流発生や電車線への逆流を防止しつつ、車内照明や空調などの補機動作を継続させたままの切り替えを実現することができる。
[変形例]
なお、本発明を適用可能な形態は上述した実施形態に限られるものではない。例えば、蓄電部BTUは、P形蓄電池BT1と、E形蓄電池BT2との2種類を備える構成としたが、どちら1種類の蓄電池のみで構成することとしてもよい。その場合、削除する方の蓄電池およびダイオードD2を除いて、選択された1種類の蓄電池のみで蓄電部BTUを構成することができる。またその場合、P形蓄電池BT1とE形蓄電池BT2とのうち、好適にはP形蓄電池BT1で蓄電部BTUを構成すると良い。
また、上述の実施形態では、主開閉装置SWMの開閉指示信号N、主開閉装置SWA,SWBの開閉指示信号A,Bを既存の主変換回路TCA,TCBの制御部に残したままとし、追加電源システムAPSの制御部CTRにおいては、パンタグラフPTの状態遷移指示信号P、第1〜第3開閉装置SW1,SW2,SW3それぞれの開閉指示信号W1〜W3、電流センサCTの検知電流I、充放電電圧変換回路PCの通流率制御信号S、を扱うものとして説明してきたが、制御部CTRが各信号を統合して扱っても良い。
また、上述した実施形態では、直流電気車の電源システムとして説明したが、交流電気車に本発明を適用することも可能である。具体的には、直流電力ラインを、交流電気車の直流リンク部(変圧器およびPWM整流器によって電車線の交流電力が直流電力に変換された電力ライン)に見立てて、追加電源システムAPSをその直流リンク部に追加する構成とすることで、非電化区間の走行を可能とすることができる。その場合、パンタグラフPTの集電状態/非集電状態の遷移とともに、PWM整流器の動作/停止を制御すると好適である。