JP2020067094A - ガスタンクのライナーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ライナーと口金の境界に塗布したFIPGの段差を簡易な手法で小さくする。【解決手段】 筒状の中空容器をなすライナーの端部に口金を装着し、ライナーと口金の境界に液状ガスケットを第1塗布方法を用いてライナーの軸心回りに帯状に塗布する。この第1塗布方法による帯状塗布は、液状ガスケットの塗布開始ポイントから軸心回りに開始され、塗布開始ポイントから軸心回りに間隙を残した塗布終了ポイントで終了する。これにより、塗布開始ポイントと塗布終了ポイントとの間に、液状ガスケットが塗布されていない未塗布領域を形成する。そして、この未塗布領域において、少なくとも境界に液状ガスケットを第1塗布方法とは異なる第2塗布方法を用いて塗布する。【選択図】 図13
Description
本発明は、ガスタンクのライナーの製造方法に関する。
ガスタンクのライナーは、タンク内のガス供給とタンク内へのガス充填のため、端部に口金を装着している。通常、ライナーは、軽量化の観点から、ガスバリア性を有する樹脂製の中空容器とされ、口金は、金属成形品とされている。このため口金・ライナー間のガスシール性の確保と、樹脂含浸の繊維束を巻き付ける際の樹脂のライナー内への含浸の回避を図る必要があり、特許文献1では、ライナーと口金の境界に液状ガスケットを塗布することが提案されている。
液状ガスケットは、FIPG(Formed In Place Gasket)と称され、硬化前の液状の形態で、塗布ヘッドからライナーと口金の境界に押し出されて塗布される。塗布ヘッドからのFIPGの押し出しは、塗布開始ポイントからライナーの軸心回りに継続され、塗布ヘッドが1周すると停止される。しかし、FIPGの押し出し停止時においてFIPGが塗布開始ポイントに塗布済みのFIPGに重なると、その重なり部において段差が生じてしまう。段差が生じたままFIPGが硬化すると、その後にライナーに巻き付けられる樹脂含浸の繊維束の巻き付け領域において隙間が生じてしまい、タンク強度の低下を来しかねない。FIPGの重なり段差を小さくするには、特許文献1で提案されているようにプレートで厚みを均衡化すればよいが、ライナー軸回りに亘るプレート操作を必要とする分だけ手間が掛かる。こうしたことから、ライナーと口金の境界に塗布したFIPGの段差を簡易な手法で小さくすることが要請されるに至った。
本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、ガスタンクのライナーの製造方法が提供される。このガスタンクのライナーの製造方法は、筒状の中空容器をなす前記ライナーの端部に口金を装着する工程と、前記ライナーと前記口金の境界に液状ガスケットを前記ライナーの軸心回りに帯状に塗布する第1塗布方法を用いて、前記液状ガスケットの帯状の塗布を、前記液状ガスケットの塗布開始ポイントから前記ライナーの軸心回りに開始して、前記塗布開始ポイントから前記軸心回りに間隙を残した塗布終了ポイントで終了し、前記塗布開始ポイントと前記塗布終了ポイントとの間に、前記液状ガスケットが塗布されていない未塗布領域を形成する工程と、前記未塗布領域において、少なくとも前記境界に前記液状ガスケットを前記第1塗布方法とは異なる第2塗布方法を用いて、帯状の塗布とは別に塗布する工程とを備える。この形態のガスタンクのライナーの製造方法によれば、液状ガスケットの帯状の塗布の塗布開始ポイントと塗布終了ポイントとの間に第1塗布方法により未塗布領域を形成するので、ライナーと口金の境界に塗布した液状ガスケットの重なりを生じないようにできる。その上で、未塗布領域において境界に液状ガスケットを帯状の塗布とは別に第2塗布方法により塗布することで、口金の境界をライナーの軸心回りの全域に亘って液状ガスケットでシールできる。この場合、未塗布領域において液状ガスケットが塗布されない未塗布部位があっても、この未塗布部位は、ライナーと口金の境界に塗布したFIPGの重なり段差の領域より小さい。よって、この形態のガスタンクのライナーの製造方法によれば、ライナーと口金の境界に塗布した液状ガスケットの段差を、第1塗布方法を用いた液状ガスケットの帯状の塗布と、第2塗布方法を用いたその後の未塗布領域における境界への液状ガスケットの塗布という簡易な手法で小さくできる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、ライナーへの液状ガスケットの塗布方法や、ライナーの外表に繊維束を巻回してライナーに繊維層を形成する高圧ガスタンクの製造方法等の形態で実現することができる。
図1は本発明の実施形態としての高圧ガスタンク100の外観を概略的に示す説明図である。図2は図1における2−2線に沿った高圧ガスタンク100の概略的な断面図である。図3はライナー10の構成を側面において半断面視して示す説明図である。図4はライナー10の正面図である。図5はライナー10の要部構成を図4における5−5線に沿って断面視して示す説明図である。図6はライナー10の要部構成を図4における6−6線に沿って断面視して示す説明図である。
図示するように、高圧ガスタンク100は、ライナー10を繊維強化樹脂層102で被覆して構成され、口金16を両端から突出させている。繊維強化樹脂層102は、熱硬化性樹脂を含浸した繊維束をFW法によりライナー外周に繰り返し巻き付けることで形成され、後述するように、繊維束の巻き付けの際には、フープ巻きによる繊維束の巻き付けと低角度・高角度のヘリカル巻きによる繊維束の巻き付けとが使い分けられる。繊維強化樹脂層102の形成には、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いることが一般的であるが、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。また、FW法によりライナー外周に巻回させる補強用の繊維(スライバー繊維)としては、ガラス繊維やカーボン繊維、アラミド繊維等が用いられる他、複数種類(例えば、ガラス繊維とカーボン繊維)のFW法による巻き付けを順次行うことで、繊維強化樹脂層102を異なる繊維からなる樹脂層を積層させて形成することもできる。
ライナー10は、中空容器であり、タンク長手方向の中央で2分割された一対のライナーパーツの接合品である。2分割のライナーパーツは、それぞれナイロン系樹脂等の適宜な樹脂にて型成型され、その型成型品のライナーパーツを接合してその接合箇所をレーザー融着することで、ライナー10が形成される。このパーツ接合を経て、ライナー10は、円筒状のシリンダー部12の両側に球面形状のドーム部14を備えることになる。このライナー10は、ドーム部14の頂上箇所、即ちライナー10の軸心AXに沿った長手方向端部に、口金16の装着用の陥没台座部14rを備え、その中央に貫通孔14hを有する。この貫通孔14hは、ライナー軸線と一致して形成され、口金16の位置決め孔として機能する。
口金16は、金属製とされ、陥没台座部14rに入り込む口金フランジ16fと、当該フランジからドーム部頂上側に突出した口金本体16bと、口金フランジ16fからライナー中央に突出した凸部16tと、バルブ接続孔16hを備える。凸部16tは、ドーム部14の貫通孔14hに嵌合され、貫通孔14hと協働して口金16をライナー10に対して位置決めする。バルブ接続孔16hは、口金16の中央を貫通し、その開口側に配管接続用の高圧シール仕様のテーパネジ部を有する。上記した両タンク口金は、繊維強化樹脂層102等の形成のための繊維巻回の際の回転軸装着にも用いられ、一方の口金16は、バルブ接続孔16hをタンク内部で閉塞した有底孔としている。
口金フランジ16fは、フランジ厚みが外側に行くほど減ずるように弧状に形成されており、陥没台座部14rの凹所内周壁14rsとの間に、境界15を形成する。境界15は、陥没台座部14rの底面まで口金16の軸方向に沿って延びる凹所とされている。そして、この境界15は、凹所開口の側に液状ガスケットであるFIPGの塗布を経て形成される後述の帯状ガスケット部18と点状ガスケット部19とで、シールされる。なお、ドーム部14の凹所内周壁14rsは、図4に示すように、ライナー10の軸心AX回りに矩形波形状に蛇行してライナー軸を取り囲むよう形成され、口金フランジ16fにあっても、その外周縁16feを凹所内周壁14rsの蛇行形状に合致して蛇行させている。このため、境界15は、この蛇行軌跡に沿ってライナー10の軸心AXを取り囲む。
帯状ガスケット部18は、蛇行軌跡の境界15をその凹所開口側でシールするよう、ライナー10の軸心AX回りに形成されるが、図4に示すように、塗布開始ポイント18Sと塗布終了ポイント18Eとの間においては、形成されない。塗布開始ポイント18Sと塗布終了ポイント18Eとの間の間隙は、帯状ガスケット部18の形成のためのFIPGの塗布がなさない未塗布領域18Nとなる。そして、この未塗布領域18Nでは、帯状ガスケット部18とは別の点状ガスケット部19がFIPGの塗布を経て形成されている。本実施形態では、ライナー10の半径に沿って二つの点状ガスケット部19を未塗布領域18Nに形成し、一方の点状ガスケット部19で、未塗布領域18Nにおける境界15をその凹所開口側でシールする。帯状ガスケット部18および点状ガスケット部19の形成については、後述する。
図7は高圧ガスタンク100の製造工程の前半を示す工程図である。図8は高圧ガスタンク100の製造工程の後半を示す工程図である。まず、ライナー10を製造する(工程S100)。ライナー製造に当たっては、樹脂成形である一対のライナーパーツと上記構成の口金16とを準備した上で、口金16をライナーパーツのドーム部14に組み付け装着する(工程S102)。具体的には、各ライナーパーツにおけるドーム部14の陥没台座部14rに、口金16の口金フランジ16fを入り込ませた上で、ドーム部14の貫通孔14hに口金16の凸部16tを嵌合させる。これにより、口金16は、ドーム部14に位置決めされてドーム部14に装着され、口金16をドーム部頂上に有するライナーパーツが得られる。このライナーパーツにおいては、装着済みの口金16における口金フランジ16fの外周縁16feと陥没台座部14rの凹所内周壁14rsとの間に、境界15が既述した蛇行軌跡で形成される。
次いで、口金16を両端に装着済みの一対のライナーパーツを、シリンダー部12の側で接合してその接合箇所をレーザー融着して組み付ける(工程S104)。これにより、口金16を両端に装着済みのライナー10が得られる。こうして得られたライナー10の両端の側の境界15へのFIPGの塗布を経て、帯状ガスケット部18と点状ガスケット部19とを形成する(工程S106)。この工程では、先の手順1において、それぞれのドーム部14における境界15にFIPGをライナー10の軸心AX回りに帯状に塗布して帯状ガスケット部18を形成し、続く手順2において、未塗布領域18NにFIPGを点状に塗布して点状ガスケット部19を形成する。なお、帯状ガスケット部18および点状ガスケット部19は、塗布されたFIPGの乾燥養生を経て、FIPGが硬化し、固形のガスケット部として形成される。以下の説明に当たっては、乾燥養生前ではあるものの、説明の便宜上、帯状ガスケット部18や点状ガスケット部19がFIPGの塗布により形成されると記載する。
図9はFIPGの塗布を経て帯状ガスケット部18を形成する手順1の最初の状況を示す説明図である。図10は手順1においてFIPGを帯状に塗布する様子を塗布ヘッド112とドーム部14とを関連付けて示す説明図である。図11は手順1における帯状ガスケット部18の形成過程をライナー10に対する塗布ヘッド112の相対的な移動と関連付けて示す説明図である。図12は手順1における帯状ガスケット部18の形成終了の様子を塗布ヘッド112の相対的な移動と関連付けて示す説明図である。図13は手順1に続いて点状ガスケット部19を形成する手順2の最初の状況を示す説明図である。図14は手順2においてFIPGを点状に塗布する様子を点状塗布ヘッド120および塗布ヘッド112をドーム部14に関連付けて示す説明図である。
帯状ガスケット部18の形成する手順1では、図9に示すように、塗布ヘッド112をFIPGの塗布開始ポイント18Sにセットすると共に、図10に示すように、口金16を装着済みのライナー10を軸心AX回りに低速で定回転させる。塗布ヘッド112は、図10に示すように、ライナー10のドーム部14に対して昇降可能であり、図示しない昇降機構により、ドーム部14の上方側の初期位置からドーム部14の表面、詳しくは境界15の凹所開口周辺のドーム部表面の側に降下する。この降下位置は、帯状ガスケット部18を規定厚み(例えば1.0〜1.5mm)で形成することを想定した位置であり、FIPGの粘度等を考慮して定まる。そして、塗布開始ポイント18Sにおいて降下位置に降下した塗布ヘッド112に、図示しないパワーブースターからFIPGを加圧供給して、塗布ヘッド112の長方形状の吐出口からFIPGを帯状に送り出しつつ、ライナー10を定回転させる。これにより、塗布ヘッド112は、定速でライナー10に対して軸心AX回りに相対的に回転しつつFIPGを帯状に送り出すので、境界15の凹所開口周辺のドーム部表面にFIPGが軸心AX回りに帯状に規定厚みで継続して塗布される。この塗布ヘッド112を用いた帯状の塗布が、本発明における第1塗布方法に相当する。塗布ヘッド112からのFIPGの帯状塗布は、塗布開始ポイント18Sから開始され、図11に示すように、塗布ヘッド112の相対的な回転が進むほど、塗布ヘッド112からの帯状のFIPGの塗布領域は軸心AX回りに境界15の蛇行軌跡に重なって円弧状に延び、帯状ガスケット部18が軸心AX回りに拡張するように形成される。本実施形態では、帯状ガスケット部18の帯幅が約40mmとなるよう、塗布ヘッド112の吐出口形状を規定した。
塗布ヘッド112からのFIPGの帯状塗布は、塗布ヘッド112が図12に示す塗布終了ポイント18Eに達するまで継続される。この塗布終了ポイント18Eは、塗布開始ポイント18Sから軸心AX回りに所定の間隙を残したポイントであり、本実施例では、この間隙を8〜15mmとした。塗布ヘッド112が図12に示す塗布終了ポイント18Eに達すると、塗布ヘッド112へのFIPGの加圧供給を停止すると共に、塗布ヘッド112をドーム部14の上方の初期位置(図10参照)に上昇させる。これにより、塗布ヘッド112からのFIPGの帯状塗布を経た帯状ガスケット部18の形成が終了し、塗布開始ポイント18Sから塗布終了ポイント18Eまでに亘って軸心AX回りに境界15の蛇行軌跡に重なる帯状ガスケット部18が形成される。帯状ガスケット部18の形成と同時に、塗布開始ポイント18Sと塗布終了ポイント18Eとの間に、FIPGが塗布されていない未塗布領域18Nが形成される。
帯状ガスケット部18を形成する上記した手順1に続く手順2では、図13に示すように、点状塗布ヘッド120を未塗布領域18Nにセットする。点状塗布ヘッド120は、図14に示すように、塗布ヘッド112に装着される治具であって、塗布ヘッド112と共にドーム部14に対して昇降する。点状塗布ヘッド120は、ヘッド下端側に、図4に示した二つの点状ガスケット部19の塗布形成のため、点状塗布ノズル121を二つ並べて備える。点状塗布ヘッド120は、塗布ヘッド112に装着された状態で、昇降機構により、未塗布領域18Nにおけるドーム部表面の側に降下する。この降下位置は、点状ガスケット部19を規定厚み(例えば1.0〜1.5mm)で形成することを想定した位置であり、点状塗布ノズル121の吐出長やFIPGの粘度等を考慮して定まる。そして、未塗布領域18Nにおいて降下位置に降下した点状塗布ヘッド120に、塗布ヘッド112を介してパワーブースターからFIPGを加圧供給して、点状塗布ヘッド120の点状塗布ノズル121から、FIPGを未塗布領域18Nに点状に塗布する。これにより、未塗布領域18Nにおいて、当該領域に含まれるドーム部表面にFIPGが点状に塗布され、二つの点状ガスケット部19が形成される。塗布ヘッド112に点状塗布ヘッド120を装着した形態でのFIPGの塗布は、本発明における第2塗布方法であって、塗布ヘッド112単独の第1塗布方法とは異なる。そして、点状塗布ヘッド120における点状塗布ノズル121は、塗布ヘッド112のFIPG塗布のための開口より小さい開口を備えることになる。
一方の点状ガスケット部19は、未塗布領域18Nに含まれる境界15の凹所開口周辺のドーム部表面へのFIPGの点状塗布を経て形成される。点状塗布ヘッド120の点状塗布ノズル121から点状に塗布されたFIPG、および、手順1で既に塗布済みの帯状ガスケット部18のFIPGは、乾燥養生前であることから、いずれも硬化していない。よって、点状塗布ヘッド120の点状塗布ノズル121から点状に未塗布領域18Nに塗布されたFIPGは、既に塗布済みの帯状ガスケット部18における塗布開始ポイント18Sおよび塗布終了ポイント18Eの塗布端面のFIPGと混じり合う。これにより、点状ガスケット部19は、未塗布領域18Nにおいて帯状ガスケット部18と一体となるように形成される。
上記した手順1による塗布ヘッド112からのFIPGの帯状塗布を経て形成された帯状ガスケット部18、および、上記した手順2による点状塗布ヘッド120からのFIPGの点状塗布後を経て形成された点状ガスケット部19は、その後の乾燥養生を経て硬化した状態となり、境界15の蛇行軌跡に沿って、ライナー10と口金16、詳しくは、ドーム部14と口金16とをガスシールする。ここまでのライナー製造工程により、ライナー10が製造され、このライナー10は、円筒状のシリンダー部12の両側に球面形状のドーム部14を備え、各ドーム部に口金16をガスシールして有することになる。
こうしてライナー10が得られると、図8に示すように、ライナー10の外周に、FW法によって、繊維強化樹脂層102を形成する。具体的には、工程S100によって完成されたライナー10を、その両端の口金16を用いて回転させつつ、エポキシ樹脂をカーボン繊維束CFに含浸させた樹脂含有カーボン繊維束ECFを、ライナー10の周囲に繰り返し巻き付ける(工程S202)。この樹脂含有カーボン繊維束ECFの巻き付けに際しては、ライナー10におけるシリンダー部12の外周範囲に亘るフープ巻きによる繊維束巻き付けと、ドーム部14の外周範囲に亘る低角度・高角度のヘリカル巻きによる繊維巻き付けとが使い分けられ、ライナー10の回転速度や繊維送り出し速度についても調整される。その後、樹脂含有カーボン繊維束ECFを、ライナー10の周囲に巻き付けたものを、加熱炉にて加熱して、エポキシ樹脂を硬化させる(工程S204)。エポキシ樹脂が硬化すると、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:カーボン繊維強化プラスチック)から成る繊維強化樹脂層102が形成され、高圧ガスタンク100が完成する。なお、繊維強化樹脂層102を形成する場合に、加熱炉に代わり、高周波誘導加熱を誘起する誘導加熱コイルを用いて誘導加熱手法を用いることができる。この高周波誘導加熱では、速やかな熱硬化性樹脂の昇温を図ることができる。
以上説明したように、本実施形態のライナー製造方法では、塗布開始ポイント18Sから塗布終了ポイント18Eまでに亘る軸心AX回りのFIPGの帯状塗布を経て帯状ガスケット部18を形成し、塗布開始ポイント18Sと塗布終了ポイント18Eとの間をFIPGの帯状塗布のない未塗布領域18Nとする。この未塗布領域18Nには、FIPGの帯状塗布とは別のFIPGの点状塗布後を経て点状ガスケット部19を形成する。そして、帯状ガスケット部18により、塗布開始ポイント18Sから塗布終了ポイント18Eまでに亘って、境界15をその蛇行軌跡に沿ってシールし、点状ガスケット部19により、境界15を未塗布領域18Nにおいてシールする。帯状ガスケット部18と点状ガスケット部19は、ライナー10の軸心AX回りに連続するが、帯状ガスケット部18の形成のために帯状塗布されたFIPGと、点状ガスケット部19の形成のために点状塗布されたFIPGとには、FIPGの塗布重なりを生じさせない。図15はFIPGの塗布重なりがある比較例品とFIPGの塗布重なりのない実施形態品における塗布重なりの段差の状況を概略的に対比して示す説明図である。
帯状ガスケット部18の形成に当たってFIPGの塗布重なりがある比較例品では、FIPGが重なって塗布された塗布積層部18Tの周囲、具体的には軸心AXに沿った塗布積層部18Tの前後の領域および紙面左右の領域が段差部Gとなる。そして、軸心AXに沿った塗布積層部18Tの前後の段差部Gでは、その段差が帯状ガスケット部18の厚みの2倍ほどの大きさとなる。よって、ライナー10に樹脂含有カーボン繊維束ECFを巻き付けると、塗布積層部18Tの前後および左右の段差部Gの段差の分だけ、樹脂含有カーボン繊維束ECFの巻き付け領域において間隙が生じる。これに対し、帯状ガスケット部18における塗布開始ポイント18Sと塗布終了ポイント18Eとの間の未塗布領域18Nに点状ガスケット部19を形成してFIPGの塗布重なりを起こさない実施形態品は、未塗布領域18NにおいてFIPGが塗布されない未塗布部位を、二つの点状ガスケット部19の間やそれぞれの点状ガスケット部19と帯状ガスケット部18の幅方向端部との間に段差部Gとして残すものの、この未塗布部位の段差部Gは、その段差が帯状ガスケット部18と点状ガスケット部19の厚みに限られると共に、領域も二つの点状ガスケット部19の間等に限られる。よって、FIPGの塗布重なりを起こさない実施形態品では、FIPGが塗布されない未塗布部位を、比較例品における塗布積層部18Tの前後および左右の段差部Gの段差や領域より小さくする。この結果、本実施形態のライナー製造方法によれば、ライナー10と口金16の境界15に塗布して形成した帯状ガスケット部18の段差を、FIPGの帯状塗布と、その後の未塗布領域18Nにおける境界15へのFIPGの点状塗布という簡易な手法で小さくできる。
本実施形態のライナー10を製造するには、FIPGを帯状に塗布して帯状ガスケット部18を形成する塗布ヘッド112に、未塗布領域18Nにおける点状ガスケット部19の形成用の点状塗布ヘッド120を装着すればよい。よって、既存設備を有効利用できる。
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
本実施形態のライナー10では、口金16を、口金フランジ16fがドーム部14における陥没台座部14rに嵌め込まれる形態としたが、これに限らない。図16は口金16の口金フランジ16fをドーム部14における面状台座部14tで受け止める形態における帯状ガスケット部18の様子を図5相当に断面視して示す説明図である。図17は口金16の口金フランジ16fをドーム部14における面状台座部14tで受け止める形態における点状ガスケット部19の様子を図6相当に断面視して示す説明図である。図示するように、口金フランジ16fを面状台座部14tで受け止める形態においても、既述した実施形態と同様に、ライナー10と口金16の境界15をその全域に亘ってシールできると共に、境界15に塗布して形成した帯状ガスケット部18の段差を、FIPGの帯状塗布と、その後の未塗布領域18Nにおける境界15へのFIPGの点状塗布という簡易な手法で小さくできる。なお、塗布積層部18Tでは、下側の帯状ガスケット部18におけるFIPGと上側の帯状ガスケット部18におけるFIPGとが混じり合っていることから、塗布積層部18Tだけを除去することは困難である。
この他、境界15についても種々の実施形態とできる。例えば、ドーム部14を軸心AXに沿って正面視した状態において、上下方向と左右方向の4箇所に凸の部位を有する軌跡で軸心AXを取り囲む境界15としてもよい。
本実施形態のライナー10では、未塗布領域18Nに二つの点状ガスケット部19を形成したが、未塗布領域18Nにおける境界15を少なくともシールするよう点状ガスケット部19を形成すればよい。具体的には、図4に示す二つの点状ガスケット部19のうち、帯状ガスケット部18におけるドーム表面に形成された下方側の点状ガスケット部19については、境界15と重ならないので省略してもよい。この他、点状ガスケット部19を三つ以上の複数としてよく、この場合には、塗布開始ポイント18Sと塗布終了ポイント18Eにおける帯状ガスケット部18の端面を繋ぐブリッジ状に、点状ガスケット部19を複数形成すればよい。また、未塗布領域18Nに、点状ガスケット部19と異なる形態のガスケット部を形成してもよい。例えば、図12に示した未塗布領域18Nの長方形状に合致した縦横寸法を有する長方形状の塗布ノズルを有する塗布ヘッドを、点状塗布ヘッド120と同様に塗布ヘッド112に装着する。そして、塗布ヘッド112に加圧供給されたFIPGを、長方形状の塗布ノズルから長方形状で塗布して、未塗布領域18Nの全域を帯状ガスケット部18とは別のFIPGの塗布で埋めて、未塗布領域18Nに長方形状のガスケット部を形成してもよい。
10…ライナー、12…シリンダー部、14…ドーム部、14h…貫通孔、14r…陥没台座部、14rs…凹所内周壁、14t…面状台座部、15…境界、16…口金、16b…口金本体、16f…口金フランジ、16fe…外周縁、16h…バルブ接続孔、16t…凸部、18…帯状ガスケット部、18E…塗布終了ポイント、18N…未塗布領域、18S…塗布開始ポイント、18T…塗布積層部、19…点状ガスケット部、100…高圧ガスタンク、102…繊維強化樹脂層、112…塗布ヘッド、120…点状塗布ヘッド、121…点状塗布ノズル、AX…軸心、CF…カーボン繊維束、ECF…樹脂含有カーボン繊維束、G…段差部
Claims (1)
- ガスタンクのライナーの製造方法であって、
筒状の中空容器をなす前記ライナーの端部に口金を装着する工程と、
前記ライナーと前記口金の境界に液状ガスケットを前記ライナーの軸心回りに帯状に塗布する第1塗布方法を用いて、前記液状ガスケットの帯状の塗布を、前記液状ガスケットの塗布開始ポイントから前記軸心回りに開始して、前記塗布開始ポイントから前記軸心回りに間隙を残した塗布終了ポイントで終了し、前記塗布開始ポイントと前記塗布終了ポイントとの間に、前記液状ガスケットが塗布されていない未塗布領域を形成する工程と、
前記未塗布領域において、少なくとも前記境界に前記液状ガスケットを前記第1塗布方法とは異なる第2塗布方法を用いて塗布する工程とを備える、
ガスタンクのライナーの製造方法。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2021199581A1 (ja) | 2020-04-02 | 2021-10-07 | 日本電気株式会社 | 無線アクセスネットワークノード装置、amf装置、及びこれらのための方法 |
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2018
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