JP2020066593A - グリシルグリシン系脂質、および、それが形成する錯体型ナノチューブ - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明の課題は、界面活性剤フリーの湿度応答性カプセルを構成することのできる新規化合物であって、安全なペプチド系脂質からなる化合物の提供にある。【解決手段】 下記一般式(I)に記載の化合物を提供する。【化1】(一般式(I)中、Nは14または15を示す)。【選択図】図1
Description
本発明は、グリシルグリシン系脂質、および、それが形成する錯体型ナノチューブに関する。
カプセル材料は様々な分野で実用化させている。特に、外部刺激(pH、温度、光、磁場など)による構造変化できるカプセル材料の新機能や斬新な応用が期待されている。
水と湿度は、人類の生活環境に欠かせない物質である。水中で構造変化するカプセル材料は多く報告されているが、湿度応答性カプセル材料の例はまだ少ない。環境中および体表の湿度の変化により構造変化機能を有するカプセル材料は、農薬、化粧品および消臭剤などへの新たな機能が期待できる。シクロデキストリン包接複合体(非特許文献1および2)、親水性高分子からなるカプセル(非特許文献3)、多孔性金属有機化合物(MOF)(非特許文献4および5)、ボロキシン化合物からなるナノチューブ(非特許文献6)と界面活性剤添加した球状カプセル(非特許文献7)の例に限られる。なお、非特許文献6に開示されるボロキシンナノチューブは、低い湿度環境中(例えば、相対湿度(relative humidity:RH)30%)においても構造変化するため、密閉保存や取り扱いなどが困難であった。また、化合物構造の観点から生体への毒性も懸念される。
水と湿度は、人類の生活環境に欠かせない物質である。水中で構造変化するカプセル材料は多く報告されているが、湿度応答性カプセル材料の例はまだ少ない。環境中および体表の湿度の変化により構造変化機能を有するカプセル材料は、農薬、化粧品および消臭剤などへの新たな機能が期待できる。シクロデキストリン包接複合体(非特許文献1および2)、親水性高分子からなるカプセル(非特許文献3)、多孔性金属有機化合物(MOF)(非特許文献4および5)、ボロキシン化合物からなるナノチューブ(非特許文献6)と界面活性剤添加した球状カプセル(非特許文献7)の例に限られる。なお、非特許文献6に開示されるボロキシンナノチューブは、低い湿度環境中(例えば、相対湿度(relative humidity:RH)30%)においても構造変化するため、密閉保存や取り扱いなどが困難であった。また、化合物構造の観点から生体への毒性も懸念される。
また、非特許文献8〜10には、グリシルグリシン系脂質から構成される錯体型チューブ構造体が開示されている。このグリシルグリシン系脂質から構成される錯体型チューブ構造体は、アミノ酸由来脂質なので生体に安全であり、さらに製造時の溶媒を変えることによって、錯体型球状カプセルを形成できることも報告されている(非特許文献11〜12)。後者の錯体型球状カプセルは、水中では構造変化による水応答性を示すが、表面が疎水性であるため湿度への応答性がなかった。また、錯体型球状カプセルに界面活性剤を添加することで湿度応答性を得られることが報告されているが(非特許文献7)、界面活性剤により用途も限定される。
Kinetic Analysis and Evaluation of Controlled Release of D-Limonene Encapsulated in Spray-Dried Cyclodextrin Powder under Linearly Ramped Humidity. Drying Technology 2012, 30, 1283−1291.
Dissociation characteristic of the inclusion complex of cyclomaltohexaose (α-cyclodextrin) with 1-methylcyclopropene in response to stepwise rising relative humidity. Carbohydrate Research 2010, 345, 2085−2089.
Effect of Water Activity on the Release Characteristics and Oxidative Stability of d-Limonene Encapsulated by Spray Drying. J. Agric. Food Chem. 2004, 52, 269−1276.
Kinetic Stability of MOF-5 in Humid Environments: Impact of PowderDensification, Humidity Level, and Exposure Time. Langmuir 2015, 31, 4988−4995.
Water Sensitivity in Zn4O-Based MOFs is Structure and History Dependent. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 2651−2657.
Boroxine Nanotubes: Moisture-Sensitive Morphological Transformation and Guest Release. Adv. Funct. Mater. 2014, 24, 603−609.
Humidity control in a closed system utilizing conducting polymers. RSC Adv. 2018, 8, 12540−12546.
Kogiso, M.; Zhou, Y.; Shimizu, T. Instant Preparation of Self-Assembled Metal-Complexed Lipid Nanotubes That Act as Templates to Produce Metal-Oxide nanotubes. Adv. Mater. 2007, 19, 242−246.
Kogiso, M.; Aoyagi, M.; Asakawa, M.; Shimizu, T. Semisolid Phase Synthesis of Metal-complexed Organic Nanotubes. Chem. Lett. 2010, 39, 822−823.
Kogiso, M.; Aoyagi, M.; Asakawa, M.; Shimizu, T. Highly efficient production of various organic nanotubes with different surfaces and their application to an adsorbent. Soft Matter 2010, 6, 4528−4535.
Zn-Coordinated Lipid Nanovesicle with High Physical Stability and Water-responsive Morphological Change. J. Oleo Sci. 2016, Vol. 65, 1011−1016.
Preparation and Formation Process of Zn(II)-Coordinated Nanovesicles. Langmuir 2017, Vol. 33, 14130−14138.
本発明の課題は、界面活性剤フリーの湿度応答性カプセルを構成することのできる新規化合物であって、安全なペプチド系脂質からなる化合物の提供にある。特に、一般生活環境中では安定しており、高い湿度環境で構造変化できる湿度応答性カプセルを構成可能な化合物の提供にある。
本発明者らは、上記課題を解決するため新規化合物を設計し、さらに金属イオンと錯体形成しながら新規ナノチューブの合成を試みた。その結果、本発明者らにより見出された新規化合物および亜鉛イオンまたはコバルトイオンを用いて錯体型ナノチューブを製造することで、所望の特性を有するナノチューブを得ることに成功し、当該知見に基づいて本発明は完成された。すなわち、本発明は以下の態様を含む:
また、本発明の別の態様は、
〔2〕上記〔1〕に記載の化合物と金属イオンとの錯体を含む錯体型ナノチューブに関する。
ここで、本発明の錯体型ナノチューブの一実施の形態は、
〔3〕上記〔2〕に記載の錯体型ナノチューブであって、
前記金属イオンが、亜鉛イオンまたはコバルトイオンであることを特徴とする。
また、本発明の錯体型ナノチューブの一実施の形態は、
〔4〕上記〔2〕または〔3〕に記載の錯体型ナノチューブであって、
湿度応答性を有することを特徴とする。
また、本発明の錯体型ナノチューブの一実施の形態は、
〔5〕上記〔4〕に記載の錯体型ナノチューブであって、
相対湿度30%において安定であることを特徴とする。
また、本発明の錯体型ナノチューブの一実施の形態は、
〔6〕上記〔2〕〜〔5〕のいずれかに記載の錯体型ナノチューブであって、
機能性物質を内包することを特徴とする。
また、本発明の別の態様は、
〔7〕上記〔2〕〜〔6〕のいずれかに記載の錯体型ナノチューブを、水と接触させてシート状に構造変化させる工程を含む、
錯体型ナノチューブの使用方法に関する。
ここで、本発明の錯体型ナノチューブの使用方法の一実施の形態は、
〔8〕上記〔7〕に記載の錯体型ナノチューブの使用方法であって、
前記錯体型ナノチューブが機能性物質を内包するものであり、
前記構造変化させる工程が、前記錯体型ナノチューブに内包される機能性物質を放出する工程であることを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕に記載の化合物と金属イオンとの錯体を含む錯体型ナノチューブに関する。
ここで、本発明の錯体型ナノチューブの一実施の形態は、
〔3〕上記〔2〕に記載の錯体型ナノチューブであって、
前記金属イオンが、亜鉛イオンまたはコバルトイオンであることを特徴とする。
また、本発明の錯体型ナノチューブの一実施の形態は、
〔4〕上記〔2〕または〔3〕に記載の錯体型ナノチューブであって、
湿度応答性を有することを特徴とする。
また、本発明の錯体型ナノチューブの一実施の形態は、
〔5〕上記〔4〕に記載の錯体型ナノチューブであって、
相対湿度30%において安定であることを特徴とする。
また、本発明の錯体型ナノチューブの一実施の形態は、
〔6〕上記〔2〕〜〔5〕のいずれかに記載の錯体型ナノチューブであって、
機能性物質を内包することを特徴とする。
また、本発明の別の態様は、
〔7〕上記〔2〕〜〔6〕のいずれかに記載の錯体型ナノチューブを、水と接触させてシート状に構造変化させる工程を含む、
錯体型ナノチューブの使用方法に関する。
ここで、本発明の錯体型ナノチューブの使用方法の一実施の形態は、
〔8〕上記〔7〕に記載の錯体型ナノチューブの使用方法であって、
前記錯体型ナノチューブが機能性物質を内包するものであり、
前記構造変化させる工程が、前記錯体型ナノチューブに内包される機能性物質を放出する工程であることを特徴とする。
また、本発明の別の態様は、
〔9〕下記一般式(I)に記載の化合物の製造方法であって、
(一般式(I)中、Nは14または15を示す)
(i)下記式一般式(II)に記載の化合物、グリシルグリシン誘導体、第三級アミン、および、DMT-MM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)を有機溶媒で反応させる工程と、
(一般式(II)中、Nは14または15を示す)
(ii)前記工程(i)により得られた化合物をアルコールと水との混合溶媒に分散させ、さらに前記混合溶媒中において強アルカリと反応させ加水分解する工程と
を含む、化合物の製造方法に関する。
ここで、本発明の化合物の製造方法の一実施の形態は、
〔10〕上記〔9〕に記載の化合物の製造方法であって、
(iii)前記(ii)工程の後に、前記式(I)に記載の化合物を析出させる工程を含むことを特徴とする。
〔9〕下記一般式(I)に記載の化合物の製造方法であって、
(i)下記式一般式(II)に記載の化合物、グリシルグリシン誘導体、第三級アミン、および、DMT-MM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)を有機溶媒で反応させる工程と、
(ii)前記工程(i)により得られた化合物をアルコールと水との混合溶媒に分散させ、さらに前記混合溶媒中において強アルカリと反応させ加水分解する工程と
を含む、化合物の製造方法に関する。
ここで、本発明の化合物の製造方法の一実施の形態は、
〔10〕上記〔9〕に記載の化合物の製造方法であって、
(iii)前記(ii)工程の後に、前記式(I)に記載の化合物を析出させる工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の別の態様は、
〔11〕(A)下記一般式(I)に記載の化合物を有機溶媒に分散する工程と、
(一般式(I)中、Nは14または15を示す)
(B)前記工程(A)により得られた有機溶媒中において、前記化合物と金属イオンとを反応させて前記化合物の金属錯体を形成する工程と
を含む、錯体型ナノチューブの製造方法に関する。
ここで、本発明の錯体型ナノチューブの製造方法の一実施の形態は、
〔12〕上記〔11〕に記載の錯体型ナノチューブの製造方法であって、
前記金属イオンが亜鉛イオンまたはコバルトイオンであることを特徴とする。
また、本発明の錯体型ナノチューブの製造方法の一実施の形態は、
〔13〕上記〔11〕または〔12〕に記載の錯体型ナノチューブの製造方法であって、
前記工程(A)における有機溶媒が、エタノールまたはエタノールとメタノールとの混合溶媒であることを特徴とする。
また、本発明の錯体型ナノチューブの製造方法の一実施の形態は、
〔14〕上記〔10〕〜〔12〕のいずれかに記載の錯体型ナノチューブの製造方法であって、
前記工程(A)における有機溶媒が機能性物質を含むことを特徴とする。
また、本発明の錯体型ナノチューブの製造方法の一実施の形態は、
〔15〕上記〔10〕〜〔13〕のいずれかに記載の錯体型ナノチューブの製造方法であって、
(C)前記工程(B)で得られた錯体型ナノチューブを乾燥し、粉末状の錯体型ナノチューブを調製する工程をさらに含むことを特徴とする。
〔11〕(A)下記一般式(I)に記載の化合物を有機溶媒に分散する工程と、
(B)前記工程(A)により得られた有機溶媒中において、前記化合物と金属イオンとを反応させて前記化合物の金属錯体を形成する工程と
を含む、錯体型ナノチューブの製造方法に関する。
ここで、本発明の錯体型ナノチューブの製造方法の一実施の形態は、
〔12〕上記〔11〕に記載の錯体型ナノチューブの製造方法であって、
前記金属イオンが亜鉛イオンまたはコバルトイオンであることを特徴とする。
また、本発明の錯体型ナノチューブの製造方法の一実施の形態は、
〔13〕上記〔11〕または〔12〕に記載の錯体型ナノチューブの製造方法であって、
前記工程(A)における有機溶媒が、エタノールまたはエタノールとメタノールとの混合溶媒であることを特徴とする。
また、本発明の錯体型ナノチューブの製造方法の一実施の形態は、
〔14〕上記〔10〕〜〔12〕のいずれかに記載の錯体型ナノチューブの製造方法であって、
前記工程(A)における有機溶媒が機能性物質を含むことを特徴とする。
また、本発明の錯体型ナノチューブの製造方法の一実施の形態は、
〔15〕上記〔10〕〜〔13〕のいずれかに記載の錯体型ナノチューブの製造方法であって、
(C)前記工程(B)で得られた錯体型ナノチューブを乾燥し、粉末状の錯体型ナノチューブを調製する工程をさらに含むことを特徴とする。
本発明により提供される新規化合物によれば、初めて湿度応答性機能を有する錯体型ナノチューブを提供することが可能となる。また、当該錯体型ナノチューブの湿度応答性は当該錯体型ナノチューブを構成するグリシルグリシン系脂質の炭素数および金属イオンにより制御が可能である。
本発明に係る新規化合物により構成される錯体型ナノチューブは、予め機能性物質を内包することもでき、湿度が高い環境において内包する機能性物質の放出を促進させることができる。
本発明に係る新規化合物により構成される錯体型ナノチューブは、予め機能性物質を内包することもでき、湿度が高い環境において内包する機能性物質の放出を促進させることができる。
本発明は、一態様において、下記一般式(I)に記載の化合物を提供する:
(一般式(I)中、Nは14または15を示す)。
一般式(I)は、Nが14である場合に15-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンを示し、Nが15である場合に16-ヒドロキシヘキサデカン−グリシルグリシンを示す。
一般式(I)は、Nが14である場合に15-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンを示し、Nが15である場合に16-ヒドロキシヘキサデカン−グリシルグリシンを示す。
また、本発明の一態様は、一般式(I)に記載の化合物の製造方法を提供する。一般式(I)に記載の化合物は、以下の方法に限定されないが、例えば下記の工程(i)および(ii)を含む製造方法により製造することができる:
(i)下記式一般式(II)に記載の化合物、グリシルグリシン誘導体、第三級アミン、および、DMT-MMを有機溶媒中で反応させる工程と、
(一般式(II)中、Nは14または15を示す)
(ii)前記工程(i)により得られた化合物をアルコールと水との混合溶媒に分散させ、さらに前記混合溶媒中において強アルカリと反応させ加水分解する工程。
(i)下記式一般式(II)に記載の化合物、グリシルグリシン誘導体、第三級アミン、および、DMT-MMを有機溶媒中で反応させる工程と、
(ii)前記工程(i)により得られた化合物をアルコールと水との混合溶媒に分散させ、さらに前記混合溶媒中において強アルカリと反応させ加水分解する工程。
上記の工程(i)におけるグリシルグリシン誘導体は、上記工程(i)の反応において一般式(II)に記載の化合物と結合して最終的に一般式(I)の化合物を形成できるものであれば制限されない。グリシルグリシン誘導体として好ましくは、グリシルグリシンエチルエステルまたはグリシルグリシンメチルエステルである。
グリシルグリシン誘導体としてグリシルグリシンエチルエステルを用いる場合には、例えば、溶媒となるメタノールに対して、グリシルグリシンエチルエステル塩酸塩を20mg/mL〜100mg/mLの範囲で添加すればよい。当業者であれば、技術常識および本願明細書の開示より他のグリシルグリシン誘導体を用いる場合にも、溶媒に対するグリシルグリシン誘導体またはその塩の添加量を適宜設定することができる。
グリシルグリシン誘導体としてグリシルグリシンエチルエステルを用いる場合には、例えば、溶媒となるメタノールに対して、グリシルグリシンエチルエステル塩酸塩を20mg/mL〜100mg/mLの範囲で添加すればよい。当業者であれば、技術常識および本願明細書の開示より他のグリシルグリシン誘導体を用いる場合にも、溶媒に対するグリシルグリシン誘導体またはその塩の添加量を適宜設定することができる。
上記の工程(i)における第三級アミンとしては、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンなどを挙げることができ、好ましくはトリエチルアミンである。第三級アミンとしてトリエチルアミンを用いる場合、例えば、溶媒となるメタノールに対して0.1mL/mL〜0.02mL/mLの範囲で添加すればよい。
また、上記の工程(i)において、DMT-MM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)は縮合剤として用いられる。DMT-MMは、例えば、溶媒となるメタノールに対して40mg/mL〜200mg/mLの範囲で添加すればよい。
また、上記の工程(i)において、DMT-MM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)は縮合剤として用いられる。DMT-MMは、例えば、溶媒となるメタノールに対して40mg/mL〜200mg/mLの範囲で添加すればよい。
工程(i)における有機溶媒としては、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどを用いることができる。N,N-ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシドを有機溶媒として用いた場合、溶媒を除去する工程が必要となる。メタノールを有機溶媒として用いた場合、溶媒の除去工程が不要であり、かつ、目的化合物の収率も向上する。よって、有機溶媒として好ましくはメタノールの使用である。
工程(i)の反応は、以下の条件に限定されないが、例えば室温において4〜24時間攪拌により行うことができる。工程(i)における反応後は、白濁分散液として回収することができ、当該白濁分散液に含まれる化合物は、工程(ii)に用いられる。なお、工程(ii)の前に、白濁分散液は濾過することが好ましい。
工程(ii)において、工程(i)により得られた分散液に含まれる化合物は、アルコールと水との混合溶媒に分散させる。ここで、アルコールとしては、以下に限定されず、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールなどを用いることができる。好ましくは、メタノールである。混合溶媒の調製のために、アルコールとしてメタノールを用いる場合、メタノールと水の混合比は4:1〜1:2とすることができる。当業者であれば、技術常識および本願明細書の開示より、他のアルコールを用いる場合にも水との混合割合を適宜設定することができる。
工程(ii)においては、所望の化合物を分散させたアルコールと水との混合溶媒に対してさらに強アルカリを添加して加水分解させる。ここで、強アルカリとしては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどを挙げることができる。強アルカリとして水酸化ナトリウムを用いる場合、例えば、1Nの水酸化ナトリウムをアルコールと水との混合溶媒中に添加し、60℃の温度で10分程度反応させればよい。
一実施の形態においては、工程(ii)後に、工程(iii)一般式(I)に記載の化合物を析出させる工程を含むことができる。
一般式(I)に記載の化合物の析出反応は公知の方法に従って行うことができ、例えば、1Nの塩酸を混合溶媒中に添加することにより行うことができる。目的の化合物が析出後、濾過および乾燥工程により一般式(I)に記載の化合物を粉末として得ることができる。
一般式(I)に記載の化合物の析出反応は公知の方法に従って行うことができ、例えば、1Nの塩酸を混合溶媒中に添加することにより行うことができる。目的の化合物が析出後、濾過および乾燥工程により一般式(I)に記載の化合物を粉末として得ることができる。
本発明に係る一般式(I)の化合物は、有機溶媒中において金属イオンと錯体を形成することで錯体型ナノチューブを形成する。よって、本発明の一態様は、一般式(I)に記載の化合物と金属イオンとの錯体を含む錯体型ナノチューブを提供する。
ここで、一般式(I)の化合物はアミノ酸由来脂質であるため生体に対して安全である。すなわち、当該化合物と金属イオンとの錯体により形成される錯体ナノチューブは、生体表面または生体表面と接触する基材への投与が許容される。生体表面としては、特に限定されず、好ましい例として皮膚表面で発汗しやすい部位(脇の下、足裏など)を挙げることができる。生体表面と接触する基材としては、特に制限されず、好ましい例として当該発汗しやすい部位に接触する基材(被服、消臭スプレー、靴など)を挙げることができる。
ここで、一般式(I)の化合物はアミノ酸由来脂質であるため生体に対して安全である。すなわち、当該化合物と金属イオンとの錯体により形成される錯体ナノチューブは、生体表面または生体表面と接触する基材への投与が許容される。生体表面としては、特に限定されず、好ましい例として皮膚表面で発汗しやすい部位(脇の下、足裏など)を挙げることができる。生体表面と接触する基材としては、特に制限されず、好ましい例として当該発汗しやすい部位に接触する基材(被服、消臭スプレー、靴など)を挙げることができる。
一般式(I)の化合物と錯体型ナノチューブを形成する金属イオンとしては、亜鉛イオンおよびコバルトイオンを挙げることができる。すなわち、本発明の錯体型ナノチューブは、一般式(I)の化合物と亜鉛イオンとの錯体から構成される錯体型ナノチューブ、または、一般式(I)の化合物とコバルトイオンとの錯体から構成される錯体型ナノチューブを提供する。
本発明に係る当該錯体型ナノチューブの外表面は親水性残基(-OH)に覆われるため、水や空気中の水分になじみやすい(濡れやすい)特徴を有する。また、亜鉛イオンおよびコバルトイオンは配位が不飽和のため、水分子との結合機能を有する。これにより、錯体と外部環境からの水分子との結合より分子パッキングが変化し、ナノチューブ状の構造からシート状の構造への構造変化が生じる。
本発明に係る当該錯体型ナノチューブの外表面は親水性残基(-OH)に覆われるため、水や空気中の水分になじみやすい(濡れやすい)特徴を有する。また、亜鉛イオンおよびコバルトイオンは配位が不飽和のため、水分子との結合機能を有する。これにより、錯体と外部環境からの水分子との結合より分子パッキングが変化し、ナノチューブ状の構造からシート状の構造への構造変化が生じる。
本発明に係る錯体型ナノチューブは、湿度応答性を有する。本明細書において「湿度応答性」を有するとは、一般生活環境下(例えば、30%RHの湿度条件下、好ましくは40%RH、50%RH、または、60%RHの湿度条件下、より好ましくは70%RH未満の湿度条件下)において安定しており、より高い湿度環境下(例えば、70%RH以上の湿度条件下、好ましくは75%RH、80%RH、85%RH、90%RH、または、95%RH以上の湿度環境下)で構造変化を生じることをいう。本発明に係る錯体型ナノチューブは、それを構成するグリシルグリシン系脂質の炭素数や金属イオンにより湿度に対する安定性が異なる。本発明に係る錯体型ナノチューブは、一実施の形態において、相対湿度70%以下において安定な錯体型ナノチューブであり、より好ましくは相対湿度75%以下、80%以下において安定な錯体型ナノチューブである。ここで、特定の湿度条件下において安定であるとは、当該特定の湿度条件下に長時間(例えば24時間)、一定量の錯体型ナノチューブを静置した場合に、当該量の約10%未満、より好ましくは約5%未満の錯体型ナノチューブのみに対して構造変化が生じることをいう。
なお、本発明に係る錯体型ナノチューブにおいて錯体を構成する金属イオンが亜鉛イオンである場合、コバルトイオンである場合と比較してより湿度に対して安定である。例えば、Zn-C15-ナノチューブは、80%RHの環境下でもほとんど構造変化を生じない。
なお、本発明に係る錯体型ナノチューブにおいて錯体を構成する金属イオンが亜鉛イオンである場合、コバルトイオンである場合と比較してより湿度に対して安定である。例えば、Zn-C15-ナノチューブは、80%RHの環境下でもほとんど構造変化を生じない。
本発明に係る錯体型ナノチューブは、一実施の形態において、機能性物質を内包することができる。このような機能性物質としては、以下に限定されないが、ビタミン、カロテン、アミノ酸、脂肪酸などの機能性食品や、金属ナノ粒子、無機ナノ粒子、機能性低分子、高分子などの機能性材料等を挙げることができる。これらの物質は単独で内包されてもよく、2種以上で内包されてもよい。また、機能性物質は、化学合成されたものであってもよく、或いは天然物より回収または抽出されたものであってもよい。
本発明の一態様は、錯体型ナノチューブを水と接触させてシート状に構造変化させる工程を含む、錯体型ナノチューブの使用方法を提供する。また、本発明に係る錯体型ナノチューブの使用方法は、一実施の形態において錯体型ナノチューブが機能性物質を内包するものであり、水と接触させてシート状に構造変化させる工程が、錯体型ナノチューブに内包される機能性物質を放出する工程である。
本明細書において「水」とは、酸素と水素から構成される化合物(H2O)を意味し、液体、気体、固体の状態にある水(水蒸気、氷)を含み、例えば、空気中に含まれる水分なども含まれる。また、水は純物質として存在するものでもよいし、錯体型ナノチューブの構造に変化を生じさせることができる限りにおいて混合物(例えば、ソフトドリンク、スポーツ飲料、ゼリーなどの飲食品なども含まれる)であってもよい。
錯体型ナノチューブと水とを接触させるとは、より具体的には、錯体を構成する金属イオンの不飽和状態にある配位子に水分子を結合させて分子パッキングの変化によりナノチューブの構造に変化を生じさせることを意図する。錯体型ナノチューブと水とを接触させる方法としては、特に限定されず、水溶液などに浸す、スプレーなどを用いて水を霧状として吹きかける、高湿度条件下に置く、生体表面からの汗と接触させる、などを挙げることができる。当業者であれば、錯体型ナノチューブの用途や構造変化させたい期間(機能性物質の放出または徐放期間等)などに応じて、適宜水との接触方法を選択することができる。
本明細書において「水」とは、酸素と水素から構成される化合物(H2O)を意味し、液体、気体、固体の状態にある水(水蒸気、氷)を含み、例えば、空気中に含まれる水分なども含まれる。また、水は純物質として存在するものでもよいし、錯体型ナノチューブの構造に変化を生じさせることができる限りにおいて混合物(例えば、ソフトドリンク、スポーツ飲料、ゼリーなどの飲食品なども含まれる)であってもよい。
錯体型ナノチューブと水とを接触させるとは、より具体的には、錯体を構成する金属イオンの不飽和状態にある配位子に水分子を結合させて分子パッキングの変化によりナノチューブの構造に変化を生じさせることを意図する。錯体型ナノチューブと水とを接触させる方法としては、特に限定されず、水溶液などに浸す、スプレーなどを用いて水を霧状として吹きかける、高湿度条件下に置く、生体表面からの汗と接触させる、などを挙げることができる。当業者であれば、錯体型ナノチューブの用途や構造変化させたい期間(機能性物質の放出または徐放期間等)などに応じて、適宜水との接触方法を選択することができる。
本発明の一態様は、一般式(I)に記載の化合物の製造方法に関し、当該製造方法は、以下の工程を含む:
(A)下記一般式(I)に記載の化合物を有機溶媒に分散する工程、
(一般式(I)中、Nは14または15を示す)
(B)前記工程(A)により得られた有機溶媒中において、前記化合物と金属イオンとを反応させて前記化合物の金属錯体を形成する工程。
(A)下記一般式(I)に記載の化合物を有機溶媒に分散する工程、
(B)前記工程(A)により得られた有機溶媒中において、前記化合物と金属イオンとを反応させて前記化合物の金属錯体を形成する工程。
工程(A)における有機溶媒としては、アルコール溶媒を用いることができ、好ましくはエタノール、メタノール、または、エタノールとメタノールとの混合溶媒を挙げることができる。
このとき、有機溶媒に対して一般式(I)に記載の化合物の量は、溶媒中に分散可能な濃度であれば特に限定されないが、例えば、溶液中の濃度として、通常20mg/mL以上、好ましくは50mg/mL以上とすることができる。なお、添加するペプチド脂質の濃度を高くすると、安定的に錯体型ナノチューブを製造できる点において好ましい。
このとき、有機溶媒に対して一般式(I)に記載の化合物の量は、溶媒中に分散可能な濃度であれば特に限定されないが、例えば、溶液中の濃度として、通常20mg/mL以上、好ましくは50mg/mL以上とすることができる。なお、添加するペプチド脂質の濃度を高くすると、安定的に錯体型ナノチューブを製造できる点において好ましい。
一般式(I)に記載の化合物を分散させた分散液に対して、さらに金属塩を添加することでグリシルグリシン系脂質の金属錯体を形成させる。ここで、当該分散液への添加に用いることのできる金属塩としては、亜鉛またはコバルトの塩である。塩としては酢酸塩、アセチルアセトン塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物などすべての塩が利用可能であるが、好ましくは酢酸塩、アセチルアセトン塩である。
有機溶媒に分散した一般式(I)に記載の化合物と金属イオンとを反応させ、金属錯体を形成させる条件は、以下に限定されないが、例えば、100mgのグリシルグリシン系脂質と27mgの酢酸亜鉛を2mLのエタノールに分散させ、オイルバス50度で3〜24時間攪拌することで錯体型ナノチューブを形成することができる。なお、金属塩を予め溶媒に溶解させてペプチド脂質と混合する場合には、加熱することが好ましい。
また、錯体型ナノチューブが分散した有機溶媒に対する金属塩の添加量としては、一般式(I)に記載の化合物に対する割合として、金属の価数を2とすると、通常0.5モル%以上であれば良い。
一実施の形態として、錯体型ナノチューブに機能性物質を内包させる場合には、工程Aにおける有機溶媒中に機能性物質を添加しておけばよい。有機溶媒中における機能性物質の含有量は、当該機能性物質の種類や使用目的等によって適宜設定することができるが、通常、有機溶媒において50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。使用される物質が2種以上である場合は、その合計量を50重量%以下とすることができる。
(実施例1.15-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンの合成)
15-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンの合成反応の概要を下記に示す。
具体的には、15-ヒドロキシペンタデカン酸(2g, 7.7mmol)、グリシルグリシンエチルエステル塩酸塩(1.67g, 8.5mmol)、トリエチルアミン(TEA、1.3mL)と縮合剤DMT-MM(3g)を50mLのメタノールに溶かし、室温で4時間攪拌反応させ白濁させた。 白濁分散液を濾過し、白い固体をメタノール/水の混合溶媒に再分散した。水酸化ナトリウム(1N, 1.2当量)を加えて60度で加水分解し、その後塩酸(1N, 1.3当量)を加え目的化合物を析出させた。白濁分散液を濾過し、乾燥で目的化合物を得た(2.1g, 収率73%)。
下記に示すNMRの結果から目的化合物が15-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンであることを確認した。
1H NMR [dimethyl sulfoxide (DMSO)-d6, 500 MHz]: δ: 1.12 (m, 20H, -(CH2)10-), 1.46 (m, 2H, -CH2-CH2-CONH-), 1.49 (m, 2H,-CH2-CH2-CH2-OH), 2.10 (t, 2H, -CH2-CH2-CONH-), 3.38 (m, 2H, -CH2-CH2-OH), 3.69 (d, 4H, -NH-CH2-CO-), 4.32 (m, 1H,-OH), and 8.10 (t, 2H, -CONH-) ppm.
15-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンの合成反応の概要を下記に示す。
下記に示すNMRの結果から目的化合物が15-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンであることを確認した。
1H NMR [dimethyl sulfoxide (DMSO)-d6, 500 MHz]: δ: 1.12 (m, 20H, -(CH2)10-), 1.46 (m, 2H, -CH2-CH2-CONH-), 1.49 (m, 2H,-CH2-CH2-CH2-OH), 2.10 (t, 2H, -CH2-CH2-CONH-), 3.38 (m, 2H, -CH2-CH2-OH), 3.69 (d, 4H, -NH-CH2-CO-), 4.32 (m, 1H,-OH), and 8.10 (t, 2H, -CONH-) ppm.
(実施例2.16-ヒドロキシヘキサデカン−グリシルグリシンの合成)
16-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンの合成反応の概要を下記に示す。
15-ヒドロキシペンタデカン酸の代わりに、16-ヒドロキシペンタデカン酸(2g、7.3mmol)(下記式(III))を用いた以外は、実施例1と同様にして、16-ヒドロキシヘキサデカン−グリシルグリシンを得た(2.4g, 収率85%)。
下記に示すNMRの結果から目的化合物が16-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンであることを確認した。
1H NMR [dimethyl sulfoxide (DMSO)-d6, 500 MHz]: δ: 1.22 (m, 22H, -(CH2)10-), 1.48 (m, 6H, -CH2-CH2-CONH-, -CH2-CH2-OH, -CH2-CH2-CH2-OH), 2.10 (t, 2H, -CH2-CH2-CONH-), 3.32 (m, 2H, -CH2-CH2-OH), 3.69 (m, 4H, -NH-CH2-CO-),and 8.05 (t, 2H, NH) ppm.
16-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンの合成反応の概要を下記に示す。
15-ヒドロキシペンタデカン酸の代わりに、16-ヒドロキシペンタデカン酸(2g、7.3mmol)(下記式(III))を用いた以外は、実施例1と同様にして、16-ヒドロキシヘキサデカン−グリシルグリシンを得た(2.4g, 収率85%)。
1H NMR [dimethyl sulfoxide (DMSO)-d6, 500 MHz]: δ: 1.22 (m, 22H, -(CH2)10-), 1.48 (m, 6H, -CH2-CH2-CONH-, -CH2-CH2-OH, -CH2-CH2-CH2-OH), 2.10 (t, 2H, -CH2-CH2-CONH-), 3.32 (m, 2H, -CH2-CH2-OH), 3.69 (m, 4H, -NH-CH2-CO-),and 8.05 (t, 2H, NH) ppm.
(実施例3.Co-C15-ナノチューブの製造)
実施例1により得られた15-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンの乾燥粉末(100mg, 0.27mmol)をエタノール(2mL)に分散し、酢酸コバルト(27mg, 0.15mmol)を加え、密閉した。混合した分散液(薄いピンク色)を50度のオイルバスで24時間攪拌反応後、反応液を濾過で青いナノチューブ粉を得た。
上記の反応液(10uL)をエタノール(200uL)に希釈後、約5uLの希釈液をカーボングリッドに乗せ、真空乾燥した後、走査型透過電子顕微鏡(STEM)で観察した。Co-C15-ナノチューブは均一のチューブ状構造体であった。チューブを構成する円の外径は120nm以下であり、膜厚は20nm以下であった(STEM観察、図3)。
実施例1により得られた15-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンの乾燥粉末(100mg, 0.27mmol)をエタノール(2mL)に分散し、酢酸コバルト(27mg, 0.15mmol)を加え、密閉した。混合した分散液(薄いピンク色)を50度のオイルバスで24時間攪拌反応後、反応液を濾過で青いナノチューブ粉を得た。
上記の反応液(10uL)をエタノール(200uL)に希釈後、約5uLの希釈液をカーボングリッドに乗せ、真空乾燥した後、走査型透過電子顕微鏡(STEM)で観察した。Co-C15-ナノチューブは均一のチューブ状構造体であった。チューブを構成する円の外径は120nm以下であり、膜厚は20nm以下であった(STEM観察、図3)。
(実施例4.Co-C16-ナノチューブの製造)
実施例2で得られた16-ヒドロキシヘキサデカン−グリシルグリシンの乾燥粉末(100mg, 0.27mmol)をエタノール(2mL)に分散し、酢酸コバルト(27mg, 0.15mmol)を加え、密閉した。混合した分散液(薄いピンク色)を70度のオイルバスで48時間攪拌反応後、反応液を濾過し、青い色を有するナノチューブ粉を得た。STEM観察では、Co-C16-ナノチューブ大部分がチューブ状構造体であったが、非チューブ構造体も一部存在していた(図4)。
実施例2で得られた16-ヒドロキシヘキサデカン−グリシルグリシンの乾燥粉末(100mg, 0.27mmol)をエタノール(2mL)に分散し、酢酸コバルト(27mg, 0.15mmol)を加え、密閉した。混合した分散液(薄いピンク色)を70度のオイルバスで48時間攪拌反応後、反応液を濾過し、青い色を有するナノチューブ粉を得た。STEM観察では、Co-C16-ナノチューブ大部分がチューブ状構造体であったが、非チューブ構造体も一部存在していた(図4)。
(実施例5.Zn-C15-ナノチューブの製造)
15-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンの乾燥粉末(100mg, 0.27mmol)をエタノール(2mL)に分散し、酢酸亜鉛(27mg, 0.15mmol)を加え、密閉した。混合した分散液を50度のオイルバスで3時間攪拌反応後、反応液を濾過し、白い色を有するナノチューブ粉を得た。Zn-C15-ナノチューブは、均一のチューブ状構造体であった。ナノチューブを構成する円の外径は116nm以下であり、膜厚は19nm以下であった(図5)。
15-ヒドロキシペンタデカン−グリシルグリシンの乾燥粉末(100mg, 0.27mmol)をエタノール(2mL)に分散し、酢酸亜鉛(27mg, 0.15mmol)を加え、密閉した。混合した分散液を50度のオイルバスで3時間攪拌反応後、反応液を濾過し、白い色を有するナノチューブ粉を得た。Zn-C15-ナノチューブは、均一のチューブ状構造体であった。ナノチューブを構成する円の外径は116nm以下であり、膜厚は19nm以下であった(図5)。
(実施例6.ナノチューブの湿度応答性と水分吸着性)
Co-C15-ナノチューブを乗せたカーボングリッドを、湿度チャンバーにおいて90%RHの条件下12時間または24時間インキュベーションした後、得られたナノチューブを走査型透過電子顕微鏡で観察した。12時間インキュベートしたナノチューブは、チューブ状の構造体が変化し始めていた。一方、24時間インキュベートしたナノチューブは、大部分がシート状の構造に変化していた(図6)。同時に、コバルトイオンに水分子が吸着することにより、固体粉末の色も薄いピンクとなった。
Co-C15-ナノチューブを乗せたカーボングリッドを、湿度チャンバーにおいて90%RHの条件下12時間または24時間インキュベーションした後、得られたナノチューブを走査型透過電子顕微鏡で観察した。12時間インキュベートしたナノチューブは、チューブ状の構造体が変化し始めていた。一方、24時間インキュベートしたナノチューブは、大部分がシート状の構造に変化していた(図6)。同時に、コバルトイオンに水分子が吸着することにより、固体粉末の色も薄いピンクとなった。
Zn-C15-ナノチューブを乗せたカーボングリッドを、湿度チャンバーにおいて90%RHの条件下5日間インキュベーションした後、得られたナノチューブを走査型透過電子顕微鏡で観察した。インキュベート5日後のナノチューブは、一部のチューブがシートに変形した(図7)。
これらの結果より、Zn-C15-ナノチューブおよびCo-C15-ナノチューブは、高い湿度条件下においてチューブ状構造からシート状へ変形することが明らかとなった。また、Zn-C15-ナノチューブの湿度応答性はCo-C15-ナノチューブのより低かった。この湿度応答性の差は、次の水分吸着性の実験と一致していた。
これらの結果より、Zn-C15-ナノチューブおよびCo-C15-ナノチューブは、高い湿度条件下においてチューブ状構造からシート状へ変形することが明らかとなった。また、Zn-C15-ナノチューブの湿度応答性はCo-C15-ナノチューブのより低かった。この湿度応答性の差は、次の水分吸着性の実験と一致していた。
Co-C15-ナノチューブおよびZn-C15-ナノチューブの乾燥粉(100mg)をシャーレに入れ、90%RH、80%RH、または、70%RHの条件下にある湿度チャンバーでインキュベーションした。それぞれの条件下において、インキュベーションは72~120時間行った。インキュベーション後、シャーレを取り出して、物理吸着した水分を除去するため15分間真空乾燥した後、乾燥粉末の計量を行った。それぞれの重量増加と理論増加値からRelative mass increase(%)を算出した。具体的には、Relative mass increaseは下記式により算出した。
式:Relative mass increase (%) = 重量増加/理論増加値 × 100%
Co-C15-ナノチューブの場合、一つの錯体には六つ水分子が吸着し、理論増加値は13.47mgとなる(飽和吸着)。Zn-C15-Nanotubeの場合、一つの錯体には二つ水分子が吸着し、理論増加値は4.45mgとなる。
Co-C15-ナノチューブの場合、一つの錯体には六つ水分子が吸着し、理論増加値は13.47mgとなる(飽和吸着)。Zn-C15-Nanotubeの場合、一つの錯体には二つ水分子が吸着し、理論増加値は4.45mgとなる。
図8は各湿度条件下におけるRelative mass increaseの経時的変化を示すグラフである。図8に示すように、Co-C15-ナノチューブは90%RH湿度条件下における水分吸着が非常に早く、24時間後には飽和状態になった。80%RH湿度においても水分吸着が顕著であり、120時間で飽和状態になった。ただし、70%RH湿度においては水分吸着をほとんどしなかった。
一方、Zn-C15-ナノチューブは90%RH湿度における水分吸着は非常に遅く、120時間経過後であっても40%の吸着量であった。80%RH湿度条件下では、Zn-C15-Nanotubeの水分吸着は観察されなかった。
このように、ナノチューブと錯体を形成する金属イオンの選択により、ナノチューブの水分吸着性と湿度応答性の制御が可能になる。
一方、Zn-C15-ナノチューブは90%RH湿度における水分吸着は非常に遅く、120時間経過後であっても40%の吸着量であった。80%RH湿度条件下では、Zn-C15-Nanotubeの水分吸着は観察されなかった。
このように、ナノチューブと錯体を形成する金属イオンの選択により、ナノチューブの水分吸着性と湿度応答性の制御が可能になる。
(実施例7.錯体型ナノチューブ(Co-C15-Nanotube)から香料の放出実験)
香料の放出実験にはオイゲノール(EL)を用いた。Co-C15-NT(500mg)のエタノール溶液(10mL)にEL(2mL)を加え、室温で24時間放置しカプセル化を行った。その後、100nm孔の濾過膜上でろ過し、固体をエタノール(10mL)で洗浄し、錯体型ナノチューブ外表面のELを除去した。10mgの錯体型ナノチューブ内のELの含有量は43.23μgである。
得られた錯体型ナノチューブを30℃、かつ、湿度90%RHまたは80%RHに制御したチャンバーに入れ、放出特性を求めた。すなわち一定時間毎に試料を取り出し、ナノチューブ内に残存するELをUV-Vis吸収より定量し、放出量を求めた。
その結果を図9に示す。図9に示すように、Co-C15-ナノチューブからは湿度応答性の放出性能を観察することができた。室内の空気中(<70%RH)では、24時間と120時間でのオイゲノール放出量はそれぞれ6.7%と38.3%であった。これは、錯体型ナノチューブの両端および粉末からオイゲノールが蒸発したと考えられる。80%RHの環境中では、24時間と120時間でのオイゲノール放出量は27.6%と82.3%であった。さらに高い湿度環境中(90%RH)では、24時間と48時間でのオイゲノール放出量は50.7%と84.6%であった。80%RHおよび90%RHでは、ナノチューブの構造変化によるオイゲノールの放出を促進すると考えられる。
香料の放出実験にはオイゲノール(EL)を用いた。Co-C15-NT(500mg)のエタノール溶液(10mL)にEL(2mL)を加え、室温で24時間放置しカプセル化を行った。その後、100nm孔の濾過膜上でろ過し、固体をエタノール(10mL)で洗浄し、錯体型ナノチューブ外表面のELを除去した。10mgの錯体型ナノチューブ内のELの含有量は43.23μgである。
得られた錯体型ナノチューブを30℃、かつ、湿度90%RHまたは80%RHに制御したチャンバーに入れ、放出特性を求めた。すなわち一定時間毎に試料を取り出し、ナノチューブ内に残存するELをUV-Vis吸収より定量し、放出量を求めた。
その結果を図9に示す。図9に示すように、Co-C15-ナノチューブからは湿度応答性の放出性能を観察することができた。室内の空気中(<70%RH)では、24時間と120時間でのオイゲノール放出量はそれぞれ6.7%と38.3%であった。これは、錯体型ナノチューブの両端および粉末からオイゲノールが蒸発したと考えられる。80%RHの環境中では、24時間と120時間でのオイゲノール放出量は27.6%と82.3%であった。さらに高い湿度環境中(90%RH)では、24時間と48時間でのオイゲノール放出量は50.7%と84.6%であった。80%RHおよび90%RHでは、ナノチューブの構造変化によるオイゲノールの放出を促進すると考えられる。
本発明により提供される錯体型ナノチューブによれば、比較的に高い湿度環境中(東南アジア、日本の梅雨季節、靴の中など)においても安定して機能性物質を保持し、さらに高い湿度環境下において機能性物質を放出することができる。本発明により提供される錯体型ナノチューブは、たとえば、農薬、化粧品、消臭剤などのカプセル材料として用いることができる。
Claims (15)
- 請求項1に記載の化合物と金属イオンとの錯体を含む錯体型ナノチューブ。
- 請求項2に記載の錯体型ナノチューブであって、
前記金属イオンが、亜鉛イオンまたはコバルトイオンである、錯体型ナノチューブ。 - 請求項2または3に記載の錯体型ナノチューブであって、
湿度応答性を有する、錯体型ナノチューブ。 - 請求項4に記載の錯体型ナノチューブであって、
相対湿度30%において安定である、錯体型ナノチューブ。 - 請求項2〜5のいずれか一項に記載の錯体型ナノチューブであって、
機能性物質を内包する、錯体型ナノチューブ。 - 請求項2〜6のいずれか一項に記載の錯体型ナノチューブを、水と接触させてシート状に構造変化させる工程を含む、
錯体型ナノチューブの使用方法。 - 請求項7に記載の錯体型ナノチューブの使用方法であって、
前記錯体型ナノチューブが機能性物質を内包するものであり、
前記構造変化させる工程が、前記錯体型ナノチューブに内包される機能性物質を放出する工程である、
錯体型ナノチューブの使用方法。 - 請求項9に記載の化合物の製造方法であって、
(iii)前記(ii)工程の後に、前記式(I)に記載の化合物を析出させる工程を含む、化合物の製造方法。 - 請求項11に記載の錯体型ナノチューブの製造方法であって、
前記金属イオンが亜鉛イオンまたはコバルトイオンである、錯体型ナノチューブの製造方法。 - 請求項11または12に記載の錯体型ナノチューブの製造方法であって、
前記工程(A)における有機溶媒が、エタノールまたはエタノールとメタノールとの混合溶媒である、錯体型ナノチューブの製造方法。 - 請求項10〜12のいずれか一項に記載の錯体型ナノチューブの製造方法であって、
前記工程(A)における有機溶媒が機能性物質を含む、
錯体型ナノチューブの製造方法。 - 請求項10〜13のいずれか一項に記載の錯体型ナノチューブの製造方法であって、
(C)前記工程(B)で得られた錯体型ナノチューブを乾燥し、粉末状の錯体型ナノチューブを調製する工程をさらに含む、
錯体型ナノチューブの製造方法。
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