JP2020066559A - 化学強化用ガラスセラミックス複合体、化学強化ガラスセラミックス複合体及びその製造方法 - Google Patents

化学強化用ガラスセラミックス複合体、化学強化ガラスセラミックス複合体及びその製造方法 Download PDF

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正道 谷田
美紗子 貴島
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美紗子 貴島
政行 石丸
Masayuki Ishimaru
政行 石丸
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Abstract

【課題】優れた機械加工性を有し、高い強度を付与することのできる化学強化用ガラスセラミックス複合体、これを用いた化学強化ガラスセラミックス複合体及びその製造方法を提供すること。【解決手段】ガラスマトリックス中に無機結晶粉末が分散されてなる化学強化用ガラスセラミックス複合体であって、前記ガラスマトリックスを構成するガラスは、酸化物換算のモル%で、SiO2を40〜65%、Al2O3を8.0を超え21.0%以下、B2O3を5%を超え40%以下、Li2O及びNa2Oから選ばれる1種以上を合計で5〜23%、アルカリ土類金属酸化物を0%以上2%未満含む化学強化用ガラスセラミックス複合体。【選択図】なし

Description

本発明は、化学強化用ガラスセラミックス複合体、化学強化ガラスセラミックス複合体及びその製造方法に関する。
ガラス粉末に無機結晶物を含有させて焼結することで強度を高めたガラスセラミックス基板が知られており、電子機器の配線基板として使用されている。ガラスセラミックス基板は、例えば、その表面上や内部に導電パターンを形成して、配線基板として電子機器に実装されて用いられている。あるいは、特に配線が施されずに携帯電話等の電子機器用の筐体としてガラスセラミックス基板が使用されることもある。
例えば、特許文献1では、ガラスセラミックス基板の高強度化を目的として、ガラスマトリックス中にアスペクト比が3以上の扁平状アルミナ粒子を分散させ、さらに、ガラスセラミックス基板の内層部の熱膨張係数を表層部よりも大きくしたガラスセラミックス基板が提案されている。
ここで、ガラスセラミックス基板は、電子機器用の筐体等に用いる場合に、ドリルによって穴を設けるなど、機械加工が施される場合がある。そのため、優れた機械加工性を有するガラスセラミックス基板が求められている。
ところが、ガラスセラミックス基板は主成分であるガラス及びセラミックス共に脆性材料であり、本質的に衝撃に弱くクラックが発生し易い性質を有する。そのため、従来から、所定の組成のガラスにマイカを配合して、ガラスセラミックス基板の加工性を向上させる試みがなされている(例えば、特許文献2、3参照)。
国際公開第2014/073604号公報 特開平6−48774号公報 特開平10−101409号公報
しかしながら、上記したマイカを含むガラスセラミックス基板では、機械加工が施されると、強度を損ない、クラックを生じやすいという問題があった。
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであって、優れた機械加工性を有し、高い強度と耐クラック性を付与することのできる化学強化用ガラスセラミックス複合体、これを用いた化学強化ガラスセラミックス複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の化学強化用ガラスセラミックス複合体は、ガラスマトリックス中に無機結晶粉末が分散されてなる化学強化用ガラスセラミックス複合体であって、前記ガラスマトリックスを構成するガラスは、酸化物換算のモル%で、SiOを40〜65%、Alを8.0%を超え21.0%以下、Bを5%を超え40%以下、LiO及びNaOから選ばれる1種以上を合計で5〜23%、アルカリ土類金属酸化物を0%以上2%未満含む。
本発明の化学強化用ガラスセラミックス複合体において、前記ガラス中の、LiOとNaOは、LiO/NaOが0.35〜4であることが好ましい。
本発明の化学強化用ガラスセラミックス複合体において、前記ガラス中のBとSiOは、SiO/Bが1〜13であることが好ましい。
本発明の化学強化用ガラスセラミックス複合体における無機結晶粉末の量は、前記化学強化用ガラスセラミックス複合体の全体積に対して、15体積%以上50体積%以下であることが好ましい。
本発明の化学強化用ガラスセラミックス複合体における無機結晶粉末はマイカ粉末を含み、前記化学強化用ガラスセラミックス複合体の全体積に対する、マイカ粉末の量は15体積%未満であることが好ましい。
本発明の化学強化用ガラスセラミックス複合体において、前記ガラスマトリックスは、結晶化度が15%以下であることが好ましい。
本発明の化学強化用ガラスセラミックス複合体の、ヤング率は80GPa以上であることが好ましい。
本発明の化学強化用ガラスセラミックス複合体は、さらに、着色無機顔料を含むことが好ましい。
本発明の化学強化用ガラスセラミックス複合体は厚みを1mmにしたときに、波長600〜1000nmの赤外線透過率が0.001%以下であることが好ましい。
本発明の化学強化用ガラスセラミックス複合体は板状であり、機械加工が施されていることが好ましい。
本発明の化学強化ガラスセラミックス複合体は、化学強化処理を施された化学強化ガラスセラミックス複合体であって、ガラスマトリックス中に無機結晶粉末が分散されてなり、前記ガラスマトリックスを構成するガラスは、前記ガラスマトリックスの平均組成として、酸化物換算のモル%で、SiOを40〜65%、Alを8.0%を超え21.0%以下、Bを5%を超え40%以下、LiO、NaO及びKOから選ばれる1種以上を合計で5〜23%、アルカリ土類金属酸化物を0%以上2%未満含む。
本発明の化学強化ガラスセラミックス複合体は、表面から30μmまでの平均組成として、酸化物換算のモル%で、LiOを0〜6%、KO及びNaOから選ばれる1種以上を合計で8〜23%含むことが好ましい。
本発明の化学強化ガラスセラミックス複合体において、JIS R1601に準拠した方法で測定される4点曲げ強度が、化学強化前を1として1.2以上であることが好ましい。
本発明の化学強化ガラスセラミックス複合体の製造方法は、ガラス粒子と無機結晶粉末とを含み、前記ガラス粒子と前記無機結晶粉末の合計に対する前記無機結晶粉末の含有量が15〜50体積%であり、前記ガラス粒子が酸化物換算のモル%で、SiOを40〜65%、Alを8.0%を超え21.0%以下、Bを5%を超え40%以下、LiOとNaOのうち1種以上を合計で5〜23%、アルカリ土類金属酸化物を0%以上2%未満含むガラスセラミックス組成物を焼結して化学強化用ガラスセラミックス複合体を得る工程と、前記化学強化用ガラスセラミックス複合体に化学強化処理を施して化学強化された化学強化ガラスセラミックス複合体を得る工程とを有する。
本発明の化学強化ガラスセラミックス複合体の製造方法において、前記化学強化用ガラスセラミックス複合体は板状であり、前記化学強化用ガラスセラミックス複合体に機械加工を施す工程を有することが好ましい。
なお、本明細書において、「〜」の符号は、その左の数値を下限値として含み、右の数値を上限値として含む範囲を表す。
本発明の化学強化用ガラスセラミックス複合体によれば、優れた機械加工性を有し、化学強化ガラスセラミックス複合体に高い強度と耐クラック性を付与することができる。
本発明の化学強化ガラスセラミックス複合体の製造方法によれば、機械加工性に優れ、化学強化ガラスセラミックス複合体に高い強度と耐クラック性を付与することができる。
以下、実施形態を詳細に説明する。
<化学強化用ガラスセラミックス複合体>
本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体は、ガラスマトリックス中にフィラーが分散されてなる化学強化用ガラスセラミックス複合体であり、フィラーとして無機結晶粉末を含む。本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体において、ガラスマトリックスを構成するガラスは、酸化物換算のモル%で、SiOを40〜65%、Alを8.0%を超え21.0%以下、Bを、5%を超え40%以下、LiO及びNaOから選ばれる1種以上を合計で5〜23%、アルカリ土類金属酸化物を0%以上2%未満含む。
本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体は、例えば、上記組成のガラスの粉末と、無機結晶粉末の混合されたガラスセラミックス組成物を焼成することで得られる。この際、ガラスセラミックス組成物が含有するガラス粒子は、焼成に際して溶融し、無機結晶粉末は該溶融ガラス中に分散した状態となる。これにより、ガラスマトリックス中に無機結晶粉末が分散された化学強化用ガラスセラミックス複合体が得られる。
本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体は、ガラスマトリックス中に無機結晶粉末が分散されることで、高い耐スクラッチ性を有する。また、本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体は、化学強化処理を施すことができ、これにより高い強度の化学強化ガラスセラミックス複合体を得ることができる。
更に、本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体又は化学強化ガラスセラミックス複合体は、原料のガラス粉末とガラスセラミックス組成物の構成により様々な特性を調整することができる。例えば、密度などの物理的特性、曲げ強度、耐スクラッチ性、耐衝撃性、破壊靱性、ビッカース硬度、ヤング率などの力学的特性、色調、光透過特性、光反射特性、光沢、耐光性などの光学的特性、誘電率、誘電損失、電波透過性、絶縁抵抗などの電気的特性、熱膨張係数、耐熱性、熱伝導率などの熱的特性、耐薬品性、耐候性、防汚性、表面吸着、接着などの化学的特性を調整することができる。
本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体又は化学強化ガラスセラミックス複合体は、上記好ましい特性を有することから、例えば、電子携帯端末、医療機器、時計、表示機器、化粧品筐体、自動車内装パーツ、園芸材料、歯科材料、メガネなどあらゆる機器の構造材料(当該機器の主要構成部材や一部構成部材等の構造材料)に有効的に使用できる。
また、本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体又は化学強化ガラスセラミックス複合体は、例えば、一般のアルミニウムやチタンなどの軽量金属またはそれら合金や一般のセラミックスなどと比較して、さらに軽量、高強度、光沢性、高切削性、耐スクラッチ性等を併せ持つことができるものである。
以下、本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体が含有する各成分について説明する。
[ガラスセラミックス組成物]
本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体を得るために用いるガラスセラミックス組成物は、ガラス粒子と無機結晶粉末を含有する。また、ガラスセラミックス組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、着色無機顔料などの、無機結晶粉末以外のフィラーを含有してもよい。
(ガラス粉末)
次に、本実施形態で用いられるガラスセラミックス組成物中のガラス粉末の各成分について説明する。なお、ガラス組成の記載において「%」は、特に断りのない限り、酸化物換算のモル%表示を表す。
SiOはガラスのネットワークフォーマとなり、化学的耐久性、とくに耐酸性を高くするために必須の成分である。SiOの含有量が40%以上であれば、耐酸性が十分に確保される。一方、SiOの含有量が65%以下であれば、ガラスの軟化点(以下、「Ts」と表記する。)やガラス転移点(以下、「Tg」と表記する。)が過度に高まることなく適度な範囲に調整される。SiOの含有量は好ましくは43%以上、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは48%以上である。また、SiOの含有量は、好ましくは63%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは57%以下である。
Alはガラスの安定性、化学的耐久性を高めるために配合される成分である。とくに化学強化処理をした時の強度向上に有効な成分であり、必須成分である。Alの含有量が8%超であるため、化学強化処理での強度向上効果が十分に発揮される。一方、Alの含有量が21%以下であるため、安定なガラスが得られ、ガラスの軟化点やガラス転移点が過度に高まることなく適度な範囲に調整される。Alの含有量は、好ましくは9%以上である。また、Alの含有量は、好ましくは19%以下、より好ましくは17%以下である。
はガラスのネットワークフォーマとなり、とくにガラス粉末の焼結性を高くするために必須の成分である。Bの含有量が5%を超えるため、Tsが過度に高まることなく適度な範囲に調整され、ガラス粉末の焼結性が十分に保たれる。一方、Bの含有量が40%以下であるため、安定なガラスが得られ、化学的耐久性も十分に確保される。Bの含有量は、好ましくは7%以上、より好ましくは9%以上である。また、Bの含有量は、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下である。
LiOとNaOはともにガラスの高温粘性を低下させ、また、化学強化処理でのイオン交換を担う成分であり、必須成分である。LiO及びNaOから選ばれる1種以上を合計で5%以上含有するため、Tsが過度に高まることなく適度な範囲に調整され、ガラス粉末の焼結性が十分に保たれるとともに、化学強化処理での強度向上効果が十分に発揮される。一方、LiO及びNaOから選ばれる1種以上を合計で23%以下含有するため、安定なガラスが得られ、化学的耐久性も十分に確保される。ガラス中のLiO及びNaOから選ばれる1種以上の合計含有量は、7%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。また、ガラス中のLiO及びNaOから選ばれる1種以上の合計含有量は19%以下が好ましく、17%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましい。
ZrOはガラスのヤング率を増大し、強度を向上させる成分であり、任意成分である。ガラスは、ZrOを含有することが好ましい。ガラスが、ZrOを含有する場合、その量は、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましい。ガラスの高温粘性を上げるため、ZrOの量は、5%以下が好ましく、4%以下がより好ましい。
はガラスのヤング率を増大し、強度を向上させる成分であり、任意成分である。ガラスは、Yを含有することが好ましい。ガラスが、Yを含有する場合、その量は、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましい。ガラスの高温粘性を上げるため、Yの量は、5%以下が好ましく、4%以下が更に好ましい。
は化学強化深さを増大させる成分であり、任意成分である。ガラスは、Pを含有しなくても含有してもよい。ガラスが、Pを含有する場合、その量は、0.5%以上が好ましく、1%以上が更に好ましい。ガラスを分相させやすくするため、Pの量は、10%以下が好ましく、5%以下が更に好ましい。
ガラスを粉末化し、焼成し、焼結する過程において、結晶化を抑制することは緻密な焼結体を得るために、重要である。LiOとNaOの量比は結晶化の制御に有効であり、LiO/NaOのモル比が、0.35〜4であることが好ましい。LiO/NaOのモル比が上記のモル比となる量であれば、ガラスの安定化がより一層促進され、焼成時に結晶化が抑制される。LiO/NaOのモル比は、0.5以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましく、1以上がよりさらに好ましく、1.5以上が特に好ましく、2以上がもっとも好ましい。また、LiO/NaOのモル比は、3.5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。
また、SiOとBの量比も、ガラスを粉末にし、成形する過程においての焼結性の向上とガラスの化学耐久性を両立する制御に有効である。SiO/Bのモル比が、1〜13であることが好ましい。SiO/Bのモル比が上記のモル比となる量であれば、焼結性と化学耐久性の両立がより一層図られる。SiO/Bのモル比は10以下がより好ましく、9以下がさらに好ましく、8以下が特に好ましい。
MgO、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物は本ガラス組成においては、ガラスを粉末化し、焼成し、焼結する過程において、結晶化を促進し、緻密な焼結体を得ることが難しくなる。また、ガラスを脆くするため、研磨加工や切削加工など機械加工時のチッピングを促進するとともに曲げ強度も低下させてしまう。さらに、化学強化処理時のイオン交換を抑制し、化学強化時の強度向上効果を抑制してしまう。これらの理由からアルカリ土類金属酸化物は2%未満にする。アルカリ土類金属酸化物は1.5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。
なお、ガラス組成は、必ずしも上記成分のみからなるものに限定されず、他の成分を含有できる。他の成分を含有する場合、その合計した含有量は10%以下が好ましい。他の成分として具体的には、Sc、La、Ga、GeO、SnO、F等が挙げられる。他の成分の合計含有量は、8%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、3%以下が特に好ましい。
本発明に用いるガラス粒子は、上記したようなガラスとなるようにガラス原料を配合し、混合し、溶融法によってガラスを製造し、得られたガラスを乾式粉砕法や湿式粉砕法によって粉砕することで得られる。湿式粉砕法の場合、溶媒として水又はエチルアルコールを用いることが好ましい。粉砕は、例えばロールミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて行えばよい。
ガラス粒子の平均粒子径(D50)は、ガラス粉末と無機結晶粉末の分散性を向上させて、高い強度と耐クラック性を実現しやすい点で、0.05〜2μmが好ましい。ガラス粒子のD50が0.05μm以上であることで、ガラス粒子が凝集しにくく取り扱い易くなり、また、均一分散しやすくなる。一方、ガラス粒子のD50が2μm以下であることで、Tsの上昇や焼結不足の発生を抑制することができる。D50は、例えば粉砕後に必要に応じて分級して調整してもよい。ガラス粒子の平均粒子径(D50)は0.1μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましく、1.5μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。
上記ガラスのTgは、耐熱性と、焼結性の観点から400〜700℃が好ましく、500〜650℃がより好ましい。上記ガラスのTsは、同じく耐熱性と焼結性の観点から600〜100℃が好ましく、650〜950℃がより好ましい。ガラスのTgおよびTsは、DTA(Differential Thermal Analysis、示差熱分析)により、第一変曲点をTg[℃]、第四変曲点をTs[℃]、として測定できる。
(無機結晶粉末)
無機結晶粉末は、例えば、化学強化用ガラスセラミックス複合体に優れた強度と所望の機械特性を付与する。無機結晶粉末の材料としては、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシアなどの金属酸化物や、ムライトやフォルステライト、コージライト、マイカなどのケイ酸塩鉱物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等からなるセラミックス粒子等を使用することができる。
無機結晶粉末の形状は扁平状や不定形等であり特に限定されない。無機結晶粉末の平均粒子径(D50)は、0.05〜5μmであることが好ましい。D50が0.05μm以上の場合、分散性が良好となるために化学強化用ガラスセラミックス複合体に優れた強度を付与することができる。また、耐スクラッチ性を有効に付与することができる。また、無機結晶粉末のD50が5μm以下の場合、化学強化用ガラスセラミックス複合体全体として均一な強度が得られ、加工性に優れる。無機結晶粉末のD50は、0.1μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましい。また、D50は、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。無機結晶粉末として金属酸化物を用いる場合、金属アルコキシドを原料として、加水分解、脱水縮合、加熱等を施すことで、所望の粒子径の無機結晶粉末が得られる。
なお、無機結晶粉末の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式の装置によって測定することができる。この場合、球形以外の無機結晶粒子の平均粒子径は通常、粒子の投影面積に等しい円の直径である相当径で測定される。
ガラスセラミックス組成物における、無機結晶粉末の配合量としては、耐スクラッチ性を向上させる点で、ガラスセラミックス組成物全量に対して15体積%以上の量であればよく、20体積%以上がより好ましく、25体積%以上がさらに好ましく、35体積%以上が特に好ましい。無機結晶粉末の配合量は50体積%以下が好ましく、45体積%以下がより好ましく、40体積%以下がさらに好ましい。
無機結晶粉末としてマイカ粉末を使用する場合、その含有量は、ガラスセラミックス組成物の全体積に対して、15体積%未満であることが好ましい。マイカ粉末の含有量が、15体積%未満であることで、化学強化用ガラスセラミックス複合体の加工後の強度低下を抑制することができる。マイカ粉末の含有は5体積%以下、3体積%以下、1体積%以下、特に好ましくは実質的に含有しない(即ち不可避的不純物(例えば0.5体積%以下)を除き含有しない)。なお、研磨加工性や切削加工性を考慮する場合は、マイカ粉末を好ましくは1体積%以上、より好ましくは2体積%以上含有させてもよい。
ガラスセラミックス組成物における、無機結晶粉末として、焼結性を向上させ、ガラスセラミックス複合体の曲げ強度を向上させ、高い耐スクラッチ性を付与するには粉末状アルミナ粒子が好ましい。更に、深い色調や、透明性の高い外観を付与するには、ガラスセラミックス組成物中のガラス粉末と屈折率が近いセラミックス粒子が好ましく、平均粒子径が1μm以下の粉末状アルミナ粒子が好ましい。
(着色無機顔料)
本発明のガラスセラミックス組成物が含有しうる着色無機顔料としては、金属酸化物、特に遷移金属酸化物が挙げられ、例えば、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ti、Zr及びSn等の酸化物、具体的には、Cr、Co、NiO、Fe及びMnO等を成分とする酸化物が挙げられる。
Crの場合、緑色の色調が得られ、Feの場合、赤ないし赤褐色の色調が得られ、Coの場合、青色の色調が得られ、NiOの場合、灰色から褐色の色調が得られる。そして、これらの着色無機顔料を組み合わせることで、様々な色調が得られる。また、着色無機顔料としては、上記したもの以外にも、例えば、Ag、Au等の金属をコロイド化したものであってもよい。
特に、黒色顔料としては、例えば、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を含む金属酸化物顔料、前記金属群の複合金属酸化物顔料、TiOもしくはTiOで表されるチタン系黒色顔料等が挙げられる。複合金属酸化物顔料としては、具体的には、例えば、Co−Fe−Cr系黒色顔料、Co−Fe−Al系黒色顔料、Cu−Cr−Mn系黒色顔料、Mn−Bi系黒色顔料、Mn−Y系黒色顔料、Fe−Cr系黒色顔料、Cr−Cu系顔料、Mn−Fe系顔料が使用でき、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、赤外線隠蔽性の高い着色無機顔料を含有させることにより、化学強化用ガラスセラミックス複合体に赤外隠蔽機能を持たせることもできる。赤外線隠蔽性の高い着色無機顔料としては、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuの複合酸化物であるスピネル系結晶等が挙げられる。
ガラスセラミックス組成物における、着色無機顔料の含有量は、着色無機顔料の種類によっても異なるが、ガラスセラミック組成物中に1体積%以上が好ましい。着色無機顔料の割合を1体積%以上とすることで、化学強化用ガラスセラミックス複合体を効果的に着色できる。着色無機顔料の割合は、2体積%以上が好ましく、3体積%以上が好ましい。また、着色無機顔料の割合が過度に多くなると、強度が低下するおそれがあることから、15体積%以下が好ましく、13体積%以下がより好ましく、10体積%以下が特に好ましい。なお、着色無機顔料を複数併用する場合、着色無機顔料の合計した割合が上記範囲内となることが好ましい。
着色無機顔料のD50は、0.02〜20μmであることが好ましい。D50が0.02μm以上の場合、分散性が良好となるために均一な着色が得られる。また、D50が20μm以下の場合、局所的な着色が抑制されて均一な着色が得られる。D50は、0.05μm以上がより好ましく、0.08μm以上がさらに好ましい。また、D50は、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。
ガラスセラミックス組成物におけるガラス粉末の含有量は、無機結晶粉末及び着色無機顔料の合計量を100から引いた値である。ガラス粉末の含有量は20〜85体積%が好ましく、30〜75体積%がより好ましい。
化学強化用ガラスセラミックス複合体は、上記したガラスセラミックス組成物をグリーンシートに成型後、焼成して得られる。また、上記したガラスセラミックス組成物を含むペーストを調整後、これを焼成する方法で得ることもできる。
(グリーンシートの製造方法)
まず、ガラスセラミックス組成物に、バインダーと、必要に応じて可塑剤、溶剤、分散剤等を添加してスラリーを調製する。なお、該スラリーにおいて、ガラスセラミックス組成物以外の成分は、焼成時に全て消失する成分である。
バインダーとしては、例えば、ポリビニルブチラール、アクリル−メタクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂等の加熱焼失性の樹脂を好適に使用できる。可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル等を使用できる。また、溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶剤、2−プロパノール、2−ブタノール等のアルコール系溶剤を使用できる。芳香族系溶剤やエステル系溶剤とアルコール系溶剤を混合して用いることが好ましい。さらに、分散剤を併用することもできる。
スラリー中の各構成の配合量としては、ガラスセラミックス組成物100質量部に対して、バインダー5〜15質量部、可塑剤1〜5質量部、分散剤2〜6質量部及び溶剤50〜90質量部が好ましい。
次いで、得られたスラリーを、離形剤が塗布されたPETフィルム上に、例えばドクターブレードを用いて塗布してシート状に成形し、乾燥させることで、グリーンシートを製造する(シート法)。なお、スラリーからグリーンシートを成形する方法はロール成形法であってもよい。
また、グリーンシートの成型方法としては、上記したシート法以外にも、スリップキャスト法、ゲルキャスト法などのキャスト法、射出成型法、粉末プレス焼成法などが適用できる。
化学強化用ガラスセラミックス複合体の製造に際して、グリーンシートは1枚を単層で用いても、複数枚を用いてもよい。グリーンシートの複数枚を積層する場合は、熱圧着によりこれらを一体化することができる。
(スラリー、ペーストの製造方法)
上記ガラスセラミックス組成物と樹脂成分(バインダー)とを所定の質量比で配合し、ボールミルで分散を行ってスラリーを作製することができる。また、磁器乳鉢等で、混練を行い、三本ロール等にて分散を行って、ペーストを作製することができる。
(焼成方法)
その後、上記で得られたスラリーを塗工し乾燥したグリーンシート又はペーストを塗工し乾燥した乾燥帯中の、バインダー等のガラスセラミックス組成物以外の成分を分解、除去するための脱脂した後、焼成してガラスセラミックス組成物を焼結させ、化学強化用ガラスセラミックス複合体を得る。
脱脂は、例えば、400〜600℃の温度で1〜10時間保持して行う。脱脂温度が上記範囲であり、脱脂時間が1時間以上であることで、バインダー等を十分に分解、除去することができる。脱脂温度を500℃程度とし、脱脂時間を5時間程度とすれば、十分にバインダー等を除去できるが、この時間を超えるとかえって生産性等が低下するおそれがある。
焼成温度は、上記ガラス粉末のTsと、ガラスマトリックスを構成するガラスの結晶化温度に合わせて調整される。通常、ガラスマトリックスのガラスの結晶化温度以下であって、かつガラス粉末のTsより0〜200℃高い温度、好ましくはTs+50〜Ts+150℃を焼成温度とする。
例えば、上記ガラス粉末のガラス組成を用いた場合、700〜900℃の温度を焼成温度とでき、特に750〜850℃の焼成温度が好ましい。焼成時間は、20〜60分間程度に調整できる。上記焼成温度及び焼成時間の範囲であると、緻密な焼結体を得やすい。一方、焼成温度が高すぎたり、焼成時間が長すぎたりすると、結晶化や発泡等により、化学強化用ガラスセラミックス複合体の緻密性が低くなったり、生産性等が低下するおそれがある。
このような焼成の操作に際して、グリーンシート内でガラス粉末のみが溶融し、溶融したガラスが無機結晶粉末の間の隙間を埋めて、ガラスマトリックス中に無機結晶粉末が分散した、化学強化用ガラスセラミックス複合体が得られる。
(結晶化度)
本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体において、ガラスマトリックスを構成するガラスの結晶化度は15%以下であることが好ましい。ガラスの結晶化度X(%)は、X線回折装置により測定される化学強化用ガラスセラミックス複合体の粉末のX線回折スペクトルから下記(1)の計算式によって算出できる。
X=I(glass)/{I(Al)+I(glass)}・100 …(1)
式(1)中、I(glass)とは、結晶化ガラスのX線回析のピークの最高強度を示し、I(Al)とは、アルミナのX線回析のピークの最高強度を示す。なお、測定において、特性X線としてCuKα線を用いることができる。
ガラスマトリックスが部分的に結晶化すると、ガラスと結晶相との境界からクラックが進展し強度が低下するおそれがある。また、焼成中にガラスの結晶が析出すると、焼結が進まずに化学強化用ガラスセラミックス複合体の緻密性が低くなる場合があり、また、残留ガラスの軟化点が低下し、後述のバインダー成分の分解が十分に行えず黒色化が起こることがある。また、無機結晶粉末の分散性が悪くなり配合量が制約を受けることがある。さらに、結晶の析出の制御は難しく、結晶の析出のバラツキに起因して、化学強化用ガラスセラミックス複合体の強度にバラツキが生じたりすることもある。
このような不具合を防ぐ観点から、上記焼成過程において形成されるガラスマトリックス中には、結晶が生じないことが好ましい。すなわち、X線回析において結晶化ガラスのピークが検出されない、結晶化度が0%の非晶質であることが好ましい。
しかしながら、製造条件が十分に制御された環境において化学強化用ガラスセラミックス複合体が製造される場合には、ガラスマトリックス中に結晶相を一定のレベルまで含有してもよい。具体的には、ガラスマトリックスの結晶化度が15%までであれば結晶相を含んでもよく、結晶化度は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。上記製造条件の一例としては、製造の過程においてバインダー成分の分解が十分になされた段階で、結晶の析出が均等に起こるように制御されて化学強化用ガラスセラミックス複合体が製造されるような場合である。
(4点曲げ強度)
化学強化用ガラスセラミックス複合体の4点曲げ強度は100MPa超であることが好ましい。化学強化用ガラスセラミックス複合体の4点曲げ強度を100MPa超とすることで、化学強化用ガラスセラミックス複合体に十分な強度を付与しつつ、機械加工性及び耐スクラッチ性を向上させることができる。化学強化用ガラスセラミックス複合体の強度は120MPa以上がより好ましく、150MPa以上が特に好ましい。また、4点曲げ強度は、170MPa以上がさらに好ましく、200MPa以上がもっとも好ましい。なお、本明細書における4点曲げ強度とは、JIS R1601に準拠した方法で得られる4点曲げ強度をいう。
本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体における各成分の含有量は、上記製造方法で化学強化用ガラスセラミックス複合体を作成する際の各材料の混合割合からほとんど変化しない。そのため、各材料の混合割合を化学強化用ガラスセラミックス複合体における各成分の含有量とみなすことができる。例えば、化学強化用ガラスセラミックス複合体における、ガラスマトリックス成分に対する無機結晶粉末の量はガラスセラミックス組成物における無機結晶粉末の量の含有量と同視できる。また、ガラスマトリックスにおける各成分の含有量は、ガラス粉末における各成分の含有量と同視できる。
(組成分析方法)
化学強化用ガラスセラミックス複合体の組成を直接分析する場合には、化学強化用ガラスセラミックス複合体の任意の断面における各成分の専有面積から算出する方法を用いることができる。本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体においては、上記製造方法で製造する場合、各原料成分は、化学強化用ガラスセラミックス複合体中にほぼ均一に分散される。そのため、任意の断面における各成分の専有面積から算出される組成を、分析対象の化学強化用ガラスセラミックス複合体の組成とみなすことができる。また、化学強化用ガラスセラミックス複合体を、ガラスマトリックスのみ溶解する薬剤(例えば、希フッ酸)を用いて溶解し、ガラスマトリックスの質量と無機結晶粉末の質量を測定して、得られた質量から、比重を用いて体積割合を算出する方法で組成を分析することもできる。
(赤外線透過率)
本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体は、着色無機顔料として、上記赤外線遮蔽性の着色無機顔料を含む場合、赤外線透過率を極めて低くすることができる。このような赤外線遮蔽性の化学強化用ガラスセラミックス複合体は、化学強化用ガラスセラミックス複合体の厚みを1mmとしたときに、波長600〜1000nmの赤外線透過率が0.001%以下であることが好ましい。赤外線遮蔽性の化学強化用ガラスセラミックス複合体は脈拍、血液中のヘモグロビン濃度、血中酸素濃度などを測定する近赤外線センサーを利用するバイタルセンシング機器のパッケージ、筐体等の用途に好適である。なお、赤外透過率は分光光度計を用いて測定することができる。分光光度計としては、例えば、島津製作所製SolidSpec−3700やPerkinElmer社製LAMBDA950、1050などを用いればよい。
<化学強化ガラスセラミックス複合体及びその製造方法>
本実施形態の化学強化ガラスセラミックス複合体は、通常、上記で得られた化学強化用ガラスセラミックス複合体を所望の形状、例えば板状に形成し、さらに必要に応じて所望の機械加工を施し、その後、化学強化処理を施して得ることができる。
板状の化学強化用ガラスセラミックス複合体は、例えば、上記グリーンシートを製造する方法で得ることができる。機械加工としては、ドリル等を用い、化学強化用ガラスセラミックス複合体に穴をあける等の加工や表面研磨加工等が挙げられる。
化学強化処理の方法としては化学強化用ガラスセラミックス複合体の表層のNaと溶融塩中のK、又は化学強化用ガラスセラミックス複合体表層のLiと溶融塩中のNa及びKをイオン交換できるものであれば、特に限定されない。たとえば、化学強化用ガラスセラミックス複合体表層のNaと溶融塩中のKをイオン交換する場合、加熱された硝酸カリウム(KNO)溶融塩に化学強化用ガラスセラミックス複合体を浸漬する方法が挙げられる。化学強化用ガラスセラミックス複合体の表層のLi及びNaと溶融塩中のNa及びKをイオン交換する場合には、上記KNO溶融塩に代えて、NaO溶融塩を用いることができる。また、KNO溶融塩にNaNO溶融塩を混合して用いてもよい。
化学強化処理の条件は、化学強化用ガラスセラミックス複合体の厚さや大きさによっても異なるが、化学強化用ガラスセラミックス複合体を350〜550℃の溶融塩に0.5〜20時間浸漬させることが典型的である。また、化学強化ガラスセラミックス複合体の強度をさらに向上させるため、化学強化用ガラスセラミックス複合体を溶融塩に浸漬後、水洗し、さらに溶融塩に浸漬して2段階の化学強化処理を行ってもよい。
このようにして得られる化学強化ガラスセラミックス複合体において、上記化学強化処理が施されることで、表面に強化塩の陽イオン成分であるNa又はKが濃化された表面圧縮応力層が形成される。化学強化処理が施された後の、ガラスマトリックスを構成するガラスの組成は、ガラスマトリックスの平均組成として、酸化物換算のモル%で、SiOを40〜65%、Alを8.0%を超え21.0%以下、Bを5%を超え40%以下、LiO、NaO及びKOから選ばれる1種以上を合計で5〜23%、アルカリ土類金属酸化物を0%以上2%未満含むことが好ましい。
また、上記でNa又はKが濃化された表面圧縮応力層の深さは、例えば30μm以上である。化学強化ガラスセラミックス複合体における、この表面圧縮応力層中の平均組成、すなわち、表面から30μmまでの平均組成は、酸化物換算のモル%で、LiOを0〜6%、KO及びNaOから選ばれる1種以上を合計で8〜23%含む組成であることが好ましい。
化学強化ガラスセラミックス複合体におけるガラスマトリックスの平均組成及び表面から30μmまでの平均組成は、化学強化後の化学強化ガラスセラミックス複合体のサンプル断面を鏡面研磨し、エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)にてエリアを区切って定量分析を行い、分析結果を使用して表面から30μm及びガラスマトリックス全域にわたる平均組成として算出することができる。
(4点曲げ強度)
本実施形態の化学強化ガラスセラミックス複合体の4点曲げ強度は250MPa超を得ることができる。化学強化ガラスセラミックス複合体の4点曲げ強度を250MPa超とすることで、化学強化ガラスセラミックス複合体の高い強度を実現することができる。化学強化ガラスセラミックス複合体の4点曲げ強度は300MPa超であることがより好ましく、350MPa超がより好ましい。
(強度比)
本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体はガラスマトリックスが上記した組成のガラスからなることで、化学強化処理によって4点曲げ強度が向上する。化学強化前後の4点曲げ強度の比は、「化学強化ガラスセラミックス複合体(化学強化後)の4点曲げ強度/化学強化用ガラスセラミックス複合体(化学強化前)の4点曲げ強度」(以下、単に「化学強化後/化学強化前」という。)で表わされる比で1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。この場合には、化学強化前の機械加工性及び耐スクラッチ性をより向上させつつ、優れた強度の化学強化ガラスセラミックス複合体を得ることができる。
また、本実施形態の化学強化ガラスセラミックス複合体の4点曲げ強度は研磨加工や切削加工などの機械加工がなされたものであって、上記4点曲げ強度と同等の強度を維持することができる。この機械加工された化学強化ガラスセラミックス複合体からなる加工物の4点曲げ強度は、機械加工を施さない化学強化ガラスセラミックス複合体の4点曲げ強度と比べて、「加工物の4点曲げ強度/加工されない化学強化ガラスセラミックス複合体の4点曲げ強度」で表わされる比で好ましくは1.2〜3.0、より好ましくは1.4〜2.5が得られる。この場合には、機械加工性及び耐スクラッチ性をより向上させつつ、優れた強度の加工物を得ることができる。
(組成分析方法、赤外線透過率)
化学強化ガラスセラミックス複合体の組成についても、上記化学強化用ガラスセラミックス複合体と同様、各原料成分の配合割合と同視することができる。また、上記化学強化用ガラスセラミックス複合体と同様の方法で分析してもよい。また、赤外線透過率は、化学強化によってほとんど変化しないため、化学強化ガラスセラミックス複合体の赤外線透過率は、化学強化用ガラスセラミックス複合体のそれと同視することができる。
上記した本実施形態の化学強化用ガラスセラミックス複合体によれば、優れた機械加工性を有し、化学強化によって得られる化学強化ガラスセラミックス複合体に高い強度を付与することができる。また、本発明の化学強化ガラスセラミックス複合体の製造方法によれば、機械加工性に優れ、化学強化ガラスセラミックス複合体に高い強度と耐スクラッチ性を付与することができる。
以下、実施例を参照して具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
[実施例;例17、18、参考例;例1〜16]
<ガラス粉末の製造>
表1、2に示す割合(酸化物換算のモル百分率)のガラスとなるように各ガラス原料を配合、混合して原料混合物とし、この原料混合物を白金ルツボに入れて1500〜1700℃で90分間溶融した。溶融物をステンレス製の水冷ロールに通過させ0.3〜1.0mmの薄片状のガラスを得、その後、ボールミルにて平均粒子径(D50)を2μmに粉砕して各組成のガラス粉末G1〜G18を得た。表中、空欄は当該成分の含有量が「0」であることを示す。ガラス粉末G1〜G7、G13〜G18が実施例用のガラス粉末であり、G8〜G12が本願の範囲外のガラス粉末である。
得られたガラス粉末G1〜G18についてそれぞれ、次の方法でTs、Tgを測定した。結果を表1、2の下欄に示す。なお、ガラス粉末G12は得られたガラスの一部に白濁部を生じ、均質なガラスが得られない、未融不良であった。
(Tg、Ts)
DTAにより、第一変曲点をTg[℃]、第四変曲点をTs[℃]、として測定した。
Figure 2020066559
Figure 2020066559
ガラス粉末に混合するフィラーとしてはそれぞれ次のものを用いた。
(無機結晶粒子)
マイカ粉末:フッ素金雲母の粉末(平均粒子径(D50):5μm)
アルミナ粉末(A):酸化アルミニウム粉末(平均粒子径(D50):0.5μm)
アルミナ粉末(B):酸化アルミニウム粉末(D50:1.5μm)
アルミナ粉末(C):酸化アルミニウム粉末(D50:0.2μm)
アルミナ粉末(D):酸化アルミニウム粉末(D50:0.1μm)
(着色無機顔料)
黒色顔料:Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどの複合酸化物粉末(平均粒子径(D50):1μm)
<化学強化用ガラスセラミックス基板の製造>
次いで、各例において、表3、4に示すように、上記で得られたガラス粉末G1〜G18と、無機結晶粒子としての、マイカ粉末、アルミナ粉末(A)〜(D)と、着色無機顔料としての黒色顔料とを組み合せて、それぞれ表3、4に示す割合(体積(vol)%)で配合し混合して、ガラスセラミックス組成物を得た。表中、空欄は当該成分の含有量が「0」であることを示す。
上記で得られたガラスセラミックス組成物を用いて、それぞれ以下に示すようにしてグリーンシートを製造した。ガラスセラミックス組成物50gに、有機溶剤(トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノールを質量比4:2:2:1で混合したもの)15g、可塑剤(フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)2.5g、バインダーとしてのアクリル−メタクリル系樹脂5g、及び分散剤0.5gをそれぞれ配合し、混合してスラリーとした。このスラリーをPETフィルム上にドクターブレード法により塗布し乾燥させた。ドクターブレードのギャップは、シートが焼成後に200μmになる厚みになるように調整してグリーンシートを製造した。得られたグリーンシートを切断し、50mm角(縦50mm横50mm)に切断し、評価用のグリーンシートを得た。
このようにして得られたグリーンシートを4枚重ね合わせ、連続焼成炉にて450℃で2時間保持することでバインダー等のガラスセラミックス組成物以外の成分を分解、除去した後、表3、4に示す焼成温度で45分(0.75時間)保持して焼成を行った。こうして、各例の化学強化用ガラスセラミックス基板(厚さ約800μm)を得た。
<評価>
上記各例で得られた各化学強化用ガラスセラミックス基板について、以下に示す評価を行った。結果を、機械加工性、密度、ヤング率については、表3、4の化学強化前の物性の欄に示す。表中、空欄は当該評価を実施しなかったことを示す。その他の評価結果においても同様である。
(機械加工性)
化学強化用ガラスセラミックス基板にドリルで鑽孔し、チッピング発生の度合いを評価した。結果を、表3、4の下欄に、チッピングを光学顕微鏡で観察し、チッピングの最大長さが、0.1mm以下であった場合には、機械加工性が良好と判断して○、0.1mmを超える場合には、機械加工性が不良と判断して×と表記した。
(密度)
化学強化用ガラスセラミックス基板の密度は、アルキメデス法により測定した。
(ヤング率)
化学強化用ガラスセラミックス基板のヤング率は、超音波法(パルスエコーオーバーラップ法)により測定した。
(破壊靭性)
化学強化用ガラスセラミックス基板の破壊靭性は、JIS R1607のIF法(Indentation Fracture Method)に準拠して測定した。結果を、表3、4の破壊靭性、化学強化前の欄に示す。
(4点曲げ強度)
各例で得られた化学強化用ガラスセラミックス基板について、JIS R1601に準拠する4点曲げ強度試験を行った。すなわち、化学強化用ガラスセラミックス基板の一辺を2点で支持し、これと対向する辺における上記2点の間の2点で徐々に加重を加えて、化学強化用ガラスセラミックス基板が破壊されたときの荷重を測定し、これに基づいて4点曲げ強度(MPa)を算出した。結果を、表3、4の4点曲げ強度(MPa)、化学強化前の欄に示す。
<化学強化ガラスセラミックス基板の製造>
上記で得られた各例の化学強化用ガラスセラミックス基板を、表3、4に示す強化温度に保持して溶融した強化塩(KNO溶融塩又はNaNO溶融塩)に、それぞれ表3、4に示す時間(1時間〜8時間)浸漬して化学強化処理を行い、化学強化ガラスセラミックス基板を得た。
<評価>
上記各例で得られた化学強化ガラスセラミックス基板を水洗後、以下に示す評価を行った。
(4点曲げ強度、破壊靭性)
上記と同様にして、化学強化ガラスセラミックス基板の4点曲げ強度(平均曲げ強度)および破壊靭性を測定した。結果を、それぞれ表3,4の化学強化後の欄に示す。また、4点曲げ強度については、強度比(化学強化後/化学強化前)を合わせて示す。
<機械加工を施した化学強化ガラスセラミックス基板の製造>
上記で得られた例17および例18の化学強化用ガラスセラミックス基板のサンプルを、横軸研削盤を用いて、#600および1000番にて研磨後、酸化セリウムなどでポリッシュし、鏡面研磨した。その後、表4に示す強化温度に保持して溶融した強化塩(KNO溶融塩又はNaNO溶融塩)に、それぞれ表4に示す時間(1時間〜8時間)浸漬して化学強化処理を行い、化学強化ガラスセラミックス基板を得た。
<評価>
上記で得られた機械加工後、化学強化処理を施した化学強化ガラスセラミックス基板を水洗後、以下に示す評価を行った。
(4点曲げ強度)
上記と同様にして、機械加工後、化学強化処理を施した化学強化ガラスセラミックス基板の4点曲げ強度(平均曲げ強度)を測定した。結果を、表4の下欄に示す。
Figure 2020066559
Figure 2020066559
表3、4より、実施例の化学強化用ガラスセラミックス基板を用いることで、化学強化によって高い高度を付与することができ、また、機械加工によっても高い強度を維持することのできる化学強化ガラスセラミックス基板が得られたことがわかる。

Claims (15)

  1. ガラスマトリックス中に無機結晶粉末が分散されてなる化学強化用ガラスセラミックス複合体であって、
    前記ガラスマトリックスを構成するガラスは、
    酸化物換算のモル%で、SiOを40〜65%、Alを8.0を超え21.0%以下、Bを5%を超え40%以下、LiO及びNaOから選ばれる1種以上を合計で5〜23%、アルカリ土類金属酸化物を0%以上2%未満含む化学強化用ガラスセラミックス複合体。
  2. 前記ガラス中の、LiOとNaOは、LiO/NaOが0.35〜4である請求項1に記載の化学強化用ガラスセラミックス複合体。
  3. 前記ガラス中のBとSiOは、SiO/Bが1〜13である請求項1又は2に記載の化学強化用ガラスセラミックス複合体。
  4. 前記無機結晶粉末の量は、前記化学強化用ガラスセラミックス複合体の全体積に対して、15体積%以上50体積%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の化学強化用ガラスセラミックス複合体。
  5. 前記無機結晶粉末はマイカ粉末を含み、前記化学強化用ガラスセラミックス複合体の全体積に対して、マイカ粉末の量が15体積%未満である請求項1〜4のいずれかに記載の化学強化用ガラスセラミックス複合体。
  6. 前記ガラスマトリックスは、結晶化度が15%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化学強化用ガラスセラミックス複合体。
  7. ヤング率は80GPa以上である請求項1〜6のいずれかに記載の化学強化用ガラスセラミックス複合体。
  8. さらに、着色無機顔料を含む請求項1〜7のいずれかに記載の化学強化用ガラスセラミックス複合体。
  9. 前記化学強化用ガラスセラミックス複合体の厚みを1mmにしたときに、波長600〜1000nmの赤外線透過率が0.001%以下である請求項1〜8のいずれかに記載の化学強化用ガラスセラミックス複合体。
  10. 前記化学強化用ガラスセラミックス複合体は板状であり、機械加工が施されている請求項1〜9のいずれかに記載の化学強化用ガラスセラミックス複合体。
  11. 化学強化処理を施された化学強化ガラスセラミックス複合体であって、
    ガラスマトリックス中に無機結晶粉末が分散されてなり、
    前記ガラスマトリックスを構成するガラスは、前記ガラスマトリックスの平均組成として、
    酸化物換算のモル%で、SiOを40〜65%、Alを8.0を超え21.0%以下、Bを5%を超え40%以下、LiO、NaO及びKOから選ばれる1種以上を合計で5〜23%、アルカリ土類金属酸化物を0%以上2%未満含む、化学強化ガラスセラミックス複合体。
  12. 前記化学強化ガラスセラミックス複合体の表面から30μmまでの平均組成として、
    酸化物換算のモル%で、LiOを0〜6%、KO及びNaOから選ばれる1種以上を合計で8〜23%含む、請求項11に記載の化学強化ガラスセラミックス複合体。
  13. 前記化学強化ガラスセラミックス複合体の、JIS R1601に準拠した方法で測定される4点曲げ強度が、化学強化前を1として1.2以上である、請求項11又は12に記載の化学強化ガラスセラミックス複合体。
  14. ガラス粒子と無機結晶粉末とを含み、前記ガラス粒子と前記無機結晶粉末の合計に対する前記無機結晶粉末の含有量が15〜50体積%であり、前記ガラス粒子が酸化物換算のモル%で、SiOを40〜65%、Alを8.0を超え21.0%以下、Bを5%を超え40%以下、LiOとNaOのうち1種以上を合計で5〜23%、アルカリ土類金属酸化物を0%以上2%未満含むガラスセラミックス組成物を焼結して化学強化用ガラスセラミックス複合体を得る工程と、
    前記化学強化用ガラスセラミックス複合体に化学強化処理を施して化学強化された化学強化ガラスセラミックス複合体を得る工程と
    を有する化学強化ガラスセラミックス複合体の製造方法。
  15. 前記化学強化用ガラスセラミックス複合体は板状であり、
    前記化学強化用ガラスセラミックス複合体に機械加工を施す工程を有する請求項14に記載の化学強化ガラスセラミックス複合体の製造方法。
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