JP2020065952A - 強アニオン交換繊維、該繊維を含む繊維構造物、及び該繊維構造物を含む吸着製品 - Google Patents

強アニオン交換繊維、該繊維を含む繊維構造物、及び該繊維構造物を含む吸着製品 Download PDF

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【課題】イミダゾリン基、テトラヒドロピリミジン基を有する重合体は、強アニオン性であるという特性を利用して、イオン交換体としての用途が提案されている。しかしながら、かかる重合体は水溶性が非常に高いため、水に対して膠着、脆化、溶出などが起こりやすく、イオン交換体としての主要な用途である浄水用途へは展開しづらい。また、粉体形状であるため、飛散、流出しやすく、またバインダーなどで固定すると性能が低下するという問題を有する。本発明の目的は、イミダゾリン基、テトラヒドロピリミジン基を有し、非水溶性を高めた重合体から構成されている強アニオン交換繊維を提供することである。【解決手段】イミダゾリン基、テトラヒドロピリミジン基および/またはこれらが造塩した構造、ならびに架橋構造を有する重合体から構成されている強アニオン交換繊維。【選択図】なし

Description

本発明は強アニオン交換繊維、該繊維を含む繊維構造物、及び該繊維構造物を含む吸着製品に関する。
従来の強アニオン交換性重合体に含まれている官能基としては、4級アンモニウム基がよく知られているが、その他の官能基として、イミダゾリン基、テトラヒドロピリミジン基なども存在する。これらはアクリル樹脂等を出発物質として主に粉体として合成、利用されていた。
これらイミダゾリン基、テトラヒドロピリミジン基を有する重合体は、強アニオン性であり、かつ水溶性であるという特性を利用して、凝集剤としての用途が開拓されていた(たとえば、特許文献1)。
また、イオン交換性を利用して、酸性ガス吸着剤としての用途も提案されており、一般に利用されている活性炭等と比較すると、酸性悪臭物質への吸着能力が高いことが知られていた(たとえば、特許文献2)。
特開2001−072713号公報 特開2001−104778号広報
しかしながら、上記したようなイミダゾリン基、テトラヒドロピリミジン基を有する重合体は水溶性の非常に高いものであるため、吸湿や吸水した際に膠着、脆化、溶出などが起こりやすく、イオン交換体としての主要な用途である浄水用途へは展開しづらい。また、粉体形状であるため、飛散、流出しやすいという問題があり、これを防ぐためにバインダーなどを用いて他の構造物に固定すると、バインダーによる被覆で性能が低下するという問題が発生する。本発明は、かかる従来技術の現状に鑑みて創案されたものであり、その目的は、イミダゾリン基、テトラヒドロピリミジン基を有し、非水溶性を高めた重合体から構成されている強アニオン交換繊維を提供することである。
本発明者らは、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、アクリル繊維を出発原料として用い、該繊維内に架橋構造を形成し、さらに適切なポリアミン化合物を反応させることによって、非水溶性であり、かつイミダゾリン基、テトラヒドロピリミジン基を有する繊維形状の重合体が得られることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下の手段により達成される。
(1) 下記化1で示す構造および/または化1が造塩した構造ならびに架橋構造を有する重合体から構成されている強アニオン交換繊維。
Figure 2020065952
(ただし、nは0または1であり、RはHまたはCHを示し、RはHまたはアルキル基、アミノアルキル基またはアミノ基を示し、R及びRはそれぞれH、アルキル基、アミノアルキル基、アミノ基またはnが0の場合には両者が隣接する炭素とともに形成するシクロアルキレン基の一部を示す。)
(2) 水膨潤度が0.5〜1.5g/gであることを特徴とする(1)に記載の強アニオン交換繊維。
(3) 中性塩分解容量が0.1〜3mmol/gであることを特徴とする(1)または(2)に記載の強アニオン交換繊維。
(4) アミン類溶出量が1.5mg/L未満であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の強アニオン交換繊維。
(5) 空気中で150℃、3時間加熱した後の中性塩分解容量が、加熱前の中性塩分解容量の90%以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の強アニオン交換繊維。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の強アニオン交換繊維を含む繊維構造物。
(7) (6)の繊維構造物を含む吸着製品。
本発明の強アニオン交換繊維は、架橋構造を導入することによって非水溶性を有し、また、水膨潤度が低く抑えられている。このため、該繊維は、水と接触した際にも、従来技術と比較して膠着、脆化、溶出が起こりにくく、実用的な使用に耐えうる強度と繊維形状を保持することができる。また、本発明の強アニオン交換繊維は、繊維構造物への成形が容易である上、該繊維単独での成形も可能であることから、バインダーの使用量を抑制し、さらには不使用とすることも可能である。このため、本発明の繊維構造物においては、バインダーの併用による本発明の強アニオン交換繊維の混率の低下や表面の被覆等を原因とするアニオン交換性能の低下も抑制できる。さらに化1で示す構造または化1が造塩した構造を有しているため、耐熱性にも優れている。かかる性能を有する本発明の強アニオン交換繊維は、例えば熱処理形成を要する水処理用フィルターとして利用することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の強アニオン交換繊維は、化1で示す構造および/または化1が造塩した構造を有するものであり、かかる構造によって強アニオン交換性能を発現することができる。
Figure 2020065952
(ただし、nは0または1であり、RはHまたはCHを示し、RはHまたはアルキル基、アミノアルキル基またはアミノ基を示し、R及びRはそれぞれH、アルキル基、アミノアルキル基、アミノ基またはnが0の場合には両者が隣接する炭素とともに形成するシクロアルキレン基の一部を示す。)
化1に示す構造は、後述するように、アクリル繊維中のニトリル基に、n=0の場合には1,2−ポリアミンを、また、n=1の場合には1,3−ポリアミンを反応させることによって得ることができる。一方、n=2以上にする場合には、アルキレン鎖がより長いポリアミン類を使用しなければならず、反応性が乏しくなるため、好ましくない。また、該構造の式量が増大するほど、本発明の繊維における単位重量あたりの該構造のモル量が減少し、強アニオン交換性能も低下する恐れもある。
また、化1が造塩した構造は、上述のようにして化1におけるn=0ないしn=1の構造を有したものを製造後、プロトン酸を付加させたものである。プロトン酸としては硝酸、塩酸、炭酸、硫酸、フッ酸などが挙げられ、複数種が混在していても良い。中でも硝酸の場合は耐熱性に優れるものが得られ、後述する方法における酸処理と同時にプロトン酸付加が可能であり、作製が比較的容易である。
かかる化1に示す構造および化1が造塩した構造におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。アミノアルキル基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基などが挙げられる。シクロアルキレン基としては、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基などを挙げることができる。また、これらの構造の環構造部分の代表例としては、イミダゾリン構造やテトラヒドロピリミジン構造を挙げることができる。
また、本発明の強アニオン交換繊維は架橋構造を有するものである。上述した化1で示す構造や化1が造塩した構造は高い親水性を有するため、繊維を水溶性に導く要因となるが、本発明では架橋構造を導入することにより繊維を非水溶性とする。かかる架橋構造としては、特に限定されないが、後述するようにニトリル基と窒素含有化合物の反応により形成される架橋構造であることが好ましい。また、架橋構造を十分に導入しない場合、後述する水膨潤度が増加し、乾燥させた際の収縮が大きくなり、固くて脆くなるために粉末が発生しやすくなる恐れもある。粉末の発生量(以下、粉末量という)は、後述する測定方法において0.20%以下であることが好ましい。0.20%を超えると成形や乾燥の際に粉末が多く発生し、作業が煩雑となる。なお、粉末は全く発生しないことが最も望ましいが、後述する測定方法において0.01%未満に抑制することは難しい。
また、本発明の強アニオン交換繊維は、水膨潤度が0.5〜1.5g/gであることが好ましく、特に0.8〜1.2g/gとすることが好ましい。水膨潤度が1.5g/gを超えるとゲル化し、繊維構造物の耐久性が大きく低下する。また水処理フィルターを成形した際には圧損が高くなり、通水性が低下してしまうため好ましくない。また水膨潤度が0.5g/g未満の場合、そもそも化1に示す構造が全くあるいはほとんど導入されてないことが予想され、イオン交換性能を発揮できない恐れがある。かかる水膨潤度は上述した架橋構造の導入量を調整することなどにより制御することができる。
また、本発明の強アニオン交換性繊維は、中性塩分解容量が0.1〜3mmol/gであることが好ましく、0.5〜2mmol/gであることがより好ましい。ここで、中性塩分解容量とは、後述される方法によって測定されるものであり、本発明においては、化1に示す構造および化1が造塩した構造の量を示すものであって、具体的にはイミダゾリン基、テトラヒドロピリミジン基などの強塩基性官能基の量である。かかる中性塩分解容量が0.1mmol/gに満たない場合は十分なイオン交換性能を発現できない可能性がある。かかる中性塩分解容量が3mmol/gを超える場合には、親水性や水膨潤性が増大して繊維物性の悪化が懸念され、好ましくない。
また、本発明の強アニオン交換繊維においては、空気中で150℃、3時間加熱した後の中性塩分解容量が、加熱前の中性塩分解容量の90%以上を保てるものであることが好ましい。本発明の強アニオン交換繊維は、後述するように吸着製品等に使用されるが、加熱後の中性塩分解容量が加熱前の中性塩分解容量の90%未満である場合は、吸着製品等に成形する際の熱処理に耐えられない恐れがあることを意味しており、熱処理を伴う工程を有する製品への利用に適さない恐れがある。
なお、よく知られる強アニオン交換樹脂は側鎖にベンジル構造を有しており、該ベンジル構造のベンジル位炭素にはトリメチルアンモニウム基またはジメチルエタノールアンモニウム基が結合している。そして、これらのアンモニウム基に関しては、ベンジル位炭素への求核攻撃によってアミンの脱離が起こることが知られており、耐熱性に乏しい。これに対して化1が造塩した構造においては求核攻撃を受ける可能性の高いアミジン炭素部分が隣接した2つの窒素原子とカチオンを比局在化させており、求核攻撃を受けにくい。このことが、本発明の強アニオン交換繊維が耐熱性に優れていることの一つの要因と考えられる。また、化1で示す構造においては、塩化物塩、硝酸塩等を形成させることによって耐熱性をさらに向上させることが可能である。
また、本発明の強アニオン交換繊維におけるアミン類溶出量は、1.5mg/L未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.7mg/L未満であることが好ましい。ここで、アミン類溶出量とは後述する方法によって測定されるものである。アミン類溶出量が1.5mg/L以上である場合、アミン類による健康への悪影響が懸念されるため、水処理用途として利用できない恐れがある。
ここで溶出されるアミン類の発生源については定かではないが、化1で示す構造を導入する処理の際に用いた1,2−ポリアミンないし1,3−ポリアミンに由来するものであり、例えば、繊維中に副生したアミノアクリルアミド構造、またはアミノアルキルアクリルアミド構造が加水分解して生成したものであると予想される。このため、アミン類溶出量を低減させるには、製造段階において、上記の処理後に適切な酸処理を行い、アミノアクリルアミド構造またはアミノアルキルアミド構造を前もって加水分解させ、洗浄しておくことが効果的である。
また、本発明の強アニオン交換繊維を用いた繊維構造物としては、特に限定されるものではなく、不織布、糸、編物、織物、紙等を挙げることができる。これらの繊維構造物に使用される強アニオン交換繊維の割合は10〜100重量%であることが好ましく、20〜80重量%であることがより好ましく、25〜50重量%であることがさらに好ましい。強アニオン交換繊維の割合が10重量%未満である場合、本発明の強アニオン交換繊維の機能を十分に発揮できない場合があり、好ましくない。
上記の繊維構造物において併用しうる他素材としては特に制限はなく、天然繊維、有機繊維、半合成繊維、合成繊維が挙げられる。具体的な例としては、綿、麻、絹、羊毛、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、アクリル繊維、活性炭繊維、熱融着繊維などを挙げることができる。
また、本発明の繊維構造物を含む吸着製品としては、特に限定されるものではないが、代表的なものとして、水中に含まれるフッ化物、塩化物等を除去する浄水フィルター、空気中から窒素酸化物、塩化水素等の酸性ガスを除去するガスフィルター等が挙げられる。フィルターの成形法としては不織布シートを捲回し、円柱状あるいは円筒状のフィルターとする方法、あるいはシートを積層して任意の形状に打ち抜いてフィルターとする方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、熱融着繊維を不織布に混合させることによって成形性を向上させたり、強カチオン交換樹脂と併用して脱塩性能を付与させたりすることも可能である。具体的な用途としては、脱塩フィルター、酸性ガス吸着フィルター、消臭フィルター、糖類精製用フィルターなどが挙げられる。
また、この他の吸着製品としては、消臭性能を有する肌着、靴下、靴中敷などの衣類、枕カバー、シーツ、布団側地、布団中綿などの寝具類、壁紙、カーペット、じゅうたんなどのインテリア類、タオル、バスマット、足拭きマットなどの浴室用品、ふきん、雑巾、モップなどの清掃用品などを挙げることができる。
以上に説明してきた本発明の強アニオン交換繊維の製造方法としては、アクリル繊維を出発原料として用い、該繊維内に架橋構造を形成し、さらに適切なポリアミン化合物を反応させる方法を挙げることができる。以下、かかる方法について説明する。
まず、原料として用いるアクリル繊維は、アクリロニトリル系重合体から公知の方法に準じて製造されるものであるが、該重合体の組成としてはアクリロニトリルが40重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。
上記のアクリル繊維を、窒素含有化合物等を含有する水溶液で処理することにより、アクリル繊維のニトリル基と窒素含有化合物が反応し、繊維中に架橋構造が形成される。窒素含有化合物としては、2個以上の1級アミノ基を有するアミノ化合物や、ヒドラジン系化合物を使用することが好ましい。処理条件としては、窒素含有化合物濃度1〜30重量%となるように上記の窒素含有化合物を添加した水溶液に上述したアクリル繊維を浸漬し、80℃〜130℃で0.5時間〜3時間処理するといった例を挙げることができる。かかる架橋処理を施された繊維は、残留した薬剤を十分に除去した後、酸処理を施し、架橋処理に寄与していない窒素含有化合物を繊維中から除去する。
上記のように架橋処理、酸処理が施された繊維を1,2−ポリアミンまたは1,3−ポリアミンを含有する水溶液で処理することで繊維中のニトリル基と反応させ、化1に示す構造を導入する。1,2−ポリアミン、1,3−ポリアミンとしては特に限定されるものではなく、たとえば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1、2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,2−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノペンタン、1,2−ジアミノヘキサン、1,3−ジアミノヘキサン1,2−シクロへキシルエチレンジアミン、1,2−フェニルエチレンジアミン等が例示される。なかでも、1,2−ジアミン、1,3−ジアミンが好ましく、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパンがより好ましく、1,3−ジアミノプロパンがさらに好ましい。処理条件としては1,2−ポリアミンまたは1,3−ポリアミンの濃度5〜100%の水溶液に上述した架橋処理、酸処理が施された繊維を浸漬し、50〜150℃で0.5〜8時間処理させることが好ましい。
また、化1に示す構造の導入に際しては硝酸、塩酸または塩化アンモニウム等のプロトン酸や塩の共存下で反応を行ってもよい。化1に示す構造は1、2-ポリアミンまたは1、3-ポリアミン等を含むアルカリ溶液中では不安定であり、加水分解により徐々に分解する。しかしプロトン酸や塩を系中に共存させた場合、生成される化1に示す構造はアミジン炭素と隣接した2つの窒素の間でカチオンを非局在化させた比較的安定な塩、すなわち、化1が造塩した構造を形成し、分解されにくくなるため好ましい。
上述のようにして化1に示す構造および/または化1が造塩した構造を導入した繊維に対しては、さらに酸処理を施すことが望ましい。ここで、かかる構造の導入に際しては、ポリアミンの一つのアミノ基のみがニトリル基と反応することにより、アミノアルキルアクリルアミド構造が副生するが、このアミノアルキルアクリルアミド構造は、水中で徐々に加水分解されて、ポリアミンを再生するため、製品化後のアミン類溶出量を増大させる要因となる。これに対して、製造工程において酸処理を施すことで、予めアミノアルキルアクリルアミド構造を加水分解させておけば、後々のアミン類溶出を抑制することが可能となる。
かかる酸処理の条件は50〜120℃において0.5〜3時間反応を行うことが好ましい。50℃未満または0.5時間未満では加水分解が不十分となり、ポリアミンの除去が十分になされず、製品化後のアミン類溶出量が増大するので、好ましくない。また、120℃を越えるまたは3時間を越える条件での反応では、化1に示す構造までもが加水分解されてしまい、繊維中の官能基量が減少する可能性がある。
以上に説明した各処理を施した後、最後に洗浄、必要に応じて乾燥させることによって、本発明の強アニオン交換繊維を製造することができる。
以下に本発明の理解を容易にするために実施例を示すが、これらはあくまで例示的なものであり、本発明の要旨はこれらにより限定されるものではない。実施例中の特性の評価方法は以下の通りである。
<中性塩分解容量の測定方法>
十分に乾燥させた試料約1gを精秤し(X1[g])これをカラムに詰める。次に、かかるカラムに1N NaOH水溶液100mlを5ml/minの流速で流して、試料の対アニオンをOH型にする。その後、蒸留水を流し、試料を洗浄する。この洗浄はろ液がフェノールフタレインで着色されなくなるまで続ける。次いで5重量%NaCl水溶液100mlを5ml/minの流速で流し、ろ液を0.1mol/Lの塩酸水溶液で常法に従って滴定曲線を求める。該滴定曲線から強塩基性基に消費された塩酸水溶液消費量(Y1[ml])を求め、次式によって中性塩分解容量を算出する。
中性塩分解容量[mmol/g]=0.1×Y1/X1
<水膨潤度の測定方法>
十分に乾燥させた試料約1gを精秤し(X2[g])これを200mlの蒸留水に30分間浸漬させる。その後遠心脱水機(クボタ(株)社製TYPE KS−8000)を用い160G(Gは重力加速度を示す)において5分間脱水する。脱水後重量を精秤(X3[g])し、次式によって水膨潤度を算出する。
水膨潤度[g/g]=(X3−X2)/X2
<粉末量の測定方法>
試料約10gを精秤し(X4[g])、これを黒色板上で手開繊させ、粉末繊維を黒色板上に落下させる。その後落下した粉末繊維の重量を測定(X5[g])し、次式によって粉末量を算出する。
粉末量[%]=100×X5/X4
<アミン類溶出量の測定方法>
試料1.5gをはかりとり、これを空気中140℃において30分間乾燥させる。その後粗熱を取り、DPD法(ジエチルパラフェニレンジアミン法)に従って測定した残留塩素濃度が0.3±0.1mg/L、JIS K0101 15.1に従って測定した全硬度が45±5mg/L、JIS K0101 13.1に従って測定した酸消費量が35±5mg/Lになるように調製した浸出溶液350mlに浸漬させ、23℃において16時間浸漬させる。浸漬後に溶液をろ過し、得られたろ液について、JWWA Z110(2013)アミン類分析法(附属書17)にしたがってアミン類濃度[mg/L]を測定し、これをアミン類溶出量とする。
<耐熱性の測定方法>
空気中で150℃、3時間加熱した後の試料について、上述の中性塩分解容量の測定方法に従って測定を行い、加熱後の中性塩分解容量を算出し、次式によって、耐熱性[%]を求める。
耐熱性[%]=(加熱後の中性塩分解容量/加熱前の中性塩分解容量)×100
[実施例1]
アクリロニトリル91重量%、アクリル酸メチル9重量%を重合してアクリロニトリル系重合体(30℃ジメチルホルムアミド中での極限年度[η]=1.5)を得る。かかる重合体10重量部を48重量%ロダンソーダ水溶液90重量部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸(全延伸倍率:10倍)した後、乾球/湿球=120℃/60℃の雰囲気下で乾燥後、湿熱処理することにより、単繊維繊度0.9dtexの原料繊維(繊維長70mm)を得た。該原料繊維を、水加ヒドラジン15重量%を含有する水溶液中で115℃×2時間処理し、水洗を行った後、硝酸8重量%を含有する水溶液中で115℃×3時間処理し、繊維中に残存するヒドラジンを酸洗浄した。得られた繊維を、1,3−ジアミノプロパン30重量%および硝酸5重量%を含有する水溶液中で95℃×3時間処理を行い、水洗を行った。次いで、8重量%硝酸水溶液中で90℃×1時間処理し、水洗、乾燥することにより、化1が造塩した構造および架橋構造を有する強アニオン交換繊維を得た。得られた強アニオン交換繊維の評価結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、1,3−ジアミノプロパンの代わりにエチレンジアミンに使用したこと以外は同じ方法で化1が造塩した構造および架橋構造を有する強アニオン交換繊維を得た。得られた強アニオン交換繊維の評価結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、水加ヒドラジンによる処理を行わないこと以外は同じ方法で処理を進めたところ、1,3−ジアミノプロパンによる処理時に繊維が溶解し、繊維を得ることができなかった。このことから繊維に適切な架橋処理を施すことが重要であることがわかる。
[実施例3]
実施例1において、水加ヒドラジンの濃度を15重量%から5重量%に変更したこと以外は同じ方法で強アニオン交換繊維を得た。得られた強アニオン交換繊維の評価結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、1,3−ジアミノプロパンおよび硝酸を含有する水溶液による処理の後の、8重量%硝酸水溶液による処理を施さなかったこと以外は同じ方法で強アニオン交換繊維を得た。得られた強アニオン交換繊維の評価結果を表1に示す。
[比較例2]
市販の粒子状の強アニオン交換樹脂II型(イオン交換基としてジメチルエタノールアンモニウム基を有し、対アニオンを塩素イオンとしているもの)を用いて、室温における中性塩分解容量[mmol/g]、および、150℃、3時間加熱したあとの中性塩分解容量[mmol/g]を測定した結果を表1に示す。
Figure 2020065952
表1からわかるように、実施例1〜2の強アニオン交換繊維は、十分な中性塩分解容量と適切な水膨潤度を有し、粉末量から予想される繊維物性、耐熱性も十分であるため適切な使用が可能である。これに対して架橋導入処理を行わなかった比較例1は1,3−ジアミノプロパンによる処理後に繊維が溶解し、繊維形状を保つことができなかった。
実施例3においては、架橋導入処理の際のヒドラジン濃度を減少させたが、繊維形状を維持し、十分な中性塩分解容量を有するものを得ることができた。ただし、架橋構造が比較的少ないため、水膨潤度が比較的高く、粉末量も多くなることから、成形時に一定の強度を有することが望まれるフィルター用途などには不向きであることが予想される。
実施例4においては、ポリアミン処理後の酸処理を行わないことにより工程を短縮化したが、十分な中性塩分解容量を有するものを得ることができた。ただし、アミン類溶出量は高くなることから、飲料水向けの水処理用途には適さない可能性がある。
また、比較例2で使用している市販の強アニオン交換樹脂の150℃、3時間後の中性塩分解容量は加熱前の55%であった。これはこの強アニオン交換樹脂の強塩基がジメチルエタノールアンモニウム基であり、上述した理由により耐熱性が乏しいためである。そのため、熱処理成形を有する水処理用フィルター成形の際に中性塩分解容量が低下し、適切な使用ができない。

Claims (7)

  1. 下記化1で示す構造および/または化1が造塩した構造ならびに架橋構造を有する重合体から構成されている強アニオン交換繊維。
    Figure 2020065952
    (ただし、nは0または1であり、RはHまたはCHを示し、RはHまたはアルキル基、アミノアルキル基またはアミノ基を示し、RおよびRはそれぞれH、アルキル基、アミノアルキル基、アミノ基またはnが0の場合には両者が隣接する炭素と共に形成するシクロアルキレン基の一部を示す。)
  2. 水膨潤度が0.5〜1.5g/gであることを特徴とする請求項1に記載の強アニオン交換繊維。
  3. 中性塩分解容量が0.1〜3mmol/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の強アニオン交換繊維。
  4. アミン類溶出量が1.5mg/L未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の強アニオン交換繊維。
  5. 空気中で150℃、3時間加熱した後の中性塩分解容量が、加熱前の中性塩分解容量の90%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の強アニオン交換繊維。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の強アニオン交換繊維を含む繊維構造物。
  7. 請求項6の繊維構造物を含む吸着製品。
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