JP2020065632A - 医療器具 - Google Patents

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Abstract

【課題】早期に抗血栓性を発揮することができる医療器具を提供する。【解決手段】フォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor)を分解しうる因子を結合可能な物質を表面に備える医療器具。【選択図】なし

Description

本発明は、医療器具に関する。
血管内皮機能の低下や、動脈硬化の進展によりプラークが破綻すると、血栓が形成され、血管内腔の狭窄や閉塞が起こる。その結果として、心筋梗塞や脳梗塞、終動脈閉塞などの循環器障害による臓器不全などが発症し、生命予後に大きな影響を与えることが問題となっている。さらに、血管内への治療や診断のための医療機器の挿入または留置などの医療介入により血管内皮が障害されたり、血流によるメカニカルストレスが低下したりすると、血栓形成のリスクが高まり、血管内腔が狭窄したり、さらには閉塞をきたして循環器障害を引き起こしたりすることが知られている。
ところで、一次血栓は、内皮細胞上のフォン・ヴィレブランド因子(vWF)または血管障害部位に露出したコラーゲンにvWFが結合することがトリガーとなり、このvWFにGP1b/V/IXを介して血小板が結合し、さらにGPIIb/IIIaを介して血小板にフィブリンが結合することにより形成される。この一次血栓が成長して血管閉塞・狭窄に至る。すなわち、血管狭窄・閉塞をもたらす血栓の形成には、vWFが血管壁に存在することが重要である。一方、生体内においては、血栓が血管内腔に対して著しく増長して血管内腔を閉塞するような状況では、血栓による血管狭窄や閉塞を防ぐため、血栓(超高分子量vWFマルチマー)に高いシェアストレスがかかり、vWFの立体構造が変化して、ADAMタンパク質(ADAMs:a disintegrin and metalloproteinases)であるADAMTS13がvWFを分解することで血栓による閉塞を防止していることが知られている。しかしながら、ADAMTS13は通常の血流下でネイティブな立体構造を有するvWFを分解できず、かつADAMTS13の遺伝子をノックアウトしたマウスでは、健常状態では見かけ上は何も生じない(非特許文献1および2を参照)。
Motto DG et al., J Clin Invest. 2005; 115 (10): 2752-61 Banno F et al., Blood. 2009; 113 (21): 5323-9
ADAMTS13は、過剰に増大した血栓を分解して血管の狭窄・閉塞を防止しているものと考えられる。しかしながら、ADAMTS13は、立体構造が変化していない、すなわち未変性のvWFを分解できないため、一次血栓の成長を抑制することができない。そのため、一次血栓の形成や成長を抑制する手段、すなわち早期に抗血栓性を発揮できる手段が望まれている。
したがって、本発明は、早期に抗血栓性を発揮することができる医療器具を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、vWFを分解しうる因子を結合可能な物質を表面に備える医療器具により上記課題が解決することを見出した。
本発明によれば、早期に抗血栓性を発揮することができる。
実施例で使用したメカニカルストレス負荷培養装置を説明するための説明図である。 図1に示すメカニカルストレス負荷培養装置における細胞培養ユニットが湾曲した状態で接続された状態を説明するための写真である。
以下、本発明の一形態に係る実施の形態を説明する。本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
<医療器具>
本発明の一形態は、vWFを分解しうる因子を結合可能な物質を表面に備える医療器具である。
本明細書において、vWFを分解しうる因子を結合可能な物質を表面に備えるとは、血液と接する医療器具の表面にvWFを分解しうる因子を結合可能な物質が存在することを意味する。具体的には、vWFを分解しうる因子を結合可能な物質のvWFに対する結合部位が、血液と接するように医療器具の表面に存在する。vWFを分解しうる因子を結合可能な物質を医療器具の表面に備える方法は、特に制限されない。例えば、vWFを分解しうる因子を結合可能な物質として、後述の抗ADAM28抗体を用いる場合、公知の抗体の固定化法を用いることができる。固定化法としては、物理的吸着法、化学的結合法などが挙げられる。
(vWFを分解しうる因子を結合可能な物質)
vWFを分解しうる因子としては、ネイティブな立体構造を有するvWFを分解することができるものであれば、特に制限されない。vWFを分解しうる因子は、早期に抗血栓性を発揮するとの観点から、好ましくはADAM28、より好ましくはヒトADAM28を含む。
vWFは、血液凝固において重要な役割を果たす血漿タンパク質である。vWFは主に血管内皮や巨核球で産生され、高分子多量体の形態で血中に放出される。野生型ヒトvWFは、そのシグナルペプチドおよびプロ領域を含めて全部で2813個のアミノ酸からなるポリペプチドである。野生型ヒトvWFのアミノ酸配列と、野生型ヒト成熟vWFサブユニットのアミノ酸配列は、国際公開第2004/035778号パンフレットに開示されている。
上述したように、本発明者らは、早期に抗血栓性を発揮できる手段を開発することを目的として、鋭意検討を行った。その過程で、本発明者らは、まず、血管内皮細胞に対してメカニカルストレスが負荷されない条件下(血管内を血流が流れていない状態に相当)では、メカニカルストレスが負荷されている条件下(血管内を血流が流れている状態に相当)と比較して、内皮機能のマーカーであるeNOS(血管内皮細胞におけるNO合成酵素)の発現量が低下し、内皮機能が低下することを確認した。そして、eNOSの発現量の低下を伴うほど内皮機能が低下した状態では、内皮細胞におけるvWFの発現量が上昇する一方で、ADAM28の発現量が低下するという事実を初めて明らかにした。
従来、vWFの生理的な分解酵素であると考えられてきたADAMTS13には可溶型のみが存在し、しかも上述したように通常の血流下でネイティブな立体構造を有するvWFを分解することはできない。これに対し、ADAM28には可溶型に加えて膜結合型も存在し、しかもネイティブな立体構造を有するvWFをも分解可能である(Mochizuki S et al., J Natl Cancer Inst. 2012; 104 (12): 906-22)。これらのことから、vWFの分解を生理的に制御している酵素は、従来考えられていたADAMTS13ではなくADAM28であり、ADAM28がvWFを効率よく分解することで一次血栓の形成を防止しているものと推察される。また、vWFの血管壁への結合は血栓形成の第一ステップであることから、ADAM28は血栓形成のゲートキーパーとして重要な役割を担っており、健常状態において血栓形成を抑制することで、血管の閉塞・狭窄を防止していると考えられる。さらに、血流低下などのメカニカルストレスの減少などに起因してひとたび内皮機能が低下すると、一次血栓形成のトリガーであるvWFの発現が上昇するとともに、それを分解するADAM28の発現が低下し、血栓形成が促進されて血管の閉塞・狭窄が生じるものと考えられる。
以上のことから、vWFを分解しうる因子、すなわちネイティブな立体構造を有するvWFを分解することができる因子を結合可能な物質を表面に備えることにより、本形態に係る医療器具は、早期に抗血栓性を発揮することができる。
一実施形態において、vWFを分解しうる因子を結合可能な物質は、早期に抗血栓性を発揮するとの観点から、好ましくは抗ADAM28抗体またはその抗原結合断片である。
本明細書において、抗原結合断片とは、抗体の一部分を含むタンパク質であり、抗原に結合できるものを意味する。抗原結合断片の例としては、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインから構成される1価の断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域中ジスルフィド架橋で結合した2個のFab断片を含む2価の断片であるF(ab’)2断片、(iii)ヒンジ領域の部分を持つ本来的FabであるFab’断片(Paul WE, Fundamental Immunology. 3rd ed. Raven Press, New York, 1993参照)、(iv)VHおよびCH1ドメインから構成されるFd断片、(v)抗体のシングルアームのVLおよびVHドメインで構成されるFv断片、(vi)VHドメインから構成されるdAb断片(Ward ES et al., Nature. 1989; 341 (6242):544-6)、(vii)単離相補性決定領域(CDR)および(viii)単一可変ドメインと二つの定常領域を含む重鎖可変領域であるナノボディなどが挙げられる。さらに、Fv断片の2個のドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によりコードされているが、それらは、組換えDNA技術を用いてそれらを単一タンパク質鎖として作製できる合成リンカーにより連結でき、この鎖中では、VLおよびVH領域が対となって1価の分子を形成する(単一鎖のFv(scFv)として知られている;例えば、Bird RE et al., Science. 1989; 242 (4877):423-6;およびHuston JS et al., Proc Natl Acad Sci USA. 1988; 85 (16): 5879-83参照)。このような単一鎖の抗体も、抗体の抗原結合断片に包含される。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ、当該断片について、未改変抗体の場合と同様に有用性を求めてスクリーニングされる。
本形態に係る抗ADAM28抗体は、ADAM28に対する特異的結合活性を有し、かつADAM28の酵素活性を阻害しない抗体である。
本明細書において、特異的結合とは、抗原抗体反応における、抗体の抗原に対する結合親和性が、非特異的な抗原(例えば、ウシ血清アルブミン)に対する結合親和性よりも高いことを意味する。
本形態に係る抗ADAM28抗体は、ADAM28の酵素活性を阻害しないものである。ADAM28の酵素活性とは、具体的にはADAM28がvWFを切断する活性を意味する。ADAM28の酵素活性は、例えばMochizuki S et al., J Natl Cancer Inst. 2012; 104 (12): 906-22に記載されている方法のように、一般的に行われているvWFマルチマー解析により評価することができる。
ADAMタンパク質は、膜貫通タンパク質の外部ドメインシェディング、細胞接着および浸潤に関わる多機能タンパク質である(Edwards DR et al., Mol Aspects Med. 2008; 29 (5): 258-89;Murphy G, Semin Cell Dev Biol. 2009; 20 (2): 138-45)。ヒトゲノムには、4種の偽遺伝子を含む25種のADAMsが含まれており、21種のADAMsは、タンパク質分解活性を示す13種のタンパク質分解性ADAMsと8種の非タンパク質分解性ADAMsからなる(Edwards DR et al., Mol Aspects Med. 2008; 29 (5): 258-89;Shiomi T et al., Pathol Int. 2010; 60 (7): 477-96)。タンパク質分解性ADAMsは、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)のメタロプロテイナーゼドメインを共有し、典型的なタンパク質分解性ADAMsは、プロペプチド、メタロプロテイナーゼドメイン、ディスインテグリンドメイン、システインリッチドメイン、EGF(上皮増殖因子)様ドメイン、膜貫通および細胞内ドメインを含み、ADAM8、ADAM9、ADAM12、ADAM15、ADAM17、ADAM19およびADAM28を含む多くのタンパク質分解性ADAMsは、ヒト癌において過剰発現しており、癌の増殖および進行と関係していることが知られている(Mochizuki S et al., J Natl Cancer Inst. 2012; 104 (12): 906-22)。
ADAM28は公知のタンパク質であり、そのアミノ酸配列やcDNA配列も公知である。ADAM28には、膜型(ADAM28m)と、分泌型(ADAM28s)の2種類が存在する。ヒト膜型ADAM28(およびその成熟型)の代表的なアミノ酸配列およびcDNA配列、並びにヒト分泌型ADAM28(およびその成熟型)の代表的なアミノ酸配列およびcDNA配列は、国際公開第2016/143702号パンフレット、国際公開第2014/073292号パンフレットに開示されている。なお、「ヒトADAM28」とは、ADAM28のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が、ヒトにおいて天然に発現しているADAM28のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有することを意味する。「実質的に同一」とは、着目したアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が、ヒトにおいて天然に発現しているADAM28のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上)の同一性を有しており、かつ、ヒトADAM28の機能を有することを意味する。ヒト以外の生物種や、膜型ADAM28以外のタンパク質、遺伝子、それらの断片についても同様に解釈する。
抗ADAM28抗体は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれであってもよい。抗ADAM28抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。また、抗ADAM28抗体は、ADAM28の酵素活性を阻害しないとの観点から、ADAM28のディスインテグリンドメイン、システインリッチドメイン、EGF様ドメインおよびC末端領域にあるエピトープの少なくとも一つを認識することが好ましく、ADAM28のディスインテグリンドメインおよびシステインリッチドメインにあるエピトープの少なくとも一つを認識することがより好ましく、ディスインテグリンドメインにあるエピトープの少なくとも一つを認識することがさらに好ましい。好ましい配列例として、ディスインテグリングループを形成する領域のアミノ酸配列であるVCRPAKDECDLを挙げることができる。
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は、常法により製造することができる。例えば、モノクローナル抗体は、細胞融合法により製造することができる。
vWFを分解しうる因子を結合可能な物質の固定化量は、使用するvWFを分解しうる因子を結合可能な物質によって異なるが、例えば医療器具の表面1cmあたり0.1〜10μgである。vWFを分解しうる因子を結合可能な物質として抗ADAM28抗体を使用する場合、抗ADAM28抗体の固定化量は、医療器具の表面1cmあたり0.1〜10μgである。
(vWFを分解しうる因子を結合可能な物質を表面に備える方法)
本形態に係る医療器具は、vWFを分解しうる因子を結合可能な物質を表面に備える。vWFを分解しうる因子を結合可能な物質を表面に備える方法は、使用するvWFを分解しうる因子を結合可能な物質に応じて、公知の方法から適宜選択することができる。
以下、一実施形態として、抗ADAM28抗体を医療器具の表面に備える方法について、説明する。
(1)抗ADAM28抗体を基材表面に吸着させる方法
基材(例えば、ポリスチレン基材)を、0.01質量%の抗ADAM28抗体を溶解したアルカリ性緩衝液(例えば、リン酸緩衝液(pH7.4)、炭酸−重炭酸緩衝液(pH9.4))中に浸し、約4℃で約18〜24時間程度インキュベートしてディップコートする。アルカリ性緩衝液で洗浄して、未結合な抗ADAM28抗体を洗浄除去する。必要に応じて、乾燥処理を行うことで、抗ADAM28抗体を基材表面に吸着させることができる。
(2)抗ADAM28抗体をステント表面に固定化する方法
ステント(例えば、ステンレスSUS316L)をシランカップリング剤(例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン)の2質量%エタノール溶液の中に室温(23℃)で約30分間入れた後、約70℃のオーブンで約48時間、乾燥する。
次いで、0.01質量%の抗ADAM28抗体を溶解したアルカリ性緩衝液(例えば、リン酸緩衝液(pH7.4)、炭酸−重炭酸緩衝液(pH9.4))を、スプレー装置を用いてステントに噴霧し、室温で約48時間、乾燥する。
さらに、縮合剤(例えば、DMT−MM(4−(4,6−Dimethoxy−1,3,5−triazin−2−yl)−4−methylmorpholinium Chloride n−Hydrate)30mgを9gのリン酸緩衝生理食塩液に溶解した液をスプレー装置を用いてステントに噴霧して、室温で約48時間、乾燥する。
その後、アルカリ性緩衝液で未結合の抗ADAM28抗体を洗浄除去する。
必要に応じて、乾燥処理を行うことで、抗ADAM28抗体をステント表面に固定化することができる。
(抗血栓性の評価方法)
本形態に係る医療器具について、その抗血栓性は、例えば以下のようにして評価することができる。
(i)健常人ドナーから採取した新鮮血25ml、抗凝固剤としてヘパリン9.0unit、生理食塩水20mlを混合し、抗凝固希釈血を調製する。
(ii)抗ADAM28抗体を表面に固定化した基材(コート基材)および未コート基材をそれぞれ、別の内径6mm全長400mmのチューブ内に留置し、上記の抗凝固希釈血液を8ml充填し、端部をコネクターで接続して、ループ状にする。
(iii)ループ状にしたチューブを回転装置にとりつけ、40rpmで120分間回転し、チューブ内の血液を循環させる。
(iv)循環終了後に、基材へのADAM28の結合および血栓の付着を評価する。
(医療器具)
本形態に係る医療器具としては、血液と接触して用いられる器具が挙げられる。上述のとおり、本形態に係る医療器具は、vWFを分解しうる因子を結合可能な物質を表面に備えることにより、早期に抗血栓性を発揮することができる。そのため、本形態に係る医療器具は、抗血栓性を要求されるものであれば、いずれの用途で使用されてもよい。例えば、カテーテル、シース、カニューレ、針、三方活栓、ガイドワイヤーなどが挙げられる。また、他の例としては、血液回路、人工透析器、人工(補助)心臓、人工肺、留置針、人工腎臓、ステントなどが挙げられる。
<医療器具の製造方法>
本発明の別の形態は、vWFを分解しうる因子を結合可能な物質を含む液を基材にコートすることを有する、医療器具の製造方法である。
vWFを分解しうる因子を結合可能な物質を含む液の調製方法は、特に制限されず、例えば溶媒にvWFを分解しうる因子を結合可能な物質を溶解して作製することができる。溶媒としては、リン酸緩衝液(pH7.0超8.5以下)、炭酸−重炭酸緩衝液(pH9.2〜10.6)などのアルカリ性緩衝液、メタノール、エタノールなどの有機溶媒が挙げられる。
前記液中のvWFを分解しうる因子を結合可能な物質の濃度は、早期に抗血栓性を発揮できる濃度であれば特に制限されないが、例えば0.1〜100μg/mlであり、好ましくは0.2〜50μg/mlである。2種類以上のvWFを分解しうる因子を結合可能な物質を使用した場合、vWFを分解しうる因子を結合可能な物質の濃度は、それらの合計濃度である。
(基材)
医療器具の基材の材質としては、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンや変性ポリオレフィン;ポリアミド;ポリイミド;ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン(PVDC);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂等の各種高分子材料、金属、セラミック、カーボン、およびこれらの複合材料等が例示できる。上記の高分子材料は延伸処理がなされたもの(例えば、ePTFE)であっても良い。
基材の形状は医療器具の用途等に応じて適宜選択され、例えば、チューブ状、シート状、ロッド状等の形状をとりうる。基材の形態は、上記のような材料を単独で用いた成形体に限定されず、ブレンド成形物、アロイ化成形物、多層化成形物などでも使用可能である。基材は単層であっても、積層されていてもよい。この際、基材が積層されている場合には、各層の基材は同じものであっても、異なるものであってもよい。
(コート)
上記液を基材にコートする方法は、特に制限されず、塗布・印刷法、浸漬法(ディッピング法、ディップコート法)、噴霧法(スプレー法)、スピンコート法、混合溶液含浸スポンジコート法など、従来公知の方法を使用できる。
上記液を基材にコートする際の温度は、vWFを分解しうる因子を結合可能な物質の結合能が失活しない温度であれば、特に制限されない。
上記液を基材にコートした後は、適宜乾燥処理を行う。乾燥条件(温度、時間など)は、使用するvWFを分解しうる因子を結合可能な物質に応じて、適宜設定することができる。
(その他の工程)
上記液を基材にコートする前に、必要に応じて、基材表面をあらかじめシランカップリング剤などで処理してもよい。また、前記処理後に、必要に応じて、縮合剤の存在下で反応を行ってもよい。
上記方法により得られた基材は、そのまま医療器具として使用できるが、コートした基材を洗浄してもよい。
洗浄方法は、特に制限されないが、コートした基材を溶媒に浸漬する方法、コートした基材に溶媒をシャワーする方法などが挙げられる。溶媒としては、vWFを分解しうる因子を結合可能な物質を含む液の調製方法で使用したものを使用できる。洗浄後の乾燥方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
[血管内皮細胞の培養]
まず、血管を模すための培養容器として、シリコーンゴムチューブを準備した。そして、以下の手法によりシリコーンゴムチューブ内腔にコラーゲンコートを行った。すなわち、まず、コラーゲン(5mg/mL;1mM HCl溶液、AteloCell Native collagen Bovine Dermis、高研)を希塩酸(pH3.0、10−3M)で10倍希釈し、チューブに充填した。次いで、4℃にて3日間インキュベートしてコーティングを実施した。そして、希釈コラーゲン溶液を廃棄した後、チューブをハンクス緩衝液で洗浄して、その後の試験に用いた。
一方、ブタ冠状動脈内皮細胞を、内皮細胞培養培地(Porcine Endothelial Cell Growth Medium、APPLICATIONS INC)を含む培養フラスコ内で、37℃、5%COの条件下で培養し、細胞数を十分に増やした。このブタ冠状動脈内皮細胞を、上記でコラーゲンコートしたシリコーンゴムチューブの内腔に播種し、チューブを中心軸に沿って回転させながら、チューブ内面に細胞を均一に接着させた。そして、37℃、5%COの条件下で、コンフルエントになるまで一晩程度培養した。このようにして、内腔が血管内皮細胞で被覆されたシリコーンゴムチューブを作製した。
続いて、図1に示すメカニカルストレス負荷培養装置を準備した。図1に示すメカニカルストレス負荷培養装置は、主な構成要素として、ポンプ、リザーバー、細胞を保持または培養する細胞培養ユニット、コンプライアンスタンク、バルブ(抵抗用バルブ、流量調整バルブ)およびそれらを接続するチューブから構成されている。このメカニカルストレス負荷培養装置によれば、ポンプを駆動させることにより、細胞培養ユニット内の培地を流動(循環)させたり拍動させたりすることができる。
上記で準備したメカニカルストレス負荷培養装置(図1)の細胞培養ユニット部分に、上記で作製した血管内皮細胞被覆シリコーンゴムチューブを、図2に示すように湾曲させた状態で接続した。その後、37℃、5%COの条件下で、培地を15dyn/cm(1.5×10−4N/cm)の圧力で循環させて、1日程度培養した。この培養では、シリコーンゴムチューブが湾曲した状態で細胞培養ユニットに接続されていることから、培地を循環させて培養を実施することで、シリコーンゴムチューブの内面に接着している血管内皮細胞に対してはメカニカルストレス(せん断応力)が負荷されることになる。なお、同様の培養条件下で、培地を循環させない静置培養も行った。
[血管内皮細胞における遺伝子発現の解析]
上記の培養が終了した後、シリコーンゴムチューブから血管内皮細胞を回収し、RNeasy miniキット(キアゲン社)を用いて常法によりTotal RNAを調製および精製した。このようにして得られたTotal RNAを鋳型として、逆転写酵素(SuperScript IV VILO、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社)を用いて常法によりcDNAを合成した。得られたcDNAを用いたリアルタイムPCR法により、eNOS遺伝子、ADAM28遺伝子およびvWF遺伝子の発現量を解析した。なお、内部標準としてはGlyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)遺伝子を用いた。この際、PCR装置としては、7500 First Real−Time PCR System(アプライド・バイオシステムズ社)を用いた。なお、PCRプライマーは、Primer3(v.0.4.0) Pick primers from a DNA sequenceプログラムを用いて設計し、DNASIS Mac プログラム(日立ソフトウェアエンジニアリング社)によりin silicoでセルフアニーリングやミスアニーリングのリスクが低いことを確認した。遺伝子の発現量の解析に用いた各種プライマーの塩基配列を以下に示す。
このようにして行った遺伝子発現の解析の結果を下記の表1〜2に示す。なお、表1〜2に示す結果はいずれも、静置培養を行った場合における遺伝子発現量(またはその比)を1とした場合の相対値である。
(血管内皮細胞の機能評価)
上記で解析を行ったeNOS遺伝子の発現は、血管内皮細胞の機能の指標として一般的に用いられているものである。表1に示す結果から明らかなように、血管内皮細胞に対してメカニカルストレスが負荷される循環培養を行った系と比較して、メカニカルストレスが負荷されない静置培養においては、eNOS遺伝子の発現量が低下した。このことから、静置培養の系においては、生体内で血管の狭窄が進展して血流が低下した病変部のように、メカニカルストレスの低下によって、血管内皮細胞の機能が低下することが確認された。
(考察)
表2に示すように、ADAM28遺伝子の発現量は、循環培養の系と比較して、静置培養の系においてより低い値を示した。このことから、血管内への医療器具の挿入または留置などによりメカニカルストレスが低下すると、血管内皮細胞の機能が低下して、血栓が形成されやすくなることが分かる。
ADAM28およびADAMTS13は、vWFを分解しうることが知られている。ADAMTS13は、未変性のvWFを分解できないため、血栓が巨大に形成されて血流による抵抗が増大して立体構造が変性することで初めて分解作用が発揮されるのに対して、ADAM28は、未変性のvWFを分解できるため、血栓が小さくても血栓を分解できると思われる。すなわち、ADAM28は、血栓形成の初期段階で血栓形成を防止できると考えられる。そのため、血液と接触する医療器具の表面に、ADAM28の酵素活性を阻害しないような抗体を備えることにより、酵素活性を有したADAM28を医療器具の表面にトラップでき、早期に抗血栓性を発揮させることができる。

Claims (5)

  1. フォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor)を分解しうる因子を結合可能な物質を表面に備える、医療器具。
  2. 前記フォン・ヴィレブランド因子を分解しうる因子が、ADAM28を含む、請求項1に記載の医療器具。
  3. 前記結合可能な物質が、抗ADAM28抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項2に記載の医療器具。
  4. 前記抗ADAM28抗体が、モノクローナル抗体である、請求項3に記載の医療器具。
  5. 前記抗ADAM28抗体が、前記ADAM28のディスインテグリンドメイン、システインリッチドメイン、EGF様ドメインおよびC末端領域にあるエピトープの少なくとも一つを認識する、請求項3または4に記載の医療器具。
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