JP2020063618A - 抗側圧構造物の支持構造及び支持工法 - Google Patents
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また、特許文献2の工法は、山留め壁を構成する複数の鉛直部材(H形鋼)の背面側上部にそれぞれアーム部材を接合すると共に、各アーム部材を連結するように腹起しを掛け渡し、この腹起しに複数のアンカーの頭部を角度調整部材を介して定着させる技術である。
また、複数のアンカーの頭部を抗側圧構造物の上部に定着するに当たり、長尺な腹起しを介在させる必要のない技術の提供を第2の目的としている。
前記「アンカーの設置方向軸心」とは、所定の設置方向(角度)で配置されたアンカーの軸心を意味している。
また、アンカーの設置方向軸心と荷重伝達部材の上面との交点位置が、抗側圧構造物の頂面の空域内に収まるように設定されているため、アンカーの頭部を抗側圧構造物の上部に定着するに際し、背面側に設置スペースを確保する必要がないのは勿論のこと、荷重伝達部材の発生応力(曲げモーメント)の低減効果、荷重伝達部材の剛性の低減効果、アンカー鉛直分力の抗側圧構造物への荷重分散効果、アンカー鉛直分力によって生じる固定部材への作用荷重の低減効果、荷重伝達部材の転倒抑制効果が得られる。
また、固定部材は抗側圧構造物の内面上部に固定されており、通常10〜30cm程度の幅で設置可能であるため、抗側圧構造物と新設躯体との間のスペースを少なくすることができ、掘削土量の削減、工事の効率化(工期短縮)や作業空間の有効活用を図ることができる。
擁壁12は、既存建物のコンクリート製の外壁であり、外側の地盤(外部土壌)14からの土圧に対抗することにより、内側の地下空間16を保全する機能を果たしている。
地下空間16内には、新設躯体18が構築されている。
アンカー頭部ユニット10は、荷重伝達部材20と、角度調整部材22と、固定部材24を備えている。
一対のH形鋼28の間には、アンカー30を挿通するための間隙32が設けられている。
この傾斜面48の角度を変えることによって支圧板34の傾斜角度を加減し、支圧板34をアンカー30に略直交させることができる。
ただし、側面54を有さない通常のL字型アングルを固定部材として用いることもできる。
まず、擁壁12の外側に堆積された地盤14に対して、アンカー30を所定の角度で設置する。
この際、H形鋼28の一端28aが、擁壁12の内面56から内側に向けて若干出っ張るように配置される。
これに対し、H形鋼28の他端28bは、擁壁12の外面58から外側に出っ張らせる必要はない。図においては、H形鋼28の他端28bが外側に向けて極僅かに出っ張っているが、出っ張りが一切なく面一になるように配置してもよい。
また、固定部材24の第2の接合面52の貫通孔と擁壁12の内面56に形成されたネジ穴66とを位置合わせし、ボルト62で固定する。固定部材24と第2の接合面52との固定は、ボルト以外の方法であってもよい。
以上の結果、荷重伝達部材20は、固定部材24を介して擁壁12の上部に固定される。
この結果、アンカー30の導入荷重が、角度調整部材22の支圧板34及び荷重伝達部材20を介して擁壁12の上部に付加され、擁壁12が内側に転倒することを防止することができる。
つまり、アンカー30の導入荷重が固定部材24を剥離する方向に作用することがないため、固定部材24と擁壁12間の接合強度はそれほど高くする必要がなく、ボルト62の本数や強度を抑えることができる。
このため、アンカー頭部30aを擁壁12の上部に定着するに際し、背面側に設置スペースを確保する必要がないのは勿論のこと、さらに以下の顕著な効果が得られる。
(1) 荷重伝達部材20の発生応力(曲げモーメント)の低減効果
(2) 荷重伝達部材20の剛性の低減効果
(3) アンカー鉛直分力の擁壁12への荷重分散効果
(4) アンカー鉛直分力によって生じる固定部材24への作用荷重の低減効果
(5) 荷重伝達部材20の転倒抑制効果
すなわち、図5に示すように、擁壁12の内面56と固定部材24の第2の接合面52との接合部分に生じる分散された荷重分布領域βは、固定部材24の第2の接合面52の鉛直方向長さを底辺とする例えば三角形分布(同図(a))、または台形分布(同図(b))となる。
ただし、この領域γは荷重分散という観点からは無駄となるため、同図(a)または(b)のように無駄な領域γが生じないように、固定部材24の第2の接合面52の長さを設定することが望ましい。
(1) 従来例のように複数のアンカーに共通する長尺な腹起しを設ける必要がないため、施工現場に腹起し設置のためのスペースや重機を準備する必要がなく、ユニット単位で現場に搬送できる。この結果、工事の簡素化や効率化が図れる。
(2) アンカーの不要になった箇所からユニット単位でアンカー頭部ユニット10を撤去することができ、また破損が生じた場合でもユニット単位で交換できるため、工程の柔軟性が増す。
(3) 側圧の強弱に応じてユニット毎にアンカー頭部ユニット10の大きさや剛性を最適化できるため、コストの低減に資する。
(4) 抗側圧構造物の表面が平坦ではなく、クランクのように入り組んだ形状を呈している場合でも、ユニット化されたアンカー頭部ユニット10であれば容易に対応可能となる。
なお、比較的少数(例えば2本)のアンカー30毎に、アンカー頭部ユニット10を設けてもよい。
すなわち、図6に示すように、アンカー30の削孔に用いるケーシング77の削孔外径をDとした場合において、擁壁12の頂面26と外面58との交線(角部)78と、アンカー30の設置方向軸心Yとの最短離隔79がD/2以上となるように、アンカー30の設置位置を設定する。
このように最短離隔79をD/2以上に設定することで、アンカー削孔時に使用するケーシング77で擁壁12を貫通削孔(損傷)することを有効に回避できる。
なお、アンカー削孔後に擁壁12を後施工する場合は、貫通削孔の問題は生じないため、アンカー30の引張材(テンドン材)の外周面が前記交線78に接しない限度で、アンカー30の設置位置を擁壁12に近づけることができる。
すなわち、角度調整部材22を載置するための上面と、擁壁12の頂面26に密接する下面と、アンカー30を挿通するための隙間や通路を備え、必要な剛性を備えた部材であれば、荷重伝達部材として利用できる。
この場合、例えば荷重伝達部材20の一端28aと擁壁12の内面56を繋ぐ平板状の固定部材を用いて、両者間の連結がなされる。
10 アンカー頭部ユニット
12 擁壁
14 地盤
16 地下空間
20 荷重伝達部材
22 角度調整部材
24 固定部材
26 擁壁の頂面
30 アンカー
34 支圧板
38 台座部
56 擁壁の内面
58 擁壁の外面
72 交点
X 擁壁頂面の空域
Y アンカーの設置方向軸心
前記「アンカーの設置方向軸心」とは、所定の設置方向(角度)で配置されたアンカーの軸心を意味している。
また、アンカーの設置方向軸心と荷重伝達部材の上面との交点位置が、抗側圧構造物の頂面の空域内に収まるように設定されているため、アンカーの頭部を抗側圧構造物の上部に定着するに際し、背面側に設置スペースを確保する必要がないのは勿論のこと、荷重伝達部材の発生応力(曲げモーメント)の低減効果、荷重伝達部材の剛性の低減効果、アンカー鉛直分力の抗側圧構造物への荷重分散効果、アンカー鉛直分力によって生じる固定部材への作用荷重の低減効果、荷重伝達部材の転倒抑制効果が得られる。
また、アンカーの導入荷重を受ける荷重伝達部材が抗側圧構造物の上部に固定されており、その内部空間側の端部が、固定部材を介して抗側圧構造物の内部空間側の表面上部に接合されるため、アンカーの導入荷重が固定部材によって抗側圧構造物が圧縮される方向に付加されることとなり、抗側圧構造物から固定部材を剥離する方向に作用することがない。このため、固定部材と抗側圧構造物間の接合強度を抑えることができる。
さらに、固定部材は抗側圧構造物の内部空間側の表面上部に固定されており、通常10〜30cm程度の幅で設置可能であるため、抗側圧構造物と新設躯体との間のスペースを少なくすることができ、掘削土量の削減、工事の効率化(工期短縮)や作業空間の有効活用を図ることができる。
Claims (6)
- 外部土壌からの圧力に抗して、アンカー工法を併用して内部空間を保全する抗側圧構造物の支持構造において、
前記抗側圧構造物の頂面付近から外部土壌に対して設置したアンカーの設置方向軸心と、前記抗側圧構造物の頂面に載置される荷重伝達部材の上面との交点位置が、前記抗側圧構造物の頂面の空域内に収まると共に、前記アンカーが前記抗側圧構造物に接触しないように、
前記アンカーの設置位置及び設置方向が設定されていることを特徴とする抗側圧構造物の支持構造。 - 前記荷重伝達部材と、荷重伝達部材の一端と前記抗側圧構造物の内面上部を接合する固定部材と、角度調整部材よりなるアンカー頭部ユニットを備え、
この角度調整部材は、前記アンカーの頭部が定着される支圧板と、
この支圧板をアンカーと略直交する角度で支持すると共に、前記荷重伝達部材の上面に固定される台座部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の抗側圧構造物の支持構造。 - 前記アンカー頭部ユニットは、前記アンカー毎に独立していることを特徴とする請求項2に記載の抗側圧構造物の支持構造。
- 前記固定部材は、前記アンカーの水平分力を前記抗側圧構造物との接合面で分散させることを特徴とする請求項2または3に記載の抗側圧構造物の支持構造。
- 請求項2のアンカー頭部ユニットを用いた抗側圧構造物の支持工法であって、
外部土壌に対して抗側圧構造物の頂面付近からアンカーを設置する工程と、
抗側圧構造物の頂面に荷重伝達部材を載置する工程と、
抗側圧構造物の内面上部と、荷重伝達部材の一端との間を、固定部材を介して接合する工程と、
アンカー頭部に緊張を付与して角度調整部材の支圧板に定着させる工程と、
からなることを特徴とする抗側圧構造物の支持工法。 - 外部土壌に対して複数のアンカーを設置するに際し、
前記アンカー頭部ユニットをアンカー毎に準備し、
各アンカー頭部ユニットの固定部材を抗側圧構造物の内面上部に個別に接合することを特徴とする請求項5に記載の抗側圧構造物の支持工法。
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