JP2020061224A - ニッケル水素蓄電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】充電リザーブを確保することができるニッケル水素蓄電池の製造方法を提供する。【解決手段】ニッケル水素蓄電池1の製造方法100において、電解液注入工程S2では、複数の正極及び負極がセパレータ13を介して積層された電極積層体15が収容されたケース5内に図示しない電解液を注入する。活性化工程S3ではケース5を大気開放状態にして初期充電させる。封止工程S4ではケース5が封止される。【選択図】図1
Description
本発明は、ニッケル水素蓄電池の製造方法に関する。
ニッケル水素蓄電池は、ニッケル化合物を含む正極、水素吸蔵合金を含む負極、セパレータ及び電解液を有し、以下の式(1)及び式(2)の電極反応により、充放電を行うように構成されている。なお、Mは水素吸蔵合金を示す。いずれの反応式も右方向への反応が充電反応であって、左方向への反応が放電反応である。
正極:Ni(OH)2+OH−⇔NiOOH+H2O+e− (1)
負極:M+H2O+e−⇔MH+OH− (2)
正極:Ni(OH)2+OH−⇔NiOOH+H2O+e− (1)
負極:M+H2O+e−⇔MH+OH− (2)
また、充電末期には、正極において上記式(1)と競合して、酸素ガスの生成を伴う以下の式(3)の反応が起こる。
正極:2OH−→1/2O2+H2O+2e− (3)
正極:2OH−→1/2O2+H2O+2e− (3)
これに対して、負極容量を正極容量よりも大きくすることにより負極に充電リザーブを設けて、充電状態(SOC)100%のときに負極に未充電部分が存在するようにしている。当該負極の充電リザーブにより、正極で生じた酸素ガスは、以下の式(4)の反応によって負極に吸収されて、過充電時の電池内圧の上昇が抑制されている。
負極:2MH+1/2O2→2M+H2O (4)
負極:2MH+1/2O2→2M+H2O (4)
一方、初期充電時には、下記の式(5)に示すように、正極が有する導電助剤やバインダ等の酸化などによる不可逆的な副反応が生じる。
(副反応物)+OH−→(生成物)+e− (5)
式(5)に示す副反応では正極において電解液中の水酸化イオンを消費して生じた電子は放電リザーブとして負極に潜在的に蓄えられることとなる。当該放電リザーブはSOC0%のときに負極に残存している容量を示す。かかる放電リザーブにより、過放電時に負極で酸素ガスが発生することを防止している。
(副反応物)+OH−→(生成物)+e− (5)
式(5)に示す副反応では正極において電解液中の水酸化イオンを消費して生じた電子は放電リザーブとして負極に潜在的に蓄えられることとなる。当該放電リザーブはSOC0%のときに負極に残存している容量を示す。かかる放電リザーブにより、過放電時に負極で酸素ガスが発生することを防止している。
そして、かかるニッケル水素蓄電池では、電池内圧の上昇を防止するために、充電リザーブと放電リザーブとにより充電状態が正極容量によって規制されるように、正極と負極の容量バランスが設計されている。例えば、特許文献1には、充電リザーブ量と放電リザーブ量とが所定範囲の割合となるようにした正極規制型のニッケル水素蓄電池が開示されている。
しかしながら、負極の放電リザーブは、使用に伴って生じるバインダやセパレータのなどの有機物の酸化などによって新たに形成されて増加する。そして、負極の放電リザーブの増加に伴って負極の充電リザーブが減少する。また、負極の劣化によっても負極の充電リザーブは減少する。充電リザーブが過度に減少すると、充電末期に負極における酸素ガスの吸収がスムーズに進行せず、さらに、負極の水素吸蔵合金から水素ガスが発生しやすくなり、電池内圧の上昇を招く。そして、電池内圧が上昇するとガス排出弁が開放されてガスが外部に放出され、これとともに電解液も外部に漏出するドライアウトが発生して電池寿命が短くなるという問題が生じる。かかる問題に対して、負極容量を大きくして充電リザーブを一層大きくすることが考えられるが、限られた電池内空間において負極容量を大きくすれば正極容量を小さくせざるを得ないとともに、充電リザーブは実質的な充放電反応に寄与しないため、電池全体として体積エネルギ密度の低下を招くこととなる。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、充電リザーブが十分に確保されたニッケル水素蓄電池の製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、複数の正極及び負極が積層された電極積層体と、上記電極積層体を収容するケースとを有するニッケル水素蓄電池の製造方法であって、
上記ケース内に電解液が注入される電解液注入工程と、
上記ケースを大気開放状態にして初期充電させる活性化工程と、
上記ケースが封止される封止工程とを含む、
ニッケル水素蓄電池の製造方法にある。
上記ケース内に電解液が注入される電解液注入工程と、
上記ケースを大気開放状態にして初期充電させる活性化工程と、
上記ケースが封止される封止工程とを含む、
ニッケル水素蓄電池の製造方法にある。
上記ニッケル水素蓄電池の製造方法においては、ケースを封止する前にケースを大気開放状態にして初期充電がなされる。これにより、活性化工程で発生する副反応である酸化が大気中の酸素を利用して行われることにより、電解液中の水酸化イオンの消費が抑制されるため、負極に放電リザーブが形成されることが抑制される。その結果、負極容量を大きくすることなく、活性化後の充電リザーブを十分に確保することができる。これにより、コスト面で有利となる。さらに、ケースの封止工程前に活性化を行ったのち封止工程を行うため、活性化のために封止工程後にケースを開場したりする必要がなく、ケースの封止状態が維持されて電解液のドライアウトを防止することができる。
以上のように、本発明によれば、充電リザーブを確保することができるニッケル水素蓄電池の製造方法を提供することができる。
上記ケースは上記電解液を注入するための注液孔を有し、上記活性化工程では、上記注液孔を開放して上記ケースが大気開放状態されることが好ましい。この場合は、注液孔を利用してケースを大気開放状態にできるため、ケースを大気開放状態にするための新たに開口部等をケースに設ける必要がない。そのため、構成を簡素化できるとともに、ケースの密閉性を向上して電解液の漏出が抑制される。
上記注液孔の開口面積は2〜10mm2の範囲内であることが好ましい。この場合は、注液孔の開口面積が比較的小さくなるため、ケースを大気開放状態にする際に、注液孔からケース内に流入する空気の流速を速めることができる。これにより、ケース内に空気の流れを積極的に発生させて、ケース内の空気を攪拌するとともに初期充電により生じた水素ガスをケース外に排出しやすくなる。
上記活性化工程において、上記注液孔を0.5〜20時間開放することが好ましい。この場合には、放電リザーブの低減に必要な酸素をケース内に取り入れることができ、充電リザーブを十分に確保することができる。
(実施例1)
上記ニッケル水素蓄電池の製造方法の実施例について、図1〜図6を用いて説明する。
本実施例1は、正極活物質としてニッケル化合物を含む正極活物質層3と、負極活物質として水素吸蔵合金を含む負極活物質層4とを有するニッケル水素蓄電池1の製造方法100であって、図1に示すように、電解液注入工程S2、活性化工程S3、封止工程S4、を含む。
電解液注入工程S2では、複数のバイポーラ電極10がセパレータ13を介して積層された電極積層体15が収容されたケース5内に図示しない電解液を注入する。
活性化工程S3では、ケース5を大気開放状態にして初期充電させる。
封止工程S4では、ケース5が封止される。
上記ニッケル水素蓄電池の製造方法の実施例について、図1〜図6を用いて説明する。
本実施例1は、正極活物質としてニッケル化合物を含む正極活物質層3と、負極活物質として水素吸蔵合金を含む負極活物質層4とを有するニッケル水素蓄電池1の製造方法100であって、図1に示すように、電解液注入工程S2、活性化工程S3、封止工程S4、を含む。
電解液注入工程S2では、複数のバイポーラ電極10がセパレータ13を介して積層された電極積層体15が収容されたケース5内に図示しない電解液を注入する。
活性化工程S3では、ケース5を大気開放状態にして初期充電させる。
封止工程S4では、ケース5が封止される。
以下、本例のニッケル水素蓄電池1の製造方法100について詳述する。
図1に示すように、本例におけるニッケル水素蓄電池1の製造方法100では、まず、組付け工程S1を行う。組付け工程S1では、集電体2、正極活物質層3、負極活物質層4及びセパレータ13を含む電極積層体15を作成し、電極積層体15をケース5に収容する。
図1に示すように、本例におけるニッケル水素蓄電池1の製造方法100では、まず、組付け工程S1を行う。組付け工程S1では、集電体2、正極活物質層3、負極活物質層4及びセパレータ13を含む電極積層体15を作成し、電極積層体15をケース5に収容する。
正極活物質層3は正極活物質、バインダ、導電助剤、その他正極を形成するのに必要な公知の材料で構成される。正極活物質は水酸化ニッケル(Ni(OH)2)からなる。正極活物質層3のバインダとしては、ニッケル水素蓄電池用として公知のものを使用することができ、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン及びフッ素ゴムなどの含フッ素樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリイミド及びポリアミドイミドなどのイミド系樹脂、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸及びポリメタクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル酸誘導体をモノマー単位として含有する(メタ)アクリル系樹脂を使用することができる。本例では、スチレンブタジエンゴム(SBR)を採用している。SBRは、正極活物質及び集電体に対する結着性に優れる。正極活物質層3の導電助剤としては、化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、酸化コバルト、水酸化コバルトなどのコバルト化合物を含む各種金属粒子や、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維等が例示される。本例では、正極活物質層3の導電助剤として酸化コバルトからなるコバルト粉末を採用している。
負極活物質層4は負極活物質、バインダ、導電助剤、その他負極を形成するのに必要な公知の材料で構成される。負極活物質は水素吸蔵合金からなる。水素吸蔵合金の組成としては公知のものを採用することができ、例えば、A2B7型、AB5型などの組成を採用することができる。本例では負極活物質としてA2B7型の水素吸蔵合金を採用している。水素吸蔵合金として、平均粒径が0.1〜20μmの範囲内のものを採用することができ、好ましくは平均粒径が0.1〜15μmの範囲内、更に好ましくは0.1〜10μmの範囲内のものを採用することが好ましい。水素吸蔵合金粒子の粒径が比較的小さいことから体積当たりの表面積が大きくなるため、水素の吸収及び放出のエネルギが比較的小さくて済み、内部抵抗を低下させることができる。負極活物質層4のバインダ及び導電助剤としては、正極活物質層3の場合と同様のものを採用することができる。
また、セパレータ13も公知の材料を採用することができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドなどの合成樹脂から構成された不織布又は織布や、セラミックスなどの電気絶縁性材料から構成された多孔体を採用することができる。本例では、セパレータ13として、ポリオレフィン繊維製不織布を採用している。
本例では、図2に示すように、集電体2、正極活物質層3及び負極活物質層4はバイポーラ電極10を構成している。バイポーラ電極10において、集電体2としての金属箔の第1の面21に正極活物質層3が形成されることにより正極が構成され、集電体2としての金属箔の第2の面22に負極活物質層4が形成されることにより負極が構成されている。集電体2は充放電の際に各電極に電流を流し続けることが可能な化学的に不活性な電子伝導体である。集電体2としての金属箔の組成は、特に限定されず、ニッケル箔、ニッケルめっき銅箔、ニッケルめっきステンレス銅箔などの公知のものを採用することができる。そして、複数のバイポーラ電極10がセパレータ13を介して積層されて電極積層体15が形成される。電極積層体15は、積層方向の両端にそれぞれ終端電極11、12を有している。
集電体2の周縁部は、正極活物質3および負極活物質4が塗工されない未塗工領域である。集電体2の未塗工領域をケース5の内壁に埋没させた状態でケース5は、正極活物質層3と負極活物質層4とをセパレータ13を介して対向するように保持している。ケース5の内壁と隣り合う2つの集電体2とが協働することによって空間を形成している。上記空間内に電解液が封入されている。本例では、図2に示すように、ケース5は、筒状のケース本体51とその両開口端を覆うケースプレート52、53とを有する。ケース本体51は絶縁性を有する樹脂製であり、ケースプレート52、53は金属製である。本例では、ケース本体51が複数のバイポーラ電極10を有する電極積層体15の側周面を覆い、ケースプレート52、53が電極積層体15の積層方向の両開口端を覆うことにより、ケース5内に電極積層体15が収容されている。ケース本体51には、電極積層体15においてセパレータ13を挟む一の集電体2の正極活物質層3、一の集電体2と隣り合う集電体2の負極活物質層4により構成される電池セルごとに、電解液を注入するための注液孔55が貫通形成されている。そして、注液孔55は樹脂部材56により封止される。
注液孔55の形状は限定されないが、スリット状、円柱状などとすることができ、本例では、スリット状としている。注液孔55をスリット状とすることにより、注液孔55の開口面積に基づいて、後述の活性化工程S3において注液孔55を流通するガス量を制御しやすくなる。注液孔55の開口面積は適宜設定することができるが、例えば、1.0〜10mm2とすることができ、本例では4.0mm2としている。
本例では、組付け工程S1は以下のように行った。まず、正極活物質としての水酸化ニッケル粉末を96質量部、導電助剤として酸化コバルト粉末を3質量部、バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)を固形分として1質量部、及び、適量のイオン交換水を混合して、スラリーを作製した。集電体2として厚み50μmのニッケル箔を準備した。この集電体2の一方の表面に、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された集電体2を乾燥して水を除去した後、プレスを行い、集電体2上に正極活物質層3を形成した。本例では、正極容量が5Ahとなるように正極活物質層3を形成した。
その後、負極活物質として平均粒径10μmのA2B7型水素吸蔵合金を99質量部、バインダとしてアクリル系樹脂エマルション及びカルボキシメチルセルロースを固形分として合計1質量部、及び、適量のイオン交換水を混合して、スラリーを作製した。上記の正極活物質層3が形成された集電体2の他方の表面に、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された集電体2を乾燥して水を除去し、その後、プレスを行い、集電体2上に負極活物質層4を製造した。これにより、集電体2としてのニッケル箔の一方の面に正極活物質層3を有し、他方の面に負極活物質層4を有するバイポーラ電極10を作製した。負極容量は正極容量の1.5〜2.0倍とすることができ、本例では、負極容量が10Ahとなるように負極活物質層4を形成した。
そして、セパレータ13としてスルホン化処理が施された厚さ200μmのポリオレフィン繊維製不織布を用意し、セパレータ13を介してバイポーラ電極10を順次積層して電極積層体15を作成した。その後、図2に示すように、電極積層体15をケース5内に収容した。
その後、図1に示すように、電解液注入工程S2を行う。電解液注入工程S2では、ケース5内を真空状態とした後に電解液をケース5内に注入する。電解液としては、公知のものを採用することができる。本例では、電解液として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムの合計の濃度が5mol/Lである水溶液を準備した。そして、当該電解液を、電極積層体15を収容する開口面積4mm2の注液孔55から各電池セルに注液した。
次に、図1に示すように、活性化工程S3を行う。活性化工程S3では、初期充電し、活性化する。本例では、活性化工程S3として、まず、ケース5の注液孔55を開口状態にすることでケース5内の空間を大気開放状態にして0.5〜20時間放置した。その後、25℃の条件下で、電極端子531、521を介して、レート0.5CでSOC100%まで充電した後、0.5Cで電池電圧1Vまで放電することを1サイクルして、これを20サイクル行って活性化処理を行った。なお、各サイクルの放電後には、休止時間を1時間設けた後、電池電圧1Vまでの放電をレート0.1Cで行った。
その後、図1に示すように、活性化工程S3の後、封止工程S4を行う。封止工程S4では、ケース5を封止する。本例では、封止工程S4において、図2に示すように、各注液孔55を樹脂部材56により封止した。これにより、ニッケル水素蓄電池1が形成された。
本例では、正極活物質層3において、導電助剤として酸化コバルト粉末を用いている。そのため、活性化工程S3では、正極活物質層3において上記式(1)に示す充放電反応に加えて、副反応として、以下の式(6)に示す不可逆性の酸化反応が生じる。
正極:Co+4H−→CoOOH+2H2O+4e− (6)
導電助剤は、まず、活性化前にアルカリ水溶液である電解液中で一旦溶解してコバルト錯イオンを形成した後、正極活物質層3を構成する水酸化ニッケル粒子の表面に均一に分散して水酸化コバルトとして再析出する。その後、活性化工程S3における初期充電により、水酸化コバルトがオキシ水酸化コバルトに酸化される。オキシ水酸化コバルトは正極活物質層3において水酸化ニッケル間及び集電体2を電気的接続する導電性ネットワークを形成する。これにより、水酸化ニッケルの利用率が向上されて正極活物質が活性化されることとなる。
正極:Co+4H−→CoOOH+2H2O+4e− (6)
導電助剤は、まず、活性化前にアルカリ水溶液である電解液中で一旦溶解してコバルト錯イオンを形成した後、正極活物質層3を構成する水酸化ニッケル粒子の表面に均一に分散して水酸化コバルトとして再析出する。その後、活性化工程S3における初期充電により、水酸化コバルトがオキシ水酸化コバルトに酸化される。オキシ水酸化コバルトは正極活物質層3において水酸化ニッケル間及び集電体2を電気的接続する導電性ネットワークを形成する。これにより、水酸化ニッケルの利用率が向上されて正極活物質が活性化されることとなる。
さらに、本例では、正極活物質層3において、バインダとしてSBRを用いている。そのため、正極活物質層3において、副反応として上記式(6)に示す導電助剤の酸化に加えて、SBRの酸化反応が生じる。SBRの酸化反応ではSBRにおけるポリブタジエン内の二重結合の酸化が行われる。
ニッケル水素蓄電池1における正極容量及び負極容量は、図3(a)に示す活性化前の状態から、活性化によって図3(b)に示すように正極の一部が不可逆的な副反応によって酸化される。当該副反応の一部は、活性化工程S3で大気中の酸素を利用して行われる。その結果、図3(c)に示すように、正極の副反応に相当する容量のなかで大気中の酸素によるものを除いた容量に相当する負極容量が、活性化後のニッケル水素蓄電池1における放電リザーブとなる。
なお、本例における導電助剤及びバインダと放電リザーブの量的関係は以下の通りである。図5に示すように、正極活物質層3における導電助剤(コバルト粉末)の重量比率(wt%)と、放電リザーブの容量変化率(%)との関係について、導電助剤が1wt%増加するごとに、放電リザーブの容量が1%増加した。また、図6に示すように、正極活物質層3におけるバインダ(SBR)の重量比率(wt%)と、放電リザーブの容量変化率(%)との関係について、バインダが1wt%増加するごとに、放電リザーブの容量が11.5%増加した。
図3(c)に示すように、活性化後の放電リザーブの容量は、活性化工程S3において副反応が大気中の酸素を利用することにより低減される。放電リザーブの容量は、劣化末期において、負極容量と正極容量とが同等になるように設定することができる。例えば、正極容量を1とした場合、活性化による放電リザーブの容量は0.2〜0.5とし、劣化による放電リザーブ量は0.3〜0.5とすることができる。これに基づき、本例における活性化後の放電リザーブの容量は0.2〜0.5とすることができ、好ましくは0.2〜0.3とすることができる。なお、正極容量に対する放電リザーブの容量が0.2未満の場合は、過放電時にガスが発生する恐れがあるため、好ましくない。
そして、活性化工程S3においてケース5を大気開放状態にしない場合を比較例として本例と比較すると、比較例では、図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示すように、正極の副反応の全部に相当する負極容量が放電リザーブとなる。そのため、図4(c)に示す比較例の放電リザーブは、図3(c)に示す本例の放電リザーブよりも大きくなっている。そして、図3(c)に示す本例の放電リザーブは、本例のニッケル水素蓄電池1の製造方法100により十分低減されている。
活性化工程S3において、ケース5を大気開放状態に維持する時間は、活性化後の放電リザーブ量が上記範囲内となるように設定することが好ましい。本例の正極活物質層3及び負極活物質層4の構成では、ケース5を大気開放状態に維持する時間は0.5〜20時間、好ましくは0.5〜10時間とすることができる。なお、ケース5を真空状態から大気開放状態にすることにより、負極活物質層4で発生する水素をケース5の外部に放出することができる。下記の表1に、注液孔55の開口面積が4mm2である場合の負極容量を1とした場合の水素放出による放電リザーブ減少量を示す。
本例のニッケル水素蓄電池1の製造方法100の作用効果について詳述する。
本例のニッケル水素蓄電池1の製造方法100によれば、ケース5を封止する前にケース5内に酸素含有ガスが注入される。これにより、活性化工程S3で発生する副反応が大気中の酸素を消費することにより電解液中の水酸化イオンの消費が抑制されるため、活性化工程S3において負極に放電リザーブが形成されることが抑制される。その結果、負極容量を大きくすることなく、活性化後の充電リザーブを十分に確保することができる。これにより、コスト面で有利となる。さらに、酸素含有ガスの注入はケース5を封止する前に行うため、酸素含有ガスの注入のために封止後のケース5を開放する必要がなく、ケース5を封止状態に維持できる。これにより、電解液のドライアウトを防止することができる。
本例のニッケル水素蓄電池1の製造方法100によれば、ケース5を封止する前にケース5内に酸素含有ガスが注入される。これにより、活性化工程S3で発生する副反応が大気中の酸素を消費することにより電解液中の水酸化イオンの消費が抑制されるため、活性化工程S3において負極に放電リザーブが形成されることが抑制される。その結果、負極容量を大きくすることなく、活性化後の充電リザーブを十分に確保することができる。これにより、コスト面で有利となる。さらに、酸素含有ガスの注入はケース5を封止する前に行うため、酸素含有ガスの注入のために封止後のケース5を開放する必要がなく、ケース5を封止状態に維持できる。これにより、電解液のドライアウトを防止することができる。
また、本例では、ケース5は電解液を注入するための注液孔55を有し、活性化工程S3では、注液孔55を開放してケース5が大気開放状態される。これにより、注液孔55を利用してケースを大気開放状態にできるため、ケース5を大気開放状態にするための新たに開口部等をケース5に設ける必要がない。そのため、構成を簡素化できるとともに、ケース5の密閉性を向上して電解液の漏出が抑制される。
また、本例では、注液孔55の開口面積は1〜10mm2の範囲内としている。これにより、注液孔55の開口面積が比較的小さくなるため、ケース5を大気開放状態にする際に、注液孔55からケース5内に流入する空気の流速を速めることができる。その結果、ケース5内に空気の流れを積極的に発生させて、ケース5内の空気を攪拌するとともに初期充電により生じた水素ガスをケース5の外に排出しやすくなる。
上記活性化工程において、上記注液孔を0.5〜20時間開放することが好ましい。この場合には、放電リザーブの低減に必要な酸素をケース内に取り入れることができ、充電リザーブを十分に確保することができる。
以上のように、本例によれば、充電リザーブを確保することができるニッケル水素蓄電池1の製造方法100を提供することができる。なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施例に適用することが可能である。
例えば、本例ではバイポーラ電極10を採用したが、これに限定されない。集電体2の両面又は片面に正極活物質層3が形成された正極と集電体2の両面又は片面に負極活物質層4が形成された負極を採用してもよい。
例えば、本例ではバイポーラ電極10を採用したが、これに限定されない。集電体2の両面又は片面に正極活物質層3が形成された正極と集電体2の両面又は片面に負極活物質層4が形成された負極を採用してもよい。
1 ニッケル水素蓄電池
2 集電体
3 正極活物質層
4 負極活物質層
5 ケース
10 バイポーラ電極
13 セパレータ
15 電極積層体
51 ケース本体
55 注液孔
2 集電体
3 正極活物質層
4 負極活物質層
5 ケース
10 バイポーラ電極
13 セパレータ
15 電極積層体
51 ケース本体
55 注液孔
Claims (4)
- 複数の正極及び負極が積層された電極積層体と、上記電極積層体を収容するケースとを有するニッケル水素蓄電池の製造方法であって、
上記ケース内に電解液が注入される電解液注入工程と、
上記ケースを大気開放状態にして初期充電させる活性化工程と、
上記ケースが封止される封止工程とを含む、
ニッケル水素蓄電池の製造方法。 - 上記ケースは上記電解液を注入するための注液孔を有し、
上記活性化工程では、上記注液孔を開放して上記ケースが大気開放状態される、請求項1に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法。 - 上記注液孔の開口面積は1〜10mm2の範囲内である、請求項2に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法。
- 上記活性化工程において、上記注液孔を0.5〜20時間開放する、請求項3に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法。
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