JP2020059126A - 耐火性木質複合材、難燃薬剤保持体及び耐火木製構造材 - Google Patents
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Abstract
Description
また特許文献1〜3においては、燃えしろ層や燃え止まり層を構成する木材は縁切りされていないため、該木材が火災にさらされたときに、該木材に大きな割れが生じてしまう場合がある。
本発明の好ましい実施形態の耐火性木質複合材1は、図1に示すように、難燃薬剤保持層10が厚み方向に複数積層された構成を有する。耐火性木質複合材1は、難燃薬剤保持層10が厚み方向Zに3つ積層されている。耐火性木質複合材1は、平面視において第1方向X及び第1方向Xに直交する第2方向Yを有している。
木質基材を構成する木材、例えば単板の原料木材の樹種は、針葉樹でも広葉樹でも良く、例えば、オーク、チーク、ウォルナット、ファルカタ、バルサ、レッドラワン、タモ、ニレ、カバ、キリ、スギ、ヒノキ、カラマツ、エゾマツ、トドマツ、アカマツ、ヒバ、ホワイトウッド、オウシュウアカマツ、ダフリカカラマツ、ダグラスファー等を用いることができる。原料木材の樹種としては、上述した各種の樹種から選択した1種又は2種以上を組み合わせた積層体を木質基材20としてもよい。
これらの中でも、燃焼時の発熱量を軽減させることと、単板の原材料として確保し易いことの観点から、スギ、トドマツ等の、針葉樹で比較的軽く、原料確保が容易な樹種を用いることが好ましい。また同様の観点から、気乾密度が0.3〜0.6g/cm3であるものを用いることが好ましく、気乾密度が、0.4〜0.5g/cm3であるものを用いることが更に好ましい。気乾密度は、複数の単板積層体の平均値により決定される。
難燃薬剤含有固形物30は、難燃薬剤として、リン系防火薬剤、窒素系防火薬剤、ホウ素系防火薬剤、ハロゲン系防火薬剤、等一般的な難燃薬剤を含んでいるものを使用することができる。難燃薬剤含有固形物30は、難燃薬剤としてホウ酸及び/又はホウ酸系化合物を含んでいることが好ましい。
また封止層4は、木質基材20と同様に、複数の単板の積層体により構成されていてもよい。封止層4を複数の単板の積層体により構成する場合、単板の原料木材の樹種は、木質基材20と同様のものを用いることができる。封止層4は、厚み方向Zにおける木質基材20の両側に配されていてもよい。封止層4は、木質基材20と同じ部材であってもよいし、別の部材であってもよい。
図3(a)においては、厚み方向Zに隣り合う難燃薬剤保持層10どうしが、開孔21どうしが重ならないように積層されているが、本発明の耐火性木質複合材においては、厚み方向Zに隣り合う難燃薬剤保持層10どうしが、開孔21の中心点の位置を、第1方向X及び/又は第2方向Yにずらした状態に積層されていても良い。開孔21の中心点の位置を、第1方向X及び/又は第2方向Yにずらした状態には、図3(a)に示すように、開孔21どうしが重ならない場合と、開孔21の一部は重なっているが、開孔21の中心点21aどうしが重ならない場合の両者が含まれる。
厚み方向Zに隣り合う難燃薬剤保持層10に存在する開孔21の50%以上100%以下が重ならないことが好ましく、厚み方向Zに隣り合う難燃薬剤保持層10に存在する開孔21の70%以上100%以下が重ならないことがより好ましく、厚み方向Zに隣り合う難燃薬剤保持層10に存在する開孔21の90%以上100%以下が重ならないことが更に好ましい。
このような構成により、例えば厚み方向Zに隣り合う難燃薬剤保持層10のうち上側の難燃薬剤保持層10における開孔21ではない部分が燃焼し、燃焼が厚み方向Z下側に進行したとしても、上側の難燃薬剤保持層10における開孔21ではない部分の厚み方向Z下側には、下側の難燃薬剤保持層10の難燃薬剤含有固形物30が配されているため、燃焼が厚み方向Z下側に進行することを防ぐことができるようになっている。
まず、開孔21が形成されていない木質基材20に、第1方向X及び第2方向Yのそれぞれに等間隔に開孔21を形成する。次に、開孔21に難燃薬剤含有固形物30を充填する。そして、木質基材20の厚み方向Zの片側に封止層4を配し、開孔21の一方の開口を封止する。このようにして難燃薬剤保持層10を製造する。開孔21に難燃薬剤含有固形物30を充填し易くする観点から、難燃薬剤含有固形物30は充填するときに固形物であることが好ましい。このようにして製造した難燃薬剤保持層10どうしを、開孔21の中心点21aどうしが重ならないように第1方向X及び第2方向Yにずらした状態に積層し、耐火性木質複合材1を製造する。
封止層4の木質基材20への接合及び難燃薬剤保持層10どうしの接合は、木質複合材の製造に従来用いられている各種公知の接着剤を用いることができ、例えば、水性高分子−イソシアネート系接着剤、レゾルシノール樹脂接着剤、レゾルシノール・フェノール樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、メラミンユリア樹脂接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等が挙げられる。これらのなかでも、レゾルシノール樹脂接着剤又はレゾルシノール・フェノール樹脂接着剤が好ましい。
まず、開孔21が形成されていない木質基材20に、第1方向X及び第2方向Yのそれぞれに等間隔に開孔21を形成する。次に、木質基材20の厚み方向Zの片側に封止層4を配し、開孔21の一方の開口を封止する。そして、流動体となっている難燃薬剤含有固形物30の前駆体を開孔21に充填する。該前駆体は、例えば難燃薬剤含有固形物30が加熱されることにより溶融し、流動体となったものである。前記前駆体を、例えば時間経過等により冷却し固体状態の難燃薬剤含有固形物30とすることにより、難燃薬剤保持層10が製造される。このようにして製造した難燃薬剤保持層10どうしを、第1方向X及び第2方向Yにずらした状態に積層し、耐火性木質複合材1を製造する。封止層4を配した後に、難燃薬剤含有固形物30を開孔21に充填することにより、難燃薬剤含有固形物30が充填時に液体状態であっても、難燃薬剤含有固形物30を開孔21に容易に充填することができる。
厚み方向Zの両端に位置する難燃薬剤保持層10のうち少なくとも1つにおける別の難燃薬剤保持層10が存在する側とは反対側に化粧層5が配されていることにより、耐火性木質複合材1の意匠性を向上させることが可能となる。
厚み方向Zの両端に位置する難燃薬剤保持層10は、複数の難燃薬剤保持層10のうち、厚み方向の端部又は最も端部に寄りに位置する難燃薬剤保持層である。
化粧層5や難燃薬剤保持層10に塗布する難燃薬剤は、難燃薬剤含有固形物30に含まれる難燃薬剤や、封止層4を構成する板材に用いられる難燃薬剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
耐火性木質複合材1の外側を構成する面に難燃薬剤が塗布されていることにより、耐火性木質複合材1の耐火性能をより向上させることが可能となる。
本発明の難燃薬剤保持体及び耐火性木質複合材は、例えば壁、床又は天井等に張り付けて用いることができる。
荷重支持部8は角材であり、単独で、固定荷重、積載荷重等の長期に生ずる荷重(長期荷重)に対して構造耐力上安全であるようにその断面設計がなされている。斯かる断面設計は公知である。荷重支持部8の横断面形状は四角形状であり、耐火木製構造材7Aの横断面における、荷重支持部8の縦方向の長さ及び横方向の長さは、梁や柱の形状、或いは大きさ等によって適宜に変更することができる。
図2に示す難燃薬剤保持層10と同様の構成を有する難燃薬剤保持体を製造した。具体的には、木質基材として、縦方向の長さが420mmであり、横方向の長さが350mmであり、厚みが24mmである、針葉樹合板を使用した。開孔の直径は10mmであり、第1方向及び第2方向における開孔の間隔は20mmであった。開孔に充填する難燃薬剤含有固形物として、ホウ酸系難燃薬剤を使用した。このようにして製造した難燃薬剤保持体を、開孔どうしが重ならないように、厚み方向に2つ積層した。厚み方向に隣り合う難燃薬剤保持体の開孔の中心点どうしは、第1方向及び第2方向にそれぞれ、10mmずれていた。積層した難燃薬剤保持体の厚み方向における一方の面に、縦方向の長さが420mmであり、横方向の長さが350mmであり、厚みが12mmである、針葉樹合板からなる化粧層を配した。積層した難燃薬剤保持体の厚み方向における他方の面には、縦方向の長さが420mmであり、横方向の長さが350mmであり、厚みが24mmである、針葉樹からなる合板を2つ積層したものを配した。化粧層、難燃薬剤保持体及び合板の接着には、酢酸ビニルを含む接着剤を使用した。このようにして製造した、化粧層、難燃薬剤保持体及び合板の積層体における化粧層側の面以外の面をセラミックブランケットと石膏ボードで養生し、実施例1の試験体とした。
実施例の試験体において、難燃薬剤保持体に代えて、縦方向の長さが420mmであり、横方向の長さが350mmであり、厚みが24mmである、針葉樹からなる合板を用いた以外は、実施例と同様にして試験体を製造した。
実施例及び比較例で得られた試験体を燃焼試験炉に収容した。試験体においては、化粧層側の面が一面加熱される加熱面である。そして通常の火災を想定したISO834標準加熱により1時間加熱を行い、加熱終了後、加熱時間の3倍以上の時間(3時間以上、約5時間)の炉内放冷を行った。その際、鉛直方向の上側の面から90mm、100mm、110mmの位置において加熱面からの深さが30mm、60mm、90mmとなる位置、及び鉛直方向の下側の面から90mm、100mm、110mmの位置において加熱面からの深さが30mm、60mm、90mmとなる位置における温度変化を計測し、各位置における温度の継時的変化を確認した。また加熱面の状態を目視により確認した。
10 難燃薬剤保持層
20 木質基材
21 開孔
21a 開孔の中心点
30 難燃薬剤含有固形物
4 封止層
5 化粧層
7 耐火木製構造材
8 荷重支持部
9 耐火被覆層
40 難燃薬剤保持層積層部
X 第1方向
Y 第2方向
Z 厚み方向
Claims (13)
- 平面視において第1方向及び第1方向に直交する第2方向を有し、難燃薬剤保持層が厚み方向に複数積層されている耐火性木質複合材であって、
前記難燃薬剤保持層は、複数の開孔を有する木質基材と、該開孔内に充填された難燃薬剤含有固形物とを備えており、
前記厚み方向に隣り合う前記難燃薬剤保持層どうしは、前記開孔の中心点の位置を、第1方向及び/又は第2方向にずらした状態に積層されている、耐火性木質複合材。 - 前記厚み方向に隣り合う前記難燃薬剤保持層どうしは、前記開孔どうしが重ならないように積層されている、請求項1に記載の耐火性木質複合材。
- 前記難燃薬剤保持層のうち少なくとも1つは、前記厚み方向における前記木質基材の片側又は両側に、該木質基材の前記開孔と重なる位置に開孔を有しない封止層を有している、請求項1又は2に記載の耐火性木質複合材。
- 前記難燃薬剤保持層は、前記開孔が第1方向及び第2方向のそれぞれに等間隔に形成されている、請求項1〜3の何れか1項に記載の耐火性木質複合材。
- 前記難燃薬剤保持層は、前記木質基材の厚みが前記難燃薬剤保持層の厚みに対して、80%以上95%以下である、請求項1〜4の何れか1項に記載の耐火性木質複合材。
- 前記難燃薬剤保持層は、前記開孔の開口面積の合計面積が前記木質基材の前記開孔が形成されている面の面積に対して、9%以上30%以下である、請求項1〜5の何れか1項に記載の耐火性木質複合材。
- 前記難燃薬剤保持層は、単位体積当たりの前記難燃薬剤含有固形物の保持量が、90kg/m3以上270kg/m3以下である、請求項1〜6の何れか1項に記載の耐火性木質複合材。
- 前記難燃薬剤含有固形物は、難燃薬剤としてホウ酸及び/又はホウ酸系化合物を含んでいる、請求項1〜7の何れか1項に記載の耐火性木質複合材。
- 前記厚み方向の両端に位置する前記難燃薬剤保持層のうち少なくとも1つは、別の前記難燃薬剤保持層が存在する側とは反対側の面に、難燃薬剤が塗布されている、請求項1〜8の何れか1項に記載の耐火性木質複合材。
- 前記厚み方向の両端に位置する前記難燃薬剤保持層のうち少なくとも1つは、別の前記難燃薬剤保持層が存在する側とは反対側に化粧層が配されている、請求項1〜9の何れか1項に記載の耐火性木質複合材。
- 前記化粧層の前記難燃薬剤保持層とは反対側の面に、難燃薬剤が塗布されている、請求項10に記載の耐火性木質複合材。
- 開孔を有する木質基材と該開孔に充填された難燃薬剤含有固形物とを備えている難燃薬剤保持体。
- 角材からなる荷重支持部と、該荷重支持部の軸方向に沿う3側面又は4側面を被覆する耐火被覆層とを備える耐火木製構造材であって、
前記耐火被覆層は、難燃薬剤保持層が厚み方向に複数積層されている難燃薬剤保持層積層部を有しており、
前記難燃薬剤保持層積層部は、平面視において第1方向及び第1方向に直交する第2方向を有しており、
前記難燃薬剤保持層は、複数の開孔を有する木質基材と、該開孔に充填された難燃薬剤含有固形物とを有しており、
前記厚み方向に隣り合う前記難燃薬剤保持層どうしは、前記開孔の中心点の位置を、第1方向及び/又は第2方向にずらした状態に積層されている、耐火木製構造材。
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