以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による手指衛生行動検出システムが備える各装置およびそれらの設置場所の一例を示す図である。なお、以下の実施形態では、手指衛生行動検出システムを適用する施設が病院であるものとして説明するが、介護施設など、手指衛生の励行が推奨される施設には何れにも適用することが可能である。
図1に示すように、本実施形態による手指衛生行動検出システムは、消毒液剤を吐出する消毒用ボトル10(特許請求の範囲の消毒用容器に相当。図1では簡易的に「ボ」と表記している)に設けられた吐出操作検出装置100と、医療従事者により携帯される無線送信装置200と、病院内の各場所に設置される中継装置300(図1では簡易的に「中」と表記している)と、中継装置300に通信ネットワークを介して接続された管理装置400とを備えて構成される。
なお、図1では、中継装置300と管理装置400との間を有線の通信ネットワーク(例えば、有線LAN)により接続する構成を示しているが、これに限定されない。例えば、中継装置300とアクセスポイントとの間をWi−Fi(登録商標)等の無線LANで接続し、アクセスポイントと管理装置400との間を有線LANで接続するようにしてもよい。
図1に示すように、消毒用ボトル10は、例えば病院内の各病室R1,R2,R3内に設置される。消毒用ボトル10が設置される病室R1,R2,R3内の位置は、例えば出入口の近傍である。あるいは、病室内のベッド近傍の位置であってもよい。なお、消毒用ボトル10が設置される位置は、各病室R1,R2,R3の出入口近傍で病室外(廊下CR)の位置であってもよい。
図1に示すように、消毒用ボトル10は、ポンプ式のボトルであり、上部のノズルヘッドを下方に押下することにより、ボトル内の消毒液が一定量吐出されるようになっている。このノズルヘッドに吐出操作検出装置100が装着されている。吐出操作検出装置100は、感圧センサを備えており、消毒用ボトル10に対する吐出操作(ノズルヘッドの押下操作)が行われたことを検出する。
吐出操作検出装置100は、無線送信回路を備えており、消毒用ボトル10に対する吐出操作が感圧センサにより検出されると、吐出操作が実行されたことを示す操作実行情報を、自身の識別情報である検出装置IDと共に無線で送信する。検出装置IDは、吐出操作検出装置100に固有の識別情報であり、内部メモリにあらかじめ記憶されている。吐出操作検出装置100により送信された検出装置IDは、消毒用ボトル10と同じスペース内に設置されている中継装置300にて受信される。
医療従事者により携帯される無線送信装置200は、医療従事者の識別情報である医療従事者IDを所定のインターバルを置いて定期的に送信する。例えば、無線送信装置200は、5秒おきに医療従事者IDを送信する。医療従事者IDは、医療従事者に固有の識別情報であり、無線送信装置200の内部メモリにあらかじめ記憶されている。所定のインターバルを置いて医療従事者IDを送信するのは、内蔵バッテリの消費電力量を低く抑え、無線送信装置200をできるだけ長時間継続して使用できるようにするためである。無線送信装置200により送信された医療従事者IDは、医療従事者が存在している位置の周囲にある中継装置300にて受信される。
中継装置300は、消毒用ボトル10の吐出操作検出装置100から操作実行情報および検出装置IDを受信するとともに、この受信とは非同期の形態で無線送信装置200から医療従事者IDを受信し、通信ネットワークを介して接続された管理装置400に対して、受信した情報を自身の識別情報である中継装置IDと共に送信する。中継装置IDは、中継装置300に固有の識別情報であり、内部メモリにあらかじめ記憶されている。
非同期の形態とは、吐出操作検出装置100から操作実行情報および検出装置IDを受信するタイミングと、無線送信装置200から医療従事者IDを受信するタイミングとが必ずしも一致するとは限らないという意味である。すなわち、操作実行情報および検出装置IDは、吐出操作検出装置100が吐出操作を検出した時点で送信されるのに対し、医療従事者IDは、吐出操作の検出とは無関係に所定の時間間隔(5秒おき)で定期的に送信されるため、中継装置300でこれらの情報を受信するタイミングは非同期となる。
中継装置300は、消毒用ボトル10が設置される各場所と同スペースと定義される場所およびそれ以外の場所を含めて複数の場所に設置される。図1の例では、消毒用ボトル10は病院内の各病室R1,R2,R3内に設置されている。この場合、消毒用ボトル10が設置される各場所と同スペースと定義される場所とは、各病室R1,R2,R3を意味する。また、それ以外の場所とは、病室以外の場所を意味し、図1の例では廊下CRである。
なお、病室の出入口近傍で病室外(廊下CR)の位置に消毒用ボトル10を設置した場合、その消毒用ボトル10が設置される場所と同スペースと定義される場所は、廊下CRではなく、その消毒用ボトル10から最も近い位置にある出入口を有する病室である。消毒用ボトル10が設置される場所に対してどの病室が同スペースであるかについては、後述するように管理装置400が備える第1のデータベースに定義情報が記憶されている。なお、消毒用ボトル10の設置場所によっては、消毒用ボトル10が設置される場所と同スペースが廊下の一部と定義される場合もある。
管理装置400は、中継装置300から送信された操作実行情報、検出装置ID、医療従事者IDおよび中継装置IDに基づいて、消毒用ボトル10に対する吐出操作を通じて手指衛生を実行した医療従事者を特定する処理を行う。この処理の詳細については、次の図2を用いて説明する。
図2は、管理装置400の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、管理装置400は、記憶媒体として、第1のデータベース記憶部401(図2では第1のDB記憶部と表記)、第2のデータベース記憶部402(図2では第2のDB記憶部と表記)、受信情報記憶部403および手指衛生管理情報記憶部404を備えている。また、管理装置400は、機能構成として、通信部41、第1のデータベース情報取得部42(図2では第1のDB情報取得部と表記)、中継装置特定部43、近傍存在者特定部44、同スペース存在者特定部45、第2のデータベース情報取得部46(図2では第2のDB情報取得部と表記)、携帯用非所持者特定部47、実施医療従事者特定部48および情報記録部49を備えている。
上記各機能ブロック41〜49は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック41〜49は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。なお、当該プログラムは、ハードディスクや半導体メモリ等の他の記録媒体に記憶されていてもよい。
第1のデータベース記憶部401は、同スペースの定義情報を含む施設のレイアウト情報と、当該レイアウト情報で示される施設のレイアウト上における吐出操作検出装置100および中継装置200の設置場所を示す設置場所情報とを含む第1のデータベース(特許請求の範囲のデータベースに相当)をあらかじめ記憶する。施設のレイアウト情報は、各病室R1,R2,R3の位置と形状(大きさを含む)、廊下CRの位置と形状(大きさを含む)を含む情報である。設置場所情報は、吐出操作検出装置100および中継装置200のそれぞれがどの病室R1,R2,R3またはどの廊下CRのどの位置に設置されているかを示す情報であり、後述する吐出操作検出装置100の検出装置IDおよび中継装置300の中継装置IDと関連付けて設置場所が示されている。また、第1のデータベースは、消毒用ボトル10のそれぞれについて、どの場所(病室R1,R2,R3または廊下CR)が同スペースであるかを示した定義情報も含んでいる。
第2のデータベース記憶部402は、医療従事者が携帯用の消毒用容器(以下、携帯型消毒用ボトルという)を所持しているか否かを示す所持情報を含む第2のデータベースをあらかじめ記憶する。図1に示した消毒用ボトル10は、図1に示した固定の場所に設置して使用されるものであるのに対し、これとは別に、医療従事者が携帯して使用するタイプの携帯型消毒用ボトル(図示せず)も存在する。この携帯型消毒用ボトルにも吐出操作を検出するための吐出操作検出装置が設けられており、吐出操作の検出に応じて操作実行情報がボトルIDと共に無線で送信されるようになっている。ボトルIDは、携帯型消毒用ボトルに固有の識別情報であり、吐出操作検出装置の内部メモリにあらかじめ記憶されている。
第2のデータベース記憶部402は、医療従事者の医療従事者IDと、当該医療従事者に割り当てられた携帯型消毒用ボトルのボトルIDとを対応付けて成る第2のデータベースを記憶するものであり、この第2のデータベースに医療従事者IDが記憶されている医療従事者は携帯型消毒用ボトルを所持しており、第2のデータベースに医療従事者IDが記憶されていない医療従事者は携帯型消毒用ボトルを所持していないことを示している。なお、第2のデータベースは、全ての医療従事者の医療従事者IDと、携帯型消毒用ボトルを所持しているか否かを表すフラグ情報とを関連付けて記憶したものであってもよい。
通信部41は、中継装置300から送信された操作実行情報、検出装置ID、医療従事者IDおよび中継装置IDを受信する。具体的には、通信部41は、消毒用ボトル10の吐出操作検出装置100における吐出操作の検出時に吐出操作検出装置100から送信された操作実行情報および検出装置IDと、中継装置300にて付加された中継装置IDとを受信する。また、通信部41は、医療従事者の無線送信装置200から定期的に送信された医療従事者IDと、中継装置300にて付加された中継装置IDとを受信する。
通信部41は、中継装置300から情報を受信する都度、受信した情報を受信情報記憶部403に時系列に記憶させる。図3は、受信情報記憶部403に記憶される受信情報の一例を示す図である。受信情報記憶部403は、1つのレコードに1つの受信情報を記憶する。1つのレコードには、レコードID、受信時刻、中継装置ID、操作実行情報、検出装置ID、医療従事者IDおよびボトルIDが項目として含まれている。
通信部41が中継装置300から操作実行情報、検出装置IDおよび中継装置IDを受信した場合、受信情報記憶部403に1つのレコードが追加され、当該追加されたレコードにレコードID、受信時刻、中継装置ID、操作実行情報および検出装置IDが記録される(レコードID=R6)。このレコードには、医療従事者IDおよびボトルIDは記録されない。上述したように、このレコードR6の受信情報は、消毒用ボトル10の吐出操作検出装置100において吐出操作が検出された時点で吐出操作検出装置100から中継装置300を介して送信された情報である。
また、通信部41が中継装置300から医療従事者IDおよび中継装置IDを受信した場合、受信情報記憶部403に1つのレコードが追加され、当該追加されたレコードにレコードID、受信時刻、中継装置IDおよび医療従事者IDが記録される(レコードID=R1〜R5,R7,R100)。これらのレコードには、操作実行情報、検出装置IDおよびボトルIDは記録されない。上述したように、これらのレコードR1〜R5,R7,R100の受信情報は、医療従事者の無線送信装置200から中継装置300を介して定期的に送信される情報である。
ここで、レコードR2〜R4の受信情報は、同じ時刻に同じ医療従事者IDを3つの異なる中継装置300から受信したものである。これは、その医療従事者IDで示される医療従事者の周囲(無線送信装置200が電波が届く範囲)に3つの中継装置300が存在し、無線送信装置200から送信された医療従事者IDが3つの中継装置300でほぼ同時に受信されて、それぞれの中継装置300から同じ医療従事者IDがそれぞれの中継装置IDと共に送信されてきたものであることを示している。
また、レコードR1の受信情報とレコードR100の受信情報は、医療従事者IDが同じとなっている。これは、医療従事者の無線送信装置200から所定のインターバル(5秒)を置いて定期的に送信される2回分の受信情報であることを示している。図3の例では、レコードR1の受信情報に含まれる中継装置IDと、レコードR100の受信情報に含まれる中継装置IDとが同じになっている。これは、5秒の間に医療従事者が同じ中継装置300の近くに存在し続けていることを意味する。5秒の間に医療従事者が別の中継装置300の近くに移動すると、記録される中継装置IDは異なるものとなる。
また、通信部41が中継装置300から操作実行情報、ボトルIDおよび中継装置IDを受信した場合、受信情報記憶部403に1つのレコードが追加され、当該追加されたレコードにレコードID、受信時刻、中継装置ID、操作実行情報およびボトルIDが記録される(図示せず)。このレコードには、検出装置IDおよび医療従事者IDは記録されない。
第1のデータベース情報取得部42(特許請求の範囲のデータベース情報取得部に相当)は、第1のデータベース記憶部401に記憶された第1のデータベースからレイアウト情報および設置場所情報を取得する。
中継装置特定部43は、第1のデータベース情報取得部42により取得された情報に基づいて、ある時点において中継装置300から受信した検出装置IDで示される吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300を特定する。ある時点において中継装置300から受信した検出装置IDは、図3の例でいうと、レコードR6に記録された受信情報に含まれる検出装置IDである。つまり、当該検出装置IDで示される吐出操作検出装置100において吐出操作が検出された時点において、当該吐出操作検出装置100から中継装置300を介して送信された検出装置IDである。
当該検出装置IDに対応する吐出操作検出装置100(すなわち、吐出操作が行われた吐出操作検出装置100)の設置場所は、第1のデータベース情報取得部42により取得されたレイアウト情報および設置場所情報に基づいて特定することが可能である。また、レイアウト情報および設置場所情報には、吐出操作検出装置100と同スペースに設置されている中継装置300の情報も含まれている。これにより、中継装置特定部43は、吐出操作が行われた吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300を特定することが可能である。
なお、吐出操作が行われた吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300の特定方法は、これに限定されない。例えば、レコードR6の受信情報の中に検出装置IDと共に含まれている中継装置IDに対応する中継装置300を、吐出操作が行われた吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300として特定するようにしてもよい。
図4は、この中継装置特定部43の動作を説明するための図である。なお、この図4は、後述する近傍存在者特定部44および同スペース存在者特定部45の動作を説明する際にも使用する。
図4(a)は、病室R1の中に医療従事者が存在する状態を示している。ここでは、医療従事者Aが病室R1内の消毒用ボトル10を操作することによって検出装置IDが病室R1内の中継装置300に送信された後、医療従事者Aが同じ病室R1内を若干歩いて移動したときに、無線送信装置200から医療従事者IDが病室R1内の中継装置300に送信された状態を示している。この場合、中継装置特定部43は、病室R1内の中継装置300を、吐出操作検出装置100が吐出操作された時点において中継装置300から受信した検出装置IDで示される吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300として特定する。
図4(b)は、医療従事者Aに関しては図4(a)と同様の状態で、かつ、廊下CRを歩いている別の医療従事者Bが病室R1の出入口に近づいたときに、医療従事者Bの無線送信装置200からも医療従事者IDが送信された状態を示している。この図4(b)の例において、廊下CRにいる医療従事者Bの無線送信装置200から送信された医療従事者IDは、廊下CRに設置されている2つの中継装置300に加えて、病室R1内の中継装置300においても受信されている。この場合は、図3のレコードR2〜R4のように、同じ時刻に同じ医療従事者IDを含む3つの受信情報が受信情報記憶部403に記憶される。
図4(b)に示す状態においても図4(a)の場合と同様、中継装置特定部43は、病室R1内の中継装置300を、吐出操作検出装置100が吐出操作された時点において中継装置300から受信した検出装置IDで示される吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300として特定する。中継装置300が吐出操作検出装置100から検出装置IDを受信し、これを中継装置IDと共に管理装置400へ送信していることに変わりはないからである。
近傍存在者特定部44は、通信部41が検出装置IDを受信した時点を基準として所定の期間以内に受信された医療従事者IDおよび中継装置IDに基づいて、中継装置特定部43により特定された中継装置300において所定の期間以内に受信された医療従事者IDに対応する医療従事者を、ある時点において受信された検出装置IDで示される吐出操作検出装置100から所定範囲内の場所(近傍場所)にいると想定される医療従事者として特定する。
図5は、この近傍存在者特定部44の動作を説明するための図である。図5は、3人の医療従事者A〜Cが携帯する無線送信装置200から医療従事者IDが定期的に送信されるタイミングと、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングとを時間軸の直線によって模式的に示している。通信部41が検出装置IDを受信したタイミングTDは、吐出操作検出装置100の吐出操作が検出された時点であり、図3の例でいうとレコードR6の受信情報が記録されたタイミングに相当する。
図5の例では、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングTDを基準として、それより早い方に−Δt時間および遅い方に+Δt時間の範囲を所定の期間として設定している。所定の期間は、無線送信装置200が医療従事者IDを送信するインターバルの時間間隔よりも短い期間が設定される。近傍存在者特定部44は、この所定の期間以内に医療従事者IDが受信されている医療従事者であって、当該医療従事者IDと共に受信されている中継装置IDが、中継装置特定部43により特定された中継装置300の中継装置IDと同じとなっている医療従事者を、吐出操作された吐出操作検出装置100から所定範囲内の近傍場所にいると想定される医療従事者として特定する。
図5の場合、医療従事者Cは、所定の期間以内に医療従事者IDが受信されていないので、吐出操作された吐出操作検出装置100から所定範囲内の近傍場所いる医療従事者としては特定されない。一方、医療従事者A,Bは、所定の期間以内に医療従事者IDが受信されている。このうち、医療従事者IDと共に受信されている中継装置IDが、中継装置特定部43により特定された中継装置300の中継装置IDと同じとなっている医療従事者が、吐出操作された吐出操作検出装置100の近傍場所にいる医療従事者として特定される。
図3に即して説明すると、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングTDは、レコードR6の受信情報が記録されたタイミングである。近傍存在者特定部44は、このレコードR6の受信時刻を基準として、それより早い方に−Δt時間および遅い方に+Δt時間の範囲を所定の期間として、この所定の期間以内に受信されたレコードの中から、レコードR6の中継装置IDと同じ中継装置IDが記録されているレコードR2,R7を抽出する。そして、こうして抽出したレコードR2,R7に含まれている医療従事者ID“S003”、“S026”に対応する医療従事者を、吐出操作された吐出操作検出装置100から所定範囲内の近傍場所にいると想定される医療従事者として特定する。
例えば、図4(a)に示す状態では、吐出操作が行われた消毒用ボトル10と同スペースの病室R1の中にいる医療従事者Aは、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100の近傍場所にいると想定される医療従事者として特定される。吐出操作が検出されてその検出装置IDが中継装置300の中継装置IDと共に管理装置400の受信情報記憶部403に記録された時点から所定の期間以内に、医療従事者Aの医療従事者IDが、無線送信装置200から送信されて同じ中継装置300の中継装置IDと共に管理装置400の受信情報記憶部403に記録されているからである。
また、図4(b)に示す状態において、吐出操作が行われた消毒用ボトル10と同スペースの病室R1の中にはいないが、当該病室R1の出入口付近にいる医療従事者Bも、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100の近傍場所にいると想定される医療従事者として特定される。吐出操作が検出されてその検出装置IDが中継装置300の中継装置IDと共に管理装置400の受信情報記憶部403に記録された時点から所定の期間以内に、医療従事者Bの医療従事者IDが、無線送信装置200から送信されて病室R1内の同じ中継装置300の中継装置IDと共に管理装置400の受信情報記憶部403に記録されているからである。
なお、ここでは、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングTDを基準として、それより早い方に−Δt時間および遅い方に+Δt時間の範囲を所定の期間として設定しているが、タイミングTDより早い方に−Δt時間の範囲のみを所定の期間として設定するようにしてもよいし、遅い方に+Δt時間の範囲のみを所定の期間として設定するようにしてもよい。前者の場合は、通信部41が検出装置IDを受信した時点で直ちに近傍存在者特定部44の処理を行うことができる。この場合は、医療従事者が消毒用ボトル10に近づいている途中で医療従事者IDが送信された後、何れかの医療従事者が消毒用ボトル10を操作したようなケースにおいて、操作された吐出操作検出装置100の近傍にいる医療従事者を特定することが可能である。
一方、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングTDよりも遅い方に+Δt時間の範囲も所定の期間として設定する場合は、何れかの医療従事者が消毒用ボトル10を操作した後、医療従事者が消毒用ボトル10から遠ざかっている途中で医療従事者IDが送信されたケースにおいても、操作された吐出操作検出装置100の近傍にいる医療従事者を特定することが可能である。この場合は、通信部41が検出装置IDを受信した時点から+Δt時間が経過するのを待って近傍存在者特定部44の処理を行う必要がある。ただし、手指衛生の実施者を直ちに特定しなければならない特別な理由がない限り、+Δt時間が経過するのを待つことになんら問題はない。
同スペース存在者特定部45は、近傍存在者特定部44により特定された近傍の医療従事者が複数か否かを判定し、複数である場合は、当該複数の医療従事者のそれぞれについて、中継装置特定部43により特定された中継装置300を含めて1以上の中継装置300から医療従事者IDと共に受信された1以上の中継装置IDに基づいて、第1のデータベース情報取得部42により取得された情報により示される施設のレイアウト上で医療従事者が存在する場所を推定する。そして、当該推定した場所が検出装置IDで示される吐出操作検出装置100と同スペース内となっている医療従事者を特定する。
例えば、図4(b)のように2人の医療従事者A,Bが吐出操作検出装置100の近傍にいる医療従事者として近傍存在者特定部44により特定された場合、同スペース存在者特定部45は、2人の医療従事者A,Bのうち、吐出操作検出装置100と同スペース内にいる医療従事者を特定する。図4(b)の場合、同スペース存在者特定部45は、医療従事者Aを吐出操作検出装置100と同スペース内にいる医療従事者として特定する。
このように、医療従事者が吐出操作検出装置100と同スペース内にいるかどうかを特定するに当たって、医療従事者の存在場所を推定する必要がある。ここで、図4(a)、(b)に示す医療従事者Aのように、同じ時刻に医療従事者IDが1つのレコードにしか記録されない場合、同スペース存在者特定部45は、そのレコード内に医療従事者IDと共に記録されている中継装置IDに対応する中継装置300の設置場所を、第1のデータベース情報取得部42により取得されたレイアウト情報および設置場所情報に基づいて特定し、当該特定した中継装置300の設置場所を医療従事者の存在場所として推定する。このようにして特定される中継装置300は、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100と同スペース内にあるものとして中継装置特定部43により特定されたものである。よって、この場合、医療従事者Aの存在場所は、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100と同スペース内であると言える。
一方、図4(b)に示す医療従事者Bのように、同じ時刻に同じ医療従事者IDが複数のレコードに記録されている場合、同スペース存在者特定部45は、それら複数のレコード内において同じ医療従事者IDと共に記録されている異なる中継装置IDに対応する複数の中継装置300の設置場所から、医療従事者の存在場所を推定する。例えば、同スペース存在者特定部45は、第1のデータベース情報取得部42により取得されたレイアウト情報および設置場所に基づいて、複数の中継装置300の設置場所の重心位置を計算する。そして、当該計算した重心位置がレイアウト上のどこに該当するのかを特定し、当該特定した位置を医療従事者の存在場所として推定する。
医療従事者の存在場所を推定するために、複数の中継装置300が無線送信装置200から医療従事者IDを受信したときの受信電界強度を利用するようにしてもよい。例えば、複数の中継装置300のうち、受信電界強度が最も大きい中継装置300の設置場所を医療従事者の存在場所として推定するようにしてもよい。あるいは、受信電界強度を利用した公知の三点測位法により、3つの中継装置300の設置場所と、当該3つの中継装置300での受信電界強度から算出される3つの距離とに基づいて設定される3つの範囲が交わる場所を医療従事者の存在場所として推定するようにしてもよい。
このようにして、図4(b)の状態において医療従事者A,Bの存在場所を推定した場合、医療従事者Aの存在場所は、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100と同スペース内にあることが推定される一方、医療従事者Bの存在場所は、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100と同スペース内にはないことが推定される。よって、同スペース存在者特定部45は、近傍存在者特定部44により特定された2人の医療従事者A,Bのうち、推定した存在場所が吐出操作検出装置100と同スペース内となっている方の医療従事者Aを特定する。
なお、中継装置300の受信電界強度を利用して医療従事者の存在場所を推定する場合、中継装置300は、受信電界強度を検出するための回路構成を備え、医療従事者IDおよび中継装置IDと共に、検出した受信電界強度の情報も管理装置400に送信する。管理装置400では、受信した受信電界強度の情報もレコードの1項目として受信情報記憶部403に記憶する。同スペース存在者特定部45は、受信情報記憶部403に記憶されている受信電界強度の情報を利用して医療従事者の存在場所を推定する。
第2のデータベース情報取得部46は、第2のデータベースから所持情報を取得する。携帯用非所持者特定部47は、同スペース存在者特定部45により特定された同スペース内の医療従事者が複数か否かを判定し、複数である場合は、第2のデータベース情報取得部46により取得された情報に基づいて、携帯型消毒用ボトルを所持していない医療従事者を特定する。すなわち、携帯用非所持者特定部47は、同スペース存在者特定部45により吐出操作検出装置100と同スペース内にいるものとして特定された複数の医療従事者に対応する医療従事者IDのうち、第2のデータベースに記憶されている医療従事者IDと異なる医療従事者IDに対応する医療従事者を、携帯型消毒用ボトルを所持していない医療従事者として特定する。
実施医療従事者特定部48は、近傍存在者特定部44により特定された近傍の医療従事者が1人である場合は、その近傍の医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定する。また、実施医療従事者特定部48は、近傍存在者特定部45により特定された近傍の医療従事者が複数人である場合で、かつ、同スペース存在者特定部46により特定された同スペース内の医療従事者が1人である場合は、その同スペース内の医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定する。
また、実施医療従事者特定部48は、近傍存在者特定部45により特定された近傍の医療従事者が複数人である場合で、かつ、同スペース存在者特定部46により特定された同スペース内の医療従事者が複数人である場合は、携帯用非所持者特定部47により特定された医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定する。
情報記録部49は、実施医療従事者特定部48により手指衛生の実行者として特定された医療従事者を、実行時刻、実行場所に関する情報と共に履歴情報として手指衛生管理情報記憶部404に記憶させる。すなわち、情報記録部49は、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100の検出装置IDが記録されているレコードR6の中で、受信時刻を手指衛生の実行時刻として、検出装置IDに対応する吐出操作検出装置100の設置場所を手指衛生の実行場所として、施医療従事者特定部48により手指衛生の実行者として特定された医療従事者の医療従事者IDと共に1つのレコード構成し、当該レコードの情報を手指衛生管理情報記憶部404に記憶させる。
なお、通信部41がボトルIDを含む情報を中継装置300から受信した場合は、情報記録部49は、第2のデータベース情報取得部46により取得される情報に基づいて、ボトルIDに対応する医療従事者IDを特定し、当該特定した医療従事者IDと、受信情報が記録されたレコードに含まれる受信時刻(手指衛生の実行時刻)と、ボトルIDとを含めて1つのレコード構成し、当該レコードの情報を手指衛生管理情報記憶部404に記憶させる。
図6は、以上のように構成した本実施形態による管理装置400の動作例を示すフローチャートである。管理装置400は、図6に示すフローチャートの処理を常時繰り返し実行している。なお、この図6では、管理装置400がボトルIDを受信する場合の動作は省略している。
まず、通信部41は、中継装置300から情報を受信したか否かを判定する(ステップS1)。中継装置300から情報を受信していない場合は(ステップS1:No)、ステップS1の判定を繰り返す。一方、通信部41が情報を受信した場合(ステップS1:Yes)、受信情報記憶部403は、1つのレコードを追加して、通信部41が受信した情報を記憶する(ステップS2)。
次いで、中継装置特定部43は、受信情報記憶部403に記憶された受信情報の中に、吐出操作検出装置100の検出装置IDが含まれるか否かを判定する(ステップS3)。すなわち、ここでは、何れかの吐出操作検出装置100において吐出操作が検出されたか否かを判定している。受信情報の中に検出装置IDが含まれていない場合(ステップS3:No)、無線送信装置200から定期的に送信される医療従事者IDを受信した場合に相当するので、以降の処理はせず、処理はステップS1に戻る。
一方、受信情報の中に検出装置IDが含まれている場合(ステップS3:Yes)、中継装置特定部43は、当該受信情報に含まれる中継装置IDと、第1のデータベース情報取得部42により第1のデータベース記憶部401から取得される情報とに基づいて、検出装置IDで示される吐出操作検出装置100と同スペース内にある中継装置300を特定する(ステップS4)。
次いで、近傍存在者特定部44は、ステップS1で通信部41が検出装置IDを受信した時点を基準として所定の期間以内に受信された医療従事者IDおよび中継装置IDに基づいて、中継装置特定部43により特定された中継装置300において所定の期間以内に受信された医療従事者IDに対応する医療従事者を、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100から所定範囲内の近傍場所にいると想定される医療従事者として特定する(ステップS5)。なお、通信部41がステップS1で検出装置IDを受信した時点よりも遅い方に+Δt時間の範囲も含めて所定の期間を設定している場合は、通信部41が検出装置IDを受信した時点から+Δt時間が経過するのを待って(その間もステップS1〜S3の処理を実行する)、近傍存在者特定部44の処理を行う。
ここで、同スペース存在者特定部45は、近傍存在者特定部44により特定された近傍の医療従事者が複数か否かを判定する(ステップS6)。近傍の医療従事者が複数ではないと判定された場合(ステップS6:No)、つまり近傍の医療従事者が1人の場合、実施医療従事者特定部48は、近傍存在者特定部44により特定された医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定する(ステップS7)。その後、処理はステップS13に進む。
一方、近傍の医療従事者が複数であると同スペース存在者特定部45により判定された場合(ステップS6:Yes)、同スペース存在者特定部45は、当該複数の医療従事者のそれぞれについて、中継装置特定部43により特定された中継装置300を含めて1以上の中継装置300から医療従事者IDと共に受信された1以上の中継装置IDに基づいて、第1のデータベース情報取得部42により取得された情報により示される施設のレイアウト上で医療従事者が存在する場所を推定し、当該推定した場所が検出装置IDで示される吐出操作検出装置100と同スペース内となっている医療従事者を特定する(ステップS8)。
さらに、携帯用非所持者特定部47は、同スペース存在者特定部45により特定された同スペース内の医療従事者が複数か否かを判定する(ステップS9)。ここで、同スペース内の医療従事者が複数ではないと判定された場合(ステップS9:No)、実施医療従事者特定部48は、同スペース存在者特定部46により特定された同スペース内の医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定する(ステップS10)。その後、処理はステップS13に進む。
一方、同スペース内の医療従事者が複数であると判定された場合(ステップS9:Yes)、携帯用非所持者特定部47は、第2のデータベース情報取得部46により取得される情報に基づいて、携帯型消毒用ボトルを所持していない医療従事者を特定する(ステップS11)。この場合、実施医療従事者特定部48は、携帯用非所持者特定部47により特定された医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定する(ステップS12)。その後、処理はステップS13に進む。
ステップS13において、情報記録部49は、ステップS7,S10またはS12で実施医療従事者特定部48により手指衛生の実行者として特定された医療従事者を、実行時刻、実行場所に関する情報と共に履歴情報として手指衛生管理情報記憶部404に記憶させる。これにより、図6に示すフローチャートの1回の処理が終了する。
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、医療従事者により吐出操作された消毒用ボトル10に装着されている吐出操作検出装置100から中継装置300を介して管理装置400に送信される検出装置IDおよび中継装置IDと、医療従事者が携帯する無線送信装置200から中継装置300を介して管理装置400に送信される医療従事者IDおよび中継装置IDのうち、管理装置400が検出装置IDを受信した時点を基準として所定の期間以内に受信された医療従事者IDおよび中継装置IDとに基づいて、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100から所定範囲内の場所にいると想定される近傍の医療従事者を特定して、当該近傍の医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定することができる。これにより、医療従事者が携帯する無線送信装置200から間欠的に医療従事者IDが送信されるように構成された手指衛生行動検出システムにおいても、手指衛生を実行した医療従事者を特定することができる。
また、本実施形態によれば、以上のようにして特定された近傍の医療従事者が複数人いる場合であっても、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100と同スペースにある中継装置300を含めて1以上の中継装置300から医療従事者IDと共に受信された1以上の中継装置IDと、第1のデータベース情報取得部42により取得された情報とに基づいて、施設のレイアウト上で医療従事者が存在する場所が推定され、当該推定された場所が吐出操作検出装置100と同スペース内となっている医療従事者を特定して、当該同スペース内の医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定することができる。これにより、ある医療従事者によって消毒用ボトル10の吐出操作により手指衛生が実行されたときに、その消毒用ボトル10の近くに別の医療従事者が存在していても、実際に消毒用ボトル10の吐出操作を行った医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定することができる。
さらに、本実施形態によれば、以上のようにして特定された同スペースに存在する医療従事者が複数人いる場合であっても、第2のデータベース情報取得部46により取得された情報に基づいて、携帯型消毒用ボトルを所持していない医療従事者を特定して、当該医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定することができる。携帯型消毒用ボトルを所持している医療従事者であれば、固定の場所に設置された消毒用ボトル10ではなく、自身が所持している携帯型消毒用ボトルを操作すると考えられるからである。これにより、ある医療従事者によって消毒用ボトル10の吐出操作により手指衛生が実行されたときに、その消毒用ボトル10と同スペースに別の医療従事者が存在していても、実際に消毒用ボトル10の吐出操作を行った医療従事者を手指衛生を実行した医療従事者として特定することができる。
以上により、本実施形態によれば、医療従事者が携帯する無線送信装置200から間欠的に信号が送信されるように構成されたシステムにおいても、何れかの医療従事者によって手指衛生が実行されたときに、それがどの医療従事者によって行われたのかを正確に特定することができる。
なお、上記実施形態では、図5に示したように、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングTDを基準として、それより早い方に−Δt時間および遅い方に+Δt時間の範囲を所定の期間として設定し、この所定の期間以内に医療従事者IDが受信されている医療従事者を吐出操作検出装置100の近傍場所にいる医療従事者として特定する例を示したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ある医療従事者に関して、通信部41が検出装置IDを受信したタイミングTDの直前で医療従事者IDと共に受信した中継装置IDに対応する中継装置300の設置場所と、タイミングTDの直後に医療従事者IDと共に受信した中継装置IDに対応する中継装置300の設置場所とに基づいて、医療従事者IDが送信される1回のインターバル間に医療従事者が移動した軌跡を求める。この移動軌跡は、例えば、2つの中継装置300の設置場所の間を直線で結ぶことによって生成する。そして、吐出操作が検出された吐出操作検出装置100の設置場所から所定の距離以内の場所に移動軌跡の少なくとも一部が存在する場合に、その移動軌跡に係る医療従事者を吐出操作検出装置100の近傍場所にいる医療従事者として特定するようにしてもよい。
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。