JP2020056330A - 圧縮機用摺動部材 - Google Patents

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洋司 佐藤
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Satoru Fukuzawa
覚 福澤
法和 宗田
Norikazu Soda
法和 宗田
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Abstract

【課題】圧縮機に使用され、他部材と摺接する圧縮機用摺動部材において、耐荷重性と低摩擦特性を兼ね備え、油膜が形成されにくい潤滑状態でも優れた耐摩耗性を有する圧縮機用摺動部材を提供する。【解決手段】圧縮機用摺動部材は、可変容量型アキシャルピストンポンプにおけるピストンストロークを調整するクレイドル3に摺接し、このクレイドル3を揺動可能に保持するクレイドル受1であり、クレイドル3に対する摺接面に、金属基材1a上に形成された摺動層1bを有し、摺動層1bは、表面にフッ素樹脂を含むフッ素樹脂層を有し、フッ素樹脂層は、少なくとも表面近傍が架橋された架橋フッ素樹脂層であり、最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%である。【選択図】図2

Description

本発明は、圧縮機用摺動部材に関し、特に、クレイドルの傾角を調整することにより吐出容量を変更可能な可変容量型ピストンポンプにおけるクレイドル受、および、カーエアコン用スクロールコンプレッサの回転軸を支持する滑り軸受に関する。
例えば、圧縮機の一つである油圧回路の油圧発生源に用いられる可変容量型ピストンポンプとして、クレイドル型ポンプ(以下、単にポンプともいう)が存在する。同ポンプにおいては、ピストンを収容するシリンダブロックが、回転軸と共に一体的に回転される。クレイドルはクレイドルガイドにより傾動可能に摺接支持されており、上記ピストンはその一端部に連結されたクレイドルを介して上記クレイドルに押接されている。従って、同ピストンは、回転軸の回転に伴いクレイドルの傾角に応じて規定されたストロークを往復動されて、ポンプ作用を奏するようになっている。そして、このピストンストローク、つまり、ポンプの吐出容量は、上記クレイドルの傾角を調整することにより変更される。
ところが、例えば、アルミニウム材(アルミニウム合金を含む)よりなるクレイドルを、同じくアルミニウム材よりなるクレイドルガイドに直接的に摺接支持させる構成では、両者の摺接磨耗や焼き付き等の問題が生じる。このため、従来は、クレイドルとクレイドルガイドとの間に合成樹脂製のスラストブッシュを介在させていた。
例えば、特許文献1には、スラストブッシュとして、摺動面に樹脂膜を施した金属製スラストブッシュや、ナイロン(ポリアミド樹脂)、ポリアセタール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂などの摺動性樹脂からなるスラストブッシュが開示されている。また、特許文献2には、鉄製基材の表面に銅系の焼結膜を形成したものや、その焼結膜表面に更に樹脂膜を施したスラストブッシュが開示されている。
一方、圧縮機として自動車の空調装置などに用いられるコンプレッサは、斜板式やスクロール式などが使用されている。近年では、ハイブリッド車や電気自動車用の圧縮機として電動で駆動されるスクロールコンプレッサが開発されている。スクロールコンプレッサの駆動軸の支持構造として滑り軸受が使用されることがある。滑り軸受は投影面積が大きいため高負荷容量と高剛性が得られ、かつ収容スペースが少容量で済む利点を有している。そのため、滑り軸受は、希薄潤滑下や高速回転下での運転等の苛酷な条件で使用するスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造に好適である。
スクロールコンプレッサのブラケット内は、冷媒とともに霧状の潤滑油が充填されている。スクロールコンプレッサにおいては、この冷媒と霧状の潤滑油との混合物がスクロールコンプレッサによって圧縮および膨張され、この混合物によって滑り軸受の潤滑が行われている。例えば、スクロールコンプレッサの滑り軸受の摺動部には、樹脂被膜が形成されたものが知られている。例えば、特許文献3の滑り軸受の摺動部には、潤滑成分として黒鉛やPTFE粒子などを配合したポリイミド(PI)樹脂やポリアミドイミド(PAI)樹脂などの樹脂被膜が形成されている。
実用新案登録第2559510号公報 実用新案登録第2584135号公報 特許公開第2012−197782号公報
ところで、上記クレイドル型ポンプにおけるクレイドルは、クレイドルガイドに対して10MPaの高面圧で接触するため、特許文献1に記載のクレイドルガイド(スラストブッシュ)では樹脂膜による耐荷重性が満足できないおそれがある。一方で、特許文献2に記載のクレイドルガイドは低摩擦特性が十分に発揮できないおそれがある。
また、スクロールコンプレッサにおいては、運転効率の低下を防ぐために潤滑油として動粘度が非常に低い潤滑油が用いられている。しかしながら、動粘度の低い潤滑油は油膜を形成しにくいため、滑り軸受と駆動軸との間に油膜切れが起こりやすい。その結果、摺動被膜に過度な摩耗が生じ、駆動軸と滑り軸受間で焼付きが生じるおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、圧縮機に使用され、他部材と摺接する圧縮機用摺動部材において、耐荷重性と低摩擦特性を兼ね備え、油膜が形成されにくい潤滑状態でも優れた耐摩耗性を有する圧縮機用摺動部材を提供することを目的とする。
本発明の圧縮機用摺動部材は、圧縮機に用いられる圧縮機用摺動部材であって、他部材との摺接面に、金属基材上に形成された摺動層を有し、上記摺動層は、表面にフッ素樹脂を含むフッ素樹脂層を有し、上記フッ素樹脂層は、少なくとも表面近傍が架橋された架橋フッ素樹脂層であり、最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%であることを特徴とする。
上記摺動層は、上記金属基材の表面に形成される耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂を含む下地層と、この下地層表面に形成される第二のフッ素樹脂を含む第二のフッ素樹脂層とからなり、上記耐熱性樹脂は、炭素原子と共に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子の少なくとも1つの原子を高分子構造の少なくとも主鎖に含む樹脂であり、上記第二のフッ素樹脂層が上記架橋フッ素樹脂層であることを特徴とする。
上記耐熱性樹脂が、PAI樹脂またはポリエーテルサルホン(PES)樹脂であることを特徴とする。
上記架橋フッ素樹脂層に含まれるフッ素樹脂がPTFE樹脂であることを特徴とする。
上記圧縮機用摺動部材が、可変容量型アキシャルピストンポンプにおけるピストンストロークを調整するクレイドルに摺接し、このクレイドルを揺動可能に保持するクレイドル受であり、上記クレイドルに対する摺接面に上記架橋フッ素樹脂層を有することを特徴とする。
上記圧縮機用摺動部材が、駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏芯公転するスクロールコンプレッサにおいて、上記駆動軸を支持する滑り軸受であり、上記駆動軸に対する摺接面に上記架橋フッ素樹脂層を有することを特徴とする。
本発明の圧縮機用摺動部材は、他部材との摺接面に摺動層を有し、該摺動層は、その表面に、少なくとも表面近傍が架橋され、最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%である架橋フッ素樹脂層を有するので、耐荷重性と低摩擦特性を兼ね備え、また、油膜が形成されにくい潤滑状態でも優れた耐摩耗性を発揮することができ、過度な架橋による被膜の剥離などを抑制できるため、長時間の低摩擦特性を継続できる。
摺動層は、金属基材の表面に形成される耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂を含む下地層と、この下地層表面に形成される架橋フッ素樹脂層からなるので、摺動層と金属基材との密着性に優れ、耐剥離性を確保することができる。特に、耐熱性樹脂として、PAI樹脂またはPES樹脂を用いるので、金属基材との密着性を向上でき、長期間耐摩耗性、摺動特性に優れる。
上記圧縮機用摺動部材が、クレイドルを揺動可能に保持するクレイドル受であり、クレイドルに対する摺接面に架橋フッ素樹脂層を有するので、摺動特性が優れるとともに耐摩耗性を確保することができ、摺動特性と耐摩耗性の両方を兼ね備える。
上記圧縮機用摺動部材が、スクロールコンプレッサにおける駆動軸を支持する滑り軸受であり、駆動軸に対する摺接面に架橋フッ素樹脂層を有するので、摺動被膜の耐摩耗性を向上することができ、油膜が形成されにくい潤滑状態となっても滑り軸受の摺動被膜が過度に摩耗することなく、焼き付きを抑制できる。
可変容量型アキシャルピストンポンプの縦断面図である。 クレイドルガイドの分解斜視図である。 クレイドルガイドの断面図である。 図3の摺動層の断面図である。 スクロールコンプレッサの概略断面図である。 本発明の圧縮機用摺動部材の一例を示す斜視図である。 図6の摺動層の断面図である。 架橋PTFE樹脂などのNMRチャートの拡大図である。 往復動試験の概略図である。 ラジアル試験の概略図である。
本発明の圧縮機用摺動部材の一例として、クレイドル受について図1〜3に基づいて説明する。可変容量型アキシャルピストンポンプのクレイドル受1は、ピストン2のストロークを調整するクレイドル3に摺接し、このクレイドル3が揺動可能であるように保持する摺動部材である。クレイドル受1の基材の表面側、すなわちクレイドル3に対する摺接面には、後述するように架橋フッ素樹脂層が設けられている。このようなクレイドル受1は2個一組でクレイドルガイド4に保持されている。
図1に示すように、可変容量型アキシャルピストンポンプは、接合された一対のハウジング5、6の端壁間に回転軸7が回転可能に支持されており、回転軸7上にはシリンダブロック8が相対回転不能に支持されている。回転軸7と一体的に回転するシリンダブロック8内には複数のピストン2が回転軸7の軸方向へスライド変位可能に収容されており、シリンダブロック8内のピストン収容室8aには、回転軸7の回転に連動して弁板9に形成された円弧状の吸入ポート9a及び吐出ポート9bと交互に接続することになる。これにより作動油が吸入ポート9aから各ピストン収容室8a内へ吸入され、回転軸7と共に回転したシリンダブロック8におけるピストン収容室8a内の作動油が、吐出ポート9bへ吐出される。
押圧バネ10は、シリンダブロック8をクレイドル3側に付勢している。これにより回転軸7の周りにおいてリテーナ11に保持されたアルミニウム材からなるシュー12がクレイドル3の平面部と密接し、シュー12に嵌められたピストン2は、回転軸7の回転に伴ってクレイドル3の傾角に応じたストロークで往復動される。なお、クレイドル3の傾角は、ハウジング5内の押圧バネ13の押圧力と、油圧制御装置14によって調整されるシリンダ15からの油圧によって常時適正な角度に制御されている。
図1および図2に示すように、アルミニウム合金製のハウジング5内にはクレイドルガイド4が2個一組で固定して設けられており、2つのクレイドルガイド4の間に回転軸7がクレイドル3の軸孔を貫通して配置されている。2個一組のクレイドルガイド4には、それぞれクレイドル受の支持面4a、4bが円弧面状に形成され、その上に2個一組のクレイドル受1、1がクレイドル受の支持面4a、4bからずれないように対の凹部4cと凸部1cの嵌め合わせで固定されている。クレイドル3は、例えば珪素含有アルミニウム合金で形成され、その背面には各クレイドル受の支持面4a、4bに対応する一対の円弧面状の摺接部3a、3bが突設されている。両摺接部3a、3bは一対のクレイドル受1、1を介してその支持面4a、4bに接するように組み付けられる。クレイドル受1、1の湾曲面は、その支持面4a、4bの円弧面形状に対応して同じ形状に形成されている。
クレイドル受1を形成する金属基材1aは、S45C、SPCC等の鋼板で形成されている。図3に示すように、クレイドル受1の金属基材1aのクレイドルが摺動する摺動面には、表面が架橋フッ素樹脂層からなる摺動層1bが形成されている。この発明に使用する潤滑性被膜を形成する架橋フッ素樹脂層について、以下に説明する。
図4には、図3のA部分の拡大図である摺動層の断面図を示す。図4において、摺動層1bは、金属基材1aの表面に形成された下地層1dと、この下地層1dの表面に形成された架橋フッ素樹脂層1eとで構成される。架橋フッ素樹脂層1eに含まれるフッ素樹脂は、少なくとも表面近傍が架橋されており、該架橋フッ素樹脂層は最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%である。この場合、架橋フッ素樹脂層は、表面より下地層との境界面に向かってフッ素樹脂の架橋率が低くなる傾斜層とすることができる。
図4に示す金属基材1aは、下地層1d側の表面が粗面化処理により粗くなっている。粗面化処理としては、ショットブラスト法などの機械的粗面化法、グロー放電やブラズマ放電処理などの電気的粗面化法、アルカリ処理などの化学的粗面化法などが採用できる。また、金属基材1a上に金属多孔質層を介して、摺動層を形成する構成としてもよい。金属多孔質層は、例えば金属粉末(鉄粉や銅粉など)を固化させる焼結法や、溶射法などによって形成される。用いる金属粉末には、鉄系、銅系、ニッケル系、モリブデン系、アルミニウム系およびこれらを複合したものを用いることができる。特に銅合金粉末の焼結層、溶射層が加工性および密着性に優れるため好ましい。金属基材の表面を粗面化したり、多孔質層を設けることで、アンカー効果により物理的に密着強度を上昇させ、摺動層を金属基材に強固に密着させることができる。
下地層1dは、耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂を含む混合物層であり、金属基材1aと架橋フッ素樹脂層1eとの密着性を向上させるプライマー層である。なお、下地層1dに含まれる第一のフッ素樹脂の架橋については特に限定されない。例えば、境界面の近傍に存在する第一のフッ素樹脂のみが架橋された構造でもよい。
耐熱性樹脂は、炭素原子と共に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子の少なくとも1つの原子を高分子構造の少なくとも主鎖に含む樹脂である。また、下地層および上層膜の焼成時において熱分解しない樹脂である。ここで熱分解しないとは、下地層および上層膜を焼成する温度および時間内において、熱分解を開始しない樹脂である。また耐熱性樹脂は、金属基材との密着性に優れた官能基および第一のフッ素樹脂とも反応する官能基を分子主鎖内または分子端部に有する樹脂であることが好ましい。
耐熱性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、PAI樹脂、PI樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミダゾール樹脂、PES樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。また、フッ素樹脂が塗膜形成時の収縮を防ぐウレタン樹脂、アクリル樹脂を併用することができる。
上記耐熱性樹脂の中でも、耐熱性、耐摩耗性および下地である金属基材との結着性に優れることから、PAI樹脂またはPES樹脂を用いることが好ましい。PAI樹脂の中でも、イミド結合、アミド結合が芳香族基を介して結合している芳香族系のPAI樹脂が好ましい。芳香族系PAI樹脂であると、下地の金属基材との結着性に優れ、かつ、得られる被膜の耐熱性が特に優れる。
第一のフッ素樹脂は、下地層を形成する水系塗布液に粒子状に分散できる樹脂であれば使用できる。第一のフッ素樹脂としては、PTFE粒子、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、PFAという)粒子、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPという)粒子、またはこれらの2種以上が好ましく使用できる。
下地層を形成する水系塗布液には、耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂以外に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン界面活性剤、カーボンブラックなどの無機顔料、N−メチル−2−ピロリドンなどの水に任意に混合する非プロトン系極性溶剤、主溶剤としての水が配合される。また、消泡剤、乾燥剤、増粘剤、レベリング剤、ハジキ防止剤などを配合できる。下地層を形成する水系塗布液としては、例えば、ダイキン工業株式会社製プライマー塗料EKシリーズ、EDシリーズが挙げられる。
架橋フッ素樹脂層は、下地層の表面に形成され、放射線によりフッ素樹脂の分子鎖同士が架橋反応を起こし、架橋されたフッ素樹脂の層である。第一のフッ素樹脂と第二のフッ素樹脂とは同一であっても異なっていてもよいが、同一のフッ素樹脂を使用することが好ましい。第二のフッ素樹脂としては、PTFE、PFA、FEP、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。これらの樹脂は単独でも混合物としても使用できる。また、これらの上記フッ素樹脂の中でも、耐熱性および摺動性に優れるPTFE樹脂が好ましい。
架橋フッ素樹脂層は、PTFE樹脂粒子を分散させた水分散液を塗布乾燥することにより得られる。例えば、PTFEのエマルションまたはディスパージョン液をスプレー、ディッピングなどで塗布する方法が採用できる。PTFE樹脂粒子を分散させた水分散液としては、例えば、ダイキン工業株式会社製ポリフロン=PTFEエナメルが挙げられる。
架橋フッ素樹脂層の層厚さは2.5〜20μm、好ましくは5〜20μm、より好ましくは5〜15μmの範囲内である。2.5μm未満であると、被膜の密着不良による剥離や初期摩耗により、下地層が露出するおそれがある。特に、層厚さを5〜20μmの範囲とすることで、初期摩耗による下地層の露出を好適に防止できる。
下地層の層厚さは2.5〜20μm、好ましくは5〜20μm、より好ましくは5〜15μmの範囲内である。2.5μm未満であると、被膜の密着不良による剥離や初期摩耗により、金属基材が露出するおそれがある。20μmをこえると、被膜形成時のクラック発生や運転中に剥離して潤滑状態が悪化するおそれがある。層厚さを2.5〜20μmの範囲とすることで、初期摩耗による金属基材の露出を防止でき、運転中における剥離を長期間にわたって防止できる。
以上より、摺動層の層厚さは、5μm以上40μm未満、好ましくは15〜30μmである。層厚さが5μm未満であると、被膜の密着不良による剥離や初期摩耗、局部的な摩耗により、金属基材が露出するおそれがある。40μm以上であると、被膜形成時のクラック発生や運転中に剥離して潤滑状態が悪化するおそれがある。摺動層の層厚さを5μm以上40μm未満の範囲とすることで、初期摩耗による金属基材の露出を防止でき、運転中における剥離を長期間にわたって防止できる。
金属基材表面への摺動層の形成方法について以下説明する。
(1)金属基材の表面処理
金属基材は、摺動層形成前にショットブラスト等を用いて、予め金属基材表面の粗さ(Ra)を1.0〜2.0μmに調整し、その後、石油ベンジン等の有機溶剤内に浸漬させ、5分〜1時間程度超音波脱脂を行なうことが好ましい。
(2)下地層を形成する水系塗布液の塗装
下地層を形成する水系塗布液を塗布前に、水分散液の分散性を向上させるために、ボールミル架台を用いて、例えば40rpmで1時間回転させ再分散する。この再分散した水系塗布液を100メッシュの金網を用いて濾過し、スプレー法(霧化塗装法)を用いて塗布する。
(3)下地層を形成する水系塗布液の乾燥
水系塗布液を塗布後乾燥する。乾燥条件としては、例えば90℃の恒温槽内で30分程度の乾燥が好ましい。
(4)第二のフッ素樹脂層を形成する水系塗布液の塗装
第二のフッ素樹脂層を形成する水系塗布液前に、水分散液の分散性を向上させるために、ボールミル架台を用いて、例えば40rpmで1時間回転させ再分散する。この再分散した水系塗布液を100メッシュの金網を用いて濾過し、スプレー法を用いて塗装する。
(5)第二のフッ素樹脂層を形成する水系塗布液の乾燥
水系塗布液を塗布後乾燥する。乾燥条件としては、例えば90℃の恒温槽内で30分程度の乾燥が好ましい。
なお、下地層および第二のフッ素樹脂層の塗装方法としては、スプレー法以外にディッピング法(浸漬塗装法)、ディスペンド法、ロール法、刷毛塗り法など被膜を形成できるものであれば使用できる。被膜の表面粗さ、塗布形状をできるだけ小さくし、層厚さの均一性や精度を考慮するとスプレー法が好ましい。
(6)焼成
第二のフッ素樹脂層の乾燥後、加熱炉内、空気中で(融点(Tm)+30℃)〜(融点(Tm)+100℃)、5〜40分の範囲内で焼成する。第一および第二のフッ素樹脂がPTFEの場合、好ましくは380℃の加熱炉内で30分間焼成する。
(7)第二のフッ素樹脂層の電子線照射
焼成後の被膜に、放射線を照射して第二のフッ素樹脂層を架橋させる。放射線としては、α線(α崩壊を行なう放射性核種から放出されるヘリウム−4の原子核の粒子線)、β線(原子核から放出される陰電子および陽電子)、電子線(ほぼ一定の運動エネルギーを持つ電子ビーム;一般に、熱電子を真空中で加速してつくる)などの粒子線;γ線(原子核、素粒子のエネルギー準位間の遷移や素粒子の対消滅、対生成などによって放出・吸収される波長の短い電磁波)などの電離放射線を用いることができる。これらの放射線の中でも、架橋効率や操作性の観点から、電子線およびγ線が好ましく、電子線がより好ましい。特に電子線は、電子線照射装置が入手しやすいこと、照射操作が簡単であること、連続的な照射工程を採用することができることなどの利点を有している。
架橋フッ素樹脂層は、少なくとも表面近傍が架橋されており、架橋フッ素樹脂層の最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%である。より好ましくは、平均架橋率が15〜25%である。平均架橋率を9%以上とすることで、架橋による耐摩耗効果が得られやすく、下地層の露出をより防ぐことができる。また、平均架橋率を25%以下とすることで、過度な架橋による被膜の亀裂や剥離などの損傷が起こりにくくできる。また、電子線照射に要する時間も長くなりすぎず、量産性を保つことができる。照射条件は、上記平均架橋率が9〜25%の範囲内となるような照射温度、照射線量、および加速電圧で放射線を照射する。
照射温度は、第二のフッ素樹脂の融点より30℃低い温度から該融点の20℃高い温度以下である。照射温度が第二のフッ素樹脂層の融点より30℃低い温度から該融点の20℃高い温度以下の温度範囲以外ではフッ素樹脂層の架橋が十分に進まない。また、照射雰囲気は架橋を効率的に行なうため、真空引きや不活性ガス注入により照射領域の酸素濃度を低くする必要がある。酸素濃度の範囲は0〜300ppmが好ましい。酸素濃度を以上のような濃度範囲に維持するには操作性やコスト面の観点から窒素ガス注入による不活性雰囲気が好ましい。
本発明の圧縮機としての可変容量型アキシャルピストンポンプは、ハウジング内に収容され、回転軸と一体回転されるシリンダボアを有するシリンダブロックと、シリンダボア内に収容されたピストンと、同ピストンの一端部を受承し、傾角に応じてピストンストロークを規定するクレイドルと、クレイドル受を介しクレイドルをハウジング内において傾動可能に支持するクレイドルガイドとを備え、クレイドルの傾角を調整することにより吐出容量を変更可能な可変容量型ピストンポンプのクレイドル受において、クレイドル受を金属基材で形成し、クレイドルが摺接する摺動面に、架橋フッ素樹脂層を形成した構成を採用した。上記クレイドル受は、架橋フッ素樹脂により摺動特性が優れるとともに耐摩耗性を確保することができるので、摺動特性と耐摩耗性の両方を兼ね備えた可変容量型アキシャルピストンポンプとなる。
本発明の圧縮機用摺動部材の他の例として、自動車用エアコンコンプレッサに用いられる滑り軸受を図5〜図7に基づいて説明する。図5には、スクロールコンプレッサの概略断面図を示す。図5に示すように、スクロールコンプレッサ34は、駆動軸22と旋回スクロール23と固定スクロール24とモータケーシング27とブラケット28とを主に有している。図5の形態のスクロールコンプレッサでは、本発明の滑り軸受21a〜21cが駆動軸を支持しており、これらの滑り軸受が駆動軸の支持構造を構成している。旋回軸受21aは旋回スクロール23と駆動軸22との間に組み付けられており、主軸受21bはブラケット28と駆動軸22の間に組み付けられており、補助軸受21cはモータケーシング27と駆動軸22の間に組み付けられている。
スクロールコンプレッサ34において、モータケーシング27とブラケット28とがボルト30aを介して固定されている。また、ブラケット28と固定スクロール24とがボルト30bを介して固定されている。このモータケーシング27とブラケット28と固定スクロール24とで構成される空間の内部に駆動軸22と旋回スクロール23とが配置されている。
駆動軸22には永久磁石からなるモータ回転子25が固定されている。また、モータケーシング27の内周部にはモータ固定子26が固定されている。駆動軸22は、主軸受21bと補助軸受21cとを介してモータケーシング27とブラケット28とに回転可能に支持されている。駆動軸22は先端にクランク部29を有している。クランク部29は、駆動軸22の軸心から所定の偏心距離dだけ偏心した位置に軸心を有している。
また、旋回スクロール23は旋回軸受21aを介してクランク部29の先端に回転可能に連結されている。旋回スクロール23と固定スクロール24とは互いに対峙するように配置されている。これにより、渦巻き状の圧縮動作室32が形成されている。圧縮動作室32は、旋回スクロール23の偏心公転にともなって、回転軸に対して外周側から内周側へ向けて容積が順次減少するように形成されている。なお、旋回スクロール23と固定スクロール24との間には、旋回スクロール23の自転を防止する自転防止機構33が同一円周方向に沿った複数箇所に配置されている。
次に、スクロールコンプレッサ34の動作について説明する。駆動軸22の回転(自転)にともなって、クランク部29が駆動軸22の軸心を中心として所定の偏心距離を半径とした偏心公転をする。旋回スクロール23は、クランク部29の偏心公転の力を受けて自転しようとする。しかし、旋回スクロール23は、自転防止機構33によって自転することを妨げられる。これにより、旋回スクロール23は、駆動軸22の軸心を中心として上記偏心距離を半径とした偏心公転を行なう。その結果、旋回スクロール23および固定スクロール24の外周側から圧縮動作室32内に流入した気体は、内周側に移送されながら圧縮される。そして高圧となった気体は排出孔31から排出される。
図6に本発明の滑り軸受の一例である旋回軸受の斜視図を示す。図6に示す旋回軸受21aは、円周方向の一部に切断部を有する円筒状のラジアル滑り軸受であり、金属基材である金属板35と、その内径面に摺動層36が形成されている。摺動層36は、その表面に架橋フッ素樹脂層を有する。
図7には、図6のB部分の拡大図である摺動層の断面図を示す。図7において、摺動層36は、金属板35の表面に形成された下地層37と、この下地層37の表面に形成された架橋フッ素樹脂層38とで構成される。架橋フッ素樹脂層38に含まれるフッ素樹脂は、少なくとも表面近傍が架橋されており、該架橋フッ素樹脂層は最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%である。この場合、架橋フッ素樹脂層は、表面より下地層との境界面に向かってフッ素樹脂の架橋率が低くなる傾斜層とすることができる。
図7に示す金属板は、図4に示した金属基材と同様、下地層側の表面が粗面化処理により粗くなっている。また、金属板上に金属多孔質層を介して、摺動層を形成する構成としてもよい。摺動層が金属板に対し優れた接着強度を確保するため、ブラスト処理や化学エッチング処理などで金属板の表面を粗面化したり、鋼基材に金属粉の焼結層、溶射層といった金属多孔質層を形成することが好ましい。また、金属粉の焼結体をそのまま基材として使用してもよい。
図7の摺動層36の構成は、図4の摺動層1bの構成と同様である。下地層37は、耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂を含む混合物層であり、金属板35と架橋フッ素樹脂層38との密着性を向上させるプライマー層である。耐熱性樹脂や第一のフッ素樹脂には、図4の下地層と同様の樹脂を使用できる。耐熱性樹脂としては、PAI樹脂またはPES樹脂を用いることが好ましい。第一のフッ素樹脂としては、PTFE樹脂を用いることが好ましい。
架橋フッ素樹脂層38は、下地層37の表面に形成され、放射線によりフッ素樹脂の分子鎖同士が架橋反応を起こし、架橋されたフッ素樹脂の層である。第一のフッ素樹脂と第二のフッ素樹脂とは同一であっても異なっていてもよいが、同一のフッ素樹脂を使用することが好ましい。第二のフッ素樹脂としては、PTFE、PFA、FEP、ETFE等が挙げられる。これらの樹脂は単独でも混合物としても使用できる。また、これらの上記フッ素樹脂の中でも、耐熱性および摺動性に優れるPTFE樹脂が好ましい。
架橋フッ素樹脂層は、PTFE樹脂粒子を分散させた水分散液を塗布乾燥することにより得られる。PTFE樹脂粒子を分散させた水分散液としては、例えば、ダイキン工業株式会社製ポリフロン=PTFEエナメルが挙げられる。
図7の摺動層における架橋フッ素樹脂層の層厚さや、下地層の層厚さ、摺動層の層厚さは、図4の摺動層で説明した層厚さと同様である。また、図7の摺動層は、上述した摺動層の形成方法(1)〜(7)により形成できる。
図4および図7では摺動層が下地層と架橋フッ素樹脂層とからなる二層構造を例示したが、これに限定されず、例えば摺動層が架橋フッ素樹脂層のみからなる単層構造であってもよい。この場合でも、架橋フッ素樹脂層の最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%であることが好ましい。
本発明の圧縮機としてのスクロールコンプレッサは、駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転するコンプレッサであり、駆動軸は滑り軸受で支持されており、滑り軸受の摺動面に、架橋フッ素樹脂層を形成した構成を採用した。上記滑り軸受は、架橋フッ素樹脂により耐摩耗性を向上することができ、油膜が形成されにくい潤滑状態となっても滑り軸受の摺動層が過度に摩耗することなく、焼き付きを抑制できる。
試験例1
(1)試験片の作成
試験片:鋼製(SPCC製)の金属基材(25mm×50mm)の摺接面に摺動層を形成した。金属基材を脱脂した後、ショットブラストを用いて1.5μmRaに調整し、その後、石油ベンジンに浸漬し、5分程度超音波脱脂を行った。下地層はダイキン社製プライマー塗料(型番:EK−1909S21R)、第二のフッ素樹脂層にはダイキン社製トップ塗料(型番:EK−3700C21R)を用いて、下地層および第二のフッ素樹脂層の層厚さがそれぞれ10μmとなるよう成膜した。各塗料を、上述した、再分散した水系塗布液を濾過して行うスプレー法により塗布した。乾燥時間はそれぞれ90℃の恒温槽内で30分間乾燥し、乾燥後、380℃の加熱炉内で30分間焼成した。
摺動層を形成した試験片を電子線照射装置の加熱プレートに置き、以下の条件で摺動層側から電子線照射を行なった。実施例1〜3および比較例2〜3では、照射条件の照射線量を変更して試験片を得た。なお、比較例1の摺動層には電子線照射を行わなかった。
使用装置:浜松ホトニクス株式会社製 EBエンジン
照射条件:加速電圧 70kV
温度 340℃
照射時のチャンバー内雰囲気 加熱窒素(酸素濃度1000ppm以下)
(2)架橋率の算出
電子線照射を行った各試験片の第二のフッ素樹脂層を、最表面から5μmの深さまで削り取り、削り取った試料を測定試料とした。各測定試料のNMR測定の結果から、架橋率として、最表面(深さ0μm)から深さ5μmまでの平均架橋率を算出した。
架橋率は19F Magic angle Spinning(MAS)核磁気共鳴(NMR)法(High speed magic angle nuclear magnetic resonance)によって測定および算出した。参考文献(Beate Fuchs and Ulrich Scheler., Branching and Cross−Linking in Radiation−Modified Poly(tetrafluoroethylene):A Solid−State NMR Investigation.Macromolecules,33,120−124.2000年)によるとNMR測定の化学シフトから、以下に記す下線部のF原子を帰属することができる。
A:−70ppm : =CF−C 3
B:−82ppm : −CF2−C 3
C:−186ppm : ≡C
ここで、図8(a)に電子線を照射していない未架橋PTFEのNMRスペクトルを示し、図8(b)に1000kGy照射した架橋PTFEのNMRスペクトルを示す。図8に示すように、電子線を照射することで上記Bのシグナルの強度が増加し、上記Aおよび上記Cのシグナルが現れていることが分かる。
上記A〜Cの各シグナルの面積比をそれぞれSA、SB、SCとすると、架橋率は下記式で算出することができる。
Figure 2020056330
上記式は、全ての≡CFの構造の炭素原子からそれぞれ伸びる3本の分子鎖のうち、架橋構造になっていない=CF−CF3および=CF−(CF2)m−CF3の分子鎖を差し引いて、架橋鎖である=CF−(CF2)n−CF=の割合を架橋率として算出している。なお、mおよびnは任意の整数である。図8および上記式を照らし合わせると、電子線を照射することで架橋率が増加することがわかる。
(3)摩擦摩耗(往復動)試験
上記(1)で得た試験片(実施例1〜3、比較例2〜3)、第二のフッ素樹脂層が架橋されていない試験片(比較例1)、ショットブラスト処理および摺動層の形成を行っていない試験片(比較例4)、および銅系焼結金属で摺動部材を作製した試験片(比較例5)を用いて、アルミニウム合金製相手材に対する摺動状態で、往復動試験を実施した。
図9に往復動試験の概略図を示す。図9に示すように、往復動試験機は、試験片50を固定する固定治具41と、相手材42を保持し、針状ころ44を介して固定台45上を往復動する相手材ホルダー43と、カップリング46を介して往復動を相手材ホルダー43に付与する油圧サーボ47と、摩擦力を検出するロードセル48とを備える。試験片50を固定治具41に取り付け、荷重49を印加して下記に示す条件で相手材42に押し付け、相手材42を往復動させたときの両者の摺動面に生じる摩擦係数をロードセル48により測定した。摩擦係数として、初期時および2000回時の摩擦係数を測定した。往復動試験終了後に試験片50を取り出し、摩耗量を測定した。また、試験片の摺動表面の状態を目視により観察した。結果を表1に示す。
<試験条件>
試験機 :往復動試験機
面圧 :12MPa
最大加振速度:2.95m/min
振幅 :±50mm
温度 :室温
潤滑条件 :油潤滑
試験時間 :往復2000回
Figure 2020056330
表1より、実施例1〜3は、往復動試験において、低摩擦であり、耐摩耗量が少なく優れていた。一方、比較例は、摩擦係数が高くなる傾向があった。比較例1および比較例2は基材が露出する結果となった。比較例3は、被膜が剥離する結果となった。これは、架橋率が高くなったため、架橋PTFE層が脆くなり被膜が破壊されたと考えられる。比較例4および比較例5は、金属間接触となったため凝着が生じた。
以上で説明したように、本発明にかかるクレイドル受は、基礎試験により可変容量型ピストンポンプの初期運転での焼付き及び異常摩耗に対する有効な対策であることが確認された。
試験例2
(1)試験片の作成
試験片:鋼製(SPCC製)の金属板の摺接面に摺動層を形成した。金属板を脱脂した後、ショットブラストを用いて1.5μmRaに調整し、その後、石油ベンジンに浸漬し、5分程度超音波脱脂を行った。下地層はダイキン社製プライマー塗料(型番:EK−1909S21R)、第二のフッ素樹脂層にはダイキン社製トップ塗料(型番:EK−3700C21R)を用いて、下地層および第二のフッ素樹脂層の層厚さがそれぞれ10μmとなるよう成膜した。各塗料を、上述した、再分散した水系塗布液を濾過して行うスプレー法により塗布した。乾燥時間はそれぞれ90℃の恒温槽内で30分間乾燥し、乾燥後、380℃の加熱炉内で30分間焼成した。
摺動層を形成した試験片を電子線照射装置の加熱プレートに置き、以下の条件で摺動層側から電子線照射を行なった。実施例4〜6および比較例7〜8では、照射線量を変更して試験片を得た。各試験片の架橋率は、上述の算出方法に基づいて行った。なお、比較例6の摺動層には電子線照射を行わなかった。
使用装置:浜松ホトニクス株式会社製 EBエンジン
照射条件:加速電圧 70kV
温度 340℃
照射時のチャンバー内雰囲気 加熱窒素(酸素濃度1000ppm以下)
比較例9の試験片は、鋼製(SPCC製)の金属板の摺接面に黒鉛およびPAI樹脂からなる樹脂層を形成して得た。黒鉛(日本黒鉛工業社製、球状化黒鉛、CGB10)50質量%、およびPAI樹脂(日立化成工業社製、HPC−9000−21)50質量%となるように溶剤に混合させたコーティング液を金属板に、樹脂層の層厚さが20μmとなるように塗布した。100℃の加熱炉内で30分間、更に150℃の加熱炉内で30分間乾燥し、乾燥後、270℃の加熱炉内で30分間焼成した。
実施例4〜6および比較例6〜9の被膜を形成した試験片をプレス成型機によって、円筒状(内径φ8mm、軸方向長さ6mm、厚さ1mm)に成形した。
(2)摩耗試験
円筒状に成形した各試験片を用いて、ラジアル試験機による摩耗試験を実施した。図10に試験の概略図を示す。図10に示すように、試験片(滑り軸受)51をハウジング52内に組み付け、試験片51の内径部に回転軸53を挿入する。ハウジング51の上部より、荷重54を負荷した。回転軸53は、一対の支持軸受55、55に回転可能に支持されている。この状態で、回転軸53をカップリング56を介し駆動モータ57で回転させ、下記の条件で摩耗試験を実施した。摩耗試験終了後に試験片51を取り出し、被膜の摩耗深さを測定した。結果を表2に示す。
<試験条件>
試験機 :ラジアル試験機
軸 :材質FCD600、硬さ55HRC、表面粗さ0.15μmRa
潤滑条件:無潤滑
面圧 :1MPa
速度 :100m/s
時間 :10min
Figure 2020056330
実施例4〜6は摺動層の摩耗が軽微であり、いずれも摺動層の第二のフッ素樹脂層が残存した結果となった。一方、未架橋の第二のフッ素樹脂層を有する比較例6は被膜が磨滅し基材が露出した。比較例7は第二のフッ素樹脂層の架橋の度合いが小さかったため耐摩耗性が向上しなかった。比較例8は架橋が過度に進んだため、被膜が脆くなり剥離が発生した。比較例9は摩耗が大きく、耐摩耗性が低かった。以上より、架橋率が9〜25%の実施例4〜6の摺動層であれば、コンプレッサ内の潤滑が希薄になった場合でも低摩擦を維持できることが分かった。
本発明の圧縮機用摺動部材は、圧縮機に使用され、他部材と摺接する摺動部材において、耐荷重性と低摩擦特性を兼ね備え、油膜が形成されにくい潤滑状態でも優れた耐摩耗性を有するので、圧縮機用摺動部材として広く使用できる。特に、クレイドルの傾角を調整することにより吐出容量を変更可能な可変容量型ピストンポンプにおけるクレイドル受や、カーエアコン用スクロールコンプレッサの回転軸を支持する滑り軸受に好適である。
1 クレイドル受(圧縮機用摺動部材)
1a 金属基材
1b 摺動層
1c 凸部
1d 下地層
1e 架橋フッ素樹脂層
2 ピストン
3 クレイドル
4 クレイドルガイド
4a 支持面
4b 支持面
4c 凹部
5 ハウジング
6 ハウジング
7 回転軸
8 シリンダブロック
9 弁板
10 押圧バネ
11 リテーナ
12 シュー
13 押圧バネ
14 油圧制御装置
15 シリンダ
21 滑り軸受(圧縮機用摺動部材)
21a 旋回軸受
21b 主軸受
21c 補助軸受
22 駆動軸
23 旋回スクロール
24 固定スクロール
25 モータ回転子
26 モータ固定子
27 モータケーシング
28 ブラケット
29 クランク部
30a ボルト
30b ボルト
31 排出孔
32 圧縮動作室
33 自転防止機構
34 スクロールコンプレッサ
35 金属板
36 摺動層
37 下地層
38 架橋フッ素樹脂層

Claims (6)

  1. 圧縮機に用いられる圧縮機用摺動部材であって、
    他部材との摺接面に、金属基材上に形成された摺動層を有し、
    前記摺動層は、表面にフッ素樹脂を含むフッ素樹脂層を有し、
    前記フッ素樹脂層は、少なくとも表面近傍が架橋された架橋フッ素樹脂層であり、最表面から5μmの深さまでの平均架橋率が9〜25%であることを特徴とする圧縮機用摺動部材。
  2. 前記摺動層は、前記金属基材の表面に形成される耐熱性樹脂および第一のフッ素樹脂を含む下地層と、この下地層表面に形成される第二のフッ素樹脂を含む第二のフッ素樹脂層とからなり、
    前記耐熱性樹脂は、炭素原子と共に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子の少なくとも1つの原子を高分子構造の少なくとも主鎖に含む樹脂であり、
    前記第二のフッ素樹脂層が前記架橋フッ素樹脂層であることを特徴とする請求項1記載の圧縮機用摺動部材。
  3. 前記耐熱性樹脂が、ポリアミドイミド樹脂またはポリエーテルサルホン樹脂であることを特徴とする請求項2記載の圧縮機用摺動部材。
  4. 前記架橋フッ素樹脂層に含まれるフッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレン樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の圧縮機用摺動部材。
  5. 前記圧縮機用摺動部材が、可変容量型アキシャルピストンポンプにおけるピストンストロークを調整するクレイドルに摺接し、このクレイドルを揺動可能に保持するクレイドル受であり、
    前記クレイドルに対する摺接面に前記架橋フッ素樹脂層を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の圧縮機用摺動部材。
  6. 前記圧縮機用摺動部材が、駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏芯公転するスクロールコンプレッサにおいて、前記駆動軸を支持する滑り軸受であり、
    前記駆動軸に対する摺接面に前記架橋フッ素樹脂層を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の圧縮機用摺動部材。
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