JP2020055750A - 癌浸潤または転移阻害核酸薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】浸潤性または転移能のある腫瘍に対して有効な抗腫瘍剤を提供すること。【解決手段】SNORA23遺伝子発現抑制剤を含む抗腫瘍剤が開示される。SNORA23発現抑制剤は、以下の式(I)で表されるヌクレオシド構造:【化1】(式中BaseおよびAは所定の置換基または構造である)を少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩であり得る。SYNE2遺伝子発現抑制剤を含む抗腫瘍剤もまた開示される。【選択図】なし
Description
本発明は、癌浸潤または転移を阻害し得る核酸および当該核酸を含む抗癌剤に関する。
膵癌または膵管腺癌(PDAC)は、浸潤性で転移能が高く、予後が不良である。古より病理学的検討によって、癌細胞の悪性度および予後不良に、核および核小体の異型度が関与することが知られている。
核内に存在する非翻訳RNAである核小体小分子RNA(snoRNA)は、リボソームやリボソームRNAの合成および代謝を制御するハウスキーピング因子として考えられてきたが、近年、癌特異的に異常発現するsnoRNAの報告がなされている。このようなsnoRNAとして、例えば、SNORA42(非特許文献1)、SNORA55(非特許文献2)、h5sn2(非特許文献3)、SNORD44(非特許文献4)およびSNORD50A/B(非特許文献5)が報告されている。
癌の治療において、RNA干渉(RNAi)(例えば、siRNAまたはmiRNAの利用)、アンチセンス法などが核酸利用などの核酸を利用した標的遺伝子発現抑制が試みられている。アンチセンス法においては、種々の人工核酸が利用されている。例えば、アミド架橋核酸(AmNA:特許文献1)を用いたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の癌治療への応用が試みられている(非特許文献6)。
Mei YPら、Oncogene 2012;31:2794-804
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Chang LSら、Biochem Biophys Res Commun 2002;299:196-200
Appaiah HNら、Breast Cancer Res 2011;13:R86
Siprashvili Zら、Nat Genet 2016;48:53-8
Shinkai Kら、Int J Cancer 2016;139:433-45
しかし、核内非翻訳RNAであるsnoRNAを標的遺伝子とする場合、生体内でsnoRNAの発現を抑制可能な核酸剤は未だ確立されていない。そして、PDACのような癌の浸潤および転移を解消するために有効な治療剤が求められている。
したがって、本発明は、核内非翻訳RNAの発現を生体内で抑制可能な核酸剤を提供することを目的とする。さらに、本発明は、癌の浸潤および転移に関与するsnoRNAの発現抑制剤を含む抗腫瘍剤を提供することを目的とする。
本発明は、SNORA23遺伝子発現抑制剤を含む、抗腫瘍剤を提供する。
1つの実施形態では、上記SNORA23遺伝子発現抑制剤は、SNORA23遺伝子と結合し得、該SNORA23遺伝子の発現を抑制する活性を有する核酸分子を含む。
1つの実施形態では、上記核酸分子は、配列番号1に示されるSNORA23遺伝子の塩基配列の一部である標的領域に相補的な配列でありかつ12〜20塩基の長さであるオリゴヌクレオチド、またはその薬理学上許容される塩を含む。
1つの実施形態では、上記オリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩は、糖修飾部分を含む1個または2個以上のヌクレオチドを含む。
1つの実施形態では、上記オリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩は、
以下の式(I)で表されるヌクレオシド構造:
以下の式(I)で表されるヌクレオシド構造:
を少なくとも1つ含み、
ここで、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基、またはα群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
Aは、以下:
ここで、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基、またはα群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
Aは、以下:
で表される二価の基であり、
R1は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し;
R13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であり;
mは、0から2の整数であり;
nは、0から1の整数であり;
Xは、酸素原子、硫黄原子、またはアミノ基である。
R1は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し;
R13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であり;
mは、0から2の整数であり;
nは、0から1の整数であり;
Xは、酸素原子、硫黄原子、またはアミノ基である。
1つの実施形態では、上記式(I)で表されるヌクレオシド構造は、
で表される構造である。
1つの実施形態では、上記式(I)で表されるヌクレオシド構造は、上記式(I’)で表される構造であり、そして該式(I’)において、上記mは0であり、そして上記R1は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、またはベンジル基である。
1つの実施形態では、上記オリゴヌクレオチドは、6〜10塩基のギャップ領域、3〜5塩基の5’ウイングおよび3〜5塩基の3’ウイングからなるギャップマーであり、
該ギャップ領域が、該5’ウイングと該3’ウイングの間に位置づけられ、そして
該5’ウイングおよび該3’ウイングは、上記式(I)で表されるヌクレオシド構造を含む。
該ギャップ領域が、該5’ウイングと該3’ウイングの間に位置づけられ、そして
該5’ウイングおよび該3’ウイングは、上記式(I)で表されるヌクレオシド構造を含む。
1つの実施形態では、上記SNORA23遺伝子発現抑制剤はSYNE2の発現を抑制する。
本発明はまた、SYNE2発現抑制剤を含む、抗腫瘍剤を提供する。
1つの実施形態では、上記SYNE2発現抑制剤は、SYNE2と結合し得、該SYNE2の発現を抑制する活性を有する核酸分子を含む。
1つの実施形態では、上記抗腫瘍剤は、浸潤性または転移能のある腫瘍に対して用いられる抗腫瘍剤である。
1つの実施形態では、上記抗腫瘍剤は、膵癌、肺癌、卵巣癌または胃癌の治療または予防に用いられる抗腫瘍剤である。
本発明はさらに、上記抗腫瘍剤を含有する医薬組成物を提供する。
本発明によれば、核内非翻訳RNAの発現抑制が可能となる。本発明によって、核内非翻訳RNAであるsnoRNAの生体内における発現の抑制が可能となる。さらに、本発明によれば、癌の浸潤または転移に関与するsnoRNAの発現が抑制でき、その抗腫瘍効果に基づく治療剤を提供することができる。
まず、本明細書中で用いられる用語を定義する。
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキル基」は、炭素数1から6の任意の直鎖アルキル基をいい、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、またはn−ヘキシル基をいう。
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルコキシ基」は、炭素数1から6の任意の直鎖アルキル基を有するアルコキシ基を包含する。例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基などが挙げられる。本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルコキシ基」は、炭素数1から6の任意の直鎖または分岐鎖アルキル基を有するアルコキシ基を包含する。例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基などが挙げられる。
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基」は、炭素数1から6の任意の直鎖アルキル基を有するアルキルチオ基を包含する。例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基などが挙げられる。本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基」は、炭素数1から6の任意の直鎖または分岐鎖アルキル基を有するアルキルチオ基を包含する。例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基などが挙げられる。
本明細書において、用語「炭素数1から6のシアノアルコキシ基」は、上記炭素数1から6の直鎖アルコキシ基を構成する少なくとも1つの水素原子がシアノ基で置換された基をいう。
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基」は、アミノ基を構成する水素原子の1つまたは2つが、炭素数1から6の直鎖アルキル基で置換された基を包含する。例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられる。本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基」は、アミノ基を構成する水素原子の1つまたは2つが、炭素数1から6の任意の直鎖または分岐鎖アルキル基で置換された基を包含する。例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などが挙げられる。
本明細書において、用語「分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基」は、炭素数1から7の任意の直鎖アルキル基、炭素数3から7の任意の分岐鎖アルキル基、および炭素数3から7の任意の環状アルキル基を包含する。単に、「低級アルキル基」という場合もある。例えば、炭素数1から7の任意の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、およびn−ヘプチル基が挙げられ、炭素数3から7の任意の分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基などが挙げられ、そして炭素数3から7の任意の環状アルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
本明細書において、用語「分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基」は、炭素数2から7の任意の直鎖アルケニル基、炭素数3から7の任意の分岐鎖アルケニル基、および炭素数3から7の任意の環状アルケニル基を包含する。単に、「低級アルケニル基」という場合もある。例えば、炭素数2から7の任意の直鎖アルケニル基としては、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基などが挙げられ、炭素数3から7の任意の分岐鎖アルケニル基としては、イソプロペニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−ブテニル基などが挙げられ、そして炭素数3から7の任意の環状アルケニル基としては、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
本明細書において、用語「分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基」は、炭素数1から7の任意の直鎖アルコキシ基、炭素数3から7の任意の分岐鎖アルコキシ基、および炭素数3から7の任意の環状アルコキシ基を包含する。単に、「低級アルコキシ基」という場合もある。例えば、炭素数1から7の任意の直鎖アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブチロキシ、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、およびn−ヘプチルオキシ基が挙げられ、炭素数3から7の任意の分岐鎖アルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブチロキシ基、tert−ブチロキシ基、イソペンチルオキシ基などが挙げられ、そして炭素数3から7の任意の環状アルコキシ基としては、シクロブチロキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。
本明細書において、用語「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基」は、炭化水素のみで構成された、炭素数6から12の任意のアリール基と、当アリール基の環構造を構成する少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子、ならびにこれらの組合せ)で置換された、炭素数3から12の任意のヘテロアリール基とを包含する。当該炭素数6から12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基などが挙げられ、そして当該炭素数3から12の任意のヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピロリル基、キノリル基、インドリル基、イミダゾリル基、フリル基、チエニル基などが挙げられる。
本明細書において、用語「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基」の例としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、3−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、2−フェニルブチル基、ピリジルメチル基、インドリルメチル基、フリルメチル基、チエニルメチル基、ピロリルメチル基、2−ピリジルエチル基、1−ピリジルエチル基、3−チエニルプロピル基などが挙げられる。
本明細書において、用語「アシル基」の例としては、脂肪族アシル基および芳香族アシル基が挙げられる。具体的には、脂肪族アシル基の例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、バレリル基、イソバレリル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3−メチルノナノイル基、8−メチルノナノイル基、3−エチルオクタノイル基、3,7−ジメチルオクタノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、1−メチルペンタデカノイル基、14−メチルペンタデカノイル基、13,13−ジメチルテトラデカノイル基、ヘプタデカノイル基、15−メチルヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、1−メチルヘプタデカノイル基、ノナデカノイル基、アイコサノイル基およびヘナイコサノイル基のようなアルキルカルボニル基;スクシノイル基、グルタロイル基、アジポイル基のようなカルボキシ化アルキルカルボニル基;クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基のようなハロゲノ低級アルキルカルボニル基;メトキシアセチル基のような低級アルコキシ低級アルキルカルボニル基;(E)−2−メチル−2−ブテノイル基のような不飽和アルキルカルボニル基が挙げられる。また、芳香族アシル基の例としては、ベンゾイル基、α−ナフトイル基、β−ナフトイル基のようなアリールカルボニル基;2−ブロモベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基のようなハロゲノアリールカルボニル基;2,4,6−トリメチルベンゾイル基、4−トルオイル基のような低級アルキル化アリールカルボニル基;4−アニソイル基のような低級アルコキシ化アリールカルボニル基;2−カルボキシベンゾイル基、3−カルボキシベンゾイル基、4−カルボキシベンゾイル基のようなカルボキシ化アリールカルボニル基;4−ニトロベンゾイル基、2−ニトロベンゾイル基のようなニトロ化アリールカルボニル基;2−(メトキシカルボニル)ベンゾイル基のような低級アルコキシカルボニル化アリールカルボニル基;4−フェニルベンゾイル基のようなアリール化アリールカルボニル基などが挙げられる。好適には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基である。
本明細書において、用語「シリル基」の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基のようなトリ低級アルキルシリル基;ジフェニルメチルシリル基、ブチルジフェニルブチルシリル基、ジフェニルイソプロピルシリル基、フェニルジイソプロピルシリル基のような1〜2個のアリール基で置換されたトリ低級アルキルシリル基などが挙げられる。好適には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基であり、さらに好適にはトリメチルシリル基である。
本明細書において、用語「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。好適には、フッ素原子または塩素原子である。
本明細書において、用語「核酸合成のアミノ基の保護基」、「核酸合成の水酸基の保護基」、「核酸合成の保護基で保護された水酸基」、「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」、「核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基」の「保護基」とは、核酸合成の際に安定してアミノ基、水酸基、リン酸基またはメルカプト基を保護し得るものであれば、特に制限されない。具体的には、酸性または中性条件で安定であり、加水素分解、加水分解、電気分解、および光分解のような化学的方法により開裂し得る保護基のことをいう。このような保護基としては、例えば、低級アルキル基、低級アルケニル基、アシル基、テトラヒドロピラニルまたはテトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロチオフラニル基、シリル基、低級アルコキシメチル基、低級アルコキシ化低級アルコキシメチル基、ハロゲノ低級アルコキシメチル基、低級アルコキシ化エチル基、ハロゲン化エチル基、1〜3個のアリール基で置換されたメチル基、「低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基でアリール環が置換された1〜3個のアリール基で置換されたメチル基」、低級アルコキシカルボニル基、「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」、「ハロゲン原子またはトリ低級アルキルシリル基で置換された低級アルコキシカルボニル基」、アルケニルオキシカルボニル基、「低級アルコキシまたはニトロ基でアリール環が置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基」、「シアノ基で置換された低級アルコキシカルボニル基」、「1〜4個のニトロ基で置換されたベンゼンスルホニル基」などが挙げられる。
より具体的には、テトラヒドロピラニル基またはテトラヒドロチオピラニル基としては、テトラヒドロピラン−2−イル基、3−ブロモテトラヒドロピラン−2−イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4−イル基、テトラヒドロチオピラン−4−イル基、4−メトキシテトラヒドロチオピラン−4−イル基などが挙げられる。テトラヒドロフラニル基またはテトラヒドロチオフラニル基としては、テトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロチオフラン−2−イル基が挙げられる。低級アルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、1,1−ジメチル−1−メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基などが挙げられる。低級アルコキシ化低級アルコキシメチル基としては、2−メトキシエトキシメチル基などが挙げられる。ハロゲノ低級アルコキシメチル基としては、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基などが挙げられる。低級アルコキシ化エチル基としては、1−エトキシエチル基、1−(イソプロポキシ)エチル基などが挙げられる。ハロゲン化エチル基としては、2,2,2−トリクロロエチル基などが挙げられる。1〜3個のアリール基で置換されたメチル基としては、ベンジル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、α−ナフチルジフェニルメチル基、9−アンスリルメチル基などが挙げられる。「低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基でアリール環が置換された1〜3個のアリール基で置換されたメチル基」としては、4−メチルベンジル基、2,4,6−トリメチルベンジル基、3,4,5−トリメチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−メトキシフェニルジフェニルメチル基、4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル基、2−ニトロベンジル基、4−ニトロベンジル基、4−クロロベンジル基、4−ブロモベンジル基、4−シアノベンジル基などが挙げられる。低級アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基などが挙げられる。「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」としては、4−クロロフェニル基、2−フロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ニトロフェニル基、2,4−ジニトロフェニル基などが挙げられる。「ハロゲン原子またはトリ低級アルキルシリル基で置換された低級アルコキシカルボニル基」としては、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、2−トリメチルシリルエトキシカルボニル基などが挙げられる。アルケニルオキシカルボニル基としては、ビニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基などが挙げられる。「低級アルコキシまたはニトロ基でアリール環が置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基」としては、ベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、2−ニトロベンジルオキシカルボニル基、4−ニトロベンジルオキシカルボニル基などが挙げられる。「シアノ基で置換された低級アルコキシカルボニル基」としては、シアノエトキシカルボニル基などが挙げられる。「1〜4個のニトロ基で置換されたベンゼンスルホニル基」としては、2−ニトロベンゼンスルホニル基、2,4−ジニトロベンゼンスルホニル基などが挙げられる。
「核酸合成の水酸基の保護基」としては、好適には、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、1〜3個のアリール基で置換されたメチル基、「低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ基でアリール環が置換された1〜3個のアリール基で置換されたメチル基」、またはシリル基であり、さらに好適には、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、p−メトキシベンゾイル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基またはtert−ブチルジフェニルシリル基である。「核酸合成の保護基で保護された水酸基」の保護基としては、好適には、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、「1〜3個のアリール基で置換されたメチル基」、「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」、低級アルキル基、または低級アルケニル基であり、さらに好適には、ベンゾイル基、ベンジル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基または2−プロペニル基である。「核酸合成のアミノ基の保護基」としては、好適には、アシル基であり、さらに好適には、ベンゾイル基である。「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」の「保護基」としては、好適には、低級アルキル基、シアノ基で置換された低級アルキル基、アラルキル基、「ニトロ基またはハロゲン原子でアリール環が置換されたアラルキル基」または「低級アルキル基、ハロゲン原子、またはニトロ基で置換されたアリール基」であり、さらに好適には、2−シアノエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ベンジル基、2−クロロフェニル基または4−クロロフェニル基である。「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」を構成する保護基は1つまたはそれ以上であり得る。「核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基」の「保護基」としては、好適には、脂肪族アシル基または芳香族アシル基であり、さらに好適には、ベンゾイル基である。
本明細書において、−P(R24)R25[式中、R24およびR25は、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルコキシ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基を表す]で表される基のうち、R24がOR24aそしてR25がNR25aとして表すことができる基は、「ホスホロアミダイト基」という。ホスホロアミダイト基としては、好適には、式−P(OC2H4CN)(N(iPr)2)で表される基、または式−P(OCH3)(N(iPr)2)で表される基が挙げられる。ここで、iPrはイソプロピル基を表す。
本明細書において、用語「ヌクレオシド」は、プリンまたはピリミジン塩基と糖とが結合した「ヌクレオシド」、ならびに、プリンおよびピリミジン以外の芳香族複素環および芳香族炭化水素環でプリンまたはピリミジン塩基との代用が可能なものと糖が結合した「ヌクレオシド」を含む。天然型のヌクレオシドを「天然ヌクレオシド」ともいう。修飾された非天然型のヌクレオシドを「修飾ヌクレオシド」ともいい、特に糖部分が修飾されたヌクレオチドを「糖修飾ヌクレオシド」という。「ヌクレオチド」とは、ヌクレオシドの糖にリン酸基が結合した化合物を意味する。
本明細書において、用語「オリゴヌクレオチド」とは、同一または異なる「ヌクレオシド」がリン酸ジエステル結合または他の結合で2〜50個結合した「ヌクレオチド」のポリマーであり、天然型のものと非天然型のものを含む。非天然型の「オリゴヌクレオチド」としては、好適には、糖部分が修飾された糖誘導体;リン酸ジエステル部分がチオエート化されたチオエート誘導体;末端のリン酸部分がエステル化されたエステル体;プリン塩基上のアミノ基がアミド化されたアミド体が挙げられ、さらに好適には、糖部分が修飾された糖誘導体が挙げられる。
本明細書において、用語「その塩」とは、後述の式(II)で表される化合物の塩をいう。そのような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩などの金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;および、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩が挙げられる。
本明細書において、用語「その薬理学上許容される塩」とは、本発明の式(I)で表されるヌクレオシド構造を少なくとも1つ含有するオリゴヌクレオチド類縁体の塩であって、本発明のオリゴヌクレオチドの生理学的におよび製薬上許容される塩、すなわち、当該オリゴヌクレオチドの所望される生物学的な活性を保持し、そこで望まれない毒物学的効果を与えない塩のことをいう。そのような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩などの金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;および、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩が挙げられる。
以下、本発明について詳述する。
本発明は、SNORA23遺伝子発現抑制剤を含む、抗腫瘍剤を提供する。本発明の1つの実施形態では、SNORA23遺伝子発現抑制剤は、SNORA23遺伝子と結合し得、該SNORA23の発現を抑制する活性を有する核酸分子を含む。本明細書において、「SNORA23遺伝子との結合」とは、例えば、SNORA23遺伝子への直接結合、およびSNORA23遺伝子より発現したRNAへの結合が挙げられる。「SNORA23遺伝子と結合し得、該SNORA23の発現を抑制する活性」とは、例えば、発現抑制剤が、SNORA23遺伝子より発現したノンコーディングRNAであるSNORA23 RNAに結合し、次いで当該RNAをRNase Hの働きにより分解した結果、SNORA23の発現RNA量が抑制されることを包含する。
ここで、「結合し得る」とは、異なる複数の1本鎖のオリゴヌクレオチドまたは核酸が、核酸塩基の相補性により2本鎖以上の鎖の核酸を形成し得ることをいう。好適には、2本鎖の核酸を形成し得ることをいう。結合の熱安定性の指標である2本鎖以上の鎖の核酸の融解温度(Tm)は特に限定されない。2本鎖核酸の融解温度(Tm)は、例えば、下記のように決定され得る:緩衝液(8.1mM Na2HPO4,2.68mM KCl,1.47mM KH2PO4,pH7.2)中で、オリゴヌクレオチドと標的RNAとを等モル混合し、95℃にて5分間加熱後、室温まで徐冷してアニーリングさせ、2本鎖核酸を形成させる。2本鎖核酸の温度を20℃から95℃まで0.5℃/分の速度で加温していき、260nmにおける吸光度(A)の温度(T)による変化を測定し、この測定結果よりdA/dT vs Tのグラフを描き、dA/dTの値が最も大きくなる温度、つまりAのTによる変化が最も大きくなる温度を、2本鎖核酸のTmとする。融解温度(Tm)は、例えば、40℃以上であり、好ましくは50℃以上である。
本明細書においては「相補的」とは、異なる2つの1本鎖のオリゴヌクレオチドまたは核酸が2本鎖核酸を形成することができる対合関係にあることをいう。好ましくは、2本鎖を形成する領域の塩基配列が完全に相補性を有するが、当該2本鎖核酸を形成し得、発現抑制効果作用を有する限り、1もしくは数個のミスマッチを有し得る。1もしくは数個のミスマッチとは、オリゴヌクレオチドの長さに依存し得るが、1〜4個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1または2個のミスマッチを意味している。本発明のオリゴヌクレオチドは、好ましくは、2本鎖を形成する領域の塩基配列に対して完全に(100%)相補性を有するものである。
このように、SNORA23遺伝子と結合し得、かつ該SNORA23遺伝子の発現を抑制する活性を有する核酸分子として、SNORA23遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、siRNA、shRNA、DNA/RNAハイブリッドもしくはキメラオリゴヌクレオチド、アプタマーなどが挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)とは、標的遺伝子のRNA/DNAと結合し得、当該標的遺伝子の発現を抑制する活性を有し、そしてその標的遺伝子のRNA/DNAの配列に相補的である一本鎖オリゴヌクレオチドをいう。siRNA(small interfering RNA)とは、通常21〜23塩基対からなる低分子二本鎖RNAである。siRNAは、RNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象に関与しており、mRNAの破壊によって配列特異的に遺伝子の発現を抑制し得る。shRNA(small hairpin RNA:小ヘアピンRNAもしくはshort hairpin RNA:短ヘアピンRNA)とは、RNA干渉による遺伝子サイレンシングのために用いられるヘアピン型のRNA配列である。また、標的遺伝子の発現を阻害するDNAとRNAとからなる2本鎖オリゴヌクレオチド(例えば、特開2003−219893号公報)は、2本鎖の一方がDNAで、他方がRNAであるDNA/RNAハイブリッドであっても、同じ鎖の一部がDNAで、他の部分がRNAであるDNA/RNAキメラであってもよい。このような2本鎖オリゴヌクレオチドは、好ましくは19〜25塩基対、より好ましくは19〜23塩基対、さらに好ましくは19〜21塩基対の長さである。DNA/RNAハイブリッドの場合は、センス鎖がDNAであり、アンチセンス鎖がRNAであるものが好ましく、また、DNA/RNAキメラの場合は、二本鎖オリゴヌクレオチドの上流側の一部がRNAであるものが好ましい。このようなオリゴヌクレオチドは、公知の化学合成法に従って、任意の配列を有するものとして作製され得る。アプタマーとは、特定の分子と特異的に結合する核酸分子またはペプチドを総称していい、核酸はRNAまたはDNAのいずれでもよい。
SNORA23遺伝子発現抑制剤は、配列番号1の任意の一部である標的領域と結合し得る。上記標的領域は、ヒトSNORA23において、特に、SNORA23の発現を抑制する活性またはノックダウン活性に関連する領域であることが好ましい。標的領域は、例えば、12〜25塩基長、好ましくは12〜23塩基長、より好ましくは13〜23塩基長、より好ましくは14〜23塩基長、特に好ましくは15〜23塩基長、特に好ましくは15〜20塩基長の領域であり得る。核酸分子またはオリゴヌクレオチドが「標的領域と結合」とは、当該核酸分子またはオリゴヌクレオチドが標的領域全体と必ずしも2本以上の鎖(好ましくは2本鎖)を形成する必要はなく、SNORA23遺伝子の発現を抑制する活性またはノックダウン活性を発揮する限り、標的領域の一部である領域と2本以上の鎖(好ましくは2本鎖)を形成するものであってもよい。SNORA23遺伝子発現抑制剤の核酸分子は、例えば、標的領域と相補的であり、好ましくは完全な相補性を有する。
本発明の1つの実施形態では、核酸分子は、配列番号1に示されるSNORA23遺伝子の塩基配列の一部である標的領域に相補的でありかつ12〜20塩基の長さであるオリゴヌクレオチド、またはその薬理学上許容される塩を含む。この「標的領域に相補的」とは、SNORA23遺伝子上の標的領域に相補的である場合、および、当該標的領域に対応するRNA上の領域の塩基と相補的である場合の両方またはいずれか一方を含む。このようなオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、例えば12〜20塩基、好ましくは13〜20塩基、より好ましくは14〜20塩基、特に好ましくは15〜18塩基の長さである。オリゴヌクレオチドが上記のような長さであることにより、核内非翻訳RNAであるSNORA23遺伝子への結合および核内非翻訳RNA発現抑制(例えば、ノックダウン)をより効果的に行い得る。
標的領域として、例えば、配列番号1の1位から35位まで、71位から100位まで、131位から170位までの領域の中の12〜20塩基の連続した配列からなる領域が選択され得る。
SNORA23遺伝子発現抑制剤のオリゴヌクレオチドの塩基配列としては、例えば、下記の配列が挙げられる:
gatgaaacct atgca(配列番号2);
gccagtggta gatgt(配列番号3);
tggccagtgg tagat(配列番号4)。
gatgaaacct atgca(配列番号2);
gccagtggta gatgt(配列番号3);
tggccagtgg tagat(配列番号4)。
配列番号2のオリゴヌクレオチドは、配列番号1に示されるSNORA23遺伝子の塩基配列の5’末端部位から19番目〜33番目の領域を標的とし、当該領域の塩基配列に対して相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。配列番号3のオリゴヌクレオチドは、配列番号1に示されるSNORA23遺伝子の塩基配列の5’末端部位から151番目〜165番目の領域を標的とし、当該領域の塩基配列に対して相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。配列番号4のオリゴヌクレオチドは配列番号1に示されるSNORA23遺伝子の塩基配列の5’末端部位から153番目〜167番目の領域を標的とし、当該領域の塩基配列に対して相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。配列番号2〜4の各塩基配列は5’から3’方向(5’→3’)で表したものであり、配列番号1中の各標的領域配列に対する逆相補配列である。
SNORA23遺伝子発現抑制活性(ノックダウン活性)は、公知の方法(例えば、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR))により測定することが可能である。
本発明において「オリゴヌクレオチド」は、天然に存在するDNAまたはRNAが化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドを含む。このような修飾は、オリゴヌクレオチドの活性を変更する。例えば、標的核酸に対する親和性を高め、核酸分解酵素(ヌクレアーゼ)に対する耐性を高め、オリゴヌクレオチドの薬物動態または組織分布を変更する。その標的に対するオリゴヌクレオチドの親和性を高めることにより、より短いオリゴヌクレオチドの使用を可能にし得る。
1つの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩は、糖修飾部分を含む1個または2個以上のヌクレオチドを含む。本発明は、下述するようなオリゴヌクレオチドおよびその薬理学上許容され得る塩を包含する。
本発明のオリゴヌクレオチドは、糖修飾ヌクレオシドを任意の位置に少なくとも1つ含む。この糖修飾ヌクレオシドは、その糖環の2位と4位との間で所定の架橋を有する。本発明における糖修飾ヌクレオシドについて、以下に説明する。
本発明における糖修飾ヌクレオシドは、以下の式(I)で表されるヌクレオシド構造:
(ここで、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基、またはα群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
Aは、以下:
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基、またはα群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
Aは、以下:
で表される二価の基であり、
R1は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し;
R1は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し;
R13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であり;
mは、0から2の整数であり;
nは、0から1の整数であり;
Xは、酸素原子、硫黄原子、またはアミノ基であり;そして
該オリゴヌクレオチドが、核内非翻訳RNAに結合して発現を抑制し得、該核内非翻訳RNAの配列に相補的であり、そして12〜20塩基の長さである。)
を含む。
R1は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し;
R1は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し;
R13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であり;
mは、0から2の整数であり;
nは、0から1の整数であり;
Xは、酸素原子、硫黄原子、またはアミノ基であり;そして
該オリゴヌクレオチドが、核内非翻訳RNAに結合して発現を抑制し得、該核内非翻訳RNAの配列に相補的であり、そして12〜20塩基の長さである。)
を含む。
1つの実施形態では、上記式(I)で表されるヌクレオシド構造は、
で表される構造である。式(I’)および(I”)中のBase、R1、X、mおよびnは、上述したとおりである。
式(I’)および(I”)において、R1は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、または該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基である。より好適には、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、またはベンジル基であり、さらに好適には、R1は、水素原子またはメチル基である。
式(I’)において、mは、0から2の整数であり;そして式(I”)において、nは、0から1の整数である。すなわち、2’位、3’位、4’位、および架橋部を含む環は、5員環〜7員環である。
式(I”)において、Xは、酸素原子、硫黄原子、アミノ基、またはメチレン基である。好適には、Xは、酸素原子またはアミノ基である。なお、Xがアミノ基またはメチレン基である場合、低級アルキル基で置換されていてもよい。
1つの実施形態では、上記式(I)で表されるヌクレオシド構造は、上記式(I’)で表される構造であり、そしてこの式(I’)において、mは0であり、そしてR1は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、またはベンジル基である。このようなヌクレオシド構造を、アミド架橋型核酸、アミドBNA(Bridged Nucleic Acid)、またはAmNAともいう。
式(I’)および(I”)にてそれぞれ表される化合物においては、糖部の2’位のアミノ基と4’位から伸長したカルボニル基との間にアミド結合が形成されている。このように、構造的に揺らぎが少なくかつ親水性に優れるアミド結合を有するため、ヌクレオシドの糖部の構造が、架橋により固定化されている。
上記式(I)で表されるヌクレオシド構造としては、上記式(I’)および(I”)に加えて、例えば、以下の式(II)が挙げられる:
上記式(II)中、Base、R13およびR14は上述したとおりである。ここで、R13およびR14がともに水素原子である場合、2’,4’−BNAまたはLNA(Locked Nucleic Acid)(本明細書においては、「2’,4’−BNA/LNA」または単に「LNA」ともいう)と称される核酸に該当する。
上記「Base」は、プリン塩基(すなわち、プリン−9−イル基)またはピリミジン塩基(すなわち、2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基)である。これらの塩基は、水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、およびハロゲン原子からなるα群より選択される任意の置換基を1以上有していてもよい。
上記「Base」の具体例としては、アデニニル基、グアニニル基、シトシニル基、ウラシリル基、およびチミニル基、ならびに6−アミノプリン−9−イル基、2,6−ジアミノプリン−9−イル基、2−アミノ−6−クロロプリン−9−イル基、2−アミノ−6−フルオロプリン−9−イル基、2−アミノ−6−ブロモプリン−9−イル基、2−アミノ−6−ヒドロキシプリン−9−イル基、6−アミノ−2−メトキシプリン−9−イル基、6−アミノ−2−クロロプリン−9−イル基、6−アミノ−2−フルオロプリン−9−イル基、2,6−ジメトキシプリン−9−イル基、2,6−ジクロロプリン−9−イル基、6−メルカプトプリン−9−イル基、2−オキソ−4−アミノ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、4−アミノ−2−オキソ−5−フルオロ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、4−アミノ−2−オキソ−5−クロロ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−メトキシ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−メルカプト−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−メチル−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、および4−アミノ−5−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基が挙げられる。
中でも、「Base」は、核酸医薬への導入という観点から、以下の構造式:
でそれぞれ表される基(すなわち、チミニル基、シトシニル基、アデニニル基、グアニニル基、5−メチルシトシニル基およびウラシリル基)、ならびに2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−メチル−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−アミノ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、6−アミノプリン−9−イル基、2−アミノ−6−ヒドロキシプリン−9−イル基、4−アミノ−5−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、および2−オキソ−4−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基が好適であり、特に、2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−メチル−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基およびチミニル基が好適である。また、オリゴヌクレオチドの合成の際には、水酸基およびアミノ基が保護基により保護されていることが好ましい。
上記のような糖修飾ヌクレオシド構造を少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチドは、例えば、糖修飾ヌクレオシド化合物を用いて、例えば、国際公開第2011/052436号、特開2014−043462号公報および国際公開第2014/046212号に記載されるような方法を用いて合成することができる。
糖修飾ヌクレオシド化合物の例としては、以下の式(III)で表される化合物またはその塩:
(ここで、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基、またはα群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
Aは、以下:
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基、またはα群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
Aは、以下:
で表される二価の基であり、
R1は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し;
R13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であり;
mは、0から2の整数であり;
nは、0から1の整数であり;
Xは、酸素原子、硫黄原子、またはアミノ基であり;そして
R22およびR23は、それぞれ独立して、水素原子、核酸合成の水酸基の保護基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいアシル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいシリル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基、核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、−P(R24)R25[式中、R24およびR25は、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から5のアルコキシ基、炭素数1から5のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基で置換されたアミノ基を表す]を表す)
が挙げられる。
R1は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し;
R13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であり;
mは、0から2の整数であり;
nは、0から1の整数であり;
Xは、酸素原子、硫黄原子、またはアミノ基であり;そして
R22およびR23は、それぞれ独立して、水素原子、核酸合成の水酸基の保護基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいアシル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいシリル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基、核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、−P(R24)R25[式中、R24およびR25は、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から5のアルコキシ基、炭素数1から5のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基で置換されたアミノ基を表す]を表す)
が挙げられる。
上記のような糖修飾ヌクレオシドから、糖修飾ヌクレオチドを容易に調製することができる。例えば、三リン酸化は、M. Kuwaharaら、Nucleic Acids Res.,2008,vol.36, No.13,pp.4257−65に記載の方法に従って容易に行われ得る。
核内非翻訳RNAは、ノンコーディングRNAの1つであり、核内に存在し、タンパク質へ翻訳されずに機能するRNAをいう。このような核内非翻訳RNAである核小体小分子RNA(snoRNA)は、リボソームRNAおよびその他のRNAの化学修飾(例えば、メチル化、シュードウリジン化)を導く小さなRNA分子の一群である。snoRNAは核内の核小体に局在し、タンパク質と複合体(核小体低分子リボ核酸蛋白質(snoRNP))を形成し、RNA分子の修飾を触媒し得る。snoRNAは、その配列によって主にboxC/DとboxH/ACAの2種に分けられている。snoRNAの配列情報は遺伝子データベース(例えば、米国国立生物工学情報センター(NCBI)によるGenBank、国立大学法人宮崎大学のsnOPY等)から入手可能である。
SNORA23は、「ACA23 snoRNA」または「small nucleolar RNA,H/ACA box 23」として同定された核小体小分子RNAである。ヒトSNORA23遺伝子の塩基配列情報は、GenBank登録番号:AJ609438(「Homo sapience ACA23 snoRNA gene」)、NCBI参照配列登録番号:NR_002962(Homo sapiens small nucleolar RNA, H/ACA box 23(SNORA23),small nucleolar RNA)により入手可能であり、配列表の配列番号1に示した通りである。
上記糖修飾以外の当該分野で公知のヌクレオチドの修飾は、いずれも本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドに利用可能である。ヌクレオチドの修飾としては、リン酸修飾、核酸塩基修飾が知られている。このような核酸修飾は、当該分野で公知の方法に基づいて行うことができる。
リン酸修飾としては、例えば、天然の核酸が有するリン酸ジエステル結合、S−オリゴ(ホスホロチオエート)、D−オリゴ(ホスホジエステル)、M−オリゴ(メチルフォスフォネイト)、ボラノホスフェート等が挙げられる。S−オリゴ(ホスホロチオエート)は、ヌクレオシド間のホスホジエステル結合のリン酸基部の酸素原子が硫黄原子で置換されたPS骨格を有する。この修飾は公知の方法に従って、オリゴヌクレオチドに取り込まれる。この修飾をオリゴヌクレオチド中に1もしくは複数もつアンチセンスオリゴヌクレオチドをS−オリゴ型(ホスホロチオエート型)という。
核酸塩基修飾としては、例えば、5−メチルシトシン、5−ヒドロキシメチルシトシン、5−プロピニルシトシン等が挙げられる。
本発明のオリゴヌクレオチドにおいて、糖修飾ヌクレオシドの位置および数は、特に限定されず、目的に応じて適宜設計され得る。2つ以上の糖修飾ヌクレオシドは、例えば、互いに同じものを含むか、または異なるものを含む。
本発明のオリゴヌクレオチド(特に1本鎖オリゴヌクレオチドの場合)は、ギャップマーであることが好ましい。ギャップマーとは、中心領域となる「ギャップ」と該ギャップの両側の領域、2つのウイング、すなわち、5’側の「5’ウイング」および3’側の「3’ウイング」を含むオリゴヌクレオチドを意味する。ギャップ領域は6〜10塩基長、そしてウイング領域は3〜5塩基長であり得る。ギャップは、天然ヌクレオシドから構成されており、ウイングには、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドが含まれ得る。本発明のオリゴヌクレオチドは、「5’ウイング」および/または「3’ウイング」に、糖修飾ヌクレオシドを少なくとも1つ、好ましくは1〜5、さらに好ましくは2〜3含む。1つの実施形態では、ギャップマーは、6〜10塩基のギャップ領域、3〜5塩基の5’ウイングおよび3〜5塩基の3’ウイングからなり、ギャップ領域が5’ウイングと3’ウイングの間に位置づけられ、5’ウイングおよび3’ウイングは、少なくとも1つの上記式(I)で表されるヌクレオシド構造を含み得る。さらに、リン酸修飾、塩基修飾などを含んでいてもよい。一方のウイング内の修飾の種類、数、位置は、他方のウイングにおける修飾の種類、数、位置と同じであってもまたは異なっていてもよい。
このようなギャップマーとしては、例えば、3−8−3−1、3−9−3−1、3−10−2−1、3−10−3、5−10−5などが挙げられる。例えば、3−8−3−1の表記の場合、ギャップの8塩基が天然ヌクレオシド(DNA)であり、5’ウイング(5’末端から3塩基)が糖修飾ヌクレオシドであり、そして3’ウイング(3’末端から3塩基)のうち中心側からの3塩基が糖修飾ヌクレオシドであり、最後の1塩基(3’末端塩基)が天然ヌクレオシド(DNA)である。配列に依存し得るが、3−8−3−1が好ましい。
上述したSNORA23遺伝子発現抑制剤のオリゴヌクレオチド、すなわち、配列番号2〜4のそれぞれについて、糖修飾ヌクレオシドにAmNAを用いて3−8−3−1のギャップマーを作製した場合、下記のように表され得る:
G^A^T^g^a^a^a^c^c^t^a^T^G^mC^a(配列番号5)
G^mC^mC^a^g^t^g^g^t^a^g^A^T^G^t(配列番号6)
T^G^G^c^c^a^g^t^g^g^t^A^G^A^t(配列番号7)
(上記の大文字はAmNAであり、小文字はDNAであり、「^」はホスホロチオエート結合を示す。なおmCは5−メチルシトシンである)。
G^A^T^g^a^a^a^c^c^t^a^T^G^mC^a(配列番号5)
G^mC^mC^a^g^t^g^g^t^a^g^A^T^G^t(配列番号6)
T^G^G^c^c^a^g^t^g^g^t^A^G^A^t(配列番号7)
(上記の大文字はAmNAであり、小文字はDNAであり、「^」はホスホロチオエート結合を示す。なおmCは5−メチルシトシンである)。
本発明のオリゴヌクレオチドは、上述したような糖修飾ヌクレオシドおよび天然ヌクレオシドを用いて、常法によって合成することができ、例えば、市販の核酸自動合成装置(例えば、Applied Biosystems社製、株式会社ジーンデザイン製など)によって容易に合成することができる。合成法はホスホロアミダイトを用いた固相合成法、ハイドロジェンホスホネートを用いた固相合成法等がある。例えば、Tetrahedron Letters,1981, vol. 22. pp.1859−1862、国際公開第2011/052436号等に開示されている。
本発明の1本鎖のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、デリバリーデバイスを用いることなく単体での投与により、細胞内に取り込まれ得る。SNORA23のような核内非翻訳RNAまたはsnoRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、2’,4’−BNA/LNAを用いて作製された場合、ヌクレアーゼ耐性および生体内での安定性により、インビボでの核内非翻訳RNAまたはsnoRNAの発現抑制を達成し得、AmNAを用いて作製された場合、ヌクレアーゼ(3’−エキソヌクレアーゼ)に対する分解耐性能を有し、よりRNA特異的であり、生体内での発現抑制効率および安全性の向上を示し得、インビボでの核内非翻訳RNAまたはsnoRNAの発現抑制を達成し得る。
SNORA23は、高転移性癌細胞(例えば、高転移性膵管腺癌(PDAC)細胞(例えば、下記実施例の「高転移性PDAC細胞株のインビボ選択」に従って樹立したSuit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞))において特異的に高発現される。SNORA23遺伝子発現および発現抑制の程度は、上述したように、公知の方法(例えば、qRT−PCR)により測定することが可能である。SNORA23は腫瘍細胞の増殖、ならびに癌細胞(悪性腫瘍細胞)の浸潤性および転移能に関与し得る。SNORA23の発現抑制(例えば、ノックダウン)により、腫瘍細胞の増殖抑制(腫瘍形成能の低下)、癌細胞(悪性腫瘍細胞)の播種抑制(浸潤性低下)および転移の減少(転移能低下)が生じ得る。腫瘍細胞増殖、浸潤および転移については、下記の実施例に記載の手順に基づいて決定し得る。本明細書において、「抗腫瘍」とは、腫瘍細胞の増殖抑制(腫瘍形成能の低下)、癌細胞(悪性腫瘍細胞)の播種抑制(浸潤性低下)および転移の減少(転移能低下)の少なくとも1つの効果を示し、好ましくはこれらの全ての効果を示す。
本発明の抗腫瘍剤によれば、生体内において、癌に特異的に高発現するsnoRNA(SNARA23)の発現が抑制され得る。本発明の抗腫瘍剤がアンチセンスオリゴヌクレオチドである場合、デリバリーデバイスを用いることなく単体投与により、そのような発現抑制を実施し得る。
本発明の抗腫瘍剤によれば、SNORA23遺伝子発現抑制剤は、SYNE2遺伝子の発現を抑制し得る。SYNE2遺伝子は、「Homo sapiens spectrin repeat containing nuclear envelope protein 2 (SYNE2), RefSeqGene on chromosome 14」(GenBank登録番号:NG_011756);「Homo sapiens spectrin repeat containing nuclear envelope protein 2 (SYNE2), transcript variant 1, mRNA」(GenBank登録番号:NM_015180);「Homo sapiens spectrin repeat containing, nuclear envelope 2 (SYNE2), transcript variant 2, mRNA」(GenBank登録番号:NM_182910)として同定され、その塩基配列情報は当該登録番号により入手可能である。また、タンパク質のアミノ酸配列情報は、「nesprin-2 isoform 1 [Homo sapiens]」(GenBank登録番号:NP_055995)および「nesprin-2 isoform 2 [Homo sapiens]」(GenBank登録番号:NP_878914)により入手可能である。Variant1と、variant2とは、転写開始部位が異なり得る。SYNE2は、別にEDMD5、NUA、NUANCE、Nesp2、Nesprin−2、SYNE−2、TROPHとも称され得る。下記の実施例に記載のSYNE2、variant 2, mRNA(GenBank登録番号:NM_182910)の塩基配列を配列番号8に示し、対応するアミノ酸配列(GenBank登録番号:NP_878914)を配列番号9に示す。
本発明は、SYNE2遺伝子発現抑制剤を含む抗腫瘍剤もまた提供する。1つの実施形態では、SYNE2遺伝子発現抑制剤は、SYNE2遺伝子と結合し得、かつ該SYNE2遺伝子発現を抑制する活性を有する核酸分子を含む。このような核酸分子としては、上述したようなsiRNA、DNA/RNAハイブリッドもしくはキメラポリヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが挙げられる。本明細書において、「SYNE2遺伝子との結合」は、SYNE2遺伝子への直接結合、およびSYNE2遺伝子のmRNAもしくはmRNA前駆体への結合を包含する。
1つの実施形態では、SYNE2遺伝子と結合し得、該SYNE2遺伝子の発現を抑制する活性を有する核酸分子は、SYNE2遺伝子のsiRNAである。SYNE2のsiRNAは、種々の供給会社(例えば、サーモフィッシャー・サイエンティフィック)より入手可能であり、一例として、サーモフィッシャー・サイエンティフィック製のsiRNA ID番号:s23328のsiRNAが挙げられる。
本発明の抗腫瘍剤は、SNORA23遺伝子発現抑制剤(例えば、SNORA23と結合し得、該SNORA23遺伝子発現を抑制する活性を有する核酸分子、SNORA23アンチセンスオリゴヌクレオチドなど)またはSYNE2遺伝子発現抑制剤(例えば、SYNE2遺伝子と結合し得、該SYNE2遺伝子の発現を抑制する活性を有する核酸分子、SYNE2遺伝子のsiRNAなど)を含有する。上記抗腫瘍剤は、これらの両方を含有してもよい。本発明の抗腫瘍剤は製剤化されて、医薬組成物を製造し得る。
また、本発明の抗腫瘍剤および医薬組成物は、当該分野で公知の投与方法により投与され得る。これらは、局所的あるいは全身的な処置、または処置すべき領域に応じて様々な方法により投与することができる。
本発明は、前記抗腫瘍剤の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、腫瘍または癌疾患を処置するための方法もさらに提供する。用語「処置」は、疾患(本発明においては腫瘍または癌疾患)の治癒、一時的寛解または予防などを目的とする医学的に許容される全てのタイプの予防的および/または治療的介入を包含するものとする。
本発明の方法において、用語「対象」は、任意の生物個体を意味し、好ましくは動物、さらに好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトの個体である。本発明において、対象は、腫瘍または癌疾患に罹患しているか、罹患するリスクを有する対象であり得る。
本発明の抗腫瘍剤によれば、腫瘍形成、浸潤および転移の抑制効果が示され得る。1つの実施形態としては、本発明の抗腫瘍剤は、浸潤性または転移能のある腫瘍に対して用いられる。本発明の抗腫瘍剤は、種々の癌の処置に用いられ得る:例えば、脳腫瘍、乳癌、子宮体癌、子宮頸癌、卵巣癌、食道癌、胃癌、虫垂癌、大腸癌、肝癌、胆嚢癌、胆管癌、膵癌、副腎癌、消化管間質腫瘍、中皮腫(胸膜、腹膜、心膜など)、頭頚部癌、喉頭癌、口腔癌、歯肉癌、舌癌、頬粘膜癌、唾液腺癌、副鼻腔癌、甲状腺癌、腎臓癌、肺癌、骨肉腫、前立腺癌、精巣腫瘍(睾丸がん)、腎細胞癌、膀胱癌、横紋筋肉腫、皮膚癌、肛門癌など。本発明の抗腫瘍剤は、例えば、膵臓癌、肺癌、腹膜播種(卵巣癌・胃癌)のような難治癌患者の癌の進展を阻害し、生存期間の延長をもたらす治療薬として医療応用できる。1つの実施形態としては、本発明の抗腫瘍剤は、膵癌、肺癌、卵巣癌または胃癌の処置に用いられる。
「有効量」とは、対象疾患の発症を低減し、症状を軽減し、または進行を防止する量であり、好ましくは、対象疾患の発症を予防し、または対象疾患を治癒する量である。また、投与による利益を超える悪影響が生じない量が好ましい。このような量は、培養細胞などを用いたインビトロ試験、マウス、ラット、イヌまたはブタなどのモデル動物における試験により適宜決定することができる。このような試験法は当業者にはよく知られている。
投与する医薬の具体的な用量は、処置を要する対象に関する種々の条件、例えば、症状の重篤度、対象の一般健康状態、年齢、体重、対象の性別、食事、投与の方法、時期および頻度、併用医薬、治療反応性、および治療に対するコンプライアンスなどを考慮して決定され得る。
投与の方法としては、例えば、局所的(点眼、膣内、直腸内、鼻腔内、経皮を含む)、経口的、または、非経口的であってもよい。非経口的投与としては、静脈内注射もしくは点滴、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注入、吸引もしくは吸入による肺投与、髄腔内投与、脳室内投与等が挙げられる。
本発明の抗腫瘍剤を局所投与する場合、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴下剤、坐剤、噴霧剤、液剤、散剤等の製剤を用いることができる。
経口投与用剤としては、散剤、顆粒剤、水もしくは非水性媒体に溶解させた懸濁液または溶液、カプセル、粉末剤、錠剤等が挙げられる。
非経口、髄腔内、または、脳室内投与用剤としては、バッファー、希釈剤およびその他の適当な添加剤を含む無菌水溶液等が挙げられる。
本発明の医薬は、本発明の抗腫瘍剤、またはSNORA23遺伝子発現抑制剤(例えば、SNORA23遺伝子と結合し得、該SNORA23遺伝子発現を抑制する活性を有する核酸分子、SNORA23アンチセンスオリゴヌクレオチドなど)もしくはSYNE2発現抑制剤(例えば、SYNE2と結合し得、該SYNE2の発現を抑制する活性を有する核酸分子)の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合して得ることができる。注射剤の場合には適当な担体と共に滅菌処理を行なって製剤とすればよい。
賦形剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウムまたは結晶セルロース等が挙げられる。結合剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としてはカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末またはラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。滑沢剤としてはタルク、ステアリン酸マグネシウムまたはマクロゴール等が挙げられる。坐剤の基剤としてはカカオ脂、マクロゴールまたはメチルセルロース等を用いることができる。また、液剤または乳濁性、懸濁性の注射剤として調製する場合には通常使用されている溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、等張剤等を適宜添加してもよい。経口投与の場合には嬌味剤、芳香剤等を加えてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
本実施例において用いた材料および手法について以下に説明する。
(オリゴヌクレオチド合成)
オリゴヌクレオチドは、既報(特許文献1)に準じて合成した。
オリゴヌクレオチドは、既報(特許文献1)に準じて合成した。
具体的には、下記の2’,4’−BNA/LNA含有オリゴヌクレオチド(蛍光標識LNAプローブ、LNA含有アンチセンスオリゴヌクレオチド)の合成は、株式会社ジーンデザインに委託した。本実施例で使用した2’,4’−BNA/LNAの構造を、以下の式(a)に示す:
(式中、Baseは5−メチルシトシニル基(mC:5−メチルシトシン)、チミニル基(T:チミン)、アデニニル基(A:アデニン)またはグアニニル基(G:グアニン)である。)
下記のアミドBNA(AmNA)含有オリゴヌクレオチド(AmNA含有アンチセンスオリゴヌクレオチド)の合成は、特許文献1に記載の方法を参照して行った。本実施例で使用したAmNAの構造を、以下の式(b)に示す:
(式中、Baseは、5−メチルシトシニル基(mC:5−メチルシトシン)、チミニル基(T:チミン)、アデニニル基(A:アデニン)またはグアニニル基(G:グアニン)であり、Meはメチル基である。)
2’,4’−BNA/LNAまたはAmNAを含有する14mer〜20merのオリゴヌクレオチドは、核酸自動合成機(nS−8型、株式会社ジーンデザイン製)を用いて、0.2μmolスケールで合成した。鎖長の伸長は標準的なホスホロアミダイトプロトコール(固相担体:CPGレジン、硫化はDDT(3H−1,2−Benzodithiole−3−one,1,1−dioxide)等を使用)にて実施し、末端の5’位の水酸基がDMTr(ジメトキシトリチル)基で保護され、かつ3’位が固相に担持されたオリゴヌクレオチドを得た。続いて、酸処理により、DMTr基を除去した後、塩基処理することにより、目的物を固相担体から切り出した。希酸にて中和後、溶媒を留去し、得られた粗生成物をゲルろ過カラムクロマト、逆相HPLCにて精製することにより目的物を得た。
本実施例で使用した2’,4’−BNA/LNAまたはAmNAの架橋構造、ならびに得られた各オリゴヌクレオチドの純度および構造をHPLCおよびMALDI−TOF−MS(BRUKER DALTONICS社製)により確認した。
(細胞株)
ヒト膵管腺癌(PDAC)細胞株(AsPC−1、MIA PaCa−2、PANC−1、CFPAC−1、Hs766T、SW1990、BxPC−3、CAPAN−1、CAPAN−2、Suit−2、KP−2およびKP−3)をアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)またはヒューマンサイエンス研究資源バンク(Health Science Research Resources Bank)から購入した。H48N細胞株、KP−1N細胞およびHPC−3細胞をDr. H. Iguchi(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター)およびDr. Takahiro Yasoshima(北海道公立大学法人札幌医科大学)のそれぞれから提供いただいた。NPDE細胞をDSファーマバイオメディカル株式会社から入手した。HPDE細胞株をDr. Ming-Sound Tsao(トロント大学)より提供を受けた。3つのヒトCAF細胞株(CAF−1/−2/−3)は既報に従って入手した(Cui Lら, PLoS One 2010;5:e12121)。高転移性のPDAC細胞(Suit2−HLMCおよびMIA PaCa2−HLMC)を下記の「高転移性PDAC細胞株のインビボ選択」に説明した通りに樹立した。細胞を、5%CO2を含む加湿空気中37℃にてダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;ナカライテスク株式会社)(10%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS;Gibco-Life Technologies)、ペニシリン(100U/mL)およびストレプトマイシン(100μg/mL)を補充)中で培養した。
ヒト膵管腺癌(PDAC)細胞株(AsPC−1、MIA PaCa−2、PANC−1、CFPAC−1、Hs766T、SW1990、BxPC−3、CAPAN−1、CAPAN−2、Suit−2、KP−2およびKP−3)をアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)またはヒューマンサイエンス研究資源バンク(Health Science Research Resources Bank)から購入した。H48N細胞株、KP−1N細胞およびHPC−3細胞をDr. H. Iguchi(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター)およびDr. Takahiro Yasoshima(北海道公立大学法人札幌医科大学)のそれぞれから提供いただいた。NPDE細胞をDSファーマバイオメディカル株式会社から入手した。HPDE細胞株をDr. Ming-Sound Tsao(トロント大学)より提供を受けた。3つのヒトCAF細胞株(CAF−1/−2/−3)は既報に従って入手した(Cui Lら, PLoS One 2010;5:e12121)。高転移性のPDAC細胞(Suit2−HLMCおよびMIA PaCa2−HLMC)を下記の「高転移性PDAC細胞株のインビボ選択」に説明した通りに樹立した。細胞を、5%CO2を含む加湿空気中37℃にてダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;ナカライテスク株式会社)(10%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS;Gibco-Life Technologies)、ペニシリン(100U/mL)およびストレプトマイシン(100μg/mL)を補充)中で培養した。
(高転移性PDAC細胞株のインビボ選択)
Suit2−luc細胞またはMIA PaCa2−luc細胞(マウス当たり1×106細胞(50μl PBS中))をヌードマウスの膵尾部に移植した。3〜6週後、肝臓中の転移結節を採取し、I型コラゲナーゼ(ロシェ)で消化し、そしてインビトロでの癌細胞の単離および培養に供した。続いて、培養した癌細胞を再度ヌードマウスの膵尾部に移植した。このプロセスを5回繰り返し、高肝転移性細胞株を樹立した。これらを、Suit2−HLMCおよびMIA PaCa2−HLMCと称した。
Suit2−luc細胞またはMIA PaCa2−luc細胞(マウス当たり1×106細胞(50μl PBS中))をヌードマウスの膵尾部に移植した。3〜6週後、肝臓中の転移結節を採取し、I型コラゲナーゼ(ロシェ)で消化し、そしてインビトロでの癌細胞の単離および培養に供した。続いて、培養した癌細胞を再度ヌードマウスの膵尾部に移植した。このプロセスを5回繰り返し、高肝転移性細胞株を樹立した。これらを、Suit2−HLMCおよびMIA PaCa2−HLMCと称した。
(患者検体)
膵臓組織検体をPDAC(n=133)、IPMN(n=16)およびMCN(n=1)を罹患する患者から得た。正常な膵臓(n=8)および肝臓(n=3)組織検体を、2004年から2008年までに国立研究開発法人国立がん研究センターで膵臓の外科的切除を受けた中から腫瘍、炎症のいずれも有さない被検体から得た。IV期疾患である全患者の診断は、傍大動脈リンパ節関与に基づいた。検体の使用は、国立研究開発法人国立がん研究センターの臨床研究の倫理審査委員会の指針に従って全ての患者から許可を受けた。
膵臓組織検体をPDAC(n=133)、IPMN(n=16)およびMCN(n=1)を罹患する患者から得た。正常な膵臓(n=8)および肝臓(n=3)組織検体を、2004年から2008年までに国立研究開発法人国立がん研究センターで膵臓の外科的切除を受けた中から腫瘍、炎症のいずれも有さない被検体から得た。IV期疾患である全患者の診断は、傍大動脈リンパ節関与に基づいた。検体の使用は、国立研究開発法人国立がん研究センターの臨床研究の倫理審査委員会の指針に従って全ての患者から許可を受けた。
(cDNAマイクロアレイ)
RNA試料を細胞から抽出した。RNA試料の品質をExperion RNA Analysis Kitおよび自動電気泳動システム(Bio-Rad Laboratories)を製造会社のプロトコルに従って用いて評価した。ビオチン化cRNAをAmbion WT Expression Kit(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)を用いて0.5μg総RNAから調製し、Human Gene 2.1 ST Arrayストリップとハイブリダイズさせた。Arrayスライドを洗浄して染色し、そして45℃にて16時間GeneAtlas System(アフィメトリクス)中で走査した。マイクロアレイデータ解析をGeneSpring GX 13.1ソフトウェア(Digital Biology)を用いて行った。
RNA試料を細胞から抽出した。RNA試料の品質をExperion RNA Analysis Kitおよび自動電気泳動システム(Bio-Rad Laboratories)を製造会社のプロトコルに従って用いて評価した。ビオチン化cRNAをAmbion WT Expression Kit(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)を用いて0.5μg総RNAから調製し、Human Gene 2.1 ST Arrayストリップとハイブリダイズさせた。Arrayスライドを洗浄して染色し、そして45℃にて16時間GeneAtlas System(アフィメトリクス)中で走査した。マイクロアレイデータ解析をGeneSpring GX 13.1ソフトウェア(Digital Biology)を用いて行った。
(定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応:qRT−PCR)
総RNAをhigh pure RNA isolation kit(Roche Diagnostics GmbH)を用いて抽出した。ワンステップqRT−PCRを、既報(Fujita-Sato Sら、Cancer Res 2015;75:2851-62)の通り、LightCycler480 II System(Roche Diagnostics GmbH)で、プライマーセットと共にQuantiTect SYBR Green Reverse Transcription PCR Kit(株式会社キアゲン)を用いて行った。
総RNAをhigh pure RNA isolation kit(Roche Diagnostics GmbH)を用いて抽出した。ワンステップqRT−PCRを、既報(Fujita-Sato Sら、Cancer Res 2015;75:2851-62)の通り、LightCycler480 II System(Roche Diagnostics GmbH)で、プライマーセットと共にQuantiTect SYBR Green Reverse Transcription PCR Kit(株式会社キアゲン)を用いて行った。
(ASO、siRNAおよびpDNAのトランスフェクション)
細胞を6ウェルまたは24ウェルのプレート中に70%コンフルエンスで播種した。16時間後、細胞を以下の分析のためにLipofectamin RNAiMaxまたはLipofectamin 2000試薬(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)を用いて、以下でトランスフェクトした:その両端に2’,4’−BNA/LNAまたはAmNAを配置したアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、siRNA、またはSNORA23またはSYNE2発現プラスミド(pDNA)(ASO、siRNAおよびpDNAについては最終濃度20nMで用いた)。
細胞を6ウェルまたは24ウェルのプレート中に70%コンフルエンスで播種した。16時間後、細胞を以下の分析のためにLipofectamin RNAiMaxまたはLipofectamin 2000試薬(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)を用いて、以下でトランスフェクトした:その両端に2’,4’−BNA/LNAまたはAmNAを配置したアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、siRNA、またはSNORA23またはSYNE2発現プラスミド(pDNA)(ASO、siRNAおよびpDNAについては最終濃度20nMで用いた)。
3’UTR領域にSNORA23配列を有する緑色蛍光タンパク質(EmGFP)の人工合成cDNAをタカラバイオ社に合成委託し、その5’末端にBamHIおよび3’末端にHindIIIの制限酵素認識塩基配列が付加されたもの(この塩基配列を配列番号10に示す。配列番号10の1位〜723位がEmGFP(対応アミノ酸配列を配列番号11に示す)、730位〜918位がSNORA23である。)を含むクローニングベクターの形態で入手した。クローニングベクターからcDNA断片をBamHI/HindIIIの制限酵素で切り出し、pBApo-CMV Neo plasmid(タカラバイオ)のBamHIとHindIIIとの制限部位の間に挿入して、SNORA23発現プラスミドを構築した。ヒトSYNE2の人工合成cDNA(配列番号8の891位〜2180位の塩基配列をコドン最適化した配列)をEurofin社に合成委託し、その5’末端にBamHIおよび3’末端にHindIIIの制限酵素認識塩基配列が付加されたもの(配列番号12(対応アミノ酸配列を配列番号13に示す)を含むクローニングベクターの形態で入手した。同様に、クローニングベクターからcDNA断片をBamHI/HindIIIの制限酵素で切り出し、pBApo-CMV Neo plasmid(タカラバイオ)のBamHIとHindIIIとの制限部位の間に挿入して、SYNE2発現プラスミドを構築した。コントロールとして、モックpDNA(SNORA23やSYNE2等のオープンリーディングフレームを含まないプラスミド)でのトランスフェクションを行った。
(細胞内SNORA23 RNA検出のための共焦点レーザ顕微鏡観察)
SNORA23 RNAの細胞内局在を調べるために、細胞をLipofectamine RNAiMaxおよび下記の2つの蛍光標識LNAプローブ(20nM)を用いてトランスフェクトした。蛍光標識LNAプローブは、5’−[Alexa488]−[アミノリンカー]−GAAacctatgmCAmCa−3’(配列番号14)および5’−mCTAccagacamCAGa−[アミノリンカー]−[Alexa647]−3’(配列番号15)(大文字:LNA;小文字:DNA;mC:5’−メチルシトシン;ジーンデザイン株式会社)であり、これらはそれぞれ、配列番号1に示されるSNORA23の塩基配列の5’末端部位から17〜30番目および32〜45番目の隣接する配列領域を標的とするように設計したものである。16時間後、細胞内SNORA23シグナルをC2共焦点レーザ顕微鏡(株式会社ニコン)によって観察した。
SNORA23 RNAの細胞内局在を調べるために、細胞をLipofectamine RNAiMaxおよび下記の2つの蛍光標識LNAプローブ(20nM)を用いてトランスフェクトした。蛍光標識LNAプローブは、5’−[Alexa488]−[アミノリンカー]−GAAacctatgmCAmCa−3’(配列番号14)および5’−mCTAccagacamCAGa−[アミノリンカー]−[Alexa647]−3’(配列番号15)(大文字:LNA;小文字:DNA;mC:5’−メチルシトシン;ジーンデザイン株式会社)であり、これらはそれぞれ、配列番号1に示されるSNORA23の塩基配列の5’末端部位から17〜30番目および32〜45番目の隣接する配列領域を標的とするように設計したものである。16時間後、細胞内SNORA23シグナルをC2共焦点レーザ顕微鏡(株式会社ニコン)によって観察した。
(足場依存性細胞増殖アッセイ)
細胞を96ウェルプレートに5×103細胞/ウェルの密度で播種し、増殖率をCell Counting kit-8(CCK−8;株式会社同仁化学研究所)を用いて決定した。簡単には、10μlのCCK−8溶液を各ウェルに添加した後、2時間インキュベートした。反応液の450nm(参照600nm)での吸光度をGloMax-Multi+(プロメガ株式会社)で測定した。
細胞を96ウェルプレートに5×103細胞/ウェルの密度で播種し、増殖率をCell Counting kit-8(CCK−8;株式会社同仁化学研究所)を用いて決定した。簡単には、10μlのCCK−8溶液を各ウェルに添加した後、2時間インキュベートした。反応液の450nm(参照600nm)での吸光度をGloMax-Multi+(プロメガ株式会社)で測定した。
(軟寒天コロニー形成アッセイ)
足場非依存性細胞増殖を以下に記載のように軟寒天コロニー形成アッセイにより評価した。
足場非依存性細胞増殖を以下に記載のように軟寒天コロニー形成アッセイにより評価した。
予め温めておいた0.75mlの2×DMEM(20%FBS、200U/mlペニシリン、および200μg/mlストレプトマイシンを含有する)および0.75mlの融解した1.2%アガロースゲル溶液を混合し、6ウェルプレートのウェルに移した。簡単には、示したASOでトランスフェクトした細胞(1×104細胞/ウェル)を0.75mlの2×DMEM(0.6%寒天、および20%FBS、200U/mlペニシリン、および200μg/mlストレプトマイシンを含む)の上層に混合した。3週間後、培養した細胞をクリスタルバイオレット(シグマアルドリッチ)で染色し、コロニーの数を計数した。
(スフェロイド形成アッセイ)
足場非依存性細胞増殖をスフェロイド形成アッセイにより評価した。5×104細胞/mlの細胞懸濁液をUltra-Low Attachment Surface 96ウェルプレート(カタログ番号3474.コーニング)上に100μl/ウェルで播種した。細胞を加湿インキュベータ中5%CO2で37℃にてインキュベートした。スフェロイド増殖を上記のようにCCK−8キットを用いて4日間毎日モニタリングした。
足場非依存性細胞増殖をスフェロイド形成アッセイにより評価した。5×104細胞/mlの細胞懸濁液をUltra-Low Attachment Surface 96ウェルプレート(カタログ番号3474.コーニング)上に100μl/ウェルで播種した。細胞を加湿インキュベータ中5%CO2で37℃にてインキュベートした。スフェロイド増殖を上記のようにCCK−8キットを用いて4日間毎日モニタリングした。
(細胞浸潤アッセイ)
若干の変更を加えた以外は既報(Cui Lら、PLoS One 2010;5:e12121)通りにPDAC細胞の浸潤性を評価した。
若干の変更を加えた以外は既報(Cui Lら、PLoS One 2010;5:e12121)通りにPDAC細胞の浸潤性を評価した。
フィルター(孔サイズ:8.0μm)の上部表面をmatrigel(20μg/ウェル,BD Biosciences)でコーティングした。ASOトランスフェクションを行う場合はそのトランスフェクションから48時間後またはpDNA発現プラスミドでのトランスフェクションを行う場合はトランスフェクションから72時間後、細胞を上部チャンバー中に2.5×104細胞/ウェルの密度で播種し、48時間(MIA PaCa2細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞)または72時間(Suit2細胞およびSuit2−HLMC細胞)インキュベートした。フィルターの下側に移動した細胞を固定し、ヘマトキシリン−エオシンで染色し、次いでEclipse 55i光学顕微鏡(株式会社ニコン)下で計数した。
(動物処理)
全ての動物実験を国立大学法人九州大学の動物実験委員会により認可されたプロトコルに従って行った。雌の6週齢無胸線ヌードマウス(BALB/cAnNCrj−nu)を日本チャールズリバー株式会社から購入し、実験開始前1週間、馴化させた。外科的手順は、動物の苦痛を最小限にするためにイソフルラン麻酔下で行った。
全ての動物実験を国立大学法人九州大学の動物実験委員会により認可されたプロトコルに従って行った。雌の6週齢無胸線ヌードマウス(BALB/cAnNCrj−nu)を日本チャールズリバー株式会社から購入し、実験開始前1週間、馴化させた。外科的手順は、動物の苦痛を最小限にするためにイソフルラン麻酔下で行った。
Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、Lipofectamine RNAiMAX(インビトロジェン)を製造会社のプロトコルに従って用いてSNORA23 ASO#1(配列番号5)またはコントロールASO(配列番号18)(下記実施例3の表1:最終濃度20nM)でトランスフェクトした。48時間後、Suit2−HLMCにつき1×105細胞またはMIA PaCa2−HLMCにつき2×105細胞にて細胞を懸濁し、ヌードマウスの脾臓の被膜下領域に移植した(各群につきn=5)。1週間後、SNORA23 ASOまたはコントロールASOを、3週間の間、週に一度でマウス頸部に皮下(s.c.)投与した(10mg/kg体重)。イソフルラン麻酔下でD−ルシフェリン(100mg/kg)を皮下注射後、4週まで、週に一度でIVIS Imaging System(パーキンエルマー)を用いてマウス全身の生物発光シグナル(ルシフェラーゼ活性)を測定し(「IVIS画像化」ともいう)、マウス体内における腫瘍増殖を評価した。マウスを28日目に安楽死させ、その膵臓および肝臓を摘出し、IVIS画像化により腫瘍の浸潤および肝転移のレベルを定量した。
(組織化学)
腫瘍組織試料を異種移植腫瘍保有マウスから採取し、5μm厚に切断し、4%パラホルムアルデヒドで4℃にて15分間固定した。切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、腫瘍浸潤の状態を解析した。
腫瘍組織試料を異種移植腫瘍保有マウスから採取し、5μm厚に切断し、4%パラホルムアルデヒドで4℃にて15分間固定した。切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、腫瘍浸潤の状態を解析した。
(統計学的解析)
JMP Pro 12.2.0ソフトウェア(SAS Institute)を用いて統計学的解析を行った。平均値±標準偏差として結果を示す。スチューデントt検定またはマン・ホイットニーU検定を用いて2群間の差を統計学的に解析した。ピアソンのχ2検定を適用してSNORA23発現と臨床病理学的パラメーターとの間の相関を解析した。カプラン・マイヤー法によって生存曲線を作成し、ログランク検定を用いて解析した。P値が0.05未満であるとき統計学的に有意であるとした。
JMP Pro 12.2.0ソフトウェア(SAS Institute)を用いて統計学的解析を行った。平均値±標準偏差として結果を示す。スチューデントt検定またはマン・ホイットニーU検定を用いて2群間の差を統計学的に解析した。ピアソンのχ2検定を適用してSNORA23発現と臨床病理学的パラメーターとの間の相関を解析した。カプラン・マイヤー法によって生存曲線を作成し、ログランク検定を用いて解析した。P値が0.05未満であるとき統計学的に有意であるとした。
(ウェスタンブロット解析) 培養細胞をSDS緩衝液(60mM Tris−HCl(pH6.8)、0.5%グリセロール、2%SDS)中に採取した。抽出タンパク質試料(15μg)を、既報(Shinkai Kら、Int J Cancer 2016;139:433-45)通りに、NuPAGEドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド電気泳動ゲル(Invitrogen)上で電気泳動し、二フッ化ポリビニリデン膜に転写し、以下の一次抗体を用いてウェスタンブロット解析に供した:(標的、供給会社、カタログ番号、力価の順に示す)SYNE2、Proteintech、25265−1−AP、1:1000;IPO7、Santa Cruz、SC−134913、1:1000;LGR5、Abcam、ab75732、1:1000;p21/Cip、BD Pharmingen、556431、1:1000;PDCH11X、Proteintech、20070−1−AP、1:1000。
(プロテオミクス解析)
プロテオミクスデータを下記のようにして得、スペクトルカウント法またはラベルフリー定量法を用いて解析に供した。
プロテオミクスデータを下記のようにして得、スペクトルカウント法またはラベルフリー定量法を用いて解析に供した。
2%SDS、7M尿素、および100mM Tris−HCl(pH8.8)からなる200μl溶液に細胞(2×106)を溶解し、次いでBioruptor(Diagenode社)を用いて超音波処理(5回処理。各回30秒で間に30秒)に供した。試料を等容量の水で希釈し、再度超音波処理に供した。タンパク質濃度をBCAアッセイ(バイオ・ラッド)を用いて決定した。タンパク質試料(200μg)をメタノール−クロロホルム沈降に供した。生じたペレットを消化緩衝液(0.5M炭酸水素トリエチルアンモニウム:7M水酸化グアニジンを含有する)中に溶解し、次いで56℃にて30分間加熱した。各試料を等容量の水で希釈し、タンパク質濃度をBCAアッセイを用いて決定した。
残りの溶液(50μl)を50μlの水で希釈し、リシルエンドペプチダーゼ(登録商標)(2μg,和光純薬工業株式会社)により37℃にて4時間消化に供した。100μlの水を添加後、試料をトリプシン(2μg,サーモフィッシャー・サイエンティフィック)で37℃にて4時間さらに消化した。システイン/シスチン残基をブロックするために、消化物を0.625mM トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)で37℃にて30分間処理し、次いで3.125mM 2−ヨードアセトアミド(シグマアルドリッチ)で室温にて30分間アルキル化し、2.5mM N−アセチル−L−システイン(シグマアルドリッチ)で反応停止した。
得られたペプチドを、ナノnanoLC装置(Advance LC,Michrom BioResources社)およびHTC−PALオートサンプラー(CTC Analytics)と連結したLTQ Orbitrap Velos Pro質量分析計(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)からなるシステムを用いてナノスケール液体クロマトグラフィー(ナノLC)−MS/MS分析に供した。ペプチド分離を、3μm C18L−column(化学物質評価研究機構)を充填したヒューズドシリカキャピラリー(内径0.1mm;長さ15cm;先端内径0.05mm)を用いて行った。移動相は0.1%ギ酸/2%アセトニトリル(A)および0.1%ギ酸/90%アセトニトリル(B)であった。ペプチドを250nL/分の流速にてリニアグラジエント5%〜40%Bで100分、40%〜95%Bで1分間溶出し、95%B中で9分間維持した。衝突誘起解離(CID)スペクトルを動的排除オプションによるデータ依存スキャンモードで自動取得した。フルMSスペクトルを300〜2000の質量/電荷(m/z)範囲でOrbitrapを用いて得た(m/z400で60,000の分解能であった)。フルMSスペクトル中の12の最も強い前駆イオン(最小イオンカウント閾値1,000)を引き続くイオン捕捉MS/MS分析(自動利得制御(AGC)モード)のために選択した。AGCをフルMSについて1×106、CID MS/MSについて1×104に設定した。正規化した衝突エネルギー値を35%に設定した。分析の間質量を最小化するようにロック質量関数を有効にした。生ファイルを、IPI human database version 3.1.6に対してMASCOTアルゴリズム(ver.2.4.1)を用いてProteomeDiscovere 1.4(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)によって加工処理した。使用酵素としてトリプシンを選択し、切れ残り(Missed Cleavage)の許容数を2に設定し、固定修飾としてシステインに対するカルバミドメチル化を選択した。N末端に対する酸化したメチオニンおよびアセチル化を変動修飾として調査した。前駆体質量許容差は10ppmであり、MS/MSイオンの許容差は0.8Daであった。FDR(false discovery rate)をPercolatorアルゴリズムによって決定した(q値<0.01)。
(実施例1:転移性表現型のPDAC細胞株におけるSNORA23 RNAの過剰発現の検出)
高転移性の膵管腺癌(PDAC)細胞(Suit2−HLMCおよびMIA PaCa2−HLMC)を樹立した。Suit2−HLMC細胞株およびMIA PaCa2−HLMC細胞株は5匹全てのマウス(100%)においてより高い割合で肝臓転移を生じたのに対し、それぞれの親細胞株では肝転移が生じたのは5匹のうち2匹のマウス(40%)および5匹のうち0匹(0%)であった。
高転移性の膵管腺癌(PDAC)細胞(Suit2−HLMCおよびMIA PaCa2−HLMC)を樹立した。Suit2−HLMC細胞株およびMIA PaCa2−HLMC細胞株は5匹全てのマウス(100%)においてより高い割合で肝臓転移を生じたのに対し、それぞれの親細胞株では肝転移が生じたのは5匹のうち2匹のマウス(40%)および5匹のうち0匹(0%)であった。
(a)肝転移の原因となる要因を同定するために、Suit2−HLMC細胞、MIA PaCa2−HLMC細胞およびそれらの親細胞株中のmRNAおよび非翻訳RNAのcDNAマイクロアレイ解析を行った。
図1−1のaは、Suit2およびMIA PaCa2癌細胞について、HLMC細胞(「HLMC」)中のmRNAおよび非翻訳RNAが親細胞(「WT」)の2倍以上であった遺伝子を表す模式図である。
図1−1のaに示されるように、Suit2−HLMC細胞においては8遺伝子(6遺伝子+SNORA23 RNAおよびCEA mRNA)、MIA PaCa2−HLMC細胞においては6遺伝子(4遺伝子+SNORA23 RNAおよびCEA mRNA)が、それらのそれぞれの親細胞の2倍以上にアップレギュレートされた。また、これらの遺伝子の中で癌胎児性抗原(CEA)およびSNORA23が、Suit2−HMLC およびMIA PaCa2−HMLC細胞株の両方において共通にアップレギュレートされた。
(b,c)CEA mRNAおよびSNORA23 RNA発現のqRT−PCR解析によって、マイクロアレイ解析の結果を検証した。
qRT−PCR解析によるSNORA23の発現測定に関して、用いたプライマーセットは下記である:
(SNORA23)
フォワード:
5’−TCATGCGGCCAAAGAGTAAC−3’(配列番号16)
リバース:
5’−GGCCAGTGGTAGATGTGTCC−3’(配列番号17)
(18S rRNA)
フォワード:
5’−GTAACCCGTTGAACCCCATT−3’(配列番号18)
リバース:
5’−CCATCCAATCGGTAGTAGCG−3’(配列番号19)
(SNORA23)
フォワード:
5’−TCATGCGGCCAAAGAGTAAC−3’(配列番号16)
リバース:
5’−GGCCAGTGGTAGATGTGTCC−3’(配列番号17)
(18S rRNA)
フォワード:
5’−GTAACCCGTTGAACCCCATT−3’(配列番号18)
リバース:
5’−CCATCCAATCGGTAGTAGCG−3’(配列番号19)
図1−1のbおよびcは、qRT−PCRによる測定により得られた、Suit2およびMIA PaCa2の各々について、親細胞(「WT」)を1とした場合の高転移性PDAC細胞(「HLMC」)のCEA mRNA(図1b)およびSNORA23 RNA(図1c)の相対的発現量を示すグラフである。
図1−1のbおよびcに示されるように、qRT−PCR解析により、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞において、CEAおよびSNORA23ともに、それらの親細胞よりも発現がアップレギュレートされたことが確認された(CEAについては、Suit2−HLMC細胞は6.74倍であり、およびMIA PaCa2−HLMC細胞は2.69倍;SNORA23については、Suit2−HLMC細胞は1.63倍であり、およびMIA PaCa2−HLMC細胞は1.72倍)。
(d)qRT−PCRによって、種々の膵癌細胞株、正常膵管上皮(NPDE)細胞、および癌関連線維芽細胞(CAF)におけるSNORA23発現を測定した。
図1−1のdは、15種の膵癌(PDAC)細胞株(AsPC−1、MIA PaCa−2、PANC−1、CFPAC−1、Hs766T、SW1990、BxPC−3、CAPAN−1、CAPAN−2、Suit−2、H48N、KP−2、KP−3、KP−1N、およびHPC−3)、非癌性不死化ヒト膵管上皮(HPDE)細胞、正常膵管上皮(NPDE)細胞、および3種の癌関連線維芽細胞(CAF−1、CAF−2、CAF−3)におけるSNORA23 RNAの相対的発現量を示すグラフである。SNORA23 RNA発現を18S rRNAによって正規化した。
図1−1のdに示されるように、PDAC細胞におけるSNORA23発現レベルはNPDE細胞およびCAFにおけるよりも有意に高かった(15〜62倍)。不死化ヒト膵管上皮(HPDE)細胞株中の発現レベルは、低いレベルのSNORA23発現を伴ういくつかのPDAC細胞株と同様であった。
したがって、qRT−PCR解析は、SNORA23 RNAが、15種の膵癌細胞株で中〜高発現レベル、非癌性不死化膵管上皮細胞(HPDE)で中発現レベルであるのに対し、正常ヒト膵管上皮細胞(NPDE)または3種の癌関連線維芽細胞(CAF−1、CAF−2、CAF−3)では微発現レベルであることを実証した。
(e)SNORA23の細胞下局在を調べるために、SNORA23に結合する蛍光標識プローブをSuit2−HLMC細胞、MIA PaCa2−HLMC細胞、それらの親細胞および、ならびにNPDE細胞にトランスフェクトした。SNORA23シグナルを正確に検出するために、SNORA23中の近接する配列にそれぞれ結合する2種の蛍光標識2’,4’−BNA/LNAプローブを用いた(それぞれAlexa−488およびAlexa−647で標識した。共に存在すれば、より多くのSNORA23特異的シグナルが示される)。Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、SNORA23をノックダウンした細胞(SNORA23 ASO#1(下記実施例3参照)でトランスフェクトした細胞)にも同様に2種の蛍光標識プローブをトランスフェクトした。
図1−2のeは、Suit2およびMIA PaCa2の各々について親細胞(「WT」)、高転移性PDAC細胞(「HLMC」)およびSNORA23ノックダウン細胞(「HLMC−SN−KD」)のAlexa−488標識蛍光顕微鏡画像(「Alexa−488」)、Alexa−647標識蛍光顕微鏡画像(「Alexa−647」)、およびそれらの合併画像(「合併」)、ならびにNPDE細胞のAlexa−488標識蛍光顕微鏡画像(「Alexa−488」)、Alexa−647標識蛍光顕微鏡画像(「Alexa−647」)および位相差顕微鏡画像、そして破線による四角部分に、MIA PaCa2の親細胞(「WT」)および高転移性PDAC細胞(「HLMC」)の合併画像中の破断線四角部の拡大画像として、位相差顕微鏡画像および蛍光合併画像を示す。スケールバー:100μm。
SNORA23シグナルは、NPDE細胞よりも、Suit2細胞およびMIA PaCa2細胞で高かった。Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞で、それらの親細胞株に比較してより強い核局在SNORA23シグナルが観察された。SNORA23 ASOでトランスフェクトしたSuit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞では蛍光シグナルが消失した。これによってSNORA23シグナルの特異性が確認された。
(実施例2:PDAC患者におけるSNORA23過剰発現の検出および無病生存率との逆相関)
(a)PDAC罹患患者(n=150)(その中に、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN;n=16)および粘液性嚢胞腫瘍(MCN;n=1)に関連した浸潤癌を含む)から外科的に切除した臨床検体中のSNORA23発現を、qRT−PCRによって評価した。比較のために、正常な肝臓組織(n=3)および膵臓組織(n=8)におけるSNORA23発現もまた調べた。
(a)PDAC罹患患者(n=150)(その中に、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN;n=16)および粘液性嚢胞腫瘍(MCN;n=1)に関連した浸潤癌を含む)から外科的に切除した臨床検体中のSNORA23発現を、qRT−PCRによって評価した。比較のために、正常な肝臓組織(n=3)および膵臓組織(n=8)におけるSNORA23発現もまた調べた。
図2aは、qRT−PCR解析によるPDAC(n=150;IMPN/MCN関連癌を含む)ならびに正常な肝臓組織(n=3)および膵臓組織(n=8)におけるSNORA23の相対的発現についての箱ひげ図(ボックスプロット)である。箱の中央の横線は中央値を示し、ひげ(箱の上下の短い横線)は範囲を示す(P<0.001,マン・ホイットニーU検定)。
SNORA23発現の強さは、PDAC組織において正常な膵臓組織および肝臓組織よりも有意に高かった(0.53±0.43(PDAC組織)対0.043±0.016(正常膵臓組織)および0.055±0.015(正常肝臓組織)、それぞれP<0.001およびP=0.004)。共通型のPDACにおけるSNORA23のレベル(n=133(IMPN/MCN関連癌を除いたもの),0.52±0.39)は、IPMN/MCN関連癌のPDAC(n=17,0.53±0.73)と有意差はなかった(P=0.12)。
(b)PDAC患者を、qRT−PCR解析で決定した0.45のカットオフ値によって、SNORA23高発現(n=76)またはSNORA23低発現(n=74)のいずれかの群に振り分けた。
SNORA23発現の強さは、化学療法歴との相関は有意であったが、性別、齢、CEA/CA19−9腫瘍マーカー、腫瘍の大きさ、またはTNM(腫瘍進行度分類)およびUICC(国際対がん連合)の病期の臨床パラメーターとは有意に関連するものでなかった(P=0.036)。病理学的パラメーターに関しては、SNORA23発現の強さは、血管浸潤(P=0.015)およびIPMN/MCN(P=0.021)と有意に関連した。逆に、リンパ管浸潤と境界的には関連したことを除いて、SNORA23発現のレベルと組織構造および神経または神経叢浸潤との間で相関はなかった(P=0.073)。
図2bは、カプラン・メイヤー法に従って作成した、SNORA23高発現および低発現の各PDAC患者群について、無病生存率(DFS)および全生存率(OS)のそれぞれの生存曲線を示す。無病生存率(DFS)は、SNORA23高発現のPDAC患者において低発現の患者よりも有意に短かった(P=0.0218)(生存期間の中央値:8.2ケ月(高発現)に対し11.2ケ月(低発現);5年生存率:10.9%(高発現)に対し29.2%(低発現))。他方、全生存率(OS)は2群間に有意差はなかった(P=0.666;生存期間の中央値:19.1ケ月(高発現)に対し26.3ケ月(低発現);5年生存率:28.0%(高発現)に対し37.2%(低発現))。
(実施例3:SNORA23アンチセンスオリゴヌクレオドの設計およびSNORA23ノックダウンによるRNA発現の検討)
SNORA23サイレンシングのために、表1に示すようにアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の配列を設計した。SNORA23 ASO#1(配列番号5)および#2(配列番号6)は、AmNAを両末端領域に含むギャップマーオリゴヌクレオチド(3−8−3−1)である。コントロール(配列番号20)として、LNAを両末端領域に含むギャップマーオリゴヌクレオチド(3−8−3−1)を用いた。
SNORA23サイレンシングのために、表1に示すようにアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の配列を設計した。SNORA23 ASO#1(配列番号5)および#2(配列番号6)は、AmNAを両末端領域に含むギャップマーオリゴヌクレオチド(3−8−3−1)である。コントロール(配列番号20)として、LNAを両末端領域に含むギャップマーオリゴヌクレオチド(3−8−3−1)を用いた。
SNORA23 ASO#1(配列番号5)およびASO#2(配列番号6)は、配列番号1に示されるSNORA23遺伝子の塩基配列の5’末端部位から19番目〜33番目の領域および151番目〜165番目の領域をそれぞれ標的とするように設計した。配列番号5および配列番号6の各塩基配列は5’から3’方向(5’→3’)で表したものであり、配列番号1中の各標的領域配列に対する逆相補配列である。コントロールASOの配列(配列番号20)は、哺乳類動物細胞のmRNAとの相同性がないホタルルシフェラーゼ遺伝子塩基配列に結合し、哺乳類動物細胞の遺伝子発現を変化させないように設計した。
qRT−PCR解析により、SNORA23 ASO#1(配列番号5)およびSNORA23 ASO#2(配列番号6)に関して、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞の双方ともにこれらのいずれか一方を用いてトランスフェクトした場合のSNORA23 RNA発現を検証した。
図3は、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、SNORA23 ASO#1(配列番号5)でのトランスフェクション(「SN−ASO#1」)、SNORA23 ASO#2(配列番号6)でのトランスフェクション(「SN−ASO#2」)、コントロールASO(配列番号20)でのトランスフェクション(「Ctrl」)のそれぞれを行った場合のqRT−PCR解析によるRNAの相対的発現量を示すグラフである。RNA発現量は、コントロールASOでのトランスフェクション(「Ctrl」)の発現量を1とした相対値で表した。
SNORA23 ASO#1(配列番号5)およびSNORA23 ASO#2(配列番号6)の両方とも、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞におけるSNORA23 RNA発現の抑制を示した。
(実施例4:PDACにおける浸潤性へのSNORA23の関与)
Suit2およびMIA PaCa2につき、(a)それらのHLMC細胞(「HLMC」)とその親細胞(「WT」):(b)それらのHLMC細胞のSNORA23ASO(#1(配列番号5))でのトランスフェクション(「SN−KD」)(比較のためにコントロールASO(配列番号20)でトランスフェクション(「Ctrl」))後の細胞;ならびに(c)それらの親細胞のSNORA23 pDNAのトランスフェクション(「SN−OE」)(比較のためにモックpDNAトランスフェクション(「Mock」))後の細胞を、matrigel浸潤アッセイに供した。
Suit2およびMIA PaCa2につき、(a)それらのHLMC細胞(「HLMC」)とその親細胞(「WT」):(b)それらのHLMC細胞のSNORA23ASO(#1(配列番号5))でのトランスフェクション(「SN−KD」)(比較のためにコントロールASO(配列番号20)でトランスフェクション(「Ctrl」))後の細胞;ならびに(c)それらの親細胞のSNORA23 pDNAのトランスフェクション(「SN−OE」)(比較のためにモックpDNAトランスフェクション(「Mock」))後の細胞を、matrigel浸潤アッセイに供した。
図4aは、Suit2およびMIA PaCa2について、HLMC細胞(「HLMC」)および親細胞(「WT」)のmatrigel浸潤アッセイの代表的な画像と、浸潤細胞数を示すグラフとを示す。スケールバー:100μm。
浸潤細胞数は、Suit2−HLMCおよびMIA PaCa2−HLMCにおいてそれらの親細胞株と比較して有意に増大した(共にP<0.0001)。
図4bは、SNORA23ASOでのトランスフェクション(「SN−KD」)およびコントロールASOでのトランスフェクション(「Ctrl」)のいずれかから48時間後のSuit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞のmatrigel浸潤アッセイの代表的な画像と、浸潤細胞数を示すグラフとを示す。スケールバー:100μm。
Matrigelに浸潤した細胞の数は、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞において、コントロールASOでのトランスフェクション(「Ctrl」)に比較して、SNORA23ASOでのトランスフェクションにより生じたSNORA23ノックダウン(「SN−KD」)によって有意に減少した(共にP=0.0002)。
図4cは、SNORA23 pDNAのトランスフェクション(「SN−OE」)およびモックpDNAトランスフェクション(「Mock」)のいずれかから72時間後のSuit2細胞およびMIA PaCa2細胞のmatrigel浸潤アッセイの代表的な画像と、浸潤細胞数を示すグラフとを示す。スケールバー:100μm。
Matrigelに浸潤した細胞の数は、SNORA23を過剰発現するSuit2細胞およびMIA PaCa2細胞(「SN−OE」)において、モックpDNAトランスフェクトした細胞(「Mock」)と比較して有意に増加した(共にP<0.0001)。
(実施例5:PDACにおける足場依存性生存へのSNORA23の関与)
本実施例では、上記実施例4の(a)〜(c)の各細胞を、足場依存性細胞増殖(CCK−8使用のアッセイ)および足場非依存性細胞増殖(軟寒天コロニー形成アッセイ)について評価した。
本実施例では、上記実施例4の(a)〜(c)の各細胞を、足場依存性細胞増殖(CCK−8使用のアッセイ)および足場非依存性細胞増殖(軟寒天コロニー形成アッセイ)について評価した。
(a,b)Suit2およびMIA PaCa2につき、それらのHLMC細胞(「HLMC」)とその親細胞(「WT」)。
図5aは、Suit2およびMIA PaCa2につき、それらのHLMC細胞(「HLMC」:四角)とその親細胞(「WT」:菱形)についての、足場依存性細胞増殖アッセイにおける細胞増殖の経時変化を示すグラフである。この結果、足場依存性増殖では、Suit2− HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞とそれらの親細胞との間で差はなかった。
図5bは、Suit2およびMIA PaCa2につき、それらのHLMC細胞(「HLMC」)とその親細胞(「WT」)についての軟寒天コロニー形成アッセイの代表的な画像と、形成されたコロニー数を示すグラフとを示す。
コロニーの数は、Suit2−HLMC細胞およびMIA Paca2−HLMC細胞において、それらの親細胞株よりも有意に増大した(P=0.0005(Suit2)、P=0.028(MIA Paca2))。
(c,d)Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞につき、SNORA23ASO(#1(配列番号5))でのトランスフェクション(「SN−KD」)およびコントロールASO(配列番号20)でのトランスフェクション(「Ctrl」)。
図5cは、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMCにつき、それらのSNORA23ASOでのトランスフェクション(「SN−KD」:四角)とコントロールASOでのトランスフェクション(「Ctrl」:菱形)についての、足場依存性細胞増殖アッセイにおける細胞増殖の経時変化を示すグラフである。図5c中、**P<0.01,+P<0.001。
足場依存性増殖は、SNORA23ノックダウンで処理したMIA PaCa2−HLMC細胞でコントロールと比較して有意に抑制されたが、Suit2−HLMC細胞では差は明確には見られなかった。
図5dは、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMCにつき、それらのSNORA23ASOでのトランスフェクション(「SN−KD」)とコントロールASOでのトランスフェクション(「Ctrl」)についての、軟寒天コロニー形成アッセイの代表的な画像と、形成されたコロニー数を示すグラフとを示す。
コロニーの数は、SNORA23ノックダウンを行ったMIA PaCa2−HLMC細胞において、コントロールよりも有意に減少した(P=0.0017)。SNORA23ノックダウンを行ったSuit2−HLMC細胞でも有意差はないものの軽度の減少は見られた。
(e,f,g)Suit2細胞およびMIA PaCa2細胞につき、SNORA23 pDNAのトランスフェクション(「SN−OE」)およびモックpDNAトランスフェクション(「Ctrl」または「Mock」)。
図5eは、Suit2細胞およびMIA PaCa2につき、それらのSNORA23 pDNAでのトランスフェクション(「SN−OE」:四角)とモックpDNAトランスフェクション(「Ctrl」:菱形)についての、足場依存性細胞増殖アッセイにおける細胞増殖の経時変化を示すグラフである。
足場依存性増殖は、SNORA23 pDNAでトランスフェクトしたSuit2細胞およびMIA PaCa2細胞において、モックコントロールと比較して有意に抑制された。*P<0.01。
図5fは、Suit2細胞およびMIA PaCa2につき、それらのSNORA23 pDNAでのトランスフェクション(「SN−OE」)とモックpDNAトランスフェクション(「Mock」)についての軟寒天コロニー形成アッセイの代表的な画像およびその拡大画像を示す。図5gは、Suit2細胞およびMIA PaCa2につき、それらのSNORA23 pDNAでのトランスフェクション(「SN−OE」)とモックpDNAトランスフェクション(「Mock」)についての全コロニーの数および大コロニー(1mmを超える直径を有する)の数を示すグラフを示す。
コロニー総数(全コロニーの数)は、SNORA23過剰発現(「SN−OE」)のSuit2細胞およびMIA PaCa2細胞でモックコントロールよりも有意に減少した(共にp<0.0001)。大コロニーの数は、SNORA23過剰発現(「SN−OE」)のSuit2細胞およびMIA PaCa2細胞で、モックコントロールよりも有意に増大した(共にp<0.0001)。
(実施例6:Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞のスフェロイド形成に対するSNORA23ノックダウンの効果)
Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、(a)SNORA23 ASO#1(配列番号5)でのトランスフェクション(「SNORA−KD」)(比較のためにコントロールASO(配列番号20)でトランスフェクション(「Ctrl」))、および(b)ロイシンリッチ反復含有Gプロテイン結合レセプター5(LGR5)siRNA(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、siRNA ID:s16275)でのトランスフェクション(「LGR5−KD」)(比較のためにコントロールsiRNA(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ネガティブコントロール#1)でのトランスフェクション(「Ctrl」))のそれぞれを行った場合の足場非依存性生存能を、スフェロイド形成アッセイによって調べた。LGR5はPDACのstemnessマーカーとして考えられており、比較のために本実施例で使用した。トランスフェクションに用いたASOおよびsiRNAは、最終濃度20nMであった。
Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、(a)SNORA23 ASO#1(配列番号5)でのトランスフェクション(「SNORA−KD」)(比較のためにコントロールASO(配列番号20)でトランスフェクション(「Ctrl」))、および(b)ロイシンリッチ反復含有Gプロテイン結合レセプター5(LGR5)siRNA(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、siRNA ID:s16275)でのトランスフェクション(「LGR5−KD」)(比較のためにコントロールsiRNA(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ネガティブコントロール#1)でのトランスフェクション(「Ctrl」))のそれぞれを行った場合の足場非依存性生存能を、スフェロイド形成アッセイによって調べた。LGR5はPDACのstemnessマーカーとして考えられており、比較のために本実施例で使用した。トランスフェクションに用いたASOおよびsiRNAは、最終濃度20nMであった。
図6は、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞につき、(a)SNORA23ASOでのトランスフェクション(SNORA−KD:四角)およびコントロールASOのトランスフェクション(Ctrl:菱形)ならびに(b)LGR5 siRNAでのトランスフェクション(LGR5−KD:四角)およびコントロールsiRNAでのトランスフェクション(Ctrl:菱形)についての、1日目(D1)〜4日目(D4)におけるスフェロイド形成変動を示すグラフである。スフェロイド形成値は、1日目(D1)の量を1とした相対値で表した。図6中、*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
図6に示されるように、スフェロイド形成は、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞において、SNORA23のノックダウンにより有意に抑制された。この抑制レベルは、LGR5ノックダウンによる抑制レベルより大きかった。
(実施例7:SNORA23ターゲティングASO処理後の腫瘍組織におけるSNORA23発現の阻害)
エクスビボにてSNORA23 ASO#1(配列番号5)を導入したMIA PaCa2−HLMC細胞を、ヌードマウスの側腹部に移植し、一週間後、移植後のマウスにSNORA23 ASO#1(配列番号5)またはコントロールASO(配列番号20)の溶液(10mg/kg BW)を2週間にわたり週に一度皮下注射した。マウスから腫瘍組織を切除して取り出し、種々の時点でのSNORA23発現についてqRT−PCR解析に供した。
エクスビボにてSNORA23 ASO#1(配列番号5)を導入したMIA PaCa2−HLMC細胞を、ヌードマウスの側腹部に移植し、一週間後、移植後のマウスにSNORA23 ASO#1(配列番号5)またはコントロールASO(配列番号20)の溶液(10mg/kg BW)を2週間にわたり週に一度皮下注射した。マウスから腫瘍組織を切除して取り出し、種々の時点でのSNORA23発現についてqRT−PCR解析に供した。
図7は、ASO移植前(「ASO(−)」)、ASOエクスビボ移植(「ASO(+)エクスビボ」)を行った1週目(「1週」)および2週目(「2週」)、ならびにさらに皮下注射(「エクスビボ+皮下注射」)を行ってから2週目(「2週」)および3週目(「3週」)の腫瘍組織におけるSNORA23 RNA発現量を示すグラフである。SNORA23 RNA発現量は、ASO移植前(ASO(−))を1とした相対的発現量で表した。図7中、*P<0.05(各々においてn=3)。
図7に示されるように、ASOエクスビボ移植を行った1週目と、さらに皮下注射を行ってから2週目および3週目で、ASO移植前よりも腫瘍組織におけるSNORA23 RNA発現量が有意に減少した(P<0.05)。
(実施例8:SNORA23ターゲティングASOによるマウスのPDACの播種および肝転移の抑制)
Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、SNORA23 ASO#1(配列番号5)またはコントロールASO(配列番号20)でトランスフェクトした細胞を脾臓の被膜下領域に移植したヌードマウスに、同じASOを追加して皮下投与した。このようなSNORA23 ASO#1をエクスビボ移植後に皮下投与したマウスを「SNORA23 ASO処理マウス」、コントロールASOをエクスビボ移植後に皮下投与したマウスを「コントロールマウス」ともいう。
Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、SNORA23 ASO#1(配列番号5)またはコントロールASO(配列番号20)でトランスフェクトした細胞を脾臓の被膜下領域に移植したヌードマウスに、同じASOを追加して皮下投与した。このようなSNORA23 ASO#1をエクスビボ移植後に皮下投与したマウスを「SNORA23 ASO処理マウス」、コントロールASOをエクスビボ移植後に皮下投与したマウスを「コントロールマウス」ともいう。
(a)次いでイソフルラン麻酔下でD−ルシフェリンをマウスに皮下注射した後、IVIS Imaging Systemを用いてマウス全身の生物発光シグナル(ルシフェラーゼ活性)を測定した。
図8aは、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞につき、SNORA23 ASO処理マウス(「SN−KD」:四角)と、コントロールマウス(「Ctrl」:菱形)とについての、IVIS画像化により測定したマウス全身のルシフェラーゼシグナル量の経日変化を示すグラフおよびシグナル分布を示す代表的な画像である。ルシフェラーゼシグナル量は、IVIS画像化の測定開始日を1とした場合の相対値にて表した。図8a中、*P<0.05。
図8aに示されるように、IVIS画像化により評価された腫瘍体積増大(ルシフェラーゼ活性増加)は、SNORA23 ASO#1でのエクスビボのトランスフェクションで処理したSuit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞で、その後の3週間のSNORA23 ASO#1の毎週の皮下投与によって有意に抑制された(28日目にて、Suit2−HLMCに関して、26倍(SNORA23 ASO)対745倍(コントロールASO)、P=0.0186;MIA PaCa2−HLMCに関して、119倍(SNORA23 ASO)対895倍(コントロールASO)、P=0.024)。
(b)マウス全身の生物発光シグナル測定後、マウスを安楽死させて腫瘍組織試料を採取し、ヘマトキシリンおよびエオシン染色に供し、腫瘍浸潤の状態を調べた。
図8bは、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞につき、SNORA23 ASO処理マウス(「SN−KD」)と、コントロールマウス(「Ctrl」)とからそれぞれ採取した腫瘍組織のマトキシリンおよびエオシン染色後の試料の位相差顕微鏡写真および拡大写真である。この位相差顕微鏡写真中のスケールバーは500μm(二重線)、拡大写真中のスケールバーは100μm(一重線)を表す。
図8bに示されるように、ヘマトキシリンおよびエオシン染色によって、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞ともにコントロールマウスでは脾臓の外側にかなり浸潤したのに対し、SNORA23 ASO処理したマウスでは腫瘍は脾臓内に被包されたことが観察された。さらに、SNORA23 ASO処理マウスでは、いくらかの変性した癌細胞が観察された。
(c)安楽死させたマウスから膵臓および肝臓を摘出し、この膵臓および肝臓をIVIS Imaging Systemを用いたルシフェラーゼ活性測定に供し、腫瘍の浸潤および肝転移のレベルを定量した。
図8cは、MIA PaCa2−HLMC細胞につき、SNORA23 ASO#1で処理したマウス(SN−KD)と、コントロールマウス(Ctrl)とから切除した肝臓および膵臓のIVIS画像化によるシグナル分布を示す代表的な画像および測定したルシフェラーゼシグナル量(フォトン/秒)を示すグラフである。
図8cに示されるように、IVIS画像化によって、隣接する膵臓および離れた肝臓ともに、MIA PaCa2−HLMC腫瘍(ルシフェラーゼ活性)が、コントロールマウスと比較してSNORA23−ASO処理マウスで抑制されたことが示された(膵臓浸潤度:1.4±2.2×109フォトン/秒(SNORA23−ASO)対3.4±1.6×109フォトン/秒(コントロール),n=5,P=0.135;ならびに肝転移体積:1.4±2.6×108フォトン/秒(SNORA23−ASO)対1.3±1.0×109フォトン/秒(コントロール),n=5,P=0.037)。したがって、SNORA23−ASO処理により、MIA PaCa2−HLMC腫瘍の膵臓への播種および肝臓への転移が共に抑制されたことが分かった。
(実施例9:SNORA23ノックダウンで処理したPDAC細胞における遺伝子およびタンパク質発現のプロファイリング)
SNORA23の下流因子を同定するために、SNORA23ノックダウンを行った(SNORA23ASO(ASO#1:配列番号5)でトランスフェクション)または行っていない(コントロールASO(配列番号20)でトランスフェクション)、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、cDNAマイクロアレイ解析を行った。
SNORA23の下流因子を同定するために、SNORA23ノックダウンを行った(SNORA23ASO(ASO#1:配列番号5)でトランスフェクション)または行っていない(コントロールASO(配列番号20)でトランスフェクション)、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、cDNAマイクロアレイ解析を行った。
図9は、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、それらのSNORA23ASOでのトランスフェクション(「SN−KD」)およびコントロールASOでのトランスフェクション(「Ctrl」)のそれぞれを行った場合のcDNAマイクロアレイ解析のヒートマップ(A)およびプロテオミクス解析のヒートマップ(B)を示す。
SNORA23ノックダウンは15遺伝子(Suit2−HLMC細胞)および226遺伝子(MIA PaCa2−HLMC細胞)の発現をダウンレギュレートし、そして12遺伝子(Suit2−HLMC細胞)および87遺伝子(MIA PaCa2−HLMC細胞)の発現を2倍以上アップレギュレートした。cDNAマイクロアレイ解析のヒートマップにより、両細胞株において共通して12遺伝子(SNORA23、PRKDC、BUB1、PUPN12,GPR126、LGR5、WWC2、HS2ST1、ZCCHC11、PEAK1、IPO7、HMGCS2)がダウンレギュレートされ、6種の遺伝子(CDKN1A、LAMB3、LAMC2、FAM25C、AGO2、MYO1B)がアップレギュレートされたことが示された(図9のA)。プロテオミクス解析のヒートマップにより、両細胞株において共通して12種のタンパク質(ADIRF、SART1、CAPZB、CCAR1、HPCAL1、SMCHD1、MSH2、KHDRBS3、SYNE2、KRT1、MAP4、PHB2)がダウンレギュレートされ、10種のタンパク質(SQSTM1、RPF2、PCDH11X、NOMO1、GOT1、PITRM1、PSMC6、METAP2、MARS、GFPT1)がアップレギュレートされたことが示された(図9のB)
遺伝子オントロジー解析では、AMP活性化タンパク質キナーゼ、細胞周期、EGF−EGFRおよびErbBのシグナル伝達経路がSNORA23ノックダウンにより影響を受けた。このことは、SNORA23と、PDACにおける生存、増殖および浸潤の細胞機能との間に相互作用があることを支持した。
SNORA23の下流因子候補を選択するために、スクリーニング目的で通常用いられるスペクトルカウント法およびラベルフリー定量法を用いてプロテオミクスデータを解析した。
図10は、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞においてSNORA23ノックダウンによりアップレギュレートされたタンパク質数およびダウンレギュレートされたタンパク質数について、スペクトルカウント法およびラベルフリー定量法を用いて調べた結果を示す模式図である。
図11は、ラベルフリー定量法を用いて分析したプロテオミクスデータに関して、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、それらのSNORA23ASOでのトランスフェクション(「SN−KD」)およびコントロールASOでのトランスフェクション(「Ctrl」)のそれぞれを行った場合のヒートマップを示す。
スペクトルカウント法を用いたデータ解析によれば、SNORA23ノックダウンによってダウンレギュレートされたタンパク質12種およびアップレギュレートされたタンパク質10種が、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞株の両方で見出された(図10)。ラベルフリー定量法を用いたデータ解析によれば、両細胞株において、SNORA23ノックダウンによりダウンレギュレートされたタンパク質が6種(SYNE2、PRDX5、MARCSKL1、STAU1、DIS3、SGC)であり、アップレギュレートされたタンパク質が6種(GIT1、WDR43、LRRCC1、YKU80、PCDH11X、SFRS10)であった(図10および図11)。
スペクトルカウント法およびラベルフリー定量法の両方とも、SNORA23の下流タンパク質候補として、SYNE2/nesprin−2(「SYNE2」)およびprotocadherin 11 X-linkedタンパク質(「PCDH11X」)を示す(図10)。
(実施例10:SNORA23調節mRNAおよびタンパク質の検証)
図9に列挙した遺伝子に関して、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞において、2つのSNORA23ASO(ASO#1:配列番号5およびASO#2:配列番号6)を用いて、qRT−PCRによりSNORA23ノックダウンによるmRNA発現の変化を調べた。これらの因子のうち、SYNE2、importin−7(IPO−7)、LGR5、およびサイクリン依存性キナーゼインヒビター1A(CDKN1A)(これらについてはqRT−PCRに下記のプライマー対を用いた)のmRNA発現について、両SNORA23 ASO(ASO#1および#2)のトランスフェクションにより検証した:
(SYNE2)
フォワード:
5’−TGGCACAGTTTCTGCAGTATTC−3’(配列番号21)
リバース:
5’−CCATAGCATCTTTCACCTTTCC−3’(配列番号22)
(IPO7 #1)
5’−CTGTCTGACACCAAGTATCTTGAAA−3’ (配列番号23)
5’−TTGCTGCATGACACTCTGC−3’ (配列番号24)
(IPO7 #2)
5’−GTGAACAGGGATGTACCTAATGAA−3’ (配列番号25)
5’−ATGTAAGGCCCACTTCTTGC−3’ (配列番号26)
(IPO7 #3)
5’−TTAGAGGTCATCATTCTGCAGTG−3’ (配列番号27)
5’−TCACTTGTCTTAACCTCTCTTGTCA−3’ (配列番号28)
(LGR5)
5’−ACCAGACTATGCCTTTGGAAAC−3’ (配列番号29)
5’−TTCCCAGGGAGTGGATTCTAT−3’ (配列番号30)
(CDKN1A)
5’−CCGAAGTCAGTTCCTTGTGG−3’ (配列番号31)
5’−CATGGGTTCTGACGGACAT−3’ (配列番号32)
図9に列挙した遺伝子に関して、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞において、2つのSNORA23ASO(ASO#1:配列番号5およびASO#2:配列番号6)を用いて、qRT−PCRによりSNORA23ノックダウンによるmRNA発現の変化を調べた。これらの因子のうち、SYNE2、importin−7(IPO−7)、LGR5、およびサイクリン依存性キナーゼインヒビター1A(CDKN1A)(これらについてはqRT−PCRに下記のプライマー対を用いた)のmRNA発現について、両SNORA23 ASO(ASO#1および#2)のトランスフェクションにより検証した:
(SYNE2)
フォワード:
5’−TGGCACAGTTTCTGCAGTATTC−3’(配列番号21)
リバース:
5’−CCATAGCATCTTTCACCTTTCC−3’(配列番号22)
(IPO7 #1)
5’−CTGTCTGACACCAAGTATCTTGAAA−3’ (配列番号23)
5’−TTGCTGCATGACACTCTGC−3’ (配列番号24)
(IPO7 #2)
5’−GTGAACAGGGATGTACCTAATGAA−3’ (配列番号25)
5’−ATGTAAGGCCCACTTCTTGC−3’ (配列番号26)
(IPO7 #3)
5’−TTAGAGGTCATCATTCTGCAGTG−3’ (配列番号27)
5’−TCACTTGTCTTAACCTCTCTTGTCA−3’ (配列番号28)
(LGR5)
5’−ACCAGACTATGCCTTTGGAAAC−3’ (配列番号29)
5’−TTCCCAGGGAGTGGATTCTAT−3’ (配列番号30)
(CDKN1A)
5’−CCGAAGTCAGTTCCTTGTGG−3’ (配列番号31)
5’−CATGGGTTCTGACGGACAT−3’ (配列番号32)
次に、Suit2−HLMC細胞、MIA PaCa2−HLMC細胞とそれらの親細胞との間のタンパク質発現レベルの差をウェスタンブロット解析により調べた。
図12は、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、それらの親細胞(WT)、SNORA23 ASO#1(配列番号5)でのトランスフェクション(「SNORA ASO」)、コントロールASOでのトランスフェクション(「Ctrl ASO」)および未処理の場合のそれぞれを行った場合のSYNE2のウェスタンブロット、ならびにタンパク質の相対的発現量を示すグラフである。図12中、**P<0.01(WTに対して:n=3);*P<0.05(コントロールASOに対して:n=4)。
図13は、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、それらの親細胞(WT)および未処理(HLMC)の場合、ならびにSNORA23 ASO#1(配列番号5)でのトランスフェクション(「SN−ASO#1」)、SNORA23 ASO#2(配列番号6)でのトランスフェクション(「SN−ASO#2」)、コントロールASOでのトランスフェクション(「Ctrl ASO」)および未処理の場合のそれぞれを行った場合のSYNE2のmRNA相対的発現量を示すグラフである。図13中、*P<0.05、**P<0.01(コントロールASOに対して:n=4)。
SYNE2タンパク質の発現は、親細胞と比較してHLMC型細胞で2倍にて有意に増大したが(図12)、mRNA発現はタンパク質発現に応じて変化したわけではなかった(図13)。SNORA23ノックダウンによりSuit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞でSYNE2発現がそれぞれ50%および40%減少し(図12)、mRNA発現の抑制を伴った(図13)。
他方、cDNAマイクロアレイによりスクリーニングした他の候補のLGR5、IPO−7およびCDKN1A、ならびにプロテオミクス解析により同定したPCDH11Xに関しては、HLMC型細胞と親細胞との間でタンパク質発現の差が検出されなかった。
(実施例11:Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞の浸潤および足場非依存性増殖に対するSYNE2発現の効果)
(A)Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、SYNE2 siRNA(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、siRNA ID:s23328)でのトランスフェクション(「SYNE2−siRNA」)およびコントロールsiRNA(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ネガティブコントロール#1)でのトランスフェクション(「Ctrl」))のそれぞれを行った場合を、matrigel浸潤アッセイによって調べた。トランスフェクションに用いたsiRNAは、最終濃度20nMであった。
(A)Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、SYNE2 siRNA(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、siRNA ID:s23328)でのトランスフェクション(「SYNE2−siRNA」)およびコントロールsiRNA(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ネガティブコントロール#1)でのトランスフェクション(「Ctrl」))のそれぞれを行った場合を、matrigel浸潤アッセイによって調べた。トランスフェクションに用いたsiRNAは、最終濃度20nMであった。
図14Aは、SYNE2 siRNAでのトランスフェクション(「SYNE2−siRNA」)およびコントロールsiRNAでのトランスフェクション(「Ctrl」))のいずれかから48時間後のSuit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞のmatrigel浸潤アッセイの代表的な画像と、浸潤細胞数を示すグラフとを示す。
Matrigelに浸潤した細胞の数は、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞において、コントロールsiRNAでのトランスフェクション(「Ctrl」)に比較して、SYNE2 siRNAでのトランスフェクション(「SYNE2−siRNA」)によって有意に減少した(図14A;共にP<0.01)。
(B)Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、SNORA23 ASO(ASO#1:配列番号5)およびSYNE2 pDNAのトランスフェクション(「SNORA−ASO+SYNE2−pDNA」)、SNORA23 ASOおよびモックpDNAトランスフェクション(「SNORA−ASO+Mock」)、ならびにコントロールASO(配列番号20)およびモックpDNAトランスフェクション(「Ctrl−ASO+Mock」)のそれぞれを行った場合を、matrigel浸潤アッセイによって調べた。トランスフェクションに用いたASOおよびpDNAは、それぞれ最終濃度20nMであった。
図14Bは、SNORA23 ASOおよびSYNE2 pDNAのトランスフェクション(「SNORA−ASO+SYNE2−pDNA」)、SNORA23 ASOおよびモックpDNAトランスフェクション(「SNORA−ASO+Mock」)、ならびにコントロールASOおよびモックpDNAトランスフェクション(「Ctrl−ASO+Mock」)のいずれかから48時間後のSuit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞のmatrigel浸潤アッセイの代表的な画像と、浸潤細胞数を示すグラフとを示す。
SYNE2 pDNAおよびSNORA23 ASOのトランスフェクションは、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞において、SNORA23 ASO単独と比較してそれぞれ3.5倍および7.1倍浸潤細胞数を増大した(P=0.0109およびP<0.0001)。SNORA23 ASOおよびSYNE2 pDNAのトランスフェクション(「SNORA−ASO+SYNE2−pDNA」)は、コントロールASOおよびモックpDNAプラスミドでのトランスフェクトコントロールに対しては、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞においてそれぞれ135.3%および18.8%であった(図14B)。
(C)Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、SYNE2 siRNAでのトランスフェクション(「SYNE2−siRNA」)およびコントロールsiRNAでのトランスフェクション(「Ctrl」))のそれぞれを行った場合の足場非依存性細胞増殖能を、軟寒天コロニー形成アッセイにて評価した。トランスフェクションに用いたsiRNAは、最終濃度20nMであった。
図14Cは、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、SYNE2 siRNAでのトランスフェクション(「SYNE2−siRNA」)およびコントロールsiRNAでのトランスフェクション(「Ctrl」))のそれぞれを行った場合の軟寒天コロニー形成アッセイの代表的な画像と、形成されたコロニー数を示すグラフとを示す。
Suit2−HLMC細胞およびMIA Paca2−HLMC細胞において、SYNE2 siRNAでのトランスフェクション(「SYNE2−siRNA」)が、コントロールの53.4%および2.6%に軟寒天増殖コロニー数を有意に抑制した(P=0.0164およびP<0.0001;図14C)。
(D)Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、SYNE2 siRNAでのトランスフェクション(「SYNE2−KD」)およびコントロールsiRNAでのトランスフェクション(「Ctrl」))のそれぞれを行った場合の足場非依存性細胞増殖能を、スフェロイド形成アッセイにて評価した。トランスフェクションに用いたsiRNAは、最終濃度20nMであった。
図14Dは、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、SYNE2 siRNAでのトランスフェクション(SYNE2−KD;四角)およびコントロールsiRNAでのトランスフェクション(Ctrl:菱形)のそれぞれを行った場合についての、1日目(D1)〜4日目(D4)におけるスフェロイド形成変動を示すグラフである。スフェロイド形成値は、1日目(D1)の量を1とした相対値で表した。図14D中、*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
スフェロイド形成は、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞において、SYNE2 siRNA(SYNE2ノックダウン)によりコントロールの約14%および30%に減少した(共にP<0.001(4日目);図14D)
(E)Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、SNORA23 ASO(ASO#1:配列番号5)およびSYNE2 pDNAのトランスフェクション(「SYNE−OE+SN−KD」)、SNORA23 ASOおよびモックpDNAトランスフェクション(「SN−KD」)、ならびにコントロールASO(配列番号20)およびモックpDNAトランスフェクション(「Ctrl」)のそれぞれを行った場合の足場非依存性細胞増殖能を、スフェロイド形成アッセイにて評価した。トランスフェクションに用いたASOおよびpDNAは、それぞれ最終濃度20nMであった。
図14Eは、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞について、SNORA23 ASOおよびSYNE2 pDNAのトランスフェクション(「SYNE−OE+SN−KD」)、SNORA23 ASOおよびモックpDNAトランスフェクション(「SN−KD」)、ならびにコントロールASOおよびモックpDNAトランスフェクション(「Ctrl」)のそれぞれを行った場合についての、1日目(D1)〜4日目(D4)におけるスフェロイド形成変動を示すグラフである。スフェロイド形成値は、1日目(D1)の量を1とした相対値で表した。図14E中、*P<0.05,**P<0.01,+<0.001。
スフェロイド形成は、Suit2−HLMC細胞およびMIA PaCa2−HLMC細胞において、SYNE2発現プラスミドおよびSNORA23 ASOを共にトランスフェクトした場合(「SYNE−OE+SN−KD」)、SNORA23ノックダウン(「SN−KD」)による抑制をコントロール(「Ctrl」)のレベルに完全に回復した(図14E)。
(実施例11:追加のSNORA23 ASOによるSNORA23ノックダウンの検証)
SNORA23サイレンシングのために、下記の配列のアンチセンスオリゴヌクレオチドのSNORA23 ASO#3を設計した:
SNORA23サイレンシングのために、下記の配列のアンチセンスオリゴヌクレオチドのSNORA23 ASO#3を設計した:
SNORA23 ASO#3(配列番号7)は、配列番号1に示されるSNORA23遺伝子の塩基配列の5’末端部位から153番目〜167番目の領域を標的とするように設計した。配列番号7の塩基配列は5’から3’方向(5’→3’)で表したものであり、配列番号1中の各標的領域配列に対する逆相補配列である。コントロールとして、コントロールASO(配列番号20)でのトランスフェクションを用いた。
qRT−PCR解析により、SNORA23 ASO#3(配列番号7)に関して、MIA PaCa2−HLMC細胞、Suit2−HLMC細胞、Hs766T細胞およびS2−013細胞(東北大学加齢医学研究所医用細胞資源センターより入手)の各細胞株にトランスフェクトした場合のSNORA23 RNA発現およびSYNE2 mRNA発現を検証した。
図15は、MIA PaCa2−HLMC細胞、Suit2−HLMC細胞、Hs766T細胞およびS2−013細胞の各細胞株について、SNORA23 ASO#3でのトランスフェクション(「SN−ASO#3」)、コントロールASOでのトランスフェクション(「Ctrl」)のそれぞれを行った場合のSNORA23 RNA発現(A)およびSYNE2 mRNA発現(B)を示すグラフである。RNA発現量は、コントロールASOでのトランスフェクション(「Ctrl」)の発現量を1とした相対値で表した。図15中、*P<0.05。
SNORA23 ASO#3でトランスフェクトした場合、いずれの細胞株でも、SNORA23 RNA発現およびSYNE2 mRNA発現ともに抑制が見られた。
足場依存性細胞増殖アッセイおよびスフェロイド形成アッセイにて、SNORA23 ASO#3に関して、CAPAN−2細胞、Hs766T細胞およびS2−013細胞の各細胞株にトランスフェクトした場合の効果を検証した。
図16は、CAPAN−2細胞、Hs766T細胞およびS2−013細胞の各細胞株につき、SNORA23 ASO#3のトランスフェクション(×:「SN−ASO#3」)、コントロールASOでのトランスフェクション(菱形:「Ctrl」)のそれぞれを行った場合の足場依存性細胞増殖アッセイにおける細胞増殖(A)およびスフェロイド形成(B)の経時変化を示すグラフである。図16中、*P<0.05,**P<0.01。
SNORA23 ASO#3でトランスフェクトした場合、いずれの細胞株でも、コントロールに対して増殖の抑制およびスフェロイド形成の抑制が見られた。
matrigel浸潤アッセイにて、SNORA23 ASO#3に関して、MIA PaCa2−HLMC細胞、Suit2−HLMC細胞、Hs766T細胞およびS2−013細胞の各細胞株にトランスフェクトした場合の効果を検証した。
図17は、MIA PaCa2−HLMC細胞、Suit2−HLMC細胞、Hs766T細胞およびS2−013細胞の各細胞株において、SNORA23 ASO#3のトランスフェクション((A)「SNORA23 #153」または(B)「AN−ASO#3」)、コントロールASOでのトランスフェクション(「Ctrl」)のそれぞれを行った場合のトランスフェクションの48時間後(MIA PaCa2−HLMC細胞およびHs766T細胞)または72時間後(Suit2−HLMC細胞およびS2−013細胞)の細胞のmatrigel浸潤アッセイの代表的な画像(A)および浸潤細胞数(B)を示すグラフである。
SNORA23 ASO#3でトランスフェクトした場合、どの細胞株でも、コントロールに対して増殖の抑制およびスフェロイド形成の抑制が見られた。膵癌細胞株であるHs766T細胞およびS2−013細胞では顕著に増殖およびスフェロイド形成の顕著な抑制が見られ、そして高転移性PDAC細胞であるMIA PaCa2−HLMC細胞およびSuit2−HLMC細胞でも有意な抑制効果が観察された。
本発明は、癌浸潤または転移を阻害し得る核酸に基づく治療薬の開発に寄与し得る。さらに、本発明は、難治癌を含む種々の癌の治療または予防のための医薬品の製造に有用となる。
Claims (14)
- SNORA23遺伝子発現抑制剤を含む、抗腫瘍剤。
- 前記SNORA23遺伝子発現抑制剤が、SNORA23遺伝子と結合し得、かつ該SNORA23遺伝子発現を抑制する活性を有する核酸分子を含む、請求項1に記載の抗腫瘍剤。
- 前記核酸分子が、配列番号1に示されるSNORA23遺伝子の塩基配列の一部である標的領域に相補的な配列でありかつ12〜20塩基の長さであるオリゴヌクレオチド、またはその薬理学上許容される塩を含む、請求項2に記載の抗腫瘍剤。
- 前記オリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩が、糖修飾部分を含む1個または2個以上のヌクレオチドを含む、請求項3に記載の抗腫瘍剤。
- 前記オリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩が、
以下の式(I)で表されるヌクレオシド構造:
ここで、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基、またはα群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
Aは、以下:
R1は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し;
R13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であり;
mは、0から2の整数であり;
nは、0から1の整数であり;
Xは、酸素原子、硫黄原子、またはアミノ基である、
請求項3または4に記載の抗腫瘍剤。 - 前記式(I)で表されるヌクレオシド構造が、
- 前記式(I)で表されるヌクレオシド構造が、前記式(I’)で表される構造であり、そして該式(I’)において、前記mが0であり、そして前記R1が、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、またはベンジル基である、請求項6に記載の抗腫瘍剤。
- 前記オリゴヌクレオチドが、6〜10塩基のギャップ領域、3〜5塩基の5’ウイングおよび3〜5塩基の3’ウイングからなるギャップマーであり、
該ギャップ領域が、該5’ウイングと該3’ウイングの間に位置づけられ、そして
該5’ウイングおよび該3’ウイングが、前記式(I)で表されるヌクレオシド構造を含む、
請求項5から7のいずれかに記載の抗腫瘍剤。 - 前記SNORA23発現抑制剤がSYNE2遺伝子発現を抑制する、請求項1から8のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
- SYNE2発現抑制剤を含む、抗腫瘍剤。
- 前記SYNE2発現抑制剤が、SYNE2遺伝子と結合し得、かつ該SYNE2遺伝子発現を抑制する活性を有する核酸分子を含む、請求項10に記載の抗腫瘍剤。
- 浸潤性または転移能のある腫瘍に対して用いられる、請求項1から11のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
- 膵癌、肺癌、卵巣癌または胃癌の処置に用いられる、請求項1から11のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
- 請求項1から13のいずれかに記載の抗腫瘍剤を含有する医薬組成物。
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