以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るキャップおよびキャップを備えたインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ10(以下、プリンタ10とする。)の一部を切り欠いて示す斜視図である。図1に示すように、プリンタ10は、記録媒体12に印刷を行う。記録媒体12は、例えば、記録紙である。記録媒体12は、記録紙に限定されない。記録媒体12は、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステル等の樹脂製のシートやフィルム、織布や不織布等の布帛、その他の媒体であってもよい。
以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、プリンタ10から上記作業者に近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。図面中の符号Yは主走査方向を表す。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。主走査方向Yは、記録媒体12の幅方向である。図面中の符号Xは副走査方向を表す。副走査方向Xは主走査方向Yと交差する方向(例えば、平面視で垂直に交差する方向)である。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。副走査方向Xは、記録媒体12の長手方向である。副走査方向Xは、所定の方向の一例である。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
図1に示すように、プリンタ10は、記録媒体12が載置されるプラテン14を備えている。プラテン14は、主走査方向Yに延びる。プラテン14は、載置台の一例である。プラテン14には、円筒状のグリットローラ16が設けられている。グリットローラ16は、その上面を露出させた状態でプラテン14に埋設されている。グリットローラ16は、フィードモータ(図示せず)によって駆動される。
図1に示すように、プラテン14の上方には、ガイドレール18が配置されている。ガイドレール18は、プラテン14と平行に配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール18の下方には、複数のピンチローラ20が略等間隔に配置されている。ピンチローラ20は、グリットローラ16に対向している。ピンチローラ20は、記録媒体12の厚さに応じて上下方向の位置を設定可能に構成されている。ピンチローラ20とグリットローラ16との間に記録媒体12を挟み込む。グリットローラ16およびピンチローラ20は、記録媒体12を挟持しながら記録媒体12を副走査方向Xに搬送可能に構成されている。
図1に示すように、プリンタ10は、インクヘッドユニット30を備えている。インクヘッドユニット30は、プラテン14の上方に配置されている。図2に示すように、インクヘッドユニット30は、複数のインクヘッド32A、インクヘッド32B、インクヘッド32C、インクヘッド32Dと、キャリッジ31(図1も参照)とを備えている。複数のインクヘッド32A〜32Dは、キャリッジ31に搭載されている。キャリッジ31は、メインプレート34と、ヘッドプレート36とを備えている。
図1に示すように、メインプレート34の下部には、前向きに凹んだ凹部31Aが形成されている。この凹部31Aには、ガイドレール18が係合している。凹部31Aは、ガイドレール18を上下方向に挟む。キャリッジ31は、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
図1に示すように、メインプレート34の上部には、主走査方向Yに延びる駆動ベルト24の一部が固定されている。駆動ベルト24は、環状の無端ベルトである。駆動ベルト24は、スキャンモータ(図示せず)に接続され、スキャンモータによって回転駆動される。駆動ベルト24が走行すると、キャリッジ31はガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動する。インクヘッドユニット30は、キャリッジ31を介してガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動可能である。
図3に示すように、インクヘッド32A〜32Dは、副走査方向Xの長さが主走査方向Yの長さよりも長い形状に形成されている。インクヘッド32A〜32Dは、同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。インクヘッド32A〜32Dは、キャリッジ31を介してガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。インクヘッド32A〜32Dは、副走査方向Xに並ぶ複数の第1ノズル33Xと、副走査方向Xに並ぶ複数の第2ノズル33Yと、第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yが形成されたノズル面33Zとを備えている。第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yは、プラテン14に載置された記録媒体12にインクを吐出する。第1ノズル33X内および第2ノズル33Y内は、負圧(大気圧より低い圧力)に設定されている。なお、第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yは微小であるため、図3では複数の第1ノズル33Xおよび複数の第2ノズル33Yを直線で表している。本実施形態では、インクヘッド32A〜32Dは、第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yの2種類のノズルを備えているが、1種類のノズルを備えていてもよいし、3種類以上のノズルを備えていてもよい。
図1に示すように、ヘッドプレート36は、メインプレート34の下部から前方に延びる。ヘッドプレート36には、インクヘッド32A〜32Dが搭載される。図3に示すように、ヘッドプレート36には、主走査方向Yに並ぶ複数の開口38A、開口38B、開口38C、開口38Dが形成されている。開口38A〜38Dは、副走査方向Xの長さが主走査方向Yの長さよりも長い形状に形成されている。開口38A〜38Dは、同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。開口38A〜38Dは、副走査方向Xに関して揃った位置に形成されている。開口38A〜38Dには、それぞれインクヘッド32A〜32Dが取り付けられる。第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yは、下方から見たときにそれぞれ開口38A〜38Dの内側に位置している。第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yは、それぞれ開口38A〜38Dを介して外部に露出している。図2に示すように、ノズル面33Zは、ヘッドプレート36より下方に位置する。
図1に示すように、プリンタ10は、キャッピングユニット50を備えている。キャッピングユニット50は、プラテン14の右方に位置する側方部材15に配置されている。キャッピングユニット50は、インクヘッドユニット30より下方に配置されている。キャッピングユニット50は、吸引動作を行う。図2に示すように、キャッピングユニット50は、複数のキャップ80A、キャップ80B、キャップ80C、キャップ80Dと、移動テーブル56と、押圧体57と、移動機構70と、吸引ポンプ64とを備えている。移動テーブル56は、移動体の一例である。吸引ポンプ64は、吸引装置の一例である。吸引ポンプ64は、後述する密閉空間80S内の流体(例えば空気やインク)を吸引する。吸引ポンプ64は、密閉空間80S(図8参照)内の流体を吸引することによって、インクヘッド32A〜32Dの第1ノズル33X(図3参照)および第2ノズル33Y(図3参照)から強制的にインクを吐出させる。吸引ポンプ64は、第1ノズル33X内のインクおよび第2ノズル33Y内のインクを吸引する。吸引ポンプ64は、キャップ80A〜80D内に溜まったインクを吸引する。
図4に示すように、キャップ80A〜80Dは、移動テーブル56に設けられている。キャップ80A〜80Dは、それぞれ移動テーブル56に形成された開口59A〜59Dに取り付けられている。キャップ80A〜80Dは、主走査方向Yに並ぶ。キャップ80A〜80Dは、副走査方向Xの長さが主走査方向Yの長さよりも長い形状に形成されている。キャップ80A〜80Dは、同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。キャップ80A〜80Dは、インクヘッド32A〜32Dのノズル面33Z(図3参照)を覆うようにインクヘッド32A〜32Dにそれぞれ着脱可能に形成されている。なお、「ノズル面33Zを覆う」とは、ノズル面33Zの全体が覆われる場合に限られず、少なくとも第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yの全体が覆われる場合を含む。キャップ80Aは、キャップ80B〜80Dと同じ構成であるため、以下では、キャップ80Aの説明のみ行う。
図5に示すように、キャップ80Aは、本体ケース81と、キャップ本体82と、インク吸収体83(図6も参照)とを備えている。キャップ80Aは、インクヘッド32Aに着脱可能に構成されている。
図4に示すように、本体ケース81は、平面視で長円形状に形成された第1部分81Aと、第1部分81Aを支持する一対の第2部分81Bとを備えている。第1部分81Aは、上方に向けて開口している。第1部分81Aには、キャップ本体82が収容される。図5に示すように、第2部分81Bは、第1部分81Aの前端の下部および後端の下部にそれぞれ設けられている。図8に示すように、第1部分81Aには、インク流路81Cが形成されている。インク流路81Cは、インク吸収体83の下方に位置する。インク流路81Cは、キャップ本体82の後述する排出孔82Hの下方に位置する。インク流路81Cは、上下方向に延びる。本体ケース81には、吸引チューブ65が接続されている。吸引チューブ65は、インク流路81Cと連通する。吸引チューブ65は、吸引ポンプ64(図2参照)と接続している。
図4に示すように、キャップ本体82は、平面視で長円形状に形成されている。キャップ本体82は、上方に向けて開口している。キャップ本体82のうち少なくともノズル面33Zに接触する部分(後述するリップ部82B)は、弾性変形可能な材料から形成されている。本実施形態では、キャップ本体82の全体は、弾性変形可能な材料から形成されている。キャップ本体82は、例えば、ゴムから形成されている。図8に示すように、キャップ本体82は、キャップ80Aがインクヘッド32Aに取り付けられたとき、ノズル面33Zを覆いかつノズル面33Zとの間に密閉空間80Sを形成する。キャップ本体82は、本体部82Aと、リップ部82Bと、複数の爪部82Cとを備えている。本体部82A、リップ部82Bおよび爪部82Cは、一体的に形成されている。
図8に示すように、本体部82Aは、インク吸収体83を保持する。本体部82Aは、インク吸収体83の下面83Lと対向する対向面82Tを有する。本実施形態では、対向面82Tにインク吸収体83が載置される。対向面82Tには、排出孔82Hが形成されている。図7に示すように、排出孔82Hは、本体部82Aの中央部分に形成されている。排出孔82Hは、上下方向に延びる。排出孔82Hは、吸引ポンプ64と連通している。排出孔82Hは、インク流路81Cと連通している。排出孔82Hは、密閉空間80S内の流体を排出する。
図8に示すように、リップ部82Bは、本体部82Aから上方に向けて延びる。図7に示すように、リップ部82Bは、枠状(例えば長円形状)に形成されている。リップ部82Bは、本体部82Aの対向面82Tを囲む。リップ部82Bは、上方に向けて開口している。リップ部82Bは、ノズル面33Zに接触可能に形成されている。図8に示すように、リップ部82Bは、キャップ80Aがインクヘッド32Aに取り付けられたとき、ノズル面33Zに接触する。即ち、キャップ80Aがキャップ位置H1に位置するとき、リップ部82Bは、ノズル面33Zに押しつぶされた状態でノズル面33Zと接触している。リップ部82Bがノズル面33Zと接触したとき、ノズル面33Zとキャップ本体82との間に密閉空間80Sが形成される。密閉空間80S内は、吸引ポンプ64によって内部の流体を吸引することによって大気圧より低い圧力となる。
図8に示すように、爪部82Cは、リップ部82Bの内壁から水平方向に延びる。爪部82Cは、インク吸収体83の一部の上方に位置する。ここでは、爪部82Cは、インク吸収体83のベース部83Aの上方に位置する。即ち、爪部82Cは、平面視でベース部83Aと重なる。爪部82Cは、インク吸収体83がキャップ本体82から脱落することを抑制する部材である。爪部82Cは、リップ部82Bの内壁から左方に向けて延びる右側爪部82CRと、リップ部82Bの内壁から右方に向けて延びる左側爪部82CLと、を含む。図7に示すように、右側爪部82CRは、左側爪部82CLより右方に位置する。右側爪部82CRは左側爪部82CLと対向する位置に配置されている。本実施形態では、3つの右側爪部82CRと3つの左側爪部82CLとが含まれる。右側爪部82CRおよび左側爪部82CLは、それぞれ副走査方向Xに並ぶ。
図4に示すように、インク吸収体83は、平面視で長円形状に形成されている。インク吸収体83は、キャップ本体82に収容されている。インク吸収体83は、キャップ本体82に着脱可能に取り付けられている。図8に示すように、インク吸収体83は、リップ部82Bの上端82BTより下方に位置する。インク吸収体83は、インクヘッド32Aの第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yから吐出されたインクを吸収する。インク吸収体83は、多孔質である。インク吸収体83は、例えば、ポリビニルアルコールから形成されたスポンジ(PVAスポンジ)である。インク吸収体83の剛性は、キャップ本体82の剛性より高いとよい。図6に示すように、インク吸収体83は、ベース部83Aと、突出部83Bと、複数の突起部83Cとを備えている。ベース部83A、突出部83Bおよび突起部83Cは、一体的に形成されている。
図6に示すように、ベース部83Aは、平面視で長円形状に形成されている。ベース部83Aは、副走査方向Xに延びる。図8に示すように、ベース部83Aは、キャップ本体82に保持される。ベース部83Aは、キャップ本体82の本体部82Aの対向面82Tに載置される。ベース部83Aは、排出孔82Hを覆う。ベース部83Aは、爪部82Cより下方に位置する。
図6に示すように、突出部83Bは、平面視で長円形状に形成されている。突出部83Bは、副走査方向Xに延びる。突出部83Bは、ベース部83Aから上方に向けて突出する。図8に示すように、突出部83Bの上端83BTは、爪部82Cより上方に位置する。突出部83Bは、ベース部83Aより小さい。突出部83Bの上下方向の長さは、ベース部83Aの上下方向の長さより短い。突出部83Bは、密閉空間80Sが形成されているときに、平面視で、複数の第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yと重なる。即ち、突出部83Bは、密閉空間80Sが形成されているときに、複数の第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yの下方に位置する。
図6に示すように、突起部83Cは、平面視で長方形状に形成されている。突起部83Cは、副走査方向Xに延びる。本実施形態では、インク吸収体83は、4つの突起部83Cを有する。突起部83Cは、副走査方向Xに2つ、主走査方向Yに2つ並んでいる。突起部83Cは、左右対称に配置されているとよい。なお、突起部83Cの数は特に限定されない。突起部83Cは、ベース部83Aから上方に向けて突出する。突起部83Cは、突出部83Bの側方に位置する。突起部83Cの上端83CTは、突出部83Bの上端83BTより上方に位置する。突起部83Cの上端83CTは、リップ部82Bの上端82BTより下方に位置する。突起部83Cの上下方向の長さは、突出部83Bの上下方向の長さより長い。即ち、密閉空間80Sが形成されているときに、突起部83Cの上端83CTとノズル面33Zとの上下方向の距離L1は、突出部83Bの上端83BTとノズル面33Zとの上下方向の距離L2より短い。突起部83Cは、密閉空間80Sが形成されているときに、平面視で、複数の第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yと重ならない。即ち、図8に示すように、突起部83Cは、密閉空間80Sが形成されているときに、複数の第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yの下方に位置しない。図7に示すように、突起部83Cは、副走査方向Xに関して、爪部82Cの間に配置されている。即ち、突起部83Cは、平面視で爪部82Cと重ならない位置に形成されている。
図2に示すように、吸引ポンプ64は、側方部材15(図1参照)の内部に配置されている。吸引ポンプ64は、キャッピングユニット50より右方に配置されている。吸引ポンプ64は、吸引チューブ65(図6参照)を介してキャップ80A〜80Dと連結されている。吸引ポンプ64により、密閉空間80S(図8参照)内の空気が吸引されると、インクヘッド32A〜32Dの第1ノズル33X内のインクおよび第2ノズル33Y内のインクは、第1ノズル33Xの外部および第2ノズル33Yの外部に排出され、第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yの目詰まりを抑制することができる。第1ノズル33Xの外部および第2ノズル33Yの外部に排出されたインクは、吸引ポンプ64により吸引され、図示しない排液タンクに貯留される。
図2に示すように、移動機構70には、移動テーブル56が設けられている。移動機構70は、インクヘッド32A〜32D(即ちインクヘッドユニット30)の移動に連動して移動テーブル56を主走査方向Yおよび上下方向に移動させる。これにより、移動テーブル56に設けられたキャップ80A〜80Dを、キャップ80A〜80Dがインクヘッド32A〜32Dのノズル面33Zを覆うキャップ位置H1(図2参照)と、キャップ80A〜80Dがインクヘッド32A〜32Dのノズル面33Zから離隔した離隔位置H2(図9参照)との間で主走査方向Yおよび上下方向に移動させることができる。移動機構70は、支持台60と、バネ63とを備えている。
支持台60は、移動テーブル56の下方に配置されている。支持台60は、移動テーブル56を支持する。図4に示すように、支持台60は、複数の支持板61A、支持板61B、支持板61C、支持板61Dを備えている。支持板61A〜61Dは、上下方向に延びる。支持板61A、61Bは、移動テーブル56より前方に配置されている。支持板61C、61Dは、移動テーブル56より後方に配置されている。図2に示すように、支持板61A、61Bには、案内溝62が形成されている。案内溝62は、移動テーブル56を案内する。案内溝62は、主走査方向Yの左方から右方に向けて斜め上方に傾いている。案内溝62は、左右方向に延びる第1部分62Aと、第1部分62Aの右端から右斜め上方に延びる第2部分62Bと、第2部分62Bの右端から右方に延びる第3部分62Cとを備えている。第3部分62Cは、第1部分62Aより上方に位置する。なお、支持板61Aおよび支持板61Bと同様に、支持板61C、61Dにも、案内溝62が形成されている。
図2に示すように、バネ63は、支持台60と移動テーブル56とに接続されている。バネ63としては、例えば引張コイルばねが挙げられる。バネ63は、移動テーブル56を左斜め下方に向けて付勢する。
図4に示すように、移動テーブル56は、平面視で、矩形状に形成されている。移動テーブル56は、複数の軸58A、軸58B、軸58C、軸58Dを備えている。軸58A〜58Dは、移動テーブル56から外方に向けて突出する。軸58Aおよび軸58Bは、前方に向けて突出する。軸58Cおよび軸58Dは、後方に向けて突出する。軸58A〜58Dは、それぞれ支持板61A〜61Dの案内溝62に挿入されている。軸58A〜軸58Dは、案内溝62内を移動する。
図4に示すように、押圧体57は、移動テーブル56と一体となって移動可能に形成されている。押圧体57は、四角柱状に形成されている。本実施形態では、押圧体57は移動テーブル56上に設けられている。押圧体57は、キャップ80Dより右方に配置されている。押圧体57は、移動テーブル56の右端に設けられている。押圧体57は、インクヘッドユニット30によって押圧可能に構成されている。本実施形態では、押圧体57は、キャリッジ31のヘッドプレート36によって押圧可能な位置に配置される。
図4に示すように、移動テーブル56には、当接体67が設けられている。当接体67は、移動テーブル56と一体となって移動可能に形成されている。当接体67は、L字形状に形成されている。当接体67は、主走査方向Yに延びる第1部分67Aと副走査方向Xに延びる第2部分67Bとを備えている。第1部分67Aは、インクヘッドユニット30に接触可能に構成されている。本実施形態では、第1部分67Aは、ヘッドプレート36と接触可能な位置に配置されている。第2部分67Bは、押圧体57の押圧面57Aより右方に位置する。第2部分67Bは、通常は、インクヘッドユニット30にとは接触しない。
移動テーブル56は、キャップ位置H1(図2参照)と離隔位置H2(図9参照)との間で、主走査方向Yおよび上下方向に移動可能に構成されている。キャップ位置H1とは、移動テーブル56が最も高い位置(即ちキャップ80A〜80Dが最も高い位置)に配置されたときの位置(図2参照)に相当する。離隔位置H2とは、移動テーブル56が最も低い位置(即ちキャップ80A〜80Dが最も低い位置)に配置されたときの位置(図9および図10参照)に相当する。なお、ここでは、移動テーブル56が位置H1と位置H2との間の位置(即ち密閉空間80Sが形成されていない位置)に配置されたときの位置H3(図11参照)も離隔位置に相当する。
図9に示すように、ヘッドプレート36が押圧体57を押圧していないとき、移動テーブル56は、バネ63によって左斜め下方に付勢されるため、移動テーブル56は、位置H2に位置する。キャリッジ31の移動に伴ってヘッドプレート36が右方に(図9の矢印Aの方向に)移動すると、ヘッドプレート36が押圧体57に接触する(図10参照)。このとき、ヘッドプレート36は、押圧体57の上側の凡そ20%の部分に接触する。図10に示すように、ヘッドプレート36が押圧体57に接触したとき、インクヘッド32Aのノズル面33Zの下方にキャップ80Aが位置し、インクヘッド32Bのノズル面33Zの下方にキャップ80Bが位置し、インクヘッド32Cのノズル面33Zの下方にキャップ80Cが位置し、インクヘッド32Dのノズル面33Zの下方にキャップ80Dが位置する。また、インクヘッド32A〜32Dのノズル面33Zは、キャップ80A〜80Dとは接触していない。
さらに、ヘッドプレート36が右方に移動すると、押圧体57がヘッドプレート36に押圧されるため、押圧体57が右方に移動する。これにより、バネ63の付勢力に抗して移動機構70が移動テーブル56を移動させる。詳細には、移動テーブル56の軸58A〜58Dが案内溝62内を第1部分62Aから第2部分62Bに向けて移動する。これにより、移動テーブル56が図10の矢印Bの方向(ここでは右斜め上方)に移動し、移動テーブル56が位置H2より上方に位置する位置H3に移動する(図11参照)。移動テーブル56が位置H2から位置H3に移動するとき、押圧体57がヘッドプレート36に対して摺動する。即ち、ヘッドプレート36と押圧体57との接触面積が徐々に大きくなる。このように、押圧体57とヘッドプレート36とが接触した状態で、押圧体57が上方に移動するため、押圧体57とヘッドプレート36との間で摩耗が生じ得る。このとき、インクヘッド32A〜32Dのノズル面33Zとキャップ80A〜80Dとの主走査方向Yの相対的な位置関係は変更されない。一方、インクヘッド32A〜32Dのノズル面33Zとキャップ80A〜80Dとの上下方向の相対的な位置関係は変更される。即ち、キャップ80A〜80Dがノズル面33Zに接近し、インクヘッド32A〜32Dのノズル面33Zとキャップ80A〜80Dとの間隔が小さくなる。
さらに、ヘッドプレート36が右方に移動すると、押圧体57がヘッドプレート36に押圧されるため、移動テーブル56の軸58A〜58Dが案内溝62内を第2部分62Bから第3部分62Cに向けて移動する。これにより、移動テーブル56が図11の矢印Bの方向にさらに移動し、移動テーブル56が位置H3より上方に位置する位置H1に移動する。移動テーブル56が位置H1に移動することによって、キャップ80A〜80Dがインクヘッド32A〜32Dに取り付けられる。このとき、図8に示すように、リップ部82Bの上端82BTは、弾性変形して押しつぶされている。即ち、リップ部82Bの上端82BTがノズル面33Zに押しつぶされている。これにより、キャップ80A〜80Dとノズル面33Zとの間に密閉空間80S(図8参照)が形成される。密閉空間80Sが形成された状態で吸引ポンプ64を駆動することによって、インクヘッド32A〜32Dの第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yからキャップ80A〜80Dにインクをそれぞれ吐出させることができる。
その後、移動テーブル56が位置H1に位置する状態から、ヘッドプレート36が左方に(図2の矢印Cの方向に)移動すると、移動テーブル56の軸58A〜58Dが案内溝62内を第3部分62Cから第1部分62Aに向けて移動する。これにより、移動テーブル56は、図2の矢印Dの方向(ここでは左斜め下方)に移動し(位置H1から位置H2に移動し)、キャップ80A〜80Dがそれぞれインクヘッド32A〜32Dから取り外される。このとき、キャップ80A〜80Dにおいてノズル面33Zに接触する程度にインクが溜まっていた場合であっても、インク吸収体83の突起部83Cが形成されているため、ノズル面33Z付近のインクは突起部83Cに引っ張られる。これにより、ノズル面33Zに付着するインクが低減される。なお、ヘッドプレート36が押圧体57を押圧し始める直前から押し終わる直後までの間は、キャップ80A〜80Dの上方には、インクヘッド32A〜32Dのノズル面33Zが位置することになる。即ち、インクヘッド32A〜32Dのノズル面33Zとキャップ80A〜80Dとの主走査方向Yの相対的な位置関係は変更されない。
以上のように、本実施形態のキャップ80Aでは、インク吸収体83は、キャップ本体82に保持されるベース部83Aから上方に向けて突出する突起部83Cを備えている。キャップ80Aがインクヘッド32Aに取り付けられたとき、突起部83Cはベース部83Aよりノズル面33Zに近づくことができる。このため、インク吸収体83がベース部83Aだけを備えている場合と比較して、キャップ80Aをインクヘッド32Aから取り外すときに、ノズル面33Zに付着するインクを低減することができる。このように、ノズル面33Zに付着するインクが低減されるため、仮にノズル面33Zに付着したインクが第1ノズル33Xや第2ノズル33Yの内部に逆流して混色が発生しても、第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yから比較的少量のインクを排出させれば混色を解消することができる。また、突起部83Cは、密閉空間80Sが形成されているときに、平面視で、複数の第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yと重ならない位置に配置されている。このため、突起部83Cをノズル面33Zに近づけつつ、突起部83Cが第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yに接触することを抑制することができ、第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yのメニスカスを破壊することが抑制される。
本実施形態のキャップ80Aによれば、インク吸収体83は、ベース部83Aから上方に向けて突出しかつ副走査方向Xに延び、密閉空間80Sが形成されているときに、平面視で、複数の第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yと重なる突出部83Bをさらに備えている。これにより、インク吸収体83のうち、密閉空間80Sが形成されているときに平面視で複数の第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yと重なる突出部83Bにおいてもノズル面33Zにより近づくため、ノズル面33Zに付着するインクをより低減することができる。ここで、密閉空間80Sが形成されているときに、突起部83Cの上端83CTとノズル面33Zとの上下方向の距離L1は、突出部83Bの上端83BTとノズル面33Zとの上下方向の距離L2より短い。このため、密閉空間80Sが形成されているときに、突出部83Bは第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yとは接触せず、第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yのメニスカスが破壊されることは防止される。
本実施形態のキャップ80Aによれば、突起部83Cは、平面視で爪部82Cと重ならない。これにより、爪部82Cによってインク吸収体83を保持しつつ、インク吸収体83の突起部83Cをよりノズル面33Zに近づけることができる。
本実施形態のキャップ80Aによれば、突起部83Cは、副走査方向Xに延びる。これにより、ノズル面33Zのより多くの部分においてインクが付着することが抑制される。
本実施形態のキャップ80Aによれば、キャップ本体82には、密閉空間80S内の流体を吸引する吸引ポンプ64と連通し、かつ、密閉空間80S内の流体を排出する排出孔82Hが形成されている。これにより、第1ノズル33Xおよび第2ノズル33Yから適切にインクを排出させることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
上述した実施形態では、突起部83Cは、副走査方向Xに延びていたが、これに限定されない。例えば、突起部83Cは、主走査方向Yに延び、ベース部83Aの前端および後端から上方に向けてそれぞれ突出するように構成されていてもよい。
上述した実施形態では、移動機構70は、移動テーブル56を主走査方向Yおよび上下方向に移動させるように構成されていたが、これに限定されない。移動機構70は、例えば、移動テーブル56を上下方向のみに移動させるように構成されていてもよい。また、移動機構70は、例えば、移動テーブル56を主走査方向Yおよび上下方向および副走査方向Xに移動させるように構成されていてもよい。
上述した実施形態では、プリンタ10は、記録媒体12が載置されるプラテン14を備え、記録媒体12はグリットローラ16によって副走査方向Xに搬送されるように構成されていたがこれに限定されない。例えば、プリンタ10は、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであってもよい。即ち、プリンタ10は、記録媒体12を主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動可能なテーブルを備えていてもよい。