本発明の最適な実施形態について図面を参照して説明する。図1は本実施形態に適用された複合機の前方から見た斜視図、図2は記録部の平面図、図3は記録部の概略断面図、図4は記録部から下流側のガイド部材23を外した状態の斜視図、図5は記録部から下流側のガイド部材23を外した状態の平面図、図6は第1実施形態のプラテンの斜視図、図7はプラテンの縁無し記録領域を示す要部拡大斜視図、図8は図7の VIII −VIII線矢視要部拡大断面図、図9は領域内支持リブ及び下流側支持部の一部切欠き拡大斜視図、図10は図7のX−X線矢視拡大断面図、図11は作用説明図、図12は1つの長い領域内支持リブの他の実施形態を示す要部拡大断面図、図13はプラテンの縁無し記録領域の第2実施形態を示す要部拡大斜視図、図14は図13、図15及び図16のXIV −XIV 線矢視拡大断面図、図15はプラテンの記録領域ENRにおける第3実施形態を示す要部拡大斜視図、図16はプラテンの記録領域ENRにおける第4実施形態を示す要部拡大斜視図、図17は記録領域ENRと記録領域EARの配置の別実施形態を示す平面図、図18(A)〜図18(C)は第1のインク打捨て領域における縁無し記録の作用説明図である。
本発明の実施形態の画像記録装置1は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device )であるが、本発明は単なるプリンタ機能を有するインクジェットプリンタ装置に適用しても良い。なお、本実施形態では、被記録媒体として、紙またはプラスチックフィルム等の用紙Pを用いたが、これに限定されず、種々の被記録媒体を用いることができる。
図1に示すように、画像記録装置1における合成樹脂製の記録装置本体としてのハウジング2の前側(図1において左側)の開口部2aの内部は上下に仕切られており、開口部2aの下側は被記録媒体(用紙P)を給紙するための差込み可能な給紙カセット3が配置されている。開口部2aの上部側は記録済みの用紙Pが排紙される排紙口として機能する。
本実施形態では、給紙カセット3は、被記録媒体としての例えばA4サイズ、レターサイズ、リーガルサイズ等にカットされた用紙Pをその短辺が用紙搬送方向(副走査方向、X軸方向)と直交する方向(図1において紙面と直交する方向、主走査方向、Y軸方向)に延びるようにして複数枚堆積されて収納できる形態とする(図3参照)。なお、給紙カセット3の前端には、リーガルサイズ等の長い用紙Pの後端部を支持する補助支持部材3aがX軸方向に移動可能に装着されている。給紙カセット3内に納まってしまう(開口部2aからハウジング2の外部へ突出しない)A4サイズ等の用紙Pを用いる場合には、給紙カセット3の前部に対して補助支持部材3aを給紙の妨げとならないように収納することができる。なお、給紙カセット3の上面には、はがきサイズ等の小サイズの用紙を堆積収容する補助給紙カセット部30がX軸方向に移動可能に装着されている。補助給紙カセット部30の用紙搬送方向下流側は排紙トレイ部30aである(図3参照)。
また、給紙カセット3の奥側(図3において右側)には、用紙分離用の傾斜分離板8が配置されている。また、ハウジング2内には、上端部が上下方向に回動可能なアーム6aが装着され、このアーム6aの下端に設けられた給紙ローラ6と、傾斜分離板8における分離爪8aとにより、給紙カセット3に堆積された被記録媒体である用紙Pを一枚ずつ分離搬送する。分離された用紙Pは上横向きのUターンパス(給送路)9を介して給紙カセット3より後方の上側(高い位置)に設けられた記録部7に給送される。記録部7は、後に詳述するように、プリンタ機能などを実現するためのインクジェット記録式の記録ヘッド4が搭載された往復動可能なキャリッジ5等からなる。記録部7にて記録された用紙Pはその記録面を上向きにして排紙トレイ部30aに向かって矢印A方向に排出される。
ハウジング2の上部には、コピー機能やファクシミリ機能における原稿読取などのための画像読取装置が配置されている。この画像読取装置は図示しない枢軸部を介してハウジング2の一側端に対して上下開閉回動可能に構成され、さらに、画像読取装置の上面を覆う原稿カバー体13の後端は画像読取装置の後端に対して枢軸を中心に上下回動可能に装着されている。
原稿カバー体13を上側に開けて載置用ガラス板上に原稿を載置し、載置用ガラス板の下側にて主走査方向(Y軸方向)に往復移動可能に設けられている原稿読取り用のイメージスキャナ装置(CIS:Contact Image Sensor) にて原稿紙面の画像を読取るように構成されている。
ハウジング2の上側には、原稿カバー体13の前方に各種操作ボタンや液晶表示部等を備えた操作パネル部14が設けられている。また、ハウジング2の前面であって、操作パネル部14の下方には、外部メモリを挿入するための外部メモリ挿入部11が備えられている。外部メモリとは、例えば、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア(登録商標)、メモリスティック(登録商標)、SDカード(登録商標)、xD(登録商標)等である。
記録部7は、図2に示すように、金属板製等のメインフレーム21における左右一対の側板21a、21bにて支持され、Y軸方向(主走査方向)に延びる横長の板状のガイド部材22、23と、これら両ガイド部材22、23に跨がって摺動自在に支持(搭載)されて往復移動可能に構成されたキャリッジ5と、記録ヘッド4が搭載されたキャリッジ5を往復移動させるために用紙搬送方向(矢印A方向)の下流側に配置されたガイド部材23の上面にそれと平行状に配置されたタイミングベルト25と、そのタイミングベルト25を駆動するCR(キャジッジ)モータ24(実施形態ではDCモータであるが、ステッピングモータ等他のモータでもよい。)と、記録ヘッド4の下面側にて搬送される用紙Pを支持する概略扁平板状のプラテン26と、主走査方向(Y軸方向)に沿って延びるように配置されてキャリッジ5のY軸方向(主走査方向)位置を検知するためのテープスケール等を備える。但し、図4及び図5では、搬送方向下流側のガイド部材23を外した状態を示す。
また、プラテン26を挟んで搬送上流側にレジストローラ対27が配置されて用紙Pを記録ヘッド4の下面に送られる。プラテン26の下流側には、用紙Pの画像形成面(表面)に接する拍車28aと裏面側の排紙駆動ローラ28bとからなる排紙ローラ対28が配置され、記録済みの用紙Pが排紙トレイ部30aに搬送される。
また、搬送される用紙Pの幅(用紙Pの短辺)より外側には、その一端側(実施形態では図3で左側の側板21aに近い部位)にインク受け部29が、また、他端側(図2で右側の側板21aに近い部位)にメンテナンスユニット35がそれぞれ配置されている。メンテナンスユニット35は一対のガイド部材22、23に装着されている。これにより、記録ヘッド4はインク受け部29に設けられたフラッシング位置にて記録動作中に定期的にノズル4bの目詰まり防止のためのインク吐出を行い、インク受け部29にてインクを受ける。メンテナンスユニット35部分では、キャリッジ5は待機位置であって記録ヘッド4のノズル面4aのクリーニングを行い、また、色毎のインクを選択的に吸引したり、記録ヘッド4上の図示しないバッファタンク内の気泡を除去するための回復処理等を行う。
ハウジング2内の前部一側(図2で右側)にインク貯留部15が配置されている。インク貯留部15は、ハウジング2の上方に向かって開放されており、フルカラー記録のための4色(ブラック(BK)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))のインクを各々収容した平面視の面積が小さく、且つ高さ寸法の高いほぼ矩形箱状のインクカートリッジ19が一列状に収納でき、各インクカートリッジ19は、ハウジング2前面の蓋体2bを開いて前方から着脱可能となるように構成されている。
そして、各インクカートリッジ19からインクジェット式の記録ヘッド4に複数本(実施形態では4本)のインク供給管(インクチューブ)20を介してインクを供給するように構成されている。
次に、図4〜図14などを参照しながら、プラテン26の構成について詳述する。
本発明に係る画像記録装置1は、矢印A方向に搬送される用紙Pの先端縁から後端縁まで画像記録(縁無し画像記録)が可能なモードを有している。なお、縁無し画像記録では用紙Pの左右両側縁(Y軸方向の両側縁)部分も画像記録されるものである。ユーザーは選択指令により、この縁無し画像記録モードと縁有り画像記録モードを選択的に実行可能である。
本実施形態におけるプラテン26は、図4〜図6に示すように、平面視略矩形の箱型の合成樹脂成型品である。このプラテン26は、棚板40(図8参照:請求項における底板に相当)と、凹板42と、段落ち棚板43とが一体的に形成されて構成されている。棚板40は、この画像記録装置1で使用可能な記録用紙のサイズのうち、大きいサイズ(例えばA4サイズ)の用紙の短辺幅が通過し得る程度の長さを持ち、用紙Pの裏面と対向する平板状の板である。凹板42は、棚板40に対して搬送方向上流側に設けられており、上向き開放された断面コ字形状を有する。段落ち棚板43は、棚板40に対して搬送方向下流側端部に設けられており、棚板40から適宜寸法だけ低い位置に設けられている。棚板40の下流側端部と段落ち棚板43とは、Y軸方向に沿って長い凹溝41(図8参照)にて連設されている。
棚板40の上面には、第1のインク打捨て領域ENRと、第2のインク打捨て領域EARとが平面視でそれぞれ矩形状であって互いにY軸方向に連通するように隣接して形成されている。第2のインク打捨て領域EARの幅寸法W1は、上記大きいサイズ(例えばA4サイズ)の用紙の短辺の幅寸法より若干大きい寸法である。他方、第1のインク打捨て領域ENRは平板状の棚板40のY軸方向の中央部に位置している(図5及び図6参照)。本実施形態の画像記録装置においては、葉書若しくは写真のL判のような用紙も、画像記録時には、各用紙のY軸方向の中心線が、Y軸方向における第1のインク打捨て領域ENRのほぼ中心線を通過する、いわゆるセンターレジの構成を採用している。従って、第1のインク打捨て領域ENRにおけるY軸方向の寸法W2は、たとえば、葉書若しくは写真のL判のような所定の小サイズの用紙の短辺の幅寸法に若干の寸法(例えば、左右合計で10mm程度)を加えた値に相当する。この構成により、上記寸法W1及びW2のいずれも、用紙の搬送方向と直交する方向に延びる一対の側縁が通過する領域を包含し、この側縁に縁無し記録をするときに、用紙のサイズよりもわずかに大きい領域に記録ヘッド4のノズル4bからインク滴を吐出すると、用紙に着弾しないインク滴が下方のインク打捨て用のインク流路溝54に着弾(付着)できるように構成されている。なお、「着弾」とは、記録ヘッド4のノズル4bから吐出されたインク滴が用紙の表面または用紙Pの存在しない個所で下方のインク打捨て用のインク流路溝54に付着することをいう。
第2のインク打捨て領域EARにおけるX軸方向の寸法L1よりも、第1のインク打捨て領域ENRにおけるX軸方向の寸法L2が長く形成されている。そして、第1のインク打捨て領域ENRのみを用いて行う縁無し画像記録では、記録ヘッド4におけるX軸方向に列状に並ぶ全てのノズル4bからのインク滴吐出があり得る。従って、第1のインク打捨て領域ENRのX軸方向の寸法L2は、記録ヘッド4におけるX軸方向に列状に並んだ全てのノズル4bからのインク吐出領域の長さより若干長く設定されている。用紙幅の大きいサイズの用紙に対する縁有り画像記録では上記のX軸方向に並ぶノズル4bをうちの一部のみからのインク吐出にて画像記録を行う。従って、第2のインク打捨て領域EARにおけるX軸方向の寸法L1は短く設定されている。
第2のインク打捨て領域EAR及び第1のインク打捨て領域ENRより上流の部位には、凹板42と棚板40の搬送方向の上流側部位とにわたるように、X軸方向に延びる複数本の上流側リブ44がY軸方向に適宜間隔にて配置されている。この上流側リブ44の上端面にて用紙Pを支持することができる。
なお、第2のインク打捨て領域EAR及び第1のインク打捨て領域ENRには、複数の領域内支持リブ50、51の間の棚板40上には、断面V字状等の上向き開放状の複数のインク流路溝54が形成されている(図5〜図8参照)。インク流路溝54の高さが領域内支持リブ50(51)の高さよりもかなり低く設定されている。そのため、インク流路溝54は搬送方向に沿い下流側に向かって延び、且つ下流側に向かって若干下向き傾斜状に形成され、凹溝41に繋がっている。また、凹溝41はインク吸収体45が収容された収容部46に連通している。収容部46のほぼ全面に余剰インクを吸収するインク吸収体45が配置されている。このインク吸収体45は、発泡ポリウレタン等の多孔材料からなる。また、このインク吸収体45の高さ寸法は下流側支持部47の下面に接触しない程度に設定されている。従って、記録ヘッド4のノズル4bから吐出されたインクのうち、用紙Pで受けられなかった廃棄インクは、インク流路溝54から凹溝41を介して収容部46内のインク吸収体45に吸収捕獲される。
段落ち棚板43の上側には、インク吸収体45を収容できる収容部46の上側を覆うように、Y軸方向に延びる下流側支持部47が着脱可能に装着されている。下流側支持部47における搬送方向下流側端部には、頂部48が一体的に形成されている。この頂部48はプラテン26の表面に沿った方向で、且つ搬送方向と直交する方向に延びるように形成されている。実施形態では、頂部(突条部ともいう)48はプラテン26を側面から見た時、実質的に三角形状に形成されている(図6参照)。
第2のインク打捨て領域EAR及び第1のインク打捨て領域ENRには、それぞれ複数の領域内支持リブ50、51が棚板40上にてY軸方向には適宜間隔で、且つX軸方向に沿って延びるように設けられている。従って、第2のインク打捨て領域EARにおける領域内支持リブ50の長さ(X軸方向の長さをいう、以下同じ)は第1のインク打捨て領域ENRにおける領域内支持リブ51の長さより短く設定されている。また、各領域内支持リブ50、51は、その全長にわたって、棚板40の表面(上面)よりも上向き方向に突出するように形成されている。全ての領域内支持リブ50、51の上端面(用紙Pの案内面)の高さは、上記頂部48の上端よりも低い位置になるように設定されている。
また、用紙Pにおける搬送方向と直交する幅方向(以下幅方向ともいう)の中心線がプラテン26における搬送方向と直交する方向の所定位置(例えば、プラテン26のY軸方向の長さの半分の位置、幅方向の中心位置)を通過するように、用紙Pが搬送される場合、上記1つの領域内支持リブ51aは上記所定位置(例えば、プラテン26の幅方向の中心位置)に相当する個所に設けられている。ここで「相当する」とは、プラテン26の平面視において、上記1つの領域内支持リブ51aのX軸方向に延びる中心線の延長線がプラテン26の幅方向の中心位置を通過するように配置されているか、若しくは、上記中心線の延長線がプラテン26の幅方向の中心位置に対して若干の寸法でずれて通過するように配置されていることをいう。
換言すると、「相当する」とは、用紙Pにおける搬送方向と平行に延びる一対の側縁が、プラテン26における搬送方向と直交する方向の所定位置(例えば、上記幅方向の中心位置)を挟んで実質上対称位置を通過するように構成されている場合、1つの領域内支持リブ51aも所定位置(例えば、上記幅方向の中心位置)に対応する位置に設けられていることを意味する。
第1のインク打捨て領域ENRにおける複数の領域内支持リブ51のうち少なくとも1つの領域内支持リブ51aは、他の領域内支持リブ51よりも長く形成され、且つ下流側支持部47における搬送上流側である頂部48に近接するように延びている。その場合、頂部48よりも搬送上流側にて、その上流側に向かって開口する縦長溝52が形成されている。縦長溝52の幅寸法W4は対応する1つの領域内支持リブ51aの板厚さW5よりも大きい(図9及び図11参照)。そして、プラテン26の平面視において、縦長溝52の幅寸法W4内に上記少なくとも1つの領域内支持リブ51aの搬送下流側端部51aaが進入するように配置されている。これにより、上記少なくとも1つの領域内支持リブ51aの搬送下流側端部51aaは、プラテン26を側面から投影視したときに縦長溝52に嵌まって、下流側支持部47の一部と重畳するように形成されていることになる(図7〜図10参照)。しかも、搬送下流側端部51aaは下流側支持部47の頂部48の上流側縦壁とは非連続である(繋がっていない)。
なお、上記少なくとも1つの領域内支持リブ51a以外の領域内支持リブ51及び第2のインク打捨て領域EARにおける領域内支持リブ50の下流側端部も、下流側支持部47の頂部48の上流側縦壁とは非連続である(繋がっていない)。
第1実施形態における、複数の領域内支持リブ51のうちの少なくとも1つの長い領域内支持リブ51aは、その高さが記録ヘッド4のノズル面(下面)4aに対して同じ距離H1となるように形成されている(図8及び図10参照)。なお、ノズル4bの列(ノズル列)におけるX軸方向の長さL3を図8及び図11に示す。そして、この1つの領域内支持リブ51aは、第1のインク打捨て領域ENRにおける他の複数の領域内支持リブ51の高さよりも高く設定されている。
この構成により、縁無し記録をする場合の小サイズの用紙Pが上流側リブ44と搬送下流側の頂部48とに跨がって支持されて搬送されるときには、用紙Pの裏面は全ての領域内支持リブ51の上端面(案内面)と接触しない。しかしながら、用紙Pの先端部が頂部48に到達していない状態(用紙Pが上流側リブ44でのみ片支持されている状態)では、縁無し画像記録により、吐出されたインクのために濡れた用紙Pの先端部が下向きにカールすることがある(図10,図12参照)。そのときには、用紙Pの先端部が上記他の領域内支持リブよりも背が高い少なくとも1つの長い領域内支持リブ51aの上端面(案内面)に接触しながら下流側に移動することになる。例えば、用紙Pにおける搬送方向と直交する幅方向の中心線がプラテン26における搬送方向と直交する方向の所定位置(例えば、プラテン26の長手方向の中央部)を通過するように、用紙Pが搬送される場合に、プラテン26における搬送方向と直交する方向に適宜間隔で配置された複数の領域内支持リブ51のうちの所定位置に相当する位置に配置された1つの領域内支持リブ51aの高さが、他の領域内支持リブ51の高さより高く設定されていると、小サイズの用紙Pの幅方向の中央部が先に頂部48に乗り移るので、当該用紙Pの左右両側縁も、後述するインク打捨て部であるインク流路溝54に触れることがない。
そして、プラテン26を側面から投影視したときに、上記少なくとも1つの長い領域内支持リブ51aの搬送下流側端部51aaが、下流側支持部47の一部と重畳するように形成されているので、当該用紙Pの先端部が搬送下流側端部51aaを越えると、直ちに搬送下流側の頂部48に乗り移ることができる。従って、小サイズの用紙Pの幅方向の中央部が先に頂部48に乗り移るので、当該用紙Pの左右両側縁も、後述するインク打捨て部であるインク流路溝54に触れることがない。
また、縁有り記録をする場合でも、全ての領域内支持リブ50、51における搬送下流側端部が、頂部48の上流側縦壁とは非連続であるので、吐出されたインクが領域内支持リブ50(51)の上端面(案内面)に付着したものが毛細管現象にて搬送下流側端部までインクが拡散したとしても頂部48側にインクが拡散しないから、用紙Pの裏面の広い範囲でインクで汚されることがない。
上記頂部48のうち、搬送方向における領域内支持リブ50、51に相当する位置には上向き方向に開放された凹部53が形成されている(図6〜図11参照)。ここで相当するとは、プラテン26の平面視において、凹部53のy軸方向の幅寸法W3内に領域内支持リブ50または51が位置する(または、プラテン26の平面視において、各領域内支持リブ50(51)のX軸方向に延びる中心線の延長線が凹部53の幅寸法W3内を通過する)ことを意味する(図9及び図11参照)。このように構成すると、搬送される用紙Pの先端部(先端縁)がインクの付着した領域内支持リブ50(51)の上端面(案内面)に擦れて、当該用紙Pの先端部にインクが付着したとしても、そのインク付着部が凹部53の幅寸法W3内を通過するので、換言するとY軸方向に延びる頂部48と上記インク付着部とが接触しないので、用紙Pの裏面にて上記インク付着部がY軸方向に広がらないようにすることができる。また、先行する用紙Pの先端部(先端縁)のインク付着部から頂部48にインクが乗り移らないから、後続する用紙Pの裏面がたとえ頂部48に接触しても(擦れても)、当該後続する用紙Pの裏面がインクで汚れることを確実に防止できる。
図12は、第1のインク打捨て領域ENRにおける少なくとも1つの長い領域内支持リブ51aの他の実施形態を示す。この実施形態では、領域内支持リブ51aをプラテン26の側面視において、その領域内支持リブ51aの高さは、記録領域内における搬送方向の中途部60での高さが低く、且つ搬送方向の下流側端部及び上流側端部での高さが高くなるように、下流側傾斜面61及び上流側傾斜面62を有している。また、下流側傾斜面61と上流側傾斜面62との間は、棚板40の表面より高い水平面を備えた中途部60に連接されている。この構成は、記録ヘッド4の搬送方向に沿った長さが長いとき、すなわち記録領域が搬送方向に沿った方向に長いとき、用紙Pの先端縁や後端縁が棚板40の表面に接触することがないので、特に有効である。この中途部60の高さは他の複数の領域内支持リブ51の高さと同程度である。
このように構成することにより、用紙Pが上流側リブ44でのみ片支持されている状態で搬送されるとき、その用紙Pの先端部(先端縁)うちの用紙幅の中央が下流側に向かって上り傾斜の下流側傾斜面61に摺接しながら頂部48方向に導かれるので、先に頂部48に乗り移り易くなる。また、領域内支持リブ51aは、記録領域内における搬送方向の中途部60での高さが低く、且つ搬送方向の下流側端部及び上流側端部での高さが高くなるように、下流側傾斜面61及び上流側傾斜面62を有しているので、記録ヘッド4の搬送方向に沿った長さが長いとき(ノズル列が長いとき)、すなわち記録領域が搬送方向に沿った方向に長いとき、用紙Pの先端縁や後端縁が棚板40の表面に接触することがないので、特に有効である。この中途部60の高さは他の複数の領域内支持リブ51の高さと同程度である。
他方、搬送される用紙Pの前半部分が下流側支持部47で片支持され、その用紙Pの後端が上流側リブ44の搬送方向下流側端部から外れたとき、領域内支持リブ51aの上流側端部の高さが低いと、用紙Pの後端が大きく落ち込む。その結果、印字領域L3内で、用紙Pの後端側の姿勢が大きく変化するので、画像記録の品質が劣化してしまう。本実施形態のように、上流側に向かって上り傾斜の上流側傾斜面62では、上流側リブ44の搬送方向下流側端部の高さの差異(落差)が少なくなるので、用紙Pの後端が大きく落ち込むことがなく、画像記録の品質が維持される。
実施形態では、第1のインク打捨て領域ENRにおける上記いずれの形状の1つの長い領域内支持リブ51aと上流側リブ44とは、X軸方向に延びる中心軸線が実質上同一線上に位置するように配置されている。また、領域内支持リブ51aにおける上流側端部が上流側リブ44の下流側端部に連接している。さらに、領域内支持リブ51aにおける上流側端部の高さと上流側リブ44の下流側端部の高さとがほぼ同じに設定されている(図12参照)。この構成により一層用紙Pの後端が大きく落ち込むことがなく、画像記録の品質が維持される。
第2実施形態では、図13に示すように、第1のインク打捨て領域ENRにおける他の複数の領域内支持リブ51の搬送方向上流側端部51abは、第1のインク打捨て領域ENRの上流側の境界壁55に突き当たるように連設されている。そして、上流側リブ44の搬送方向下流側端部は、上記境界壁55を越えて下流側に寸法L4だけ延長されている。従って、プラテン26を側面から投影視したときに、搬送方向上流側端部51abと上流側リブ44の搬送方向下流側端部とは寸法L4だけ重畳して形成されていることになる(図13及び図14参照)。
その場合、複数の領域内支持リブ51は、上流側リブ44に対して搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に適宜距離W6〜W7だけ偏倚した位置に配置されている(図13参照)。また、複数の各領域内支持リブ51における上流側端部51abの高さH2は上流側リブ44における下流側端部の高さH3よりも低く設定されている(図14参照)。即ち、上流側リブ44における下流側端部は上記境界壁55の上側を乗り越えて形成されている。
この構成により、第1のインク打捨て領域ENRにおいて、記録ヘッド4により小サイズの用紙Pに縁無し画像記録されるとき、用紙Pの後端縁からはみ出した位置に吐出されるインクが領域内支持リブ51の上端面(案内面)に付着し、大部分のインクはインク流路溝54に落ちるが少しのインクは、領域内支持リブ51の上端面(案内面)を伝い、各領域内支持リブ51における上流側端部51abと境界壁55との交差部に溜まるように設定できるのである。
そして、縁無し画像記録されて搬送される用紙Pの前半部分が下流側支持部47で片支持され、その用紙Pの後端縁が上流側リブ44の搬送方向下流側端部に載っているときには、その部分の高さが高いことと、上流側リブ44の搬送方向下流側端部と各領域内支持リブ51の上流側端部51abとがY軸方向に適宜距離W6〜W7だけ偏倚しており、X軸方向に連なっていないので、上流側端部51abと境界壁55との交差部に溜まったインクが用紙Pの後端縁に触れることがない。また、用紙Pの後端縁が各領域内支持リブ51側に乗り移ったときにも、既に上流側端部51abと境界壁55との交差部よりも搬送方向下流側に位置しているので、上記交差部に溜まったインクが用紙Pの後端縁に触れることがなく、用紙Pの後端部を汚すこともないし、インクが領域内支持リブ51の上端面(案内面)の下流側に広がることがなく、後続する用紙Pを汚すこともない。
さらに、上流側リブ44の搬送方向下流側端部が境界壁55を越えて第1のインク打捨て領域ENR内まで延びていることにより、用紙Pの後端縁が上流側リブ44の搬送方向下流側端部から外れるように搬送されたときには、複数の領域内支持リブ51の上端面(案内面)にて支持されるので、用紙Pの後端縁が大きく下向きに落下せず、画像記録の品質が維持される。
なお、下流側支持部47における頂部48で支持されながら搬送方向下流側に移動する用紙Pの先端が浮き上がると、下流側の排紙ローラ28b、拍車28aの箇所に届く前に紙ジャムが発生し易いので、それより上流側に別途の拍車ローラ56を設けることにより(図8及び図10参照)、特に用紙Pの先端側の浮き上がりを防止できる。
また、下流側支持部47よりも搬送方向下流側に設けられた排紙ローラ28b(請求項のローラ体に相当)が搬送方向における領域内支持リブ51(50)に相当する位置から、プラテン26の表面に沿った方向で且つ搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に適宜偏倚した位置に配置されるように構成すれば、領域内支持リブ51(50)の上端面(案内面)に擦れてインクが付着した用紙Pの裏面個所が、直接排紙ローラ28bに触れることがないので、インクの汚れが拡散せず、且つ後続する用紙Pの裏面も汚れない。
さらに、領域内支持リブ51の第3実施形態を、図15に示す。1乃至複数の領域内支持リブ51は、上流側リブ44に対して搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に適宜距離W6〜W7だけ偏倚した位置に配置され、且つ上流側リブ44の搬送方向下流側端部が境界壁55を越えて第1のインク打捨て領域ENR内(下流側)に適宜寸法だけ延長されている。さらに、領域内支持リブ51の下流側端部が、下流側支持部47における縦長溝52内に嵌まっている。従って、プラテン26の側面視において、領域内支持リブ51の上流側端部が上流側リブ44の下流側端部と重畳し、且つ領域内支持リブ51の下流側端部が下流側支持部47の上流側端部と重畳しているように構成するものである。
この構成によれば、用紙Pの後端縁が上流側リブ44の搬送方向下流側端部から外れるように搬送されたときには、複数の領域内支持リブ51の上端面(案内面)にて支持されるので、用紙Pの後端縁が大きく下向きに落下せず、画像記録の品質が維持される。そして、上流側端部と境界壁55との交差部に溜まったインクが用紙Pの後端縁に触れることがない。また、用紙Pの後端縁が各領域内支持リブ51側に乗り移ったときにも、既に上流側端部と境界壁55との交差部よりも搬送方向下流側に位置しているので、上記交差部に溜まったインクが用紙Pの後端縁に触れることがなく、用紙Pの後端部を汚すこともないし、インクが領域内支持リブ51の上端面(案内面)の下流側に広がることがなく、後続する用紙Pを汚すこともない。他方、領域内支持リブ51の下流側端部が下流側支持部47の上流側端部と重畳しているので、用紙Pの先端部が搬送下流側端部を越えると、直ちに搬送下流側の頂部48に乗り移ることができる。従って、小サイズの用紙Pの幅方向の中央部が先に頂部48に乗り移るので、当該用紙Pの左右両側縁も、インク打捨て部であるインク流路溝54に触れることがない。
背の高い1つの領域内支持リブ51aの第4実施形態を図16に示す。この第4実施形態では、1つの領域内支持リブ51aの配置位置が、上流側上流側リブ44に対して搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に適宜距離W8だけ偏倚した位置に配置され、且つ上流側リブ44の搬送方向下流側端部が境界壁55を越えて第1のインク打捨て領域ENR内(下流側)に適宜寸法だけ延長されている。さらに、領域内支持リブ51の下流側端部が、下流側支持部47における縦長溝52内に嵌まっている。このように構成しても、上記第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
図18(A)〜図18(C)は、使用頻度の高い小サイズの用紙P1例えば、葉書、ポストカード、写真のL判用の用紙P1が第1のインク打捨て領域ENR内を矢印A方向に搬送されるときの用紙P1の始端部に縁無し記録を行う場合の作用説明図である。図18(A)のように、用紙P1の始端部が第1のインク打捨て領域ENRの搬送方向上流側縁Upを越えて下流側に突入した直後には記録ヘッド4におけるX軸方向に列状に並ぶノズル4bのうち上流側のノズル4bからインク滴を吐出し始めて、用紙P1の始端部の表面に縁無し記録を開始できる。そして、用紙P1がX軸方向に間欠移動されて、当該用紙P1の始端部が下流側に移行するに従って、吐出するノズル4bのX軸方向の数を増大させれば良い。
図18(B)のように、用紙P1の中途部では、そのX軸方向に延びる一対の側縁に縁無し記録するために、記録ヘッド4におけるX軸方向に列状に並ぶ全てのノズル4bからのインク滴吐出を実行することができる。最後に、図18(C)に示すように、用紙P1の終端部が第1のインク打捨て領域ENRの搬送方向上流側縁Upを越えて下流側に突入した直後に記録ヘッド4におけるX軸方向に列状に並ぶノズル4bのうち上流側のノズル4bからインク滴の吐出を終了させれば良く、また、用紙P1の終端部が第1のインク打捨て領域ENRの搬送方向下流側縁Doに接近するまで、すべてのノズル4bからのインク滴吐出が可能である。従って、用紙P1の短辺側の寸法が第1のインク打捨て領域ENRのW2(図5及び図6参照)の範囲内に収まる用紙P1であれば、その用紙幅を問わず、上記規定サイズとは異なる、ユーザが自ら規定した特異のサイズの用紙に対してすべてのノズル4bからのインク滴吐出が可能となり、縁無し記録の作業速度を高速化できる。サイズの大きい用紙に対する縁無し記録を実行するときには、第2のインク打捨て領域EARに加えて第1のインク打捨て領域ENRも利用することができる。
本発明においては、用紙幅の小さいサイズで紙の剛性が高い場合には、当該用紙P1の先端部及び終端部が第1のインク打捨て領域ENR内でカール変形し難い。よって、ノズル面4aから用紙P1までのギャップを適正に保持し易くなり、画質を一定に保持できる。また、用紙P1の先端部及び終端部がカール変形し難いので、インク流路溝54に触れ難く、用紙P1の裏面がインク汚れし難い。
本発明における第1のインク打捨て領域ENR内には、用紙P1における搬送方向の前端部及び後端部をそれぞれ支持可能な少なくとも1つの領域内支持リブ51が搬送方向に沿って延びるように設けられ、この領域内支持リブ51の高さは、上流側リブ44の上端面及び下流側支持部47の上端面の高さよりも低く形成されているので、万一、用紙P1の先端部及び終端部がカール変形しても、用紙P1の先端縁及び終端縁のみが第1のインク打捨て領域ENR内の領域内支持リブ51に支えられてインク流路溝54に直接触れず、用紙P1の先端縁及び終端縁のみにインク汚れが発生するだけで、汚れが拡散しないという効果を奏することができる。
なお、図17に示すように、X軸方向の寸法L2が長く形成されている第1のインク打捨て領域ENRをプラテン26の長手方向(X軸方向)の左右いずれか一側に偏らせて配置し、他側にX軸方向の寸法L1が短い第2のインク打捨て領域EARを配置するように形成しても良い。このような形式のプラテンに対しては、搬送される用紙Pの一側縁(X軸方向に延びる縁)を給紙トレイの一側板に偏った位置を基準とするようにセットすれば良い。