JP2020053325A - 電子顕微鏡装置、電子顕微鏡装置の制御方法、電子顕微鏡装置の検査方法 - Google Patents

電子顕微鏡装置、電子顕微鏡装置の制御方法、電子顕微鏡装置の検査方法 Download PDF

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【課題】オペレーターの負担を軽減し、オペレーターの経験が少ない場合でも最適な条件を決めることができる電子顕微鏡装置を提供する。【解決手段】試料に電子ビームを照射する電子ビーム照射部と、試料が配置される試料室と、電子ビームが照射されることによって試料から放出される、放射線を検出する検出部と、検出部で検出した放射線の検出信号の処理を行う処理部と、処理部で処理した検出信号に基づいて画像を作成する画像作成部と、画像作成部が作成した画像を表示する表示部を備え、処理部は、検出信号の信号量の定量化、及び試料の帯電の状態の定量化を行い、定量化を行って得られた結果に基づいて試料室の内部の最適な圧力値を決定する処理を行う、電子顕微鏡を構成する。【選択図】図1

Description

本発明は、電子顕微鏡装置、電子顕微鏡装置の制御方法、電子顕微鏡装置の検査方法に関する。
走査型電子顕微鏡(SEM)においては、得られる画像の信号量が、画像の良し悪しに大きく影響する。
そして、一般に、画像の信号量をどの程度とするかは、オペレーターの感覚により判断されている。
また、走査型電子顕微鏡(SEM)において、非導電性の試料を導電性コーティングせずに測定するために、数十〜数百Paの低真空で測定を行う、低真空モードが広く普及している(例えば、特許文献1を参照。)。
低真空モードでは、数十〜数百Paの低真空とすることにより、ガスの分子が増加する。そして、ガスの分子が電子によってイオン化され、プラスのイオンとなって試料に到達し、非導電性の試料の帯電を中和することができる。
低真空モードでは、圧力値によって、信号量が微妙に変化する。
また、試料や測定条件によって、帯電を除去することができる最適な圧力値が異なる。
従来は、低真空モードでの測定時において、信号量の微妙な変化に基づいて最適な圧力値を設定することや、帯電具合を判断し最適な圧力値を設定することは、オペレーターの経験による判断にゆだねられてきた。
特開2005−285485号公報
しかしながら、オペレーターが、像の鮮明さや測定精度、帯電の具合、それぞれの検出器の信号量について理解し、最適な圧力の条件を決めるのは、一定以上の技能を必要とする。
そのため、オペレーターの負担が大きく、経験の少ないオペレーターが最適な条件を決めることは難しい。
さらに、反射電子像と低真空二次電子像の同時取得を考えた場合等、条件によっては、最適な条件を決める難度がさらに上がってしまう。
上述した問題の解決のために、本発明においては、オペレーターの負担を軽減し、オペレーターの経験が少ない場合でも最適な条件を決めることができる電子顕微鏡装置、及び電子顕微鏡装置の制御方法を提供するものである。
また、本発明においては、適切なタイミングで電子顕微鏡装置の保守を行うことを可能にする、電子顕微鏡装置の検査方法を提供するものである。
本発明の電子顕微鏡装置は、試料に電子ビームを照射する電子ビーム照射部と、試料が配置される試料室と、電子ビームが照射されることによって試料から放出される、放射線を検出する検出部と、検出部で検出した放射線の検出信号の処理を行う処理部と、処理部で処理した検出信号に基づいて画像を作成する画像作成部と、画像作成部が作成した画像を表示する表示部を備えている。
そして、本発明の電子顕微鏡装置において、処理部は、検出信号の信号量の定量化、及び試料の帯電の状態の定量化を行い、定量化を行って得られた結果に基づいて試料室の内部の最適な圧力値を決定する処理を行う。
本発明の電子顕微鏡装置の制御方法は、試料に電子ビームを照射する電子ビーム照射部と、試料が配置される試料室と、電子ビームが照射されることによって試料から放出される、放射線を検出する検出部と、検出部で検出した放射線の検出信号の処理を行う処理部と、処理部で処理した検出信号に基づいて画像を作成する画像作成部と、画像作成部が作成した画像を表示する表示部を備えた電子顕微鏡装置を制御する方法である。
そして、所定の圧力の範囲内の各圧力において、検出部が試料から放出される放射線の検出信号を検出し、各圧力において検出部が検出した放射線の検出信号に基づいて、処理部が、検出信号の信号量の定量化、及び、試料の帯電の状態の定量化を行う。
さらに処理部が、定量化を行って得られた結果に基づいて、試料室の内部の最適な圧力値を決定する。
そして、試料室の内部の圧力を、決定した最適な圧力値とした状態で、検出部で放射線を検出し、画像作成部で試料の画像を作成する。
本発明の電子顕微鏡装置の検査方法は、試料に電子ビームを照射する電子ビーム照射部と、試料が配置される試料室と、電子ビームが照射されることによって試料から放出される、放射線を検出する検出部と、検出部で検出した放射線の検出信号の処理を行う処理部と、処理部で処理した検出信号に基づいて画像を作成する画像作成部と、画像作成部が作成した画像を表示する表示部を備えた電子顕微鏡装置に対して検査を行う方法である。
まず、予め、基準試料に対して一定の条件で、放射線の検出と、検出信号の信号量の定量化を行い、検出信号の信号量の基準値を設定する。
そして、検査の際には、基準試料を用いて、放射線の検出と、検出信号の信号量の定量化を実施し、定量化して得られた値が、基準値と比較して所定の正常値の範囲内であるかどうか判定する。
上述の本発明の電子顕微鏡装置、及び本発明の電子顕微鏡装置の制御方法によれば、検出信号の信号量と試料の帯電の状態を考慮した、最適な圧力値を自動的に決定することができる。このため、電子顕微鏡装置に精通していない者でも、最適な圧力値での観察が可能となる。
これにより、オペレーターの負担は大きく軽減され、人為誤差を減らして、測定結果の質を向上させることができる。
上述の本発明の電子顕微鏡装置の検査方法によれば、定量化して得られた値が、基準値と比較して所定の正常値の範囲内であるかどうか判定するので、判定の結果に基づいて、適切なタイミングで電子顕微鏡装置の保守を行うことが可能になる。これにより、電子顕微鏡装置の性能を維持して効率良く運用することが可能になる。
本発明の電子顕微鏡装置の一実施の形態の概略構成図である。 図1の電子顕微鏡装置の最適な圧力値を決定する方法のフローチャートである。 実験1の試料の3つの視野のそれぞれにおける照射電流とヒストグラムの標準偏差の関係を示す図である。 A 実験2の圧力10Paで得られた反射電子像である。 B 実験2の圧力40Paで得られた反射電子像である。 実験2の圧力と256階調目のピクセル数との関係を示す図である。 実施例1における、反射電子検出器の信号量を定量化した結果得られた、圧力とヒストグラムの標準偏差との関係を示す図である。 実施例1における、二次電子検出器の信号量を定量化した結果得られた、圧力とヒストグラムの標準偏差との関係を示す図である。
以下に、本発明について、図面を参照しながら、下記の順で説明する。
1.本発明の概要
2.実施の形態
3.実施例
<1.本発明の概要>
まず、本発明の概要を説明する。
本発明の電子顕微鏡装置は、試料に電子ビームを照射する電子ビーム照射部と、試料が配置される試料室と、電子ビームが照射されることによって試料から放出される、放射線を検出する検出部と、検出部で検出した放射線の検出信号の処理を行う処理部とを備える。
さらに、本発明の電子顕微鏡装置は、処理部で処理した検出信号に基づいて画像を作成する画像作成部と、画像作成部が作成した画像を表示する表示部を備える。
そして、本発明の電子顕微鏡装置は、処理部が、放射線の検出信号に基づいて、検出信号の信号量の定量化、及び試料の帯電の状態の定量化を行い、定量化を行って得られた結果に基づいて試料室の内部の最適な圧力値を決定する処理を行う構成である。
上述した電子顕微鏡装置において、電子ビーム照射部と試料室とから、電子顕微鏡本体が構成される。
検出部は、試料室内に設けられて、試料から放出される放射線を検出する。
処理部、画像作成部、表示部、制御部の各部は、電子顕微鏡本体と一体化した構成も可能であるが、電子顕微鏡本体とは別に設けることができる。
また、検出部と処理部、処理部と画像作成部及び制御部、画像作成部と表示部は、それぞれ配線等の有線又は無線で接続することができる。これにより、接続した各部間で検出信号やデータ信号等の信号の伝送を行うことができる。
本発明の電子顕微鏡装置は、電子ビーム照射部から試料に電子ビームを照射して、試料から放出される放射線を検出部で検出する構成であるので、前述した走査型電子顕微鏡(SEM)に該当する。
さらに、本発明の電子顕微鏡装置では、処理部が、放射線の検出信号の信号量の定量化、及び試料の帯電の状態の定量化を行い、定量化を行って得られた結果に基づいて試料室の内部の最適な圧力値を決定する処理を行う。
これにより、放射線の検出信号と試料の帯電の状態に対応して、試料室の内部の最適な圧力値が決定される。
そして、試料室の内部の圧力を決定した圧力値に設定して、試料に電子ビームを照射し、試料から放出される放射線を検出部で検出し、検出部で検出した検出信号に基づいて画像作成部で画像を作成すればよい。このとき、試料が帯電していない状態となり、かつ信号量が十分多くなるため、非導電性の試料用の低真空モードにおいて、試料の良好な画像が得られる。
従って、電子顕微鏡装置に精通していない者でも最適な圧力値での観察が可能となることから、オペレーターの負担は大きく軽減され、人為誤差を減らして、測定結果の質を向上させることができる。
また、より好ましくは、電子顕微鏡装置が、さらに、試料室の内部の圧力を制御する制御部を備え、制御部が試料室の内部を処理部が決定した最適な圧力値に制御する構成とする。この構成とすることにより、制御部が自動的に、試料室の内部の圧力を処理部が決定した最適な圧力値に制御するので、オペレーターの負担がさらに軽減される。
電子顕微鏡装置の具体的な構成としては、例えば、電子顕微鏡装置が『最適測定圧力の自動設定』ボタンを備えた構成とすることができる。
この構成の場合、『最適測定圧力の自動設定』ボタンを押すことによって、所定の圧力範囲のそれぞれの圧力における電子等の放射線を検出する過程から、制御部が最適な圧力値に制御する過程までの、各過程が自動的に実行されるようにする。
なお、上述した、制御部が自動的に試料室の内部の圧力を制御する構成の代わりに、手動で試料室の内部の圧力を制御する構成としてもよい。例えば、処理部が決定した最適な圧力値を、表示部に表示するようにして、オペレーターが、表示部に表示された最適な圧力値を見て、試料室の内部の圧力をその最適な圧力値に設定すればよい。そして、制御部は、試料室の内部の圧力をオペレーターが設定した最適な圧力値に制御する。
本発明の電子顕微鏡装置は、上述したように非導電性の試料用の低真空モードにおいて、試料の良好な画像が得られ、オペレーターの負担を大きく軽減し、人為誤差を減らして、測定結果の質を向上させる効果を奏する。従って、本発明の電子顕微鏡装置は、高真空モードと低真空モードの両方で使用される電子顕微鏡装置、もしくは、低真空モードのみで使用される電子顕微鏡装置に、適用することができる。
本発明の電子顕微鏡装置において、検出部が検出する試料から放出される放射線としては、例えば、反射電子や二次電子等の電子、X線等が挙げられる。
そして、検出部は、検出する放射線に対応して、それぞれ検出器を設ける。
例えば、反射電子と二次電子とX線を検出する場合には、反射電子検出器と二次電子検出器とX線検出器を設ける。
また例えば、反射電子のみを検出する場合には、反射電子検出器のみを設けた構成とすることが可能である。
そして、反射電子検出器で検出した、反射電子の検出信号を用いて、処理部において、信号量の定量化と、試料の帯電の状態の定量化を、それぞれ行うことができる。
また、二次電子検出器で検出した、二次電子の検出信号を用いて、処理部において、信号量の定量化と、試料の帯電の状態の定量化を、それぞれ行うことができる。
また、X線検出器で検出した、X線の検出信号を用いて、処理部において、試料の帯電の状態の定量化を行うことができる。
検出部が複数の種類の検出器を設けた構成である場合には、処理部が、複数の種類の検出器からの検出信号を利用して、それらの検出信号から信号量の定量化と試料の帯電の状態の定量化を行い、最適な圧力値を決定することができる。
例えば、反射電子の検出信号と二次電子の検出信号を利用して、それぞれの電子の信号量の定量化を行い、反射電子の検出信号或いはX線の検出信号を利用して試料の帯電の状態の定量化を行うことが可能である。
(低真空モードでの最適な圧力値の設定)
次に、低真空モードでの最適な圧力値の設定について、さらに詳しく説明する。
低真空モードは、試料や測定条件によって、帯電を除去することができる最適な圧力値が異なる。
さらに、反射電子検出器と低真空モード用の二次電子検出器では、それぞれの検出器で信号量が多く得られる圧力値が異なる。
帯電について考えると、圧力が高いほど、電子線によりイオン化され正の電荷をもった窒素分子の量が増えて、帯電した試料表面を電気的に中和してくれるため、帯電を除去する効果が強くなる。
一次電子線について考えると、圧力が低いほど、散乱が減るため、像の鮮明さやEDS(エネルギー分散型X線分光器)による分析時の精度が向上する。
反射電子検出器について考えると、圧力が低いほど、信号が検出器に到達しやすくなり信号量が増す。
低真空モード用の二次電子検出器について考えると、試料から出た二次電子を試料室内の窒素分子を利用した電子雪崩現象により増幅しているため、圧力が低すぎると信号の増幅が十分行われず、逆に圧力が高すぎると検出器へと信号が到達しづらくなり信号量が減ってしまう。よって、最適な圧力値がその中間に存在する。
処理部において、上述した信号量や帯電の状態等の圧力に対する変化を考慮して、低真空モードでの最適な圧力値を決定する。
最適な圧力値としては、試料の帯電が抑えられ、かつ、信号量が多く得られる圧力を選定する。
そして、処理部において、検出信号の信号量の定量化と、試料の帯電の状態の定量化を行って、その定量化を行って得られた結果に基づいて、低真空モードでの最適な圧力値を決定する処理を行う。
電子顕微鏡装置で得られる画像としては、反射電子の検出信号に基づく反射電子像と、二次電子の検出信号に基づく二次電子像がある。
これらの画像のうち、どちらか一方の画像のみを取得する場合には、試料の帯電が抑えられる圧力の範囲のうちで、その画像の信号量が最も多くなる圧力を、最適な圧力値として選定する。
反射電子像と二次電子像の両方の画像を取得する場合には、それぞれの画像に対して独立して最適な圧力値を選定する方法と、同じ圧力を最適な圧力値に選定する方法と、いずれの方法も可能である。
同じ圧力を最適な圧力値に選定する方法を採用すると、その圧力において、反射電子像と二次電子像の両方の画像を同時に取得することが可能になるが、独立して最適な圧力値を選定する方法よりも信号量が低くなることがある。
なお、同じ圧力を最適な圧力値に選定する方法では、いずれかの画像の最適な圧力値を優先させて選定することも、両方の画像の最適な圧力値の中間の圧力値を選定することも、いずれも可能である。このとき、オペレーターが、どの圧力値を最適な圧力値に選定するかを、事前に決めておくことができる。
(検出信号の信号量の定量化の方法)
検出信号の信号量の定量化は、例えば、以下の方法により、行うことができる。
(手順1)測定条件とコントラストを設定する。
(手順2)明るさ(輝度)の調整を行い、白黒の階調のヒストグラムのピークを、中央付近にする。例えば、横軸が256階調で縦軸がピクセル数のヒストグラムであれば、ヒストグラムのピークを128階調付近にする。なお、ヒストグラムの階調は、256階調に限定されず、その他の階調も可能である。
(手順3)調整した明るさ(輝度)の条件において、試料から放出された電子を検出して、その検出信号に基づく画像を作成する。
(手順4)作成した画像から、白黒の階調のヒストグラムを得る。
(手順5)得られたヒストグラムより、標準偏差の値を求める。
このようにして求めた標準偏差の値は、信号量と相関があるため、標準偏差の値から信号量を定量化することができる。
なお、(手順3)及び(手順4)では、検出信号に基づく画像を作成して、作成した画像から白黒の階調のヒストグラムを得たが、画像を作成せずに、検出信号から直接白黒の階調のヒストグラムを得ることも可能である。画像を作成して画像からヒストグラムを得た場合も、検出信号から直接ヒストグラムを得た場合も、いずれも検出信号に関するヒストグラムを得ている。
そして、試料室の内部の圧力を変化させて、それぞれの圧力において、画像を作成して信号量の定量化を行うことにより、圧力と信号量の関係が得られる。この圧力と信号量の関係を用いて、最適な圧力値の決定を行うことができる。
なお、検出信号の信号量の定量化の方法は、上述した方法に限定されない。検出信号の信号量を定量化することができる方法であれば、他の方法を採用することもできる。
(実験1)
ここで、ヒストグラムの標準偏差の値と信号量に相関があることを確かめるため、照射電流(P. C.: Probe Current)を変化させて、標準偏差の値の変化を調べた。
試料として、酸化亜鉛の粉体を使用した。
測定条件は、以下の通りとした。
検出器:反射電子検出器BED−C、加速電圧:5kV、倍率:10,000倍、照射電流(P. C.: Probe Current):0〜40(相対値)、作動距離:10mm、圧力値: 10−2Pa程度(高真空モード)、絞り:20μm、ロードカレント(L.C.):100μA、画素数:2560×1920、スキャン方式:スロースキャン(CF無し)、1フレームのスキャンタイム:80秒
上記の測定条件で、照射電流(P.C.)を0から40まで5おき(相対値)に変化させ、それぞれの照射電流において、画像(反射電子像)の取得を行った。なお、画像を取得する際には、コントラストの設定値を固定するため最大にし、明るさ(輝度)の調整で分布のピーク位置を中心付近に調整した。
そして、得られた画像の信号量を定量化した。具体的には、画像の256階調のヒストグラムの分布から、標準偏差を求めた。
なお、上記の条件では、コントラストが最大でも信号量が少ないため、像が飽和(白とび)することはなく、正規分布に近い形状を示す。
そして、試料の異なる3つの視野(視野1、視野2、視野3)に対して、画像を取得し、取得した画像の信号量を定量化した。
異なる3つの視野(視野1、視野2、視野3)のそれぞれにおける、照射電流とヒストグラムの標準偏差の関係を、図3に示す。
照射電流の増大に伴い増加する信号量に対応して、図3に示すように、ヒストグラムの標準偏差も照射電流の増大に伴い増加しており、信号量の違いがヒストグラムの標準偏差によって定量化できていることがわかる。
また、図3より、視野が変わっても、大きな変化がないことがわかる。
(帯電の状態の定量化の方法1)
試料の帯電の状態の定量化は、例えば、以下の方法により、行うことができる。
(手順1)測定条件とコントラストを設定する。
(手順2)明るさ(輝度)の調整を行い、白黒の階調のヒストグラムのピークを、中央付近にする。例えば、横軸が256階調で縦軸がピクセル数のヒストグラムであれば、ヒストグラムのピークを128階調付近にする。なお、ヒストグラムの階調は、256階調に限定されず、その他の階調も可能である。
(手順3)調整した明るさ(輝度)の条件において、試料から放出された電子を検出して、その検出信号に基づく画像を作成する。
(手順4)作成した画像から、白黒の階調のヒストグラムを得る。
(手順5)得られたヒストグラムより、最も明るいコントラストのピクセル数の値を求める。例えば、256階調のヒストグラムであれば、最も明るい256階調目のピクセル数を求める。
このようにして求めた、最も明るいコントラストのピクセル数の値は、帯電の状態と相関があるため、最も明るいコントラストのピクセル数の値から、帯電の状態を定量化することができる。そして、最も明るいコントラストのピクセル数の値が、十分に小さい値やゼロに近い値であれば、帯電が抑えられている、と考えることができる。
なお、(手順3)及び(手順4)では、検出信号に基づく画像を作成して、作成した画像から白黒の階調のヒストグラムを得たが、画像を作成せずに、検出信号から直接白黒の階調のヒストグラムを得ることも可能である。画像を作成して画像からヒストグラムを得た場合も、検出信号から直接ヒストグラムを得た場合も、いずれも検出信号に関するヒストグラムを得ている。
そして、試料室の内部の圧力を変化させて、それぞれの圧力において、画像を作成して試料の帯電の状態の定量化を行うことにより、圧力と試料の帯電の状態の関係が得られるので、帯電が抑制される圧力範囲がわかる。例えば、最も明るいコントラストのピクセル数の値が、十分に小さい値やゼロに近い値となる圧力範囲を、帯電が抑制される圧力範囲とすることができる。
なお、試料の帯電の状態の定量化の方法は、上述した方法に限定されない。試料の帯電の状態を定量化することができる方法であれば、他の方法を採用することもできる。
(帯電の状態の定量化の方法2)
上述した方法では、電子を検出して得られる画像を利用して、試料の帯電の状態の定量化を行っていた。
これに対して、試料の帯電の状態の定量化の他の方法として、X線を検出して得られる検出結果を利用することもできる。
X線を検出して得られる検出結果を利用する場合は、例えば、以下の方法により試料の状態の定量化を行うことができる。
(手順1)測定条件を設定する。
(手順2)試料から放出されたX線を検出して、その検出信号に基づくエネルギー分布を得る。
(手順3)得られたエネルギー分布から連続X線の末端の値(最大エネルギーの値)を求める。
このようにして求めた、連続X線の末端の値(最大エネルギーの値)は、試料の帯電の状態と相関があるため、連続X線の末端の値(最大エネルギーの値)から、試料の帯電の状態を定量化することができる。
そして、試料室の内部の圧力を変化させて、それぞれの圧力において、X線のエネルギー分布を得て試料の帯電の状態の定量化を行うことにより、圧力と試料の帯電の状態の関係が得られるので、帯電が抑制される圧力範囲がわかる。
(実験2)
ここで、上述した試料の帯電の状態の定量化のそれぞれの方法による、試料の帯電の状態の定量化が可能であることを確かめた。
まず、試料の帯電の状態が、ヒストグラムの最も明るいコントラストのピクセルの数の変化と相関があることを確かめるため、圧力を変化させて、最も明るいコントラスト標準偏差の値の変化を調べた。
試料として、ろ紙を使用した。
測定条件は、以下の通りとした。
検出器:反射電子検出器BED−C、加速電圧:10kV、倍率:100倍、照射電流:150pA、作動距離:10mm、圧力:10〜150Pa、画素数:2560×1920、スキャン方式:スロースキャン(CF無し)、1フレームのスキャンタイム:40秒
上記の測定条件で、圧力を10〜150Paの範囲で変化させ、それぞれの圧力において、画像(反射電子像)の取得を行った。なお、画像を取得する際には、各圧力で視野とコントラストの設定を固定し、明るさの調整で分布のピーク位置を中心付近に調整した。
そして、得られた画像から、試料の帯電の状態を定量化した。具体的には、画像のヒストグラムの最も明るい256階調目のピクセル数を求めた。
圧力10Paで得られた反射電子像を図4Aに示し、圧力40Paで得られた反射電子像を図4Bに示す。
また、圧力と256階調目のピクセル数との関係を、図5に示す。
図4Aの圧力10Paでは、反射電子像に輝度の高い箇所がいくつかあり、帯電していることがわかる。これに対して、図4Bの圧力40Paでは、反射電子像に図4Aで見られた輝度の高い箇所がほとんどなく、帯電が抑えられていると考えられる。
また、図5より、圧力が大きくなるにつれて、画像の256階調目のピクセル数が減少していき、帯電が抑えられていくことがわかる。そして、40Pa程度の圧力において、画像の256階調目のピクセル数が十分に小さくなり、ほぼ帯電が抑えられていることがわかる。
また、上述の試料の帯電の状態の定量化が有効であることを確かめるため、他の定量化方法として、エネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて、圧力値を10〜150Paの範囲で変化させ、それぞれの圧力値において、連続X線を測定した。
ただし、上述した画像の取得と同じ試料及び同じ測定条件で測定を行ったところ、毎秒500カウント程度のX線しか取得できず、カウント数が少なかった。
そこで、時間を500秒に延長して、試料及びその他の測定条件は上述した画像の取得と同じ測定条件として、測定を行った。そして、測定で得られた連続X線について、末端の値(最大エネルギーの値)を調べた。
圧力(Pa)と、EDSを用いて測定した連続X線の末端の値(eV)との関係を、下記の表1に示す。
表1より、図5に示した256階調目のピクセル数の変化と同様に、40Pa程度の圧力で連続X線の末端の値に変化がなくなり、ほぼ帯電が抑えられていることがわかる。
即ち、図5に示した256階調目のピクセル数によって、試料の帯電の状態を定量化できることが確かめられ、また、EDSを用いて測定した連続X線の末端の値でも、試料の帯電の状態を定量化できることが確かめられた。
(電子顕微鏡装置の検査方法)
本発明に係る電子顕微鏡装置が、検出器で取得した検出信号に基づいて信号量を定量化できることを利用して、電子顕微鏡装置の検査を行うことができる。
検査の対象とする電子顕微鏡装置は、試料に電子ビームを照射する電子ビーム照射部と、試料が配置される試料室と、電子ビームが照射されることによって試料から放出される、放射線を検出する検出部と、検出部で検出した放射線の検出信号の処理を行う処理部と、処理部で処理した検出信号に基づいて画像を作成する画像作成部と、画像作成部が作成した画像を表示する表示部を備えた構成とする。
そして、以下に説明する方法で検査を行う。
(手順1)まず、予め、基準試料に対して測定条件で、放射線の検出と、検出信号の信号量の定量化を行い、検出信号の信号量の基準値を設定する。
この基準値を設定するための測定は、電子顕微鏡装置の納入時等、電子顕微鏡装置の状態が良く、状態が安定しているときに行うことが望ましい。そして、例えば、納入時の場合には、納入の作業者が対応することができる。
(手順2)検査の際には、(手順1)で用いた基準試料を用いて、(手順1)と同じ測定条件で、放射線の検出と、検出信号の信号量の定量化を実施する。そして、処理部は、定量化して得られた値が、(手順1)で設定した基準値と比較して、所定の正常値の範囲内であるかどうかを、判定する。
得られた値が所定の正常値の範囲内である場合には、通常通り装置を使用する。
得られた値が所定の正常値の範囲外である場合には、装置の保守を行う。この場合、表示部に保守を推奨する通知を表示するように構成してもよい。
このようにして、信号量の定量化を行い、定量化して得られた値が、基準値と比較して所定の正常値の範囲内であるかどうか判定するので、判定の結果に基づいて、適切なタイミングで保守を行うことが可能になる。これにより、電子顕微鏡装置の性能を維持して効率良く運用することができる。
なお、この検査方法において、信号量の定量化に用いる検出器は、反射電子検出器及び二次電子検出器のいずれか一方でも両方でも構わない。(手順1)で用いた検出器と同じ検出器を用いて、(手順2)を行えば良い。
<2.実施の形態>
次に、本発明の具体的な実施の形態を説明する。
本発明の電子顕微鏡装置の一実施の形態の概略構成図を、図1に示す。
図1に示す電子顕微鏡装置1は、鏡筒2、試料室3、排気ポンプ4、ガス導入部5を備えている。
このうち、鏡筒2と試料室3によって、電子顕微鏡装置本体が構成される。
鏡筒2の上部には、電子銃11が設けられており、鏡筒2と電子銃11によって、試料に電子ビームを照射する電子ビーム照射部が構成される。
試料室3には、試料から放出される放射線のうちの電子を検出する検出器として、反射電子検出器13と二次電子検出器14が設けられている。そして、測定する対象の試料12を、試料室3の内部に配置する。
加えて、試料室3には、排気ポンプ4とガス導入部5が設けられ、試料室3の内部の吸気と排気を制御する。なお、ガス導入部5は、単に大気を試料室3の内部に導入するガス導入バルブでもよい。
さらに、電子顕微鏡装置1は、処理部21と、制御部22と、画像作成部23と、表示部24を備えている。
この電子顕微鏡装置1では、電子銃11から出射した電子ビームEBを、試料室3内に配置された試料12に照射する。そして、試料12から放出される反射電子と二次電子を、反射電子検出器13と二次電子検出器14でそれぞれ検出する。
なお、試料12から放出されるX線も検出する場合には、さらに、試料室3にX線検出器を設けて電子顕微鏡装置1を構成する。
処理部21は、反射電子検出器13と二次電子検出器14でそれぞれ検出された電子に基づく検出信号を処理する。また、処理部21は、検出信号に基づいて、信号量の定量化や試料12の帯電の状態の定量化を行う。そして、処理部21は、信号量の定量化や試料12の帯電の状態の定量化の結果に基づいて、最適な圧力値を決定する。
制御部22は、排気ポンプ4とガス導入部5の動作を制御して、試料室3の内部圧力を調整する。また、制御部22は、図示は省略するが、鏡筒2内のコイルやレンズ等の制御も行う。
そして、処理部21で決定した最適な圧力値に基づき、試料室3の内部の圧力を図示しない圧力センサ等で検知しながら、制御部22が排気ポンプ4とガス導入部5の動作を制御することにより、試料室3の内部の圧力を、最適な圧力値に自動的に制御することができる。
画像作成部23は、処理部21で処理した検出信号に基づいて、画像を作成する。
表示部24は、画像作成部23で作成した画像を表示する。
表示部24に表示された画像を観察することにより、試料の状態を観察することができる。
なお、表示部24には、画像作成部23で作成した画像の他に、電子顕微鏡装置1の状態等、様々な情報を表示してもよい。例えば、異常があった場合に警告を表示するようにしてもよい。
処理部21、制御部22、画像作成部23は、コンピュータプログラムを実行するコンピュータ(例えば、マイクロコンピュータやパーソナルコンピュータ)等で構成することができる。
そして、処理部21と制御部22は、鏡筒2及び試料室3から成る装置本体と配線等の有線又は無線で接続されている構成とする。
また、表示部24は、画像作成部23と有線又は無線で接続されている構成とする。
次に、本実施の形態の電子顕微鏡装置1における、最適な圧力値を決定する具体的な方法について説明する。
最適な圧力値を決定する方法の一形態のフローチャートを、図2に示す。
図2に示すフローチャートでは、まず、ステップS11において、測定条件と画像のコントラストを設定する。測定条件としては、例えば、照射電流、加速電圧、倍率、スキャン時間等が挙げられる。
次に、ステップS12において、圧力範囲と圧力間隔を設定する。
なお、最適な圧力値の決定を、常に同じ圧力範囲と圧力間隔で実施するように設定している場合には、このステップS12は省略される。
次に、ステップS13において、試料室3の圧力を、設定された圧力範囲のうちの最小圧力にする。
次に、ステップS14において、ブライトネスの調整を行う。具体的には、ブライトネスの調整により、白黒の階調のヒストグラムのピークを中央付近にする。例えば、ヒストグラムが256階調の場合は、ピークを128階調付近にする。
次に、ステップS15において、画像を取得する。具体的には、検出器で電子を検出して、その検出信号を処理部21で処理して、処理部21で処理した検出信号に基づいて、画像作成部23において画像を作成する。検出器としては、図1の反射電子検出器13及び二次電子検出器14の両方又はいずれか一方を使用する。
なお、画像作成部23において作成した画像は、いったん図示しない記憶部(メモリ等)に保存しておく。
次に、ステップS16において、圧力が最大圧力であるかどうか判断する。
圧力が最大圧力ではない場合には、ステップS17に進む。
圧力が最大圧力である場合には、ステップS18に進む。
ステップS17においては、ステップS12で設定された圧力間隔に従い、圧力を一段階上げて、ステップS14に戻る。
そして、一段階上げた圧力で、再びステップS14のブライトネスの調整を行う。
ステップS18においては、取得した画像から信号量を定量化する。取得した画像は、いったん保存しておいた記憶部から読み出して、信号量の定量化に使用する。
例えば、前述したように、ヒストグラムの標準偏差を求めることにより、信号量を定量化する。それぞれの圧力で取得した各画像に対して、信号量を定量化することにより、圧力と信号量の関係が得られる。
次に、ステップS19において、取得した画像から帯電の状態を定量化する。具体的には、例えば、前述したように、ヒストグラムの最も明るいコントラストのピクセル数を求めることにより、帯電の状態を定量化する。それぞれの圧力で取得した各画像に対して、帯電の状態を定量化することにより、圧力と信号量の関係が得られる。
次に、ステップS20において、定量化した帯電の状態、即ち、ステップS19の定量化で得られた圧力と帯電の状態の関係から、帯電が抑えられる圧力範囲を求める。
例えば、前述したように、ヒストグラムの最も明るいコントラストのピクセル数の値が十分に小さい値やゼロに近い値である範囲を、帯電が抑えられる圧力範囲とする。
なお、ステップS18〜ステップS20の各ステップは、図2に示したフローチャートの順序には限定されない。他の順序(例えば、S19→S18→S20、S19→S20→S18等)も可能である。
次に、ステップS21において、ステップS18の定量化で得られた圧力と信号量の関係から、ステップS20で求めた、帯電が抑えられる圧力範囲内であって、かつ信号量が最大となる圧力を求める。
このようにして、帯電が抑えられ、かつ、信号量が最大となる、圧力を求めることができる。
そして、この圧力を最適な圧力値として、処理部21から制御部22に指示することにより、制御部22が試料室3の内部の圧力を制御する。こうして試料室3が最適な圧力値に制御された状態で、試料12の観察や測定を行うことができる。
これにより、試料室3の内部の圧力が、自動的に最適な圧力に制御されるので、オペレーターの経験による個人差を無くして、経験の少ないオペレーターでも良好な測定を行うことが可能になる。
(変形例)
図2に示したフローチャートでは、圧力を圧力範囲の最小値から最大値まで上げていく場合を説明したが、圧力を圧力範囲の最大値から最小値まで下げていくことも可能である。その場合、図2のステップS13の代わりに圧力を最大圧力にするステップが入り、ステップS16の代わりに圧力が最小圧力か判断するステップが入り、ステップS17の代わりに圧力を一段階下げるステップが入る。
図2に示したフローチャートでは、まず、圧力範囲の全ての圧力について検出器で画像を取得して、取得した画像からの信号量の定量化及び帯電の状態の定量化を行っているが、画像の取得と定量化の順序は、図2のフローチャートの順序に限定されるものではない。
例えば、各圧力での画像の取得と、各圧力で取得した画像からの定量化を、並行して独立に行うようにすることも可能である。
また例えば、1つの圧力で画像の取得と取得した画像からの定量化を行ってから、次の圧力に変えて画像の取得と取得した画像からの定量化を行うことも可能である。この場合のフローチャートは、例えば、図2のステップS18及びステップS19が、ステップS15とステップS16との間に移動した内容となる。
図2のフローチャートでは、画像を取得して、取得した画像から信号量の定量化と試料の定量化を行っていた。即ち、検出部13,14で検出した検出信号に基づく画像を作成して、作成した画像からヒストグラムを得て、定量化を行っていた。
このように検出信号に基づいて画像を作成した画像から定量化する場合には、画像の作成過程を共用化するために、最適な圧力値で試料を観察・測定して作成する画像と同様の範囲で、画像を作成することが望ましい。
これに対して、画像を作成せずに、検出信号から直接、信号量の定量化や試料の帯電の状態の定量化を行うことも可能である。このように検出信号から直接定量化する場合には、画像を作成する範囲とは独立して、使用する検出信号の範囲を設定することも可能である。そして、その範囲内の検出信号から直接ヒストグラムを作成して、ヒストグラムの標準偏差の値や、ヒストグラムの最も明るいコントラストのピクセル数の値を求めることができる。
<3.実施例>
次に、本発明に係る実施例として、信号量の定量化と試料の帯電の状態の定量化を行い、最適な圧力値を求めた。
(実施例1)
前述した実験2の測定において、反射電子検出器13(BED)と同時に、二次電子検出器14でも画像の取得を行っており、本実施例では、この二次電子検出器14で取得した画像も定量化を行った。
なお、反射電子検出器13で取得した画像から帯電の状態を定量化した結果は、図5に示した通りである。図5に示したように、帯電が抑えられる圧力範囲は、40Pa以上の圧力範囲である。
また、図5に示した256階調目のピクセル数を求めた同じヒストグラムから、ヒストグラムの標準偏差を求めて、反射電子検出器13の信号量を定量化した。
さらに、二次電子検出器14で取得した画像から、ヒストグラムの標準偏差を求めて、二次電子検出器14の信号量を定量化した。
反射電子検出器13の信号量の定量化の結果として、圧力とヒストグラムの標準偏差との関係を、図6に示す。
図6より、圧力が低いほど、標準偏差が大きく、信号量も大きいことがわかる。
そして、帯電が抑えられる40Pa以上の圧力範囲では、その圧力範囲内で最も低い圧力40Paにおいて標準偏差が最も大きくなっており、信号量も最も大きくなっていると推測される。
従って、反射電子像では、最適な圧力が40Paであることがわかる。
二次電子検出器14の信号量の定量化の結果として、圧力とヒストグラムの標準偏差との関係を、図7に示す。
図7より、40〜80Paまでは標準偏差の値が大きくなっていき、標準偏差の値と相関する信号量も増大することが推測される。また、さらに圧力を上げると、標準偏差の値が小さくなっていき、標準偏差の値と相関する、信号量も減少することが推測される。
そして、図7の結果より、帯電が抑えられる40Pa以上の圧力範囲では、圧力80Paにおいて標準偏差が最も大きくなっており、信号量も最も大きくなっていると推測される。
従って、二次電子像では、最適な圧力が80Paであることがわかる。
なお、最適な圧力値に設定した後の試料の観察・測定において、反射電子検出器13と二次電子検出器14によって同時に画像を取得したい場合には、反射電子像と二次電子像のどちらかの最適な圧力値(40Pa或いは80Pa)を優先させる、もしくは、その中間の圧力値(例えば、60Pa)とする。
(実施例2)
実施例1で採用した反射電子検出器13で取得した画像の代わりに、EDSを用いて検出した連続X線を採用し、連続X線の末端の値によって、試料の帯電の状態を定量化した。
本実施例では、実験2と同じ試料を用いて、実験2と同じ測定条件とした。
試料の帯電の状態の定量化の結果は、先に表1に示した通りである。
表1の結果から、40Paで帯電が抑えられていることがわかる。
即ち、連続X線の末端の値で判断することにより、実施例1の場合と同様に、帯電が抑えられる圧力範囲を求めることができる。
1 電子顕微鏡装置、2 鏡筒、3 試料室、4 排気ポンプ、5 ガス導入部、11 電子銃、12 試料、13 反射電子検出器、14 二次電子検出器、21 処理部、22 制御部、23 画像作成部、24 表示部、EB 電子ビーム

Claims (7)

  1. 試料に電子ビームを照射する電子ビーム照射部と、
    前記試料が配置される試料室と、
    前記電子ビームが照射されることによって前記試料から放出される、放射線を検出する検出部と、
    前記検出部で検出した前記放射線の検出信号の処理を行う処理部と、
    前記処理部で処理した前記検出信号に基づいて画像を作成する画像作成部と、
    前記画像作成部が作成した画像を表示する表示部を備え、
    前記処理部は、前記検出信号の信号量の定量化、及び前記試料の帯電の状態の定量化を行い、定量化を行って得られた結果に基づいて前記試料室の内部の最適な圧力値を決定する処理を行う
    電子顕微鏡装置。
  2. さらに、前記試料室の内部の圧力を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記試料室の内部を前記処理部が決定した前記最適な圧力値に制御する請求項1に記載の電子顕微鏡装置。
  3. 前記検出部が電子を検出し、前記処理部は、前記検出部で検出した前記電子の検出信号に関する、階調を用いたヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムから標準偏差の値を算出することにより、前記信号量の定量化を行う請求項1に記載の電子顕微鏡装置。
  4. 前記検出部が電子を検出し、前記処理部は、前記検出部で検出した前記電子の検出信号に関する、階調を用いたヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムから最も明るい階調のピクセル数の値を算出することにより、前記試料の帯電の状態の定量化を行う請求項1に記載の電子顕微鏡装置。
  5. 前記検出部がX線を検出し、前記処理部は、前記検出部で検出した前記X線の検出信号に基づいて、連続X線の最大エネルギーを求めることにより、前記試料の帯電の状態の定量化を行う請求項1に記載の電子顕微鏡装置。
  6. 試料に電子ビームを照射する電子ビーム照射部と、
    前記試料が配置される試料室と、
    前記電子ビームが照射されることによって前記試料から放出される、放射線を検出する検出部と、
    前記検出部で検出した前記放射線の検出信号の処理を行う処理部と、
    前記処理部で処理した前記検出信号に基づいて画像を作成する画像作成部と、
    前記画像作成部が作成した画像を表示する表示部を備えた電子顕微鏡装置において、
    所定の圧力の範囲内の各圧力において、前記検出部が前記試料から放出される前記放射線の検出信号を検出し、
    各圧力において前記検出部が検出した前記放射線の検出信号に基づいて、前記処理部が、前記検出信号の信号量の定量化、及び、前記試料の帯電の状態の定量化を行い、
    さらに前記処理部が、定量化を行って得られた結果に基づいて、前記試料室の内部の最適な圧力値を決定し、
    前記試料室の内部の圧力を、決定した前記最適な圧力値とした状態で、前記検出部で前記放射線を検出し、前記画像作成部で試料の画像を作成する
    電子顕微鏡装置の制御方法。
  7. 試料に電子ビームを照射する電子ビーム照射部と、
    前記試料が配置される試料室と、
    前記電子ビームが照射されることによって前記試料から放出される、放射線を検出する検出部と、
    前記検出部で検出した前記放射線の検出信号の処理を行う処理部と、
    前記処理部で処理した前記検出信号に基づいて画像を作成する画像作成部と、
    前記画像作成部が作成した画像を表示する表示部を備えた電子顕微鏡装置に対して検査を行う方法であって、
    予め、基準試料に対して一定の条件で、前記放射線の検出と、前記検出信号の信号量の定量化を行い、前記検出信号の信号量の基準値を設定し、
    検査の際には、前記基準試料を用いて、前記放射線の検出と、前記検出信号の信号量の定量化を実施し、定量化して得られた値が、前記基準値と比較して所定の正常値の範囲内であるかどうか判定する
    電子顕微鏡装置の検査方法。
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