JP2020051216A - 水洗大便器 - Google Patents
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Abstract
Description
まず、特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、水道水をリム吐水口に直接供給して吐出させることによりリム吐水を実行する一方、タンクに貯水された洗浄水をポンプで加圧してジェット吐水口から吐出させることによりジェット吐水を実行する、いわゆる、「ハイブリッド洗浄」によるボウル部の洗浄を実行するようになっている。
また、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、水道に直結されているリム吐水用の給水経路と、ジェット吐水用の洗浄水が貯水されるタンクに給水するジェット吐水用の給水経路とが電気的な切替弁(電磁弁等)により切替可能となっており、この電気的な切替弁の切替動作は、コントローラの制御により電気的な信号で行われるようになっている。これにより、便器洗浄が開始された際には、まず、リム吐水口から洗浄水を吐水するリム吐水が行われ、つぎに、このリム吐水を継続した状態でジェット吐水口から洗浄水を吐水するジェット吐水が行われるようになっている。
さらに、特許文献2に記載されている従来の水洗大便器においては、タンクに貯水された洗浄水をポンプで加圧し、このポンプで加圧された洗浄水のみによりリム吐水及びジェット吐水のそれぞれを実行するようになっている。また、この水洗大便器においては、ポンプで加圧された洗浄水の吐水流路が電気的な切替弁(電磁弁等)によりリム吐水用の給水経路とジェット吐水用の給水経路のそれぞれに切替可能となっており、この電気的な切替弁の切替動作がコントローラの制御により電気的な信号で行われるようになっている。
これらの特許文献1、2に記載されている従来の水洗大便器については、低水圧の地域や場所に設置した場合においても、タンクに貯水された洗浄水をポンプで加圧して吐水を行うことができるようになっているため、便器の洗浄性能を確保することができるようになっている。
特に、水道水をリム吐水口へ直接供給するリム吐水用の給水経路においては、水頭圧(いわゆる、ヘッド圧)を考慮すると、切替弁をリム吐水口よりも高い位置に配置することが好ましい。しかしながら、このように切替弁をリム吐水口よりも高い位置に配置した場合には、水洗大便器の高さ方向のスペースを要することになるため、装置の小型化を阻害する要因となっている。
したがって、このように給水経路に比較的大きな水圧がかかった状態において電気的な切替弁(電磁弁等)を駆動させるためには、比較的大きなトルクが必要とされるため、その分、切替弁が大型化してしまうという問題がある。
これに対して、比較的低い水圧がかかった状態において切替弁を予め作動させておくことにより、切替動作に必要なトルクを小さくすることもできる。しかしながら、切替弁が全開状態となった時にポンプの回転数を上昇させると、特に、ジェット吐水において、サイホンの発生に寄与しない無駄水が発生してしまうことが懸念されるという問題もある。
そこで、本発明者らは、加圧ポンプによって発生する給水路内の水圧に応じて、リム吐水用の給水経路やジェット吐水用の給水経路を開閉することにより流路切替を行う切替部に着目し、この切替部を含む装置の小型化を実現することを目的として鋭意開発を行っている。
しかしながら、水圧によって給水経路を開閉することにより流路切替を行う切替部の切替弁等の切替機構に対しては、水圧を効率よく与える必要があるが、水圧に応じた切替機構の応答性が良くなりすぎてしまうと、切替機構の挙動等において、特に、オーバーシュートやアンダーシュートが生じてしまい、吐水流量が不安定になるという問題がある。
このように構成された本発明においては、加圧ポンプにより加圧された洗浄水の水圧に対して切替部の切替弁体が受ける面(受圧面)を流路軸方向に対向させることができる。 したがって、切替弁体が効果的に水圧を受けることができ、流路軸方向と同一の作動軸方向に機械的に作動することができる。
また、例えば、切替弁体が閉弁している状態から開弁する際には、付勢部が切替弁体を閉弁させる作動軸方向の付勢力で常時付勢しているため、切替弁体は、付勢部の付勢力を上回る水圧を受けたときに開弁を開始することができる。よって、切替弁体が閉弁状態から開弁状態へ急激に変化することを抑制することができる。
さらに、切替弁体の作動軸方向の動作を緩和させる緩衝部により、切替弁体が閉弁状態から開弁状態への作動軸方向に作動しているときや、切替弁体が開弁状態から閉弁状態への作動軸方向に作動しているときにおいて、切替弁体の作動軸方向の動作を緩和させることができる。
また、切替弁体が水圧を受けたときにおいても、緩衝部が水圧による切替弁体自体の振動を抑制することができるため、切替弁体の作動を安定化させることができる。
以上より、切替弁体の開閉状態が急激に変化することを抑制することができると共に、切替弁体の作動時の挙動について、オーバーシュートやアンダーシュートを抑制して安定化させることができる。よって、吐水流量を安定化させることができると共に、吐水時の無駄水を抑制して節水化を実現することができる。
このように構成された本発明においては、切替弁体の作動軸方向に作動する際に、緩衝部により、切替弁体の作動軸方向に対して垂直な方向の緩衝力が切替弁体に作用することができるため、切替弁体の作動軸方向の動作を適度に緩和させることができる。
したがって、切替弁体の開閉状態が急激に変化することを抑制することができると共に、吐水流量を安定化させることができる。
このように構成された本発明においては、切替弁体から作動軸方向に延びるように設けられた弁軸部について、切替部の支持部により緩衝部を介して作動軸方向に摺動可能に支持することができる。
したがって、作動軸方向に摺動する弁軸部に対して緩衝部により適度な摺動抵抗を付与することができる。
よって、切替弁体の開閉動作を安定させることができるため、切替部による給水経路の切り替えを安定させることができる。
このように構成された本発明においては、弁軸部が挿入された状態で支持部により保持される緩衝部の環状シール部材が、弁軸部の全周に対して緩衝力をほぼ均一に付与することができるため、作動軸方向に摺動する弁軸部の全周に対してほぼ均一で適度な摺動抵抗を付与することができる。
したがって、切替弁体の開閉動作をより安定させることができるため、切替部による給水経路の切り替えをより安定させることができる。
このように構成された本発明においては、まず、第1洗浄工程を実行させる際には、例えば、切替部の切替弁体が閉弁状態となり、給水路内の洗浄水がリム給水路を経て比較的小さい流量でリム吐水口から吐水される。
その後、第2洗浄工程を実行させる際には、例えば、切替部の切替弁体が閉弁状態から開弁状態に切り替わり、リム吐水口からの洗浄水の吐水(リム吐水)が継続されながら、ジェット給水路を経てジェット吐水口からの洗浄水の吐水(ジェット吐水)も比較的大きい流量で行われるようになる。
すなわち、このように第1洗浄工程から第2洗浄工程に給水経路が切り替わる際には、切替部の切替弁体が、比較的小さい水圧を受けていた閉弁状態から、比較的大きい水圧を受けている開弁状態に作動することになる。しかしながら、流量が比較的小さいリム給水路が切替部よりも上流側の給水路に設けられ、流量が比較的大きいジェット給水路が切替部よりも下流側の給水路に設けられているため、切替弁体が閉弁状態から開弁状態に急激に変動することを抑制することができる。
特に、給水路からリム給水路の急激な圧力変動が生じることも抑制することができるため、第1洗浄工程から第2洗浄工程にかけて継続して行うリム吐水に影響を与えることなく、安定した吐水を行うことができる。
このように構成された本発明においては、第2洗浄工程から第3洗浄工程に給水経路が切り替わる際には、切替部の切替弁体が、比較的大きい水圧を受けていた開弁状態から、比較的小さい水圧を受けている閉弁状態に作動することになる。
このとき、切替弁体が開弁状態から閉弁状態に急激に変動することを抑制することができる。
よって、特に、給水路からリム給水路の急激な圧力変動が生じることも抑制することができるため、第2洗浄工程から第3洗浄工程にかけて継続して行うリム吐水に影響を与えることなく、安定した吐水を行うことができる。
なお、以下、本明細書中において「洗浄水の流量」や「吐水流量」等という表現の中で使用されている「流量」という用語については、単位時間当たりの体積変化[L/min](いわゆる、「体積流量」又は「瞬間流量」とも呼ぶ)を意味している。
図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器の全体概略構成図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、陶器等からなる便器本体2、及び、この便器本体2の後方に配置された機能部4をそれぞれ備えている。
便器本体2は、ボウル部6、リム吐水口8aを含むリム給水路8、ジェット吐水口10aを含むジェット給水路10、及び、排水トラップ管路12(排水トラップ部)をそれぞれ備えている。
給水管14は、その上流側が水道に直結されている。また、電磁弁16は、貯水タンク18の上流側の給水管14の途中に設けられ、コントローラ24(制御部)の制御により開閉されるようになっている。これにより、給水管14内の洗浄水が貯水タンク18内に供給又は停止されるようになっている。
また、加圧ポンプ20の羽根車(図示せず)の回転数N[rpm]は、コントローラ24の制御により調整可能となっている。
まず、図2は、本発明の一実施形態による水洗大便器の切替弁装置の縦断面図であり、閉弁状態を示し、図3は、本発明の一実施形態による水洗大便器の切替弁装置の縦断面図であり、開弁状態を示す。
まず、図1〜図3に示すように、上流側給水路28(第1流路)は、加圧ポンプ20から延びる給水路26に接続されており、その下流側が切替弁体34まで鉛直方向上方に延びている。すなわち、切替弁体34は、上流側給水路28(第1流路)の軸方向上の対向する位置に配置されている。
つぎに、図1〜図3に示すように、リム給水路30(第2流路)は、切替弁体34よりも上流側に位置している上流側給水路28の途中の分岐部B1から分岐しており、その下流側が便器本体2のリム吐水口8aの上流側のリム給水路8に接続されている。
また、図1〜図3に示すように、ジェット給水路32(第3流路)においては、切替弁体34により開閉される上流端(上流側給水路28の上端且つ下流端)より下流側の流域が側方に延びている。さらに、ジェット給水路32(第3流路)の下流側は、便器本体2のジェット吐水口10aの上流側のジェット給水路10に接続されている。
これにより、便器本体2のリム給水路8を通過して、リム吐水口8aからボウル部6内に吐水されるリム吐水が外部へ飛び散る等の機外漏水を抑制することができるようになっている。
なお、本実施形態においては、リム給水路8に定流量弁35を設けているが、切替弁装置22に定流量機能を付与してもよい。
特に、図1及び図2に示すように、切替弁体34が閉弁している状態では、上流側給水路28内の洗浄水のすべてが、分岐部B1からリム給水路30(第2流路)及び便器本体2側のリム給水路8を経てリム吐水口8aに供給されるようになっている。
一方、図3に示すように、切替弁体34が開弁している状態では、上流側給水路28内の洗浄水の一部が、分岐部B1からリム給水路30(第2流路)及び便器本体2側のリム給水路8を経てリム吐水口8aに供給されるようになっていると共に、上流側給水路28内の洗浄水の大半以上が、分岐部B1からジェット給水路32(第3流路)及び便器本体2側のジェット給水路10を経てジェット吐水口10aに供給されるようになっている。
弁体部34aは、鉛直方向に延びる上流側給水路28の中心軸線C1方向(流路軸方向)上の対向する位置に配置されている。
これにより、弁体部34aの下面(受圧面S0)が加圧ポンプ20により加圧された上流側給水路28内の洗浄水の水圧を受けて、切替弁体34が閉止状態から開弁動作を開始するようになっている。
ここで、弁体部34aの下面(受圧面S0)が加圧ポンプ20により加圧された上流側給水路28内の洗浄水の水圧を受けて、切替弁体34が閉止状態から開弁動作を開始するときの水圧を「境界水圧P0[kPa]」とすると、弁体部34aの下面(受圧面S0)が加圧ポンプ20により加圧された上流側給水路28内の洗浄水の所定水圧(境界水圧P0[kPa])以上の水圧を受けた場合には、切替弁体34(34a、34b、34b)が上流側給水路28の流路軸方向と同一方向(弁軸部34cの軸方向(作動軸方向))に機械的に作動することができようになっている。これにより、ジェット給水路32の上流端が水圧に応じて弁体部34aにより開閉可能となっている。
なお、本実施形態において、「切替弁体34が機械的に作動する」とは、切替弁体34が電気信号による制御や電磁力等により電気的に作動(電気的に開閉)する電気式の弁体とは異なることを意味しており、切替弁体34が開閉時に水圧等が直接的に作用することにより押圧されて機械的に作動(機械的に開閉)する機械式の弁体であることを意味している。
これにより、図2に示す閉弁状態の上流側給水路28内の洗浄水の水圧(静圧)P1及び図3に示す開弁状態の上流側給水路28内の洗浄水の水圧(動圧)P2について、弁体部34aの受圧面S0に対して周方向全体に亘ってほぼ均等に作用させることができるようになっている。よって、切替弁体34による給水経路の切替時の動作をより安定化させることができるようになっている。
圧縮コイルばね36(付勢部)は、その下端が切替弁体34の支持部34bにより支持されていると共に、上端が支持部材40(支持部)により支持されている。
また、この圧縮コイルばね36(付勢部)は、圧縮された撓み量に応じて、切替弁体34(34a、34b、34b)に対して閉弁させる方向の付勢する付勢力を作用するようになっている。
そして、閉弁状態の切替弁体34の弁体部34aの受圧面S0に所定水圧(境界水圧P0[kPa])以上の水圧(静圧)P1が作用した場合には、図3に示すように、切替弁体34の弁体部34aが上昇して開弁状態に切り替わるようになっている。
さらに、図3に示すように、開弁状態の切替弁体34の弁体部34aの受圧面S0に所定水圧(境界水圧P0[kPa])以上の水圧(動圧)P2(≧P0)が作用している場合には、水圧(動圧)P2相当の流体力が圧縮コイルばね36の圧縮撓みに応じた付勢力F2を上回るため、切替弁体34が付勢力F2に抗して開弁方向に作動しており、切替弁体34の開弁状態が維持されるようになっている。
この環状シール部材38は、切替弁体34の弁軸部34cが挿入されることにより、切替弁体34の弁軸部34cの外周面の上部に取り付けられた状態で支持部材40により保持される。これにより、切替弁体34の弁軸部34cは、環状シール部材38を介して支持部材40により作動軸方向に摺動可能に支持された状態となる。
また、図2及び図3に示すように、環状シール部材38(緩衝部)は、切替弁体34の作動軸方向に対して垂直な方向の緩衝力f0を切替弁体34の弁軸部34cに作用するようになっている。
これにより、環状シール部材38は、支持部材40の内部スペースV1が大気開放される程度に、切替弁体34の弁軸部34cの外周面に接触している。これにより、切替弁体34の弁軸部34cが作動軸方向に摺動した際には、環状シール部材38が切替弁体34の弁軸部34cに対して動摩擦力等を作用させて、摺動抵抗を付与することができるようになっている。
これらにより、貯水タンク18内の洗浄水がオーバーフロー水位に到達したとしても、これらの部材34,36,38,40が水没することを確実に防ぐことができ、切替弁装置22の動作不良や劣化を防ぐことができるようになっている。
ここで、本実施形態においては、角度θが90度(直角)に設定されている例(θ=90°)について説明するが、角度θについては、0度よりも大きく且つ90度未満(0°<θ<90°)の角度(鋭角)になるように設定されてもよい。
これらにより、図1〜図3に示すように、上流側から上流側給水路28(第1流路)の分岐部B1に流れ込んだ洗浄水が、分岐部B1の下流側の上流側給水路28に流れ込むと共に、分岐部B1からリム給水路30(第2流路)にも分岐して流れ込み易くすることができるようになっている。
また、上流側給水路28(第1流路)からリム給水路30(第2流路)へ分岐する分岐部B1付近又はその下流側の上流側給水路28やリム給水路30内で渦流が発生することを効果的に抑制することができるようになっている。
まず、ジェット給水路32の遷移流路部32aは、切替弁体34より開閉される上流端32c(上流側給水路28の下流端)から主流路部32bまで遷移するように形成された流路である。
また、ジェット給水路32の主流路部32bは、遷移流路部32aの下流端から側方、すなわち、上流側給水路28(第1流路)の鉛直方向に延びる中心軸線C1に対して直交する方向に延びるように形成された流路である。
さらに、ジェット給水路32の遷移流路部32aの上流端32c(上流側給水路28の下流端)は、主流路部32bの上端32dよりも下方に位置している。
これらにより、図3に示すように、切替弁体34が開弁した状態では、上流側給水路28(第1流路)の下流端32cからジェット給水路32(第3流路)の遷移流路部32aに洗浄水が流入した際、遷移流路部32aの上流端32cと主流路部32bの上端32dとの間の流域を広く確保することができるようになっている。
したがって、切替弁体34の開弁時に、上流側給水路28(第1流路)からジェット給水路32(第3流路)に流れ込む際に渦流が発生することを効果的に抑制することができるようになっている。
ここで、本実施形態においては、第2流路断面積A2が第1流路断面積A1よりも大きく設定されている(A2>A1)。
さらに、図2及び図3に示すように、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)における分岐部B1よりも下流側の第2流路断面積A2は、リム給水路30(第2流路)の第4流路断面積A4よりも大きく設定されている(A2>A4)。
また、図2及び図3に示すように、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)における分岐部B1よりも上流側の第1流路断面積A1は、リム給水路30(第2流路)の第4流路断面積A4よりも大きく設定されている(A1>A4)。
図4は、本発明の一実施形態による水洗大便器の基本動作を示すタイムチャートである。また、図5は、本発明の一実施形態による水洗大便器の全体概略構成図であり、切替弁装置の開弁状態を示す。
さらに、図6は、本発明の一実施形態による水洗大便器において、加圧ポンプの回転数に対するリム吐水、ジェット吐水、及び、リム・ジェット吐水のそれぞれの流量Q[L/min]と圧力[kPa]との関係を示す特性図である。
なお、図6に示す特性図においては、加圧ポンプ20の回転数N毎に描かれた流量Q[L/min]と圧力[kPa]との関係を示す曲線が等高線状に複数描かれている。また、図6では、リム吐水、ジェット吐水、及び、リム・ジェット吐水のそれぞれに対応する流量Q[L/min]と圧力[kPa]との関係を示す曲線がそれぞれ放物線状に描かれている。さらに、図6では、切替弁体34が稼働したときに取り得る流量Q[L/min]と圧力[kPa]との関係の軌跡を太線及びバツ印で示している。
このとき、図1及び図2に示すように、切替弁装置22の切替弁体34においては、圧縮コイルばね36が切替弁体34に作用する付勢力F1が、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)内の水圧P1(境界水圧P0未満の静圧、P1<P0)が弁体部34aの受圧面S0に作用する流体力を上回っている。これにより、弁体部34aは、上昇することなく、最低位置にあり、ジェット給水路32の遷移流路部32aの上流端32c(上流側給水路26の下流端)を閉止している状態(閉弁状態)となる。
したがって、図1及び図6に示すように、加圧ポンプ20から回転数N1で切替弁装置22の上流側給水路28内に供給された洗浄水W1(図6の水圧P1[kPa]及び流量Q1[L/min])は、上流側給水路28の分岐部B1からリム給水路30(第2流路)のみに供給されるため、ジェット給水路32(第3流路)に供給されることはない。
そして、このリム給水路30内の洗浄水は、定流量弁35を通過し、便器本体2のリム給水路8のリム吐水口8aからボウル部6に吐水される。これにより、図4に示す時刻t1から時刻t2までの時間(例えば、t2−t1=2.5秒)では、リム吐水口8aからの1回目のリム吐水が実行され、第1洗浄工程として、1回目のリム洗浄(いわゆる、「前リム洗浄」)が実行される。
このとき、図2、図3及び図5に示すように、切替弁装置22の切替弁体34においては、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)内の水圧(静圧)P1が弁体部34aの受圧面S0に作用する流体力が、圧縮コイルばね36が切替弁体34に作用する付勢力F1を上回るようになる。これにより、図4の時刻t2では、弁体部34aが、ジェット給水路32の遷移流路部32aの上流端32c(上流側給水路26の下流端)を閉止している状態(図2参照)から上昇し、開弁している状態となる(図3参照)。
また、図3に示すように、開弁した状態の弁体部34aの受圧面S0においては、水圧(動圧)P2が作用するようになり、この水圧(動圧)P2に相当する流体力についても圧縮コイルばね36による付勢力F2を上回っているため、切替弁体34の開弁状態が維持される(図3参照)。
したがって、図5及び図6に示すように、加圧ポンプ20から回転数N2で切替弁装置22の上流側給水路28内に供給された洗浄水W1(図6の水圧P2[kPa]及び流量Q2[L/min])のうちの一部の洗浄水W2(図6の水圧P2[kPa]及び流量Q3[L/min])が、リム吐水用として、上流側給水路28の分岐部B1からリム給水路30(第2流路)に供給される。
同時に、図5及び図6に示すように、加圧ポンプ20から回転数N2で切替弁装置22の上流側給水路28内に供給された洗浄水W1(図6の水圧P2[kPa]及び流量Q2[L/min])のうちの残部の洗浄水W3(図6の水圧P2[kPa]及び流量Q4[L/min])が、ジェット吐水用として、上流側給水路28の分岐部B1からジェット給水路32(第3流路)に供給される。
そして、図5に示すように、リム給水路30内の洗浄水W2(流量Q3[L/min])は、定流量弁35を通過し、便器本体2のリム給水路8のリム吐水口8aからボウル部6に吐水される。これにより、2回目のリム吐水が実行され、第2洗浄工程として、2回目のリム洗浄(いわゆる、「中リム洗浄」)が実行される。
同時に、図5に示すように、ジェット給水路32内の洗浄水W3については、リム給水路30内の洗浄水W2(流量Q3[L/min])よりも大きい流量Q4[L/min](Q4>Q3)で流れ、便器本体2のジェット給水路10のジェット吐水口10aからボウル部6に吐水される。これにより、1回目のジェット吐水が実行され、第2洗浄工程として、1回目のジェット洗浄が実行される。
また、図4の時刻t3から時刻t4までの時間では、加圧ポンプ20の回転数N3[rpm]が、図4の時刻t2から時刻t3の期間の加圧ポンプ20の回転数N2[rpm]よりも低下した分だけ、時刻t3から時刻t4までの時間の切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)内の水圧(動圧)P3[kPa]及び流量Q5[L/min](図6参照)のそれぞれについても、時刻t2から時刻t3までの時間の水圧(動圧)P2及び流量Q2[L/min](図6参照)よりも低下する(P3<P2、Q5<Q2)。
しかしながら、図4の時刻t3から時刻t4までの時間においても、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)内の水圧(動圧)P3が弁体部34aの受圧面S0に作用する流体力が、圧縮コイルばね36が切替弁体34に作用する付勢力F2を上回っているため、切替弁体34の開弁状態が維持される。
これらにより、2回目のリム吐水の実行が維持されながら、2回目のジェット吐水が実行され、第2洗浄工程として、2回目のリム洗浄(いわゆる、「中リム洗浄」)が継続されながら、2回目のジェット洗浄が実行される。
これらの結果、図4に示す時刻t2から時刻t4までの時間では、リム吐水口8aからのリム吐水とジェット吐水口10aからのジェット吐水とにより、いわゆる、「リム・ジェット吐水」が実行され、第2洗浄工程として、中リム洗浄及びジェット洗浄の双方が並行に実行される。
また、図4の時刻t4から時刻t5までの時間では、加圧ポンプ20の回転数N4[rpm]が、図4の時刻t1から時刻t2までの時間の加圧ポンプ20の回転数N1[rpm]よりも低下した分だけ、時刻t4から時刻t5までの時間の切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)内の水圧(静圧)P4[kPa]及び流量Q6[L/min](図6参照)のそれぞれについても、時刻t2から時刻t3までの時間の水圧(静圧)P1及び流量Q1[L/min](図6参照)よりも低下する(P4<P1、Q6<Q1)。
このとき、図1及び図2に示すように、切替弁装置22の切替弁体34においては、圧縮コイルばね36が切替弁体34に作用する付勢力F1が、切替弁装置22の上流側給水路28(第1流路)内の水圧(静圧)P4が弁体部34aの受圧面S0に作用する流体力を上回っている。これにより、時刻t4以後の切替弁体34の弁体部34aは、最低位置まで下降しており、ジェット給水路32の遷移流路部32aの上流端32c(上流側給水路26の下流端)を再び閉止している状態(閉弁状態)となる。
したがって、図1及び図6に示すように、加圧ポンプ20から回転数N4で切替弁装置22の上流側給水路28内に供給された洗浄水(図6の水圧P4[kPa]及び流量Q6[L/min])は、上流側給水路28の分岐部B1からリム給水路30(第2流路)のみに供給されるため、ジェット給水路32(第3流路)に供給されることはない。
そして、このリム給水路30内の洗浄水は、図4に示す時刻t4から時刻t5までの時間(例えば、t5−t4=5.0秒)では、リム吐水口8aからの3回目のリム吐水が実行され、第3洗浄工程として、3回目のリム洗浄(いわゆる、「後リム洗浄」)が実行される。
したがって、切替弁体34の弁体部34aの受圧面S0が効果的に水圧を受けることができ、上流側給水路28の中心軸線C1方向(流路軸方向)と同一の切替弁体34の弁軸部34cの軸方向(作動軸方向)に機械的に作動することができる。
また、例えば、切替弁体34が閉弁している状態(図2参照)から開弁する際には、圧縮コイルばね36が切替弁体34を閉弁させる作動軸方向の付勢力F1で常時付勢している。これにより、切替弁体34においては、弁体部34aの受圧面S0が圧縮コイルばね36の付勢力F1を上回る水圧(境界水圧P0以上の水圧)を受けたときに開弁を開始することができる。よって、切替弁体34が閉弁状態から開弁状態へ急激に変化することを抑制することができる。
特に、切替弁体34が閉止している状態(図2参照)から開弁状態(図3参照)になるまで作動軸方向(開弁方向)に上昇しているときには、環状シール部材38による切替弁体34の作動軸方向に対して垂直な方向の緩衝力f0が開弁速度を抑制して緩衝することができるため、切替弁体34の作動軸方向の開弁動作を適度に緩和させることができる。
一方、切替弁体34が開弁状態(図3参照)から作動軸方向(閉弁方向)に下降し、閉止状態(図2参照)になる直前では、環状シール部材38による切替弁体34の作動軸方向に対して垂直な方向の緩衝力f0が閉弁速度を抑制して緩衝することができるため、切替弁体34の作動軸方向の閉弁動作を適度に緩和させることができる。
また、切替弁体34の弁体部34aの受圧面S0が水圧を受けたときにおいても、緩衝部(環状シール部材38)が水圧による切替弁体34自体の振動を抑制することができるため、切替弁体34の作動を安定化させることができる。
これらにより、切替弁体34の開閉状態が急激に変化することを抑制することができると共に、切替弁体34の作動時の挙動について、オーバーシュートやアンダーシュートを抑制して安定化させることができる。よって、吐水流量を安定化させることができると共に、吐水時の無駄水を抑制して節水化を実現することができる。
したがって、作動軸方向に摺動する切替弁体34の弁軸部34cに対して環状シール部材38により動摩擦力等による適度な摺動抵抗を付与することができる。
よって、切替弁体34の開閉動作を安定させることができるため、切替弁装置22による給水経路30,32の切り替えを安定させることができる。
したがって、切替弁体34の開閉動作をより安定させることができるため、切替弁装置22による給水経路30,32の切り替えをより安定させることができる。
その後、第2洗浄工程(中リム洗浄/ジェット洗浄工程)を実行させる際には、切替弁装置22の切替弁体34が閉弁状態(図2参照)から開弁状態(図3参照)に切り替わり、リム吐水口8aからの洗浄水の吐水(リム吐水)が継続されながら、ジェット給水路32,10を経てジェット吐水口10aからの洗浄水の吐水(ジェット吐水)も比較的大きい流量で行われるようになる。
すなわち、このように第1洗浄工程(前リム洗浄工程)から第2洗浄工程(中リム洗浄/ジェット洗浄工程)に給水経路が切り替わる際には、切替弁装置22の切替弁体34が、比較的小さい水圧を受けていた閉弁状態から、比較的大きい水圧を受けている開弁状態に作動することになる。
しかしながら、流量が比較的小さいリム給水路30が切替弁装置22の切替弁体34よりも上流側の給水路28に設けられ、流量が比較的大きいジェット給水路32が切替弁装置22の切替弁体34よりも下流側に設けられている。これにより、切替弁体34が閉弁状態から開弁状態に急激に変動することを抑制することができるため、切替弁体34のオーバーシュートを抑制することができる。
特に、給水路28からリム給水路30の急激な圧力変動が生じることも抑制することができるため、第1洗浄工程(前リム洗浄工程)から第2洗浄工程(中リム洗浄/ジェット洗浄工程)にかけて継続して行うリム吐水に影響を与えることなく、安定した吐水を行うことができる。
このとき、切替弁体34が開弁状態から閉弁状態に急激に変動することを抑制することができるため、切替弁体34のアンダーシュートを抑制することができる。
よって、特に、給水路28からリム給水路30の急激な圧力変動が生じることも抑制することができるため、第2洗浄工程(中リム洗浄/ジェット洗浄工程)から第3洗浄工程(後リム洗浄工程)にかけて継続して行うリム吐水に影響を与えることなく、安定した吐水を行うことができる。
2 便器本体
4 機能部
6 ボウル部
8 リム給水路
8a リム吐水口
10 ジェット給水路
10a ジェット吐水口
12 排水トラップ管路(排水トラップ部)
14 給水管
16 電磁弁
18 貯水タンク
20 加圧ポンプ
22 切替弁装置(切替部)
24 コントローラ(制御部)
26 給水路
28 上流側給水路(第1流路)
30 リム給水路(第2流路)
32 ジェット給水路(第3流路)
32a ジェット給水路の遷移流路部
32b ジェット給水路の主流路部
32c ジェット給水路の遷移流路部の上流端、上流側給水路の下流端
32d ジェット給水路の主流路部の上端
34 切替弁体
34a ダイヤフラム型の弁体部
34b 支持部
34c 弁軸部
35 定流量弁
36 圧縮コイルばね(付勢部)
38 環状シール部材(緩衝部)
40 支持部材(支持部)
A1 流路断面積(第1流路の第1流路断面積)
A2 流路断面積(第1流路の第2流路断面積)
A3 流路断面積(第3流路の第3流路断面積)
A4 流路断面積(第2流路の第4流路断面積)
B1 分岐部
C1 切替弁装置の上流側給水路の中心軸線(第1流路中心軸線)
C2 切替弁装置のリム給水路の中心軸線(第2流路中心軸線)
f0 緩衝力、摩擦力
F1 付勢力
F2 付勢力
N1 加圧ポンプの回転数
N2 加圧ポンプの回転数
N3 加圧ポンプの回転数
N4 加圧ポンプの回転数
O1 切替弁体の弁体部の中心
P0 境界水圧(所定水圧)
P1 水圧(静圧)
P2 水圧(動圧)
P3 水圧(動圧)
P4 水圧(静圧)
Q1 流量[L/min](第1流量)
Q2 流量[L/min](第2流量)
Q3 流量[L/min]
Q4 流量[L/min]
Q5 流量[L/min]
Q6 流量[L/min](第3流量)
S0 受圧面
V1 内部スペース
W1 上流側給水路(第1流路)の洗浄水
W2 リム給水路(第2流路)の洗浄水
W3 ジェット給水路(第3流路)の洗浄水
WO 貯水タンクのオーバーフロー水位
Claims (6)
- 加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、
洗浄水を貯水する貯水タンクと、
ボウル部と、洗浄水を吐水するリム吐水口及びジェット吐水口と、排水トラップ部と、を備えた便器本体と、
上記貯水タンクから洗浄水を上記リム吐水口及び上記ジェット吐水口のそれぞれに供給可能にする給水路と、
この給水路に設けられて上記リム吐水口及び上記ジェット吐水口のそれぞれに洗浄水を供給する給水経路を切り替える切替部であって、まず、上記給水路内の洗浄水を上記リム吐水口から吐水する第1洗浄工程を実行させ、その後、上記給水路内の洗浄水を少なくとも上記ジェット吐水口から吐水する第2洗浄工程を実行させるように上記給水経路を切り替える上記切替部と、
上記貯水タンクから上記給水路に供給する洗浄水を加圧し、上記給水路の洗浄水の流量を調整可能にする加圧ポンプであって、上記第1洗浄工程時に圧送する洗浄水の第1流量よりも上記第2洗浄工程時に圧送する洗浄水の第2流量の方が大きくなるように調整可能である上記加圧ポンプと、を有し、
上記切替部は、上記加圧ポンプにより加圧された洗浄水の水圧を受けて流路軸方向と同一の作動軸方向に機械的に作動し且つ上記給水路から少なくとも上記ジェット吐水口への給水経路を開閉する切替弁体と、この切替弁体を閉弁させる作動軸方向に付勢する付勢部と、上記切替弁体の作動軸方向の動作を緩和させる緩衝部と、を備えていることを特徴とする水洗大便器。 - 上記緩衝部は、上記切替弁体の作動軸方向に対して垂直な方向の緩衝力を上記切替弁体に作用するものである請求項1記載の水洗大便器。
- 上記切替部は、さらに、上記切替弁体から上記作動軸方向に延びるように設けられた弁軸部と、上記付勢部及び上記緩衝部を支持する支持部であって、上記弁軸部を上記緩衝部を介して上記作動軸方向に摺動可能に支持する支持部と、を備え、
上記緩衝部は、上記弁軸部が上記作動軸方向に摺動する際の摺動抵抗を付与する請求項2記載の水洗大便器。 - 上記緩衝部は、上記弁軸部が挿入された状態で上記支持部により保持される環状シール部材を備えている請求項3記載の水洗大便器。
- 上記切替部は、まず、上記切替弁体を閉弁させた状態で、上記第1洗浄工程を実行させて、上記給水路内の洗浄水を上記リム吐水口から吐水し、その後、上記切替弁体を開弁させた状態で、上記第2洗浄工程を実行させて、上記リム吐水口からの洗浄水の吐水を継続させながら、上記ジェット吐水口からも洗浄水を吐水するように上記給水経路を切り替えるものであり、
上記切替部は、上記切替弁体よりも上流側に設けられて上記リム吐水口に洗浄水を供給するリム給水路と、上記切替弁体よりも下流側に設けられて上記ジェット吐水口に洗浄水を供給するジェット給水路と、を備えている請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。 - 上記切替部は、さらに、上記第2洗浄工程の後、上記切替弁を再び閉弁させた状態で、連続して上記リム吐水口から洗浄水を吐水する第3洗浄工程を実行するように給水経路を切り替えるものである請求項5記載の水洗大便器。
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