JP2020050840A - 多孔質セルロース粒子とその製造方法、および化粧料 - Google Patents
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(1)自然原料とみなされるために、意図的な化学修飾を行わないプロセスによって得られるI型の結晶形セルロースで形成されること。
(2)高い真球度や良好な流動性を備え、化粧料の感触特性を向上させること。
次に、多孔質セルロース粒子の製造方法について説明する。まず、I型の結晶性セルロースの分散液と界面活性剤と非水系溶媒を混合して、乳化させる(乳化工程)。これにより乳化液滴を含む乳化液が得られる。次に、乳化液を脱水処理する(脱水工程)。これにより、乳化液滴中の水が除去される。次に、固液分離して多孔質セルロース粒子を固形物として取り出す(固液分離工程)。この固形物を乾燥して解砕する(乾燥工程)ことにより、多孔質セルロース粒子の粉体が得られる。得られた多孔質セルロース粒子の真球度は0.85以上である。
まず、I型の結晶性セルロースの分散液を用意する。この分散液の固形分濃度を0.01〜5%の範囲に調整して、適切な粘度の分散液とする。固形分濃度が5%を超える場合は、通常、粘度が高くなり、乳化液滴の均一性が損なわれることがある。0.01%未満の固形分濃度では経済性が悪く、特に利点もない。分散液の固形分濃度は、特に0.1〜3.0%が好ましい。なお、分散液の溶媒は水が好ましい。
次に、乳化工程で得られた乳化液を脱水処理する。常圧または減圧下で加熱することにより、水を蒸発させる。これにより、乳化液滴から水が除去され、粒子径5〜500nm未満の多孔質セルロース粒子(I型結晶性セルロースの集合体)を含む非水系溶媒分散体が得られる。
固液分離工程では、従来公知の濾過、遠心分離等の方法で、脱水工程で得られた非水系溶媒分散体から固形分を分離する。これにより、多孔質セルロース粒子のケーキ状物質が得られる。
乾燥工程では、常圧または減圧下での加熱により、固液分離工程で得られたケーキ状物質に含まれる非水系溶媒を蒸発させる。これにより、真球度0.85以上、平均粒子径5〜500nm未満の多孔質セルロース粒子の乾燥粉体が得られる。
上述の多孔質セルロース粒子と各種化粧料成分を配合して化粧料を調製することができる。このような化粧料によれば、単一成分の無機粒子(シリカ粒子)と同様の転がり感、転がり感の持続性、及び均一な延び広がり性、プラスチックビーズと同様のソフト感としっとり感を同時に得ることができる。すなわち、化粧料の感触改良材に求められる代表的な感触特性を満たすことができる。
はじめに、I型の結晶性セルロースの分散液を準備する。本実施例では、I型セルロース(旭化成社製セオラスPH−101)50gを純水4950gに懸濁した。この懸濁液をマイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス社製M−7250−30)に200回通過させて、固形分濃度1%の分散液を調製した。
レーザー回折法を用いて、各粒子の粒度分布を測定した。この粒度分布からメジアン値を求め、平均粒子径とした。このようにして、多孔質セルロース粒子の平均粒子径d1、I型の結晶性セルロースの平均粒子径d3を求めた。ここでは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950v2(株式会社堀場製作所製)を用いて粒度分布を測定した。但し、セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタル等に代表される繊維状のI型結晶性セルロースの平均粒子径d3については、「平均粒子径=6000÷(真密度×比表面積)」の式を用いて等価球換算の平均粒子径を算出した。
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-950v2)で、分散条件を「超音波60分間」に設定し、分散させた。分散後の多孔質セルロース粒子の粒度分布を測定した。この粒度分布のメジアン値を超音波分散後の平均粒子径d2とした。これから超音波分散前後の平均粒子径の比(d2/d1)を求めた。
透過型電子顕微鏡(日立製作所製、H−8000)により、2000倍から25万倍の倍率で撮影し、写真投影図を得る。この写真投影図から、任意の50個の粒子を選び、それぞれの最大径DLと、これに直交する短径DSを測定し、比(DS/DL)を求めた。それらの平均値を真球度とした。
多孔質セルロース粒子の粉体を磁性ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、105℃の温度で2時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却した。次に、サンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、比表面積(m2/g)をBET法にて測定した。多孔質セルロース粒子に配合したI型結晶性セルロースの密度(1.5g/cm3)でこれを換算し、単位体積当たりの比表面積を求めた。
多孔質セルロース粒子の粉体10gをルツボに取り、105℃で1時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却した。次いで、洗浄したセルに0.15g試料を取り、Belsorp miniII(日本ベル社製)を使用して真空脱気しながら試料に窒素ガスを吸着させ、その後、脱着させる。得られた吸着等温線から、BJH法により平均細孔径を算出する。また、「細孔容積(ml/g)=(0.001567×(V−Vc)/W)」という式から細孔容積を算出した。ここで、Vは圧力735mmHgにおける標準状態の吸着量(ml)、Vcは圧力735mmHgにおけるセルブランクの容量(ml)、Wは試料の質量(g)を表す。また、窒素ガスと液体窒素の密度の比を0.001567とした。
実施例1と同様に、固形分濃度1%のI型の結晶性セルロースの分散液を調製した。この分散液200gとヘプタン3346gと界面活性剤(AO−10V)25gとを混合した。この混合溶液を100MPaの圧力でマイクロフルイダイザーに通過させることにより、乳化させた。このようにして得られた乳化液を−5℃の恒温槽中で72時間静置し、乳化液滴中の水を凍結させた。その後、常温まで昇温し、解凍した。さらに、実施例1と同様に遠心分離処理を行い、ヘプタンで繰り返し洗浄し、界面活性剤を除去した。得られたケーキ状物質から、実施例1と同様に多孔質セルロース粒子の粉体を得て、この粉体の物性を測定した。
実施例2と同様に乳化液を調製した。この乳化液を−25℃の冷凍庫中で72時間静置した。これ以降は実施例2と同様にして、多孔質セルロース粒子を調製し、物性を測定した。
実施例1のセオラスPH−101の代わりにBiNFi−s WMa−10002(スギノマシン社製)をI型セルロースとして用いて、固形分濃度1%の分散液を調製した。これ以降は実施例1と同様にして多孔質セルロース粒子を調製し、物性を測定した。
本実施例では、乳化時に50MPaの圧力で混合溶液をマイクロフルイダイザーに通過させた。これ以外は実施例1と同様にして多孔質セルロース粒子を調製し、物性を測定した。
実施例1のセオラスPH−101の代わりに第一工業製薬社製I−2SPをI型セルロースとして用いて、固形分濃度1%の分散液を調製した。また、乳化時のマイクロフルイダイザーへの通液回数を5回に変更した。これ以外は実施例1と同様にして多孔質セルロース粒子を調製し、物性を測定した。
乳化液の脱水条件を40℃で4時間に変更した以外は実施例4と同様にして多孔質セルロース粒子を調製し、物性を測定した。
本比較例では、乳化法を用いずに噴霧乾燥法により結晶性セルロースの集合粒子を作製した。はじめに、旭化成社製セオラスPH−101 20g、尿素75g、水酸化リチウム23g、蒸留水5000gを混合した。この混合液を−25℃の恒温槽内で2時間冷却した。これを常温に昇温し、解凍することによりセルロースが溶解した溶液が得られる。この溶液を噴霧液として、スプレードライヤー(NIRO社製、NIRO−ATMIZER)により噴霧乾燥した。すなわち、入口温度150℃、出口温度が50〜55℃に設定した乾燥気流中に、2流体ノズルの一方から噴霧液を2L/hrの流量で、他方のノズルから0.15MPaの圧力で気体を供給して噴霧乾燥した。これにより得られた乾燥粉体はII型の結晶形を持つセルロースである。これを純水に懸濁し、10000Gで10分間遠心分離処理を行って、固液分離した。得られた沈降物を純水に分散させ、再度遠心分離処理を行った。この操作を5回繰り返し、ケーキ状物質を得た。このケーキ状物質を120℃で16時間乾燥させた後、250mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけ、多孔質セルロース粒子の粉体が得られた。この粉体の物性を実施例1と同様に測定した。
次に、各実施例と比較例で得られた粉体の感触特性を評価した。各粉体について、20名の専門パネラーによる官能テストを行い、さらさら感、しっとり感、転がり感、均一な延び広がり性、肌への付着性、転がり感の持続性、およびソフト感の7つの評価項目に関して聞き取り調査を行った。評価点基準(a)に基づく各人の評価点を合計し、評価基準(b)に基づき感触特性を評価した。結果を表5に示す。その結果、各実施例の粉体は、化粧料の感触改良材として極めて優れているが、比較例の粉体は、感触改良材として適していないことが分かった。
評価点基準(a)
5点:非常に優れている
4点:優れている
3点:普通
2点:劣る
1点:非常に劣る
評価基準(b)
◎:合計点が80点以上
○:合計点が60点以上80点未満
△:合計点が40点以上60点未満
▲:合計点が20点以上40点未満
×:合計点が20点未満
多孔質セルロース粒子の粉体を用いて表6に示す配合比率(重量%)となるようにパウダーファンデーションを作製した。すなわち、各実施例の粉体を成分(1)として、成分(2)〜(9)とともにミキサーに入れて撹拌し、均一に混合した。次に、化粧料成分(10)〜(12)をこのミキサーに入れて撹拌し、さらに均一に混合した。得られたケーキ状物質を解砕処理した後、その中から約12gを取り出し、46mm×54mm×4mmの角金皿に入れてプレス成型した。この様にして得られたパウダーファンデーションについて、20名の専門パネラーによる官能テストを行った。肌への塗布中の均一な延び、しっとり感、滑らかさ、および、肌に塗布後の化粧膜の均一性、しっとり感、やわらかさの6つの評価項目に関して聞き取り調査を行った。前述の評価点基準(a)に基づく各人の評価点を合計し、前述の評価基準(b)に基づきファンデーションの使用感を評価した。結果を表7に示す。実施例による化粧料A〜Fは、塗布中でも塗布後でも、使用感が優れていることが分かった。しかし、比較例の化粧料a、bは、使用感がよくないことが分かった。
Claims (9)
- 結晶性セルロースが集合して形成された多孔質セルロース粒子であって、
該結晶性セルロースは、グルコース分子を構成単位としたI型の結晶形であり、
該多孔質セルロース粒子は、平均粒子径(d1)が5〜500nm未満、比表面積が25〜1000m2/g、真球度が0.85以上であることを特徴とする多孔質セルロース粒子。 - 細孔容積(PV)が、0.2〜5.0ml/gであることを特徴とする請求項1に記載の多孔質セルロース粒子。
- 平均細孔径(PD)が、2〜100nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質セルロース粒子。
- 前記多孔質セルロース粒子の水分散液を、超音波分散機を用いて60分間分散させたとき、分散後の平均粒子径d2と、分散前の平均粒子径d1の比(d2/d1)が、0.95〜1.05の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質セルロース粒子。
- 前記結晶性セルロースの平均粒子径(d3)が1〜200nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質セルロース粒子。
- 前記多孔質セルロース粒子は、外殻の内部に空洞を有する中空粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔質セルロース粒子。
- I型の結晶形を持つ結晶性セルロースの分散液と界面活性剤と非水系溶媒を混合して、乳化液滴を含む乳化液を調製する乳化工程と、
前記乳化液滴から水を除去する脱水工程と、
前記脱水工程で得られた非水系溶媒分散体を固液分離して多孔質セルロース粒子を固形物として得る工程と、を備えることを特徴とする多孔質セルロース粒子の製造方法。 - 前記乳化工程で得られた乳化液を−50〜0℃の範囲で冷却し、前記乳化液滴中の水を凍結させた凍結乳化液を作製し、前記凍結乳化液を常温に戻してから前記脱水工程を行うことを特徴とする請求項7に記載の多孔質セルロース粒子の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の多孔質セルロース粒子が配合された化粧料。
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