以下、本発明の詳細を説明する。なお、本発明において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。「(メタ)アリル」、「(メタ)アクリロイル」等の表記も同様である。
本発明における「プレポリマー」とは、重合性単量体の重合を適当なところで止めた中間生成物であり、未反応の重合性官能基を有している。
プレポリマーの有する未反応の重合性官能基には特に制限がなく、公知の重合性官能基を有していればよい。かかる公知の重合性官能基としては、例えば、炭素−炭素二重結合、ビニル基、ビニロキシ基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、マレオイル基、スチリル基、シンナモイル基等が挙げられる。重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基が好ましい。プレポリマーの有する未反応の重合性官能基により、さらなる重合(例えば、プレポリマーを重合性単量体と併用する場合に当該重合性単量体との重合など)が可能となる。
プレポリマーの有する未反応の重合性官能基の数について、プレポリマー1分子あたり未反応の重合性官能基を平均して、1つ以上有していることが好ましく、2つ以上有していることがより好ましく、5つ以上有していることがさらに好ましく、10個以上有していることが特に好ましく、15個以上、20個以上、さらには25個以上有していてもよく、また、1,000個以下有していることが好ましく、500個以下有していることがより好ましく、100個以下有していることがさらに好ましく、50個以下有していることが特に好ましい。プレポリマーの有する未反応の重合性官能基の数の測定方法は特に制限がないが、例えば、NMRによる重合性官能基量の定量と、GPC測定によるプレポリマーの平均分子量の測定を組み合わせることによって評価することが可能である。具体的には、例えば、NMR測定によってプレポリマーの有する未反応の重合性官能基の濃度(mol/g)を求め、これに後述するプレポリマーの重量平均分子量を乗じることにより上記未反応の重合性官能基の数を求めることができ、より具体的には実施例に記載した方法により上記未反応の重合性官能基の数を求めることができる。
プレポリマーの分子量に特に制限はないが、本発明の効果がより顕著に奏されることなどから、プレポリマーの平均分子量(例えば重量平均分子量等)は、1,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましく、また、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましく、300,000以下であることがさらに好ましく、100,000以下であることが特に好ましく、80,000以下、さらには60,000以下であってもよい。プレポリマー(C)の平均分子量の測定方法は特に制限がないが、GPC測定などにより測定することができ、より具体的には実施例において後述する方法により測定することができる。
本発明のプレポリマーは、トリエチレングリコールジメタクリレートに30質量%溶解させたときの25℃における粘度が0.1Pa・s以下である。該粘度がこの範囲であることにより、プレポリマーを歯科用組成物に配合した際、無機フィラーの含有量を増加することができ、硬化物の機械的強度に優れる。硬化物の機械的強度がより優れ、所望の重合収縮応力が得られ、歯科用組成物のペーストの操作性により優れる点から、前記粘度は、0.09Pa・s以下がより好ましく、0.08Pa・s以下がさらに好ましい。なお、該粘度の測定方法は、後述する実施例のようにE型粘度計によって測定することができる。
本発明のプレポリマーの屈折率は1.50〜1.58であり、1.51〜1.57がより好ましい。屈折率がこの範囲であることで、一般的に使用されるX線造影性を有する無機フィラーの屈折率と同等となり、このため該プレポリマーと該無機フィラーとを使用した歯科用組成物は透明性に優れ、高い硬化深度を有する。また、透明性に優れることから光照射した場合に短い時間でも重合反応が十分に進行し、硬化物の機械的強度により優れる。また、屈折率の測定方法は、後記する実施例に記載の通りである。
本発明のプレポリマーは芳香族部位を有することが好ましい。本発明における芳香族部位とは芳香族炭化水素基又は芳香族ヘテロ環基を含む部位であり、前記芳香族炭化水素基又は芳香族ヘテロ環基は一置換体でも多置換体でもよい。プレポリマーは芳香族部位を有することによって、屈折率が上がりフィラーと合い、透明性に優れ、硬化した際の強度が向上する。また、芳香族部位を有することによって、硬化後のポリマーネットワークが剛直なものとなることも強度向上の一因となる。
芳香族炭化水素基としては、炭素原子数が6〜30のものが好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレン基等が挙げられ、それらの一置換体でも多置換体でもよい。また1種を単独で用いても2種類以上の基が組み合わさっていてもよい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレン基が好ましい。
芳香族ヘテロ環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。そのヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等が挙げられ、それらの一置換体でも多置換体でもよい。また1種を単独で用いても2種類以上の基が組み合わさっていてもよい。芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、チオフェニル基、トリアジニル基、キノリル基が特に好ましい。
本発明のプレポリマーの水酸基価は200mgKOH/g以下であることが好ましく、180mgKOH/g以下がより好ましく、150mgKOH/g以下がさらに好ましい。水酸基価がこの範囲であることにより、3G等の重合性単量体との水素結合による相互作用を低減し、増粘を抑制することができる。その結果、無機フィラーの含有量を増やすことができ、より高い機械的強度を有する硬化物を得ることができる。また、プレポリマーの水酸基価が前記範囲であることにより、歯科用組成物に含まれる無機フィラー表面に残存しているシラノール基との相互作用を低減し、歯科用組成物のペーストについて稠度の低下を抑制し、優れた操作性が得られると考えられる。さらに、プレポリマーの水酸基価が前記範囲であることにより、所望の重合収縮応力が得られ、かつ耐水性にも優れる。
本発明のプレポリマーはウレタン結合を有さないことが好ましい。これにより、3G等の重合性単量体との水素結合による相互作用を低減し増粘を抑制することができ、その結果、無機フィラーの含有量を増やすことができ、より高い機械的強度を有する硬化物を得ることができる。また、プレポリマーはウレタン結合を有さないことで、前記プレポリマーを含む歯科用組成物のペーストについて、優れた操作性が得られる。前記ウレタン結合としては、より好ましくは一級アミド基、二級アミド基、又はウレア基を含まないプレポリマーが挙げられる。ウレタン結合を有さないプレポリマーとしては、一級アミド基、二級アミド基、及びウレア基を含まないプレポリマーが特に好ましい。
本発明のプレポリマーは単官能(メタ)アクリレート(A)に由来する構造及び多官能(メタ)アクリレート(B)に由来する構造を有することが好ましい。また、歯科用組成物のペーストについて稠度の低下を抑制し、優れた操作性が得られ、かつ重合収縮応力を低減できる点から、前記単官能(メタ)アクリレート(A)又は前記多官能(メタ)アクリレート(B)が芳香族部位を有し、前記単官能(メタ)アクリレート(A)及び前記多官能(メタ)アクリレート(B)のいずれも水酸基及びウレタン結合を有さないことがより好ましい。単官能(メタ)アクリレート(A)としては、芳香族部位を有し、水酸基及びウレタン結合を有さない単官能(メタ)アクリレート(A−1)、芳香族部位、水酸基、ウレタン結合のいずれも有さない単官能(メタ)アクリレート(A−2)、芳香族部位、及びウレタン結合を有さず、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート(A−3)が挙げられる。本発明のプレポリマーにおいて、単官能(メタ)アクリレート(A)は、芳香族部位を有し、水酸基及びウレタン結合を有さない単官能(メタ)アクリレート(A−1)を含むものが好ましい。
前記芳香族部位を有し、水酸基及びウレタン結合を有さない単官能(メタ)アクリレート(A−1)としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシ化−o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール−(メタ)アクリル酸−安息香酸エステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートベンジルクロライド4級塩等が挙げられる。中でも、フェノキシエチレングリコールメタクリレート、エトキシ化−o−フェニルフェノールアクリレートが好ましい。
前記芳香族部位、水酸基、ウレタン結合のいずれも有さない単官能(メタ)アクリレート(A−2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどのフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコール(メタ)アクリレート類;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート類;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルモルホリン、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート等が挙げられる。中でも、イソボルニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートが好ましい。
芳香族部位、及びウレタン結合を有さず、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート(A−3)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記多官能(メタ)アクリレート(B)としては、二官能性(メタ)アクリレートであっても、三官能性以上の(メタ)アクリレートであってもよい。多官能(メタ)アクリレート(B)としては、芳香族部位を有し、水酸基及びウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート(B−1)、芳香族部位、水酸基、ウレタン結合のいずれも有さない多官能(メタ)アクリレート(B−2)、芳香族部位及び水酸基を有さず、ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート(B−3)、芳香族部位及び水酸基を有し、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート(B−4)、芳香族部位及びウレタン結合を有さず、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(B−5)が挙げられる。本発明のプレポリマーにおいて、多官能(メタ)アクリレート(B)は、芳香族部位を有し、水酸基及びウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート(B−1)を含むものが好ましい。
前記芳香族部位を有し、水酸基及びウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート(B−1)としては、例えば、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数:1〜20)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ジフェニルビス[3−(メタクリロイルオキシ)プロピル]シラン、メチルフェニルビス[3−(メタクリロイルオキシ)プロピル]シランなどが挙げられる。中でも2,2−ビス〔4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン(エトキシ基の平均付加モル数:2.6)、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンが好ましい。
前記芳香族部位、水酸基、ウレタン結合のいずれも有さない多官能(メタ)アクリレート(B−2)としては、例えば、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコールの平均モル数4〜30)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレングリコールの平均モル数2〜20)、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレングリコールの平均モル数2〜20)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、ジシクロヘキシルビス[3−(メタクリロイルオキシ)プロピル]シランなどの二官能性(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキサヘプタン等の三官能性以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。中でも、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
芳香族部位及び水酸基を有さず、ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート(B−3)としては、例えば、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(UDMA)等が挙げられる。芳香族部位及び水酸基を有し、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート(B−4)としては、例えば、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(Bis−GMA)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、が挙げられる。芳香族部位及びウレタン結合を有さず、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(B−5)としては、例えば、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記単官能(メタ)アクリレート(A)及び前記多官能(メタ)アクリレート(B)は、いずれも、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、単官能(メタ)アクリレート(A)は、芳香族部位を有し、水酸基及びウレタン結合を有さない単官能(メタ)アクリレート(A−1)及び芳香族部位、水酸基、ウレタン結合のいずれも有さない単官能(メタ)アクリレート(A−2)を含むものであってもよい。多官能(メタ)アクリレート(B)は、水酸基及びウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート(B−1)及び芳香族部位、水酸基、ウレタン結合のいずれも有さない多官能(メタ)アクリレート(B−2)を含むものであってもよい。前記多官能(メタ)アクリレート(B)は、水素結合による相互作用を低減し増粘を抑制する点から、芳香族部位及び水酸基を有さず、ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート(B−3)、又は芳香族部位及び水酸基を有し、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート(B−4)を含まないものが好ましく;芳香族部位及び水酸基を有さず、ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート(B−3)、芳香族部位及び水酸基を有し、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート(B−4)及び、芳香族部位及びウレタン結合を有さず、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(B−5)を含まないものがより好ましい。
本発明のプレポリマーにおいて、単官能(メタ)アクリレート(A)に由来する構造及び多官能(メタ)アクリレート(B)に由来する構造のモル比(前者/後者)は30/70以上であることが好ましく、40/60以上であることがより好ましく、55/45以上であることがさらに好ましく、また、70/30以下であることが好ましい。単官能(メタ)アクリレート(A)のモル比が30より小さいと、得られるプレポリマーの分子量が大きくなり、溶液の増粘が顕著になるおそれがあり、十分な機械的強度が得られないおそれがあり、重合収縮応力を低減できないおそれがある。あるいは製造中にゲル化を引き起こし、製造することができないおそれがある。単官能(メタ)アクリレート(A)のモル比が70より大きいと、得られるプレポリマーの未反応(メタ)アクリロイル基が減少するおそれがある。すなわち、該プレポリマーを歯科用組成物に配合した際、硬化物の強度を低下させてしまうおそれがある。
本発明のプレポリマーは、分子量が80以上である連鎖移動剤(C)に由来する構造を有することが好ましい。前記連鎖移動剤(C)としては、例えば、チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、1−ブタンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、3−デカンチオール、1−ドデカンチオール、1−オクタデカンチオール、シクロヘキサンチオール、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2−メルカプトプロピオン酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メルカプト−2−ブタノール等のチオール系連鎖移動剤;2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等のα−メチルスチレンダイマー系連鎖移動剤;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等)の低級酸化物及びその塩等の親水性連鎖移動剤が挙げられる。中でも、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、3−メルカプト−2−ブタノール、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンが好ましい。なお、前記連鎖移動剤(C)として、2−メルカプトエタノールのように毒性を有する化合物を用いないことが好ましい。
本発明のプレポリマーの製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の製造方法が好ましく用いられる。すなわち、前記単官能(メタ)アクリレート(A)及び前記多官能(メタ)アクリレート(B)等の重合性単量体、並びに、前記連鎖移動剤(C)及び重合開始剤(D)を有機溶媒(E)に溶解し、重合することで製造できる。
本発明のプレポリマーの製造に使用する前記単官能(メタ)アクリレート(A)と前記多官能(メタ)アクリレート(B)のモル比(前者/後者)は、硬化物の機械的強度に優れ、十分に重合収縮応力の低減できることから、30/70以上であることが好ましく、40/60以上であることがより好ましく、55/45以上であることがさらに好ましく、また、70/30以下であることが好ましい。
本発明のプレポリマーの製造に使用する前記連鎖移動剤(C)の使用量は、前記単官能(メタ)アクリレート(A)と前記多官能(メタ)アクリレート(B)の合計モル数100molに対して、5〜120molであることが好ましい。5mol以下であると、得られるプレポリマーの分子量が大きくなりすぎ、溶液の増粘が顕著になるおそれがある。あるいは製造中にゲル化を引き起こし、製造することができないおそれがある。120mol以上であると、得られるプレポリマーの分子量が小さくなりすぎ、組成物に配合した際の収縮応力の抑制の効果が低下するおそれがある。より好ましい使用量は25〜100molである。
本発明のプレポリマーの製造に使用する前記重合開始剤(D)としては、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。特に、光重合開始剤及び化学重合開始剤が好ましく用いられる。重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
前記光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、ケタール類、α−ジケトン類、クマリン化合物などが挙げられる。
(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などが挙げられる。ビスアシルホスフィンオキシド類としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などが挙げられる。
これら(ビス)アシルホスフィンオキシド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドナトリウム塩が特に好ましい。
ケタール類としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどが挙げられる。
α−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナントレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノンなどが挙げられる。この中でも、可視光域に極大吸収波長を有している観点から、カンファーキノンが特に好ましい。
クマリン化合物としては、例えば、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−チエノイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイルクマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3,5−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3−ベンゾイル−6−ブロモクマリン、3,3’−カルボニルビスクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3−カルボキシクマリン、3−カルボキシ−7−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−6−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−8−メトキシクマリン、3−アセチルベンゾ[f]クマリン、3−ベンゾイル−6−ニトロクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノ)クマリン、7−メトキシ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−(4−ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3−(4−エトキシシンナモイル)−7−メトキシクマリン、3−(4−ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3−(4−ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3−[(3−ジメチルベンゾチアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3−[(1−メチルナフト[1,2−d]チアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3,3’−カルボニルビス(6−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジメチルアミノクマリン)、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−アセチル−7−(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、10−(2−ベンゾチアゾイル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オンなどの特開平9−3109号公報、特開平10−245525号公報に記載されている化合物が挙げられる。
上述のクマリン化合物の中でも、特に、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)及び3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)が好適である。
前記光重合開始剤のうち、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α−ジケトン類、及びクマリン化合物は可視及び近紫外領域での光開始能に優れるため、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプなどの光源を用いることで重合を開始することができ、本発明のプレポリマーが得られる。
化学重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。上記の化学重合開始剤に使用される有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用できる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。
ケトンペルオキシドとしては、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドなどが挙げられる。
ヒドロペルオキシドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどが挙げられる。
ジアシルペルオキシドとしては、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどが挙げられる。
ジアルキルペルオキシドとしては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンなどが挙げられる。
ペルオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステルなどが挙げられる。
ペルオキシエステルとしては、α−クミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルペルオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシマレイックアシッドなどが挙げられる。
ペルオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジアリルペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。
前記有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルペルオキシドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルペルオキシドが特に好ましく用いられる。
前記重合開始剤として、歯科用途に好んで用いられている重合開始剤ではないが、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等のアゾニトリル系開始剤も問題なく用いることができる。
本発明のプレポリマーの製造に使用する重合開始剤(D)の使用量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、得られるプレポリマーの硬化性などの観点からは、使用する単官能(メタ)アクリレート(A)と多官能(メタ)アクリレート(B)の合計100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。
本発明のプレポリマーの製造に使用する有機溶媒(E)は、前記単官能(メタ)アクリレート(A)、前記多官能(メタ)アクリレート(B)、前記連鎖移動剤(C)及び前記重合開始剤(D)に対して、これらと反応することなく容易に溶解するものであれば特に制限はない。有機溶剤の好ましい例としては、脂肪族炭化水素(例:ヘキサン、ヘプタン等)、芳香族炭化水素(例:トルエン、キシレン等)、及び環状エーテル(例:テトラヒドロフラン、ジオキサン等)が挙げられる。なかでも、溶解性や除去の容易性を考慮するとトルエンが最も好適に用いられる。
本発明のプレポリマーの製造に使用する有機溶媒(E)の使用量は、単官能(メタ)アクリレート(A)と多官能(メタ)アクリレート(B)の合計質量の2〜10倍量を用いるのが好ましく、3〜8倍量がより好ましく、4〜6倍量がさらに好ましい。有機溶媒(E)の使用量が単官能(メタ)アクリレート(A)と多官能(メタ)アクリレート(B)の合計量の2倍より少ない場合、重合中にゲル化が発生し、本発明のプレポリマーを製造できないことがある。有機溶媒(E)の使用量が単官能(メタ)アクリレート(A)と多官能(メタ)アクリレート(B)の合計量の10倍より多い場合、得られるプレポリマーが有する未反応の重合性官能基量が減少し、歯科用組成物に配合した際に、硬化物の強度低下を招いてしまうおそれがある。
本発明のプレポリマーの製造方法において、上記の単官能(メタ)アクリレート(A)、多官能(メタ)アクリレート(B)、連鎖移動剤(C)、前記重合開始剤(D)及び有機溶媒(E)以外に、重合促進剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、顔料等の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもよい。
重合促進剤としては、アミン類、スルフィン酸及びその塩、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、銅化合物、錫化合物、バナジウム化合物、ハロゲン化合物、アルデヒド類、チオール化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ尿素化合物などが挙げられる。
アミン類は、脂肪族アミン及び芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミンなどの第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミンなどの第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの第3級脂肪族アミンなどが挙げられる。中でも、歯科用組成物の硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、その中でもN−メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましく用いられる。
また、芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸2−ブトキシエチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸ブチルなどが挙げられる。中でも、歯科用組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸2−ブトキシエチル及び4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
スルフィン酸及びその塩としては、例えば、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウムなどが挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが特に好ましい。
バルビツール酸誘導体としては、バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジフェニルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−イソプロピルバルビツール酸、5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−n−ブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロペンチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−1−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、5−メチルバルビツール酸、5−プロピルバルビツール酸、1,5−ジエチルバルビツール酸、1−エチル−5−メチルバルビツール酸、1−エチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジエチル−5−ブチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−メチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−オクチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−ヘキシルバルビツール酸、5−ブチル−1−シクロヘキシルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸及びチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(特にアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好ましい)が挙げられ、これらバルビツール酸誘導体の塩としては、例えば、5−ブチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム及び1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸ナトリウムなどが挙げられる。
特に好適なバルビツール酸誘導体としては、5−ブチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、及びこれらバルビツール酸類のナトリウム塩が挙げられる。
トリアジン化合物としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,4−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(o−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−ブトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−エチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ジアリルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどが挙げられる。
上記で例示したトリアジン化合物の中で特に好ましいものは、重合活性の点で2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンであり、また保存安定性の点で、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。上記トリアジン化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸銅(II)、オレイン酸銅、塩化銅(II)、臭化銅(II)などが好適に用いられる。
錫化合物としては、例えば、ジ−n−ブチル錫ジマレエート、ジ−n−オクチル錫ジマレエート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレートなどが挙げられる。特に好適なスズ化合物は、ジ−n−オクチル錫ジラウレート及びジ−n−ブチル錫ジラウレートである。
バナジウム化合物は、好ましくはIV価及び/又はV価のバナジウム化合物である。IV価及び/又はV価のバナジウム化合物としては、例えば、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)などの特開2003−96122号公報に記載されている化合物が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、例えば、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイドなどが好適に用いられる。
アルデヒド類としては、例えば、テレフタルアルデヒドやベンズアルデヒド誘導体などが挙げられる。ベンズアルデヒド誘導体としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−メチルオキシベンズアルデヒド、p−エチルオキシベンズアルデヒド、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドなどが挙げられる。中でも、硬化性の観点から、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドが好ましく用いられる。
チオール化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、チオ安息香酸などが挙げられる。
亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムなどが挙げられる。
チオ尿素化合物としては、1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジ−n−プロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ−n−プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素などが挙げられる。
本発明のプレポリマーの製造に使用する重合促進剤の使用量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、得られるプレポリマーの硬化性などの観点からは、使用する単官能(メタ)アクリレート(A)と多官能(メタ)アクリレート(B)の合計量100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、ハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のプレポリマーの製造において、真空乾燥、加熱脱揮、凍結乾燥、再沈殿等、公知の方法によりプレポリマーを回収することができる。またこうして回収したプレポリマーをさらに洗浄、再沈殿等の公知の方法によって精製してもよい。
次に、本発明のプレポリマーの使用態様について説明する。本発明のプレポリマーは歯科用途に好適に用いることができ、特に歯科用組成物の成分として好適に使用でき、本発明のプレポリマーを含む歯科用組成物は、歯科材料、具体的には、歯科用コンポジットレジン(齲蝕窩洞充填用コンポジットレジン、支台築造用コンポジットレジン、歯冠用コンポジットレジン)、義歯床用レジン、義歯床用裏装材、印象材、合着用材料(レジンセメント、レジン添加型グラスアイオノマーセメント)、歯科用接着材(歯列矯正用接着材、窩洞塗布用接着材)、歯牙裂溝封鎖材、CAD/CAM用レジンブロック、テンポラリークラウン、人工歯材料等に用いることができる。
本発明のプレポリマーは、重合性単量体、重合開始剤及びフィラーと共に歯科用組成物に用いることが最も好ましい使用形態の一つであり、かかる歯科用組成物は、歯科用コンポジットレジンとして好適に用いられる。
本発明の歯科用組成物におけるプレポリマーの含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、得られる歯科用組成物の重合収縮応力や操作性などの観点からは、歯科用組成物における重合性単量体の全量100質量部において、5〜100質量部が好ましい。プレポリマーの含有量が5質量部未満の場合、重合収縮応力の低減効果が十分に得られないおそれがある。プレポリマーの含有量は、重合性官能基密度をより低減でき、より重合収縮応力の低減効果に優れる点から、歯科用組成物における重合性単量体の全量100質量部において7質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。一方、プレポリマーの含有量が歯科用組成物における重合性単量体の全量100質量部に対して100質量部を超える場合、歯科用組成物のペーストが増粘し、操作性が悪化するおそれがある。プレポリマーの含有量は、操作性の観点から、80質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。また、本発明の歯科用組成物におけるプレポリマーの含有量は、歯科用組成物全体に対して、0.2〜20質量%が好ましく、重合収縮応力及び操作性等の観点から、0.3〜18質量%がより好ましく、0.5〜16質量%がさらに好ましい。
本発明の歯科用組成物における重合性単量体としては、具体的には例えば、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましい。
前記の(メタ)アクリル酸エステルとしては、プレポリマーの製造に使用することのできる単官能(メタ)アクリレート(A)及び多官能(メタ)アクリレート(B)として例示した前記重合性単量体から選択して使用できる。本発明の歯科用組成物における重合性単量体としては、芳香族部位を有し、水酸基及びウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート(B−1)、芳香族部位、水酸基、ウレタン結合のいずれも有さない多官能(メタ)アクリレート(B−2)、芳香族部位及び水酸基を有さず、ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート(B−3)、芳香族部位及び水酸基を有し、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレート(B−4)、芳香族部位及びウレタン結合を有さず、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(B−5)をいずれも使用できる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記の(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−メチル(メタ)アクリルアミドなどが使用できる。
前記の重合性単量体は、いずれも、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、歯質、金属、セラミックス等の被着体に対する接着性を向上させる場合、本発明の歯科用組成物には、これらの被着体に対する接着性を付与する機能性重合性単量体を含有させることが好ましい場合がある。
前記機能性重合性単量体としては、歯質や卑金属に対して優れた接着性を呈する点から、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェートなどのリン酸基を有する重合性単量体;及び11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸などのカルボン酸基を有する重合性単量体が好ましい。
また、前記機能性重合性単量体としては、貴金属に対して優れた接着性を呈する点から、例えば、10−メルカプトデシル(メタ)アクリレート、6−(4−ビニルベンジル−n−プロピル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオン、特開平10−1473号公報に記載のチオウラシル誘導体や特開平11−92461号公報に記載の硫黄元素を有する化合物が好ましい。
さらに、前記機能性重合性単量体としては、セラミックス、陶材、別の歯科用組成物への接着に効果的である点から、例えば、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が好ましい。
本発明の歯科用組成物における前記重合開始剤としては、プレポリマーの製造に使用することのできる重合開始剤(D)として例示した前記重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。特に、光重合開始剤及び化学重合開始剤が好ましく用いられる。重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
本発明の歯科用組成物における重合開始剤の含有量は特に限定されず、得られる歯科用組成物の硬化性などの観点からは、歯科用組成物における重合性単量体成分の全量100質量部に対して、重合開始剤が0.001〜30質量部が好ましい。重合開始剤の含有量が前記100質量部に対して0.001質量部未満の場合、重合が十分に進行せず、接着力の低下を招くおそれがある。重合開始剤の含有量は、より硬化性に優れる点から、前記100質量部に対して0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましい。一方、重合開始剤の含有量が前記100質量部に対して30質量部を超える場合、歯科用組成物からの析出を招くおそれがある。重合開始剤の含有量は、歯科用組成物からの析出を招くおそれがない点から、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が最も好ましい。
本発明のプレポリマーを含む歯科用組成物を用いて歯科用コンポジットレジンを作製する場合、前記歯科用組成物はさらにフィラーを含むことが好ましい。かかるフィラーとしては、無機フィラー、有機フィラー及び有機無機複合フィラーに大別される。
有機フィラーの素材としては、例えばポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。有機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる組成物のハンドリング性及び機械的強度などの観点から、前記有機フィラーの平均粒子径は、0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
無機フィラーとしては、各種ガラス類〔シリカを主成分とし、必要に応じ、重金属、ホウ素、アルミニウムなどの酸化物を含有する。例えば、溶融シリカ、石英、ソーダライムシリカガラス、Eガラス、Cガラス、ボロシリケートガラス(パイレックス(登録商標)ガラス)などの一般的な組成のガラス粉末;バリウムガラス(GM27884、8235、ショット社製、E−2000、E−3000、ESSTECH社製)、ストロンチウム・ボロシリケートガラス(E−4000、ESSTECH社製)、ランタンガラスセラミックス(GM31684、ショット社製)、フルオロアルミノシリケートガラス(GM35429、G018−091、G018−117、ショット社製)などの歯科用ガラス粉末〕、各種セラミック類、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニアなどの複合酸化物、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイトなど)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、フッ化イットリウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられ、これらは、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、シリカを主成分として含むもの(シリカを5質量%以上含むもの、好ましくは10質量%以上含むもの)が好適である。
無機フィラーの形状としては特に制限されることなく、不定形もしくは球形の粒子の粉末として用いることができる。不定形の無機フィラーを用いると、機械的強度及び耐磨耗性に特に優れ、球形の無機フィラーを用いると、研磨滑沢性及び滑沢耐久性に特に優れる。無機フィラーの形状は歯科用組成物の目的に応じて適宜選択すればよい。
無機フィラーの平均粒子径は、0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。なお本明細書において、フィラーの平均粒子径の測定方法は、フィラーをアルコール及び水から選ばれる少なくとも1種からなる分散媒に分散させ、例えば株式会社島津製作所製 SALD−2300などのレーザ回折式粒子径分布測定装置で測定した際の体積粒子径分布の中央値とする。フィラーの平均粒子径が小さく、前記レーザ回折式粒子径分布測定装置における測定下限(例えば、0.10μm)を下回る場合は、電子顕微鏡、例えば株式会社日立製作所製SU3500やSU9000を用い電子顕微鏡写真を撮影し、無作為に選択した20個の粒子の粒子径の平均値とする。なお、粒子が非球状である場合には、粒子径は、粒子の最長と最短の長さの算術平均をもって粒子径とする。
また本発明において、無機フィラーは、無機フィラーが凝集して形成された凝集粒子の形態であってもよい。通常、市販の無機フィラーは凝集体として存在しているが、水もしくは5質量%以下のヘキサメタリン酸ナトリウムなどの界面活性剤を添加した水(分散媒)300mLに無機フィラー粉体10mgを添加し、30分間、出力40W、周波数39KHzの超音波強度で分散処理するとメーカー表示の粒子径まで分散される程度の弱い凝集力しか有しない。しかしながら、本発明における凝集粒子は、かかる条件でもほとんど分散されない粒子同士が強固に凝集したものある。
市販の無機フィラーの凝集粒子から、粒子同士が強固に凝集した凝集粒子を作製する方法として、凝集力をさらに高めるために、その無機フィラーが融解する直前の温度付近まで加熱して、接触した無機フィラー粒子同士がわずかに融着する程度に加熱する方法が好適に用いられる。またこの場合、凝集粒子の形状をコントロールするため、加熱前に凝集した形態を作っておいてもよい。その方法として例えば、無機フィラーを適当な容器に入れて加圧したり、一度溶剤に分散させた後、噴霧乾燥などの方法で溶剤を除去する方法が挙げられる。
またさらに、無機フィラーの粒子同士が強固に凝集した凝集粒子の好適な別の作製方法として、湿式法で作製されたシリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル等を用い、これを凍結乾燥や噴霧乾燥等の方法で乾燥し、必要に応じて加熱処理することで容易に、粒子同士が強固に凝集した凝集粒子を得ることができる。ゾルの具体例としては、株式会社日本触媒製、商品名「シーホスター」、日揮触媒化成株式会社製、商品名「OSCAL」、「QUEEN TITANIC」、日産化学工業株式会社製、商品名「スノーテックス」、「アルミナゾル」、「セルナックス」、「ナノユース」等が挙げられる。該無機フィラー粒子の形状は特に限定されず、適宜選択して使用することができる。
前記無機フィラーは、重合性単量体と組み合わせて歯科用組成物に用いることから、該無機フィラーと重合性単量体との親和性を改善したり、該無機フィラーと重合性単量体との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させるために、予め表面処理剤で表面処理を施しておくことが好ましい。表面処理の方法については、何ら制限的ではない。また、かかる表面処理剤としては公知のものを使用でき、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。表面処理剤の濃度は、フィラーに対して通常0.1〜30質量%の範囲、好ましくは1〜20質量%の範囲で使用される。
有機無機複合フィラーの平均粒子径は1〜50μmであることが好ましく、3〜25μmであることがより好ましい。有機無機複合フィラーの平均粒子径が小さすぎると、歯科用組成物のベタツキが大きくなり操作性が低下することがある。平均粒子径が大きすぎると、ペーストのザラツキやパサツキが生じるため操作性が低下する。なお、本発明において、有機無機複合フィラーとは、無機フィラーと重合性単量体の重合体とを含むフィラーを示す。
本発明における有機無機複合フィラーとしては、平均粒子径0.5μm以下の無機フィラーが有機マトリックス中に分散されていることが好ましいが、その作製方法は特に限定されない。例えば、前記無機フィラーに後述の公知の重合性単量体、及び前述の公知の重合開始剤を予め添加し、ペースト状にした後に、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合、バルク重合により重合させ、粉砕して作製してもよい。
本発明の歯科用組成物は、上記の重合性単量体、重合開始剤、及びフィラー以外に、重合促進剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、顔料等の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもよい。
重合促進剤としては、プレポリマーの製造に使用することのできる重合促進剤として本願で例示した重合促進剤を使用することができる。
本発明の歯科用組成物における重合促進剤の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、得られる歯科用組成物の硬化性などの観点からは、重合性単量体成分の全量100質量部に対して、0.001〜30質量部が好ましい。重合促進剤の含有量が0.001質量部未満の場合、重合が十分に進行せず、接着力の低下を招くおそれがある。重合促進剤の含有量は、より硬化性に優れる点から、前記100質量部に対して0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましい。一方、重合促進剤の含有量が前記100質量部に対して30質量部を超える場合、歯科用組成物からの析出を招くおそれがある。重合促進剤の含有量は、歯科用組成物からの析出を招くおそれがない点から、前記100質量部に対して20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
前記重合禁止剤としては、例えば、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、ハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた実施形態を含む。
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例において用いられる試験方法、材料などを以下にまとめて示す。
(プレポリマーの粘度)
予めプレポリマー30質量部をトリエチレングリコールジメタクリレート70質量部に溶解し、E型粘度計(東機産業株式会社製、TV−30E型粘度計、JIS K 7117−2:1999に準拠、コーン・プレートタイプ)を用いて、0.8°×R24のコーンロータで、サンプル量0.6mL、25℃にて測定した。1分間のプレヒートを行った後、測定を開始し、5分後の測定値をその粘度とした。
(プレポリマーの屈折率)
アッベ屈折計(株式会社アタゴ製、商品名:1T)を用い、ナトリウムのD線を光源として、イオウの溶解したジヨードメタン、1−ブロモナフタレン、サリチル酸メチル、ジメチルホルムアミド、1−ペンタノールを液体としてJIS K 7142:2008の液浸法で25℃にて測定した。
(プレポリマーの水酸基価)
プレポリマーの水酸基価は、JIS K 1557−1:2007に記載された方法に準拠して測定した。
(プレポリマーの重量平均分子量)
プレポリマーの重量平均分子量はGPC測定により求めた。すなわち、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、カラムとして東ソー株式会社製の「TSKgel SuperMultipore HZM−M」の2本と「TSKgel SuperHZ4000」とを直列に繋いだものを用いた。またGPC装置として、示差屈折率検出器(RI検出器)を備えた東ソー株式会社製の「HLC−8320」を用いた。測定には、まずプレポリマー4mgをテトラヒドロフラン5mLに溶解させて試料溶液を作製した。次いで、カラムオーブンの温度を40℃に設定し、溶離液流量0.35mL/分で試料溶液20μLを注入してプレポリマーのクロマトグラムを測定した。一方、分子量が400〜5,000,000の範囲内にある標準ポリスチレン10点をGPC測定し、保持時間と分子量との関係を示す検量線を作成した。この検量線に基づき、上記のように測定したプレポリマーのクロマトグラムからプレポリマーの重量平均分子量を求めた。
(プレポリマーの有する未反応の重合性官能基の数(1分子あたりの平均))
1H−NMR測定にてプレポリマーの有する未反応の重合性官能基の濃度ρ(mol/g)を求め、これに前述の方法で求めた重量平均分子量(Mw)を乗じた値(ρ×Mw)を算出し、これをプレポリマーの有する未反応の重合性官能基の数(1分子あたりの平均)とした。
なお上記1H−NMR測定では、プレポリマー約30mg及び内標としてのテレフタル酸ジメチル(分子量:194.19)約2mgを秤量し(プレポリマーの秤量値をWP(mg)、テレフタル酸ジメチルの秤量値をWD(mg)とする)、重水素化クロロホルム3mLに溶解した。続いて核磁気共鳴装置(Bruker社製「ULTRA SHIELD 400 PLUS」)を用いて、室温、積算回数16回の条件にて測定し、メタクリロイル基由来のプロトンピーク(5.55ppmと6.12ppm)の積分値とテレフタル酸ジメチルの芳香族プロトンピーク(8.10ppm)の積分値とから、メタクリロイル基とテレフタル酸ジメチルのモル比(RP/D)を求めた(RP/D=[(I5.55+I6.12)/2]/(I8.10/4);ここでI5.55は5.55ppmのピークの積分値を示し、I6.12は6.12ppmのピークの積分値を示し、I8.10は8.10ppmのピークの積分値を示す)。そして、得られたRP/Dを用いて、プレポリマー中の重合性官能基の濃度ρ(mol/g)を求めた(ρ=[RP/D×WD/194.19]/WP)。
(稠度)
各実施例及び比較例で得られた歯科用組成物のペースト0.5ccを測りとり、その上にガラス板を介して1kgの荷重を30秒間かけ、ペーストを押しつぶした。展延された円板状のペーストの最大直径及び最小直径の2点を測定し、2点の平均値(mm)を稠度とした。稠度が大きいほどペーストが柔らかいことを示し、ペーストの操作性の観点から12.0mm以上が好ましく、13.0mm以上がより好ましく、14.0mm以上がさらに好ましい。
(硬化物の曲げ強さ)
各実施例及び比較例で得られた歯科用組成物を真空脱泡後、ステンレス製の金型(寸法2mm×2mm×25mm)に充填し、上下をスライドガラスで圧接し、歯科重合用LED光照射器(株式会社モリタ製、商品名「ペンキュアー2000」)で1点10秒、片面を5点ずつ、スライドガラスの両面に光を照射して硬化させて硬化物の試験片を得た。各実施例及び比較例について、硬化物を5本ずつ作製し、硬化物は、金型から取り出した後、37℃の蒸留水中に24時間保管した。各試験片について、JIS T 6514:2015及びISO4049:2009に準拠して、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、商品名「オートグラフAG−I 100kN」)を用いて、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分の条件下で曲げ強さを3点曲げ試験で測定した。各試験片の測定値の平均値を算出し、曲げ強さ(x)とした。曲げ強さは110MPa以上が好ましく、120MPa以上がより好ましく、130MPa以上が最も好ましい。
(耐水性)
37℃の蒸留水中に24時間保管する操作を、70℃の蒸留水中に1週間保管する操作に変更した以外は、前記硬化物の曲げ強さの測定方法と同様の方法で曲げ強さ(y)を測定した。前記曲げ強さ(y)に対する前記曲げ強さ(x)の割合(x/y×100(%))を算出し、硬化物の曲げ強さの維持の観点で、耐水性の指標とした。耐水性は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が最も好ましい。
(重合収縮応力)
厚さ4.0mmのガラス板上に設置したリング状の金型(ステンレス製、内径5.5mm×厚さ0.8mm)内に、各実施例及び比較例で作製したペースト(歯科用組成物)を充填した。前記ガラス板は、粒子径50μmのアルミナパウダーでサンドブラスト処理したものを使用した。充填したペースト上に、万能試験機(株式会社島津製作所製、商品名「オートグラフAG−I 100kN」)と連結したステンレス製治具(φ5mm)を設置した。次いで、歯科重合用LED光照射器(株式会社モリタ製、商品名「ペンキュアー2000」)を用いて、ガラス板越しに20秒間ペーストに光照射してペーストを硬化させた。この際、かかる光照射によって進行する歯科用組成物の重合反応による硬化に伴う重合収縮応力を、上記万能試験機で測定した。重合収縮応力が小さいほど収縮による剥離のリスクを小さくすることができることに加えて、一度により多くの歯科用組成物を充填することができるようになり、操作性が向上する。重合収縮応力は13.0MPa以下が好ましく、11.0MPa以下がより好ましく、10.0MPa以下がさらに好ましい。
(硬化物の透明性)
スライドガラス上に、カバーガラス、さらにその上に直径20mm、厚さ1mmのステンレス製金型をセットし、該金型内に各実施例、比較例で得られた歯科用複合材料を少し溢れる程度に充填した。さらにその上からカバーガラス、続いてスライドガラスをかぶせ、金型から余剰な歯科用複合材料を押し出すように上から力を加えた。これを、LED重合機(αライトV、株式会社モリタ製)を用いて表裏各2分間ずつ照射し硬化させ、カバーガラス及びスライドガラス、金型を除去することで硬化物の試料を得た。
硬化物の透明性は、分光測色計(CM−3610d、(JIS Z 8722:2009、条件cに準拠)コニカミノルタジャパン株式会社製)を用いて評価した。具体的には、試料の背後に標準白板を置いて色度を測定した場合のJIS Z 8781−4:2013のL*a*b*表色系における明度指数L*を表す明度(L1)と、同じ試料の背後に標準黒板を置いて色度を測定した場合のL*a*b*表色系における明度指数L*を表す明度(L2)を測定し、両者の差(ΔL=L1−L2)を算出して、透明性の指標とした。ΔLの値が大きいほど透明性が高いことを意味し、より天然歯に近づけることができる点から、ΔLが高いほうが好適とされ、20.0以上が好ましく、25.0以上がより好ましい。
(硬化物のX線造影性)
各実施例、比較例で得られた歯科用複合材料を、歯科重合用LED光照射器(株式会社モリタ製、商品名「ペンキュアー2000」)を用いて硬化させ、硬化物の試料(φ1.5mm×1mm)を作製した。該試料をアルミステップウェッジと隣り合わせてX線フィルム(コダック社製、咬合型「ウルトラスピードDF−50」)の中央に位置させ、デジタルX線撮影装置(株式会社モリタ製作所製、「マックスDC70」)を用いて、ターゲット−フィルム間距離400mm、管電圧70kVの条件でX線照射を行った。照射後の前記フィルムを現像・定着・乾燥させた後に、光学濃度計(コダック社製、DENSITOMETER、「PDA−85」、測定エリア(3mmφ))を用いて、前記試料の画像濃度を20点測定し、前記試料の画像濃度と前記アルミステップウェッジの各厚みの画像濃度とを比較することにより、アルミ板の厚みに相当するX線造影性を求めた。X線造影性は1.0mm以上が好ましく、1.1mm以上がより好ましく、1.2mm以上がさらに好ましい。
次に、実施例及び比較例のプレポリマーの原料を略号と共に以下に記す。
(単官能(メタ)アクリレート(A))
IBMA:イソボルニルメタクリレート
DDMA:ドデシルメタクリレート
PHE−1G:フェノキシエチレングリコールメタクリレート
A−LEN−10:エトキシ化−o−フェニルフェノールアクリレート
(多官能(メタ)アクリレート(B))
D2.6E:2,2−ビス〔4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン(エトキシ基の平均付加モル数:2.6)
HDDMA:1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート
A−BPEF:9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン
(連鎖移動剤(C))
3M2B:3−メルカプト−2−ブタノール
OT:1−オクタンチオール
(重合開始剤(D))
BAPO:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド
(その他の重合性単量体)
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
UDMA:2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート
Bis−GMA:2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン
[実施例1〜9、比較例1〜5]
表1に記載した成分量の単官能(メタ)アクリレート(A)及び多官能(メタ)アクリレート(B)をトルエン((A)及び(B)の合計の5倍量)に溶解し、モレキュラーシーブスで脱水した。三ツ口フラスコに脱水した前記トルエン溶液を入れ、1時間窒素バブリングを行った。表1に記載した成分量の連鎖移動剤(C)及び重合開始剤(D)を前記トルエン溶液の入った三ツ口フラスコに投入し、撹拌した。続いてキセノンランプ(プロポリマー3Cキセノン電球(LUMITECH社製))で溶液に照射し重合を開始した。180分後に照射を停止し、ヘキサン(前記トルエン溶液の6倍量)中に滴下し、底に沈殿した粘稠なクレイ状の物質を得た。これを一晩常温で減圧乾燥して白色粉末状のプレポリマーを得た。次いで、得られたプレポリマーの溶液粘度、屈折率及び水酸基価を前述の方法に従って測定した。表1に、このプレポリマーの試験結果を示す。なお、実施例1のプレポリマーについて、上記の方法により重量平均分子量及び未反応の重合性官能基の数を測定したところ、重量平均分子量は23,000であり、未反応の重合性官能基の数は24個であった。また、比較例5はゲル化したため、プレポリマーを得ることができなかった。
[比較例6]
非特許文献1に記載の方法で合成したプレポリマー(かかる文献中の「Non−reactive nanogel」)について、溶液粘度、屈折率及び水酸基価を前述の方法に従って測定した。表2に、このプレポリマーの試験結果を示す。
[比較例7]
非特許文献1に記載の方法で合成したプレポリマー(かかる文献中の「Reactive nanogel」)について、溶液粘度、屈折率及び水酸基価を前述の方法に従って測定した。表2に、このプレポリマーの試験結果を示す。
[比較例8]
非特許文献2に記載の方法で合成したプレポリマー(かかる文献中の「NG2」)について、溶液粘度、屈折率及び水酸基価を前述の方法に従って測定した。表2に、このプレポリマーの試験結果を示す。
[実施例10〜21及び比較例9〜17]
実施例1〜9及び比較例1〜4、6〜8のプレポリマー、及び下記に示す原料を用いて歯科用組成物を調製した。また、当該歯科用組成物の調製には、表3及び4に記載の各成分を有する重合性単量体組成物(X)を用いた。表3及び4に記載の質量比にて各成分を常温(23℃)暗所で混合して、各ペースト(歯科用組成物)を調製した。これらのペーストについて、上記した方法で各特性を調べた。表3及び4に、試験結果を示す。
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
CQ:カンファーキノン
TMDPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
PDE:4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル
BHT:3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン
[製造例1]無機フィラー:Ar130
平均粒子径が16nmの略球状超微粒子アエロジル130(日本アエロジル株式会社製)100質量部に対して、40質量部のγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面処理し、無機フィラー(Ar130)を得た。
[製造例2]無機フィラー:NF180
バリウムガラス「GM27884 NanoFine180」(ショット社製)100g、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン7g、及びトルエン200mLを三口フラスコに入れ、2時間、室温下で撹拌した。トルエンを減圧下で留去した後、40℃で16時間真空乾燥を行い、さらに90℃で3時間加熱し、表面処理層が設けられた無機フィラー(NF180)を得た。
[製造例3]無機フィラー:UF1.0
バリウムガラス「UltraFine UF0.1」(ショット社製)100g、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5g、及びトルエン200mLを三口フラスコに入れ、2時間、室温下で撹拌した。トルエンを減圧下で留去した後、40℃で16時間真空乾燥を行い、さらに90℃で3時間加熱し、表面処理層が設けられた無機フィラー(UF1.0)を得た。
[製造例4] 有機無機複合フィラー:CF
予め重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を1質量%溶解した、Bis−GMAと3Gの重合性単量体混合物(質量比1:1)100質量部に対して、無機フィラーとしてNF180を100質量部添加、混合しペースト化した。これを100℃、減圧雰囲気下で5時間加熱重合した。得られた重合硬化物を、振動ボールミルを用いて、平均粒子径が5μmとなるまで粉砕した。得られた粉砕フィラー100gに対して、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン2質量%含有エタノール溶液200mL中、90℃で5時間還流することで表面処理を行い、有機無機複合フィラー(CF)を得た。
表3,4に示すように、本発明のプレポリマーを含む歯科用組成物は、比較例に比べ稠度に優れ、重合収縮応力も低く、硬化物の機械的強度及び耐水性に優れ、硬化物の透明性に優れ、X線造影性も十分であるという結果となった。