以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る運転制御方法及び運転制御装置を、車両に搭載された車載装置200と協動する運転制御システムに適用した場合を例にして説明する。
図1は、運転制御システム1のブロック構成を示す図である。本実施形態の運転制御システム1は、運転制御装置100と車載装置200を備える。本発明の運転制御装置100の実施の形態は限定されず、車両に搭載してもよいし、車載装置200と情報の授受が可能な可搬の端末装置に適用してもよい。端末装置は、スマートフォン、PDAなどの機器を含む。運転制御システム1、運転制御装置100、車載装置200、及びこれらが備える各装置は、CPUなどの演算処理装置を備え、演算処理を実行するコンピュータである。
まず、車載装置200について説明する。
本実施形態の車載装置200は、車両コントローラ210、ナビゲーション装置220、検出装置230、レーンキープ装置240、及び出力装置250を備える。車載装置200を構成する各装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。車載装置200は、車載LANを介して運転制御装置100と情報の授受を行うことができる。
本実施形態の車両コントローラ210は、プロセッサ11が立案する運転計画に従って車両の運転を制御する。車両コントローラ210は、センサ260、駆動装置270、及び操舵装置280を動作させる。車両コントローラ210は、センサ260から車両情報を取得する。センサ260は、舵角センサ261、車速センサ262、姿勢センサ263を有する。舵角センサ261は、操舵量、操舵速度、操舵加速度などの情報を検出し、車両コントローラ210へ出力する。車速センサ262は、車両の速度及び/又は加速度を検出し、車両コントローラ210へ出力する。センサ260は、車両の移動距離を検知するオドメータなどの距離センサを備えてもよい。姿勢センサ263は、車両の位置、車両のピッチ角、車両のヨー角車両のロール角を検出し、車両コントローラ210へ出力する。姿勢センサ263は、ジャイロセンサを含む。
本実施形態の車両コントローラ210は、エンジンコントロールユニット(Electric Control Unit, ECU)などの車載コンピュータであり、車両の運転/動作を電子的に制御する。車両としては、電動モータを走行駆動源として備える電気自動車、内燃機関を走行駆動源として備えるエンジン自動車、電動モータ及び内燃機関の両方を走行駆動源として備えるハイブリッド自動車を例示できる。なお、電動モータを走行駆動源とする電気自動車やハイブリッド自動車には、二次電池を電動モータの電源とするタイプや燃料電池を電動モータの電源とするタイプのものも含まれる。
本実施形態の駆動装置270は、車両の駆動機構を備える。駆動機構には、上述した走行駆動源である電動モータ及び/又は内燃機関、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや自動変速機を含む動力伝達装置、及び車輪を制動する制動装置271などが含まれる。駆動装置270は、アクセル操作及びブレーキ操作による入力信号、車両コントローラ210又は運転制御装置100から取得した制御信号に基づいてこれら駆動機構の各制御信号を生成し、車両の加減速を含む運転制御を実行する。駆動装置270に制御情報を送出することにより、車両の加減速を含む運転制御を自動的に行うことができる。なお、ハイブリッド自動車の場合には、車両の走行状態に応じた電動モータと内燃機関とのそれぞれに出力するトルク配分も駆動装置270に送出される。
本実施形態の操舵装置280は、ステアリングアクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータ等を含む。操舵装置280は、車両コントローラ210から取得した制御信号、又はステアリング操作により入力信号に基づいて車両の進行方向の変更制御を実行する。車両コントローラ210は、操舵量を含む制御情報を操舵装置280に送出することにより、進行方向の変更制御(横位置の変更制御)を実行する。駆動装置270の制御、操舵装置280の制御は、完全に自動で行われてもよいし、ドライバの駆動操作(進行操作)を支援する態様で行われてもよい。駆動装置270の制御及び操舵装置280の制御は、ドライバの介入操作により中断/中止させることができる。
本実施形態の車載装置200は、ナビゲーション装置220を備える。ナビゲーション装置220は、自車両の現在位置から目的地までの経路を出願時に知られた手法を用いて算出する。算出した経路は、車両の運転制御に用いるために、車両コントローラ210へ送出される。算出した経路は、経路案内情報として後述する出力装置250を介して出力される。ナビゲーション装置220は、位置検出装置221を備える。位置検出装置221は、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System, GPS)の受信機を備え、走行中の車両の走行位置(緯度・経度)を検出する。
ナビゲーション装置220は、アクセス可能な地図情報222と、道路情報223と、交通規則情報224を備える。地図情報222、道路情報223、交通規則情報224は、ナビゲーション装置220が読み込むことができればよく、ナビゲーション装置220とは物理的に別体として構成してもよいし、通信装置30(又は車載装置200に設けられた通信装置)を介して読み込みが可能なサーバに格納してもよい。地図情報222は、いわゆる電子地図であり、緯度経度と地図情報が対応づけられた情報である。地図情報222は、各地点に対応づけられた道路情報223を有する。
道路情報223は、ノードと、ノード間を接続するリンクにより定義される。道路情報223は、道路の位置/領域により道路を特定する情報と、道路ごとの道路種別、道路ごとの道路幅、道路の形状情報とを含む。道路情報223は、各道路リンクの識別情報ごとに、交差点の位置、交差点の進入方向、交差点の種別その他の交差点に関する情報を対応づけて記憶する。交差点は、合流点、分岐点を含む。また、道路情報223は、各道路リンクの識別情報ごとに、道路種別、道路幅、道路形状、直進の可否、進行の優先関係、追い越しの可否(隣接レーンへの進入の可否)その他の道路に関する情報を対応づけて記憶する。
走行経路は、道路識別子、車線識別子、レーン識別子、リンク識別子により特定される。これらの車線識別子、レーン識別子、リンク識別子は、地図情報222、道路情報223において定義される。走行経路は、リンクの識別子を含むリンク情報を含む。リンク情報はリンク識別子に対応づけられた接続されるリンク情報(リンク識別子)を含む。これにより、リンクが接続される順番が特定される。走行する順序に従い特定されたリンクを繋げることにより、走行経路が算出される。本実施形態において走行経路は、第1走行道路と第2走行道路を含む。
ナビゲーション装置220は、位置検出装置221により検出された車両の現在位置に基づいて、車両が走行する経路を特定する。経路はユーザが指定した目的地に至る経路であってもよいし、車両/ユーザの走行履歴に基づいて推測された目的地に至る経路であってもよい。
交通規則情報224は、経路上における一時停止、駐車/停車禁止、徐行、制限速度などの車両が走行時に遵守すべき交通上の規則である。各規則は、地点(緯度、経度)ごと、リンクごとに定義される。交通規則情報224には、道路側に設けられた装置から取得する交通信号の情報を含めてもよい。
車載装置200は、検出装置230を備える。検出装置230は、経路を走行する車両の周囲の検出情報を取得する。車両の検出装置230は、車両の周囲に存在する障害物を含む対象物の存在及びその存在位置を検出する。特に限定されないが、検出装置230はカメラ231を含む。カメラ231は、例えばCCD等の撮像素子を備える撮像装置である。カメラ231は、赤外線カメラ、ステレオカメラでもよい。カメラ231は車両の所定の位置に設置され、車両の周囲の対象物を撮像する。車両の周囲は、車両の前方、後方、前方側方、後方側方を含む。対象物(対象)は、路面に表記された停止線、進入禁止領域などの二次元の標識を含む。対象物は三次元の物体を含む。対象物は、標識などの静止物を含む。対象物は、歩行者、二輪車、四輪車(他車両)などの移動体を含む。対象物は、ガードレール、中央分離帯、縁石などの道路構造物を含む。
検出装置230は、画像データを解析し、その解析結果に基づいて対象物の種別を識別してもよい。検出装置230は、パターンマッチング技術などを用いて、画像データに含まれる対象物が、車両であるか、歩行者であるか、標識であるか否かを識別する。検出装置230は、取得した画像データを処理し、車両の周囲に存在する対象物の位置に基づいて、車両から対象物までの距離を取得する。検出装置230は、車両の周囲に存在する対象物の位置及び時間に基づいて、車両が対象物に到達する時間を取得する。
なお、検出装置230は、レーダー装置232を用いてもよい。レーダー装置232としては、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、超音波レーダー、レーザーレンジファインダーなどの出願時に知られた方式のものを用いることができる。検出装置230は、レーダー装置232の受信信号に基づいて対象物の存否、対象物の位置、対象物までの距離を検出する。検出装置230は、レーザーレーダーで取得した点群情報のクラスタリング結果に基づいて、対象物の存否、対象物の位置、対象物までの距離を検出する。
検出装置230は、通信装置233を介して外部の装置から検出情報を取得してもよい。通信装置233が他車両と車両とが車車間通信をすることが可能であれば、検出装置230は、他車両の車速センサが検出した他車両の車速、加速度を、他車両が存在する旨を対象物情報として取得してもよい。もちろん、検出装置230は、高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems:ITS)の外部装置から通信装置233を介して、他車両の位置、速度、加速度を含む対象物情報を取得することもできる。検出装置230は、車両近傍の情報は車載装置200により取得し、車両から所定距離以上の遠い領域の情報は路側に設けられた外部装置から通信装置233を介して取得してもよい。検出装置230は、検出結果をプロセッサ11へ逐次出力する。
本実施形態の車載装置200は、レーンキープ装置240を備える。レーンキープ装置240は、カメラ241、道路情報242を備える。カメラ241は、検出装置のカメラ231を共用してもよい。道路情報242は、ナビゲーション装置の道路情報223を共用してもよい。レーンキープ装置240は、カメラ241の撮像画像から車両が走行する経路の車線(レーン)を検出する。レーンキープ装置240は、車線のレーンマーカの位置と車両の位置とが所定の関係を維持するように車両の動きを制御する車線逸脱防止機能(レーンキープサポート機能)を備える。運転制御装置100は車線の中央を車両が走行するように、車両の動きを制御する。なお、レーンマーカは、レーンを規定する機能を有するものであれば限定されず、路面に描かれた線図であってもよいし、レーンの間に存在する植栽であってもよいし、レーンの路肩側に存在するガードレール、縁石、歩道、二輪車専用道路などの道路構造物であってもよい。また、レーンマーカは、レーンの路肩側に存在する看板、標識、店舗、街路樹などの不動の物体であってもよい。
後述するプロセッサ11は、検出装置230により検出された対象物を、事象及び/又は経路に対応づけて少なくとも一時的に記憶する。事象とは、予め定義された場面である。例えば、対象物を回避する、対象物を追い抜く、対象物とすれ違う、一時停止する、交差点を通過するなどの場面を事象として定義することができる。プロセッサ11は、センサ260の検知情報に基づいて、自車両が遭遇する事象を予測する。プロセッサ11は、事象の所定距離以内に存在し、事象において接近する可能性のある対象物を、その事象に対応づけて記憶する。プロセッサ11は、事象において遭遇する対象物を経路に対応づけて記憶する。プロセッサ11は、どの経路のどの位置に対象物が存在するかを把握する。これにより、事象において車両に接近する対象物を迅速に判断できる。プロセッサ11は、走行経路において、自車両の右側領域に第1対象物が存在し、自車両の左側領域に第2対象物が存在する場面を対象場面として特定する。
車載装置200は、出力装置250を備える。出力装置250は、ディスプレイ251、スピーカ252を備える。出力装置250は、運転制御に関する各種の情報をユーザ又は周囲の車両の乗員に向けて出力する。出力装置250は、立案された運転行動計画、その運転行動計画に基づく運転制御に関する情報を出力する。出力装置250は、通信装置を介して、高度道路交通システムなどの外部装置に運転制御に関する各種の情報を出力してもよい。
次に、運転制御装置100について説明する。
運転制御装置100は、制御装置10と、出力装置20と、通信装置30を備える。出力装置20は、先述した車載装置200の出力装置250と同様の機能を有する。ディスプレイ251、スピーカ252を、出力装置20の構成として用いてもよい。制御装置10と、出力装置20とは、有線又は無線の通信回線を介して互いに情報の授受が可能である。通信装置30は、車載装置200との情報授受、運転制御装置100内部の情報授受、外部装置と運転制御システム1との情報授受を行う。
まず、制御装置10について説明する。
制御装置10は、プロセッサ11を備える。プロセッサ11は、第1リスクポテンシャルと第2リスクポテンシャルに基づいて、所定の走行経路に沿って自車両を走行させる運転制御処理を行う演算装置である。具体的に、プロセッサ11は、運転計画の立案を含む運転制御処理を実行させるプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行することで、制御装置10として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備えるコンピュータである。
本実施形態に係るプロセッサ11は、以下の方法に係る処理を実行する。
(1)自車両の周囲の検出情報と自車両の情報を取得する、
(2)自車両が走行する経路における回避対象に関する第1リスクポテンシャルを算出し、第1リスクポテンシャルに基づく第1走行経路を算出する、
(3)回避対象よりも上流側のリスク制御地点に、自車両に所定の運転制御(走行経路、速度、操舵量を含む)を実行させることにより生成される、所望のリスクポテンシャル(高さ)の第2リスクポテンシャルを算出する、
(4)第1リスクポテンシャルと第2リスクポテンシャルとに基づいて第2走行経路を算出する、
(5)第2走行経路を自車両に移動させる運転計画に従う運転制御命令を算出し、自車両に運転制御命令を実行させる。
プロセッサ11は、検出情報を取得する機能を実現する第1ブロックと、回避対象についてそれぞれ算出された第1リスクポテンシャルに基づいて第1走行経路を算出する機能を実現する第2ブロックと、第2ポテンシャルを生成する機能を実現する第3ブロックと、第2走行経路を算出する機能を実現する第4ブロックと、自車両に第2走行経路を走行させる運転制御命令を算出し、自車両に実行させる機能を実現する第5ブロックとを有する。プロセッサ11は、上記各機能を実現するため、又は各処理を実行するためのソフトウェアと、上述したハードウェアとの協働により各機能を実行する。
本実施形態に係るプロセッサ11が実行する検出情報の取得処理について説明する。
プロセッサ11は、先述した車載された検出装置230、センサ260、ナビゲーション装置220を含む車載装置200から検出情報を遂次取得する。検知情報は、走行制御の対象である自車両の周囲の状況を示す情報である。プロセッサ11は、目的地に至る経路を走行する自車両の周囲の対象を検出するセンサの検知情報を、所定周期で取得する。プロセッサ11は、位置、経路(リンク)、又は事象と対応づけられた検出情報を取得する。検出情報は、事象に対応づけられた対象物の位置、対象物の種別(属性)、対象物の大きさ、対象物の速度、対象物の速度変化、対象物の縦変位量、対象物の縦変位速度、対象物の横変位量、対象物の横変位速度を含む。検出情報は、現在の自車両に対する対象物の状態を示す情報であってもよいし、自車両の前方の検出情報に基づいて予測された将来の自車両に対する対象物の状態を示す情報であってもよい。
プロセッサ11は、基準となる第1走行経路を算出する。第1走行経路は自車両の目的地に至る経路に沿う。目的地は、自律走行を含む走行支援が実行される経路の経由地又は終点である。第1走行経路は、ナビゲーション装置220が算出した現在位置から目的地に至る経路であってもよい。第1走行経路は、検出された対象物(障害物)を回避する経路である。本実施形態の第1走行経路は、検出情報に基づいて算出された対象物のリスクポテンシャルの低い点を繋ぐ経路である。
プロセッサ11は、検出情報に基づいて自車両が回避すべき回避対象を検出した場合には、回避対象に関する第1リスクポテンシャルを算出する。第1リスクポテンシャルは、目的地に至る経路を走行する際に自車両が接近する又は遭遇する対象のそれぞれについて算出されたリスクポテンシャルである。
ここで、リスクポテンシャルとは、対象物ごとに設定された、自車両に接近乃至接触の可能性に応じたリスクの高さである。リスクポテンシャルは、走行経路の路幅方向(車幅方向)に沿う横変位に応じたリスクポテンシャルを含む。リスクポテンシャルは、走行経路の進行方向(経路の延在方向)に沿う縦変位に応じたリスクポテンシャルを含む。
リスクポテンシャルは、対象物の位置、対象物の種別(属性)、対象物の大きさ、対象物の速度、対象物の速度変化、対象物の縦変位量、対象物の縦変位速度、対象物の横変位量、対象物の横変位速度に応じて、対象物ごとに定義される。自車両を基準にリスクポテンシャルを算出してもよいし、各対象物を基準にリスクポテンシャルを算出してもよい。対象物との接触位置(対象物の物理的な外延)のリスクポテンシャルが最も高くなる。つまり、対象物に近くなるにつれてリスクポテンシャルが高くなり、対象物から離隔するにつれてリスクポテンシャルは低くなる。自車両についても同様にリスクポテンシャルを定義してもよい。本実施形態の第1走行経路は、自車両のリスクポテンシャルと対象物のリスクポテンシャルとが低い値となる点を辿った経路として算出される。なお、対象物のリスクポテンシャルの算出手法は特に限定されない。対象物のリスクポテンシャルは、相対的な距離に基づいて定義できる。対象物のリスクポテンシャルは、自車両が対象物に接触するまでの時間となるTTC(Time-To-Collision)を指標として定義してもよいし、前方車両の現在位置に自車が到達するまでの時間を示すTHW(Time-Head Way)を指標として定義してもよい。TTC(Time-To-Collision)が短いほど、リスクポテンシャルの値(評価値)を大きく定義し、TTC(Time-To-Collision)が長いほど、リスクポテンシャルの値(評価値)を小さく定義する。THW(Time-Head Way)が短いほど、リスクポテンシャルの値(評価値)を大きく定義し、THW(Time-Head Way)が長いほど、リスクポテンシャルの値(評価値)を小さく定義する。リスクポテンシャルの算出手法は、先行技術文献をはじめとする本願出願時に知られた方法を適宜に用いることができる。
リスクポテンシャルは、相対的位置関係、TTC、及びTHWのうちの二つ以上の要素に基づいて算出してもよい。各要素に対して重みづけをして、総合的なリスクポテンシャルを算出してもよい。
プロセッサ11は、検出情報に基づいて自車両OVが回避すべき回避対象(障害物)を検出した場合には、回避対象に関する第1リスクポテンシャルを算出する。具体的に、プロセッサ11は、第1走行経路に沿って走行することをシミュレーションしたときに接近又は遭遇する対象を抽出し、対象のそれぞれについてのリスクポテンシャルを算出する。リスクポテンシャルは、先述した手法により、自車両及び対象の相対位置及び相対速度などに基づいて算出する。プロセッサ11は、第1リスクポテンシャルに基づく第1走行経路を算出する。具体的に、プロセッサ11は、各リスクポテンシャルの評価値の低い地点を繋げた第1走行経路を算出する。
図2は、本実施形態における自車両OV1の周囲の状況を示す図である。
図2に示すように、自車両OV1は、車線RD1を走行する。自車両OV1の前方であって、車線RD1の路肩に駐車車両PVが存在する。リスクポテンシャルRは、自車両OV1及び対象物のそれぞれに設定される。自車両OV1の運転制御に用いられるリスクポテンシャルRは、走行する自車両OV1が存在することにより占有する自車領域と、回避対象が存在する回避領域との位置関係に基づいて算出される。自車領域は、自車両OV1の現在位置、速度を含む車両情報に基づいて設定される。走行する自車両OV1の自車領域は刻々に変化するため、プロセッサ11は、経時的に変化する自車領域を算出する。同様に、回避対象が移動体であっても静止物であっても、走行する自車両OV1との相対的な位置関係は刻々に変化するため、プロセッサ11は、経時的に変化する回避領域を算出する。自車領域の大きさは、自車両OV1が単位時間あたりに移動する可能性のある範囲に応じて決定する。自車領域は、自車両OV1の速度が高いほど大きく設定する。同様に、回避領域の大きさは、回避対象が単位時間あたりに自車両OV1に対して相対的に移動する可能性のある範囲に応じて決定する。回避領域は、回避対象の自車両OV1に対する相対速度が高いほど大きく設定する。自車領域は速度に応じて多段階に設定される。回避領域は自車両OV1に対する相対速度に応じて多段階に設定される。プロセッサ11は、自車両OV1の速度、交通量、道路状況などに応じて、基準とする自車領域を特定し、特定した自車領域と、各回避対象の多段階に設定された各回避領域との位置関係に基づいてリスクポテンシャルRを算出する。具体的に、プロセッサ11は、二次元座標で特定された自車領域と回避領域とが重なる面積に基づいてリスクポテンシャルRを算出する。リスクポテンシャルRは、多段階に設定された回避領域のそれぞれについて階層的に設定されることが好ましい。
このように、自車領域と回避領域とを設定し、各領域の位置関係に基づいて第1リスクポテンシャル及び/又は第2リスクポテンシャルを算出することにより、自車両OV1と回避領域との相対的位置関係と相対速度に応じた位置関係の変化に基づいてリスクポテンシャルの存在を判断し、その大きさを判断することができる。
図2に示す例では、自車両OV1にはリスクポテンシャルROV1及びROV1が階層的(多段階)に設定される。自車両OV1に近いリスクポテンシャルROV1の評価値の方が、自車両OV1から遠い(対象物に近い)リスクポテンシャルROV1よりもリスクポテンシャルの評価値は高い。駐車車両PVについてもリスクポテンシャルRPV1〜RPV4が階層的(多段階)に設定される。駐車車両PVから最も近いリスクポテンシャルRPV1に最も高い評価値が設定される。リスクポテンシャルRPV1〜RPV4の評価値は、RPV1>RPV2>RPV3>RPV4となる。
自車両OV1は、第1走行経路RT1に沿って前方に移動し、自車両OV1の位置を経て駐車車両PVの前方(図中X方向)へ移動する。車線RD1の右側には、中央分離帯などの道路構造物GWが存在し、自車両OV1は車線RD1をはみ出すことができない場面を設定した。この場面において、自車両OVのリスクポテンシャルは、駐車車両PVの横を通過するときに最も高くなる。自車両OVの乗員にとっても、駐車車両PVの横を通過するときに最も不安を感じる。
図3Aは、本実施形態における自車両OV1の周囲の状況を示す図である。
図3Aに示すように、自車両OV1は、車線RD1を走行する。自車両OV1の前方に駐車車両PVが存在する。自車両OV1は、障害となる駐車車両PVを回避するために右側(図中−Y方向)に移動し、駐車車両PVの側方を通過する。この自車両OV1に動きに伴うリスクポテンシャルを図3Aの下側に示す。縦軸のリスクポテンシャルの値は、上述したように、相対的位置関係、TTC、及びTHWのうちのいずれか一つ以上の要素に基づいて算出される。また、運転制御におけるリスクポテンシャルには、運転制御において許容される範囲として予め定義されたリスクポテンシャルの所定値域を定義する閾値が設定される。本例では、リスクポテンシャルの値域を、高い方から、対処行動を必要とする領域A1、知覚領域A2、不覚領域A3、の3つの領域に区分する。自車両OV1が運転制御に従った走行をしたときの回避対象に対するリスクポテンシャルが知覚領域A2に属するように、走行経路及び運転計画を算出する。知覚領域A2は、閾値B1以上であり、閾値B2以下として定義される。
リスクポテンシャルの変化を示す表の横軸は、第1走行経路RTを移動する自車両OVの走行方向に沿う位置(図中+X)である。自車両OV1が駐車車両PVに接近するに従い、リスクポテンシャルの値は上昇する。そのときのリスクポテンシャルの変化量はαR1である。
ところで、従来の障害物回避を行う運転制御(自動運転を含む)においては、自車両OV1の周囲に存在する障害物のリスクポテンシャルの高さに基づいて走行経路が算出されており、「走行経路におけるリスクポテンシャルの変化」についての検討はなされていない。発明者らは、自車両OV1の乗員である人間の感覚で知覚される「走行経路におけるリスクポテンシャルの変化」に着目する。乗員(人間)は、近傍の各対象物のリスクポテンシャルのみならず、運転制御装置が検知する対象物よりも遠くの状態を予測する。このため、「走行経路におけるリスクポテンシャルの変化」が、人間の感覚に基づくリスク評価において高いリスクを予感させるものである場合には、そのリスクポテンシャルの変化は人間の不安感などの心的負担を増幅させる。このような心的負担は、乗員に不必要な介入操作を引き起こす原因になりうる。
運転制御装置においては、安全性と移動効率の高さとを両立させたバランスで運転制御を行う。現在の運転制御装置による運転の能力は高くなっており、一般的なドライバの能力を超えることもある。運転制御装置による車両の運転能力が、乗員(人間)による車両の運転能力を上回る状況においては、その乗員が自ら運転するときの判断の基準とするリスク評価の基準(リスクの感じ方)と運転制御装置のリスク評価の基準とに乖離が生じ、乗員が運転制御の内容に違和感・不安感を感じることがある。人間(乗員)の感覚を基準とした運転制御(加減速・操舵)をする場合には、車両及び運転制御装置の性能を十分に活かした運転制御を実行することはできない。また、乗員が運転制御の内容を受容しない場合には操作介入などにより運転制御が中断されることとなる。このように、安全性と、移動効率の高さと、乗員の受容性とを高いレベルでバランスをとることができないという問題がある。
本実施形態の運転制御においては、安全性と移動効率の高さとを両立し、運転性能を高く維持しつつ、乗員が受容しやすい内容の運転制御を実現する。本実施形態の運転制御では、人間の感覚によるリスク評価が、リスクの経時的な変化又は予測されるリスク状態の影響を受けることを考慮し、物理的にリスクポテンシャルが高くなる場面においても、そのリスクポテンシャルを乗員が受容できるように、リスクポテンシャルの生成・関係を制御する。安全性と移動効率の高さとを両立させるために高いリスクポテンシャルが生じた場合であっても、乗員が受容できる走行経路及び運転計画を算出することにより、乗員が受容可能でありつつ、安全性と移動効率を高いレベルで両立させた運転制御を実行する。
プロセッサ11は、上述した観点から、第1走行経路とは異なる第2走行経路を算出する。プロセッサ11は、検出された回避対象よりも自車両OV1に近い上流側にリスク制御地点を設定し、このリスク制御地点に、第1リスクポテンシャルとは異なる、自車両OV1に所定の運転制御を実行させることにより生成される第2リスクポテンシャルを算出する。第2リスクポテンシャルは、自車両OV1を運転制御することにより生成される。所定の運転制御の内容は、予め算出された所定の自車両OV1の挙動を実現させるものである。具体的に、所定の運転制御は、運転制御後の自車両OV1と対象物(回避対象)との間に所望の値(TTC又はTHWなどで表現できる値)の第2リスクポテンシャルを生じさせる運転制御である。この運転制御は、制御開始地点からリスク制御地点までにおいて自車両OV1に実行させる。自車両OV1に所定の運転制御を実行させることにより、自車両OV1がリスク制御地点を通過する時に、目標値の第2リスクポテンシャルが算出される。
所定の運転制御は、速度制御、又は操舵制御を少なくとも含む。自車両OV1の速度を高めるという運転制御(速度制御)を実行させることにより第2リスクポテンシャルを生成してもよいし、回避対象の近傍(横変位が所定値未満)を走行するという走行経路の設定又は走行経路に沿って自車両OV1を移動させる運転制御(操舵制御)を実行させることにより第2リスクポテンシャルを生成してもよい。第2リスクポテンシャルは、車両周囲の状況(進行方向の状況/将来遭遇する状況)に関する検出結果と、運転制御が実行された場合における車両周囲の状況の予測結果に基づいてシミュレーションにより予測でき、予測された第2リスクポテンシャルに基づいて自車両OV1の走行経路及び速度制御・操舵制御(運転制御命令)も予測することができる。第2リスクポテンシャルを算出した後に、第2リスクポテンシャルを回避する経路も予測できる。プロセッサ11は、第2リスクポテンシャルを考慮した第2走行経路を算出する。第2リスクポテンシャルを生成するための運転制御命令(運転計画)と、第2リスクポテンシャル及び第1リスクポテンシャルを回避する運転制御命令(運転計画)とは、一連の運転制御命令として生成される。プロセッサ11は、自車両OV1に第2走行経路を走行させる運転制御命令を、車載装置200の車両コントローラ210に送出する。運転制御命令は、経路(自車両OV1が通過する地点)と、各地点における速度、操舵量を含む。
第1リスクポテンシャルとは異なる第2リスクポテンシャルを、回避対象よりも上流側に設けることにより、回避対象の横を通過(回避)するときに急に立ち上がるリスクの程度を抑制することができる。人間(乗員)は、急に立ち上がるリスクに対して、さらにリスクが高くなることを予測することがある。急に立ち上がるリスクの大きさを抑制することにより、リスクの変化量又はリスクの大きさが、乗員が受容できる範囲に抑制された走行経路及び運転計画を算出することができる。第2リスクポテンシャルを生成することにより、安全性と移動効率の高さとを両立させた高度な運転制御に伴って高い値となるリスクポテンシャルに対しても乗員に不安を感じさせない運転制御を実現させることができる。
リスクポテンシャルは、自車両OV1に、回避対象との位置関係又は経時的な位置関係を変更させることにより生成してもよい。第2リスクポテンシャルは、回避対象へ自車両OV1を接近させることにより生成してもよい。具体的に、プロセッサ11は、進行方向に沿って又は経路幅方向に沿って、自車両OV1が回避対象に接近する経路を算出し、その経路を自車両OV1に走行させる運転制御を実行することにより、第2リスクポテンシャルを生成することができる。また、プロセッサ11は、自車両OV1の速度を高くする運転制御を実行することにより、第2リスクポテンシャルを生成することができる。
図3Bに、第2走行経路における第2リスクポテンシャルの変化を示す。図3Bに示す例では、回避対象である駐車車両PVの位置LK1から所定距離だけ上流側の地点LK2をリスク制御地点LK2とする。第1リスクポテンシャルLK1と第2リスクポテンシャルLK2との距離はBTである。プロセッサ11は、リスク制御地点LK2に第2リスクポテンシャルLK2を生成し、第2リスクポテンシャルLK2の存在を前提に第2走行経路RT2を算出する。第2リスクポテンシャルLK2の大きさによって、第2走行経路RT2は異なる。図3Bには、リスクポテンシャルの大きさが異なる3つの第2リスクポテンシャルLK2の変化RT2(1)、RT2(2)及びRT2(3)を図3Bに示す。第2リスクポテンシャルの値は、知覚領域A2の範囲(B1以上B2以下)で設定される。図3Bにおいては、図3Aにおいて示した第1走行経路における第1リスクポテンシャルの変化に、第2走行経路における第2リスクポテンシャルの変化を重畳させて示す。第2リスクポテンシャルLK2は、第1リスクポテンシャルLK1よりも自車両OV1に近い上流側(図中−X側)に生成される。
図3Bに示すように、第1走行経路における第1リスクポテンシャルの変化αR1は、駐車車両PVの側方を通過するときに、急に立ち上がる。このときの第1リスクポテンシャルの変化率αR1は正の値であり、リスクポテンシャルは増加する。人間(乗員)がリスクポテンシャルの増加を検知した場合には、乗員は、その後も同様の変化率でリスクポテンシャルが増加することを予測する。このため、第1リスクポテンシャルの変化率αR1が所定値以上の大きい値である場合に、乗員は、第1リスクポテンシャルの値が、通常の運転において知覚可能な領域A2を超えて、対象行動を必要とする領域A1に達することを予測する傾向がある。このような予測をした乗員は、心的負担を解消するために、運転制御に介入の操作をする可能性がある。介入操作が行われると、運転制御は中止されてしまう。
一方、同図に示すように、第1リスクポテンシャルLK1よりも上流側に生成される第2リスクポテンシャルLK2が算出され、第2リスクポテンシャルLK2を回避する第2走行経路から第1リスクポテンシャルLK1を回避する第1走行経路へ合流する経路(第2走行経路)が算出される。
第2リスクポテンシャルLK2の生成処理は、第1リスクポテンシャルの値の変化量が所定値よりも高い場合に実行してもよい。第1リスクポテンシャルは実際に存在する回避対象の存在に応じて算出される。第1リスクポテンシャルの値の変化量が所定値よりも高い場合は、リスクが急に立ち上がる状況を示す。また、第1リスクポテンシャルの値の変化量が大きい場合には、乗員(人間)はさらにリスクポテンシャルが増大する可能性を予測するため、不安感がさらに大きくなる可能性が高い。このような場面を、第1リスクポテンシャルの変化量から検出し、自車両に所定の運転制御を実行させることにより生成される第2リスクポテンシャルを算出して、新たな第2走行経路を算出することにより、リスクが急に立ち上がる第1走行経路とは異なる第2走行経路を算出することができる。
ここで、第2リスクポテンシャルの値の最大値M2が、駐車車両PVを含む回避対象に関する第1リスクポテンシャルの最大値M1よりも高くなるように第2リスクポテンシャルRT2(1)を算出する。第1リスクポテンシャルの最大値は、自車両OV1が駐車車両PVを含む回避対象に最も接近したときに算出される。第2リスクポテンシャルの最大値が第1リスクポテンシャルの最大値よりも大きい場合には、自車両OV1が回避対象に接近するにつれて、第2リスクポテンシャルの値が減少する。図中区間BTの領域において、第2リスクポテンシャルの値は減少する。図3Bの下図に示すように、第2リスクポテンシャルの値の変化率αR2は、回避対象の側方の位置(第1リスクポテンシャルが立ち上がる位置)において、負の傾きを有する。第2走行経路RT2を走行する自車両OV1は、リスクポテンシャルが高い状態を経てから、リスクポテンシャルが下がる状態で、回避対象(駐車車両PV)の側方を通過する。これにより、第2走行経路RT2を走行する自車両OV1に搭乗する乗員が、駐車車両PVの横を通過するときにリスクが急に立ち上がるという感覚を覚えることを抑制できる。
また、第2走行経路RT2に属する地点LK2(図中X方向)における第2リスクポテンシャルの値が、第1走行経路RT1に属する地点LK1(図中X方向)における第1リスクポテンシャルの値よりも大きくなるように、第2リスクポテンシャルRT1(2)を生成する。このように第2リスクポテンシャルRT2(2)の値は、図中区間BTの領域において減少する。図3Bの下図に示すように、第2リスクポテンシャルの値の変化率αR2は、回避対象の側方の位置(第1リスクポテンシャルが立ち上がる位置)において、負の傾きを有する。第2走行経路RT2を走行する自車両OV1は、リスクポテンシャルの値が高い状態を経てから、リスクポテンシャルの値が下がる状態で、回避対象(駐車車両PV)の側方を通過する。これにより、第2走行経路RT2を走行する自車両OV1に搭乗する乗員が、駐車車両PVの横を通過するときにリスクが急に立ち上がるという感覚を覚えることを抑制できる。
さらに、第2走行経路RT2に属する地点LK2(図中X方向)における第2リスクポテンシャルの値が、第1走行経路RT1に属する地点LK2(図中X方向)における第1リスクポテンシャルの値よりも大きくなるように、第2リスクポテンシャルRT1(3)を生成する。これにより、第2走行経路RT2における第2リスクポテンシャルの変化量を、第1走行経路RT1における第1リスクポテンシャルの変化量よりも小さくすることができる。これにより、自車両OV1が駐車車両PVの側方を通過するときに、リスクポテンシャルが急に立ち上がるという現象が発生することを抑制できる。
続いて、第2リスクポテンシャルの生成の手法について説明する。第2リスクポテンシャルは、自車両OV1の進行方向の挙動の変化(速度変化/縦位置の変化)又は、自車両OV1の走行経路の路幅方向の変化(横位置の変化)により生成することができる。
プロセッサ11は、自車両OV1と回避対象との相対距離及び/又は相対距離の変化に基づいて第2リスクポテンシャルの目標値を算出し、自車両OV1の運転を制御することにより、目標値の第2リスクポテンシャルを生成する。
まず、自車両OV1の進行方向の挙動の変化により第2リスクポテンシャルを生成する手法を説明する。
リスクポテンシャルは、回避対象との相対的な位置関係である距離、自車両OV1が対象物に接触するまでの時間となるTTC(Time-To-Collision)、若しくは前方の回避対象の現在位置に自車が到達するまでの時間を示すTHW(Time-Head Way)又はこれらの組み合わせに基づいて算出される。つまり、回避対象との距離を短縮し、接触するための時間を短縮し、回避対象の現在位置に至るまでの時間を短縮すれば、回避対象に対する自車両のリスクポテンシャルを生成できる。プロセッサ11は、自車両OV1の運転を制御することにより、目標値のリスクポテンシャルを生成する。自車両OV1の運転の制御内容には、自車両OV1の位置(経路)と、自車両OV1の目標速度を含む。
このように、自車両OV1と回避対象との相対距離及び/又は相対距離の変化に基づいて、所定の目標値の第2リスクポテンシャルを生成することにより、回避対象を回避するときの第1リスクポテンシャルの変化量を抑制する第2走行経路を正確に算出することができる。プロセッサ11は、運転制御されたときの自車両OV1と、そのときの回避対象との相対距離及び相対速度により、リスクポテンシャルを算出するので、本実施形態の第2リスクポテンシャルの生成・算出処理に適用できる速度域を広くすることができ、速度の選択幅が広い運転計画を立案できる。
プロセッサ11は、リスク制御地点LK2における自車両OV1の速度が目標速度となるように、自車両OV1を加速させることにより、目標とする評価値の第2リスクポテンシャルLK2を生成する。リスク制御地点LK2における速度が目標速度である場合に、リスク制御地点LK2において目標とする評価値の第2リスクポテンシャルLK2が算出される。プロセッサ11は、算出された走行経路(第2走行経路RT2)に属する各地点に速度が対応づけられた速度プロファイル121を有する。プロセッサ11は、上限速度/適用速度帯ごとに、複数の速度プロファイル121を有する。速度プロファイル121は、適用される速度に応じて予測された、各地点に到達する時刻、対象物までの距離、対象物に対するTTC及び/又はTHWを含む。プロセッサ11は、一の速度プロファイル121を選択する。プロセッサ11は、選択した速度プロファイル121を参照し、走行経路に属する各地点における自車両OV1の位置、速度、対象物との距離、対象物に対するTTC及び/又はTHWを得る。
プロセッサ11は、リスク制御地点LK2において所望の目標速度となるように自車両OV1を加速させる。自車両OV1は、リスク制御地点LK2よりも上流側で加速され、リスク制御地点LK2から回避対象である駐車車両PVが存在する位置LK1に至る過程で減速させられる。プロセッサ11は、図3Bの第2走行経路RTに沿って自車両OV1に移動させることにより、自車両OV1の進行方向を変化させずに(横位置を変化させずに/操舵をすることなく)、加速により第2リスクポテンシャルを生成し、その後、減速状態で第1リスクポテンシャルに接近させ、回避対象を回避するという運転行動を自車両OV1に実行させることができる。これにより、回避対象を追い抜く(回避する)ときに乗員が感じるリスク感(乗員が感じるリスクの高さ、以下同じ。)を緩和することができる。乗員のリスク感を低減する手法として、自車両OV1の速度を予め設定された目標速度以下に減速するという手法もあるが、本例のように、第2リスクポテンシャルを生成することにより、回避対象を追い抜く(回避する)ときに乗員が感じるリスク感を緩和するので、設定された目標速度で自車両OV1を走行させることができる。高い運転性能を発揮させつつも、乗員が許容できる(介入操作をしない)内容の運転制御を実行できる。
一例ではあるが、プロセッサ11は、自車両OV1を加速させることにより、リスク制御地点LK2に生成される第2リスクポテンシャルLK及び駐車車両PV1に設定された第1リスクポテンシャルを回避するために、リスク制御地点LK2近傍で自車両OV1を右側へ移動させる第2走行経路RT2を算出する。プロセッサ11は、第2リスクポテンシャルを算出し、第2リスクポテンシャルを目標値(TTC/THW)にするための回避対象と自車両OV1の相対位置関係の変化(TTC/THW)を算出し、この回避対象と自車両OV1の相対位置関係の変化(TTC/THW)を実現するための自車両OV1のリスク制御地点LK2における目標速度を算出し、リスク制御地点LK2において目標速度に到達するための加速度を算出する。この計算は、解を得るまで又は解を得ることができないという結論を得るまで繰り返し行われる。
続いて、自車両OV1が走行するレーンの路幅方向に沿う横位置を制御することにより第2リスクポテンシャルを生成する手法を説明する。
プロセッサ11は、リスク制御地点LK2において、自車両OV1が走行するレーン幅に沿う横位置が目標横位置となるように、自車両OV1を操舵させることにより、第2リスクポテンシャルを生成する。自車両OV1が走行するレーンは、ナビゲーション装置220が地図情報222及び道路情報223を参照して判断する。レーン幅は、レーンの延在方向に沿って略垂直の方向である。直線形状のレーンを自車両OV1が直進しているとき、レーン幅に沿う方向は、自車両OV1の車幅方向に一致する。
図3Bに示す例では、レーン幅に沿う横位置とは、図中Y方向に沿うY座標値である。同図に示す例では、リスク制御地点LK2における第1走行経路RT1の横位置Y1と、リスク制御地点LK2における第2走行経路RT2の横位置Y2は異なる。リスク制御地点LK2における第2走行経路RT2の位置(LK2,Y2)と、リスク制御地点LK2における第1走行経路RT1の位置(LK2,Y1)とは異なる。第2走行経路RT2のように、自車両OV1の進行方向に沿う縦位置(図中X方向に沿う位置)であるリスク制御地点LK2において、自車両OV1の横位置(図中Y方向に沿う位置)がY2であることにより、第2リスクポテンシャルLK2が生成される。第2走行経路RT2の位置(LK2,Y2)と駐車車両PVとの距離は、第2走行経路RT1の位置(LK2,Y1)と駐車車両PVとの距離よりも短く、相対的にリスクポテンシャルが高い状況を生成することができる。
プロセッサ11は、リスク制御地点LK2まで自車両OV1の操舵を禁止して、自車両OV1を直進させることにより、リスク制御地点LK2に第2リスクポテンシャルLK2を生成する。プロセッサ11は、第2リスクポテンシャルLK2及び駐車車両PV1に設定された第1リスクポテンシャルLK1を回避させる、リスク制御地点LK2の近傍で自車両OV1を右側へ移動させる第2走行経路RT2を算出する。プロセッサ11は、生成される第2リスクポテンシャルLK2を算出し、第2リスクポテンシャルLK2を目標値(TTC/THW)にするための回避対象と自車両OV1の相対位置関係の変化(TTC/THW)を算出し、この回避対象と自車両OV1の相対位置関係の変化(TTC/THW)を実現するための自車両OV1の横位置を算出する。この計算は、解を得るまで又は解を得ることができないという結論を得るまで繰り返し行われる。
自車両OV1の前方に回避対象が検出された場合には、自車両OV1は回避対象を回避するために横位置の変更をする必要がある。横位置の変更(操舵制御)を実施すること、横位置の変更(操舵制御)を実施するタイミングを制御することにより、第2リスクポテンシャルをリスク制御地点LK2に生成することができる。このように、必要な横位置の変更(操舵制御)を用いて第2リスクポテンシャルを生成し、自車両OV1の目標速度を維持した走行を実行しつつ、乗員の不安感を低減することができる。
横位置の制御とともに、リスク制御地点LK2を通過するときの自車両OV1の車速を高くすることにより、第2リスクポテンシャルLK2を生成する手法を併せて行ってもよい。車速の制御と横位置の制御により第2リスクポテンシャルを生成する場合には、自車両OV1がリスク制御地点LK2へ到達する時間を短縮することができる。車両の高い運転性能を発揮させつつ、乗員が受容できるリスクの範囲内で、回避対象を回避する運転制御を実行できる。
自車両OV1の横位置の制御による第2リスクポテンシャルの生成処理は、2段階の操舵により実現してもよい。
プロセッサ11は、リスク制御地点LK2の上流側に予備操舵地点ST1を設定し、予備操舵地点ST1において、回避対象から自車両を離隔させる方向に自車両OV1を操舵させた後に、自車両OV1を直進させてリスク制御地点LK2へ接近させる。リスク制御地点LK2では第2リスクポテンシャルを回避し、さらに第1リスクポテンシャル(回避対象)を回避する。
回避対象を回避するための自車両OV1の横位置の変化を二段階に分け、回避対象を回避するために必要な横位置の移動量のうちの一部について、リスク制御地点LK2よりも上流側の予備操舵地点ST1において前もって行い、その後に、第2リスクポテンシャルが算出されたリスク制御地点LK2及び第1リスクポテンシャルが算出された地点において必要な移動量だけ横位置を移動させる。
このように、リスク制御地点LK2よりも上流側の予備操舵地点ST1において、予備的に横位置を変更することにより、横位置の変更を乗員に予告することができる。特に、自車両OV1が横幅の大きい大型車両の後方を走行する場合には、乗員の前方確認が困難となり、進行方向の下流側において遭遇する回避対象の存在などを予知することができない場合がある。このような場合に、予備的に横位置を移動することで、第1リスクポテンシャルに対する回避行動に対する乗員の予見性を高めることができる。予め自車両OV1の挙動の方向が分かることにより、回避行動に対する乗員のリスク感を低減させることができる。認知(検出)能力、判断速度、判断に基づく運転制御の迅速性などにおいて運転性能が人間よりも高い運転制御が実行される場合であっても、高い運転性能が実行されたときの高いリスク感を、乗員が許容できる値に低減させることができる。
また、自車両OV1の横位置の制御を伴う運転制御による第2リスクポテンシャルの生成処理は、早期に、リスク制御地点LK2よりも上流側の地点において開始されてもよい。
プロセッサ11は、リスク制御地点LK2の上流側に操舵開始地点ST2を設定し、操舵開始地点ST2において、回避対象から自車両OV1を離隔させる操舵を開始して回避対象を回避させるように自車両OV1を移動させる。操舵開始地点ST2において、回避対象から自車両OV1を離隔させる方向に自車両OV1を操舵させ、操舵状態を維持しながらリスク制御地点LK2へ接近させる。リスク制御地点LK2では第2リスクポテンシャルを回避し、さらに第1リスクポテンシャル(回避対象)を回避する。
回避対象を回避するための自車両OV1の横位置の変化量を小さくし、上流側の操舵開始地点ST2から徐々に回避対象から横方向に離隔を開始し、第2リスクポテンシャルが算出されたリスク制御地点LK2及び第1リスクポテンシャルが算出された地点において必要な移動量だけ横位置を移動させる。
このように、リスク制御地点LK2よりも上流側において、早い段階で横位置の変更を開始することにより、第2リスクポテンシャルが生成されるリスク制御地点LK2においては、回避対象物を回避する運転行動が事前に予測できるため、回避対象物を回避するための横位置の変更が実行されることを乗員に早期に知らせることができる。早期に横位置の移動を開始することで、第1リスクポテンシャルに対する回避行動に対する乗員の予見性を高めることができる。第2リスクポテンシャルに対する運転行動及び第1リスクポテンシャルに対する運転行動における自車両OV1の挙動の理由を乗員が理解するので、回避行動に対する乗員のリスク感を低減させることができる。特に、自車両OV1の目標速度が高く設定されている場合には、操舵変化量が大きくなる傾向があり、乗員の不安感が増大する傾向がある。認知(検出)能力、判断速度、判断に基づく運転制御の迅速性などにおいて運転性能が人間よりも高い運転制御が実行される場合であっても、高い運転性能が実行されたときの高いリスク感を、乗員が許容できる値に低減させることができる。
さらに、上述した、自車両OV1の横位置の制御による第2リスクポテンシャルの生成処理の前に、回避対象を最終的に回避する方向とは逆の方向に、自車両OV1を移動させてもよい。
回避対象の存在状態によっては、回避対象を回避する方向に偏った経路を自車両が移動させられることがある。例えば、駐車車両PVが左右同じ側の路肩に離散的に存在する場合(連なることなく、距離をおいて複数台の駐車車両PVが存在する)において、各駐車車両PVの第1リスクポテンシャルの上流側に第2リスクポテンシャルが生成されると、駐車車両PVが離散的に存在するにもかかわらず、常に駐車車両PVから離隔した反対側の路肩に近寄った横位置で自車両OV1を走行させる運転制御が実行されることがある。乗員は、駐車車両PVが離散的に存在することを視認するため、仮想のリスクポテンシャルを生成して乗員の不安感を低減させようとする運転制御を不自然に感じることがある。不自然と感じる感覚は、不安に結びつく可能性があるので、本実施形態では、第2リスクポテンシャルの生成処理の前に、自車両OV1の横位置を回避対象に接近させるという運転制御を行う。
具体的に、プロセッサ11は、リスク制御地点LK2の上流側に回避制限地点を設定し、回避制限地点において、自車両OV1が走行するレーン幅に沿う存在領域の少なくとも一部(車幅方向の領域)が、回避対象である駐車車両PVのレーン幅に沿う存在領域(駐車車両の車幅方向の領域)と重複するように自車両OV1を移動させる。そして、プロセッサ11は、自車両OV1が回避制限地点を通過した後に、リスク制御地点LK2において自車両OV1が走行するレーン幅に沿う横位置が目標横位置となるように、自車両OV1を操舵させて、第2リスクポテンシャルを生成する処理を行う。
このように、第2リスクポテンシャルを生成する前、リスク制御地点LK2よりも上流側において、いったん自車両OV1の横位置を駐車車両PVに接近させる運転制御を行うことにより、回避対象が離散的に存在するのに、常に回避し続けるという運転制御が行われることを抑制できる。
本処理によれば、運転性能が人間よりも高い運転制御と人間が感じるリスク感とのギャップを埋めるために、第2リスクポテンシャルの生成処理を導入した場合に生じる、離散的に存在する回避対象に対して常に離隔した横位置を走行するという別の課題を解決することができる。レーン幅が広く路肩に駐車車両が離散的に存在するような場合に、第2リスクポテンシャル及び第1リスクポテンシャルを回避するために、常に回避対象から離隔した右側又は左側を走行するという(人間から見ると)不自然な運転制御が実行されることを抑制することができる。回避対象の存在パターンに影響されることなく、回避対象の個々の存在を考慮した適切な横位置を自車両OV1に運転させることができる。
続いて、本実施形態の運転制御システム1の処理手順を、図4のフローチャートに基づいて説明する。なお、各ステップでの処理の概要は、上述したとおりである。ここでは処理の流れを中心に説明する。
まず、ステップS1において、プロセッサ11は、制御対象となる車両の車両情報を取得する。車両情報は、現在位置、進行方向、速度、加速度、制動量、操舵量、操舵速度、操舵加速度、などの車両の運転に関する情報と、車両の諸元情報、車両の性能情報を含む。車両情報は車載装置200から取得する。車両情報は、所定周期で繰り返し取得される。
同ステップS1において、プロセッサ11は、自車両周囲の対象物に関する検出情報を取得する。対象物の存否、対象物の位置、対象物の移動方向、対象物の速度、対象物の移動加速度、対象物の属性を含む。検出情報は、検出装置230、センサ260、ナビゲーション装置220を含む車載装置200から取得できる。検出情報は、自車両OV1と対象物との位置関係、遭遇時刻、遭遇する方向、TTC、THWなどを含む。自車両OV1が対象物と、何時、何処で(位置座標)、どのように遭遇するか(交差する、すれ違う、追い越す、追い越される、回避する、回避されるなどを含む)を示す情報である。検出情報は、所定周期で繰り返し取得される。
ステップS2において、プロセッサ11は、対象物を検出する。プロセッサ11は、検出情報に基づいて、自車両OV1を基準とする対象物の位置、対象物の移動方向、対象物の速度、対象物の移動加速度、対象物の属性を検出する。
ステップS3において、プロセッサ11は、運転制御の基本情報を取得する。基本情報は自車両OV1を運転制御するために参照される前提情報である。具体的に、基本情報は、走行目標速度を含む。走行目標速度は、走行する道路/レーンに応じて異なるので、プロセッサ11は、位置検出装置221により検出された自車両OV1の現在位置が属する道路/レーンを特定し、道路/レーンの識別情報に対応づけられた走行目標速度を取得する。
ステップS4において、プロセッサ11は、第1走行経路を算出する。第1走行経路は、現在位置から目的地に至る経路/リンクである。第1走行経路は、所定周期で、新たに得られた情報を用いて再計算される。例えば、リスクポテンシャルが算出された場合には、リスクポテンシャルが低い地点を結んで目的地に至る経路が第1走行経路となる。運転制御装置100は、この経路に従い自車両OV1を移動させる自律走行制御を行う。
ステップS5において、プロセッサ11は、ステップS1で取得した検出方法に基づいて、仮に算出された第1走行経路を自車両OV1が走行した場合に回避する必要がある回避対象を検出する。回避対象の検出処理は、新たに得られた情報を用いて所定周期で実行される。
ステップS6において、プロセッサ11は、各回避対象の第1リスクポテンシャルを算出する。プロセッサ11は、検出された対象物ごとにその対象物のリスクポテンシャルを算出する。リスクポテンシャルは、自車両OV1に対する距離、距離の変化に基づくリスクの高さである。リスクポテンシャルは、自車両OV1に対する各対象物TTC/THWであってもよいし、自車両OV1に対する各対象物TTC/THWを用いた評価値であってもよい。プロセッサ11は、第1リスクポテンシャルは、相対位置関係及びその変化量に応じて設定された自車領域と対象領域とが重畳する面積の大きさに応じて算出される。
ステップS7において、プロセッサ11は、各回避対象について算出された第1リスクポテンシャルを、遭遇する順序に従って並べる。各第1リスクポテンシャルは、第1走行経路に属する地点に対応づけて少なくとも一時的に記憶される。
ステップS8において、プロセッサ11は、算出された第1リスクポテンシャルについて、自車両OV1が回避対象に接近したときの条件(新たな障害物の回避、速度等)を前提として、再度シミュレーションし、第1リスクポテンシャルを算出する。
ステップS9において、プロセッサ11は、回避対象に対する第1リスクポテンシャルの変化量を算出する。
ステップS10において、プロセッサ11は、第1リスクポテンシャルの変化量が所定値以上であるか否かを判断する。この変化量の閾値は、予め設定することができる。閾値は、通常の運転行動において乗員が知覚できるリスクポテンシャルの上限値と現在のリスクポテンシャルとの差分を算出し、先に算出されたリスクポテンシャルの変化量が継続された場合に、乗員が知覚できるリスクポテンシャルの上限値を超えるまでの時間としてもよい。この時間は、乗員が、このままの運転状態が継続された場合には対処行動が必要(介入操作が必要)なリスク領域になるかもしれないという不安感の強さに対応する。リスクポテンシャルの変化量が大きいと、乗員は短時間で操作介入をしなければならないほどの不安を感じると評価することができ、リスクポテンシャルの変化量が小さいと、乗員は操作介入をする必要を感じないと評価することができる。この閾値(時間)の適正値は、乗員の不安の感じ方(自動運転の経験の多さ)、乗員の運転のスキル、車両の運転性能、運転制御装置の運転制御性能に応じても異なるので、実験的に設定することが好ましい。
ステップS10において、プロセッサ11は、第1リスクポテンシャルの変化量が所定閾値以上であると判断された場合には、ステップS11に進み、第2走行経路を算出する。第1リスクポテンシャルの変化量が所定閾値未満であると判断された場合には、第2走行経路を算出することなくステップS12に進む。ステップS12では、自車両OV1が走行するべき走行経路を算出する。
ステップS11において、プロセッサ11は、第2走行経路を算出する。この処理のサブルーチンを、図5及び図6のフローチャートに基づいて説明する。図5は、自車両OV1の車速をコントロールすることにより第2リスクポテンシャルを生成する運転制御を含む制御手順に従う処理を示し、図6は、自車両OV1の横位置(操舵)をコントロールすることにより第2リスクポテンシャルを生成する運転制御を含む制御手順に従う処理を示す。
図5のステップS101において、プロセッサ11は、第2走行経路を生成するために参照される運転制御の基本情報を取得する。基本情報は、上限速度を含む。基本情報は、乗員がリスクを知覚し、通常の運転で許容できるリスクの閾値(図3Bの下図のM2)を含む。基本情報は、第1リスクポテンシャルの変化量の所定閾値を含む。
ステップS102において、プロセッサ11は、自車両OV1の速度制御によって生成される第2リスクポテンシャルを算出する。第2リスクポテンシャルが生成される地点は、回避対象よりも上流側(自車両OV1に近い位置)のリスク制御地点LK2である。プロセッサ11は、自車両OV1の速度を高くしてリスク制御地点LK2へ移動させることにより、自車両OV1の回避対象に対するリスクポテンシャルを大きくさせることで、リスク制御地点LK2に回避すべき第2リスクポテンシャルを生成させる。
ステップS103において、プロセッサ11は、第2リスクポテンシャルを考慮した経路探索を実行する。第2リスクポテンシャルが設定された領域を回避した第2走行経路が算出される。
ステップS104において、プロセッサ11は、速度プロファイル121を参照する。速度プロファイルは、走行経路に属する地点ごとに速度が定義された情報である。速度プロファイル121の参照に際しては、各地点に対応づけられた操舵方向、操舵量を含む経路プロファイル122を参照することができる。最終的には、速度プロファイル121と経路プロファイル122を参照することにより、走行経路に属する各地点における速度と操舵量/操舵速度を得ることができる。
ステップS105において、プロセッサ11は、上限速度などの諸条件を満たす運転計画に基づいて自車両OV1が走行できる第2走行経路が算出できたか否かを判断する。走行可能な第2走行経路が算出できた場合には、ステップS106に進み、第2リスクポテンシャルを回避する回避経路を含む第2走行経路に基づく運転計画を立案する。他方、走行可能な第2走行経路が算出できなかった場合には、ステップS107に進み、第2リスクポテンシャルを回避する経路を含まない第1走行経路に基づく運転計画を立案する。この場合は、第1リスクポテンシャルを通過時の自車両OV1の車速を低くした運転計画を立案することにより、第1リスクポテンシャルを低減させ乗員が不安に感じないようにする。
図6のステップS111において、プロセッサ11は、第2走行経路を生成するために参照される運転制御の基本情報を取得する。基本情報は、上限操舵量/上限操舵速度を含む。基本情報は、乗員がリスクを知覚し、通常の運転で許容できるリスクの閾値(図3Bの下図のM2)を含む。基本情報は、第1リスクポテンシャルの変化量の所定閾値を含む。
ステップS112において、プロセッサ11は、自車両OV1の操舵制御によって生成される第2リスクポテンシャルを算出(設定)する。第2リスクポテンシャルが生成される地点は、回避対象よりも上流側(自車両OV1に近い位置)のリスク制御地点LK2である。プロセッサ11は、自車両OV1の横位置を制御することにより、リスク制御地点LK2における自車両OV1に対する回避対象のリスクポテンシャルを大きくさせることで、リスク制御地点LK2に自車両OV1が回避すべき第2リスクポテンシャルを生成させる。
ステップS113において、プロセッサ11は、算出された第2リスクポテンシャルの存在を考慮した経路探索を実行する。第2リスクポテンシャルが設定(算出)された領域を回避した第2走行経路が算出される。
ステップS114において、プロセッサ11は、経路プロファイル122を参照する。経路プロファイルは、走行経路に属する地点ごとに操舵方向、操舵量が定義された情報である。経路プロファイル122の参照に際しては、各地点に速度を含むが速度プロファイル121を参照することができる。最終的には、速度プロファイル121と経路プロファイル122を参照することにより、走行経路に属する各地点における速度と操舵量/操舵速度を得ることができる。
ステップS115において、プロセッサ11は、上限速度などの諸条件を満たす運転計画に基づいて自車両OV1が走行できる第2走行経路が算出できたか否かを判断する。走行可能な第2走行経路が算出できた場合には、ステップS116に進み、第2リスクポテンシャルを回避する回避経路を含む第2走行経路に基づく運転計画を立案する。他方、走行可能な第2走行経路が算出できなかった場合には、ステップS117に進み、第2リスクポテンシャルを回避する経路を含まない第1走行経路に基づく運転計画を立案する。この場合は、第1リスクポテンシャルを通過時の自車両OV1の車速を低くした運転計画を立案することにより、第1リスクポテンシャルを低減させ乗員が不安に感じないようにする。
図4のフローチャートに戻り、ステップS12において、プロセッサ11は、走行経路を決定する。この決定は、図5のステップS106若しくはステップS107の決定、又は図6のステップS116若しくはステップS117の決定に従う。第2走行経路が算出された場合には、第2走行経路を運転制御の基準となる走行経路として決定する。第2走行経路が算出されなかった場合には、第1走行経路を運転制御の基準となる走行経路として決定する。
ステップS13において、プロセッサ11は、走行経路上の各地点の目標速度を設定する。経路に応じた操舵量と目標経路が設定される。さらに、ステップS14に進み、プロセッサ11は、目的地に至る走行経路を自車両OV1に移動させるための運転計画を立案する。
続くステップS14において、立案された運転計画に基づいて、運転制御命令を生成する。プロセッサ11は、自車両OV1の実際のX座標値(X軸は車幅方向)と、現在位置に対応する目標X座標値と、フィードバックゲインとに基づいて、目標X座標値の上を自車両OV1に移動させるために必要な操舵角や操舵角速度等に関する目標制御値を算出する。
ステップS15において、プロセッサ11は、運転制御命令を出力する。具体的に、プロセッサ11は、目標制御値を車載装置200に出力する。車両V1は、目標横位置により定義される目標経路上を走行する。プロセッサ11は、経路に沿う目標X座標値(X軸は車両の進行方向)を算出する。プロセッサ11は、車両V1の現在のX座標値、現在位置における車速及び加減速と、現在のX座標値に対応する目標X座標値、その目標X座標値における車速及び加減速との比較結果に基づいて、X座標値に関するフィードバックゲインを算出する。プロセッサ11は、目標X座標値に応じた車速および加減速度と、X座標値のフィードバックゲインとに基づいて、X座標値に関する目標制御値を算出する。目標制御値とは、目標X座標値に応じた加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては電動モータ動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作についての制御値である。
ステップS16において、プロセッサ11は、車両コントローラ210に運転制御命令を実行させる。車両コントローラ210は、操舵制御及び駆動制御を実行し、自車両OV1に目標X座標値及び目標Y座標値によって定義される目標経路上を走行させる。目標X座標値を取得する度に処理を繰り返し、座標値が指定された制御値を車載装置200に実行させる。車両コントローラ210は、目的地に至るまで、プロセッサ11の指令に従い運転制御命令を実行する。ステップS17において目的地への到着を監視し、到着するまで、ステップS1以降の処理を実行する。
図7A及び図7Bに基づいて、本実施形態の走行経路の算出処理の第1変形例を説明する。本処理例は、横位置を変更する運転制御により第2リスクポテンシャルを生成処理の一例である。本処理例において、プロセッサ11は、2段階で自車両OV1の横位置を変更し、第2リスクポテンシャルを回避した後に、第1リスクポテンシャルを回避するように自車両OV1を制御する。
図7AのステップS121において、プロセッサ11は、第2走行経路を生成するために参照される運転制御の基本情報を取得する。基本情報は、上限操舵量/上限操舵速度を含む。基本情報は、乗員がリスクを知覚し、通常の運転で許容できるリスクの閾値(図3Bの下図のM2)を含む。基本情報は、第1リスクポテンシャルの変化量の所定閾値を含む。
ステップS122において、プロセッサ11は、自車両OV1の操舵制御によって生成される第2リスクポテンシャルを算出(設定)する。第2リスクポテンシャルが生成される地点は、回避対象よりも上流側(自車両OV1に近い位置)のリスク制御地点LK2である。プロセッサ11は、自車両OV1の横位置を制御することにより、リスク制御地点LK2における自車両OV1に対する回避対象のリスクポテンシャルを大きくさせることで、リスク制御地点LK2に自車両OV1が回避するべき第2リスクポテンシャルを生成させる。
ステップS123において、プロセッサ11は、経路プロファイル122を参照する。経路プロファイルは、走行経路に属する地点ごとに操舵方向、操舵量が定義された情報である。経路プロファイル122の参照に際しては、各地点に速度を含むが速度プロファイル121を参照することができる。最終的には、速度プロファイル121と経路プロファイル122を参照することにより、走行経路に属する各地点における速度と操舵量/操舵速度を得ることができる。
ステップS124において、プロセッサ11は、リスク制御地点LK2における一回の操舵により第2リスクポテンシャルを回避する第2走行経路の経路探索を実行する。リスク制御地点LK2における操舵により第2リスクポテンシャルが生成される領域を回避した第2走行経路が算出される。
ステップS125において、プロセッサ11は、上限速度などの諸条件を満たす運転計画に基づいて自車両OV1が走行できる第2走行経路が算出できたか否かを判断する。第2走行経路が算出できた場合には、ステップS130に進み、リスク制御地点LK2を含む第2走行経路に基づいて、リスク制御地点LK2における一回の操舵を含み、第2リスクポテンシャルを回避する運転計画を算出する。他方、一回の操舵で第2走行経路が算出できないと判断された場合には、ステップS126に進み、二回の操舵で第2リスクポテンシャルを回避する第2走行経路が算出できるか否かを判断する処理に遷移する。一回の操舵で第2リスクポテンシャルを回避する第2走行経路が算出できるかどうかを検討することなく、二回の操舵で第2リスクポテンシャルを回避する第2走行経路が算出できるかどうかを検討する処理に移行してもよい。つまり、ステップS123から、ステップS124及びステップS125をスキップしてステップS126に移行してもよい。
ステップS126において、プロセッサ11は、2回の操舵を含み、第2リスクポテンシャルLK2を回避する第2走行経路を探索する。
図7Bに示すように、プロセッサ11は、リスク制御地点LK2の上流側に予備操舵地点ST1を設定し、予備操舵地点ST1において、回避対象から自車両OV1を離隔させる方向(右側)に、自車両OV1を操舵させた後に、地点ST1´から自車両OV1をレーンに沿って直進させて(進行方向を変更させないで)リスク制御地点LK2へ接近させる運転制御により、第2リスクポテンシャルLK2を生成する。プロセッサ11は、リスク制御地点LK2において、第2リスクポテンシャルLK2を回避させる操舵を実行させる。予備操舵地点ST1における操舵と、地点ST1´からリスク制御地点LK2に至る直進と、リスク制御地点LK2における操舵によって第2リスクポテンシャルを回避することになる。
ステップS127において、プロセッサ11は、図7Bに示すような第2走行経路RTが算出できた場合には、ステップS129へ進み、第2走行経路RTに沿って、予備操舵地点ST1における操舵と、リスク制御地点LK2における操舵との2回の操作を含む運転計画を算出する。他方、ステップS127において、第2走行経路RTが算出できなかった場合には、ステップS128へ進み、第2リスクポテンシャルを回避する経路を含まない第1走行経路に基づく運転計画を立案する。この場合は、第1リスクポテンシャルを通過時の自車両OV1の車速を低くした運転計画を立案することにより、第1リスクポテンシャルを低減させ乗員が不安に感じないようにする。
図7Bに示すように、リスク制御地点よりも上流側の予備操舵地点ST1において、予備的に横位置を変更することにより、横位置の変更を乗員に予告することができる。特に、自車両OV1が横幅の大きい大型車両QVの後方を走行する場合には、乗員の前方確認が困難となる。このような場合に、予備的に横位置を移動することで、第1リスクポテンシャルに対する回避行動に対する乗員の予見性を高めることができる。予め自車両OV1の挙動の方向性が分かることにより、回避行動に対する乗員のリスク感を低減させることができる。
図8A及び図8Bに基づいて、本実施形態の走行経路の算出処理の第2変形例を説明する。本処理例は、横位置を変更する運転制御により第2リスクポテンシャルを生成する処理の一例である。本処理例において、プロセッサ11は、リスク制御地点LK2よりも上流の操舵開始点ST2において操舵を開始し、所定の操舵量で横位置を変更することを継続し、第2リスクポテンシャルを回避した後に、第1リスクポテンシャルを回避するように自車両OV1を制御する。自車両OV1は、少量の操舵量で少量の横位置の変更することを継続的に実行し、第2リスクポテンシャル及び第1リスクポテンシャルを回避するという運転計画となる。
図8AのステップS131において、プロセッサ11は、第2走行経路を生成するために参照される運転制御の基本情報を取得する。基本情報は、上限操舵量/上限操舵速度を含む。基本情報は、乗員がリスクを知覚し、通常の運転で許容できるリスクの閾値(図3Bの下図のM2)を含む。基本情報は、第1リスクポテンシャルの変化量の所定閾値を含む。
ステップS132において、プロセッサ11は、自車両OV1の操舵制御によって生成される第2リスクポテンシャルを算出(設定)する。第2リスクポテンシャルが生成される地点は、回避対象よりも上流側(自車両OV1に近い位置)のリスク制御地点LK2である。プロセッサ11は、自車両OV1の横位置を制御することにより、リスク制御地点LK2における自車両OV1に対する回避対象のリスクポテンシャルを大きくさせることで、リスク制御地点LK2に回避すべき第2リスクポテンシャルを生成させる。
ステップS133において、プロセッサ11は、リスク制御地点LK2の上流側に操舵開始地点ST2を設定し、操舵開始地点ST2において、回避対象から自車両OV1を離隔させる操舵を開始して回避対象を回避させるように自車両OV1を移動させることにより、前記第2リスクポテンシャルを生成する。操舵開始地点ST2において操舵を開始し、リスク制御地点LK2に至るまで操舵が継続されることを前提とする点以外は、図6に示す処理と基本的に共通する。
ステップS134において、プロセッサ11は、経路プロファイル122を参照する。経路プロファイルは、走行経路に属する地点ごとに操舵方向、操舵量が定義された情報である。経路プロファイル122の参照に際しては、各地点に速度を含むが速度プロファイル121を参照することができる。最終的には、速度プロファイル121と経路プロファイル122を参照することにより、走行経路に属する各地点における速度と操舵量/操舵速度を得ることができる。
ステップS135において、プロセッサ11は、操舵開始地点ST2から開始された操舵操作を行いつつ、リスク制御地点LK2において第2リスクポテンシャルを回避する第2走行経路の経路探索を実行する。操舵開始地点ST2からリスク制御地点LK2における操舵により第2リスクポテンシャルが設定された領域を回避し、さらに、第1リスクポテンシャルが設定された領域を回避する第2走行経路が算出される。
ステップS136において、プロセッサ11は、上限速度などの諸条件を満たす運転計画に基づいて自車両OV1が走行できる第2走行経路が算出できたか否かを判断する。第2走行経路が算出できた場合には、ステップS137に進み、操舵開始地点ST2とリスク制御地点LK2を含む第2走行経路に基づいて、第2リスクポテンシャルLK2を回避する運転計画を算出する。他方、第2走行経路が算出できないと判断された場合には、ステップS138に進み、第1走行経路に基づく運転計画を算出する。この場合は、第1リスクポテンシャルを通過時の自車両OV1の車速を低くした運転計画を立案することにより、第1リスクポテンシャルを低減させ乗員が不安に感じないようにする。
図8Bに示すように、プロセッサ11は、リスク制御地点LK2の上流側に操舵開始地点ST2を設定し、操舵開始地点ST2において、回避対象から自車両OV1を離隔させる方向(右側)に、自車両OV1を操舵させる操作を開始させ、リスク制御地点LK2において生成された第2リスクポテンシャルLK2を回避させる操舵を実行させる。プロセッサ11は、上流側の操舵開始点ST2において開始され、リスク制御地点LK2を経て、回避対象の第1リスクポテンシャルLK1に至る第2走行経路に沿った運転計画を算出し、自車両OV1に第1及び第2リスクポテンシャルを回避させる。
リスク制御地点LK2よりも上流側において、早い段階で横位置の変更を開始することにより、第2リスクポテンシャルが生成されるリスク制御地点LK2においては、すでに、乗員は回避対象物を回避する運転行動を予測できる。このため、回避対象物を回避するための横位置の変更が実行されることを乗員に早期に知らせることができる。
図8Bの下図に示すように、本例の第2走行経路に対するリスクポテンシャルの変化量は緩やかであり、また、回避対象の横をすり抜けるときにおいても、リスクポテンシャルが低下する傾向を示すので、乗員に与える不安を低減させることができる。
図9A及び図9Bに基づいて、回避制限地点を設けた場合の第2走行経路の算出手法を説明する。本処理例は、第2リスクポテンシャルの算出(設定)により、回避対象物から離隔した右側又は左側の偏った位置を自車両OV1が走行し続けることを抑制するために、回避制限地点を設けた処理例である。回避制限地点は、自車両OV1に走行させる地点であるため、第2走行経路に含ませて運転計画を算出することができる。本処理例において、プロセッサ11は、リスク制御地点LK2よりも上流の回避制限地点STを設定し、回避制限地点STにおいては、回避対象と縦位置が重なるように(縦列となるように)自車両OV1を制御する。回避対象の存在に応じて、自然な横位置を自車両OV1に走行させる運転計画を算出できる。
図9AのステップS141において、プロセッサ11は、第2走行経路を生成するために参照される運転制御の基本情報を取得する。基本情報は、上限速度を含む。基本情報は、上限操舵量/上限操舵速度を含む。基本情報は、乗員がリスクを知覚し、通常の運転で許容できるリスクの閾値(図3Bの下図のM2)を含む。基本情報は、第1リスクポテンシャルの変化量の所定閾値を含む。
ステップS142において、プロセッサ11は、自車両OV1の速度制御又は操舵制御を含む運転制御によって生成される第2リスクポテンシャルを算出する。第2リスクポテンシャルが生成される地点は、回避対象よりも上流側(自車両OV1に近い位置)のリスク制御地点LK2である。プロセッサ11は、自車両OV1の速度又は横位置を制御することにより、リスク制御地点LK2における自車両OV1に対する回避対象のリスクポテンシャルを大きくさせることで、リスク制御地点LK2に回避すべき第2リスクポテンシャルを生成させる。
ステップS143において、プロセッサ11は、リスク制御地点LK2の上流側に回避制限地点を設定する。
ステップS144において、プロセッサ11は、図9Bに示すように、回避制限地点SPにおいて、自車両OV1が走行するレーン幅に沿う存在領域の少なくとも一部が、回避対象のレーン幅に沿う存在領域と重複するように自車両OV1を移動させる。つまり、自車両OV1の一部が、回避対象にレーン幅方向に沿って重畳するように、縦列の位置を走行させる。同図に示すように、プロセッサ11は、自車両OV1の横位置(図中Y方向)の一部が、回避対象と共通の横位置(図中Y方向)の領域に属する状態で、自車両OV1を走行させる。この横位置の制御の後、プロセッサ11は、第2リスクポテンシャルを生成する。言い換えると、第2リスクポテンシャルを生成する前に、回避制限地点SPにおいて自車両OV1の幅領域の少なくとも一部が、回避対象の幅領域と重なるように、自車両OV1を位置させるという制御を実行する。この制御内容を含ませる点以外は、図5、図6に示す処理と基本的に共通する。もちろん、本処理を行うにあたり、回避制限地点SPを含む領域には、回避対象が存在せず、自車両OV1が存在できることが前提となることは言うまでもない。
ステップS145において、プロセッサ11は、速度プロファイル121及び/又は経路プロファイル122を参照する。速度プロファイルは、走行経路に属する地点ごとに速度が定義された情報である。速度プロファイル121の参照に際しては、各地点に対応づけられた操舵方向、操舵量を含む経路プロファイル122を参照することができる。経路プロファイル122は、走行経路に属する地点ごとに操舵方向、操舵量が定義された情報である。経路プロファイル122の参照に際しては、各地点に速度を含むが速度プロファイル121を参照することができる。最終的には、速度プロファイル121と経路プロファイル122を参照することにより、走行経路に属する各地点における速度と操舵量/操舵速度を得ることができる。
ステップS146において、プロセッサ11は、回避制限地点SPにおける横位置の制御を行いつつ、リスク制御地点LK2において第2リスクポテンシャルを回避する経路を含む第2走行経路の経路探索を実行する。回避制限地点SPを経由し、リスク制御地点LK2における第2リスクポテンシャルが設定された領域を回避し、さらに、第1リスクポテンシャルが設定された領域を回避する第2走行経路が算出される。
ステップS147において、プロセッサ11は、上限速度などの諸条件を満たす運転計画に基づいて自車両OV1が走行できる第2走行経路が算出できたか否かを判断する。第2走行経路が算出できた場合には、ステップS148に進み、回避制限地点SPとリスク制御地点LK2を含む第2走行経路に基づいて、第2リスクポテンシャルを回避する運転計画を算出する。他方、第2走行経路が算出できないと判断された場合には、ステップS149に進み、第1走行経路に基づく運転計画を算出する。この場合は、第1リスクポテンシャルを通過時の自車両OV1の車速を低くした運転計画を立案することにより、第1リスクポテンシャルを低減させ乗員が不安に感じないようにする。
本処理によれば、第2リスクポテンシャルを生成する前に、リスク制御地点LK2よりも上流側の回避制限地点SPにおいて、いったん自車両OV1を駐車車両PVの縦列位置を通過させることにより、駐車車両PVが離散的に存在するのに、常に駐車車両PVを回避し、右側又は左側に偏った位置を走行するという不自然な運転制御が行われることを抑制できる。具体的に、レーン幅が広く路肩に駐車車両が離散的に存在するような場合に、上流側の第2リスクポテンシャル及び下流側の第1リスクポテンシャルを回避するために、常に回避対象から離隔した右側又は左側を走行するという、乗員の感覚では不自然な運転制御が実行されることを抑制することができる。回避対象の存在パターンに影響されることなく、回避対象の個々の存在を考慮した適切な横位置を自車両OV1に運転させることができる。
本発明の実施形態の運転制御装置100は、以上のように構成され動作するので、以下の効果を奏する。
[1]本実施形態の運転制御方法は、検出情報に基づいて検出された回避対象に関する第1リスクポテンシャルに基づいて第1走行経路を算出し、回避対象よりも自車両OV1に近い上流側に設定したリスク制御地点LK2に、自車両OV1に所定の運転制御を実行させることにより生成される第2リスクポテンシャルを算出し、第1リスクポテンシャルと第2リスクポテンシャルとに基づいて、第1走行経路とは異なる第2走行経路を算出し、第2走行経路を自車両OV1に走行させることを特徴とする。
本実施形態の運転制御方法によれば、回避対象よりも上流側の位置に設定したリスク制御地点LK2に、実存する回避対象に起因する第1リスクポテンシャルとは異なり、自車両OV1に所定の運転制御を実行させることにより生成される第2リスクポテンシャルを算出することにより、リスク予測能力に優れた人間(乗員)が感じる不安感を低減させることができ、乗員の運転介入の発生を抑制できる。
第1リスクポテンシャルとは異なり、自車両OV1に所定の運転制御を実行させることにより生成される第2リスクポテンシャルを、回避対象よりも上流側に算出することにより、回避対象の横を通過(回避)するときに急に立ち上がるリスクの程度を抑制することができる。人間(乗員)は、急に立ち上がるリスクに対して、さらにリスクが高くなることを予測する。急に立ち上がるリスクの大きさを抑制することにより、乗員が受容できる走行経路及び運転計画を算出することができる。第2リスクポテンシャルを生成することにより、安全性と移動効率の高さとを両立させた高度な運転制御に伴い高い値となるリスクポテンシャルに対しても乗員に不安を感じさせない運転制御を実現させることができる。
[2]本実施形態の運転制御方法において、第2リスクポテンシャルの値の最大値M2が、駐車車両PVを含む回避対象に関する第1リスクポテンシャルの最大値M1よりも高くなるように第2リスクポテンシャル(RT1(1))を生成する。第1リスクポテンシャルの最大値M1は、自車両OV1が駐車車両PVを含む回避対象に最も接近したときに算出される。第2リスクポテンシャルの最大値が第1リスクポテンシャルの最大値M1よりも大きい場合には、自車両OV1が回避対象に接近するにつれて、第2リスクポテンシャルが減少する。第2リスクポテンシャルの変化率αR2は、回避対象の側方の位置(第1リスクポテンシャルが立ち上がる位置)において、負の傾きを有する(図3B参照)。第2走行経路RT2を走行する自車両OV1は、リスクポテンシャルが高い状態を経てから、リスクポテンシャルが下がる状態で、回避対象(駐車車両PV)の側方を通過する。これにより、第2走行経路RT2を走行する自車両OV1に搭乗する乗員が、駐車車両PVの横を通過するときにリスクが急に立ち上がるという感覚を覚えることを抑制できる。
[3]本実施形態の運転制御方法において、第1リスクポテンシャルLK1の値の変化量αR1が所定閾値よりも高い場合に、自車両OV1に所定の運転制御を実行させることにより第2リスクポテンシャルLK2を生成する。
第2リスクポテンシャルLK2の設定処理は、第1リスクポテンシャルの値の変化量が所定値よりも高い場合に実行してもよい。第1リスクポテンシャルは実際に存在する回避対象の存在に応じて算出される。第1リスクポテンシャルの値の変化量が所定値よりも高い場合は、リスクが急に立ち上がる状況を示す。また、第1リスクポテンシャルの値の変化量が大きい場合には、乗員(人間)はさらにリスクポテンシャルが増大する可能性を予測し、不安感が大きくなる可能性が高い。このような場面を、第1リスクポテンシャルの変化量から検出し、第2リスクポテンシャルを生成及び算出して、新たな第2走行経路を算出することにより、リスクが急に立ち上がるという特徴を含まない第2走行経路を算出することができる。
[4]本実施形態の運転制御方法では、リスク制御地点LK2において所望の目標速度となるように自車両OV1を加速させる。リスク制御地点LK2において自車両OV1の速度が目標速度となるように、自車両OV1を加速させることにより、第2リスクポテンシャルLK2を生成する。プロセッサ11は、リスク制御地点LK2よりも上流側で自車両OV1を加速させ、リスク制御地点LK2から回避対象である駐車車両PVが存在する位置LK1に至る過程で減速させる。プロセッサ11は、自車両OV1の進行方向を変化させずに(横位置を変化させずに/操舵をすることなく)、自車両OV1を加速させることにより第2リスクポテンシャルを生成し、その後、減速状態で第1リスクポテンシャルに接近させ、回避対象を回避するという運転行動を自車両OV1に実行させることができる。これにより、回避対象を追い抜く(回避する)ときに乗員が感じるリスク感を緩和することができる。乗員のリスク感を低減する手法として、自車両OV1の速度を予め設定された目標速度以下に減速するという手法もあるが、本例のように、第2リスクポテンシャルを自車両の運転制御により生成することにより、回避対象を追い抜く(回避する)ときに乗員が感じるリスク感を緩和するので、設定された目標速度で自車両OV1を走行させることができる。高い運転性能を発揮させつつも、乗員が許容できる(介入操作をしない)内容の運転制御を実行できる。
[5]本実施形態の運転制御方法では、リスク制御地点LK2において自車両OV1が走行するレーン幅に沿う横位置が目標横位置となるように、自車両OV1を操舵させる運転制御により生成される第2リスクポテンシャルを算出する。自車両OV1の前方に回避対象が検出された場合には、自車両OV1は回避対象を回避するために横位置の変更をする必要がある。横位置の変更(操舵制御)を実施すること、横位置の変更(操舵制御)を実施するタイミングを制御(運転制御)することにより、第2リスクポテンシャルをリスク制御地点LK2に生成することができる。このように、必要な横位置の変更(操舵制御/運転制御)を自車両OV1に実行させることにより第2リスクポテンシャルを生成し、自車両OV1の目標速度を維持した走行を実行しつつ、乗員の不安感を低減することができる。
[6]本実施形態の運転制御方法では、リスク制御地点LK2の上流側に予備操舵地点ST1を設定し、予備操舵地点ST1において、回避対象から自車両OV1を離隔させる方向に、自車両OV1を操舵させた後に、自車両OV1を直進させてリスク制御地点LK2へ接近させる。
回避対象を回避するための自車両OV1の横位置を変化させる操作を二段階に分け、回避対象を回避するために必要な横位置の移動量のうちの一部について、リスク制御地点LK2よりも上流側の予備操舵地点ST1において前もって行い、その後に、第2リスクポテンシャルが算出されたリスク制御地点LK2及び第1リスクポテンシャルが算出された地点において必要な移動量だけ横位置を移動させる。
このように、リスク制御地点LK2よりも上流側において、予備的に横位置を変更することにより、横位置の変更を乗員に予告することができる。特に、自車両OV1が横幅の大きい大型車両の後方を走行する場合には、乗員の前方確認が困難となり、進行方向の下流側において遭遇する回避対象の存在などを予知することができない場合がある。このような場合に、先に横位置を移動することで、第1リスクポテンシャルに対する回避行動に対する乗員の予見性を高めることができる。予め自車両OV1の挙動の方向が分かることにより、回避行動に対する乗員のリスク感を低減させることができる。
[7]本実施形態の運転制御方法では、リスク制御地点LK2の上流側に操舵開始地点ST2を設定し、操舵開始地点ST2において、回避対象から自車両OV1を離隔させる操舵を開始し、リスク制御地点LK2において自車両OV1が走行するレーン幅に沿う横位置が目標横位置となるように、自車両OV1を操舵させる運転制御により生成される第2リスクポテンシャルを算出する。
リスク制御地点LK2よりも上流側において、早い段階で横位置の変更を開始することにより、第2リスクポテンシャルLK2が生成されるリスク制御地点LK2においては、すでに、回避対象物を回避する運転行動が予測できるため、回避対象物を回避するための横位置の変更が実行されることを乗員に早期に知らせることができる。早期に横位置の移動を開始することで、第1リスクポテンシャルに対する回避行動に対する乗員の予見性を高めることができる。第2リスクポテンシャルに対する運転行動及び第1リスクポテンシャルに対する運転行動における自車両OV1の挙動の理由を乗員が理解するので、回避行動に対する乗員のリスク感を低減させることができる。
[8]本実施形態の運転制御方法では、リスク制御地点LK2の上流側に回避制限地点SPを設定し、回避制限地点SPにおいて、自車両OV1が走行するレーン幅に沿う存在領域の少なくとも一部が、回避対象のレーン幅に沿う存在領域と重複するように自車両OV1を移動させ、その後、第2リスクポテンシャルLK2を生成する。
上述した第2リスクポテンシャルが生成されると、第2リスクポテンシャルと第1リスクポテンシャルが連なることにより、回避対象から離隔した位置に自車両OV1が留まるという運転がされる可能性がある。つまり、駐車車両PVが離散的に存在するにもかかわらず、常に駐車車両PVから離隔した反対側の路肩に近寄った横位置で自車両OV1を走行させる運転制御が実行される傾向がある。乗員は、駐車車両PVが離散的に存在することを視認できるため、第2リスクポテンシャルを生成して乗員の不安感を低減させようとする運転制御を不自然に感じることがある。
第2リスクポテンシャルを生成する前、リスク制御地点LK2よりも上流側において、いったん自車両OV1の横位置を駐車車両PVに接近させることにより、回避対象が離散的に存在するのに、常に回避し続けるという人間から見ると不自然な運転制御が行われることを抑制できる。
[9]本実施形態の運転制御方法では、自車両OV1の速度を含む車両情報に基づいて設定される自車両OV1が存在する自車領域と、検出情報に基づいて設定される回避対象が存在する回避領域との位置関係から第1リスクポテンシャル及び/又は第2リスクポテンシャルを算出する。これにより、自車両OV1と回避領域との相対的位置関係と相対速度に応じた位置関係の変化に基づいてリスクポテンシャルの存在を判断し、その大きさを判断することができる。
[10]本実施形態の運転制御方法では自車両OV1と回避対象との相対距離及び/又は相対距離の変化に基づいて第2リスクポテンシャルの目標値を算出し、自車両OV1を制御することにより、リスクポテンシャルの値が目標値である第2リスクポテンシャルLK2を生成する。これにより、回避対象を回避するときの第1リスクポテンシャルの変化量を抑制する第2走行経路を正確に算出することができる。
[11]本実施形態の運転制御装置100は、上述した運転制御方法と同様の作用及び効果を奏する。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。