<1.第一実施形態>
(1−1.ねじ研削盤10の構成)
本発明の第一実施形態に係る位置補正機能(変位補正機能)を備えるねじ研削盤10(工作機械に相当する)の一例を図面に基づいて説明する。図1、図2に示すように、ねじ研削盤10は、ベッド11と、可動テーブル12(支持台に相当)と、第一移動装置13と、第二移動装置14と、可動テーブル12上に配置される主軸台16及び心押台17と、コラム23(工具台に相当する)と、砥石台19と、第一位置補正装置50と、第二位置補正装置70と、制御装置60と、を備える。
図1の正面図に示すように、可動テーブル12(支持台)は、ベッド11上に水平方向で、且つベッド11に対してZ軸方向(第二軸方向に相当)に相対移動可能に載置される。なお、このとき、図1、図2に示すように、Z軸方向(第二軸方向に相当)と水平面上において直交する方向を、X軸方向(第一軸方向に相当する)とする。
可動テーブル12は、第二移動装置14の作動により、Z軸方向への往復移動が制御される。第二移動装置14は、ボールシャフト14aと、ボールナット14bと、モータ14cと、Z軸駆動回路14dと、を備える。図1に示すように、ボールナット14bは可動テーブル12の下面に固定され、図略のボールを介してベッド11内に挿通されたボールシャフト14aに螺合される。
サーボモータであるモータ14cはエンコーダ14c1を備える。図2に示すように、モータ14c及びエンコーダ14c1は、Z軸駆動回路14dを介して制御装置60に接続される。これにより、モータ14cは、Z軸駆動回路14dを介して制御装置60に回転制御される。エンコーダ14c1は、制御装置60が、モータ14cを制御しボールシャフト14aを回転させると、モータ14cが制御するボールシャフト14aの回転位相Raz(rad)を検出する。検出された回転位相Razは、Z軸駆動回路14dで第二相対位置Zm1に変換されて制御装置60に送信される。
制御装置60は、上述したようにZ軸駆動回路14dを介してベッド11の一端に取付けられたモータ14cを回転制御し、ボールシャフト14aを正逆回転させる。これにより、可動テーブル12が、ボールナット14bと共にベッド11上を、図1中左右方向(Z軸方向)に進退移動する。つまり、第二移動装置14は、Z軸方向(第二軸方向)において、可動テーブル12(支持台)及びコラム23(工具台)を相対移動させる。なお、以降においては、特別な説明なく「相対移動」とのみ記載した場合、可動テーブル12及びコラム23の相対移動のことをいうものとする。
可動テーブル12上には、工作物30の両端を支持可能に、主軸台16と心押台17とが対向して載置される。これにより、可動テーブル12は、主軸台16及び心押台17を介して工作物30を回転軸線周りに回転可能に支持する。なお、本実施形態において、工作物30は、長軸状のボールねじである。工作物30の軸線は、Z軸方向(第二軸方向)と平行である。
主軸台16は、主軸16aと、回転軸が主軸16aと連結されるサーボモータであるモータ16bと、主軸駆動回路16dと、を備える。主軸16aは、心押台17との間で工作物30を支持する。また、モータ16bは、エンコーダ16b1を備える。図2に示すように、モータ16b及びエンコーダ16b1は、主軸駆動回路16dを介して制御装置60に接続される。これにより、モータ16bは、主軸駆動回路16dを介して制御装置60に回転制御される。
また、エンコーダ16b1は、制御装置60が、モータ16bを制御して主軸16aを回転させると、モータ16bが制御する主軸16aの回転位相、即ち工作物30の軸線周りの回転位相Raw(rad)を検出し、主軸駆動回路16dに送信する。主軸駆動回路16dは、検出された回転位相Rawを制御装置60に送信し、記憶部62で記憶させる。
図2に示すように、可動テーブル12の後方(図中上方)には、コラム23(工具台)が移動台15に固定される。コラム23の前面には、回転台18が、水平軸44に支持され、水平軸44の軸線周りに回転可能に設けられている。さらに、回転台18の前面には砥石台19が固定され、砥石台19が、ねじ用砥石車27(工具に相当する。以降、砥石車27とのみ称す)を、回転軸周りに回転可能に支持する。即ち、コラム23は、回転台18及び砥石台19を介して、工作物30を加工する砥石車27を支持する。そして、コラム23は、可動テーブル12(支持台)に対して、X軸方向(第一軸方向)に相対移動可能である。
回転台18の背面側には、コラム23に固定されたモータ45により軸線周りに回転されるシャフト20が、図1における上下方向に延在して設けられる。シャフト20には、シャフト20と一体回転するウォーム(図略)が固定される。ウォームは、水平軸44(図2参照)の外周に設けられるウォームホイル22と噛合する。これにより、制御装置60が、モータ45を作動させ、ウォームを正逆回転させると、回転台18は水平軸44の軸線を回転中心として回動し、砥石台19及び砥石車27を水平軸44の軸線回りに回動させる。
また、図2に示すように、移動台15の重力方向(Y軸方向)下方には、第一移動装置13が設けられる。第一移動装置13は、ボールシャフト13aと、ボールナット(図略)と、サーボモータであるモータ13cと、X軸駆動回路13dと、を備える。ボールシャフト13aは、制御装置60が、ベッド11に固定されたモータ13cを制御することにより回転される。ボールナットは、移動台15に固定され、図略のボールを介してボールシャフト13aと螺合する。
モータ13cはエンコーダ13c1を備える。図2に示すように、モータ13c及びエンコーダ13c1は、X軸駆動回路13dを介して制御装置60に接続される。これにより、モータ13cは、X軸駆動回路13dを介して制御装置60に回転制御される。エンコーダ13c1は、制御装置60が、モータ13cを制御しボールシャフト13aを回転させると、モータ13cが制御するボールシャフト13aの回転位相Rax(rad)を検出する。検出された回転位相Raxは、X軸駆動回路13dに送信される。
制御装置60は、X軸駆動回路13dを介して、モータ13cを回転制御し、ボールシャフト13aを正逆回転させる。これにより、移動台15(コラム23)が水平軸44と平行なX軸方向(第一軸方向、図2中の上下方向)に進退移動する。X軸方向への進退移動によって、砥石台19が備える砥石車27が、工作物30(ボールねじ)と接近又は離間する。つまり、第一移動装置13(移動装置)は、可動テーブル12(支持台)及びコラム23(工具台)をX軸方向(第一軸方向)において相対移動させる。
砥石台19には、モータ19aと、砥石台19に回転可能に支持されるモータ19aの回転軸19b(出力軸)と、上述した砥石車27と、が備えられる。砥石車27は、モータ19aの回転軸19bの端部に固定される。制御装置60の制御によって、モータ19aが作動されると、回転軸19b及び砥石車27が砥石台19に対して軸線周りに一体的に相対回転する。
そして、上記の構成を有するねじ研削盤10により工作物30の歯面の研削を行なう場合、まず、図1に示すように、主軸台16と心押台17との間に、軸線C1が水平になるよう工作物30(ボールねじ)が支持される。そして、制御装置60が、第二移動装置14のモータ14c、第一移動装置13のモータ13c、及びモータ16bを制御して、砥石車27と工作物30とを相対移動させながら主軸16aを回転させ、砥石台19に装着された砥石車27を用いて工作物30の歯面の研削を行なう。
なお、本実施形態のように、工作物30がボールねじである場合、砥石車27に接続される回転軸19bの軸線19cは、工作物30(ボールねじ)の軸線C1に対して、ボールねじのねじ溝の歯面の角度に応じた分だけ傾斜される。例えば、傾斜を所望の傾斜角度α°(図1参照)にするためには、制御装置60がモータ45を作動させる。これにより、ウォームを回転させ回転台18を、水平軸44の軸線を回転中心として回動させて、軸線19cが所望の傾斜角度α°となるよう合わせ込む。
その後、第一移動装置13を作動させることにより、砥石車27をX軸方向に移動させて、工作物30のねじ溝の歯面に砥石車27を押し当て、歯面の研削を行なう。ねじ溝の歯面の研削する際における制御装置60の制御については、上記で説明したとおりである。なお、詳細な説明は行なわないが、ねじ研削盤10は、工作物30と、傾斜した砥石車27との高さ合わせを行なうため、X軸及びZ軸と直交するY軸方向へ、工作物30及び砥石車27を相対移動可能とするY軸相対移動機構(図略)を備える。
制御装置60は、図1、2に示すように、中央処理演算部61(CPU)と、上述した記憶部62と、表示部63とを備える。中央処理演算部61(CPU)は公知のCPUである。記憶部62は、第三相対位置Xn(記憶部62には不図示)、第四相対位置Zn(記憶部62には不図示)、第一位置補正装置50の作動を制御するX軸補正プログラム64、及び第二位置補正装置70の作動を制御するZ軸補正プログラム65等を記憶する。
X軸補正プログラム64、Z軸補正プログラム65には、それぞれ「所定の加工待機位置P」における第一基準相対位置Xp、第二基準相対位置Zpが記載されている。X軸補正プログラム64及びZ軸補正プログラム65については、後に、第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70の作動の説明時に詳細に説明する。また、表示部63は、現在位置である後述する第三相対位置Xn、第四相対位置Znを、例えば液晶パネル等によって表示する。
所定の加工待機位置Pは、工作物30を搬入搬出できる程度に、X軸方向に工作物30に対し砥石車27が離間した位置である。しかも、X軸方向に移動させるだけで、工作物30に対し砥石車27による加工が開始されるように、Z軸方向に稼動テーブル12を位置決めした位置である。つまり、所定の加工待機位置Pから加工開始すれば、工作物30に対する砥石車27の移動距離が短くなって、加工時間を短縮できる。
(1−2.第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70)
次に、第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70について説明する。第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70は、同様の構成及び機能を有する。そこで、第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70の説明を行なう際、主に第一位置補正装置50の説明に、それぞれの構成に対応する第二位置補正装置70の構成を括弧内に併記しながら行なう。
第一位置補正装置50(第二位置補正装置70)について、図1−図12Fに基づき説明する。第一位置補正装置50(第二位置補正装置70)は、ねじ研削盤10の運転中において、ねじ研削盤10の、例えば、ベッド11等が昇温することにより第一軸方向(第二軸方向)に熱膨張し、可動テーブル12(支持台)が支持する工作物30と、コラム23(工具台)が支持する砥石車27(工具)との接触位置(加工位置)、即ち、第一軸方向(第二軸方向)における相対位置に熱変位が生じた場合に、熱変位分のズレを検出し補正する装置である。
第一位置補正装置50(第二位置補正装置70)は、図1−図6に示すように、上述した光電センサ51と、第一スリット板51aと、第二スリット板51bと、X軸補正プログラム64が備える第一端部位置検出部64a(第二端部位置検出部65a)と、第一相対位置導出部13d1(第二相対位置導出部14d1)と、第一位置変更部13d2(第二位置変更部14d2)と、を備える。
なお、図3に示すように、第一相対位置導出部13d1及び第一位置変更部13d2は、上述したX軸駆動回路13dが備える。また、第二相対位置導出部14d1及び第二位置変更部14d2は、上述したZ軸駆動回路14dが備える。第一位置補正装置50(第二位置補正装置70)は、制御装置60が備えるX軸補正プログラム64(Z軸補正プログラム65)により制御される。
光電センサ51は、可視光線、赤外線などの「光」を、後述する投光素子53(投光部52)の投光面53a(図4参照)から投光する。そして、投光した「光」を後述する受光素子57(受光部55)の受光面57aで検出し、検出したことを示すON信号を制御装置60に出力する。なお、光電センサ51は公知であるため、これ以上の詳細な機能の説明については省略する。
図1、図2に示すように、光電センサ51は、第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70において共用される。図4に示すように、光電センサ51は、上述した投光部52と受光部55とを備える。投光部52は、投光素子53と、投光素子53を保持する筐体である投光本体部54と、を備える。投光本体部54は、直方体状に形成され、所定の背向面54a、54bの中央に背向面54a、54b間を貫通する貫通孔54cが形成される。貫通孔54cには円柱状の投光素子53が配置される。
円柱状の投光素子53の一方の端面には、投光面53aを備える。また、投光素子53の他方の端面には、制御装置60への配線が接続される。本実施形態においては、投光面53aから投光される光Liの形状は半径R1の円である(図5参照)。投光部52が、ねじ研削盤10へ取り付けられた状態においては、投光面53aは、図4に示すように水平面と平行で且つ重力方向(Y軸方向)下方に向いて配置される。また、図4に示すように、投光部52では、投光本体部54における投光面53a側の背向面54aに、上述した第一スリット板51aが配置される。
図5に示すように、第一スリット板51aは、同形状で形成された2枚の分割スリット板51a1、51a2によって構成される。分割スリット板51a1、51a2は、背向面54aにそれぞれ固定された状態で、両者の間に均一な間隔を有した直線状の隙間(第一スリット51a3)を形成する。分割スリット板51a1、51a2は、第一スリット51a3の幅W1が、例えば5μm程度になるよう背向面54aに、それぞれボルト等(図略)によって固定される。
このとき、半径R1である投光面53aが投光する円形の光の中心O1は、第一スリット51a3の幅W1の幅方向におけるほぼ中央に位置するよう配置される。なお、分割スリット板51a1、51a2は、第一スリット51a3の幅W1が、自在に変更可能(調整可能)となるよう背向面54aに固定される。これにより、異なる第一スリット51a3の幅W1での測定が必要になった場合でも、光電センサ51毎交換せず、分割スリット板51a1、51a2の背向面54aへの取り付け位置を変更するだけで対応できるので、低コストに対応できるとともに非常に効率的である。
幅W1の調整は、第一スリット51a3の両端に、同じ厚みの公知の隙間ゲージをはさみ込んだ状態で、分割スリット板51a1、51a2を背向面54aに固定し、固定後、隙間ゲージを第一スリット51a3から取り外せばよい。このとき、背向面54aにおける分割スリット板51a1、51a2の固定位置は、隙間ゲージの厚みに応じて、少しずつ、背向面54aに対して相対的にズレることになる。このズレに対しては、分割スリット板51a1、51a2に設けるボルト貫通孔の径を、ボルトの軸の外径より若干大きくする等してボルトに対する分割スリット板51a1、51a2の相対移動を許容し対応すればよい。ただし、この対応例はあくまで一例であって、どのように対応しても良い。
第一スリット51a3の延在方向は、投光部52が、ねじ研削盤10へ取り付けられた状態において、Z軸方向である。即ち、第一スリット51a3は、第一軸方向を含む水平面上にX軸方向(第一軸方向)と直交するよう配置される(図5参照)。そして、図1、図2に示すように、投光部52は、工具台であるコラム23(支持台及び工具台の一方に相当)に、第一支持部材68を介して片もち状態で固定される。
つまり、第一支持部材68の一端がコラム23の側面に固定され、第一支持部材68の他端に投光部52が固定される。さらに換言すると、投光部52は、コラム23等を介してねじ研削盤10のベッド11に取り付けられるともいえる。そして、投光部52は、投光面53aから円形で投光される光Liを、第一スリット51a3を介して、投光面53aと反対側である受光部55側に直線形状で通過させる。
このとき、投光部52は、投光面53aが、砥石車27の比較的近傍に位置するよう配置される。また、投光部52は、砥石車27とX軸方向(第一軸方向)に一体的に移動される。また、第一支持部材68は、熱膨張係数が低い材料で形成されることが好ましい。一例としては、金属材料であれば、インバー(あるいはアンバー)等が好ましい。また、第一支持部材68は、金属材料に限らずファインセラミックス等によって形成されてもよい。
ただし、熱膨張係数がインバーやファインセラミックス等より高い金属材料であっても良い。これによっても相応の効果は期待できる。これにより、ねじ研削盤10の、例えば、ベッド11等の温度が上昇し熱膨張した場合、投光面53aの位置は、ベッド11に支持される砥石車27と同様、ベッド11の熱変位に追従して変位する。
図4に示すように、受光部55は、上述した受光素子57と、受光素子57を保持する受光本体部58と、を備える。受光本体部58は、投光本体部54と同様、直方体状に形成され、所定の背向面58a、58bの中央に、背向面58a、58b間を貫通する貫通孔58cが形成される。貫通孔58cには、円柱状の受光素子57が配置される。
円柱状の受光素子57の一方の端面には、受光面57aを備える。受光素子57の他方の端面には、制御装置60に接続され、受光面57aが投光面53aから投光される光を受光した場合に、受光信号を制御装置60に送信する配線が接続される。図6に示すように、受光面57aは、投光面53aから投光される光の形状(円形)と同等(同径)か、若しくは若干大きな半径R2の円で形成される(R2≧R1)。
図4に示すように、受光部55が、ねじ研削盤10へ取り付けられた状態において、受光面57aは、水平面と平行で且つ重力方向(Y軸方向)上方に向いて配置される。また、図4に示すように、受光部55は、受光本体部58における受光面57a側の背向面58aに第二スリット板51bを備える。
第二スリット51b3の延在方向は、受光部55が、ねじ研削盤10へ取り付けられた状態において、X軸方向(第一軸方向)である。即ち、第二スリット51b3は、第一スリット51a3の延在方向と直交するよう配置される(図6参照)。さらに換言すると、受光部55が、ねじ研削盤10へ取り付けられた状態において、第二スリット51b3は、水平面上にZ軸方向(第二軸方向)と直交するよう配置される。
図6に示すように、第二スリット板51bは、同形状で形成された2枚の分割スリット板51b1、51b2によって構成される。分割スリット板51b1、51b2は、背向面58aにそれぞれ固定された状態で、両者の間に均一な間隔を有した直線状の隙間(第二スリット51b3)を形成する。分割スリット板51b1、51b2は、第二スリット51b3の幅W2が、例えば5μm程度になるよう背向面58aに、それぞれボルト等(図略)によって固定される。
このとき、半径R2である円形の受光面57aの中心O2は、第二スリット51b3の幅W2の幅方向におけるほぼ中央に位置するよう配置される。分割スリット板51b1、51b2は、上述した投光部52に設けられた分割スリット板51a1、51a2と同様に、第二スリット51b3の幅W2が、自在に変更可能(調整可能)となるよう背向面58aに固定される。これにより、異なる第二スリット51b3の幅W2での測定が必要になった場合でも、光電センサ51毎交換せず、分割スリット板51b1、51b2の背向面58aへの取り付け位置を変更するだけで対応できるので、低コストに対応できるとともに非常に効率的である。なお、幅W2の調整方法は、第一スリット51a3の幅W1の調整方法と同様である。
なお、上記においてそれぞれ変更可能な第一スリット51a3、第二スリット51b3の幅W1、W2は、その値が小さくなるほど、工作物30と砥石車27(工具)との相対位置に熱変位が生じた場合における変位量の検出精度が向上する。従って、上記において、異なる第一スリット51a3の幅W1及び第二スリット51b3の幅W2での測定が必要になった場合とは、例えば、より精度の高い変位量の検出を所望する場合である。この場合、第一スリット51a3の幅W1及び第二スリット51b3の幅W2を小さくすればよい。
ただし、幅W1、W2を小さくすると、第一スリット51a3及び第二スリット51b3を通過する光の量は減少する。このため、受光素子57が受光する受光量も減少する。これに対応するためには、受光素子57と制御装置60との間に設けられた図略のアンプに対し、受光ONと判定する閾値を低くするよう変更する。なお、幅W1、W2の両方を小さくするのではなく、何れか一方を小さくするだけでも十分な効果は得られる。
具体的には、本実施形態のように、第一位置補正装置50(第二位置補正装置70)をねじ研削盤10に適用した場合を考えると、ねじ研削盤10では、通常、工作物30の軸線方向の位置決め精度が重要となる。このため、工作物30の軸線方向に移動する側のスリット(本実施形態においては、第二スリット板51bの第二スリット51b3に相当)では、幅(W2)の方向が、工作物30の軸線方向と一致するように配置する。そして、工作物30の軸線方向の位置決め精度を向上させたい場合は、工作物30の軸線方向のスリット(第二スリット51b3)の幅(W2)を小さくする。
また、第一位置補正装置50(第二位置補正装置70)を、例えば、円筒研削盤に適用する場合においては、通常、工作物30の径方向における位置決め精度が重要となる。このために、工作物30の径方向に移動する側のスリット(本実施形態においては、第一スリット板51aの第一スリット51a3に相当)では、幅W1の方向が工作物30の径方向と一致するように配置する。そして、工作物30の径方向の位置決め精度を上げたい場合は、工作物30の径方向の第一スリット51a3の幅を小さくする。
受光部55は、支持台である可動テーブル12(支持台及び工具台の他方に相当)に、第二支持部材69を介して片もち状態で固定される。つまり、第二支持部材69の一端が可動テーブル12の側面に固定され、第二支持部材69の他端に受光部55が固定される。さらに換言すると、受光部55は、可動テーブル12等を介してねじ研削盤10のベッド11に取り付けられるともいえる。また、第二支持部材69は、第一支持部材68と同様、熱膨張係数が低い材料で形成されることが好ましい。
これにより、ねじ研削盤10の、例えば、ベッド11等の温度が上昇して熱膨張した場合、受光面57aの位置は、ベッド11に支持されるねじ工作物30と同様に、ベッド11の熱変位に追従して変位する。
なお、このとき可動テーブル12(支持台)及びコラム23(工具台)の相対位置が図2に示すような予め設定された「所定の加工待機位置P」に位置し、そこから加工開始する場合、コラム23の側面に固定される第一支持部材68の一端と、第二支持部材69の一端が固定される可動テーブル12の側面との間のX軸(第一軸)方向における距離Xγは一定に保たれる。また、可動テーブル12の側面に固定される第二支持部材69の一端と、第一支持部材68の一端が固定されるコラム23の側面との間のZ軸(第二軸)方向における距離Zγは一定に保たれる。
また、受光部55の受光面57aは、常温時において、砥石車27が支持されるコラム23(工具台)、及び可動テーブル12(支持台)の相対位置が、「所定の加工待機位置P」(即ち、第一基準相対位置Xp、及び第二基準相対位置Zp)に相対移動された場合に、受光面57aの中心O2が、投光素子53の投光面53aの中心O1と鉛直方向で一致し対向するよう設定される。なお、図1及び図2は、コラム23及び可動テーブル12が、「所定の加工待機位置P」に位置している状態を示しているものとする。
また、図2に示すように、工作物30の軸線C1から砥石車27の先端までのX軸方向における実際の相対位置を第三相対位置Xn、主軸16aの端面16a1から砥石車27の先端までのZ軸方向における実際の相対位置を第四相対位置Znとすると、第三相対位置Xn及び第四相対位置Znは常に制御装置60の表示部63に表示される。また、制御装置60は、砥石車27が支持されるコラム23(工具台)、及び可動テーブル12(支持台)の相対位置が、「所定の加工待機位置P」に位置するときの第三相対位置Xnを「第一基準相対位置Xp」とし、第四相対位置Znを「第二基準相対位置Zp」として記憶部62のX軸補正プログラム64、Z軸補正プログラム65に記載している。
可動テーブル12及び砥石車27の相対位置である「所定の加工待機位置P」への相対移動は、制御装置60、X軸駆動回路13d及びZ軸駆動回路14d等によって第三相対位置Xnが「第一基準相対位置Xp」に、第四相対位置Znが「第二基準相対位置Zp」となるように制御される。つまり、図7A、図7Bのグラフに示すように、常温時においては、制御装置60が、第一移動装置13及び第二移動装置14の各モータ13c、14cを「第一基準相対位置Xp」、「第二基準相対位置Zp」に対応する回転位相Raxt、Razt(所定の制御量)となるようそれぞれ制御することによって可動テーブル12及び砥石車27がX軸方向及びZ軸方向にそれぞれ移動し、相対位置が所定の加工待機位置P(Xp、Zp)へ相対移動される。
しかしながら、例えば、ベッド11の温度が上昇し、ベッド11が熱膨張(熱変位)した場合においては、図7A、図7Bの直線L3、L4に示すように、制御装置60によって、各モータ13c、14cが、予め設定された所定の回転位相Raxt,Raztで回転制御されると、直線L3、直線L4とそれぞれ交差する相対位置P1(第三相対位置Xn、第四相対位置Zn)に移動する。
このとき、相対位置P1では、図8に示すように、可動テーブル12(工作物30)及び砥石車27の相対位置が、所定の加工待機位置P(Xp、Zp)から、ベッド11の熱変位(例えば、β1、β2)分だけずれてしまう。そこで本発明では、熱変位後において、ずれた可動テーブル12及び砥石車27の相対位置の熱変位分のずれ量(β1、β2)を補正する。
なお、上記において、直線L3、L4は、例えば、直線L1、L2の検出時における温度から所定の温度(例えば1度)だけ昇温した時における回転位相Rax、Raz(制御量)と、可動テーブル12(支持台)及びコラム23(工具台)の実際の相対位置である第三相対位置Xn及び第四相対位置Znとの相関グラフである。そして、図7A(図7B)は、Raxt(Razt)辺りを拡大して見たものであるので、直線L2とL4、及び直線L1とL3とは、それぞれ平行に近い。
ボールシャフト13a(ボールシャフト14a)が熱膨張すると、図7A(図7B)の横軸が伸びることになる。また、ベッド11が熱膨張すると、図7A(図7B)の縦軸が伸びることになる。ボールシャフト13a(ボールシャフト14a)とベッド11のそれぞれの熱膨張によっては、直線L1(L2)に沿ってRaxtとXn(RaztとZn)の位置が変化したり、直線L1(L2)より傾きが緩やかな直線L3(L4)になったり、直線L1(L2)より傾きがきつい直線L3(L4)になったりする。
図1、図2に示すように、第一端部位置検出部64a(第二端部位置検出部65a)は、制御装置60が備えるX軸補正プログラム64(Z軸補正プログラム65)が備える。第一端部位置検出部64a及び第二端部位置検出部65aは、同様の構成及び機能を有するため、以降においては、対応する各構成は括弧内に記載しながら可能な限り説明を同時に進める。
第一端部位置検出部64a(第二端部位置検出部65a)は、第一移動装置13及び第二移動装置14を制御し、コラム23(工具台)及び可動テーブル12(支持台)を第一軸方向及び第二軸方向に相対移動させる。これにより、光を、第一スリット板51a及び第二スリット板51bを介して受光素子57の受光面57aに受光させ、後述する第一受光範囲Ar1(第二受光範囲Ar2)の第一端部E1、E2(第二端部E3、E4)の位置を検出する。詳細については、後の作動の説明において述べる。
図3に示すように、第一相対位置導出部13d1(第二相対位置導出部14d1)は、上述したように、X軸駆動回路13d(Z軸駆動回路14d)が備える。第一相対位置導出部13d1(第二相対位置導出部14d1)は、エンコーダ13c1(14c1)と接続され、エンコーダ13c1(14c1)が検出したモータ13c(14c)の所定の回転位相(制御量)Rax1(Raz1)が入力される。
そして、第一相対位置導出部13d1(第二相対位置導出部14d1)は、エンコーダ13c1(14c1)から入力される所定の制御量Rax1(Raz1)に基づき、第一移動装置13(第二移動装置14)が第一軸方向(第二軸方向)に相対移動させた可動テーブル12(支持台)及びコラム23(工具台)の常温時における演算上の相対位置である所定の第一相対位置Xm1(所定の第二相対位置Zm1)を演算し導出する。なお、このような第一相対位置導出部13d1(第二相対位置導出部14d1)による演算は公知であるので、詳細な説明については省略する。
具体的には、第一相対位置導出部13d1(第二相対位置導出部14d1)は、第一端部E1、E2(第二端部E3、E4)を検出した時点における第一移動装置13(第二移動装置14)の所定の制御量Rax1(所定の制御量Raz1)に基づき、所定の第一相対位置Xm1(所定の第二相対位置Zm1)を演算する。導出された所定の第一相対位置Xm1(所定の第二相対位置Zm1)は、第一位置変更部13d2(第二位置変更部14d2)に送信される。
第一位置変更部13d2(第二位置変更部14d2)は、上述したように、X軸駆動回路13d(Z軸駆動回路14d)が備える(図3参照)。第一位置変更部13d2(第二位置変更部14d2)は、二つの演算部A,B(E、F)を備える。演算部A(E)は、第一相対位置導出部13d1(第二相対位置導出部14d1)と接続され、第一相対位置導出部13d1(第二相対位置導出部14d1)から所定の第一相対位置Xm1(所定の第二相対位置Zm1)が入力される。また、演算部A(E)は、制御装置60と接続され、記憶部62のX軸補正プログラム64(Z軸補正プログラム65)に記載された第一基準相対位置Xp(第二基準相対位置Zp)が入力される。
そして、演算部A(E)は、下記式(1)、(2)に基づき、第一基準相対位置Xp(第二基準相対位置Zp)と所定の第一相対位置Xm1(所定の第二相対位置Zm1)との間の差である位置誤差ΔX1(ΔZ1)を演算する。第一基準相対位置Xpは、図2に示すように、工作物30の軸線C1を基準としたときのX軸(第一軸)方向における砥石車27の先端位置である。また、第二基準相対位置Zpは、図2に示すように、主軸16aの工作物30側端面を基準としたときのZ軸(第二軸)方向における砥石車27の先端位置である。位置誤差ΔX1(ΔZ1)は、X軸補正プログラム64(Z軸補正プログラム65)が次に作動されるまで、演算部A(E)で記憶保持される。X軸補正プログラム64(Z軸補正プログラム65)が作動されると、演算部A(E)の位置誤差ΔX1(ΔZ1)は、0にリセットされる。
ΔX1=Xp−Xm1・・・・(1)
ΔZ1=Zp−Zm1・・・・(2)
なお、上記において、常温時におけるモータ13c(14c)の所定の基準位置S(T)からの回転位相Rax(Raz)(制御量)と可動テーブル12及びコラム23の第一相対位置Xm(第二相対位置Zm)との関係は、一例として図7A(図7A)のグラフ中における直線L1(L2)で表すことができるものとする。また、熱変位後におけるモータ13c(14c)の所定の基準位置S(T)からの回転位相(制御量)Rax(回転位相(制御量)Raz)と可動テーブル12及びコラム23の相対位置である第四相対位置Znとの関係は、一例として図7A(図7B)のグラフ中における直線L3(L4)で表わされるものとする。
演算部B(F)は、演算部A(B)、第一相対位置導出部13d1(第二相対位置導出部14d1)、第一加工制御部13d3(第二加工制御部14d3)及び制御装置60に接続される。演算部B(F)には、演算部A(E)から位置誤差ΔX1(ΔZ1)が入力される。また、演算部B(F)には、第一相対位置導出部13d1(第二相対位置導出部14d1)から、所定の第一相対位置Xm1(所定の第二相対位置Zm1)が入力される。そして、演算部B(F)は、下記式(3)、(4)に基づき、実際の相対位置である第三相対位置Xn(第四相対位置Zn)を演算し導出する。
Xn=Xm1+ΔX1・・・・(3)
Zn=Zm1+ΔZ1・・・・(4)
そして、演算部B(F)は、導出した第三相対位置Xn(第四相対位置Zn)を、第一加工制御部13d3(第二加工制御部14d3)及び制御装置60に送信する。このとき、ベッド11等に熱変位が生じた状態であれば、所定の第二相対位置Zm1は、ΔZ1だけ熱変位後の位置を示す第四相対位置Znとは異なる値となり、ベッド11等が熱変位していない常温状態であれば、所定の第二相対位置Zm1は、第四相対位置Znと等しい値となる。
このように、第一位置変更部13d2(第二位置変更部14d2)は、、X軸補正プログラム64(Z軸補正プログラム65)の作動時に送られる第一基準相対位置Xp(第二基準相対位置Zp)に基づき位置誤差ΔX1(ΔZ1)を演算して記憶保持し、第一相対位置Xm1(第二相対位置Zm1)を第三相対位置Xn(第四相対位置Zn)に変更する。これにより、熱変位分をキャンセルし補正する。詳細な変更方法については、後に説明する。
なお、上記において、第一位置変更部13d2(第二位置変更部14d2)に接続される第一加工制御部13d3(第二加工制御部14d3)は、第一位置変更部13d2(第二位置変更部14d2)が導出した熱変位後の実際の相対位置である第三相対位置Xn(第四相対位置Zn)を利用して、工作物30に対する加工の指令値を生成する制御部である。
第一加工制御部13d3(第二加工制御部14d3)について簡単に説明しておく。図3に示すように、第一加工制御部13d3(第二加工制御部14d3)は、比較器C(G)及び位相変換器D(H)を備える。比較器C(G)は、制御装置60、演算部B(F)及び位相変換器D(H)と接続される。比較器C(G)には、演算部B(F)から第三相対位置Xn(第四相対位置Zn)が入力される。また、比較器C(G)には、制御装置60から加工時における目標相対位置Xt(Zt)が入力される。これにより、比較器C(G)は、第三相対位置Xn(第四相対位置Zn)と目標相対位置Xt(Zt)との位置差ΔX2(ΔZ2)を求め、位相変換器D(H)に送信する。
位相変換器D(H)は、モータ13c(14c)に接続される。位相変換器D(H)は、位置差ΔX2(ΔZ2)を、位相信号である回転位相Rax2(Raz2)に変換するとともに、回転位相Rax2(Raz2)をモータ13c(14c)に送信し、モータ13c(14c)を回転させる。これにより、工作物30は、熱変位分ΔX1(ΔZ1)が補正された状態で加工ができるので、高精度な加工状態が得られる。
また、上記において、第一位置補正装置50(第二位置補正装置70)は、様々なタイミングで作動(処理)させることが可能である。一例として、制御装置60が記憶する所定の加工プログラムが終了したタイミングで第一位置補正装置50(第二位置補正装置70)が補正の処理をしてもよい。また別の例として、ねじ研削盤10(工作機械)が、所定位置の温度を計測する温度センサ80(図2参照)と、記憶部62に設けられる補正機会検知プログラム66と、を備えてもよい。
このとき、補正機会検知プログラム66は、温度センサ80が検出する温度Tnを取得する(図1−図3参照)。そして、取得した現在の温度Tnの測定結果と予め記憶部62に保持する許容温度Taとの比較を行ない、現在の温度Tnが許容温度Ta(図略)を超えた所定のタイミングにおいて、第一位置補正装置50(第二位置補正装置70)に補正指令信号を送信し、補正の処理をさせるようにしてもよい。
さらに、第一位置補正装置50(第二位置補正装置70)を作動させる別のタイミングの例としては、所定の加工プログラムが終了したタイミングにおいて、ねじ研削盤10の作動開始(電源投入)からの経過時間が、設定した時間を経過していた場合に、作動させ補正するようにしてもよい。また、さらに、別のタイミングの例としては、ねじ研削盤10(工作機械)の各部の温度ではなく、室温の上昇に基づき作動させ補正するようにしてもよい。
(1−3.作動について)
次に、第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70の作動について、主に図10、図11のフローチャート1,2に基づき説明する。なお、本実施形態では、一例として、第一位置補正装置50による補正の処理を行なったのち、第二位置補正装置70による補正の処理が行なわれるものとする。
第一位置補正装置50による補正の処理では、熱変位後における可動テーブル12及び砥石車27の第一基準相対位置Xpの探索を以下のように行なう。つまり、第一基準相対位置Xpの探索は、砥石車27(工具)が工作物30と接し研削加工する加工位置Pw(図9参照)を始点としてX軸方向に離間し、上述した図2に示す所定の加工待機位置Pの近傍の位置に向かって相対移動される際に行なう。なお、これらの処理は、X軸補正プログラム64により制御される。
また、第一位置補正装置50による処理は、上述した制御装置60が記憶する所定の加工プログラムの終了間際の所定の加工待機位置Pへ移動させるタイミングで行なうものとして説明する。第一位置補正装置50による処理では、図10のフローチャート1に示すように、工程S10−工程S32を備える。また、第二位置補正装置70による処理は、図11のフローチャート2に示すように、工程S40−工程S62を備える。
図10に示すように、工程S10(第一端部位置検出部64a)では、制御装置60が記憶する所定の加工プログラムの終了間際の所定の加工待機位置Pへ移動させる工程で、制御装置60のX軸補正プログラム64が作動され、第一端部位置検出部64aがX軸駆動回路13dを介して、第一移動装置13のモータ13cを作動させると同時に演算部AのΔX1を0にリセットする。これにより、砥石車27が支持されるコラム23が、X軸方向(第一軸方向)において、図9に示す加工位置Pwから離間する方向への移動を開始する。
つまり、投光部52と受光部55とが、水平面上において相対的に接近する動作を開始する。なお、このとき、加工位置Pwから離間する方向への移動の開始直後においては、投光面53aから投光した光は、受光面57aで受光されていないものとする。
工程S12(第一端部位置検出部64a)では、第一移動装置13が、砥石車27を可動テーブル12に対して、さらに加工位置Pwから離間する方向へ相対移動させる。そして、相対移動させながら、図12Aに示すように、受光面57aが投光面53aから投光され、直交する第一スリット51a3及び第二スリット51b3を通過する点状(矩形形状)の光を受光しONする第一端部E1を検出する。このとき、第一端部E1は、受光面57aを形成する半径R2の円の外周縁上の点である。
工程S14(第一端部位置検出部64a)では、砥石車27(コラム23)が、第一端部E1を検出したX軸方向における相対位置X1を検出し、記憶部62に記憶する。なお、工程S14は、工程S12の終了後に処理しても良いし、工程S12と同時に処理しても良い。
工程S16(第一端部位置検出部64a)では、砥石車27を、さらに加工位置Pwから離間する方向へ相対移動させながら、受光面57aが投光面53aから投光される点状の光を受光しなくなるOFF点(図12B参照)を検出する。そして、X軸方向への移動におけるOFF点の手前の位置をX軸方向の移動速度から演算して、第二の第一端部E2(図12C参照)として記憶する。
このとき、第一端部E2も、第一端部E1と同様に、受光面57aを形成する半径R2の円の外周縁上の点である。このように、第一位置補正装置50は、X軸方向において、受光面57aを形成する円の外周縁と接する両端を検出する。ここで、X軸方向(第一軸方向)における第一端部E1と第一端部E2の間の範囲を第一受光範囲Ar1とする。つまり、光電センサ51は、X軸方向における可動テーブル12及び砥石車27の相対位置が予め設定された第一受光範囲Ar1の幅の範囲内に位置するとき、受光面57aが投光面53aから投光される点状の光を受光可能である。
工程S18(第一端部位置検出部64a)では、X軸方向への移動におけるOFF点の手前の位置を、第一端部E2(図12C参照)として、加工位置PwからOFF点を検出した位置、即ち、第一端部E2と見なせるX軸方向における相対位置X2をX軸方向の移動速度から演算し、記憶部62に記憶させる。
そして、工程S20(第一端部位置検出部64a)で、演算した相対位置X2に工程S30で求めた相対位置X1を加算したのち等分して相対位置X1と相対位置X2の中点であるX軸方向における相対位置X3を演算し記憶部62に記憶させる。このとき、相対位置X3は、実際の相対位置であるとともに、第一基準相対位置Xpに相当する。
工程S22(第一端部位置検出部64a)では、砥石車27を、X軸方向(第一軸方向)に移動させ、中心O1と、中心O2とをX軸方向において一致させる。つまり、X軸補正プログラム64が、図12Cの状態から、第一移動装置13のモータ13cを工程S10とは逆方向に回転作動させる。これにより、砥石車27を、X軸方向において加工位置Pwに接近する方向へ相対移動させ、図12Dに示すように、投光面53aから投光される光Liの中心O1を、X軸方向において、受光面57aが備える中心O2と一致させる。
工程S24では、コラム23(工具台)及び可動テーブル12(支持台)のX軸方向(第一軸方向)における実際の相対位置X3に対応するモータ13cの所定の制御量Rax1(第一端部E1、E2を検出した時点における所定の制御量に相当する)をエンコーダ13c1が検出し、第一相対位置導出部13d1に送信する。
工程S26(第一相対位置導出部13d1)では、図3に示すように、送信された所定の制御量Rax1に基づき、所定の第一相対位置Xm1が演算され、第一位置変更部13d2の演算部Aに送信される。また、同時にX軸補正プログラム64に記載された「第一基準相対位置Xp」が演算部Aに送信される。
工程S28(第一位置変更部13d2)では、図3に示すように、演算部Aにおいて、送信された第一基準相対位置Xpと所定の第一相対位置Xm1との間の差である位置誤差ΔX1が演算され(上記式(1)参照)、位置誤差ΔX1が第一位置変更部13d2の演算部Bに送信される。また、このとき、演算部Bには、第一相対位置導出部13d1から、所定の第一相対位置Xm1が送信される。なお、このとき、位置誤差ΔX1は、温度上昇による熱変位によって生じた誤差である。位置誤差ΔX1は、次のX軸補正プログラム64の作動時まで記憶保持される。
工程S30(第一位置変更部13d2)では、演算部Bが、上記式(3)に基づき、第三相対位置Xnを演算する。ここで、第三相対位置Xnは、所定の第一相対位置Xm1に対し、位置誤差ΔX1分を補正したものである。つまり、第三相対位置Xnは、熱変位分が補正された実際の相対位置となっている。
そして、工程S32(第一位置変更部13d2)により、第三相対位置Xnは制御装置60に送信され、表示部63に表示される。これにより、表示部63には、熱変位分が補正された実際の相対位置が表示される。
なお、本実施形態では、上述したように、X軸駆動回路13dが第一加工制御部13d3を備える。第一加工制御部13d3は、制御装置60が、工作物30に対し加工を行なう際、熱変位が補正された状態でモータ13cを回転制御できるようにした処理部である。具体的には、第一位置補正装置50が補正した第三相対位置Xnを利用する。
つまり、工程S30において第三相対位置Xnは、制御装置60だけでなく、第一加工制御部13d3の比較器Cにも送信される。このとき、比較器Cには、制御装置60から、本来、工作物30を加工するための目標値である目標相対位置Xtが入力される。そして、比較器Cでは、第三相対位置Xnと目標相対位置Xtとの位置差ΔX2を求め、位相変換器Dに送信する。
次に、位相変換器Dが、位置差ΔX2を、位相信号である回転位相Rax2に変換するとともに、モータ13cに送信し、モータ13cを回転制御する。こうして、X軸補正プログラム64が終了する。これにより、モータ13cは熱変位分が補正された状態で回転制御されるため、加工精度は良好となる。
次に、上記第一位置補正装置50による処理後に、引き続き行なわれる第二位置補正装置70による処理について図11のフローチャート2に基づき説明する。工程S40では、制御装置60のZ軸補正プログラム65が作動され、第二端部位置検出部65aがZ軸駆動回路14dを介して、第二移動装置14のモータ14cを作動させると同時に演算部EのΔZ1を0にリセットする。これにより、図12Dに示すように、Z軸方向(第二軸方向)において、可動テーブル12(工作物30)が砥石車27に対して、図12Dの左方向(Z軸方向)に向って相対移動を開始する。
工程S42(第二端部位置検出部65a)では、第二移動装置14が、可動テーブル12を、砥石車27に対して、さらにZ軸方向へ相対移動させながら、図12Eに示すように、受光面57aが投光面53aから投光される点状(矩形形状)の光を受光する第二端部E3の位置を検出する。このとき、第二端部E3は、投光面53aを形成する半径R1の円の外周縁上の点である。
従って、第二端部E3を検出するためには、上記第一端部E2の検出時のように、まず、可動テーブル12を砥石車27に対してZ軸方向に相対移動させながら、受光面57aが投光面53aから投光される点状の光を受光しなくなるOFF点位置(図略)を検出する。そして、その後、可動テーブル12を、砥石車27に対して逆方向へ相対移動させ、再び、図10Eに示すようにON状態として第二端部E3を検出する。
工程S44(第二端部位置検出部65a)では、第二端部E3を検出したZ軸方向における相対位置Z1を検出し、記憶部62に記憶する。
また、工程S46(第二端部位置検出部65a)では、モータ14cを、工程S42においてOFF点からON状態とした際の回転方向と同じ方向に回転させる。そして、可動テーブル12をZ軸方向に相対移動させることによって、OFF点位置(図略)を検出し、OFF点の手前の位置をZ軸方向の移動速度から演算して、第二端部E4(図12F参照)として記憶する。
工程S48(第二端部位置検出部65a)では、Z軸方向における第二端部E4の相対位置Z2をZ軸方向の移動速度から演算し、記憶部62に記憶させる。上記において、第二端部E4も、第二端部E3と同様に、投光面53aを形成する半径R1の円の外周縁上の点である。このように、Z軸方向において、投光面53aを形成する円の外周縁と接する両端を検出する。また、第二端部E3と第二端部E4とを接続する仮想線は、投光面53aの中心O1を通る。
このとき、Z軸方向における第二端部E3と第二端部E4の間の範囲を第二受光範囲Ar2とする。つまり、光電センサ51は、Z軸方向(第二軸方向)における可動テーブル12及び砥石車27の相対位置が予め設定された第二受光範囲Ar2の幅の範囲内に位置するとき、受光面57aが投光面53aから投光される点状の光を受光可能である。
工程S50(第二端部位置検出部65a)では、演算した相対位置Z2に相対位置Z1を加算したのち等分して相対位置Z1と相対位置Z2の中点であるZ軸方向における相対位置Z3を求め記憶部62に記憶させる。このとき、相対位置Z3は、実際の相対位置であるとともに、第二基準相対位置Zpに相当する。
工程S52(第二端部位置検出部65a)では、砥石車27を、Z軸方向(第二軸方向)に移動させ、中心O1と、中心O2とを完全に一致させる(図略)。こうして、所定の加工待機位置Pへ移動させる工程が終了し、加工プログラムが終了し、次の加工プログラムに備える。
工程S54では、コラム23(工具台)及び可動テーブル12(支持台)のZ軸方向(第二軸方向)における実際の相対位置Z3に対応するモータ14cの所定の制御量Raz1(第二端部E3、E4を検出した時点における所定の制御量に相当する)をエンコーダ14c1が検出し、第二相対位置導出部14d1に送信する。
工程S56(第二相対位置導出部14d1)では、図3に示すように、送信された所定の制御量Raz1に基づき、所定の第二相対位置Zm1が演算され、所定の第二相対位置Zm1が第二位置変更部14d2の演算部Eに送信される。また、同時にZ軸補正プログラム65に記載された「第二基準相対位置Zp」が演算部Eに送信される。
工程S58(第二位置変更部14d2)では、図3に示すように、演算部Eにおいて、送信された第二基準相対位置Zpと所定の第二相対位置Zm1との間の差である位置誤差ΔZ1が演算され(上記式(2)参照)、位置誤差ΔZ1が第二位置変更部14d2の演算部Fに送信される。また、このとき、演算部Fには、第二相対位置導出部14d1から、所定の第二相対位置Zm1が送信される。なお、このとき、位置誤差ΔZ1は、温度上昇による熱変位によって生じた誤差である。位置誤差ΔZ1は、次のZ軸補正プログラム65の作動時まで記憶保持される。
工程S60(第二位置変更部14d2)では、演算部Fが、上記式(4)に基づき、第四相対位置Znを演算する。ここで、第四相対位置Znは、所定の第二相対位置Zm1に対し、位置誤差ΔZ1分を補正したものである。つまり、第四相対位置Znは、熱変位分が補正された実際の相対位置となっている。
そして、工程S62(第二位置変更部14d2)において、第四相対位置Znは、制御装置60に送信され、表示部63に表示される。これにより、表示部63には、熱変位分が補正された正確な相対位置が表示される。
なお、本実施形態では、上述したようにZ軸駆動回路14dが第二加工制御部14d3を備える。第二加工制御部14d3は、制御装置60が、工作物30に対し、加工を行なう際、熱変位が補正された状態でモータ14cを回転制御できるようにした処理部である。具体的には、第二位置補正装置70が補正した第四相対位置Znを利用する。
つまり、工程S60において、第四相対位置Znは、表示部63(制御装置60)だけでなく、第二加工制御部14d3の比較器Gにも送信される。このとき、比較器Gには、制御装置60から、本来、工作物30を加工するための目標値である目標相対位置Ztが入力される。比較器Gでは、第四相対位置Znと目標相対位置Ztとの位置差ΔZ2を求め位相変換器Hに送信する。
位相変換器Dは、位置差ΔZ2を、位相信号である回転位相Raz2に変換するとともに、回転位相Raz2をモータ14cに送信し、モータ14cを回転制御する。こうして、Z軸補正プログラム65が終了する。これにより、モータ14cは熱変位分が補正された状態で回転制御されるため、加工精度は良好となる。所定の加工待機位置Pにある状態から加工プログラムが開始され、所定の加工待機位置Pへ戻ってから加工プログラムが終了するようになっている。所定の加工待機位置Pから加工位置へ移動させるときに、位置誤差ΔX1だけ補正した第三相対位置Xnと、位置誤差ΔZ1だけ補正した第四相対位置Znを利用するので、加工精度は良好となる。
また、以降においても、例えば、一つの加工プログラムが終了する間際の所定の加工待機位置Pへ移動させる工程が開始されたとき、温度が所定温度(例えば1℃)上昇していることが確認された場合に、工程S10−工程S32、工程S40−工程S62が繰り返し実施される。なお、これらの制御は、制御装置60によって、自動で行なわれる。ただし、この態様に限らず、1サイクルの加工プログラムが終了し、所定の加工待機位置Pにある状態で作業者が、昇温した温度を確認しながら、手動でX軸方向で工作物30側へ移動させ、X軸補正プログラム64、Z軸補正プログラム65を順次実行させてもよい。さらに、他の実施例として、新たなボールねじが取り付けられ、加工開始ボタンが押される前に、昇温を確認し、昇温している場合に、手動でX軸方向で工作物30側へ移動させ、X軸補正プログラム64、Z軸補正プログラム65を順次実行させ、工程S10−工程S32、工程S40−工程S62が実施されてもよい。
(1−4.第一実施形態による効果)
上記第一実施形態のねじ研削盤10(工作機械)によれば、第一位置補正装置50(及び第二位置補正装置70)は、第一移動装置13(第二移動装置14)が可動テーブル12及びコラム23を第一軸方向(第二軸方向)に相対移動させ、矩形形状の光を第一スリット板51a及び第二スリット板51bを介して受光素子57の受光面57aに受光させ第一受光範囲Ar1(第二受光範囲Ar2)における第一端部E1、E2(第二端部E3、E4)の位置を検出する第一端部位置検出部64a(第二端部位置検出部65a)と、第一端部E1、E2(第二端部E3、E4)を検出した時点における第一移動装置13(第二移動装置14)の所定の制御量Rax1(所定の制御量Raz1)に基づき所定の第一相対位置Xm1(所定の第二相対位置Zm1)を演算する第一相対位置導出部13d1(第二相対位置導出部14d1)と、予め設定された第一受光範囲Ar1(第二受光範囲Ar2)内に位置し予め準備される第一基準相対位置Xp(第二基準相対位置Zp)に基づいて所定の第一相対位置Xm1(所定の第二相対位置Zm1)を位置誤差ΔX1(位置誤差ΔZ1)だけ補正して第三相対位置Xn(第四相対位置Zn)に変更する第一位置変更部13d2(第二位置変更部14d2)と、を備える。
このように、本発明に係るねじ研削盤10(工作機械)では、熱変位後において、可動テーブル12(支持台)及びコラム23(工具台)の相対位置を、一対の投光素子53と受光素子57とからなる光電センサ51を用いて第一基準相対位置Xp(第二基準相対位置Zp)に位置させる。また、第一基準相対位置Xp(第二基準相対位置Zp)に位置したときの可動テーブル12(支持台)及びコラム23(工具台)の演算上の相対位置である所定の第一相対位置Xm1(所定の第二相対位置Zm1)を求める。そして、第一位置変更部13d2(第二位置変更部14d2)によって、所定の第一相対位置Xm1(所定の第二相対位置Zm1)を第一基準相対位置Xp(第二基準相対位置Zp)に基づき位置誤差ΔX1(位置誤差ΔZ1)だけ補正する。これにより、所定の第一相対位置Xm1(所定の第二相対位置Zm1)が熱変位していた場合、安価な構成にもかかわらず精度よく補正できる。
また、このとき、ねじ研削盤10(工作機械)は、砥石車27(工具)によって工作物30を加工する。このため、加工位置周辺における環境では、通常、クーラントや切り粉が大量に浮遊しており、視界はよくない。しかしながら、このような劣悪な環境においても、光電センサ51は、例え安価なものであっても、投光素子53から投光された光を、受光素子57において短時間で且つ比較的精度よく検出可能である。このため、さらに安価な構成によって熱変位後における所定の第一相対位置Xm1(所定の第二相対位置Zm1)の把握が精度よく行なえ、延いては所定の第一相対位置Xm1(所定の第二相対位置Zm1)に対する補正が精度よく行える。また、光電センサ51は、上述した様なクーラントや切り粉が浮遊している環境において高い耐久性を備えるため、高い耐久性を有した第一位置補正装置50が得られる。
また、このとき、投光面53aから投光され、受光面57aに受光される光は、第一スリット板51aの第一スリット51a3を通過したのち、第一スリット51a3と直交し且つX軸方向(第一軸方向)と平行に形成された第二スリット板51bの直線状の第二スリット51b3を通過することにより、矩形状の点となって受光される。これにより、各端部E1−E4の位置が精度よく検出できるので、各端部E1−E4の位置に対応する熱変位後における相対位置である所定の第一相対位置Xm1、及び所定の第二相対位置Zm1が精度よく検出できる。
また、上記第一実施形態では、第一位置補正装置50が検出する第一受光範囲Ar1及び第二受光範囲Ar2の第一、第二端部は、X軸方向(第一軸方向)における第一受光範囲Ar1、及びZ軸方向(第二軸方向)における第二受光範囲Ar2の両側の第一端部E1,E2、及び第二端部E3,E4である。そして、第一受光範囲Ar1及び第二受光範囲Ar2において、第一端部E1、E2及び第二端部E3、E4を検出し、検出した第一端部E1、E2及び第二端部E3、E4に基づき熱変位後における所定の第一相対位置Xm1、及び所定の第二相対位置Zm1を演算する。
その後、所定の第一相対位置Xm1、及び所定の第二相対位置Zm1に基づき、熱変位分が補正された第三相対位置Xn及び第四相対位置Znが得られる。このように、簡易な方法であるが、第一受光範囲Ar1及び第二受光範囲Ar2の両端部を求め、求めた両端部に基づき熱変位後における実際の第三相対位置Xn、及び第四相対位置Znを導出するので、精度がよい。
また、上記第一実施形態では、第一位置補正装置50において、第一軸方向は、コラム23(工具台)が可動テーブル12(支持台)に対して相対的に接離する方向(X軸方向)である。また第二位置補正装置70において、第二軸方向は、コラム23(工具台)が可動テーブル12(支持台)に対して相対的に平行移動する方向(Z軸方向)である。
そして、第一位置補正装置50は、第一受光範囲Ar1の第一端部E1,E2を検出する際、初めに砥石車27が、工作物30を加工する加工位置Pwに位置する状態から、コラム23(工具台)を可動テーブル12(支持台)に対して第一軸方向に相対移動させて検出する。これにより、第一位置補正装置50では、効率的に熱変位量が精度よく検出できる。つまり、加工位置Pwに位置する砥石車27を備えるコラム23(工具台)を、加工待機位置Pに向って第一軸方向に相対移動させる際の移動を利用して、X軸方向における第一受光範囲Ar1の第一端部E1、E2が速やかに検出できる。
その後、第二位置補正装置70は、可動テーブル12(支持台)を、コラム23(工具台)に対して第二軸方向(Z軸方向)に相対移動させ、第二受光範囲Ar2における第二端部E3、E4の位置を速やかに検出することができる。このように、少ない相対移動だけで、第一端部E1、E2及び第二端部E3、E4が容易に検出でき効率的である。また、投光部52及び受光部55は、ともに、工作物30及び砥石車27の近傍に配置できるので、熱による工作物30及び砥石車27の変位量を把握し易い。
また、上記第一実施形態の第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70では、第一スリット51a3及び第二スリット51b3の少なくとも一方のスリットの幅W1、W2は調整可能である。これにより、測定条件等によって、スリットの幅W1、W2を変える必要が生じても、光電センサ51毎、交換する必要がないため、低コストに対応できる。
また、上記第一実施形態の第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70によれば、投光素子53の投光面53aから投光される光の形状は円形である。これにより、光電センサ51は、安価なもので対応できる。また、X軸方向及びZ軸方向において、どのように配置しても常に対称形となるため、ラフに配置でき、低コストに対応できる。
(1−5.第一実施形態の変形例)
(1−5−1.変形例1)
なお、上記第一実施形態においては、第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70の作動によって、熱変位後における可動テーブル12及び砥石車27の相対位置を検出する際、X軸方向における所定の第一相対位置Xm1及びZ軸方向における所定の第二相対位置Zm1をともに補正した。しかしながら、この態様には限らず、変形例1(図略)として、所定の第一相対位置Xm1及びZ軸方向における所定の第二相対位置Zm1の何れか一方を補正するだけでも良い。これによっても、コスト低減が相応に図れるとともに、工作物30の研削精度も相応に向上する。
(1−5−2.変形例2)
また、上記第一実施形態においては、第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70は、Z軸方向に平行な第一スリット51a3と、X軸方向に平行な第二スリット51b3とが直交するように第一スリット板51a及び第二スリット板51bを光電センサ51の間に配置した。しかし、この態様には限らず、変形例2として、光電センサ51の間には、第一スリット51a3及び第二スリット51b3の何れか一方を設けるだけでも良い。
ただし、第一スリット51a3のみを設けた場合には、図13に示すように、受光面57aによる受光範囲が、第一実施形態の場合より広くなる。これによって、第一実施形態に対し、相対位置の検出精度は低下するが、受光面57aにおいて、X軸方向における両第一端部E1、E2の検出はできる。また、同様に、第二スリット51b3のみを設けた場合(図略)にも、同様に第一実施形態に対し相対位置の検出精度は低下するが、受光面57aにおいて、Z軸方向における両第二端部E3、E4は検出できる。これによっても、工作物30の研削精度は相応に向上する。
(1−5−3.変形例3)
また、上記第一実施形態においては、投光面53aから投光される光の形状は「円」である。しかし、この態様には限らない。変形例3(図略)として、光の形状は、X軸方向及びZ軸方向においてそれぞれ線対称であれば、どのような形状でもよい。例えば、楕円、矩形、だるま形状等どのような形状でもよい。これによっても、第一実施形態と同様の効果が得られる。なお、光の形状が矩形であり、且つ各辺の長さが既知である場合には、光の両端部を検出しなくとも、何れか一方の端部を検出するだけでよい。即ち、片側の端部を検出することにより、X軸方向及びZ軸方向における各中心位置は演算により導出できる。これによっても、相応に効果が得られる。
(1−5−4.変形例4)
また、上記第一実施形態においては、第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70が、第一受光範囲Ar1及び第二受光範囲Ar2の第一端部E1、E2及び第二端部E3、E4を検出する場合、初めに、砥石車27(コラム23(工具台))を第一軸方向に相対移動させて第一受光範囲Ar1における第一端部E1,E2の位置を検出した。そして、その後、可動テーブル12(支持台)を砥石車27に対して第二軸方向に相対移動させて第二受光範囲Ar2における第二端部E3,E4の位置を検出した。これにより、効率的、且つ熱変位量が精度よく検出できると説明した。
しかし、この態様には限らない。変形例4(図略)として、初めに、可動テーブル12(支持台)を砥石車27に対して第二軸方向に相対移動させて第二受光範囲Ar2における第二端部E3,E4の位置を検出し、その後、砥石車27を第一軸方向に相対移動させて第一受光範囲Ar1における第一端部E1,E2の位置を検出してもよい。これによっても、相応に効果は得られる。
(1−5−5.変形例5)
また、上記第一実施形態においては、第一スリット51a3の幅W1と、第二スリット51b3の幅W2と、は調整可能であるとしたが、この態様に限らず、変形例5(図略)として、幅W1及びW2の一方、又は両方が、調整不能であってもよい。これによっても相応の効果は得られる。
(1−5−6.変形例6)
また、上記第一実施形態においては、第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70による処理のタイミングを、各加工プログラム終了後における、各部の温度の昇温に基づくものとして説明したが、この態様には限らない。変形例6(図略)として、第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70は、加工した工作物30の加工済み本数をカウントし、カウントした加工済み本数が予め設定した本数(例えば10本毎)に達するタイミングにおいて、補正の処理を行なっても良い。これによっても、第一実施形態と同様の効果が得られる。
(1−5−7.変形例7)
また、上記第一実施形態においては、第一位置補正装置50及び第二位置補正装置70による熱変位の補正処理では、砥石車27(工具)が工作物30を加工する加工位置Pw(図7参照)からX軸方向に離間し、上述した図2に示す加工待機位置Pに向かって相対移動される際に実施するものとした。ただし、この態様に限らず、変形例7(図略)として、どのような状況において熱変位の補正を行なってもよい。
(1−5−8.変形例8)
また、上記第一実施形態においては、第一位置補正装置50(第二位置補正装置70)の第一相対位置導出部13d1(第二相対位置導出部14d1)及び第一位置変更部13d2(第二位置変更部14d2)は、X軸駆動回路13d(Z軸駆動回路14d)に設けられた。しかしこの態様には限らず、変形例8(図略)として、第一相対位置導出部13d1(第二相対位置導出部14d1)及び第一位置変更部13d2(第二位置変更部14d2)は、制御装置60が備え、全て演算により処理してもよい。これによっても、第一実施形態と同様の効果が得られる。
<2.その他>
なお、上記実施形態では、工作機械は、ねじ研削盤10であるものとして説明した。しかしこの態様には限らず、工作機械は、例えば、通常の研削盤であってもよい。また、工作機械は、センタレスの研削盤であってもよい。これらによっても、第一実施形態と同様の効果が期待できる。