以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
[実施の形態1]
<車両の全体構成>
図1は、実施の形態1に係る排煙検出システムが搭載された車両の全体構成を概略的に示す図である。以下では、車両1がハイブリッド車両である場合について説明するが、本開示に係る排煙検出システムは、ハイブリッド車両に限らず、走行用の組電池が搭載される車両全般(たとえばプラグインハイブリッド車両や電気自動車)にも適用可能である。
図1を参照して、車両1は、組電池10と、監視ユニット20と、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)31と、モータジェネレータ32,33と、動力分割装置34と、エンジン35と、駆動軸36と、駆動輪37と、排煙検出システム4とを備える。
組電池10は、複数のセルを含んで構成される。各セルは、リチウムイオン二次電池またはニッケル水素電池などの二次電池(本開示に係る「二次電池」)である。組電池10は、モータジェネレータ32,33を駆動するための電力を蓄え、PCU31を通じてモータジェネレータ32,33へ電力を供給する。また、組電池10は、モータジェネレータ32,33の発電時にPCU31を通じて発電電力を受けて充電される。
監視ユニット20は、組電池10の状態を監視し、その監視結果をECU100に出力する。監視ユニット20は、電圧センサ群21と、電流センサ22と、温度センサ23とを含む。組電池10および監視ユニット20の構成の詳細については図2にて説明する。
PCU31は、ECU100からの制御信号に従って、組電池10とモータジェネレータ32,33との間で双方向の電力変換を実行する。PCU31は、モータジェネレータ32,33の状態をそれぞれ別々に制御可能に構成されており、たとえば、モータジェネレータ32を回生状態(発電状態)にしつつ、モータジェネレータ33を力行状態にすることができる。PCU31は、たとえば、モータジェネレータ32,33に対応して設けられる2つのインバータと、各インバータに供給される直流電圧を組電池10の出力電圧以上に昇圧するコンバータ(いずれも図示せず)とを含んで構成される。
モータジェネレータ32,33の各々は、交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。モータジェネレータ32は、主として、動力分割装置34を経由してエンジン35により駆動される発電機として用いられる。モータジェネレータ32が発電した電力は、PCU31を介してモータジェネレータ33または組電池10に供給される。モータジェネレータ33は、主として電動機として動作し、駆動輪37を駆動する。モータジェネレータ33は、組電池10からの電力およびモータジェネレータ32の発電電力の少なくとも一方を受けて駆動され、モータジェネレータ33の駆動力は駆動軸36に伝達される。一方、車両の制動時や下り斜面での加速度低減時には、モータジェネレータ33は、発電機として動作して回生発電を行なう。モータジェネレータ33が発電した電力は、PCU31を介して組電池10に供給される。
動力分割装置34は、たとえば、サンギヤ、キャリア、リングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構(図示せず)を含む。動力分割装置34は、エンジン35から出力される動力を、モータジェネレータ32を駆動する動力と、駆動輪37を駆動する動力とに分割する。
エンジン35は、空気と燃料との混合気を燃焼させたときに生じる燃焼エネルギーをピストンやロータなどの運動子の運動エネルギーに変換することによって動力を出力する。
<排煙検出システムの構成>
組電池10に含まれる各セルは、衝撃が加えられたり過充電されたりした場合に熱暴走を起こし、その内部において高温のガスを発生させる可能性がある。そのため、各セルのケースには安全弁7(図3参照)が設けられている。安全弁7は、高温ガスの発生に伴いケース内の圧力が上昇した場合に破断(開口)し、ケース内の高温ガスをケース外部に逃がす。排煙検出システム4は、組電池10からの高温ガスの放出を検出する。これにより、組電池10において熱暴走が発生しているか否かを判定することができる。より具体的には、実施の形態1において、排煙検出システム4は、排煙ダクト5と、温度センサ群6と、制御装置(ECU:Electronic Control Unit)100とを備える。
排煙ダクト5は、組電池10から放出された高温ガスを車両1の外部に排気するために設けられている。排煙ダクト5の一方端は、組電池10の近傍に設けられている。排煙ダクト5の他方端には、車両外部に連通する排気口が設けられている。
温度センサ群6は、排煙ダクト14内において、安全弁7から放出されて排煙ダクト5を流れる高温ガスの温度(後述する温度TG1,TG2など)を検出し、その検出結果をECU100に出力する。温度センサ群6に含まれる各センサには、たとえばサーミスタを採用することができる。温度センサ群6の構成については図3にて説明する。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、各種信号を入出力するための入出力ポート(いずれも図示せず)とを含んで構成される。ECU100は、各センサから受ける信号ならびにメモリに記憶されたプログラムおよびマップに基づいて、車両1の各機器(PCU31やエンジン35等)を制御する。ECU100は、機能毎に複数のECUに分割されて構成されていてもよい。
実施の形態1においてECU100(本開示に係る「判定装置」に相当)により実行される主要な処理として、組電池10から排出されるガスを検出することによって組電池10における熱暴走の発生の有無を判定するための「温度上昇検出処理」と「熱暴走判定処理」とが挙げられる。この処理についても後に詳細に説明する。
<組電池の構成>
図2は、組電池10および監視ユニット20の構成をより詳細に示す図である。図2を参照して、組電池10は、直列接続されたM個のモジュール11〜1Mを含む。モジュール11〜1Mの各々は、並列接続されたN個のセルを含む。なお、M,Nは、2以上の自然数である。
電圧センサ211は、モジュール11の電圧VB1を検出する。電圧センサ212は、モジュール12の電圧VB2を検出する。残りの電圧センサ213〜21Mについても同様である。電流センサ22は、組電池10に入出力される電流IBを検出する。温度センサ23は、組電池10の温度TBを検出する。各センサは、その検出結果をECU100に出力する。
図2に示すように、組電池10に設けられた電圧センサ211〜21Mは、対応するモジュールの電圧VBi(i=1〜M)を検出する。この電圧VBiは、並列接続されたM個のセルの電圧である。そのため、M個のセルのうちのいずれかのセルから高温ガスが放出され、そのセルの電圧が低下したとしても、並列接続された残り正常なセルの影響により、電圧低下が検出されない可能性がある。よって、たとえば図2に示す構成を有する組電池10においては、電圧センサを用いることなく高精度に高温ガスの放出を検出する(熱暴走の有無を判定する)ことが求められる。
そこで、実施の形態1においては、各モジュールについて、排煙ダクト5内の異なる領域に複数(この例では2つ)の温度センサを設け、2つの温度センサの両方により基準量を上回る温度上昇が一定期間検出され、かつ、2つの温度センサによる温度上昇の検出期間の時間差が所定時間内であった場合に、組電池10から高温ガスが放出されたとして熱暴走が発生したと判定するものとする。このように、温度センサを二重化し、さらに、異なる領域の温度上昇がほぼ同時に検出されることを条件とすることにより、温度上昇の誤検出(高温ガスの放出の誤検出)の可能性を低減させることができるためである。
図3は、排煙ダクト5および温度センサ群6の構成の一例を示す模式図である。図3には3つのモジュール11〜13のみが示されている(言い換えると、M=3の場合の組電池10の構成が示されている)。
モジュール11〜13は、x方向に並ぶように配置されている。各モジュール11〜13内では、N個のセルがy方向に配置されている。ただし、図面が煩雑になるのを防ぐため、図3ではモジュール11内の1つのセル111のみを示している。このセル111が熱暴走して高温ガスが放出されるものとする(排煙経路を矢印で示す)。図中下方(負のz軸方向)が鉛直方向である。
セル111は円筒形のケースを有し、安全弁7はケース下方に設けられている。そのため、排煙ダクト5もモジュール11〜13の下方に設けられている。より具体的には、排煙ダクト5は、モジュール11〜13の下方において、モジュール11〜13の一方端(負のy軸方向の端部)に設けられたダクト51と、モジュール11〜13の他方端(正のy軸方向の端部)に設けられたダクト52とを含む。
セル111から放出された高温ガスの一部は、ダクト51を通って車外に排出され、高温ガスの残りはダクト52を通って車外に排出される。温度センサ611はダクト51に設けられており、温度センサ612はダクト52に設けられている。そのため、温度センサ611によりダクト51内の高温ガスが検出され、温度センサ612によりダクト52内の高温ガスが検出される。ダクト51内の領域が本開示に係る「第1の領域」に相当し、ダクト52内の領域が本開示に係る「第2の領域」に相当する。
詳細な説明は繰り返さないが、他のモジュール12,13に対応して設けられた温度センサ(621,622,631,632)についても同様である。なお、図3に示した排煙ダクト5および温度センサ群6の構成は一例に過ぎず、各モジュールに対応してダクト内に複数の温度センサが設けられているのであれば、他の構成を採用することも可能である。
以下では、モジュール11内のセル111から高温ガスが放出されたとして、その高温ガスの放出を温度センサ611,612により検出する処理について代表的に説明する。簡単のため、温度センサ611を「第1センサ」と記載し、温度センサ612を「第2センサ」と記載する。第1センサおよび第2センサは、それぞれ、本開示に係る「第1の温度センサ」および「第2の温度センサ」に相当する。
<熱暴走判定処理>
図4は、実施の形態1における熱暴走判定処理を説明するためのタイムチャートである。図4において、横軸は、ある開始時刻t0からの経過時間を示す。縦軸は、上から順に、第1センサに関連する4つのパラメータと、第2センサに関連する4つのパラメータと、第1および第2センサの検出結果に基づいて設定される3つの制御フラグとを示す。
第1センサに関連するパラメータとしては、上から順に、第1センサにより検出されるダクト51内の温度TG1と、温度TG1の温度上昇量ΔT1(Δt(たとえば数秒)だけ過去の時刻と現時刻との温度差)と、基準量を上回る温度上昇が生じた時間を計測するための2つのカウント値C1A,C1Bとが示されている。第2センサに関連するパラメータも同様である。
制御フラグは、温度上昇が生じたとの計測結果を確定するための2つの確定フラグFA,FBと、熱暴走フラグ(後述)とを含む。確定フラグFAは、0,1,2のいずかの値を取る3値フラグであり、確定フラグFBは、0または1を取る2値フラグである。
図4を参照して、時刻t0においては、モジュール11において熱暴走は起こっていないが、その後(時刻t0と時刻t1との間)にモジュール11に含まれるいずれかのセル(この例では第2センサよりも第1センサに近いセル)の熱暴走が起こり、高温ガスが放出されたものとする。
時刻t1から温度TG1の上昇が開始し、時刻t2において温度上昇量ΔT1が基準量RA以上になると、第1センサに対応して設けられる一方のカウント値C1Aがインクリメントされる。温度上昇量ΔT1が基準量RA以上である間、カウント値C1Aのインクリメントが継続され、時刻t3においてカウント値C1Aが判定値Xに達する。そうすると、第1センサにより基準量RA以上の温度上昇が検出されたとの検出結果を確定すべく、確定フラグFAがFA=0からFA=1にインクリメントされる。
温度TG1の上昇が続き、温度上昇量ΔT1が基準量RB以上になると、もう一方のカウント値C1Bがインクリメントされる(時刻t4)。温度上昇量ΔT1が基準量RB以上である間、カウント値C1Bが増加し、カウント値C1Bが判定値Yに達すると(時刻t6)、確定フラグFBがFB=0からFB=1にインクリメントされる。これにより、第1センサにより基準量RB以上の温度上昇が検出されたとの検出結果が確定される。
以下に説明するように、第2センサについても第1センサと同様の処理が行なわれる。すなわち、図4に示す例では、時刻t5から温度TG2の上昇が開始し、温度上昇量ΔT2が基準量RA以上になると、一方のカウント値C2Aがインクリメントされる(時刻t7)。温度上昇量ΔT2が基準量RA以上である期間、カウント値C2Aのインクリメントが継続され、時刻t8においてカウント値C2Aが判定値Xに達すると、確定フラグFAがFA=1からFA=2にさらにインクリメントされる。これは、第1センサおよび第2センサの両方により基準量RA以上の温度上昇が検出されたとの検出結果を確定することを意味する。そうすると、熱暴走フラグがオフからオンに切り替えられ、モジュール11に含まれるN個のセルのうちのいずかのセルにおいて熱暴走が発生したと判定される。
図4に示す例では、その後も温度TG2の上昇が続き、温度上昇量ΔT2が基準量RB以上になり、もう一方のカウント値C2Bがインクリメントされる(時刻t9)。温度上昇量ΔT2が基準量RB以上であるとカウント値C2Bのインクリメントが続き、カウント値C2Bが判定値Yに達する(時刻t10)。しかし、確定フラグFBは2値フラグであり、既に1となっているため、確定フラグFBはそれ以上、インクリメントされることはない。この理由について以下に説明する。
たとえば第1センサに近く第2センサからは遠いセルで熱暴走が発生した場合など、熱暴走が発生したセルのモジュール内での位置(図3のy方向の位置)によっては、第1センサおよび第2センサのうちの一方では温度上昇量が基準量RBを上回るものの、他方では温度上昇量が基準量RBに達しない可能性がある。このような可能性に備え、実施の形態1では、相対的に小さな基準量RAに対応するカウント値C1A,C2Aについては両方が判定値X以上になることを要求するが、相対的に大きな基準量RBに対応するカウント値C1B,C2Bについては、いずれか一方が判定値Y以上になれば、熱暴走が発生していると判定するものとしている。
なお、図4に示す例では、第1センサと第2センサとで共通の基準量RA,RBが設定される例を説明したが、センサ毎に異なる基準量を設定してもよい。基準量RA,RBの各々は、本開示に係る「第1の基準量」または「第2の基準量」に相当する。
また、温度上昇量ΔT1が基準量RAに達し、第1センサのカウント値C1Aのインクリメントが開始されてから、もう一方のカウント値C1Bが判定値Yに達するまでの期間(時刻t2から時刻t6までの期間)が本開示に係る「第1の期間」に相当する。温度上昇量ΔT1が基準量RAに達し、第1センサのカウント値C1Aのインクリメントが開始されてから、第2センサのカウント値C2Aが判定値Xに達するまでの期間(時刻t2から時刻t8までの期間)が本開示に係る「第2の期間」に相当する。
<熱暴走判定フロー>
実施の形態1においては、排煙ダクト5における温度上昇を検出するための温度上昇検出処理と、温度上昇検出処理の処理結果に基づいて組電池10の熱暴走を判定する熱暴走判定処理とが並行して実行される。
図5は、実施の形態1における温度上昇検出処理を示すアクティビティ図である。このアクティビティ図は、所定条件が成立した場合(たとえば組電池10のSOC(State Of Charge)が規定値以上になった場合や温度TBが規定温度以上になった場合)に図示しないメインルーチンから呼び出されて実行される。このアクティビティ図ならびに後述する図5および6に示すフローチャートに含まれる各ステップ(以下、「S」と略す)は、基本的にはECU100によるソフトウェア処理によって実現されるが、ECU100内に作製された専用のハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。
図5を参照して、図中左側に記載されたS1,S100の処理とS2,S200の処理とは、第1のセンサについて行なわれる処理である。図中右側に記載されたS3,S300の処理とS4,S400の処理とは、第2のセンサについて行なわれる処理である。これらの処理を挟み込む2本の同期バー(フォークおよびジョイン)は、上記4つの処理が並列に実行されることを示す。
以下では、図中、最も左側に記載されたS1,S100の処理について説明する。ECU100は、ダクト51内の温度上昇量の比較に用いられる基準量をRAに設定(S1)した上で、第1センサについての第1の検出処理を実行する(S100)。
図6は、第1の検出処理(基準量がRAである場合の第1センサについての温度上昇検出処理)の詳細を示すフローチャートである。図4および図6を参照して、S101において、ECU100は、第1センサによる温度検出を終了するための条件(処理終了条件)が成立したか否かを判定する。たとえば、車両1の走行が行なわれることなく組電池10のSOCが規定値未満に低下した場合や組電池10の温度TBが規定温度未満に低下した場合(S101においてYES)には、処理がリターンに戻される。
処理終了条件が成立するまでの間(S101においてNO)、ECU100は、第1センサによりダクト51内の温度TG1を取得する(S102)。
S103において、ECU100は、温度TG1の温度上昇量ΔT1を算出する。温度上昇量ΔT1としては、S102にて取得された現時刻tでの値(TG1(t))と、現時刻よりもΔt(たとえば数秒)だけ過去の時刻での値(TG1(t−Δt)との差を用いることができる(ΔT1=TG1(t)−TG1(t−Δt))。
S104において、ECU100は、温度上昇量ΔT1が基準量RA以上であるか否かを判定する。温度上昇量ΔT1が基準量RA未満である場合(S104においてNO)には、処理がS101に戻される(時刻t0から時刻t2までの期間参照)。温度上昇量ΔT1が基準量RA以上である場合(S104においてYES)、ECU100は、処理をS105に進め、カウント値C1Aをインクリメントさせる(時刻t2から時刻t3までの期間参照)。
S106において、ECU100は、カウント値C1Aが判定値X以上であるか否かを判定する。カウント値C1Aが判定値X未満である場合(S106においてNO)には、処理がS101に戻される。そうすると、温度上昇量ΔT1が基準量RA以上である間、カウント値C1Aのインクリメントが継続されることとなる。
カウント値C1Aが判定値Xに達すると(S106においてYES)、ECU100は、確定フラグFAをインクリメントする(S107)。図4に示した例では、時刻t3において確定フラグFAがFA=0からFA=1にインクリメントされる。その後、ECU100は、図5のアクティビティ図に処理を戻す。
なお、図示しないが、ECU100は、ダクト51内の温度上昇の開始時刻(図4の例では時刻t1)から規定の時間が経過すると、カウント値C1Aを0にリセットする(時刻t4と時刻t5との間の期間参照)。
図6では図5の左端に示した第1の検出処理(S100の処理)について説明したが、第2〜第4の検出処理(S200〜S400の処理)が同様に実行される。これら残りの3つの検出処理に関しては、対象とするセンサ(第1センサまたは第2センサ)や基準量(RAやRB)を適宜読み替えればよいため、詳細な説明は繰り返さない。
図7は、実施の形態1における熱暴走判定処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、温度上昇検出処理(第1〜第4の検出処理)の結果、確定フラグFA,FBのいずれかがインクリメントされた場合、すなわち(FA,FB)=(0,0)の状態から脱した場合に実行される。
図7を参照して、S10において、現時刻が、ダクト51,52内の最初の温度上昇開始時刻から所定時間以内であるか否かを判定する。具体的には、ΔT1>RAとなった時刻と、ΔT2>RAとなった時刻とのうちの早い方の時刻(図4に示した例では時刻t2)が最初の温度上昇開始時刻である。
現時刻が最初の温度上昇開始時刻から所定時間(後述)以内である場合(S10においてYES)に、ECU100は、続くS20において、確定フラグFA=2であり、かつ確定フラグFB=1であるか否かを判定する。
現時刻が最初の温度上昇開始時刻から所定時間以内であるものの、確定フラグが(FA,FB)=(2,1)ではない場合(S20においてNO)には、ECU100は、処理をS10に戻す。これにより、最初の温度上昇開始時刻から所定時間が経過するまで、確定フラグがFA=2かつFB=1に切り替わるまでの時間が確保される。FA=2かつFB=1になると(S20においてYES)、ECU100は、熱暴走フラグをオンにする(S30)。つまり、ECU100は、組電池10(具体的には、モジュール11に含まれるN個のセルのうちの少なくとも1つのセル)において熱暴走が発生していると判定する。
一方、温度上昇検出処理により確定フラグFA,FBがインクリメントされているものの、FA=2かつFB=1になることなく、最初の温度上昇開始時刻から所定時間が経過した場合(S10においてNO)には、ECU100は、それに基づいて熱暴走判定を行なわないように確定フラグFA,FBをクリアする(S40)。つまり、ECU100は、確定フラグFA=0に戻すとともに確定フラグFB=0に戻す。
S10においてNOと判定されてS40に進む処理は、第1センサによる温度上昇の検出時刻と第2センサによる温度上昇の検出時刻との同時性を担保するための処理である。より詳細に説明すると、熱暴走に起因する高温ガス放出が実際に起こった場合、第1センサによる検出時刻と、第2センサによる検出時刻との間には、高々たとえば数秒〜数十秒程度の時間差しか生じない。そのため、上記2つの検出時刻が上記時間差よりも離れている場合には、誤検出の可能性があるとして、熱暴走との判定を行なわないようにする。以上の理由から、S10における「所定時間」は、たとえば数秒〜数十秒程度に設定することができる。
以上のように、実施の形態1によれば、並列に接続されたN個のセルを含むモジュールにおいて、第1センサおよび第2センサにより温度センサを二重化することでセンサ故障に備えることができる。
また、第1センサがモジュール11の一方端のダクト51内に設けられ、第2センサがモジュール11の他方端のダクト52内に設けられているので、熱暴走発生時に放出される高温ガスにより広範囲に亘る温度上昇が起こったことが検出される。さらに、温度上昇が1回のみ検出されることではなく、カウント値が判定値以上になるまで継続的(連続的に限らず断続的であってもよい)な温度上昇が検出することが条件とされる。これにより、実際には熱暴走が起こっていないにも拘らず熱暴走が起こったとの誤検出の可能性を低減することができる。
また、ダクト51内での温度上昇の検出時刻とダクト52内での温度上昇の検出時刻との時間差が少ない(2箇所での温度上昇検出が所定時間内に行なわれる)との条件も課されるので、誤検出の可能性を一層低減することができる。したがって、実施の形態1によれば、組電池10からの高温ガスの放出の有無の判定精度を向上させることができる。
なお、実施の形態1では、組電池10の各モジュール11〜1MにN個のセルが並列接続されている構成を例に説明したが、本開示における熱暴走の判定手法は、組電池の構成(セルの直列接続/並列接続)を問わず適用可能である。また、図3に示したようにモジュール11〜13に毎に温度センサ(温度センサ611,612,621,622,631,632)を設ける必要はなく、ダクト51,52の各々の排煙経路(図3の矢印参照)の下流に1個ずつ、温度センサを設けてもよい。
また、温度上昇量ΔT1,ΔT2について、現時刻よりもΔt(たとえば数秒)だけ過去の時刻での温度を基準とした値と説明した。しかし、温度上昇量ΔT1,ΔT2の算出手法は、これに限定されるものではない。一例として、熱暴走が起こっていない場合には、温度TG1はほぼ一定となる。そのため、温度TG1が一定値を示す期間が続いた場合に、そのときの温度(一定値)をベース温度T1baseとし、現時刻の温度TG1との差分を温度上昇量ΔT1としてもよい(ΔT1=TG1−T1base)。温度上昇量ΔT2についても同様である。
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1では、組電池10から放出されたガスを外部に排出する排煙ダクト5に温度センサ611,612,621,622,631,632が設置される構成を例に説明した。しかし、温度センサの設置位置は、組電池10から放出されたガスが流れる経路内であれば排煙ダクト内でなくてもよい。
図8は、実施の形態1の変形例に係る排煙検出システムが搭載された車両の全体構成を概略的に示す図である。図8を参照して、実施の形態1の変形例に係る排煙検出システム4Aは、排煙ダクト5を備えない点において、実施の形態1に係る排煙検出システム4(図1参照)と異なる。車両1Aの全体構成は、実施の形態1における車両1の全体構成と同様である。
図9は、実施の形態1の変形例における温度センサの設置位置を模式的に示す図である。図9には、組電池10に含まれるM個のモジュール11〜1Mのうちのモジュール11〜18(すなわち、M=8の例)が代表的に示されている。なお、図面が煩雑になるのを防ぐため、モジュール11〜18の各々は破線で示されている。また、実施の形態1と同様にモジュールの個数Mは特に限定されるものではない。
各モジュール11〜18は、電池ケース8(図9ではロアケースのみを示す)の内部に収容されている。電池ケース8は、たとえば車外に搭載され、各モジュール11〜18から放出されたガスを外部に排出可能に構成されている。図9では排煙経路(本開示における「ガスが流れる経路」に相当)の代表例が矢印により示されている。
モジュール11には、温度センサ611,612が設けられている。より詳細には、温度センサ611,612は、モジュール11に含まれる互いに異なるセル上に間隔を空けて配置されている。温度センサ611,612の各々は、自身が設置されたセル(およびその近傍)の温度を検出し、その検出結果を示す信号をECU100に出力する。
同様に、モジュール11には、温度センサ621,622が互いに異なるセル上に間隔を空けて配置されている。温度センサ621,622の各々は、自身が設置されたセル(およびその近傍)の温度を検出し、その検出結果を示す信号をECU100に出力する。図示しないが、残りのモジュール13〜18についても同様に温度センサが設けられていてもよい。
図9に示す例では、温度センサ611,612のうちの一方が本開示に係る「第1の温度センサ」に相当し、他方が本開示に係る「第2の温度センサ」に相当する。このように、本開示において排煙ダクトは必須の構成要素ではない。本開示に係る「第1および第2の温度センサ」の設置位置(言い換えると、本開示における「ガスが流れる経路」)は、排煙ダクト内に限られず、セル上であってもよい。
さらに、本開示に係る「第1および第2の温度センサ」は、セル上に直接設置されていなくてもよい。モジュール11(に含まれるいずれかのセル)から排出された高温ガスは、電池ケース8内全体に広がるため、本開示に係る「第1および第2の温度センサ」は、モジュール11を覆う空間内(電池ケース8の内部のいずれかの箇所)に設置されていればよい。この場合、本開示に係る「第1および第2の温度センサ」は、モジュール11の雰囲気温度(モジュール11を覆う空間の温度)を検出することとなる。
なお、高温ガスは電池ケース8内全体に広がることから、温度センサ611,612,621,622のうちの任意の1つが「第1の温度センサ」に相当し、他の任意の1つが「第2の温度センサ」に相当するとしてもよい。
実施の形態1の変形例においても、前述の実施の形態1と同様の処理(図4〜図7参照)により、実際には熱暴走が起こっていないにも拘らず熱暴走が起こったとの誤検出の可能性を低減することができる。よって、電圧センサを用いることなく、組電池10からのガスの放出の有無の判定精度を向上させることができる。
[実施の形態2]
<熱暴走/センサ故障の切り分け>
多重化された複数の温度センサのうちのいずれかの故障に起因する温度上昇の誤検出が起こり、実際には高温ガスが放出されていない(熱暴走が起こっていない)にも拘らず熱暴走が起こったとの誤判定が生じる可能性がある。そこで、実施の形態2においては以下に説明するように、温度上昇が検出された場合に、それが実際の熱暴走によるものなのか温度センサの故障によるものなのかが切り分けられる。なお、実施の形態2に係る排煙検出システム、および、それが搭載された車両の構成は、実施の形態1における構成(図1〜図3参照)と同様である。
図10は、第1センサおよび第2センサの正常時における熱暴走判定処理を説明するためのタイムチャートである。図10および後述する図11において、横軸は、ある開始時刻t10からの経過時間を示す。縦軸は、上から順に、第1センサに関連する3つのパラメータと、第2センサに関連する3つのパラメータと、第1および第2センサの検出結果に基づいて制御される3つの制御フラグとを示す。
第1センサに関連するパラメータとしては、上から順に、第1センサにより検出されるダクト51内の温度TG1と、現時刻tとΔtだけ過去の時刻(t−Δt)との間のダクト51内の温度上昇量ΔT1と、基準量REFを上回る温度上昇が生じた時間を計測するためのカウント値C1とが示されている。
第2センサに関連するパラメータも同様である。すなわち、第2センサに関連するパラメータは、第2センサにより検出されるダクト52内の温度TG2と、現時刻tとΔtだけ過去の時刻(t−Δt)との間のダクト52内の温度差である温度上昇量ΔT2と、基準量REFを上回る温度上昇が生じた時間を計測するためのカウント値C2とを含む。
制御フラグは、ダクト51,52内の温度上昇が生じたとの検出結果を管理するための管理フラグFを含む。管理フラグFは、F=0,1,2のいずかの値を取る3値フラグである。また、制御フラグは、熱暴走が生じたか否かを判定するための熱暴走フラグと、第1センサまたは第2センサの故障を診断するための故障診断フラグとをさらに含む。熱暴走フラグおよび故障診断フラグの各々は、オン/オフが切り替えられる2値フラグである。
図10を参照して、時刻t10においては、モジュール11において熱暴走は起こっていない。その後、モジュール11に含まれるセル111(第2センサよりも第1センサに近いセル)の熱暴走が起こり、高温ガスが放出されたものとする。
時刻t11から温度TG1の上昇が開始し、時刻t12において温度上昇量ΔT1が基準量REF以上になると、カウント値C1がインクリメントされる。温度上昇量ΔT1が基準量REF以上である間、カウント値C1のインクリメントが継続され、時刻t13においてカウント値C1が判定値Xに達する。そうすると、第1センサにより基準量REF以上の温度上昇が検出されたとの検出結果を確定すべく、管理フラグFがF=0からF=1にインクリメントされる。
第2センサについても第1センサと同様の処理が行なわれる。すなわち、図10に示す例では、時刻t14から温度TG2の上昇が開始し、温度上昇量ΔT2が基準量REF以上になると、カウント値C2がインクリメントされる(時刻t15)。温度上昇量ΔT2が基準量REF以上である期間、カウント値C2のインクリメントが継続され、時刻t16においてカウント値C2が判定値Xに達すると、管理フラグFがF=1からF=2にさらにインクリメントされる。これは、第1センサおよび第2センサの両方により基準量REF以上の温度上昇が検出されたとの検出結果が得られたことを意味する。そのため、熱暴走フラグがオフからオンに切り替えられ、モジュール11に含まれるN個のセルのうちのいずかのセルにおいて熱暴走が発生したと判定される。なお、熱暴走フラグの切り替えに伴い、カウント値C1,C2は、いずれもリセットされる。
このように、実施の形態2においては、組電池10に設けられた温度センサが多重化されている。たとえば、第1センサは、モジュール11の一方端のダクト51内に設けられ、第2センサは、モジュール11の他方端のダクト52内に設けられている。つまり、第1センサおよび第2センサは、排煙ダクト5内の離れた領域に設けられている。熱暴走発生時には、放出された高温ガスにより広範囲に亘る温度上昇が生じる。したがって、互いに離間して設けられた2つの温度センサにより温度上昇が検出された場合には、それが熱暴走によるものであると結論付けることができる。
また、実施の形態2では、瞬間的な温度上昇ではなく、カウント値C1,C2がいずれも判定値X以上になるまでの継続的(連続的に限らず断続的であってもよい)な温度上昇が検出された場合に、モジュール11内で熱暴走が発生したと判定される。これにより、ノイズ等に起因する熱暴走の誤判定を防止することができる。
<故障診断>
次に、第1センサが故障していることにより、熱暴走が発生したとの誤判定が生じ得る状況について説明する。第2センサは正常であるとする。
図11は、第1センサが故障した場合の熱暴走判定処理を説明するためのタイムチャートである。図11を参照して、実際には高温ガスは放出されていないものの、故障した第1センサにより時刻t21から温度TG1の上昇が検出される。時刻t22において温度上昇量ΔT1が基準量REF以上になり、カウント値C1のインクリメントが開始される。そして、時刻t23においてカウント値C1が判定値Xに達し、管理フラグFがF=0からF=1にインクリメントされる。一方、正常である第2センサでは、温度上昇は検出されない。
実施の形態2では、第1センサによる温度上昇の誤検出に起因してカウント値C1が判定値Xに達してからも、カウント値C1のインクリメントが継続される。第2センサにより温度上昇が検出されることなくカウント値C1が判定値Yに達すると、第1センサによる温度上昇の検出が誤りであったとして、管理フラグFがF=1からF=0にデクリメント(リセット)される(時刻t24)。そうすると、故障診断フラグがオフからオンに切り替えられ、第1センサおよび第2センサのうちの一方が故障していると診断される。
このように、実施の形態2においては、モジュール11において熱暴走が発生したと判定するためには、ダクト51内での温度上昇の検出時刻とダクト52内での温度上昇の検出時刻との時間差が十分に小さく、有効期間内である(互いに離間して設けられた一方の温度センサによる温度上昇の検出時刻から、他方の温度センサによる温度上昇の検出時刻までの期間が有効期間内である)との条件が課される。当該条件が成立している場合にはモジュール11の熱暴走発生と判定する一方で、当該条件が不成立の場合には温度センサの故障と診断することによって、温度上昇の原因を切り分けることができる。
なお、図11では、カウント値C1が判定値Xに達してからもカウント値C1のインクリメントが継続されると説明したが、カウント値C1のインクリメント継続は必須ではない。第1センサにより温度上昇が検出されてからの経過時間を他の手法(たとえば別のカウンタやタイマー)により計測してもよい。そして、第1センサにより温度上昇が検出されてから有効期間(たとえば数秒間)が経過しても第2センサにより温度上昇が検出されなかった場合に、故障診断フラグをオフからオンに切り替えて、いずれか一方の温度センサが故障していると診断してもよい。
<故障診断フロー>
図12は、第1センサに関する温度上昇検出処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、所定条件が成立している場合(たとえば組電池10のSOCが規定値以上になった場合または温度TBが規定温度以上になった場合)に、図示しないメインルーチンから呼び出されて実行される。図示しないが、第2センサに関しても同様の処理が第1センサに関する処理と並行に実行される。
図12を参照して、S51において、ECU100は、第1センサによりダクト51内の温度TG1を取得する。そして、ECU100は、温度TG1の温度上昇量ΔT1を算出する(S52)。温度上昇量ΔT1としては、S51にて取得された現時刻tでの温度TG1(t)と、現時刻よりもΔt(たとえば数秒)だけ前の時刻での温度TG1(t−Δt)との差を用いることができる(ΔT1=TG1(t)−TG1(t−Δt))。
S53において、ECU100は、温度上昇量ΔT1が基準量REF以上であるか否かを判定する。温度上昇量ΔT1が基準量REF未満である場合(S53においてNO)には、処理がS51に戻される。温度上昇量ΔT1が基準量REF以上である場合(S53においてYES)、ECU100は、処理をS54に進め、カウント値C1をインクリメントする。
ダクト51内の温度上昇が検出されたか否かを判定するのに、温度上昇量ΔT1(温度の差分量)と基準量REFとの比較に代えて、温度TG1(温度の絶対値)と基準値とを比較することも考えられる。しかし、熱暴走が発生していない状態でのダクト51内の温度は、車両1が置かれた環境(たとえば外気温)の影響によって大きく異なり得る。たとえば、夏季などでダクト51内がもとより高温である場合には、わずかな温度上昇で温度TG1が基準値を上回る可能性がある。逆に、冬季などでダクト51内が低温である場合には、温度TG1が基準値を上回るまでに時間を要する可能性がある。実施の形態2のように温度上昇量ΔT1を用いることで車両1の環境の影響を低減することができるため、より高精度にダクト51内の温度上昇を検出することが可能となる。ただし、温度上昇量ΔT1(温度の差分量)と基準量REFとを比較することは必須ではなく、温度TG1(温度の絶対値)と基準値とを比較してもよい。
S55において、ECU100は、カウント値C1が判定値X以上であるか否かを判定する。カウント値C1が判定値X未満である場合(S55においてNO)には、処理がS51に戻される。そうすると、温度上昇量ΔT1が基準量REF以上である間、カウント値C1のインクリメントが継続されることとなる。カウント値C1が判定値Xに達すると(S55においてYES)、ECU100は、管理フラグFをインクリメントする(S56)。
図13は、温度上昇の検出結果に基づく処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、管理フラグFが2ではない(F=0または1である)場合に、たとえば所定周期毎にメインルーチンから呼び出されて繰り返し実行される。
図13を参照して、S61において、ECU100は、管理フラグFが1であるか否かを判定する。管理フラグFが0である場合(S61においてNO)には、処理がリターンへと戻される。管理フラグFが1である場合(S61においてYES)、ECU100は、処理をS62に進める。
S62において、ECU100は、温度上昇量ΔT1(ΔT2であってもよい)が基準量REFに達するまでの間に第1センサ(第2センサであってもよい)により検出された温度上昇速度(単位時間当たりの温度上昇量)が規定速度よりも速いか否かを判定する。
図14は、故障した温度センサ(この例では第1センサ)による温度検出結果の一例を示す図である。図14に示すような急激な温度上昇が検出された場合には、その温度上昇を検出した温度センサが故障している可能性が高い。したがって、ECU100は、温度上昇速度が規定速度よりも速い場合(S62においてYES)には、S63,S64の処理をスキップして処理をS65に進め、急激な温度上昇を検出した温度センサの故障と判定する。一方、温度上昇速度が規定速度よりも遅い場合(S62においてNO)、ECU100は、処理をS63に進める。
S63において、ECU100は、管理フラグFが2であるか否かを判定する。管理フラグFが2でない場合、すなわち、管理フラグFが依然として1である場合(S63においてNO)には、ECU100は、カウント値(図11および図12の例ではカウント値C1)が判定値Y以上であるか否かを判定する(S64)。
熱暴走に起因する高温ガス放出が実際に起こった場合、第1センサによる温度上昇検出時刻と、第2センサによる温度上昇検出時刻との間には、高々数秒〜数十秒程度の時間差しか生じない。したがって、S64における判定値Yは、カウント値が判定値Xから判定値Yまで増加するのに要する時間が数秒〜数十秒程度となるように設定される。なお、カウント値が判定値Xから判定値Yまで増加するのに要する時間と、前述の有効期間とは、本開示に係る「所定時間」に相当する。
カウント値が判定値Y以上になる前(S64においてNO)に管理フラグFが2になると(S63においてYES)、ECU100は、熱暴走フラグをオンにする(S66)。この場合、組電池10(具体的には、モジュール11に含まれるN個のセルのうちの少なくとも1つのセル)において熱暴走が発生していると判定される。
これに対し、管理フラグFが1から2に切り替わることなくカウント値が判定値Y以上になると(S64においてYES)、ECU100は、故障診断フラグをオンにする(S65)。この場合、2つの温度センサのうちの一方が故障していると判定され、組電池10が熱暴走したとは判定されない。
S65またはS66における判定終了後には、ECU100は、カウント値C1,C2を0にリセットする(S67)。その後、処理はメインルーチンに戻される。
以上のように、実施の形態2によれば、第1センサおよび第2センサのうちの一方では温度上昇が検出されたものの、その検出時刻から有効期間内(たとえば数秒以内)に他方によっても温度上昇が検出されなかった場合には、モジュール11にて熱暴走が発生したとは判定されず、温度センサ(第1センサおよび第2センサのいずれか一方)の故障と診断される。このように、2箇所での温度上昇検出が有効期間内に行なわれるとの条件を課すことにより、実際には熱暴走が起こっていないにも拘らず熱暴走が起こったとの誤検出の可能性を低減することができる。
また、第1センサおよび第2センサのうちの一方で温度上昇が検出された場合に、その温度上昇速度が規定速度よりも速い場合には、その温度上昇を検出した温度センサの故障と診断される。たとえば、予め実験(シミュレーションであってもよい)を行ない、熱暴走したセルからの高温ガス放出による温度上昇速度を温度センサにより複数回(多数回)測定する。そして、複数回測定された温度上昇速度の最高速度よりもさらに速い速度に規定速度を設定する。このように、実際の熱暴走では生じ得ない速度に規定速度を設定することにより、熱暴走の誤検出の可能性を一層低減することができる。したがって、実施の形態2によれば、組電池10からの高温ガスの放出の有無の判定精度を向上させることができる。
なお、実施の形態2においても、温度センサ(第1センサおよび第2センサ)の設置位置は、組電池10から放出されたガスが流れる流路内であれば、排煙ダクト内であってもよいし、排煙ダクト外であってもよい(実施の形態1の変形例参照)。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。