JP2020045570A - 軟磁性合金粉末、圧粉磁心および磁性部品 - Google Patents

軟磁性合金粉末、圧粉磁心および磁性部品 Download PDF

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Abstract

【課題】耐電圧性が良好な圧粉磁心に好適な軟磁性合金粉末の提供。【解決手段】組成式(Fe(1−(α+β))X1αX2β)(1−(a+b+c+d+e+f+g))MaBbPcSidCeSfTigで表される合金組成であって、X1はCoおよび/またはNi、X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Cr,Bi,N,Oおよび希土類元素から選ばれる1種以上、Mは、Nb,Hf,Zr,Ta,Mo,WおよびVから選ばれる1種以上、0.020≦a≦0.14、0.020<b≦0.20、0<c≦0.15、0≦d≦0.060、0≦e≦0.040、0≦f≦0.0100≦g≦0.0010、α≧0、β≧0、0≦α+β≦0.50であり、fとgの1つ以上が0より大きく、ナノヘテロ構造を有し、軟磁性合金粒子2の表面はP、Si、BiおよびZnから選ばれる1つ以上の化合物を含む被覆部10により覆われている軟磁性合金粉末。【選択図】図1

Description

本発明は軟磁性合金粉末、圧粉磁心および磁性部品に関する。
各種電子機器の電源回路に用いられる磁性部品として、トランス、チョークコイル、インダクタ等が知られている。
このような磁性部品は、所定の磁気特性を発揮する磁心(コア)の周囲あるいは内部に、電気伝導体であるコイル(巻線)が配置されている構成を有している。
インダクタ等の磁性部品が備える磁心には小型化、高性能化が求められている。このような磁心に用いられる磁気特性が良好な軟磁性材料としては、鉄(Fe)をベースとするナノ結晶合金が例示される。ナノ結晶合金は、アモルファス合金を熱処理することにより、非晶質中にナノメートルオーダーの微結晶が析出した合金である。たとえば、特許文献1には、Fe−B−M(M=Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W)系の軟磁性非晶質合金の薄帯が記載されている。特許文献1によれば、この軟磁性非晶質合金は市販のFeアモルファスと比べて高い飽和磁束密度を有している。
ところで、磁心を圧粉磁心として得る場合には、このような軟磁性合金を粉末状にして、圧縮成形する必要がある。このような圧粉磁心においては、磁気特性を向上させるために、磁性成分の割合(充填率)が高められている。しかしながら、軟磁性合金は絶縁性が低いため、軟磁性合金から構成される粒子同士が接触していると、磁性部品への電圧印加時に、接触している粒子間を流れる電流(粒子間渦電流)に起因する損失が大きく、その結果、圧粉磁心のコアロスが大きくなってしまうという問題があった。
そこで、このような渦電流を抑制するために、軟磁性合金粒子の表面には絶縁被膜が形成されている。たとえば、特許文献2は、リン(P)の酸化物を含む粉末ガラスを機械的摩擦により軟化させて、Fe系非晶質合金粉末の表面に絶縁コーティング層を形成することを開示している。
特許3342767号公報 特開2015−132010号公報
特許文献2において、絶縁コーティング層が形成されたFe系非晶質合金粉末は樹脂と混合され圧縮成形により圧粉磁心とされる。絶縁コーティング層の厚みを大きくすれば、圧粉磁心の耐電圧性は向上するものの、磁性成分の充填率が低くなるため、磁気特性が劣化してしまう。したがって、良好な磁気特性を得るには、絶縁コーティング層が形成された軟磁性合金粉末全体として、耐電圧性を向上させる必要がある。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、耐電圧性が良好な圧粉磁心、これを備える磁性部品および当該圧粉磁心に好適な軟磁性合金粉末を提供することである。
本発明者らは、特定の組成を有する軟磁性合金からなる軟磁性合金粒子に、被覆部を設けることにより、当該軟磁性合金粒子を含む粉末全体の耐電圧性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の態様は、
[1]組成式(Fe(1−(α+β))X1αX2β(1−(a+b+c+d+e+f+g))SiTiで表される軟磁性合金からなる軟磁性合金粒子を複数含む軟磁性合金粉末であって、
X1は、CoおよびNiからなる群から選択される1種以上であり、
X2は、Al,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Cr,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上であり、
Mは、Nb,Hf,Zr,Ta,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
a、b、c、d、e、f、g、αおよびβが、
0.020≦a≦0.14、
0.020<b≦0.20、
0<c≦0.15、
0≦d≦0.060、
0≦e≦0.040、
0≦f≦0.010、
0≦g≦0.0010、
α≧0、
β≧0、
0≦α+β≦0.50である関係を満足し、fとgのうち、少なくとも1つ以上が0より大きく、
軟磁性合金は、初期微結晶が非晶質中に存在するナノヘテロ構造を有し、
軟磁性合金粒子の表面は被覆部により覆われており、
被覆部は、P、Si、BiおよびZnからなる群から選ばれる1つ以上の元素の化合物を含むことを特徴とする軟磁性合金粉末である。
[2]初期微結晶の平均粒径が、0.3nm以上10nm以下であることを特徴とする[1]に記載の軟磁性合金粉末である。
[3]組成式(Fe(1−(α+β))X1αX2β(1−(a+b+c+d+e+f+g))SiTiで表される軟磁性合金からなる軟磁性合金粒子を複数含む軟磁性合金粉末であって、
X1は、CoおよびNiからなる群から選択される1種以上であり、
X2は、Al,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Cr,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上であり、
Mは、Nb,Hf,Zr,Ta,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
a、b、c、d、e、f、g、αおよびβが、
0.020≦a≦0.14、
0.020<b≦0.20、
0<c≦0.15、
0≦d≦0.060、
0≦e≦0.040、
0≦f≦0.010、
0≦g≦0.0010、
α≧0、
β≧0、
0≦α+β≦0.50である関係を満足し、fとgのうち、少なくとも1つ以上が0より大きく、
軟磁性合金は、Fe基ナノ結晶を有し、
軟磁性合金粒子の表面は被覆部により覆われており、
被覆部は、P、Si、BiおよびZnからなる群から選ばれる1つ以上の元素の化合物を含むことを特徴とする軟磁性合金粉末である。
[4]Fe基ナノ結晶の平均粒径が、5nm以上30nm以下であることを特徴とする[3]に記載の軟磁性合金粉末である。
[5][1]から[4]のいずれかに記載の軟磁性合金粉末から構成される圧粉磁心である。
[6][5]に記載の圧粉磁心を備える磁性部品である。
本発明によれば、耐電圧性が良好な圧粉磁心、これを備える磁性部品および当該圧粉磁心に好適な軟磁性合金粉末を提供することができる。
図1は、本実施形態に係る軟磁性合金粉末を構成する被覆粒子の断面模式図である。 図2は、被覆部を形成するために用いる粉末被覆装置の構成を示す断面模式図である。
以下、本発明を、図面に示す具体的な実施形態に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
1.軟磁性合金粉末
1.1.軟磁性合金
1.1.1.第1の観点
1.1.2.第2の観点
1.2.被覆部
2.圧粉磁心
3.磁性部品
4.圧粉磁心の製造方法
4.1.軟磁性合金粉末の製造方法
4.2.圧粉磁心の製造方法
(1.軟磁性合金粉末)
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、図1に示すように、軟磁性合金粒子2の表面に被覆部10が形成された被覆粒子1を複数含む。軟磁性合金粉末に含まれる粒子の個数割合を100%とした場合、被覆粒子の個数割合が90%以上であることが好ましく、95%以上であることが好ましい。なお、軟磁性合金粒子2の形状は特に制限されないが、通常、球形である。
また、本実施形態に係る軟磁性合金粉末の平均粒子径(D50)は、用途および材質に応じて選択すればよい。本実施形態では、平均粒子径(D50)は、0.3〜100μmの範囲内であることが好ましい。軟磁性合金粉末の平均粒子径を上記の範囲内とすることにより、十分な成形性あるいは所定の磁気特性を維持することが容易となる。平均粒子径の測定方法としては、特に制限されないが、レーザー回折散乱法を用いることが好ましい。
本実施形態では、軟磁性合金粉末は、材質が同じ軟磁性合金粒子のみを含んでいてもよいし、材質が異なる軟磁性合金粒子が混在していてもよい。なお、異なる材質とは、軟磁性合金を構成する元素が異なる場合、構成する元素が同じであってもその組成が異なる場合等が例示される。
(1.1.軟磁性合金)
軟磁性合金粒子は、所定の構造および組成を有する軟磁性合金からなる。本実施形態では、当該軟磁性合金を、第1の観点に係る軟磁性合金と、第2の観点に係る軟磁性合金と、に分けて説明する。第1の観点に係る軟磁性合金と、第2の観点に係る軟磁性合金と、の違いは、軟磁性合金の構造の違いであり、組成は共通する。
(1.1.1.第1の観点)
第1の観点に係る軟磁性合金は、初期微結晶が非晶質中に存在するナノへテロ構造を有している。このような構造は、軟磁性合金の原料が溶解した溶湯を急冷することにより得られる非晶質合金中に、多数の微結晶が析出し分散している構造である。したがって、初期微結晶の平均粒径は非常に小さい。本実施形態では、初期微結晶の平均粒径は0.3nm以上10nm以下であることが好ましい。
このようなナノへテロ構造を有する軟磁性合金を所定の条件で熱処理することにより、初期微結晶を成長させて、後述する第2の観点に係る軟磁性合金(Fe基ナノ結晶を有する軟磁性合金)を得ることが容易となる。
続いて、第1の観点に係る軟磁性合金の組成について詳細に説明する。
第1の観点に係る軟磁性合金は、組成式(Fe(1−(α+β))X1αX2β(1−(a+b+c+d+e+f+g))SiTiで表され、Feが比較的高濃度で存在する軟磁性合金である。
上記の組成式において、Mは、Nb,Hf,Zr,Ta,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上の元素である。
また、aはMの含有量を示しており、aは0.020≦a≦0.14を満たす。Mの含有量(a)は、0.040以上であることが好ましく、0.050以上であることがより好ましい。また、Mの含有量(a)は、0.10以下であることが好ましく、0.080以下であることがより好ましい。
aが小さすぎる場合には、熱処理前の軟磁性合金中に、粒径が30nmよりも大きい結晶から構成される結晶相が生じやすい。このような結晶相が生じると、熱処理によってFe基ナノ結晶を析出させることができない。その結果、軟磁性合金の保磁力が高くなりやすくなる傾向にある。一方、aが大きすぎる場合には、粉末の飽和磁化が低下しやすくなる傾向にある。
上記の組成式において、bはB(ホウ素)の含有量を示しており、bは0.020<b≦0.20を満たす。Bの含有量(b)は、0.025以上であることが好ましく、0.060以上であることがより好ましく、0.080以上であることがさらに好ましい。また、Bの含有量(b)は、0.15以下であることが好ましく、0.12以下であることがより好ましい。
bが小さすぎる場合には、熱処理前の軟磁性合金中に、粒径が30nmよりも大きい結晶から構成される結晶相が生じやすい。このような結晶相が生じると、熱処理によってFe基ナノ結晶を析出させることができない。その結果、軟磁性合金の保磁力が高くなりやすくなる傾向にある。一方、bが大きすぎる場合には、粉末の飽和磁化が低下しやすくなる傾向にある。
上記の組成式において、cはP(リン)の含有量を示しており、cは0<c≦0.15を満たす。Pの含有量(c)は、0.005以上であることが好ましく、0.010以上であることがより好ましい。また、Pの含有量(c)は、0.100以下であることが好ましい。
cが上記の範囲内である場合には、軟磁性合金の比抵抗が向上し、保磁力が低下する傾向にある。cが小さすぎる場合には上記の効果が得られにくい傾向にある。一方、cが大きすぎる場合には、粉末の飽和磁化が低下しやすくなる傾向にある。
上記の組成式において、dはSi(シリコン)の含有量を示しており、dは0≦d≦0.060を満たす。すなわち、軟磁性合金は、Siを含有しなくてもよい。Siの含有量(d)は、0.001以上であることが好ましく、0.005以上であることがより好ましい。また、Siの含有量(d)は、0.040以下であることが好ましい。
dが上記の範囲内である場合には、軟磁性合金の保磁力が低下しやすくなる傾向にある。一方、dが大きすぎる場合には、軟磁性合金の保磁力が逆に上昇してしまう傾向にある。
上記の組成式において、eはC(炭素)の含有量を示しており、eは0≦e≦0.040を満たす。すなわち、軟磁性合金は、Cを含有しなくてもよい。Cの含有量(e)は、0.001以上であることが好ましい。また、Cの含有量(e)は、0.035以下であることが好ましく、0.030以下であることがより好ましい。
eが上記の範囲内である場合には、軟磁性合金の保磁力が特に低下しやすくなる傾向にある。eが大きすぎる場合には、軟磁性合金の保磁力が逆に上昇してしまう傾向にある。
上記の組成式において、fはS(硫黄)の含有量を示しており、fは0≦f≦0.010を満たす。Sの含有量(f)は、0.002以上であることが好ましい。また、Sの含有量(f)は、0.010以下であることが好ましい。
fが上記の範囲内である場合には、軟磁性合金の保磁力が低下しやすくなる。fが大きすぎる場合には、軟磁性合金の保磁力が上昇してしまう傾向にある。
上記の組成式において、gはTi(チタン)の含有量を示しており、gは0≦g≦0.0010を満たす。Tiの含有量(g)は、0.0002以上であることが好ましい。また、Tiの含有量(g)は、0.0010以下であることが好ましい。
gが上記の範囲内である場合には、軟磁性合金の保磁力が低下しやすくなる。gが大きすぎる場合には、熱処理前の軟磁性合金中に、粒径が30nmよりも大きい結晶から構成される結晶相が生じやすい。このような結晶相が生じると、熱処理によってFe基ナノ結晶を析出させることができない。その結果、軟磁性合金の保磁力が高くなりやすくなる傾向にある。
本実施形態では、軟磁性合金が、特に、Sおよび/またはTiを含有することが重要である。すなわち、fおよびgが上記の範囲内であり、かつfおよびgのいずれか一方、または、両方が0よりも大きい必要がある。fおよびgがこのような関係を満足することにより、軟磁性合金粒子の球形度が向上しやすくなる。軟磁性合金粒子の球形度が向上すると、当該軟磁性合金粒子を含む粉末を圧縮成形して得られる圧粉磁心の密度を向上させることができる。なお、Sを含有するとは、fが0ではないことを指す。さらに具体的には、f≧0.001であることを指す。Tiを含有するとは、gが0ではないことを指す。さらに具体的には、g≧0.0001であることを指す。
一方、SおよびTiの良好を含有しない場合には、特に軟磁性合金粒子の球形度が低下しやすくなり、その結果、当該軟磁性合金粒子を含む粉末を用いて得られる圧粉磁心の密度が低下する傾向にある。
上記の組成式において、1−(a+b+c+d+e+f+g)は、Fe(鉄)の含有量を示している。Feの含有量については、特に制限されないが、本実施形態では、Feの含有量(1−(a+b+c+d+e+f+g))は、0.73以上0.95以下であることが好ましい。Feの含有量を上記の範囲内とすることで、粒径が30nmよりも大きい結晶から構成される結晶相がさらに生じにくくなる。
また、第1の観点に係る軟磁性合金においては、上記の組成式に示すように、Feの一部をX1および/またはX2で組成的に置換してもよい。
X1は、CoおよびNiからなる群から選択される1種以上の元素である。上記の組成式において、αはX1の含有量を示しており、本実施形態では、αは0以上である。すなわち、軟磁性合金は、X1を含有しなくてもよい。
また、組成全体の原子数を100at%とした場合に、X1の原子数は40at%以下であることが好ましい。すなわち、0≦α{1−(a+b+c+d+e+f+g)}≦0.40を満たすことが好ましい。
X2は、Al,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Cr,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上の元素である。上記の組成式において、βはX2の含有量を示しており、本実施形態では、βは0以上である。すなわち、軟磁性合金は、X2を含有しなくてもよい。
また、組成全体の原子数を100at%とした場合に、X2の原子数は3.0at%以下であることが好ましい。すなわち、0≦β{1−(a+b+c+d+e+f+g)}≦0.030を満たすことが好ましい。
さらに、X1および/またはX2がFeを置換する範囲(置換量)としては、原子数換算でFeの総原子数の半分以下とする。すなわち、0≦α+β≦0.50とする。α+βが大きすぎる場合には、熱処理によりFe基ナノ結晶が析出した軟磁性合金を得ることが困難となる傾向にある。
なお、第1の観点に係る軟磁性合金は、上記以外の元素を不可避的不純物として含んでいてもよい。たとえば、軟磁性合金100重量%に対して、上記以外の元素を合計で0.1重量%以下含んでいてもよい。
(1.1.2.第2の観点)
第2の観点に係る軟磁性合金は、その構造が異なる以外は、第1の観点に係る軟磁性合金の構成と同一であり、重複する説明は省略する。すなわち、第1の観点に係る軟磁性合金の組成に関する説明は、第2の観点に係る軟磁性合金にも適用される。
第2の観点に係る軟磁性合金は、Fe基ナノ結晶を有している。Fe基ナノ結晶とは、粒径がナノメートルオーダーであり、結晶構造がbcc(体心立方格子構造)であるFeの結晶のことである。当該軟磁性合金においては、多数のFe基ナノ結晶が非晶質中に析出し分散している。本実施形態では、Fe基ナノ結晶は、第1の観点に係る軟磁性合金を含む粉末を熱処理して、初期微結晶を成長させることにより好適に得られる。
したがって、Fe基ナノ結晶の平均粒径は、初期微結晶の平均粒径よりも若干大きい傾向にある。本実施形態では、Fe基ナノ結晶の平均粒径は5nm以上30nm以下であることが好ましい。Fe基ナノ結晶が非晶質中に分散して存在している軟磁性合金は、高い飽和磁化が得られやすく、かつ低い保磁力が得られやすい。
(1.2.被覆部)
被覆部10は、図1に示すように、軟磁性金属粒子2の表面を覆うように形成されている。また、本実施形態では、表面が物質により被覆されているとは、当該物質が表面に接触して接触した部分を覆うように固定されている形態をいう。また、軟磁性合金粒子を被覆する被覆部は、粒子の表面の少なくとも一部を覆っていればよいが、表面の全部を覆っていることが好ましい。さらに、被覆部は粒子の表面を連続的に覆っていてもよいし、断続的に覆っていてもよい。
被覆部10は、軟磁性合金粉末を構成する軟磁性合金粒子同士を絶縁できるような構成であれば、特に制限されない。本実施形態では、被覆部10は、P、Si、BiおよびZnからなる群から選ばれる1つ以上の元素の化合物を含んでいることが好ましく、Pを含む化合物を含んでいることが特に好ましい。また、当該化合物は酸化物であることがより好ましく、酸化物ガラスであることが特に好ましい。被覆部を上記の構成とすることにより、軟磁性合金の非晶質中に偏析している元素(特にP)との密着性が向上し、軟磁性合金粉末の絶縁性が向上する。その結果、軟磁性合金粉末の抵抗率が向上し、当該軟磁性合金粉末を用いて得られる圧粉磁心の耐電圧を向上させることができる。軟磁性合金に含まれるPに加えて、軟磁性合金にSiが含まれる場合にも、このような効果が好適に得られる。
また、P、Si、BiおよびZnからなる群から選ばれる1つ以上の元素の化合物は、被覆部10において、主成分として含まれていることが好ましい。「P、Si、BiおよびZnからなる群から選ばれる1つ以上の元素の酸化物を主成分として含む」とは、被覆部10に含まれる元素のうち、酸素を除いた元素の合計量を100質量%とした場合に、P、Si、BiおよびZnからなる群から選ばれる1つ以上の元素の合計量が最も多いことを意味する。また、本実施形態では、これらの元素の合計量は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
酸化物ガラスとしては特に限定されず、たとえば、リン酸塩(P)系ガラス、ビスマス酸塩(Bi)系ガラス、ホウケイ酸塩(B−SiO)系ガラス等が例示される。
系ガラスとしては、Pが50wt%以上含まれるガラスが好ましく、P−ZnO−RO−Al系ガラス等が例示される。なお、「R」はアルカリ金属を示す。
Bi系ガラスとしては、Biが50wt%以上含まれるガラスが好ましく、Bi−ZnO−B−SiO系ガラス等が例示される。
−SiO系ガラスとしては、Bが10wt%以上含まれ、SiOが10wt%以上含まれるガラスが好ましく、BaO−ZnO−B−SiO−Al系ガラス等が例示される。
このような絶縁性の被覆部を有していることにより、粒子の絶縁性がより高くなるので、被覆粒子を含む軟磁性合金粉末から構成される圧粉磁心の耐電圧が向上する。
被覆部に含まれる成分は、STEM等のTEMを用いたEDSによる元素分析、EELSによる元素分析、TEM画像のFFT解析等により得られる格子定数等の情報から同定することができる。
被覆部10の厚みは、上記の効果が得られる限りにおいて特に制限されない。本実施形態では、5nm以上200nm以下であることが好ましい。また、150nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
(2.圧粉磁心)
本実施形態に係る圧粉磁心は、上述した軟磁性合金粉末から構成され、所定の形状を有するように形成されていれば特に制限されない。本実施形態では、軟磁性合金粉末と結合剤としての樹脂とを含み、当該軟磁性合金粉末を構成する軟磁性合金粒子同士が樹脂を介して結合することにより所定の形状に固定されている。また、当該圧粉磁心は、上述した軟磁性合金粉末と他の磁性粉末との混合粉末から構成され、所定の形状に形成されていてもよい。
(3.磁性部品)
本実施形態に係る磁性部品は、上記の圧粉磁心を備えるものであれば特に制限されない。たとえば、所定形状の圧粉磁心内部に、ワイヤが巻回された空芯コイルが埋設された磁性部品であってもよいし、所定形状の圧粉磁心の表面にワイヤが所定の巻き数だけ巻回されてなる磁性部品であってもよい。本実施形態に係る磁性部品は、耐電圧性が良好であるため、電源回路に用いられるパワーインダクタに好適である。
(4.圧粉磁心の製造方法)
続いて、上記の磁性部品が備える圧粉磁心を製造する方法について説明する。まず、圧粉磁心を構成する軟磁性合金粉末を製造する方法について説明する。
(4.1.軟磁性合金粉末の製造方法)
本実施形態に係る軟磁性合金粉末は、公知の軟磁性合金粉末の製造方法と同様の方法を用いて得ることができる。具体的には、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、回転ディスク法等を用いて製造することができる。また、単ロール法等により得られる薄帯を機械的に粉砕して製造してもよい。これらの中では、所望の磁気特性を有する軟磁性合金粉末が得られやすいという観点から、ガスアトマイズ法を用いることが好ましい。
ガスアトマイズ法では、まず、軟磁性合金粉末を構成する軟磁性合金の原料が溶解した溶湯を得る。軟磁性合金に含まれる各金属元素の原料(純金属等)を準備し、最終的に得られる軟磁性合金の組成となるように秤量し、当該原料を溶解する。なお、金属元素の原料を溶解する方法は特に制限されないが、たとえば、アトマイズ装置のチャンバー内で真空引きした後に高周波加熱にて溶解させる方法が例示される。溶解時の温度は、各金属元素の融点を考慮して決定すればよいが、たとえば1200〜1500℃とすることができる。
得られた溶湯をルツボ底部に設けられたノズルを通じて線状の連続的な流体としてチャンバー内に供給し、供給された溶湯に高圧のガスを吹き付けて、溶湯を液滴化するとともに、急冷して微細な粉末を得る。ガス噴射温度、チャンバー内の圧力等は、後述する熱処理において、非晶質中にFe基ナノ結晶が析出しやすい条件に応じて決定すればよい。このとき、軟磁性合金にSおよび/またはTiが含まれているので、ガス噴射により溶湯が分断されやすく、得られる粉末を構成する粒子の球形度が向上する。なお、粒子径については篩分級や気流分級等をすることにより粒度調整が可能である。
得られる粉末は、後述する熱処理によりFe基ナノ結晶を容易に析出させるために、非晶質中に初期微結晶が存在するナノヘテロ構造を有する軟磁性合金、すなわち、第1の観点に係る軟磁性合金から構成されていることが好ましい。ただし、後述する熱処理により、Fe基ナノ結晶が析出するのであれば、得られる粉末は、各金属元素が非晶質中に均一に分散している非晶質合金から構成されていてもよい。
本実施形態では、熱処理前の軟磁性合金中に粒径が30nmよりも大きい結晶が存在している場合には、結晶相が存在すると判断し、粒径が30nmよりも大きい結晶が存在していない場合には、非晶質であると判断する。なお、軟磁性合金中に粒径が30nmよりも大きい結晶が存在しているか否かは、公知の方法により評価すればよい。たとえば、X線回折測定、透過型電子顕微鏡による観察等が例示される。透過電子顕微鏡(TEM)を用いる場合、制限視野回折像、ナノビーム回折像を得ることで確認できる。制限視野回折像またはナノビーム回折像を用いる場合、回折パターンにおいて非晶質の場合にはリング状の回折が形成されるのに対し、非晶質ではない場合には結晶構造に起因した回折斑点が形成される。
また、上記の初期微結晶の有無および平均粒径の観察方法については、特に制限されず、公知の方法により評価すればよい。たとえば、イオンミリングにより薄片化した試料に対して、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて、明視野像または高分解能像を得ることで確認できる。具体的には、倍率1.00×10〜3.00×10倍で得られる明視野像または高分解能像を目視にて観察することで初期微結晶の有無および平均粒径を評価できる。
次に、得られる粉末を熱処理する。熱処理を行うことにより、各粒子同士が焼結し粉体が粗大化することを防ぎつつ、軟磁性合金を構成する元素の拡散を促し、熱力学的平衡状態に短時間で到達させ、軟磁性合金中に存在する歪や応力を除去することができる。その結果、Fe基ナノ結晶が析出した軟磁性合金、すなわち、第2の観点に係る軟磁性合金から構成される粉末を得ることが容易となる。
本実施形態では、熱処理条件は、Fe基ナノ結晶が析出しやすい条件であれば特に制限されない。たとえば、熱処理温度を400〜700℃、保持時間を0.5〜10時間とすることができる。
熱処理後には、Fe基ナノ結晶が析出した軟磁性合金、すなわち、第2の観点に係る軟磁性合金からなる軟磁性合金粒子を含む粉末が得られる。
続いて、熱処理後の粉末に含まれる軟磁性合金粒子に対して被覆部を形成する。被覆部を形成する方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。軟磁性合金粒子に対して湿式処理を行って被覆部を形成してもよいし、乾式処理を行って被覆部を形成してもよい。
また、熱処理を行う前の軟磁性合金粉末に対して、被覆部を形成してもよい。すなわち、第1の観点に係る軟磁性合金からなる軟磁性合金粒子に対して被覆部を形成してもよい。
本実施形態では、メカノケミカルを利用したコーティング方法、リン酸塩処理法、ゾルゲル法等により形成することができる。メカノケミカルを利用したコーティング方法では、たとえば、図2に示す粉末被覆装置100を用いる。軟磁性合金粉末と、被覆部を構成する材質(P、Si、Bi、Znの化合物等)の粉末状コーティング材との混合粉末を、粉末被覆装置の容器101内に投入する。投入後、容器101を回転させることにより、軟磁性合金粉末と混合粉末との混合物50が、グラインダー102と容器101の内壁との間で圧縮され摩擦が生じて熱が発生する。この発生した摩擦熱により、粉末状コーティング材が軟化し、圧縮作用により軟磁性合金粒子の表面に固着して、被覆部を形成することができる。
メカノケミカルを利用したコーティング方法では、容器の回転速度、グラインダーと容器の内壁との間の距離等を調整することにより、発生する摩擦熱を制御して、軟磁性合金粉末と混合粉末との混合物の温度を制御することができる。本実施形態では、当該温度は、50℃以上150℃以下であることが好ましい。このような温度範囲とすることにより、被覆部が軟磁性合金粒子の表面を覆うように形成しやすくなる。
(4.2.圧粉磁心の製造方法)
圧粉磁心は、上記の軟磁性合金粉末を用いて製造する。具体的な製造方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。まず、被覆部を形成した軟磁性合金粒子を含む軟磁性合金粉末と、結合剤としての公知の樹脂とを混合し、混合物を得る。また、必要に応じて、得られた混合物を造粒粉としてもよい。そして、混合物または造粒粉を金型内に充填して圧縮成形し、作製すべき圧粉磁心の形状を有する成形体を得る。上記の軟磁性合金粒子の球形度が高いので、当該軟磁性合金粒子を含む粉末を圧縮成形することにより、当該軟磁性合金粒子が金型内で密に充填され、密度の高い圧粉磁心を得ることができる。
得られた成形体に対して、たとえば50〜200℃で熱処理を行うことにより、樹脂が硬化し軟磁性合金粒子が樹脂を介して固定された所定形状の圧粉磁心が得られる。得られた圧粉磁心に、ワイヤを所定回数だけ巻回することにより、インダクタ等の磁性部品が得られる。
また、上記の混合物または造粒粉と、ワイヤを所定回数だけ巻回して形成された空心コイルとを、金型内に充填して圧縮成形しコイルが内部に埋設された成形体を得てもよい。得られた成形体に対して、熱処理を行うことにより、コイルが埋設された所定形状の圧粉磁心が得られる。このような圧粉磁心は、その内部にコイルが埋設されているので、インダクタ等の磁性部品として機能する。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実験例1〜69)
まず、軟磁性合金の原料金属を準備した。準備した原料金属を、表1に示す組成となるように秤量し、アトマイズ装置内に配置されたルツボに収容した。続いて、チャンバー内を真空引きした後、ルツボ外部に設けたワークコイルを用いて、ルツボを高周波誘導により加熱し、ルツボ中の原料金属を溶融、混合して1250℃の溶湯(溶融金属)を得た。
得られた溶湯をルツボ底部に設けられたノズルを通じて線状の連続的な流体としてチャンバー内に供給し、供給された溶湯にガスを吹き付けて粉末を得た。ガスの噴射温度は1250℃とし、チャンバー内の圧力は1hPaとした。なお、得られた粉末の平均粒子径(D50)は、20μmであった。
得られた粉末に対してX線回折測定を行い、粒径が30nmよりも大きい結晶の有無を確認した。そして、粒径が30nmよりも大きい結晶が存在しない場合には、粉末を構成する軟磁性合金が非晶質相からなると判断し、粒径が30nmよりも大きい結晶が存在する場合には、軟磁性合金が結晶相からなると判断した。結果を表1に示す。
続いて、得られた粉末を熱処理した。熱処理条件は、熱処理温度を600℃、保持時間を1時間とした。熱処理後の粉末に対してX線回折測定およびTEMによる観察を行い、Fe基ナノ結晶の存在の有無を評価した。結果を表1に示す。なお、Fe基ナノ結晶が存在する実施例の全ての試料において、Fe基ナノ結晶の結晶構造がbcc構造であり、平均粒径が5〜30nmであることが確認された。
また、熱処理後の粉末について保磁力(Hc)および飽和磁化(σs)を測定した。保磁力は、φ6mm×5mmのプラスチックケースに20mgの粉末を入れ、パラフィンを融解、凝固させて固定したものを、東北特殊鋼製保磁力計(K-HC1000型)を用いて測定した。測定磁界は150kA/mとした。本実施例では、保磁力は350A/m以下である試料を良好とした。結果を表1に示す。飽和磁化は、玉川製作所製VSM(振動試料型磁力計)を用いて測定した。本実施例では、飽和磁化は150A・m/kg以上である試料を良好とした。結果を表1に示す。
続いて、熱処理後の粉末を、粉末ガラス(コーティング材)とともに、粉体被覆装置の容器内に投入し、粉末ガラスを粒子の表面にコーティングして、被覆部を形成することにより、軟磁性合金粉末が得られた。粉末ガラスの添加量は、熱処理後の粉末100wt%に対して0.5wt%に設定した。被覆部の厚みは50nmであった。
粉末ガラスは、組成がP−ZnO−RO−Alであるリン酸塩系ガラスとした。具体的な組成は、Pが50wt%、ZnOが12wt%、ROが20wt%、Alが6wt%であり、残部が副成分であった。
なお、本発明者らは、Pが60wt%、ZnOが20wt%、ROが10wt%、Alが5wt%であり、残部が副成分である組成を有するガラス、Pが60wt%、ZnOが20wt%、ROが10wt%、Alが5wt%であり、残部が副成分である組成を有するガラス等についても同様の実験を行い、後述する結果と同様の結果が得られることを確認している。
次に、被覆部を形成した軟磁性合金粉末を固化して、当該粉末の抵抗率を評価した。粉末の抵抗率は、粉末抵抗測定装置を用いて、0.6t/cmの圧力を印加した状態での抵抗率を測定した。本実施例では、抵抗率が10Ωcm以上である試料を「◎」とし、10Ωcm以上である試料を「○」とし、10Ωcm以上である試料を「△」とし、10Ωcm未満である試料を「×」とした。結果を表1に示す。
続いて、圧粉磁心を作製した。熱硬化樹脂であるエポキシ樹脂および硬化剤であるイミド樹脂の総量が、得られた軟磁性合金粉末100wt%に対して、3wt%となるように秤量し、アセトンに加えて溶液化し、その溶液と軟磁性合金粉末とを混合した。混合後、アセトンを揮発させて得られた顆粒を、355μmのメッシュで整粒した。これを外径11mm、内径6.5mmのトロイダル形状の金型に充填し、成形圧3.0t/cmで加圧し圧粉磁心の成形体を得た。得られた圧粉磁心の成形体を180℃で1時間樹脂を硬化させ圧粉磁心を得た。
得られた圧粉磁心の密度を以下のようにして測定した。圧粉磁心の外径、内径、高さ、および重量を測定して算出される密度を、軟磁性合金の組成比から算出される理論密度で除した相対密度を求めた。結果を表1に示す。
また、得られた圧粉磁心の試料の上下にソースメーターを用いて電圧を印加し、1mAの電流が流れた電圧値を耐電圧とした。本実施例では、耐電圧が100V/mm以上である試料を良好とした。結果を表1に示す。
表1より、各成分の含有量が上述した範囲内であり、Fe基ナノ結晶を有する場合には、粉末および圧粉磁心の特性が良好であることが確認できた。
これに対し、各成分の含有量が上述した範囲外、あるいは、Fe基ナノ結晶を有していない場合には、粉末の磁気特性に劣ることが確認できた。また、SおよびTiの両方が含まれていない場合には、圧粉磁心の密度が低いことが確認できた。
(実験例70〜96)
実験例1、4および8の試料において、組成式中の「M」を表2に示す元素とした以外は、実験例4、8および10と同様にして軟磁性合金粉末を作製し、実験例1、4および8と同様の評価を行った。また、得られた粉末を用いて、実験例1、4および8と同様にして圧粉磁心を作製し、実験例1、4および8と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
表2より、M元素の組成および含有量に依らず、粉末および圧粉磁心の特性が良好であることが確認できた。
(実験例97〜150)
実験例1の試料において、組成式中の「X1」および「X2」元素および含有量を表3に示す元素および含有量とした以外は、実験例1と同様にして軟磁性合金粉末を作製し、実験例1と同様の評価を行った。また、得られた粉末を用いて、実験例1と同様にして圧粉磁心を作製し、実験例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
表3より、X1元素およびX2元素の組成および含有量に依らず、粉末および圧粉磁心の特性が良好であることが確認できた。
(実験例151〜171)
実験例1の試料において、コーティング材の組成を表4に示す組成とし、コーティング材を用いて形成される被覆部の厚みを表4に示す値とした以外は、実験例1と同様にして軟磁性合金粉末を作製し、実験例1と同様の評価を行った。また、得られた粉末を用いて、実験例1と同様にして圧粉磁心を作製し、実験例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。なお、実験例151の試料に対しては、被覆部を形成しなかった。
また、本実施例では、ビスマス酸塩系ガラスとしてのBi−ZnO−B−SiO系粉末ガラスにおいて、Biが80wt%、ZnOが10wt%、Bが5wt%、SiOが5wt%であった。ビスマス酸塩系ガラスとして他の組成を有するガラスについても同様の実験を行い、後述する結果と同様の結果が得られることを確認している。
また、本実施例では、ホウケイ酸塩系ガラスとしてのBaO−ZnO−B−SiO−Al系粉末ガラスにおいて、BaOが8wt%、ZnOが23wt%、Bが19wt%、SiOが16wt%、Alが6wt%であり、残部が副成分であった。ホウケイ酸塩系ガラスとして他の組成を有するガラスについても同様の実験を行い、後述する結果と同様の結果が得られることを確認している。
表4より、被覆部の厚みが大きくなるほど、粉末の抵抗率および圧粉磁心の耐電圧が向上することが確認できた。また、コーティング材の組成に依らず、粉末の抵抗率および圧粉磁心の耐電圧が良好であり、かつ圧粉磁心の密度が高いことが確認できた。
(実験例172〜185)
実験例1の試料において、アトマイズ時の溶湯の温度およびアトマイズにより得られた粉末の熱処理条件を表5に示す条件とした以外は、実験例1と同様にして軟磁性合金粉末を作製し、実験例1と同様の評価を行った。また、得られた粉末を用いて、実験例1と同様にして圧粉磁心を作製し、実験例1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
表5より、初期微結晶を有するナノヘテロ構造を有する粉末や熱処理後にFe基ナノ結晶を有する粉末については、初期微結晶の平均粒径およびFe基ナノ結晶の平均粒径に依らず、粉末の抵抗率および圧粉磁心の耐電圧が良好であり、かつ圧粉磁心の密度が高いことが確認できた。
1…被覆粒子
10…被覆部
2…軟磁性合金粒子

Claims (6)

  1. 組成式(Fe(1−(α+β))X1αX2β(1−(a+b+c+d+e+f+g))SiTiで表される軟磁性合金からなる軟磁性合金粒子を複数含む軟磁性合金粉末であって、
    前記軟磁性合金粉末の平均粒子径(D50)は0.3〜100μmであり、
    X1は、CoおよびNiからなる群から選択される1種以上であり、
    X2は、Al,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Cr,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上であり、
    Mは、Nb,Hf,Zr,Ta,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
    a、b、c、d、e、f、g、αおよびβが、
    0.020≦a≦0.14、
    0.020<b≦0.20、
    0<c≦0.15、
    0≦d≦0.060、
    0≦e≦0.040、
    0≦f≦0.010、
    0≦g≦0.0010、
    α≧0、
    β≧0、
    0≦α+β≦0.50である関係を満足し、fとgのうち、少なくとも1つ以上が0より大きく、
    前記軟磁性合金は、初期微結晶が非晶質中に存在するナノヘテロ構造を有し、
    前記軟磁性合金粒子の表面は被覆部により覆われており、
    前記被覆部は、P、Si、BiおよびZnからなる群から選ばれる1つ以上の元素の化合物を含むことを特徴とする軟磁性合金粉末。
  2. 前記初期微結晶の平均粒径が、0.3nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の軟磁性合金粉末。
  3. 組成式(Fe(1−(α+β))X1αX2β(1−(a+b+c+d+e+f+g))SiTiで表される軟磁性合金からなる軟磁性合金粒子を複数含む軟磁性合金粉末であって、
    前記軟磁性合金粉末の平均粒子径(D50)は0.3〜100μmであり、
    X1は、CoおよびNiからなる群から選択される1種以上であり、
    X2は、Al,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Cu,Cr,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上であり、
    Mは、Nb,Hf,Zr,Ta,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
    a、b、c、d、e、f、g、αおよびβが、
    0.020≦a≦0.14、
    0.020<b≦0.20、
    0<c≦0.15、
    0≦d≦0.060、
    0≦e≦0.040、
    0≦f≦0.010、
    0≦g≦0.0010、
    α≧0、
    β≧0、
    0≦α+β≦0.50である関係を満足し、fとgのうち、少なくとも1つ以上が0より大きく、
    前記軟磁性合金は、Fe基ナノ結晶を有し、
    前記軟磁性合金粒子の表面は被覆部により覆われており、
    前記被覆部は、P、Si、BiおよびZnからなる群から選ばれる1つ以上の元素の化合物を含むことを特徴とする軟磁性合金粉末。
  4. 前記Fe基ナノ結晶の平均粒径が、5nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項3に記載の軟磁性合金粉末。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の軟磁性合金粉末から構成される圧粉磁心。
  6. 請求項5に記載の圧粉磁心を備える磁性部品。
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