JP2020042928A - 除電装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】見栄えや組み付け性が低下することなく、電力制御装置を構成する電気回路に帯電した静電気を除電することができる除電装置を提供する。【解決手段】少なくとも二つの正極端子2に対向した蓋部3と、蓋部3のうちの正極端子2に対向する箇所の反対側の箇所を覆うように蓋部3の外面に取り付けられる導電部材の導電層と、導電層のうち蓋部3とは反対側の面である外表面に取り付けられるとともに、導電層に帯電した正の電位に応じて表面を流れる外気に負の空気イオンを生じさせる自己放電により、蓋部3の外表面の正の電位を中和除電して低下させる放電層とを有する自己放電式除電器Aとを備えている。【選択図】図1

Description

この発明は、駆動用モータや補機類などに接続された電気回路の静電気を除電する装置に関するものである。
特許文献1には、インバータやコンバータなどの電力制御装置を収容するケースと、エンジンカバーなどの車体と連結されるとともに、車体との電気抵抗が比較的高い第1所定部材と、第1所定部材に帯電した静電気をコロナ放電などの自己放電によって除電する自己放電式除電器と、第1所定部材のうち自己放電式除電器により除電される領域内とケースとを接続してケースに帯電した静電気を第1所定部材に伝達する伝達部材とを備えた除電装置が記載されている。
特開2018−7367号公報
特許文献1に記載された除電装置は、自己放電式除電器による除電効果を向上させるために、静電気が帯電しやすい第1所定部材に、電気機器を収容するケースを電気的に接続している。そのため、見栄えを損なう可能性があり、またはケースや第1所定部材、あるいは伝達部材を組み付ける際における組み付け性が低下する可能性がある。
この発明は上記の技術的課題に着目して成されたものであり、見栄えや組み付け性が低下することなく、電力制御装置を構成する電気回路に帯電した静電気を除電することができる除電装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、路面に対して絶縁状態になっている車体と、前記車体に搭載された複数の電気機器と、前記複数の電気機器のそれぞれに電気的に接続された複数の電気回路とを備えた除電装置において、前記複数の電気回路のうちの少なくとも二つの正極回路の一部を収容する非導電性部材のケースと、前記ケースの内面のうち前記正極回路のそれぞれに対向した複数の対向部と、前記ケースの外面のうち複数の対向部とは反対側の部分となる複数の特定部位と、前記複数の特定部位を覆うように前記ケースの外面に取り付けられる導電部材の導電層と、前記導電層のうち前記ケースとは反対側の面である外表面に取り付けられるとともに、前記導電層に帯電した正の電位に応じて表面を流れる外気に負の空気イオンを生じさせる自己放電により、前記ケースの外表面の正の電位を中和除電して低下させる放電層とを有する自己放電式除電器とを備えていることを特徴とするものである。
この発明によれば、複数の電気機器のそれぞれに電気回路が電気的に接続され、その複数の電気回路のうちの少なくとも二つの正極回路の一部が、非導電性部材のケースに収容されている。そのため、正極回路に帯電した静電気に応じた誘導分極により、ケースの内面が負極となり、その電位は、正極回路に対向した対向部が高くなる。同様に、対向部とは反対側の部分となる特定部位は正極になるとともに、その電位が高くなる。このように電位が高くなった特定部位を覆うように導電部材が取り付けられることにより、導電部材によって電位が均一化される。そして、導電部材の外表面に取り付けられた自己放電式除電器が、導電部材の電位に応じて表面を流れる外気に負の空気イオンを生じさせることにより、ケースの外表面の正の電位を中和除電する。そのようにケースの電位を低下させることにより、正極回路に帯電した静電気を除電することができる。つまり、電気回路に帯電した静電気を除電することができる。
この発明の実施形態における除電装置の一例を説明するための模式図である。 静電気の除電作用を説明するためのグラフである。 自己放電式除電器の有効放電面積と走行性能との関係を示すグラフである。
この発明の実施形態における除電装置を説明するための構成の一例を図1に示している。図1に示す除電装置1は、駆動力源としてエンジンとモータとを備えたハイブリッド車両に設けられている。なお、この発明の実施形態における除電装置は、ハイブリッド車両に限らず、駆動力源としてモータのみを備えた電気自動車やエンジンのみを備えたガソリン自動車などの種々の車両に設けることができる。
上記のハイブリッド車両には、補機類などの電気機器と、その補機類などの電気機器に電力を供給する電源装置と、電源装置から電気機器に供給される電力を制御するためなどの電子部品を有する電気回路とが設けられている。この発明の実施形態における除電装置1は、その電気回路のうちの正極側の回路(以下、正極回路と記す)の静電気を除電するように構成されている。
正極回路に設けられた複数のインターフェース端子、ヒューズ、リレー、あるいは12Vバッテリの正極端子など(以下、これらを正極端子2と記す)は、通常、車両の前方側に設けられたエンジンルーム内に固定された一つのケースに収容されている。なお、インターフェース端子、ヒューズ、リレーは、樹脂製のキャップが被されており、それに対して12Vバッテリの正極端子には、キャップなどが被されていない。
そのケースは、サイドメンバーなどの剛体である車体に固定されかつ上方が開口した図示しない収容部と、その開口部を閉じる蓋部3とにより構成されている。その蓋部3は、開口部よりも若干大きい上壁部と、その外縁から収容部側に垂下して形成された図示しない外壁部とにより構成されている。その外壁部と収容部の側壁部との一部が、上下方向において重なるように構成され、外壁部と側壁部とが留め具によって固定されている。
また、収容部の側壁面の下方側、または底面を貫通して正極回路の一部が設けられるとともに、上記のそれぞれの正極端子2は、開口部側に向くとともに、その先端部と蓋部3の内面4との間に所定の間隔が空くように正極回路に形成されている。なお、正極端子2と蓋部3の内面4との距離は、不均一になっており、12Vバッテリの正極端子2aが、最も蓋部3の内面4に接近して設けられている。蓋部3の内面4のうち正極端子2(2a)と対向した部分が、この発明の実施形態における「対向部」に相当する。
上記の蓋部3と収容部とは、ポリエチレン、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレンなどの非導電性の樹脂材料により構成されている。なお、上記に挙げた各樹脂材料は、静電列において負極の静電気が帯電しやすい材料である。
さらに、蓋部3の外面5のうち内側に正極端子2が配置された複数の箇所を覆うように、アルミニウムの粘着テープなどの導電性部材6が取り付けられている。また、導電性部材6のうち蓋部3とは反対側の面に、微細な金属材料を含有したメタリック塗料7等が塗布されている。この導電性部材6とメタリック塗料7等とにより、蓋部3の電位を低下させる自己放電式除電器Aとして機能する。上記の導電性部材6が、この発明の実施形態における「導電層」に相当し、メタリック塗料7等が、この発明の実施形態における「放電層」に相当する。なお、この発明の実施形態における自己放電式除電器は、上記の構成に限らず、後述するように蓋部3の外面5の電位を平均化するための導電層と、自己放電を主の機能とする放電層とを備えていればよい。
ここで、自己放電式除電器Aの一例について説明する。自己放電式除電器Aは、その電位に応じてコロナ放電が生じるように構成されている。自己放電式除電器Aからコロナ放電が生じると、自己放電式除電器Aの表面を流れる外気に負のイオンが生じる。そして、その負のイオンにより自己放電式除電器Aの周囲の静電気を中和させて除電する。コロナ放電は、従来知られているように鋭利もしくは尖っている部位から生じる。そのようなコロナ放電を生じさせることができる自己放電式除電器Aの一例としては、上述したメタリック塗料や、繊維状のカーボンを含有した塗料(カーボン塗料)を塗布することにより構成することができる。このメタリック塗料に含有された金属材料は、断面がU字状となるように円板を湾曲させた形状であって、そのエッジからコロナ放電が生じると考えられる。また、カーボン塗料は、その塗料に含有された繊維状のカーボンの先端部からコロナ放電が生じると考えられる。
さらに、自己放電式除電器Aの他の例としては、金、銀、銅、アルミニウムなどの電気伝導率が高い材料により形成されたシートにより構成することができる。上記のようなコロナ放電は、鋭利または尖っている部位から生じるため、シートの表面に、ローレット加工やヘアライン加工などを施して極めて細い突起部を形成すればよい。このようにシートを形成した場合には、突起部やシートの外縁部などのエッジからコロナ放電が生じる。したがって、この発明の実施形態における自己放電式除電器は、導電性部材に上記の金属製のシートなどを取り付けて構成されていてもよい。
上記のように自己放電式除電器Aからコロナ放電が生じると、自己放電式除電器Aの周囲の外気(大気もしくは空気)には、自己放電式除電器Aに帯電していた静電気の極性とは反対の極性の空気イオンが生じる。そのようにコロナ放電が生じることを要因とした空気イオンを含む外気が、自己放電式除電器Aの周囲に流動することにより、放電対象となる部材の静電気を中和して除電する。すなわち、空気イオンと放電対象となる部材(ここでは、蓋部3)との電位差を下げる。
つぎに、上述したように蓋部3に自己放電式除電器Aを取付けたことによる作用および効果について説明する。まず、本発明者は、蓋部3に自己放電式除電器Aを取り付けないまま、蓋部3の外面における複数個所の電位を測定しつつ、走行性能の良否を判断するための走行実験(以下、基礎実験と記す)を行った。この走行性能とは、アクセル操作やブレーキ操作などの加減速の要求量が変化してからの応答時間を表しており、加減速の要求量が変化してからの応答時間が短いほど走行性能が良好と判断される。その基礎実験を行った結果、内側に正極端子2が設けられている箇所の正の電位が局部的に高くなっていることが分かった。特に、12Vバッテリの正極端子2aが内側に設けられている箇所の正の電位が最も高くなっていた。蓋部3の外面5のうち正の電位が局部的に高くなっている箇所、言い換えると、正極端子2と対向した内面の反対側に位置する箇所が、この発明の実施形態における「特定部位」に相当する。
ついで、所定の表面積の自己放電式除電器Aを蓋部3の外面に取り付けて、走行実験(以下、比較実験と記す)を行った。なお、比較実験においては、蓋部3の外面の電位を測定するためのセンサなどを取り付けると、自己放電式除電器Aによる放電が阻害される可能性があるため、電位は測定していない。つまり、基礎実験と比較実験とは走行性能のみで、自己放電式除電器Aを取り付けることによる効果を判断している。その結果、比較実験の方が、基礎実験よりも走行性能が良好になった。特に、アクセルペダルの踏み込み量を変更してからの加速度(駆動力)の変化が顕著に改善された。
上記の走行実験の結果から、自己放電式除電器Aを蓋部3に取り付けることにより、以下に示すように走行性能に寄与したと考えられる。図2は、自己放電式除電器Aを蓋部3に取り付けたことによる作用を説明するための模式図である。なお、実線は、自己放電式除電器Aを蓋部3に取り付けた場合における電位を示し、破線は、自己放電式除電器Aを蓋部3に取り付けていない場合における電位を示している。まず、走行することにより補機類などの電気機器が作動することに伴って、特開2018−7367号公報に記載されている通り、電気機器や電子部品で静電気が発生し、その静電気が正極端子2に帯電したと考えられる。また、車両が走行すると、路面とタイヤとの間の摩擦などによって静電気が発生し、その静電気が車体に帯電する場合や、高圧電線などの外的な要因などによって車体に静電気が帯電する場合がある。上記の電気回路の負極側は車体をアースとしているため、車体に帯電した静電気が電気回路を介して正極端子2に帯電したと考えられる。なお、一般的な車体は、ゴム製のタイヤによって保持されている、つまり路面に対して絶縁状態になっているため、上記のように車体や車体に搭載された装置などに帯電した静電気は、路面に放電されにくい。
そのように正極端子2に静電気が帯電すると、誘導分極により正極端子2と所定の間隔を空けて配置された非導電性の蓋部3の内面4が負極となり、外面5が正極になる。その誘導分極の程度を示す分極モーメントは、電束密度と、電場の強さに応じた値となるから、正極端子2に帯電した静電気の電位が高く、また正極端子2との距離が近いほど、蓋部3の外面5の電圧が高くなると考えられる。そのため、複数の正極端子2を収容したケースの蓋部3には、局部的に電位が高い箇所が生じ、また内側に12Vバッテリの正極端子2aが設けられている箇所の電位が最も高くなったと考えられる。その12Vバッテリの正極端子2aの電位を図2におけるA領域に示し、蓋部3の電位を図2におけるB領域に示している。なお、B領域におけるA領域側が蓋部3の内面4の電位を示し、その反対側が蓋部3の外面5の電位を示している。
一方、自己放電式除電器Aを蓋部3に取り付けた場合には、導電性部材6が蓋部3に取り付けられることにより、蓋部3の正の電位に応じて自己放電式除電器Aからコロナ放電が生じて、図2におけるB領域の右端部に示すように蓋部3の外面5の電位が低下していると考えられる。そのように蓋部3の外面5の電位が低下することにより、図2におけるB領域の左端部に示すように非導電性部材である蓋部3の両面4,5の電位差を低減するために内面4側の電位が低下していると考えられる。そして、蓋部3の内面4の電位(負極)が低下することにより、正極端子2の正の静電気が除電されていると考えられる。ひいては、電気回路全体としての正の電位を低下することができるため、アースを介して車体に帯電した静電気も除電されていると考えられる。
上記のように正極端子2の正の静電気が除電された場合には、電気回路に作用する電圧などが静電気の影響を受けることを抑制すること、より具体的には、センサなどの検出値の誤差などを抑制することができると考えられる。その結果、自己放電式除電器Aを蓋部3に取り付けた場合の方が、自己放電式除電器Aを蓋部3に取り付けない場合よりも走行性能が向上したと考えられる。
また、本発明者は、車両のうち空気が流動する箇所に上述した自己放電式除電器Aを設置し、有効放電面積を徐々に変更させながら走行実験を行い、自己放電式除電器Aの有効放電面積の最適値があるか否かの検証を行った。なお、有効放電面積とは、自己放電式除電器Aからコロナ放電が生じる可能性がある面の表面積である。
その結果のグラフを図3に示している。図3の横軸は有効放電面積を示し、縦軸は走行性能を示している。なお、応答時間が短いほど縦軸の上側に示してあり、したがって、縦軸の上側となるにつれて、上記応答時間が短くなること、すなわち走行性能が良好であることを意味する。
図3に示す検証結果から、有効放電面積が所定の面積以下の場合には、有効放電面積が大きくなるほど走行性能が良好になることが分かる。これは、上述したように自己放電式除電器Aからの放電量が多くなることに起因していると考えられる。また、導電性部材6によって局部的に電位が高い箇所を多く覆うことにより、自己放電式除電器Aの電位のばらつきを抑制できるためと考えられる。言い換えると、導電性部材6は、局部的に電位が高い箇所の電位を平均化する機能を有していると言い得る。
一方、有効放電面積が所定の面積よりも大きくなると、有効放電面積が大きくなるにつれて走行性能が悪化することが分かる。これは、有効放電面積が所定の面積よりも大きくなると、一度コロナ放電が生じた場合に、再度、自己放電式除電器Aの電位がある程度増大するまでコロナ放電が生じないためと考えられる。言い換えると、コロナ放電が一時的に生じなくなるためと考えられる。それに対して、有効放電面積が所定の面積以下の場合には、一度コロナ放電が生じて自己放電式除電器Aの電位が低下したとしても、コロナ放電が継続して生じているためと考えられる。つまり、自己放電式除電器Aに帯電する電位の増加率と、自己放電式除電器Aにより除電される電位の減少率とがほぼ均等になるためと考えられる。
したがって、図3に示すように有効放電面積に最適値があり、継続してコロナ放電を発生させるため、言い換えると、連続的に中和除電の効果を奏するために、自己放電式除電器Aの有効放電面積が上記最適値となるように形成することが好ましい。また、その有効放電面積の最適値は、ハイブリッド車両であっても、電気自動車であっても、エンジンのみを駆動力源とした車両であってもほぼ同一であり、また車種が異なっていても有効放電面積の最適値がほぼ同一であることが確認された。具体的には、有効放電面積の最適値は、9035平方ミリメートルであり、自己放電式除電器Aを蓋部3に取り付けたことによる効果を体感し得る許容範囲は、9000平方ミリメートルから9070平方ミリメートルまでである。
なお、この発明の実施形態における自己放電式除電器は、複数の正極端子と対向して設けられたケースの壁部に取り付けられていればよく、蓋部に限らず、側壁面に取り付けられていてもよい。
1…除電装置、 2…正極端子、 3…(ケースの)蓋部、 4…内面、 5…外面、 6…導電性部材、 7…メタリック塗料。

Claims (1)

  1. 路面に対して絶縁状態になっている車体と、前記車体に搭載された複数の電気機器と、前記複数の電気機器のそれぞれに電気的に接続された複数の電気回路とを備えた除電装置において、
    前記複数の電気回路のうちの少なくとも二つの正極回路の一部を収容する非導電性部材のケースと、
    前記ケースの内面のうち前記正極回路のそれぞれに対向した複数の対向部と、
    前記ケースの外面のうち複数の対向部とは反対側の部分となる複数の特定部位と、
    前記複数の特定部位を覆うように前記ケースの外面に取り付けられる導電部材の導電層と、前記導電層のうち前記ケースとは反対側の面である外表面に取り付けられるとともに、前記導電層に帯電した正の電位に応じて表面を流れる外気に負の空気イオンを生じさせる自己放電により、前記ケースの外表面の正の電位を中和除電して低下させる放電層とを有する自己放電式除電器と
    を備えていることを特徴とする除電装置。
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