JP2020041167A - 成膜装置用の部品及び成膜準備方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数枚の被処理基板に対して非晶質な酸化インジウム系酸化物膜を継続して成膜する場合にも、製品歩留まりの低下を防止することができるスパッタリング装置用の部品を提供する。【解決手段】真空チャンバ1内でターゲット2をスパッタリングして被処理基板Wの表面に酸化インジウム系酸化物膜を成膜するとき、真空チャンバ内に存してその表面にも前記酸化インジウム系酸化物膜が成膜される本発明のスパッタリング装置用の部品5a,5b,5cは、母材金属51と、その母材金属の表面に形成された結晶質の酸化インジウム系酸化物膜52とを備える。【選択図】図1
Description
本発明は、真空チャンバ内で物理蒸着法により被処理基板表面に酸化インジウム系酸化物膜を成膜するとき、真空チャンバ内に存してその表面にも前記酸化インジウム系酸化物膜が成膜される成膜装置用の部品及び成膜準備方法に関する。
ディスプレイ装置の製造工程には透明導電膜を成膜する工程があり、透明電極膜としては、例えばITO膜やITIO膜のような酸化インジウム系酸化物膜が用いられる場合がある。このような酸化インジウム系酸化物膜の成膜には、真空蒸着法やスパッタリング法などの物理蒸着法によるものを利用することが従来から知られている。スパッタリング法によりITO膜を成膜する場合を例に説明すると、スパッタリング装置の真空チャンバ内に被処理基板とITOターゲットとを対向配置し、真空雰囲気中の真空チャンバ内に希ガス(または希ガス及び酸素ガス)を導入し、ITOターゲットに負の電位を持った所定電力を投入してプラズマ雰囲気を形成し、プラズマ雰囲気中の希ガスのイオンでITOターゲットをスパッタリングすることで、ITOターゲットから飛散したスパッタ粒子を被処理基板に付着、堆積させて被処理基板表面にITO膜が成膜される(例えば特許文献1参照)。この場合、真空チャンバ内に導入するガス種やその流量、成膜時の真空チャンバ内の圧力、成膜時の基板温度などの成膜条件によって、成膜されるITO膜を非晶質なものまたは結晶化したものにできることが一般に知られている。
ここで、上記のようにして被処理基板表面に酸化インジウム系酸化物膜を成膜するとき、例えば真空チャンバの内壁への着膜を防止する防着板のような真空チャンバ内に存する各種の部品(即ち、成膜対象ではないもの)の表面などにITO膜が形成されることとなる。そして、複数枚の被処理基板に対してITO膜を継続して成膜していく場合に、被処理基板に成膜しようとするITO膜の膜質によっては、被処理基板にパーティクルが付着して、製品歩留まりを低下させることが判明した。
そこで、本発明者は、鋭意研究を重ね、次のことを知見するのに至った。即ち、複数枚の被処理基板に対してITO膜を継続して成膜する場合、同様に、真空チャンバ内に存する各種の部品の表面にもスパッタ粒子が付着、堆積してITO膜が形成される。このとき、所望の膜質である(222)方位が支配的となる多配向結晶化ITO膜を得る成膜条件の場合、真空チャンバ内に存する部品のうち、例えば、防着板の裏面側(即ち、真空チャンバの壁面に面する側)にスパッタ粒子が回り込んで付着、堆積して成膜されたもののような所謂回り込み膜であって、プラズマ雰囲気に曝されないものや、プラズマ雰囲気に曝されるものの、所定温度に冷却されている部品表面に成膜したものは、(400)方位が支配的となる単結晶のような膜質(黄色の膜)になり、且つ、針状構造で内部に空間を多く持つことを知見するのに至った。そして、このような膜は、柱状構造で内部に空間が殆どない上記多配向結晶化ITO膜とは異なり、外力からの影響に弱くて脆いことから、これが、何らかの原因で黄色の粉状体(イエローパウダー)となって真空チャンバ内に飛散し、この飛散したものがパーティクルとなって被処置基板表面に付着するものと考えられた。
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、物理蒸着法により酸化インジウム系酸化物膜を継続して成膜する場合に、製品歩留まりの低下を防止することができる成膜装置用の部品及び成膜準備方法を提供することをその課題とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は、真空チャンバ内で物理蒸着法により被処理基板表面に酸化インジウム系酸化物膜を成膜するとき、真空チャンバ内に存してその表面にも前記酸化インジウム系酸化物膜が成膜される成膜装置用の部品において、母材金属と、その母材金属の表面に形成される、酸化インジウム系酸化物の結晶化膜とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、物理蒸着法、特にプラズマを利用したものにより被処理基板表面に継続してITO膜を成膜するとき、同様に、真空チャンバ内に存する各種の部品表面にもターゲットから飛散したスパッタ粒子が付着、堆積してITO膜が形成される。このとき、所望の膜質のITO膜を得るための成膜条件によっては、所謂回り込み膜であって、プラズマ雰囲気に曝されないものや、プラズマ雰囲気に曝されるものの、所定温度に冷却されている部品表面に付着、堆積したものは、本質的には、(400)方位に支配的に配向した単結晶のような膜質で、且つ、針状構造を持つITO膜が形成されるところであるが、母材金属の表面に酸化インジウム系酸化物の結晶化膜が予め形成されているために、この結晶化膜表面に形成されるITO膜は、上記と比較して太い針状構造を持つものに変化する(即ち、より強固な膜質へと改善される)。その結果、外力からの影響に強くなり、黄色の粉状体(イエローパウダー)となって真空チャンバ内に飛散するものを可及的に減少させることができる。これにより、真空チャンバ内に存する部品表面に成膜されたITO膜がパーティクルの発生源となることがなく、製品歩留まりの低下を防止することができる。
なお、本発明において、「結晶化膜」は、その後に積層され得るITO膜の針状構造を少なくともその界面で肥大化できるものであればよく、このような結晶化膜としては、例えば、(222)方位が支配的となる多配向結晶化ITO膜が挙げられる。また、所謂「回り込み膜」とは、粒子放出源を直視できるような位置にはないが、反跳した粒子が到達することで成膜がなされたものをいい、例えば、物理蒸着法がスパッタリング法である場合、ターゲット表面から見て余弦則による直接のスパッタ粒子の入射を受けない位置にて、反跳したスパッタ粒子が到達して成膜がなされたものがその一例として挙げられる。
本発明において、前記酸化インジウム系酸化物膜の結晶化膜の膜厚を20nm以上1mm未満としておけば、結晶化膜表面に形成されるITO膜は、上記と比較して太い針状構造を持つものに確実に変化させることができ、有利である。
また、上記課題を解決するために、本発明は、真空チャンバ内でスパッタリング法により酸化インジウム系酸化物のターゲットをスパッタリングして被処理基板表面に酸化インジウム系酸化物膜を成膜するのに先立って実施される成膜準備方法であって、真空チャンバ内に存してその表面にも前記酸化インジウム系酸化物膜が成膜され得る金属製の成膜装置用の部品表面に、酸化インジウム系酸化物の結晶化膜を形成する工程を含むことを特徴とする。なお、酸化インジウム系酸化物の結晶化膜は、少なくとも、ターゲット表面から見て余弦則による直接のスパッタ粒子の入射を受けない位置にあるものの、回り込み膜が形成される領域や、スパッタリング法による成膜時、所定温度に冷却されている部品であってプラズマ雰囲気に曝される領域に形成されていればよい。
以下、図面を参照して、物理蒸着法をスパッタリング法とし、また、真空チャンバ内に存してその表面にも酸化インジウム系酸化物膜が成膜される成膜装置用の部品を、真空チャンバ内に配置される防着板とし、本発明のスパッタリング装置用の部品の実施形態及び本実施形態の成膜準備方法を説明する。
図1を参照して、SMは、ガラス基板などの被処理基板(以下「基板W」という)表面に対して物理蒸着法としてのスパッタリング法により成膜が実施できるマグネトロン方式のスパッタリング装置である。スパッタリング装置SMは、真空チャンバ1を備え、真空チャンバ1の天井部には、公知の方法で製作されたITO製のターゲット2が取り付けられている。以下においては、図1に示すスパッタリング装置SMの姿勢を基準に、真空チャンバ1の天井部側を向く方向を「上」とし、その底部側を向く方向を「下」として説明する。
ターゲット2は、内部に冷媒循環通路(図示省略)が形成された銅等の熱伝導に優れた金属製のバッキングプレート21の下面にインジウム等の公知のボンディング剤(図示省略)を介して接合され、この状態でスパッタ面2aを下方にして絶縁体I1を介して真空チャンバ1の側壁上部に取り付けられている。バッキングプレート21にはスパッタ電源Eが接続され、スパッタリングによる成膜時、例えば、バッキングプレート21を介してターゲット2に負の電位を持った電力が投入できるようにしている。バッキングプレート21の上方には、ターゲット2を貫通する漏洩磁場を作用させる閉鎖磁場若しくはカスプ磁場構造の磁石ユニット3が配置されている。
真空チャンバ1の底部中央には、ターゲット2に対向させてステージ4が絶縁体I2を介して配置されている。ステージ4は、基板Wの輪郭に対応した上面形状を持つ金属製の基台41と、この基台41上面に接着されるチャックプレート42とで構成され、基板Wをその成膜面を上側にして位置決め保持できるようにしている。チャックプレート42には、図示省略するチャック電源から電圧が印加される静電チャック用の電極が埋設されている。静電チャックの構造については、単極型や双極型等の公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
また、真空チャンバ1内には、真空チャンバ1内壁への着膜を防止すると共に処理室10を画成する環状の防着板5a,5b,5cが配置され、本実施形態のスパッタリング装置用の部品を構成する。そして、防着板5aは、ターゲット2の周囲を囲うように真空チャンバ1上部に吊設され、防着板5cは、基台41の周縁部に立設され、防着板5bは、これらの防着板5a,5cと水平方向に所定間隔の隙間を夫々存して、かつ、上下方向に所定長さだけ夫々オーバーラップするように配置されている。尚、中間の防着板5bは、基板Wを搬送する際に、図示省略する昇降機構により上昇できるように構成されている。
真空チャンバ1の側壁上部には、マスフローコントローラ61が介設された、アルゴン等の希ガスからなるスパッタガス(場合によっては、希ガスと酸素を含有する反応ガス)を導入するガス導入管6の先端部が貫設されて防着板5aの近傍まで達している。そして、マスフローコントローラ61によりスパッタガスを処理室10に所定の流量で導入できるようにしている。また、真空チャンバ1の側壁下部に開設された排気口11には、ターボ分子ポンプ等の真空排気手段Pに通じる排気管12が接続され、処理室10を真空引きできるようになっている。上記スパッタリング装置SMは、特に図示しないが、マイクロコンピュータやシーケンサ等を備えた公知の制御手段を有し、制御手段によりスパッタ電源Eの稼働、マスフローコントローラ61の稼働、真空排気手段Pの稼働等を統括管理するようになっている。
次に、スパッタリング装置SMにより所定の成膜条件で基板Wの上面にITO膜を成膜するのに際しては、先ず、図示省略の搬送ロボットを用いて、真空チャンバ1内のステージ4に基板Wをセットする。真空排気手段Pを作動させて処理室10内を所定の真空度(例えば、1×10−5Pa)まで真空引きした後、マスフローコントローラ61を制御してスパッタガスたるアルゴンガスを所定の流量(例えば、100〜1500sccm)で導入する(このとき、処理室10の圧力は、0.1〜1Paの範囲となる)。尚、反応ガスとしての酸素ガスを導入する場合、例えば、1〜100sccmの範囲で導入される。そして、スパッタ電源Eによってターゲット2に500〜5000Wの範囲力で負の電位をもった直流電力を投入して処理室10内にプラズマ雰囲気を形成する。これにより、ITOターゲット2のスパッタ面2aがプラズマ雰囲気中の希ガスのイオンでスパッタされ、飛散したスパッタ粒子が基板W表面に付着、堆積してITO膜が成膜される。
上記のようにして基板W表面にITO膜を成膜するとき、真空チャンバ1内に存する部品としての防着板5a,5b,5cにもITO膜が形成される。即ち、処理室10側に位置する防着板5a,5b,5cの表面だけでなく、互いにオーバーラップすることで遮蔽される防着板5a,5b,5cの部分50a,50b(真空チャンバ1の壁面側に位置する防着板5a,5b,5cの裏面の一部を含む)にも、スパッタ粒子が回り込んで付着、堆積し、ITO膜が形成される。つまり、防着板5a,5b,5cの部分50a,50bは、本質的にターゲット2表面から見て余弦則による直接のスパッタ粒子の入射を受けない位置にあるが、防着板5a,5b,5c相互の間に間隙50cが存在することで、反跳したスパッタ粒子が到達することでITO膜(所謂回り込み膜)が成膜される。この場合、成膜時の真空チャンバ1内の圧力などの成膜条件にもよるが、防着板5a,5b,5cの上下方向において間隙50cの開口幅に対して2倍程度の領域まで回り込み膜が成膜され、この領域までに形成された回り込み膜が、後述のようにパーティクルの発生源になり得る。
ここで、本願発明者らの実験によれば、成膜条件によっては(特に、基板W表面に非晶質のITO膜を成膜するような条件で成膜する場合には)、処理室10側に位置する、プラズマ雰囲気に直接曝される部分としての防着板5a,5b,5cの表面(オーバーラップした部分50a,50bを除く)に形成されたITO膜は、(222)と(400)方位に配向した酸化インジウム系酸化物の多配向結晶化膜となっているのに対して、プラズマ雰囲気に曝されない部分としての防着板5a,5b,5cの部分50a,50bに形成されたITO膜は、(400)方位が支配的となる単結晶のような膜質(黄色の膜)になり、且つ、針状構造で内部に空間を多く持つことが判った。そして、このようなITO膜は、柱状構造で内部に空間が殆どない上記多配向結晶化膜とは異なり、外力からの影響に弱くて脆く、これが、何らかの原因で黄色の粉状体(イエローパウダー)となって真空チャンバ1内に飛散して浮遊したのでは、複数枚の基板W表面にITO膜を継続して成膜するとき、製品歩留まりの低下を招来してしまう。
本実施形態では、防着板5a,5b,5cをステンレス、アルミニウム、チタン等から選択される金属又は合金製の母材金属51と母材金属51の表面にその全面に亘って形成される酸化インジウム系酸化物の結晶化膜52とで構成することとした。このような結晶化膜52としては、図2(a)及び図2(b)に示すように、20〜60度の範囲でXRD分析すると、例えば(222)や(400)方位に多配向したものであって、(222)が他のミラー指数と比較して3倍以上の強度を持つ酸化インジウム系酸化物の多配向結晶化膜を用いることができる。このような結晶化膜52の形成には、スパッタリング法だけでなく、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学的気相法(CVD)等から選択される他の公知の方法を利用することもでき、また、ITO膜を成膜した後にアニール処理を行うことで(多)結晶化したITO膜を得るようにしてもよい。なお、結晶化膜52は、少なくとも、ターゲット2表面から見て余弦則による直接のスパッタ粒子の入射を受けない位置であるものの、回り込み膜が形成される領域や、スパッタリングによる成膜時、所定温度に冷却されている部品であって、プラズマ雰囲気に曝される領域に形成されていればよい。また、母材金属51の面に例えばブラスト処理を施して凹凸面とした上で結晶化膜52を形成するようにしてもよい。このとき、表面粗さRaを1μm以上とすれば、母材金属51と結晶化膜52との接触面積を増やすことができ、密着性を向上させることができる。また、母材金属51と結晶化膜52との間に、溶射等によりAl膜を介在させてもよい。なお、母材金属51としてのステンレスの表面を20〜80度の範囲でXRD分析すると、図3(a)に示すように、(111)に支配的に配向しており、また、ステンレスの表面にアルミニウムを溶射したものの表面を20〜80度の範囲でXRD分析すると、図3(b)に示すように、上記同様、(111)に支配的に配向しており、これらの表面に回り込み膜が形成されると、成膜条件によっては、(400)方位が支配的となる単結晶のような膜質(黄色の膜)になり、且つ、針状構造で内部に空間を多く持つものになる。
以上によれば、母材金属51の表面に酸化インジウム系酸化物の結晶化膜52が予め形成されているため、基板Wに対する成膜時に、母材金属51表面の結晶化膜52表面に形成されるITO膜は、上記と比較して太い針状構造を持つものに変化する(即ち、より強固な膜質へと改善される)。その結果、外力からの影響に強くなって黄色の粉状体(イエローパウダー)となって真空チャンバ1内に飛散して浮遊するものを可及的に減少させることができる。これにより、防着板5a,5b,5cがパーティクルの発生源となることがなく、製品歩留まりの低下を防止することができる。なお、上記酸化インジウム系酸化物膜の結晶化膜52の膜厚を20nm以上1mm未満としておけば、結晶化膜表面に形成されるITO膜は、上記と比較して太い針状構造を持つものに確実に変化でき、有利である。
ところで、スパッタリング装置SMにより複数枚の基板Wに対して所定の成膜条件でITO膜を成膜しようする場合、その当初、真空チャンバ1内には、母材金属51のままの防着板5a,5b,5cを設けていてもよい。このような場合、真空チャンバ1内でITO膜を成膜するのに先立って、本実施形態の成膜準備方法が実施される。具体的には、真空チャンバ1内のステージ4にダミー基板Wをセットし、真空排気手段Pを作動させて処理室10内を所定の真空度(例えば、1×10−5Pa)まで真空引きした後、マスフローコントローラ61を制御してスパッタガスたるアルゴンガスや酸素ガスを所定の流量で導入する。そして、スパッタ電源Eによってターゲット2に負の電位をもった所定の直流電力を投入して処理室10内にプラズマ雰囲気を形成し、ITOターゲット2のスパッタ面2aをスパッタする。このとき、真空チャンバ内に導入するガス種やその流量、成膜時の真空チャンバ1内の圧力などの成膜条件を適宜設定し、プラズマ雰囲気に曝されない部分としての防着板5a,5b,5cの部分50a,50b(真空チャンバ1の壁面側に位置する防着板5a,5b,5cの裏面の一部を含む)にも、スパッタ粒子を回り込ませてITO膜を成膜し、このとき、このようなITO膜を、例えば、(222)が他のミラー指数と比較して3倍以上の強度を持つ酸化インジウム系酸化物の多配向結晶化膜とする。これにより、その後に、複数枚の基板Wに対してスパッタリング装置SMによりITO膜を成膜する場合に、真空チャンバ1内に飛散して浮遊するものを可及的に減少させることができ、防着板5a,5b,5cがパーティクルの発生源となることがなく、製品歩留まりの低下を防止することができる。
次に、上記効果を確認するために、上記スパッタリング装置SMを用いて次の実験を行った。即ち、発明実験1では、ターゲット2をITO(SnO2が10wt%)ターゲット、基板Wをガラス基板とした。成膜条件として、基板Wを真空チャンバ1内のステージ4にセットした後、真空排気後に真空チャンバ1内にアルゴンガスを1000sccm、酸素ガスを20sccmの流量で導入し(このときの処理室10内の圧力は0.7Pa)、ITOターゲット2に対する投入直流電力を2500Wに設定し、処理室10内にプラズマ雰囲気を形成して18時間連続放電させた。そして、成膜に際しては、真空チャンバ1内でプラズマに直接晒されないが、ITO膜が形成され得る位置に2枚のガラス片(試料1、試料2)をセットした。なお、試料2は、ガラス片の表面に、予め150nmの膜厚で、(222)が他のミラー指数と比較して3倍以上の強度を持つ酸化インジウム系酸化物の多配向結晶化膜を形成したものとした。
図4は、試料1,2のSEM画像である、これによれば、試料1,2とも、上記成膜条件での成膜によりその表面に約140nmの膜厚でITO膜が形成されている。この場合、図4(a)に示す試料1では、針状構造で内部に空間を多く持つことが判る。そして、試料1に対してX線解析法によりその結晶構造解析すると、特に図示して説明しないが、(400)方位に支配的に配向していることが確認された。他方、図4(b)に示す試料2では、多配向結晶化膜の表面に、試料1と同様のITO膜が形成されているが、特に界面において、上記と比較して太い針状構造を持つものに変化していることが確認された。試料2に対してXRD分析すると、試料1と同様、多配向結晶化膜上のITO膜は、(400)方位に支配的に配向していることが確認された。
次に、上記スパッタリング装置SMを用いて他の実験を行った。即ち、発明実験2では、防着板5a,5b,5cとして、母材金属51表面にその全面に亘って20μmの膜厚で(222)が他のミラー指数と比較して3倍以上の強度を持つ酸化インジウム系酸化物の多配向結晶化膜52が形成されたものを用い、ターゲット2をITO(SnO2が10wt%)ターゲットとし、基板Wをガラス基板とした。そして、成膜条件として、基板Wを真空チャンバ1内のステージ4にセットした後、真空排気後に真空チャンバ1内にアルゴンガスを1000sccmの流量で導入し(このときの処理室10内の圧力は0.7Pa)、ITOターゲット2に対する投入直流電力を3000Wに設定し、処理室10内にプラズマ雰囲気を形成して12時間連続放電させた。その結果、成膜後の基板W表面に黄色の粉状体が全く付着していないことが確認され、防着板5a,5b,5cを母材金属51のままとし、上記と同条件で12時間連続放電させた場合(成膜後の基板W表面には、黄色の粉状体が付着している)と比較して、パーティクルの発生が著しく抑制できることが確認された。なお、追加の発明実験3として、ターゲット2をITIO(1wt%TiO2が添加されたIn2O3)ターゲットとし、防着板5a,5b,5cの母材金属51表面にITIO膜52を形成した点以外は、上記発明実験2と同様に12時間連続放電させたところ、上記発明実験2と同様に、パーティクルの発生が著しく抑制できることが確認された。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態においては、物理蒸着法を実施する装置としてスパッタリング装置SMを例に説明したが、これに限定されるものではなく、真空蒸着法やイオンプレーティング法によりITO膜を成膜する場合にも本発明は適用できる。この場合、真空蒸着法やイオンプレーティング法によるものは、スパッタリング法によるものより防着板への回り込みが多い(つまり、スパッタリング法より広面積に回り込み膜が成膜される)ため、有効である。また、上記実施形態では、部品として防着板5a,5b,5cを例に説明したが、真空チャンバ1内に存して酸化インジウム系酸化物膜が着膜される部品であれば、本発明を適用することができる。
SM…スパッタリング装置、W…被処理基板、1…真空チャンバ、2…ターゲット、5a,5b,5c…防着板(部品)、51…母材金属、52…結晶質のITO膜,ITIO膜(酸化インジウム系酸化物膜の結晶化膜)。
Claims (3)
- 真空チャンバ内で物理蒸着法により被処理基板表面に酸化インジウム系酸化物膜を成膜するとき、真空チャンバ内に存してその表面にも前記酸化インジウム系酸化物膜が成膜される成膜装置用の部品において、母材金属と、その母材金属の表面に形成される、酸化インジウム系酸化物の結晶化膜とを備えることを特徴とする成膜装置用の部品。
- 前記酸化インジウム系酸化物膜の結晶化膜の膜厚を20nm以上1mm未満としたことを特徴とする請求項1記載の成膜装置用の部品。
- 真空チャンバ内でスパッタリング法により酸化インジウム系酸化物のターゲットをスパッタリングして被処理基板表面に酸化インジウム系酸化物膜を成膜するのに先立って実施される成膜準備方法であって、
真空チャンバ内に存してその表面にも前記酸化インジウム系酸化物膜が成膜され得る金属製の成膜装置用の部品表面に、酸化インジウム系酸化物の結晶化膜を形成する工程を含むことを特徴とする成膜準備方法。
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