JP2020037518A - レチノイド化合物及び医薬組成物 - Google Patents

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健二 大和屋
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健二 大和屋
雅彦 池北
Masahiko Ikekita
雅彦 池北
陽児 吉見
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陽児 吉見
有輝子 和田
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有輝子 和田
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Abstract

【課題】催奇形性の低い新規なレチノイド化合物、及びそのレチノイド化合物を含有する医薬組成物を提供する。【解決手段】下記式(1)で表される化合物又はその塩であるレチノイド化合物、及びそのレチノイド化合物を含有する医薬組成物を提供する。式中、R1はハロゲン原子を示し、R2及びR3はそれぞれ独立にシリル基を示す。【選択図】なし

Description

本発明は、レチノイド化合物及びそれを含有する医薬組成物に関する。
レチノイドとは、ビタミンAの活性本体である全トランス型レチノイン酸(ATRA)及びそれと同等の活性を示す化合物群の総称である。より正確には、核内に存在するレチノイン酸受容体(RARα,β,γ及びRXRα,β,γ)に結合する化合物群の総称である。
ATRAは、細胞の増殖及び分化を調節する作用を有しており、急性前骨髄球性白血病(APL)の治療薬として使用されている。また、ATRAと同等の活性を示す多くのレチノイド化合物が合成されており(例えば、特許文献1〜3参照)、一部は実際に臨床応用されている。例えば、Am80(一般名:タミバロテン)は、急性前骨髄球性白血病の治療薬として使用されており、タルグレチン(一般名:ベキサロテン)は、皮膚T細胞性リンパ腫の治療薬として使用されており、ディフェリン(一般名:アダパレン)は、尋常性座瘡の治療薬として使用されている。
しかし、ATRAは炭化水素カルボン酸からなり脂溶性が高く、過剰症になりやすい上、催奇形性を有するという問題がある。また、ATRA以外のレチノイド化合物についても、ATRAと同様に催奇形性を有する。このため、催奇形性の低いレチノイド化合物の開発が望まれている。
特開平7−242592号公報 特開平8−283238号公報 特開2008−94727号公報
本発明は、催奇形性の低い新規なレチノイド化合物、及びそのレチノイド化合物を含有する医薬組成物を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 下記式(1)で表される化合物又はその塩。
(式中、Rはハロゲン原子を示し、R及びRはそれぞれ独立にシリル基を示す。)
<2> 前記式(1)中のR及びRがトリメチルシリル基である<1>に記載の化合物又はその塩。
<3> <1>又は<2>に記載の化合物又はその塩を有効成分として含有する医薬組成物。
<4> ビタミンA欠乏症、皮膚疾患、免疫性疾患、及び癌からなる群より選択される少なくとも1種の疾患の治療又は予防に用いられる<3>に記載の医薬組成物。
本発明によれば、催奇形性の低い新規なレチノイド化合物、及びそのレチノイド化合物を含有する医薬組成物を提供することができる。
HL−60細胞を各化合物で処理したときの、未分化の細胞、単球に分化した細胞、及び好中球に分化した細胞の割合を示す図である。 HL−60細胞を種々の濃度の各化合物で処理したときの、好中球に分化した細胞の割合を示す図である。 SK−N−SH細胞を各化合物で処理したときの神経突起伸長を顕微鏡観察した結果を示す図である。 SK−N−SH細胞をmTOR1阻害剤(ラパマイシン)で前処理した後、各化合物で処理したときの神経突起伸長を顕微鏡観察した結果を示す図である。 mTOR1阻害剤(ラパマイシン)を用いて前処理を行った場合と前処理を行っていない場合とにおける神経突起長を示す図である。 mTOR1阻害剤(ラパマイシン)を用いて前処理を行った場合と前処理を行っていない場合とにおける、リン酸化mTOR(p−mTOR)及びmTORのウェスタンブロッティング結果を示す図である。 mTOR1/2阻害剤(Torin1)を用いて前処理を行った場合と前処理を行っていない場合とにおける神経突起長を示す図である。 mTOR1/2阻害剤(Torin1)を用いて前処理を行った場合と前処理を行っていない場合とにおける、リン酸化mTOR(p−mTOR)及びmTORのウェスタンブロッティング結果を示す図である。 MAPK阻害剤(U−126)を用いて前処理を行った場合と前処理を行っていない場合とにおける神経突起長を示す図である。 MAPK阻害剤(U−126)を用いて前処理を行った場合と前処理を行っていない場合とにおける、リン酸化ERK(p−ERK)及びERKのウェスタンブロッティング結果を示す図である。 RARβアンタゴニスト(LE135)を用いて前処理を行った場合と前処理を行っていない場合とにおける神経突起長を示す図である。 胎生9日の妊娠マウスに各化合物を単回経口投与したときの胎生18日のマウス胎児の外部形態を示す図である。 胎生9日の妊娠マウスに各化合物を単回経口投与したときの胎生18日のマウス胎児の頭部で観察された奇形形成の例を示す図である。 胎生9日の妊娠マウスに各化合物を単回経口投与したときの胎生18日のマウス胎児の肛門で観察された奇形形成の例を示す図である。 胎生9日の妊娠マウスに各化合物を単回経口投与したときの胎生18日のマウス胎児の後肢で観察された奇形形成の例を示す図である。 HepG2細胞を各化合物で処理したときのCYP26A1の経時的mRNA発現レベルを定量RT−PCRにより解析した結果を示す図である。
<レチノイド化合物>
本実施形態に係るレチノイド化合物は、下記式(1)で表される化合物又はその塩である。
(式中、Rはハロゲン原子を示し、R及びRはそれぞれ独立にシリル基を示す。)
上記式(1)中、Rで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子及び塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
上記式(1)中、R及びRで示されるシリル基としては、例えば、−Si(R(ただし、Rはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示す。)で表される基が挙げられる。Rで示されるアルキル基の炭素数は1〜6が好ましい。また、Rで示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。−Si(Rで表される基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等が挙げられ、トリメチルシリル基が好ましい。
上記式(1)で表される化合物は、例えば、後述する実施例に記載の方法に従って合成することができる。なお、上記式(1)におけるR〜R以外の位置に置換基を有する化合物も同様に合成可能である。
本実施形態に係るレチノイド化合物が上記式(1)で表される化合物の塩である場合、塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩等が挙げられる。
本実施形態に係るレチノイド化合物は、レチノイド活性を有しながらも、催奇形性が低いという特徴を有する。このレチノイド化合物は、後述のように医薬用途に用いることもでき、医薬以外の用途(研究用途等)に用いることもできる。
<医薬組成物>
本実施形態に係る医薬組成物は、上述した本実施形態に係るレチノイド化合物を有効成分として含有する。レチノイド化合物については上述したとおりであるため、詳細な説明を省略する。
本実施形態に係るレチノイド化合物は、レチノイド活性を有しながらも、催奇形性が低いという特徴を有する。このため、本実施形態に係る医薬組成物は、ビタミンA欠乏症、皮膚疾患、免疫性疾患、及び癌からなる群より選択される少なくとも1種の疾患の治療又は予防に有効である。言い換えれば、本実施形態に係る医薬組成物を投与することにより、ビタミンA欠乏症、皮膚疾患、免疫性疾患、又は癌を予防又は治療することができる。皮膚疾患としては、乾癬、角化症、座瘡、アトピー性皮膚炎等が挙げられる。免疫性疾患としては、関節リウマチ、クローン病等が挙げられる。癌としては、白血病、肝臓癌等が挙げられる。
なお、「予防」には、疾患の発症を防ぐことのほか、発症の時期を遅らせることも含まれる。また、「治療」には、疾患の症状を消失又は軽減させることのほか、症状の進行の度合いを抑制することも含まれる。
本実施形態に係る医薬組成物は、本実施形態に係るレチノイド化合物以外の成分を含有していてもよい。例えば、医薬組成物は、製剤素材として慣用の有機又は無機の担体を含有していてもよい。この担体は、固形製剤においては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等として、液状製剤においては、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤等として配合される。また、医薬組成物は、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を含有していてもよい。
医薬組成物の剤形は特に制限されない。医薬組成物の剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、フィルム剤等の経口剤;注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)、点眼剤等の非経口剤;などが挙げられる。
医薬組成物の投与量は、投与対象、投与経路、対象疾患、症状等に応じて適宜決定される。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例では、本実施形態に係るレチノイド化合物として、下記式で表される化合物E1、E2を用いた。また、比較用の化合物として、下記式で表される比較化合物C1、C2、ATRA(富士フイルム和光純薬(株))、9−cis−レチノイン酸(9−cis−RA;富士フイルム和光純薬(株))、Am80(Chem Scene)、及びAM580(富士フイルム和光純薬(株))を用いた。
また、以下の実施例では、細胞として、ヒト骨髄性白血病細胞株HL−60、ヒト神経芽細胞株SK−N−SH、ヒト肝癌由来細胞株HepG2を用いた。HL−60細胞の培養には、RPMI−1640培地(L−グルタミン、フェノールレッド含有)を使用し、SK−N−SH細胞及びHepG2細胞の培養には、D−MEM培地(L−グルタミン、フェノールレッド、ピルビン酸ナトリウム含有)を使用した。各培地には、終濃度10%のウシ胎児血清、及びペニシリン−ストレプトマイシン混合溶液(ナカライテスク(株))を添加し、37℃、5% COのインキュベーター内で培養を行った。
<合成例1:化合物E1の合成>
(ステップ1)
エチルシクロプロピリデンアセテート(10)(126mg,1mmol)及びトリメチルシリルアセチレン(11)(0.69mL,5mmol)を無水トルエン(0.5mL)に溶解し、溶液を調製した。ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(27.5mg,0.1mmol)を無水トルエン(0.5mL)に溶解した暗赤色の溶液に、上記で得られた溶液をアルゴン雰囲気下、室温で5時間かけて滴下した。反応の進行をTLC及びGC−MSにより確認し、出発原料が消失するまで一晩撹拌した。反応溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通した後、エバポレーターにて溶媒を除去し、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通して精製することにより、無色油状の化合物(12a)(226mg,70%)を得た。
(ステップ2)
化合物(12a)(645mg,2mmol)をエタノール(1.6mL)に溶解した溶液に水酸化カリウム(1.12g,20mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液に2N 塩酸を加え、溶媒を減圧留去した後、残渣に2N 塩酸を加え、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を集めてブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮した。そして、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通して精製することにより、淡黄色固体状の化合物(13a)及びその異性化体(13a’)の混合物(377mg,64%)を得た。
(ステップ3)
化合物(15a)(10g,64mmol)及び二クロム酸カリウムを酢酸(130mL)に溶解した溶液に、濃硫酸(35mL)を10分間かけて加え、90℃で3時間撹拌した。その後、反応溶液に水(400mL)を加え、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を集めてブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮した。濃縮物に水(160mL)及び炭酸カリウム(10g,72mmol)を加え、水層をジエチルエーテル(80mL)で2回洗浄した。洗浄後、16N 塩酸を加えてpHを1に調整し、析出した固体を吸引濾過して回収することにより、淡黄色固体状の化合物(16a)(7.3g,62%)を得た。
化合物(16a)(3.0g,16mmol)を無水エタノール(29mL)に溶解した溶液に、濃硫酸(0.3mL)を加え、24時間加熱還流した。その後、反応液を濃縮し、濃縮物にジクロロメタン及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層を分離した後、水層をジクロロメタンで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮することにより、化合物(17a)(3.2g,94%)を得た。
化合物(17a)(1.1g,5.2mmol)、塩化スズ(II)二水和物(5.9g,26mmol)、及び酢酸エチル(50mL)の混合物を1時間加熱還流した。反応液を冷却した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層を分離した後、水層を酢酸エチルで2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濃縮することにより、化合物(18a)(0.80g,84%)を得た。
(ステップ4)
N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.87g,4.2mmol)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(51mg,0.42mmol)、及び化合物(18a)(0.26g,1.4mmol)をジクロロメタン(2.5mL)に溶解した溶液に、化合物(13a)及びその異性化体(13a’)の混合物(0.40g,1.4mmol)を無水ジクロロメタン(5.8mL)に溶解した溶液を0℃で加えた。混合溶液を室温で一晩撹拌し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジエチルエーテル)に通した後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=6/1(v/v))に通して精製することにより、橙色油状の化合物(19aa)(0.37g,57%)を得た。
化合物(19aa)(0.24g,0.52mmol)をエタノール(5.2mL)に溶解した溶液に水酸化カリウム(0.56g,10mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液に2N 塩酸を加え、溶媒を減圧留去した後、残渣に2N 塩酸を加え、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を集めてブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮した。そして、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/メタノール=20/1(v/v))に通して精製することにより、白色固体状の化合物E1(0.1g,44%)を得た。
化合物E1の物性値は以下のとおりである。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ7.89(t,J=8.4Hz,1H),7.46(dd,J=12.9Hz,1.8Hz,1H),6.83(dd,J=8.7Hz,1.8Hz,1H),6.77(s,1H),6.72(s,1H),6.50(s,1H),5.48(t,J=6.9Hz,1H),3.31(s,2H),2.25(d,J=7.2Hz,2H),0.20−0.08(m,18H);
Anal. Calcd for C2230FNOSi:C 61.22;H 7.01;N 3.24,Found:C 61.05;H 7.03;N 3.15.
<合成例2:化合物E2の合成>
(ステップ1)
2−クロロ−4−ニトロ安息香酸(16b)(2.0g,10mmol)を無水エタノール(18mL)に溶解した溶液に濃硫酸(0.18mL)を加え、還流条件下で撹拌した。24時間後、溶媒を減圧留去し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を集めてブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮することにより、黄色油状の化合物(17b)(2.1g,91%)を得た。
化合物(17b)(1.0g,4.4mmol)、塩化スズ(II)二水和物(5.0g,26mmol)、及び酢酸エチル(42mL)の混合物を1時間加熱還流した。反応液を冷却した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層を分離した後、水層を酢酸エチルで2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濃縮することにより、化合物(18b)(0.83g,95%)を得た。
(ステップ2)
N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.72g,0.6mmol)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(7.3mg,0.06mmol)、及び化合物(18b)(0.040g,0.20mmol)をジクロロメタン(0.8mL)に溶解した溶液に、化合物(13a)及びその異性化体(13a’)の混合物(0.059g,0.20mmol)を無水ジクロロメタン(0.4mL)に溶解した溶液を0℃で加えた。混合溶液を室温で一晩撹拌し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジエチルエーテル)に通した後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=6/1(v/v))に通して精製することにより、黄色油状の化合物(19ab)(0.050g,53%)を得た。
化合物(19ab)(0.045g,0.095mmol)をエタノール(1mL)に溶解した溶液に水酸化カリウム(0.11g,1.9mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液に2N 塩酸を加え、溶媒を減圧留去した後、残渣に2N 塩酸を加え、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を集めてブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮した。そして、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/3(v/v))に通して精製することにより、黄色固体状の化合物E2(0.035g,82%)を得た。
化合物E2の物性値は以下のとおりである。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ7.94(t,J=8.7Hz,1H),7.41(d,J=2.1Hz,1H),7.30−7.23(m,1H),6.72(s,1H),6.70(s,1H),6.52(s,1H),5.48(t,J=7.2Hz,1H),3.31(s,2H),2.25(d,J=7.5Hz,2H),0.19−0.11(m,18H).
<比較合成例1:比較化合物C1の合成>
(ステップ1)
化合物(14c)(1.0g,6.1mmol)をアセトニトリル(12mL)に溶解して得られた混合物を加熱還流し、N−クロロスクシンイミド(0.81g,6.1mmol)を加え、18時間加熱還流した。溶媒を減圧留去した後、残渣にジクロロメタン(18mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、水、及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濃縮した。残渣を再結晶(ヘキサン)することにより、化合物18c(1.1g,90%)を得た。
(ステップ2)
N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.25g,1.2mmol)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(15mg,0.12mmol)、及び化合物(18c)(0.080g,0.4mmol)をジクロロメタン(1.6mL)に溶解した溶液に、化合物(13a)及びその異性化体(13a’)の混合物(0.12g,0.40mmol)を無水ジクロロメタン(0.8mL)に溶解した溶液を0℃で加えた。混合溶液を室温で一晩撹拌し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジエチルエーテル)に通した後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/ジエチルエーテル=4/1(v/v))に通して精製することにより、黄色油状の化合物(19ac)(0.047g,25%)を得た。
化合物(19ac)(0.047g,0.099mmol)をエタノール(1mL)に溶解した溶液に水酸化カリウム(0.11g,2.0mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液に2N 塩酸を加え、溶媒を減圧留去した後、残渣に2N 塩酸を加え、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を集めてブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮した。そして、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1(v/v))に通して精製することにより、黄色固体状の比較化合物C1(0.036g,81%)を得た。
比較化合物C1の物性値は以下のとおりである。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ8.55(d,J=8.7Hz,1H),8.02(d,J=1.8Hz,1H),7.95(dd,J=8.9Hz,1.8Hz,1H),7.79(s,1H),6.71(s,1H),6.43(s,1H),5.51(t,J=7.1Hz,1H),3.38(s,2H),2.26(d,J=6.9Hz,2H),0.20−0.07(m,18H);
Anal. Calcd for C2230ClNOSi:C 58.97;H 6.75;N 3.13,Found:C 58.80;H 7.01;N 2.88.
<比較合成例2:比較化合物C2の合成>
(ステップ1)
化合物(12a)(0.77g,2.2mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解した溶液にトリフルオロ酢酸(0.35mL,4.4mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を集めてブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮した。そして、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通して精製することにより、無色油状の化合物(12d)(0.39g,65%)を得た。
(ステップ2)
化合物(12d)(0.1g,0.40mmol)をエタノール(2mL)に溶解した溶液に水酸化カリウム(0.22g,4.0mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液に2N 塩酸を加え、溶媒を減圧留去した後、残渣に2N 塩酸を加え、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を集めてブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮した。そして、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通して精製することにより、白色固体状の化合物(13d)(0.052g,59%)を得た。
N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.14g,0.70mmol)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(8.6mg,0.070mmol)、及びp−アミノ安息香酸エチル(0.038g,0.23mmol)をジクロロメタン(0.5mL)に溶解した溶液に、化合物(13d)(0.052g,0.23mmol)を無水ジクロロメタン(0.9mL)に溶解した溶液を0℃で加えた。混合溶液を室温で一晩撹拌し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジエチルエーテル)に通した後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=4/1(v/v))に通して精製することにより、黄色油状の化合物(19f)(0.030g,35%)を得た。
化合物(19f)(0.088g,0.24mmol)をエタノール(2.4mL)に溶解した溶液に水酸化カリウム(0.27g,4.8mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液に2N 塩酸を加え、溶媒を減圧留去した後、残渣に2N 塩酸を加え、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を集めてブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濃縮した。そして、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/メタノール=30/1(v/v))に通して精製することにより、淡黄色固体状の比較化合物C2(0.054g,66%)を得た。
比較化合物C2の物性値は以下のとおりである。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ7.99(t,J=8.7Hz,2H),7.39(d,J=9.0Hz,2H),6.88(s,1H),6.74(s,1H),6.33(d,J=9.3Hz,1H),5.69(dt,J=9.3Hz,6.6Hz,1H),5.52(t,J=6.9Hz,1H),3.33(s,2H),2.23(t,J=6.9Hz,2H),0.12(s,9H).
<試験例1:好中球分化誘導能の検討>
ATRAはHL−60細胞に対する好中球分化誘導能を有することが知られているため、化合物E1、E2の好中球分化誘導能について検討した。比較のため、比較化合物C1、C2、ATRA、9−cis−RA、Am80、及びAM580の好中球分化誘導能も併せて確認した。
96ウェルプレートに1.0×10個/mLの細胞密度でHL−60細胞を播種し、各化合物を6μMの濃度で培地に加えて4日間培養した。また、濃度による変化を確認するため、化合物E1、E2、ATRA、及びAm80を0.1μM、0.32μM、1μM、3.2μM、又は10μMの濃度で培地に加えて4日間培養した。対照としては、各化合物の代わりにDMSOを終濃度0.1%となるように加えた。各化合物で細胞を4日間処理した後、メイギムザ染色を行い、顕微鏡観察を行った。そして、細胞100個のうち、未分化の細胞、単球に分化した細胞、及び好中球に分化した細胞のそれぞれの割合を算出した。結果を図1、図2に示す。
図1に示すとおり、化合物濃度が6μMである場合、好中球への分化率は、化合物E1では57%、化合物E2では43%であった。また、図2に示すとおり、化合物濃度が0.1μMという低濃度の場合であっても、好中球への分化率は、化合物E1では39%、化合物E2では35%であった。
<試験例2:mTOR1活性阻害による神経突起伸長促進作用への影響>
ATRAは神経細胞に対する神経突起伸長促進作用を有することが知られており、その作用は細胞内のシグナル伝達機構により制御されている。そこで、化合物E1、E2の神経突起伸長促進作用について検討するとともに、突起伸長メカニズムにmTOR1が関与しているか否かを確認した。比較のため、比較化合物C1、C2、ATRA、9−cis−RA、及びAM580の神経突起伸長促進作用も併せて確認した。
(神経突起伸長の確認)
ポリ−L−リジンコートした24ウェルプレートに6.25×10個/mLの細胞密度でSK−N−SH細胞を播種し、24時間培養した。そして、未処理群では、各化合物を6μMの濃度で培地に加えて4日間培養した。また、ラパマイシン処理群では、mTOR1阻害剤であるラパマイシン(Sigma−Aldrich)を終濃度0.1μMとなるように加えて30分間前処理した後、各化合物を6μMの濃度で培地に加えて4日間培養した。対照としては、各化合物の代わりにDMSOを終濃度0.1%となるように加えた。各化合物で細胞を4日間処理した後、顕微鏡観察を行い、ImageJソフトウェアを使用して神経突起長を測定した。未処理群及びラパマイシン処理群の顕微鏡観察結果を図3A、図3Bに示す。図中のスケールバーは50μmである。また、30個の細胞における神経突起長を測定した結果を図4に示す。
図3A、図4に示すとおり、DMSOでは神経突起長が15μm程度であったのに対し、化合物E1、ATRA、9−cis−RA、及びAM580では60μm以上に伸長し、化合物E2では30μm程度に伸長した。一方、比較化合物C1、C2では神経突起伸長は確認されなかった。また、図3B、図4に示すとおり、ラパマイシン処理群では、神経突起伸長が確認された化合物E1、E2、ATRA、9−cis−RA、及びAM580のうち、ATRA以外の4種類の化合物の神経突起伸長が抑制された。
(ウェスタンブロッティング)
mTORのリン酸化による活性化がラパマイシン処理により阻害されたか否かを確認するため、ウェスタンブロッティングを行った。
12ウェルプレートに2.0×10個/mLの細胞密度でSK−N−SH細胞を播種し、24時間培養した。そして、未処理群では、各化合物を6μMの濃度で培地に加えて24時間培養した。また、ラパマイシン処理群では、ラパマイシンを終濃度0.1μMとなるように加えて30分間前処理した後、各化合物を6μMの濃度で培地に加えて24時間培養した。対照としては、各化合物の代わりにDMSOを終濃度0.1%となるように加えた。
培養後のSK−N−SH細胞から、Lysisバッファー(20mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、1mM Na2−EDTA、1mM EGTA、1% Triton X−100)を用いてタンパク質を抽出した後、BCA Protein Assay Kit(Thermo)によりタンパク質濃度を測定した。各サンプルにLysisバッファーを加えてタンパク質濃度を合わせた後、各サンプルと1×SDS−PAGEサンプルバッファー(62.5mM Tris−HCl(pH6.8)、5% グリセロール、1% SDS、15% 2−メルカプトエタノール、5% BPB)とを混合し、100℃で10分間煮沸して泳動サンプルを調製した。
調製した泳動サンプルをSDS−PAGEにて分離し、PVDF膜に転写した。転写後のPVDF膜をブロッキング溶液中で30分間〜1時間振盪してブロッキングした後、TBS−Tで5分間×2回洗浄した。その後、抗リン酸化mTOR(p−mTOR)抗体(Cell Signaling Technology,2971S)又は抗mTOR抗体(Cell Signaling Technology,2972S)を500倍希釈した一次抗体反応液中にPVDF膜を浸漬し、室温で1時間又は4℃で一晩静置した。反応後、PVDF膜をTBS−Tで5分間×2回洗浄し、HRP標識抗ウサギIgG抗体(Daco,P0399)を1000倍希釈した二次抗体反応液中にPVDF膜を浸漬し、室温で1時間静置した。反応後、PVDF膜をTBS−Tで5分間×2回、TBSで5分間×2回洗浄した。そして、PVDF膜をECL Prime Western Blotting Detection System(GE Healthcare)を用いて可視化した。各バンドの強度は、ImageJソフトウェアにより定量化した。ウェスタンブロッティング結果を図5に示す。
図5に示すとおり、ラパマイシン処理群では、未処理群に比べてp−mTORの量が減少した。試験例2の結果から、化合物E1、E2、9−cis−RA、及びAM580による突起伸長メカニズムには、mTOR1が関与していることが確認された。
<試験例3:mTOR2活性阻害による神経突起伸長促進作用への影響>
ATRAによる神経突起伸長がラパマイシン処理によって阻害されなかったため、ATRAによる突起伸長メカニズムにmTOR2が関与しているか否かを確認した。比較のため、化合物E1、E2、比較化合物C1、C2、9−cis−RA、及びAM580の神経突起伸長促進作用も併せて確認した。
(神経突起伸長の確認)
ポリ−L−リジンコートした24ウェルプレートに6.25×10個/mLの細胞密度でSK−N−SH細胞を播種し、24時間培養した。そして、未処理群では、各化合物を6μMの濃度で培地に加えて4日間培養した。また、Torin1処理群では、mTOR1/2阻害剤であるTorin1(Cell Signaling Technology)を終濃度0.1μMとなるように加えて1時間前処理した後、各化合物を6μMの濃度で培地に加えて4日間培養した。対照としては、各化合物の代わりにDMSOを終濃度0.1%となるように加えた。各化合物で細胞を4日間処理した後、顕微鏡観察を行い、ImageJソフトウェアを使用して神経突起長を測定した。30個の細胞における神経突起長を測定した結果を図6に示す。
図6に示すとおり、Torin1処理群では、ATRAを含む5種類全ての化合物の神経突起伸長が抑制された。
(ウェスタンブロッティング)
mTORのリン酸化による活性化がTorin1処理により阻害されたか否かを確認するため、試験例2と同様にウェスタンブロッティングを行った。ウェスタンブロッティング結果を図7に示す。
図7に示すとおり、Torin1処理群では、未処理群に比べてp−mTORの量が減少した。試験例3の結果から、ATRAによる突起伸長メカニズムには、mTOR2が関与していることが確認された。
<試験例4:ERK活性阻害による神経突起伸長促進作用への影響>
化合物E1、E2による突起伸長メカニズムにERKが関与しているか否かを確認した。比較のため、比較化合物C1、C2、ATRA、9−cis−RA、及びAM580の神経突起伸長促進作用も併せて確認した。
(神経突起伸長の確認)
ポリ−L−リジンコートした24ウェルプレートに6.25×10個/mLの細胞密度でSK−N−SH細胞を播種し、24時間培養した。そして、未処理群では、各化合物を6μMの濃度で培地に加えて4日間培養した。また、U0126処理群では、MAPK阻害剤であるU0126(Cell Signaling Technology)を終濃度10μMとなるように加えて30分間前処理した後、各化合物を6μMの濃度で培地に加えて4日間培養した。対照としては、各化合物の代わりにDMSOを終濃度0.1%となるように加えた。各化合物で細胞を4日間処理した後、顕微鏡観察を行い、ImageJソフトウェアを使用して神経突起長を測定した。30個の細胞における神経突起長を測定した結果を図8に示す。
図8に示すとおり、U0126処理群では、化合物E1、E2、ATRA、9−cis−RA、及びAM580の5種類の化合物の神経突起伸長が抑制された。
(ウェスタンブロッティング)
ERKのリン酸化による活性化がU0126処理により阻害されたか否かを確認するため、試験例2と同様にウェスタンブロッティングを行った。一次抗体としては、抗リン酸化ERK(p−ERK)抗体(Cell Signaling Technology,0102S)又は抗ERK抗体(Cell Signaling Technology,4377S)をそれぞれ1000倍希釈して用いた。ウェスタンブロッティング結果を図9に示す。
図9に示すとおり、U0126処理群では、未処理群に比べてp−ERKの量が減少した。試験例4の結果から、化合物E1、E2、ATRA、9−cis−RA、及びAM580による突起伸長メカニズムには、ERKが関与していることが確認された。
<試験例5:RARβ活性阻害による神経突起伸長促進作用への影響>
化合物E1、E2による突起伸長メカニズムにレチノイン酸受容体RARβが関与しているか否かを確認した。比較のため、ATRA、9−cis−RA及びAM580の神経突起伸長促進作用も併せて確認した。
ポリ−L−リジンコートした24ウェルプレートに6.25×10個/mLの細胞密度でSK−N−SH細胞を播種し、24時間培養した。そして、未処理群では、各化合物を6μMの濃度で培地に加えて4日間培養した。また、LE135処理群では、RARβアンタゴニストであるLE135(Tocris Bioscience)を終濃度1μMとなるように加えて24時間前処理した後、各化合物を6μMの濃度で培地に加えて4日間培養した。対照としては、各化合物の代わりにDMSOを終濃度0.1%となるように加えた。各化合物で細胞を4日間処理した後、顕微鏡観察を行い、ImageJソフトウェアを使用して神経突起長を測定した。30個の細胞における神経突起長を測定した結果を図10に示す。
図10に示すとおり、L135処理群では、化合物E1、E2、及びAM580の3種類の化合物の神経突起伸長が抑制された。試験例5の結果から、化合物E1、E2、及びAM580による突起伸長メカニズムには、RARβが関与していることが確認された。
<試験例6:マウス催奇形性試験>
ATRAは、細胞の増殖及び分化の調節により形態形成作用を示すため、生体はその量を厳密に制御している。しかし、胎生期にレチノイン酸を外部から過剰に摂取すると、CYP26A1によるレチノイン酸の代謝を原因とするレチノイドの枯渇を引き起こす結果、催奇形性を示すことが知られている。そこで、化合物E1、E2が催奇形性を示すか否かを確認した。比較のため、ATRA及びAM80の催奇形性も併せて確認した。
雌雄のICRマウスをペアで一晩自然交配させた。翌朝にプラグを確認し、その時点で受精開始から0.5日経過したと見做し、胎生0.5日(E0.5)とした。化合物E1、E2、ATRA、及びAM80の各化合物をヒマワリ油で懸濁し、胎生9日(E9.0)又は胎生6.5日(E6.5)の妊娠ICRマウスに0.27mmol/kg体重の投与量で単回経口投与した。対照としては、各化合物の代わりに担体(Vehicle)であるヒマワリ油を単回経口投与した。そして、胎生18日(E18)で母体を帝王切開して胎児を取り出し、奇形の有無を確認した。胎生9日の妊娠マウスに各化合物を単回経口投与したときの胎生18日のマウス胎児の外部形態を図11に示す。
図11に示すとおり、ATRA又はAm80を投与した場合には、対照(ヒマワリ油)に比べて頭殿長が短く、頭部が小さかった。また、尾が未発達であった。一方、化合物E1又はE2を投与した場合には、対照(ヒマワリ油)に比べて顕著な違いは観察されなかった。
マウスの頭部、肛門、及び後肢で観察された奇形形成の例を図12A〜図12Cに示す。ATRAを投与した場合には、頭部において、眼球突出、耳の未形成、小顎症が観察され(図12A)、肛門において鎖肛が観察され(図12B)、後肢において短足、内回りの後肢が観察された(図12C)。一方、化合物E1を投与した場合には、そのような奇形は観察されなかった。
胎生9日又は胎生6.5日の妊娠マウスに各化合物を単回経口投与したときの胎生18日のマウス胎児における各成長パラメータを下記表1、表2に示す(N.D.=No Detected)。
表1に示すとおり、胎生9日の妊娠マウスにATRA又はAm80を投与した場合には、尾の欠損が顕著に観察されるとともに、耳の欠損、眼の欠損、小顎症、鎖肛も高い割合で観察された。後肢の欠損はATRAを投与した場合のみに観察され、約38%であった。一方、化合物E1又はE2を投与した場合には、奇形形成が観察されなかった。なお、ATRA又はAm80を投与した場合には、体重が軽い胎児、頭部が小さい胎児、頭殿長が短い胎児が観察されたが、胎児の個体差が大きかったため、有意差は認められなかった。
また、表2に示すとおり、胎生6.5日の妊娠マウスにATRA又はAm80を投与した場合には、胎児は形成されず着床痕のみが形成される着床後胚損失率が100%となった。一方、化合物E1又はE2を投与した場合には、胎児の着床後胚損失は観察されなかった。
<試験例7:CYP26A1の経時的mRNA発現解析>
神経突起伸長促進作用を強く示し、催奇形性を示さなかった化合物E1の代謝経路を調べるため、HepG2細胞を化合物E1で処理したときのCYP26A1の経時的mRNA発現レベルを定量RT−PCRにより解析した。比較のため、HepG2細胞をATRAで処理したときのCYP26A1の経時的mRNA発現レベルも併せて確認した。
12ウェルプレートに1.0×10個/mLの細胞密度でHepG2細胞を播種し、24時間培養し、化合物E1又はATRAを6μMの濃度で培地に加えてさらに30分間、1時間、2時間、4時間、又は8時間培養した。対照としては、化合物E1又はATRAの代わりにDMSOを終濃度0.1%となるように加えた。
FastGene RNA Basic kit(日本ジェネティクス(株))を用いて培養後のHepG2細胞から全RNAを抽出し、ReverTra Ace qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(東洋紡(株))を用いて全RNAの逆転写反応を行い、cDNAを得た。その後、THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(東洋紡(株))を用いたリアルタイムPCRにより、CYP26A1の遺伝子を増幅した。CYP26A1の遺伝子増幅に際しては、95℃で1分間の初期変性を行った後、2ステップPCRとして、95℃で15秒間の変性反応、及び60℃で1分間の伸長反応を40サイクル行った。なお、CYP26A1のmRNA発現量は、β−actinのmRNA発現量により補正した。使用したプライマーを下記表3に示す。
CYP26A1の経時的mRNA発現レベルを図13に示す。図13に示すとおり、HepG2細胞にATRAを添加した場合には、添加30分後から8時間後までCYP26A1のmRNA発現が経時的に上昇した。一方、HepG2細胞に化合物E1を添加した場合には、CYP26A1のmRNA発現の顕著な上昇は観察されなかった。この結果から、化合物E1が催奇形性を示さない理由は、CYP26A1によるATRAの代謝を原因とするレチノイドの枯渇を引き起こさないためと考えられる。

Claims (4)

  1. 下記式(1)で表される化合物又はその塩。
    (式中、Rはハロゲン原子を示し、R及びRはそれぞれ独立にシリル基を示す。)
  2. 前記式(1)中のR及びRがトリメチルシリル基である請求項1に記載の化合物又はその塩。
  3. 請求項1又は2に記載の化合物又はその塩を有効成分として含有する医薬組成物。
  4. ビタミンA欠乏症、皮膚疾患、免疫性疾患、及び癌からなる群より選択される少なくとも1種の疾患の治療又は予防に用いられる請求項3に記載の医薬組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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