JP2020037496A - ニッケル含有水酸化物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ニッケル含有水酸化物の製造時に生成する凝集体の粒径を高精度に調整できる製造方法を提供する。
【解決手段】原料液と、錯化剤と、中和剤とを含む反応水溶液の中で、中和晶析によりニッケル含有水酸化物を得る製造方法であって、反応水溶液の中で、中和晶析によって発生した、ニッケル含有水酸化物の核を成長させて、種晶を生成する種晶生成工程を含み、種晶生成工程は、反応水溶液の中に中和晶析によってニッケル含有水酸化物の核を発生させ、複数の核が凝集した凝集体を生成する第1種晶生成工程を含み、第1種晶生成工程を、下記式(I)に基づいて設定した条件で行う。
Figure 2020037496

【選択図】図1

Description

本発明は、ニッケル含有水酸化物の製造方法に関する。
携帯電話、スマートフォン、タブレットPC又はノート型PC等の携帯情報端末の電池として、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な非水系電解質二次電池の開発が進んでいる。また、ハイブリッド電気自動車(HEV)、及び電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等のクリーンエネルギー自動車の普及拡大に伴い、より高容量及び高出力の非水系電解質二次電池の開発も進んでいる。
このような要求を満たす非水系電解質二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、正極、負極及び電解質等を備えている。正極及び負極には、正極材料及び負極材料として正極活物質及び負極活物質が用いられる。正極活物質及び負極活物質には、リチウムを脱離及び挿入することが可能な材料が用いられている。
リチウムイオン二次電池の性能の向上を図る方法の一つとして、リチウムイオン二次電池の正極活物質の改良が検討されており、正極活物質として、層状又はスピネル型のリチウム金属複合酸化物を用いる方法がある。リチウム金属複合酸化物を正極活物質に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池として実用化が進んでいる。
リチウム金属複合酸化物としては、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn)、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)又はリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)等が一般的に知られている。これらの中でも、リチウムニッケル複合酸化物は、リチウムイオン二次電池を高容量化できる材料として注目されており、リチウムニッケル複合酸化物のニッケルの一部をコバルト、アルミニウム又はマンガン等で置換したリチウムニッケル複合酸化物の開発が進んでいる。
リチウムニッケル複合酸化物は、一般的に、中和晶析法によりリチウムニッケル複合酸化物の前駆体であるニッケル含有水酸化物(ニッケル以外の金属を含むニッケル含有水酸化物をニッケル複合水酸化物という)の粒子を作製し、ニッケル含有水酸化物の粒子をリチウム化合物と混合して焼成することで製造される。ニッケル含有水酸化物の粒子は、ニッケル含有水酸化物の原料となる原料液を含む槽内に中和晶析法で核を発生させ、複数の核からなる凝集体を形成した後、凝集体の外周に外殻を形成することで得られる。
例えば、特許文献1には、撹拌槽内の水溶液中で中和晶析によってニッケル含有水酸化物の粒子の核を生成させる核生成工程と、核を成長させる粒子成長工程とを含むニッケル含有水酸化物の製造方法が開示されている。粒子成長工程では、複数の成長した核からなる凝集体を形成した後、凝集体の周りに外殻を形成している。これにより、凝集体とその周りに形成された外殻とで構成されたニッケル含有水酸化物の粒子を製造している。
国際公開第2017/217365
ところで、今後、正極活物質にリチウムニッケル複合酸化物を使用する上で、リチウムニッケル複合酸化物を所定の大きさに調整して製造できる方法が必要である。
リチウムニッケル複合酸化物は、その前駆体であるニッケル含有水酸化物にリチウム化合物を混合して焼成したものであるため、リチウムニッケル複合酸化物の大きさは、ニッケル含有水酸化物の大きさに依存する傾向にある。ニッケル含有水酸化物は、その製造時に中和晶析法により発生した複数の核の凝集体と外殻とを含む粒子であり、ニッケル含有水酸化物の大きさは、凝集体の大きさに応じて決まる。そのため、ニッケル含有水酸化物の大きさを制御するためには、ニッケル含有水酸化物の製造過程において生じる凝集体の大きさを調整することが重要である。
本発明の一態様は、ニッケル含有水酸化物の製造時に生成する凝集体の粒径を高精度に調整できるニッケル含有水酸化物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係るニッケル含有水酸化物の製造方法は、少なくともニッケル塩を含む金属塩を含有する原料液と、前記金属塩の金属イオンと結合して錯体を形成する錯化剤と、前記金属塩及び前記錯体と反応して金属水酸化物を生成する中和剤とを含む反応水溶液の中で、中和晶析によりニッケル含有水酸化物を得るニッケル含有水酸化物の製造方法であって、
前記反応水溶液の中で、中和晶析によって発生した、前記ニッケル含有水酸化物の核を成長させて、種晶を生成する種晶生成工程を含み、
前記種晶生成工程は、前記反応水溶液の中に中和晶析によって前記ニッケル含有水酸化物の前記核を発生させ、複数の前記核が凝集した凝集体を生成する第1種晶生成工程を含み、
前記第1種晶生成工程を、下記式(I)に基づいて設定した条件で行うニッケル含有水酸化物の製造方法。
Figure 2020037496
(但し、式(I)中、Rは凝集体の半径であり、Aはモデル係数であり、rは核の半径であり、Cは過飽和度であり、Cは過飽和度Cの閾値であり、Nは原料液の添加口の数であり、ΔVは過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域の体積であり、uは過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域を通過する流体の平均流速であり、Kは過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域を通過する流体の流れの乱流拡散係数であり、Bはモデル係数であり、ωは撹拌翼の回転数であり、Lは撹拌翼の翼径である。)
本発明の一態様に係るニッケル含有水酸化物の製造方法は、ニッケル含有水酸化物の製造時に生成する凝集体の粒径を高精度に調整できる。
一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法のフローチャートである。 第1種晶生成工程において生成する凝集体の一例を模式的に示す図である。 第2種晶生成工程で形成される種晶粒子の一例を模式的に示す断面図である。 成長晶析工程で生成されるニッケル含有水酸化物の粒子を模式的に示す断面図である。 一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法に用いられる化学反応装置を示す上面図である。 図5のI−I線に沿った化学反応装置の断面図である。 凝集体に核粒子が凝集した状態のモデルの一例を示す説明図である。 原料液の添加口付近に形成される高過飽和領域を示す図である。 凝集体の平均粒径の計算値と実測値との関係を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法を説明するに当たり、まず、一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法を用いて得られるニッケル含有水酸化物について説明する。
<ニッケル含有水酸化物>
ニッケル含有水酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質の前駆体として用いられる。ニッケル含有水酸化物は、ニッケル含有水酸化物の微細な核が成長して形成された粒子である。
ニッケル含有水酸化物は、ニッケル(Ni)を含有し、好ましくはNi以外の金属を含有する。Ni以外の金属として、Co、Mn、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWからなる群から選択される1種以上の元素を用いることができる。Ni以外の金属をさらに含有するニッケル含有水酸化物を、ニッケル複合水酸化物と呼ぶ。
ニッケル含有水酸化物として、好ましくはニッケルコバルトマンガン複合水酸化物やニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物などのニッケル複合水酸化物を用いることができる。
ニッケル複合水酸化物として、例えば、(1)ニッケル(Ni)とコバルト(Co)とマンガン(Mn)とM(Mは、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWから選択される1種以上の添加元素)とを、物質量比(mol比)がNi:Co:Mn:M=x:y:z:t(ただし、x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.7、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦0.8、0≦t≦0.02)となるように含むニッケルコバルトマンガン複合水酸化物、又は(2)ニッケル(Ni)とコバルト(Co)とアルミニウム(Al)とを、物質量比(mol比)がNi:Co:Al=1−x−y:x:y(ただし、0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15)となるように含むニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物を用いることができる。
ニッケル含有水酸化物に含まれる水酸化物イオンの量は、通常、化学量論比を持つが、本実施形態に影響のない程度で過剰でもよいし、欠損していてもよい。また、本実施形態に影響のない程度で水酸化物イオンの一部は、アニオン(例えば、炭酸イオンや硫酸イオン等)に置き換わっていてもよい。
なお、ニッケル含有水酸化物は、X線回折(XRD)測定によって、ニッケル含有水酸化物の単相(又は、主成分がニッケル含有水酸化物)であればよい。
ニッケル複合水酸化物を原料として正極活物質を得た場合、ニッケル複合水酸化物の金属の組成比(例えば、Ni:Co:AlやNi:Co:Mn:M)は、得られる正極活物質においても維持される。よって、ニッケル複合水酸化物の組成は、正極活物質に要求される金属の組成比と一致するように調整される。
<ニッケル含有水酸化物の製造方法>
次に、一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法について説明する。一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法は、中和晶析によりニッケル含有水酸化物の粒子を得る方法である。図1は、一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法のフローチャートである。図1に示すように、一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法は、反応水溶液中に発生させたニッケル含有水酸化物の核を成長させて、粒子状の種晶を生成する種晶生成工程S11と、種晶の表面に外殻部を形成する成長晶析工程S12とを含む。
本実施形態では、種晶生成工程S11及び成長晶析工程S12のいずれも、バッチ式の撹拌槽を用いる。以下、各工程について説明する。
[種晶生成工程]
種晶生成工程S11について説明する。種晶生成工程S11では、中和晶析によって、反応水溶液中にニッケル含有水酸化物の微細な核(核粒子)を発生させる(核発生)。そして、発生した核粒子を成長(粒子成長)させて、粒子状の種晶(種晶粒子)を生成する。
種晶生成工程S11は、核の発生と凝集体の生成とが生じる第1種晶生成工程S111と、凝集体の表面に外殻を形成し、種晶粒子を生成する第2種晶生成工程S112とを含む。本実施形態では、撹拌槽内の反応水溶液のpH値等を制御することで、第1種晶生成工程S111と第2種晶生成工程S112とを分けて実施できる。
以下、第1種晶生成工程S111及び第2種晶生成工程S112について説明する。
(第1種晶生成工程S111)
攪拌槽内で原料液、錯化剤及び中和剤を混合して、反応水溶液を調製する。
まず、原料液を調製する。原料液は、少なくともニッケル塩を含む金属塩を含有する。ニッケル塩としては、Niを含む、硫酸塩、硝酸塩又は塩酸塩等が用いられる。ニッケル塩以外の金属塩としては、Co、Al、Mn、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta又はW等を含む、硫酸塩、硝酸塩又は塩酸塩等が用いられる。ニッケル塩以外の金属塩は、上記のNi以外の各種金属を含む塩を1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
ニッケル含有水酸化物がNi以外の金属をさらに含有するニッケル複合水酸化物であるとする。この場合、原料液の金属の組成比(例えば、Ni:Co:AlやNi:Co:Mn:M)は、得られるニッケル複合水酸化物においても維持されるので、ニッケル複合水酸化物に要求される組成比と一致するように調整される。
撹拌槽内には、錯化剤、中和剤及び水を供給して、これらを混合する。これらを混合した水溶液を、以下、「反応前水溶液」と呼ぶ。
錯化剤は、撹拌槽内の水溶液中でニッケルイオン等の金属イオンと結合してニッケルアンミン錯体等の錯体を形成するアンモニウムイオン供給体を含む水溶液を用いることができる。錯化剤としては、アンモニウムイオン供給体としてアンモニアを含む水溶液(アンモニア水)等を用いることができる。
中和剤は、金属塩又は金属塩から生成される錯体と反応して金属水酸化物を生成するものであればよい。また、中和剤は、水溶液のpHを調整するpH調整剤としても用いられる。中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を含むアルカリ水溶液が用いられる。
反応前水溶液のpH値は、液温25℃基準で、12.0〜14.0に調整することが好ましく、12.3〜13.5に調整することがより好ましく、12.6〜13.1に調整することがさらに好ましい。なお、反応前水溶液のpH値は、公知のpH計により測定できる。
撹拌槽内の反応前水溶液のpH値の調節後、反応前水溶液を撹拌しながら原料液を撹拌槽内に供給する。これにより、撹拌槽内には、反応前水溶液と原料液とが混合した反応水溶液が形成される。
反応水溶液中で原料液と錯化剤及び中和剤とを反応させると、中和晶析により、反応水溶液中にはニッケル含有水酸化物の溶質成分(分子)が生成される。
第1種晶生成工程S111では、中和晶析によって生成されたニッケル含有水酸化物の溶質成分が反応水溶液中に固体成分として析出する際には、ニッケル含有水酸化物からなる核粒子として発生し、反応水溶液中には複数の核粒子からなる凝集体が生成される。
図2は、第1種晶生成工程S111において生成する凝集体の一例を模式的に示す図である。図2に示すように、第1種晶生成工程S111では、反応水溶液中に、中和晶析によって生成されたニッケル含有水酸化物の溶質成分がニッケル含有水酸化物からなる核粒子110として発生する。核粒子110の表面に反応水溶液中に生成したニッケル含有水酸化物の溶質成分が固体成分として析出することで、核粒子110は成長する。核粒子110が成長してある程度大きくなると、一次粒子111になり、一次粒子111同士が衝突するようになる。複数の一次粒子111が衝突することで、一次粒子111同士は付着して凝集する。複数の一次粒子111が凝集することで、凝集体112を生成する。
なお、凝集体112が生成されると、凝集体112の表面にニッケル含有水酸化物の溶質成分が析出し、析出層が形成される。これにより、凝集体112を構成する一次粒子111同士が化学結合して、一次粒子111同士の結合力を強める。
凝集体の粒径は、後述する、式(I)を用いることにより算出される凝集体の半径から求めることができる。詳細については後述する。
反応水溶液のpH値は、反応前水溶液のpH値と同じ範囲内に維持されるように調整する。
第1種晶生成工程S111において、反応水溶液のpH値が12.0以上であれば、核の発生と凝集体の生成とが、ニッケル含有水酸化物の溶質成分の凝集体の表面への析出よりも支配的になり、核の発生と凝集体の生成とが主として生じる。第1種晶生成工程S111において、反応水溶液のpH値が14.0以下であれば、核粒子が微細化し過ぎることを防止でき、反応水溶液のゲル化を防止できる。第1種晶生成工程S111において、反応水溶液のpH値の変動幅(最大値と最小値の幅)は、0.4以下であることが好ましい。
第1種晶生成工程S111では、反応水溶液のpH値が上記範囲内に維持されるように、撹拌槽内に、原料液の他に、錯化剤又は中和剤を供給する。これにより、反応水溶液のpH値は上記範囲内に維持されるため、反応水溶液中で核の発生及び凝集体の生成が継続される。
第1種晶生成工程S111における撹拌槽内の雰囲気は、酸化性雰囲気又は非酸化性雰囲気のどちらでもよい。撹拌槽内の雰囲気を酸化性雰囲気とする場合、攪拌槽内の酸化性雰囲気の酸素濃度は、酸素ガスや空気等を反応水溶液中に供給することにより制御する。撹拌槽内の雰囲気を非酸化性雰囲気とする場合、非酸化性雰囲気の酸素濃度は、窒素やアルゴン等の不活性ガスを反応水溶液中に混合することにより制御できる。
第1種晶生成工程S111は、所定の量の凝集体が生成されたら、終了する。所定量の凝集体が生成したか否かは、金属塩の供給量によって推定できる。
(第2種晶生成工程S112)
第2種晶生成工程S112では、撹拌槽内の反応水溶液のpH値を、第1種晶生成工程S111におけるpH値よりも低く調整する。反応水溶液のpH値の調整は、撹拌槽内への錯化剤又は中和剤の供給を停止すること、又は金属塩の金属を水素と置換した無機酸(例えば、硫酸塩の場合、硫酸)を撹拌槽内へ供給すること等で行うことができる。
反応水溶液のpH値の調節後、反応水溶液を撹拌しながら原料液を撹拌槽内に供給する。図3は、第2種晶生成工程S112で形成される種晶粒子の一例を模式的に示す断面図である。図3に示すように、第2種晶生成工程S112では、中和晶析によって反応水溶液中に生成したニッケル含有水酸化物の溶質成分が固体成分として凝集体112の表面に析出する(ニッケル含有水酸化物の溶質成分の表面析出)。これにより、凝集体112の表面に外殻113が形成される。その結果、凝集体112と外殻113とで構成される種晶粒子11が得られる。
撹拌槽内の反応水溶液のpH値は、液温25℃基準で、10.5〜12.0に調整することが好ましく、10.7〜11.7に調整することがより好ましく、11.0〜11.5に調整することがさらに好ましい。
第2種晶生成工程S112において、反応水溶液のpH値が12.0以下であり、第1種晶生成工程S111における反応水溶液のpH値よりも低ければ、核の発生及び凝集体の生成よりもニッケル含有水酸化物の溶質成分の表面析出が優先して生じ、新たな核の発生及び凝集体の生成はほとんど生じない。
第2種晶生成工程S112において、反応水溶液のpH値が10.5以上であれば、ニッケル塩と錯化剤とが反応して生成されるニッケルアンミン錯体の安定度が低いため、ニッケル含有水酸化物が生成されずに液中に残る金属イオンが減り、生産効率が向上する。
核の発生及び凝集体の生成と、ニッケル含有水酸化物の溶質成分の表面析出とを明確に分離するためには、第2種晶生成工程S112における反応水溶液のpH値を第1種晶生成工程S111における反応水溶液のpH値より0.5以上低くすることが好ましく、1.0以上低くすることがより好ましい。
なお、反応水溶液のpH値が12.0の場合は、核の発生及び凝集体の生成と、ニッケル含有水酸化物の溶質成分の表面析出との境界条件である。そのため、反応水溶液中に存在する核や凝集体の有無により、優先順位が変わる。
例えば、第1種晶生成工程S111で反応水溶液のpH値を12.0より高くして、反応水溶液中に多量に核を発生させ、凝集体を生成した後、第2種晶生成工程S112で反応水溶液のpH値を12.0に調整したとする。この場合、反応水溶液中に多量の核及び凝集体が存在するため、第2種晶生成工程S112では、ニッケル含有水酸化物の溶質成分の表面析出が優先する。
一方、反応水溶液中に核や凝集体が存在しない状態、すなわち、第1種晶生成工程S111で反応水溶液のpH値を12.0とした場合、反応水溶液中にはニッケル含有水酸化物の溶質成分が析出する凝集体が存在しない。そのため、この場合には、核の発生及び凝集体の生成が、ニッケル含有水酸化物の溶質成分の表面析出よりも優先して生じる。その後、第2種晶生成工程S112で反応水溶液のpH値を12.0より小さくすれば、生成した凝集体の表面にニッケル含有水酸化物の溶質成分が析出して、外殻が成長する。
第2種晶生成工程S112では、反応水溶液のpH値が上記範囲内に維持されるように、撹拌槽内に、原料液の他に、錯化剤又は中和剤を供給する。これにより、反応水溶液中で、反応水溶液中に存在するニッケル含有水酸化物の溶質成分が凝集体の表面に析出して、外殻が成長する。
第2種晶生成工程S112における撹拌槽内の反応水溶液は、第1種晶生成工程S111における撹拌槽内の反応水溶液とpH値の範囲が異なるが、その他の条件等は実質的に同じでよい。その他の条件として、例えば、第2種晶生成工程S112における撹拌槽内の雰囲気は、第1種晶生成工程S111と同様、酸化性雰囲気又は非酸化性雰囲気のどちらでもよい。
種晶粒子が所定の粒径まで成長したら、第2種晶生成工程S112を終了させる。種晶粒子の粒径は、第1種晶生成工程S111と第2種晶生成工程S112とのそれぞれにおける金属塩の供給量から推測できる。
なお、第2種晶生成工程S112の途中で、原料液等の供給を停止すると共に反応水溶液の撹拌を停止して、種晶粒子を沈降させた後、上澄み液を排出してもよい。これにより、中和晶析によって減少した反応水溶液中の金属イオン濃度を高めることができる。
種晶生成工程S11では、第1種晶生成工程S111と第2種晶生成工程S112とを分けて実施することで、粒度分布の範囲が狭い種晶粒子を生成できる。
なお、本実施形態では、第1種晶生成工程S111と第2種晶生成工程S112とを、同一の撹拌槽で行うが、異なる撹拌槽で行ってもよい。
本実施形態では、種晶生成工程S11はバッチ式の撹拌槽を用いるが、連続式の撹拌槽を用いてもよい。この場合、第1種晶生成工程S111と第2種晶生成工程S112とは同時に実施される。そのため、撹拌槽内の水溶液のpH値の範囲は同じになるため、撹拌槽内の水溶液のpH値は、例えば、12.0の近傍に設定する。
本実施形態では、種晶生成工程S11で得られる種晶粒子の構造は、図3に示す構造に限定されない。例えば、第1種晶生成工程S111と第2種晶生成工程S112とが同時に実施される場合、種晶生成工程S11の完了時に得られる種晶粒子の構造は、図3に示す種晶粒子の構造とは異なる。その構造は、例えば、一次粒子111に相当するものと外殻113に相当するものとが混じり合い、容易にその境界が分からない一様な構造となる。
[成長晶析工程S12]
図1に示すように、種晶生成工程S11の終了後、成長晶析工程S12を行う。成長晶析工程S12は、上述の第2種晶生成工程S112の条件と同様にして行うことができる。すなわち、成長晶析工程S12では、撹拌槽内の反応水溶液のpH値は、上述の第2種晶生成工程S112と同様である。
成長晶析工程S12では、撹拌槽内の雰囲気は、第1種晶生成工程S111及び第2種晶生成工程S112と同様、酸化性雰囲気又は非酸化性雰囲気のどちらでもよい。
成長晶析工程S12では、種晶生成工程S11で生じた種晶粒子の表面に、ニッケル含有水酸化物の溶質成分が析出する。図4は、成長晶析工程S12で生成されるニッケル含有水酸化物の粒子を模式的に示す断面図である。図4に示すように、成長晶析工程S12では、ニッケル含有水酸化物の溶質成分が種晶粒子11の表面に析出して外殻部12が形成される。これにより、種晶粒子11と外殻部12とで構成される、ニッケル含有水酸化物の粒子10が得られる。
成長晶析工程S12は、ニッケル含有水酸化物の粒子が所定の粒径まで成長したら終了する。ニッケル含有水酸化物の粒子の粒径は、種晶生成工程S11と成長晶析工程S12とのそれぞれにおける金属塩の供給量から推測できる。
成長晶析工程S12の終了後、得られたニッケル含有水酸化物の粒子は、撹拌槽の反応水溶液をオーバーフローさせるか撹拌槽の底部から排出することで、回収される。
成長晶析工程S12は、上述の種晶生成工程S11で使用していた撹拌槽内でそのまま継続して行ってもよいし、上述の種晶生成工程S11の終了後、撹拌槽内の反応水溶液を別の攪拌槽に移して(移液)、行ってもよい。成長晶析工程S12を上述の種晶生成工程S11で使用していた撹拌槽内とは別の攪拌槽で行う場合、成長晶析工程S12で使用する攪拌槽の大きさは、種晶生成工程S11で使用していた撹拌槽と同じ大きさでもよいし、種晶生成工程S11で使用していた撹拌槽よりも大きくてもよい。
なお、成長晶析工程S12の途中で、原料液等の供給を停止すると共に反応水溶液の撹拌を停止して、ニッケル含有水酸化物の粒子を沈降させた後、上澄み液を排出してもよい。これにより、中和晶析によって減少した反応水溶液中の金属イオン濃度を高めることができる。また、成長晶析工程S12を上述の種晶生成工程S11で使用していた撹拌槽内とは別の攪拌槽で行うとする。この場合、第2種晶生成工程S112において、原料液等の供給を停止すると共に反応水溶液の撹拌を停止して、第2種晶生成工程S112を終了する。その後、攪拌槽内の反応水溶液を別の攪拌槽に移す前に、ニッケル含有水酸化物の粒子を沈降させた後、上澄み液を排出してもよい。
本実施形態では、成長晶析工程S12を行い、種晶粒子11の表面にニッケル含有水酸化物の溶質成分を析出させて外殻部を形成しているが、種晶粒子11の平均粒径で十分である場合には、成長晶析工程S12は必ずしも行う必要はない。この場合、種晶生成工程S11で得られる種晶粒子をニッケル含有水酸化物の粒子として用いる。
(化学反応装置)
一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法に用いられる化学反応装置の一例について説明する。図5は、一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法に用いられる化学反応装置を示す上面図である。図6は、図5のI−I線に沿った化学反応装置の断面図である。図5及び図6に示すように、化学反応装置20は、撹拌槽21と、撹拌軸22と、撹拌翼(ディスクタービン翼(DT翼))23と、バッフル(邪魔板)24と、原料液供給管25と、中和剤供給管26と、錯化剤供給管27とを有する。
撹拌槽21は、円柱状の内部空間に反応水溶液を収容する。撹拌軸22は、撹拌槽21の上部から撹拌槽21内に挿入され、撹拌軸22の上端は、攪拌槽10の上方に設けられたモータ等の駆動装置に回転可能に支持されている。撹拌軸22の下端には撹拌翼23が取付けられている。モータ等が撹拌軸22を回転させることで、撹拌翼23が回転し、撹拌槽21内の反応水溶液が撹拌翼23により撹拌される。なお、撹拌槽21の中心線、撹拌軸22の中心線及び撹拌翼23の中心線は、一致していてよいし、鉛直でもよい。
バッフル24は、撹拌槽21の内周面から突き出している。バッフル24により、撹拌槽21内の反応水溶液の回転流を邪魔することで、撹拌槽21内に上昇流や下降流を生じさせ、反応水溶液の撹拌効率を向上させる。
原料液供給管25は、添加口251から撹拌槽21内に原料液を供給する。中和剤供給管26は、添加口261から撹拌槽21内に中和剤を供給する。錯化剤供給管27は、撹拌槽21内に錯化剤を供給する。種晶生成工程S11及び成長晶析工程S12において、原料液供給管25の添加口251から原料液が反応水溶液中に添加されると、金属塩と反応水溶液中に添加される中和剤及び錯化剤とが反応する。これにより、反応水溶液中にニッケル含有水酸化物の溶質成分が生成される。
(第1種晶生成工程S111における凝集体の平均粒径の算出)
ところで、最終的に得られるニッケル含有水酸化物の粒子の大きさは、第1種晶生成工程S111において生成される凝集体の大きさに依存する傾向にある。凝集体の表面に第2種晶生成工程S112において外殻が生成することで種晶粒子が得られ、種晶粒子の表面に成長晶析工程S12において外殻部が生成することでニッケル含有水酸化物の粒子が得られる。第1種晶生成工程S111では、第1種晶生成工程S111における原料液の供給量と、凝集体の大きさとから、反応水溶液に含まれる凝集体の数密度が決まる。凝集体の大きさと数密度とから、凝集体の比表面積を特定できる。第2種晶生成工程S112及び成長晶析工程S12における原料液の供給量を決めれば、第1種晶生成工程S111で生成された凝集体の表面に析出する、外殻及び外殻部の厚みが決まる。本発明者は、凝集体の大きさを調整することで、第2種晶生成工程S112において生成する種晶粒子の大きさを調整でき、最終的にニッケル含有水酸化物の粒子の大きさを調整できることに注目した。そこで、第1種晶生成工程S111において生成する凝集体の平均粒径を予め算出して、第1種晶生成工程S111の条件を設定する。第1種晶生成工程S111で設定した条件に基づいて、凝集体の粒径を調整し、所定の平均粒径を有する凝集体を生成することで、第2種晶生成工程S112において、所定の平均粒径を有する種晶粒子を生成できることを見出した。
なお、平均粒径としては、例えば、体積平均粒径を用いることができる。体積平均粒径は、下記式(i)の通り、粒子の集合において、個々の粒子の直径にその粒子の体積を乗じたものの総和を粒子の総体積で除したものである。体積平均粒径は、例えば、レーザ回折式粒度分布計を用いてレーザ回折散乱法等によって測定することができる。
体積平均粒径MV=Σ(Vn×dn)/Σ(Vn) ・・・(i)
(ただし、式(I)中、Vは粒子の体積、dは粒子の粒径、nは1以上の整数である。)
凝集体の平均粒径は、凝集体を形成する粒子(例えば、核粒子や凝集体)同士を結合する結合エネルギーと、粒子(例えば、核粒子や凝集体)同士の結合を分断する分断エネルギーとのバランスによって決まるといえる。
なお、結合エネルギーとは、高過飽和領域において、互いに接触した一対の粒子(例えば、核粒子と凝集体)が、一対の粒子の表面にニッケル含有水酸化物の溶質成分が析出して形成される析出層で結合することによって生ずるエネルギーをいう。
分断エネルギーとは、粒子が攪拌槽の撹拌翼を通過する時に、粒子(例えば、凝集体)の一部が分断されて複数の粒子(例えば、凝集体)に分断されるのに要するエネルギーである。
凝集体を形成する粒子(例えば、核粒子や凝集体)同士を結合する結合エネルギーと、粒子(例えば、核粒子や凝集体)同士の結合を分断する分断エネルギーとについて説明する。
まず、粒子(例えば、核粒子や凝集体)の結合エネルギーについて説明する。粒子の結合エネルギーは、以下に示す(A)〜(D)の4つの現象をそれぞれ定式化して整理することで求められる。
(A) 粒子の結合エネルギーは、図7に表す、凝集体(半径R[単位:μm])と核粒子(半径r[単位:μm])とが互いに接触した粒子対の結合部分の断面積S(単位:μm2)に比例する。
図7は、凝集体に核粒子が凝集した状態のモデルの一例を示す説明図である。図7に示すように、凝集体(半径R[単位:μm])と、核粒子(半径r[単位:μm])が互いに接触しているとする。凝集体と核粒子とは、これらの表面にニッケル含有水酸化物の溶質成分が析出して形成された析出層(厚さΔh[単位:μm])で化学結合すると考える。核粒子と凝集体との粒子対の結合ネック部分が分断されると、これらの結合部分に2つの新生面(断面積S)が現れる。粒子の結合エネルギーは、この新生面によって表面エネルギーが増加する分に相当すると考えられるため、粒子の結合エネルギーは、断面積Sに比例する。
(B) 断面積Sは、過飽和度C(単位:mol/m3)がcからc+Δcまでの領域において凝集体と核粒子との表面にニッケル含有水酸化物の溶質成分が析出して形成された析出層の厚さΔhと、核粒子の半径rとに比例する。なお、cとは過飽和度Cの所定の値をいい、Δcとはcの変化量をいう。
(C) 析出層の厚さΔhは、粒子(例えば、凝集体)が過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域を通過する時間(通過時間)Δt(単位:s)と、粒子(例えば、凝集体)1個当たりのニッケル含有水酸化物の溶質成分の表面析出による成長速度κ(単位:μm/s)とに比例する。なお、通過時間Δtは反応時間ともいい、成長速度κは析出速度ともいう。
ここで、通過時間Δtは、下記式(1)で表すことができる。
Figure 2020037496
なお、ニッケル含有水酸化物の溶質成分が所定の濃度まで乱流分散するときの時間スケールをtd(単位:s)とした時、乱流分散の時間スケールtが√(ΔV/(uK))に近似することを表す下記式(2)を用いることで、上記式(1)は求められる。
Figure 2020037496
但し、ΔV(単位:m3)は、過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域の体積であり、(uK)は、過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域を通過する流体の平均流速u(単位:m/s)とその流体の流れの乱流拡散係数K(単位:m2/s)との積の体積平均(単位:m3/s2)である。体積平均は、uKを過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域で体積積分して求めた積分値を、過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域の体積で割った値である。
上記式(2)を用いることで上記式(1)が求められる理由は、粒子(核及び凝集体)の慣性力が非常に小さいため、粒子は過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域で乱流の流れにほとんど追随して運動するとみなせることによる。
上記式(2)の乱流分散の時間スケールtでは、N本(N:2以上の整数)の原料液供給管25(図5参照)を用いて原料液を反応水溶液中に添加すると、過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域がN個に分割される。そのため、過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域の体積の通過時間Δtは、上記式(1)で表せる。
(D) 成長速度κは、ニッケル含有水酸化物の溶質成分の分子拡散が律速である。
粒子(例えば、凝集体)1個当たりのニッケル含有水酸化物の溶質成分の表面析出による成長速度κは、反応水溶液中に存在するニッケル含有水酸化物の溶質成分が凝集体の表面に析出する析出反応モデルを参照できる。この析出反応モデルにおいて表面析出反応の律速過程は、ニッケル含有水酸化物の溶質成分の分子拡散であることから、析出層の成長速度κは、下記式(3)に示すように、ニッケル含有水酸化物の溶質成分の分子拡散係数D(単位:m2/s)に過飽和度Cを乗じて、ニッケル含有水酸化物の溶質成分の拡散流束を析出層の見かけ密度ρpと凝集体の半径Rで除することにより、求めることができる。
Figure 2020037496
式(1)〜式(3)を用いて、上記の(A)〜(D)の4つの現象を整理することにより、粒子の結合エネルギーEb(単位:J)は、下記式(4)のように表される。
Figure 2020037496
但し、Aは物性値等の定数をまとめて表記した、結合エネルギーに関するモデル係数であり、Nは原料液の添加口の数である。CTは過飽和度Cの閾値を表している。この過飽和度Cが閾値CT以上の領域を高過飽和領域という。この高過飽和領域において、ニッケル含有水酸化物の溶質成分の表面析出により析出層が出現するものと考える。
ここで、高過飽和領域CTについて説明する。図8は、原料液の添加口付近に形成される高過飽和領域CTを示す図である。図8中、矢印方向は、図6に示す化学反応装置20の原料液供給管25の添加口251付近における反応水溶液の流れの方向を表す。図8に示すように、図6に示す原料液供給管25の添加口251から原料液が反応水溶液中に添加される。添加口251付近で原料液中の金属塩が中和剤及び錯化剤と中和反応して、ニッケル含有水酸化物の溶質成分が生成され、添加口251付近の反応水溶液中には、ニッケル含有水酸化物のモル濃度が高い高過飽和領域31が形成される。
種晶生成工程S11の第1種晶生成工程S111では、高過飽和領域31において、核の発生及び凝集体の生成が主として生じる。第1種晶生成工程S111では、高過飽和領域31において、反応水溶液中に生成されたニッケル含有水酸化物の溶質成分が反応水溶液中に析出する際には、核粒子として発生する。核粒子は、高過飽和領域31を通りながら成長してある程度大きくなり、一次粒子となる。そして、複数の一次粒子が凝集して凝集体となる。
なお、図8では、第1種晶生成工程S111において、一つの添加口251から原料液を反応水溶液中に吐出して、高過飽和領域31の数は1つとしているが、複数の添加口251から原料液を分けて反応水溶液中に吐出して、高過飽和領域31の数を複数としてもよい。なお、高過飽和領域31の数が複数である場合、高過飽和領域31の体積とは、複数の領域の合計の体積を意味する。このとき、複数の添加口251から吐出される複数の高過飽和領域31が重ならないように、複数の添加口251の間隔が設定される。
次に、粒子(例えば、核粒子や凝集体)の分断エネルギーについて説明する。粒子の分断エネルギーは、以下に示す(a)〜(d)の4つの現象をそれぞれ定式化して整理することで求められる。
(a) 粒子の分断エネルギーは、粒子(例えば、凝集体)が撹拌翼を通過する際の加速度(単位:m/s2)と、粒子(例えば、凝集体)が加速される距離を表す代表長さ(単位:m)とに比例する。
(b) 代表長さとしては、撹拌翼径Lp(単位:m)を用いる。
図6に示す撹拌槽において、撹拌翼で撹拌された反応水溶液の流れは、槽底から側壁を伝って液面に到達し、液面で撹拌軸へと流れの向きを変えた後、撹拌軸の周辺から流下して撹拌翼に飲み込まれる。この循環流において、反応水溶液の流れは、撹拌翼を通過する際に力を受けて加速される。このとき、同時に、粒子(例えば、凝集体)も撹拌翼から力を受けて加速される。この一部が粒子(例えば、凝集体)の結合を分断する力として作用すると考えると、粒子(例えば、凝集体)の分断エネルギーは、粒子の加速度と撹拌翼径Lpとに比例する。
(c) 粒子の加速度は、代表長さである撹拌翼径Lpと、撹拌翼の回転数ω(単位:s-1)とで次元解析する。
粒子(例えば、凝集体)が撹拌翼を通過する際に受ける加速度は、撹拌翼の仕様と運転条件に依存する。粒子(例えば、凝集体)が流れ方向に加速される加速度は、撹拌翼径Lpに、撹拌翼の回転数ωの二乗を乗じることにより求められる。
(d) 粒子の分断エネルギーは、凝集体の重さに比例する。
凝集体の重さは、凝集体の体積に比例するので、凝集体の半径Rを三乗した値R3に比例する。粒子が凝集体と核粒子との結合した粒子対(図7参照)であるとした時、凝集体の半径Rを三乗した値R3と、核粒子の半径rを三乗した値r3との和(R3+r3)を用いることで、粒子の体積が求められる。このとき、凝集体は、核粒子よりも十分大きいといえるので、R3+r3はR3に近似(R3+r3≒R3)するとみなせる。そのため、粒子の分断エネルギーは、凝集体の重さに比例するものとして扱うことができる。
上記の(a)〜(d)の4つの現象を整理することで、粒子(例えば、凝集体)の分断エネルギーEk(単位:J)は、下記式(5)のように表される。
Figure 2020037496
但し、Bは、物性値等の定数をまとめて表記した、分断エネルギーに関するモデル係数である。R3は、上述の通り、粒子の重さを表す指標となる。(ω・L2は、粒子の速度の二乗を表す指標となる。
複数の核が凝集して凝集体を生成する粒径成長モデルでは、凝集体の半径Rは、上述の通り、結合エネルギーEbと分断エネルギーEkとのバランスによって決まるといえる。すなわち、結合エネルギーEb及び分断エネルギーEkは、凝集体の粒径に依存するため、凝集体が大きくなるにしたがって、結合エネルギーEbが大きくなり、逆に分断エネルギーEkは小さくなっていくと考えることができる。そのため、凝集体の大きさがある程度の大きさになると、結合エネルギーEb及び分断エネルギーEkとが等しくなり、結合エネルギーEb及び分断エネルギーEkとが釣り合う大きさで凝集体の成長は落ち着いていくことになる。
そこで、結合エネルギーEbを表す上記式(4)と、分断エネルギーEkを表す上記式(5)とを等式で結んで、凝集体の半径Rについて整理すると、下記式(I)が得られる。
Figure 2020037496
なお、上記式(I)において、核粒子の半径rは、実験結果より、0.3μmとする。また、A及びBは、上述の通り、モデル係数であり、定数として扱う。
高過飽和領域(図8参照)の過飽和度C、過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域の体積ΔV、乱流分散パラメータuKは、汎用の流体解析ソフトを用いた流体反応シミュレーションによって求めることができる。なお、uKのu(単位:m/s)は高過飽和領域を通過する流体の平均流速であり、K(単位:m2/s)は高過飽和領域を通過する流体の流れの乱流拡散係数である。流体反応シミュレーションを用いた算出方法は、具体的には、国際公開第2017/217365等に記載されている方法に準じて行うことができる。
以上より、流体反応シミュレーションによって高過飽和領域を計算して、高過飽和領域の過飽和度C、過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域の体積ΔV、乱流分散パラメータuKを取得する。そして、これらの取得した数値と、多点添加の本数Nと、撹拌翼(DT翼)の翼径Lp及び回転数ωとを、上記式(I)に代入することによって、第1種晶生成工程S111における、凝集体の半径Rを求めることができる。これにより、凝集体の平均粒径を求めることができる。
よって、本実施形態によれば、上記式(I)を用いることで、第1種晶生成工程S111で作製される凝集体の平均粒径を予め求めることができるので、第1種晶生成工程S111の製造条件を所定の平均粒径を有する凝集体が得られるように設定できる。製造条件として、例えば、撹拌槽の容量や形状、撹拌翼の型式、回転数、個数、形状、寸法若しくは設置場所と、撹拌翼の回転数、反応水溶液のpH値若しくは温度、原料液の流量や濃度、又は原料液供給管の添加口の位置、形状、数若しくは配置方法等が挙げられる。第1種晶生成工程S111で設定した製造条件に基づいて第1種晶生成工程S111を行うことで、第1種晶生成工程S111において生成される凝集体の平均粒径を高精度に調整できる。
第1種晶生成工程で所定の平均粒径を有する凝集体を高精度に生成することで、第2種晶生成工程で作製する所定の平均粒径を有する種晶粒子を高精度に生成できる。種晶生成工程後に成長晶析工程でニッケル含有水酸化物の粒子を製造する際、種晶生成工程で生成した種晶粒子を用いることで、所定の平均粒径を有する凝集体を安定して生成できる。
ニッケル含有水酸化物の製造方法は、種晶生成工程において凝集体の平均粒径を確認する工程を含んでもよい。この確認は、上述の製造条件を変更する度に行われてよい。また、撹拌槽がバッチ式の場合、製造条件が同じ間、確認は一度行われればよく、毎回の確認は不要である。
以上の通り、一実施形態によるニッケル含有水酸化物の製造方法を用いて製造されるニッケル含有水酸化物の粒子は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いられるリチウムニッケル複合酸化物の前駆体として用いることができる。前駆体を用いて製造した正極活物質は、正極の製造に用いることができる。得られた正極は、リチウムイオン二次電池に有効に用いることができる。
リチウムイオン二次電池は、携帯電話、スマートフォン、タブレットPC若しくはノート型PC等の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、HEV、又はEV若しくはPHEV等のクリーンエネルギー自動車等の充放電可能な電池として好適に用いることができる。
<予備試験>
上記式(I)を用いて、第1種晶生成工程で得る凝集体の平均粒径を算出するために、まず上記式(I)中のモデル係数A及びBを算出するための予備試験を行った。なお、第1種晶生成工程とは、上記の図1に示す第1種晶生成工程S111をいう。
[凝集体の作製]
(予備試験1)
オーバーフロー型の連続式の撹拌槽を用い、中和晶析によって、ニッケル複合水酸化物からなる凝集体を生成する第1種晶生成工程を行った。撹拌槽の容積は50L、撹拌翼のタイプはディスクタービン翼、撹拌翼の羽根の枚数は6枚、撹拌翼の翼径は150mm、撹拌翼の回転数は600rpmとした。反応開始前の撹拌槽の初液量は10Lであり、第1種晶生成工程が終了した時点での撹拌槽の反応水溶液の液量は15Lであった。その後、第2種晶生成工程の反応が終了した時点での撹拌槽の反応水溶液の液量は50Lであった。反応水溶液の温度は、40℃に維持した。攪拌槽内の雰囲気は、酸素雰囲気とした。
原料液は、ニッケル複合水酸化物としてNi0.34Mn0.33Co0.33(OH)2が得られるように調製した。原料液供給管の本数は2本、2本の原料液供給管からの供給量は100mL/分とし、第1種晶生成工程の原料液の流量比を0.77とした。なお、第1種晶生成工程における原料液の流量比とは、基準条件の平均流量を1.0とした時、基準条件における原料液の平均流量に対する原料液の平均流量の比である。基準条件とは、平均粒径が所定の範囲内となる凝集体が得られる時の原料液の流量をいう。
第1種晶生成工程の間、撹拌槽内に、原料液の他に、中和剤として水酸化ナトリウム水溶液及び錯化剤としてアンモニア水を供給して、反応水溶液のpH値等を維持した。
撹拌槽内の反応水溶液をサンプリングし、サンプリングした反応水溶液に含まれる凝集体の平均粒径をレーザ回折式の粒径分布測定装置(マイクロトラック・ベル(株))で計測した。得られた凝集体の平均粒径は約3.20μmであった。
(予備試験2)
予備試験1において、原料液供給管の本数を4本に変更したこと以外、予備試験1と同様にして、凝集体を製造した。得られた凝集体の平均粒径は、約3.00μmであった。
[モデル係数A及びBの算出]
上記予備試験1及び2の試験条件及び試験結果より、得られる凝集体の平均粒径の値(計算値)が予備試験1及び2で得られた値(実験値)となるような上記式(I)中のモデル係数A及びBを算出した。
<実施例1>
(凝集体の平均粒径の算出)
上記式(I)と、予備試験1及び2で算出したモデル係数A及びBとを用いて、予め第1種晶生成工程S111で得る凝集体の平均粒径を2.95μmと計算した。
(凝集体の作製)
予備試験1において、撹拌翼の回転数を予備試験1の撹拌翼の回転数に対して1.11倍に変更したこと以外、予備試験1と同様にして、凝集体を製造した。得られた凝集体の平均粒径は、約2.70μmであった。
凝集体の平均粒径の計算値(2.95μm)に対する実験値(2.70μm)の誤差の絶対値は、下記式より、約8.5%であった。
誤差(%)=|(実験値−計算値)/計算値×100|
<実施例2>
実施例1において、上記式(I)と、予備試験1及び2で算出したモデル係数A及びBとを用いて、予め第1種晶生成工程で得る凝集体の平均粒径を3.25μmと計算した。そして、第1種晶生成工程の原料液の流量比を約1.54に変更したこと以外、実施例1と同様にして、凝集体を製造した。得られた凝集体の平均粒径は、約3.05μmであった。凝集体の平均粒径の計算値(3.25μm)に対する実験値(3.05μm)の誤差の絶対値は、約6.2%であった。
<実施例3>
実施例1において、上記式(I)と、予備試験1及び2で算出したモデル係数A及びBとを用いて、予め第1種晶生成工程で得る凝集体の平均粒径を4.50μmと計算した。そして、第1種晶生成工程の原料液の流量比を約1.54に変更し、原料液供給管の本数を4本に変更し、撹拌翼の回転数を予備試験1の撹拌翼の回転数に対して約0.68倍に変更したこと以外、実施例1と同様にして、凝集体を製造した。得られた凝集体の平均粒径は、約4.75μmであった。凝集体の平均粒径の計算値(4.50μm)に対する実験値(4.75μm)の誤差の絶対値は、約5.3%であった。
<実施例4>
実施例1において、上記式(I)と、予備試験1及び2で算出したモデル係数A及びBとを用いて、予め第1種晶生成工程で得る凝集体の平均粒径を3.35μmと計算した。そして、第1種晶生成工程の原料液の流量比を1.54に変更し、原料液供給管の本数を4本に変更し、撹拌翼の回転数を予備試験1の撹拌翼の回転数に対して1.00倍に変更したこと以外、実施例1と同様にして、凝集体を製造した。得られた凝集体の平均粒径は、約3.55μmであった。凝集体の平均粒径の計算値(3.30μm)に対する実験値(3.55μm)の誤差の絶対値は、約6.0%であった。
<実施例5>
実施例1において、上記式(I)と、予備試験1及び2で算出したモデル係数A及びBとを用いて、予め第1種晶生成工程で得る凝集体の平均粒径を3.10μmと計算した。そして、予備試験1において、第1種晶生成工程の原料液の流量比を2.00に変更し、撹拌翼の回転数を予備試験1の撹拌翼の回転数に対して約1.16倍に変更したこと以外、実施例1と同様にして、凝集体を製造した。得られた凝集体の平均粒径は、約3.25μmであった。凝集体の平均粒径の計算値(3.10μm)に対する実験値(3.25μm)の誤差の絶対値は、約4.8%であった。
<実施例6>
実施例1において、上記式(I)と、予備試験1及び2で算出したモデル係数A及びBとを用いて、予め第1種晶生成工程で得る凝集体の平均粒径を4.15μmと計算した。そして、第1種晶生成工程の原料液の流量比を1.33倍に変更し、原料液供給管の本数を1本に変更し、撹拌翼の回転数を予備試験1の撹拌翼の回転数に対して約1.67に変更し、攪拌槽の容量を予備試験1で用いた攪拌槽の容量の0.10倍に変更したこと以外、実施例1と同様にして、凝集体を製造した。得られた凝集体の平均粒径は、約4.05μmであった。凝集体の平均粒径の計算値(4.15μm)に対する実験値(4.05μm)の誤差の絶対値は、約2.4%であった。
<実施例7>
実施例1において、上記式(I)と、予備試験1及び2で算出したモデル係数A及びBとを用いて、予め第1種晶生成工程S111で得る凝集体の平均粒径を3.55μmと計算した。そして、第1種晶生成工程の原料液の流量比を1.33に変更し、撹拌翼の回転数を予備試験1の撹拌翼の回転数に対して約1.67倍に変更し、攪拌槽の容量を予備試験1で用いた攪拌槽の容量の0.10倍に変更したこと以外、実施例1と同様にして、凝集体を製造した。得られた凝集体の平均粒径は、約3.27μmであった。凝集体の平均粒径の計算値(3.55μm)に対する実験値(3.27μm)の誤差の絶対値は、約7.9%であった。
上記各予備試験及び実施例において、第1種晶生成工程の原料液の流量比と、原料液の添加口の数と、撹拌翼の回転数比と、撹拌槽の容量比と、予め算出した凝集体の平均粒径の計算値と、作製した凝集体の平均粒径の実測値と、凝集体の平均粒径の計算値に対する実験値の誤差の絶対値とを表1に示す。また、上記各実施例の、凝集体の平均粒径の計算値と実測値とを図9に示す。なお、表中の、撹拌翼の回転数比とは、予備試験1における撹拌翼の回転数に対する撹拌翼の回転数の比である。撹拌槽の容量比とは、予備試験1における撹拌槽の容量に対する撹拌槽の容量の比である。
Figure 2020037496
表1及び図9に示すように、何れの実施例においても、予め算出した凝集体の平均粒径の大きさは、実際に作製した凝集体の平均粒径の大きさに対して10%以下の誤差であった。
よって、上記式(I)を用いれば、第1種晶生成工程S111において平均粒径を高い精度に調整して凝集体を製造できることが確認された。第1種晶生成工程で生成される凝集体の平均粒径を高精度に調整することで、第2種晶生成工程で作製する種晶粒子の平均粒径を高精度に調整できる。また、種晶生成工程の後に成長晶析工程で最終的に得られるニッケル含有水酸化物の粒子の平均粒径を高精度に調整できる。
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10 ニッケル含有水酸化物の粒子
11 種晶粒子
110 核(核粒子)
111 一次粒子
112 凝集体
113 外殻
12 外殻部
20 化学反応装置
21 撹拌槽
23 撹拌翼
25 原料液供給管
251 添加口
31 高過飽和領域

Claims (4)

  1. 少なくともニッケル塩を含む金属塩を含有する原料液と、前記金属塩の金属イオンと結合して錯体を形成する錯化剤と、前記金属塩及び前記錯体と反応して金属水酸化物を生成する中和剤とを含む反応水溶液の中で、中和晶析によりニッケル含有水酸化物を得るニッケル含有水酸化物の製造方法であって、
    前記反応水溶液の中で、中和晶析によって発生した、前記ニッケル含有水酸化物の核を成長させて、種晶を生成する種晶生成工程を含み、
    前記種晶生成工程は、前記反応水溶液の中に中和晶析によって前記ニッケル含有水酸化物の前記核を発生させ、複数の前記核が凝集した凝集体を生成する第1種晶生成工程を含み、
    前記第1種晶生成工程を、下記式(I)に基づいて設定した条件で行うニッケル含有水酸化物の製造方法。
    Figure 2020037496
    (但し、式(I)中、Rは凝集体の半径であり、Aはモデル係数であり、rは核の半径であり、Cは過飽和度であり、Cは過飽和度Cの閾値であり、Nは原料液の添加口の数であり、ΔVは過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域の体積であり、uは過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域を通過する流体の平均流速であり、Kは過飽和度Cがcからc+Δcまでの領域を通過する流体の流れの乱流拡散係数であり、Bはモデル係数であり、ωは撹拌翼の回転数であり、Lは撹拌翼の翼径である。)
  2. 前記ニッケル含有水酸化物が、NiとCoとMnとM(Mは、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWから選択される1種以上の添加元素)とを、物質量比がNi:Co:Mn:M=x:y:z:t(ただし、x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦0.8、0≦t≦0.02)となるように含む請求項1に記載のニッケル含有水酸化物の製造方法。
  3. 前記ニッケル含有水酸化物が、NiとCoとAlとを、物質量比がNi:Co:Al=1−x−y:x:y(ただし、0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15)となるように含む、請求項1に記載のニッケル含有水酸化物の製造方法。
  4. 請求項1〜3の何れか1つの前記ニッケル含有水酸化物を、非水系電解質二次電池の正極活物質の前駆体として用いるニッケル含有水酸化物の製造方法。
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