JP2020035690A - 蓄電モジュールの製造方法及び電解液注入装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電解液の注入時間の短縮により蓄電モジュールの生産効率を高めることができる蓄電モジュールの製造方法及び電解液注入装置を提供する。【解決手段】この蓄電モジュールの製造方法は、複数のバイポーラ電極14が積層された電極積層体11を有する蓄電モジュールの製造方法であって、電極積層体11において隣り合うバイポーラ電極14,14間に形成された複数の内部空間Vのそれぞれに電解液Eを注入する注入工程を備え、注入工程は、内部空間Vのそれぞれへの電解液Eの注入速度を監視する監視工程と、電解液Eの注入速度が他の内部空間Vに比べて速い先行内部空間Vfに対し、電解液Eの注入速度を低下させる調整工程と、を備える。【選択図】図6
Description
本開示は、蓄電モジュールの製造方法及び電解液注入装置に関する。
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えたバイポーラ電池が知られている(例えば特許文献1参照)。バイポーラ電池は、セパレータを介して複数のバイポーラ電極を積層してなる電極積層体を備えている。積層体には、例えば樹脂製の封止体が設けられ、バイポーラ電極の積層によって形成される側面において電極板の縁部が保持されるようになっている。また、かかる蓄電モジュールの製造方法には、封止体内のバイポーラ電極間に形成された複数の内部空間に電解液を注入する工程が含まれる。電解液の注入方法としては、例えば特許文献2に示されるように、真空状態の内部空間にニードル等を用いて注入する方法が挙げられる。
しかしながら、電極積層体において内部空間を仕切るバイポーラ電極は、非常に薄い電極板により形成されているため、内部空間の容積が変化し易いという課題がある。このため、各内部空間に電解液を注入していくと、特定の内部空間の容積が他の内部空間への電解液の注入具合などによって小さくなり、当該内部空間に対する電解液の注入速度が低下してしまうことが考えられる。この場合、電解液が全ての内部空間に充填されるまでの時間が延び、蓄電モジュールの生産効率が低下するおそれがある。
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、電解液の注入時間の短縮により蓄電モジュールの生産効率を高めることができる蓄電モジュールの製造方法及び電解液注入装置を提供することを目的とする。
本開示の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、複数のバイポーラ電極が積層された電極積層体を有する蓄電モジュールの製造方法であって、電極積層体において隣り合うバイポーラ電極間に形成された複数の内部空間のそれぞれに電解液を注入する注入工程を備え、注入工程は、内部空間のそれぞれへの電解液の注入速度を監視する監視工程と、電解液の注入速度が他の内部空間に比べて速い先行内部空間に対し、電解液の注入速度を低下させる調整工程と、を備える。
この蓄電モジュールの製造方法では、電解液の注入速度が他の内部空間に比べて速い先行内部空間に対して電解液の注入速度を低下させるため、各内部空間に対する電解液の注入速度の均一化が図られる。これにより、特定の内部空間に対する電解液の注入速度が低下した状態で当該内部空間に対する電解液の注入の完了を待つ場合に比べて、電解液が全ての内部空間に充填されるまでの時間を短縮することが可能となり、蓄電モジュールの生産効率を高めることができる。
また、調整工程では、電解液の注入速度が速い先行内部空間ほど電解液の注入速度の低下度を増加させてもよい。この場合、各内部空間に対する電解液の注入速度の一層の均一化が図られる。
また、注入工程では、チューブに接続されたノズルを用いて内部空間に電解液を注入し、調整工程では、チューブ内を減圧することによって先行内部空間に対する電解液の注入速度を低下させてもよい。この場合、先行内部空間に対する電解液の注入速度の低下を簡便に実施できる。
また、注入工程では、チューブに接続されたノズルを用いて内部空間に電解液を注入し、調整工程では、チューブ内の電解液の液面に接する気体の流量を減少させることによって先行内部空間に対する電解液の注入速度を低下させてもよい。この場合、先行内部空間に対する電解液の注入速度の低下を簡便に実施できる。
また、監視工程では、チューブに設けた液面センサによって内部空間のそれぞれへの電解液の注入速度を監視してもよい。これにより、電解液の注入速度の監視を簡便かつ精度良く行うことが可能となり、電解液の注入速度が他の内部空間に比べて速い先行内部空間の特定が容易となる。
また、監視工程では、チューブに多段階に取り付けた液面センサを用いてもよい。これにより、電解液の注入速度の監視を更に精度良く行うことが可能となる。
また、本開示の一側面に係る電解液注入装置は、複数のバイポーラ電極が積層された電極積層体を有する蓄電モジュールの内部空間に電解液を注入する電解液注入装置であって、電極積層体において隣り合うバイポーラ電極間に形成された複数の内部空間のそれぞれに電解液を注入する注入部を備え、注入部は、内部空間のそれぞれへの電解液の注入速度を監視する監視部と、電解液の注入速度が他の内部空間に比べて速い先行内部空間に対し、電解液の注入速度を低下させる調整部と、を有する。
この電解液注入装置では、電解液の注入速度が他の内部空間に比べて速い先行内部空間に対して電解液の注入速度を低下させるため、各内部空間に対する電解液の注入速度の均一化が図られる。これにより、特定の内部空間に対する電解液の注入速度が低下した状態で当該内部空間に対する電解液の注入の完了を待つ場合に比べて、電解液が全ての内部空間に充填されるまでの時間を短縮することが可能となり、蓄電モジュールの生産効率を高めることができる。
また、調整部は、電解液の注入速度が速い先行内部空間ほど電解液の注入速度の低下度を増加させてもよい。この場合、各内部空間に対する電解液の注入速度の一層の均一化が図られる。
また、注入部は、内部空間を減圧する減圧ポンプと、内部空間に電解液を供給するチューブと、チューブに接続されたノズルと、を有し、調整部は、減圧ポンプによってチューブ内を減圧することにより先行内部空間に対する電解液の注入速度を低下させてもよい。この場合、先行内部空間に対する電解液の注入速度の低下を簡便に実施できる。
また、注入部は、内部空間に電解液を供給するチューブと、チューブに接続されたノズルと、チューブ内の電解液の液面に接する気体の流量を制御する流量制御弁と、を有し、調整部は、流量制御弁によってチューブ内の気体の流量を減少させることにより先行内部空間に対する電解液の注入速度を低下させてもよい。この場合、先行内部空間に対する電解液の注入速度の低下を簡便に実施できる。
また、監視部は、チューブに設けた液面センサによって内部空間のそれぞれへの電解液の注入速度を監視してもよい。これにより、電解液の注入速度の監視を簡便かつ精度良く行うことが可能となり、電解液の注入速度が他の内部空間に比べて速い先行内部空間の特定が容易となる。
また、液面センサは、チューブに多段階に取り付けられていてもよい。これにより、電解液の注入速度の監視を更に精度良く行うことが可能となる。
本開示によれば、電解液の注入時間の短縮により蓄電モジュールの生産効率を高めることができる。
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法及び電解液注入装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5とを含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側とにそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。なお、図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくなっていてもよい。
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されると共に、モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して蓄電モジュール4の積層方向Dに沿って積層された複数の電極によって構成されている。これらの電極は、複数のバイポーラ電極14の積層体と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを含む。
バイポーラ電極14は、一方面15a及び一方面15aの反対側の他方面15bを含む電極板15と、一方面15aに設けられた正極16と、他方面15bに設けられた負極17とを有している。正極16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
負極終端電極18は、電極板15と、電極板15の他方面15bに設けられた負極17とを有している。負極終端電極18は、他方面15bが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の電極板15の一方面15aは、電極積層体11の積層方向における一方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5(図1参照)と電気的に接続されている。負極終端電極18の電極板15の他方面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
正極終端電極19は、電極板15と、電極板15の一方面15aに設けられた正極16とを有している。正極終端電極19は、一方面15aが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の一方面15aに設けられた正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。正極終端電極19の電極板15の他方面15bは、電極積層体11の積層方向における他方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5(図1参照)と電気的に接続されている。
電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成されている。封止体12は、電極板15の縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて縁部15cを保持している。封止体12は、電極板15の縁部15cに結合された複数の第1封止部21と、側面11aに沿って第1封止部21を外側から包囲し、第1封止部21のそれぞれに結合された第2封止部22とを有している。第1封止部21及び第2封止部22は、例えば、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂である。第1封止部21及び第2封止部22の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。
第1封止部21は、電極板15の一方面15aにおいて縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形枠状をなしている。本実施形態では、バイポーラ電極14の電極板15のみならず、負極終端電極18の電極板15及び正極終端電極19の電極板15に対しても第1封止部21が設けられている。負極終端電極18では、電極板15の一方面15aの縁部15cに第1封止部21が設けられ、正極終端電極19では、電極板15の一方面15a及び他方面15bの双方の縁部15cに第1封止部21が設けられている。
第1封止部21は、例えば超音波又は熱によって電極板15の一方面15aに溶着され、気密に接合されている。第1封止部21は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムである。第1封止部21の内側は、積層方向Dに互いに隣り合う電極板15の縁部15c同士の間に位置している。第1封止部21の外側は、電極板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、第2封止部22に埋設されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1封止部21同士は、互いに離間していてもよく、接していてもよい。また、第1封止部21の外縁部分同士は、例えば熱板溶着などによって互いに結合していてもよい。
電極板15と第1封止部21とが重なる領域は、電極板15と第1封止部21との結合領域Kとなっている。結合領域Kにおいて、電極板15の表面は、粗面化されている。粗面化された領域は、結合領域Kのみでもよいが、本実施形態では電極板15の面全体が粗面化されている。粗面化は、例えば電解メッキによる複数の突起の形成により実現し得る。複数の突起が形成されることにより、電極板15と第1封止部21との接合界面では、溶融状態の樹脂が粗面化により形成された複数の突起間に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、電極板15と第1封止部21との間の結合強度を向上させることができる。粗面化の際に形成される突起は、例えば基端側から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。これにより、隣り合う突起の間の断面形状がアンダーカット形状となり、アンカー効果を高めることが可能となる。
第2封止部22は、電極積層体11及び第1封止部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第2封止部22は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。第2封止部22は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形の枠状を呈している。第2封止部22は、例えば射出成型時の熱によって第1封止部21の外表面に溶着されている。
第1封止部21及び第2封止部22は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に内部空間Vを封止する。より具体的には、第2封止部22は、第1封止部21と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合うバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16、及び負極17内に含浸されている。
図3に示すように、蓄電モジュール4の封止体12は、積層方向Dに沿って延在する側面12aを有している。側面12aには、内部空間Vに電解液を注入するための注入口50が設けられている。注入口50は、電解液の注入後には、シール材などによって封止される。注入口50の位置は、側面12aの中央であってもよく、中央からずれた位置であってもよい。
図4に示すように、注入口50は、第1封止部21に設けられた第1開口50aと、第2封止部22に設けられた第2開口50bとによって構成されている。第1開口50aは、内部空間V(図2参照)のそれぞれに連通するように第1封止部21に複数設けられている。第2開口50bは、複数の第1開口50aと連通するように第2封止部22に単一に設けられている。本実施形態では、第1開口50aの形状は、円形であり、第2開口50bの形状は、矩形となっている。
続いて、上述した蓄電モジュール4の製造方法について説明する。
図5は、蓄電モジュールの製造工程の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、蓄電モジュール4の製造工程は、積層工程(ステップS01)と、封止体形成工程(ステップS02)と、注入工程(ステップS03)と、組立工程(ステップS04)とを備えて構成されている。
積層工程では、セパレータ13を介してバイポーラ電極14を積層し、積層体を得る。また、バイポーラ電極14の積層体の積層端に負極終端電極18及び正極終端電極19を更に積層することにより、電極積層体11を得る。積層にあたり、バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19のそれぞれの電極板15の縁部15cには、矩形枠状の第1封止部21を溶着等によって結合しておくことが好適である。
封止体形成工程では、例えば射出成型により電極積層体11に対して第2封止部22を形成し、封止体12を形成する。具体的には、積層工程で得られた電極積層体11を金型内に設置し、流動性を有する第2封止部22の樹脂材料を金型内に流し込むことによって、電極積層体11の側面に第2封止部22を形成する。第2封止部22によって電極積層体11の第1封止部21同士を結合し、封止体12を得る。
注入工程では、電極積層体11の内部空間Vのそれぞれに電解液の注入を行う。ここでは、後述する注入装置61を用い、封止体12の側面12aに設けられた注入口50を介して内部空間Vへの電解液の注入を実施する。電解液の注入後、注入口50をシール材などによって封止し、蓄電モジュール4を得る。シール材に代えて、注入口50に圧力調整弁などを設けるようにしてもよい。
組立工程では、まず、導電板5を介して複数の蓄電モジュール4を積層する。このとき、積層方向の一方側に配置する導電板5には正極端子6を予め接続し、他方側に配置する導電板5には負極端子7を予め接続しておくことが好適である。次に、電気絶縁性を有するフィルムFを介して蓄電モジュール4の積層方向の両端に一対のエンドプレート8,8を配置する。そして、エンドプレート8の挿通孔8aに締結ボルト9を挿通させると共に、エンドプレート8から突出した締結ボルト9の先端にナット10を螺号する。これにより、複数の蓄電モジュール4をユニット化し、蓄電装置1を得る。
続いて、上述した注入工程について更に詳細に説明する。
図6は、注入工程の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、注入工程では、まず、電極積層体11への電解液の注入を開始する(ステップS11)。電解液の注入には、例えば図7に示す注入装置61を用いる。図7の例では、注入装置61は、ベース部62と、複数のシリンジ63及びチューブ(注入部)64と、液面センサ(監視部)67と、減圧ポンプ(注入部及び調整部)68と、流量制御弁(注入部及び調整部)69とを備え、電解液Eの注入をオンラインで実施する装置として構成されている。
図7では、一点鎖線Lよりも上側が注入装置61側の構成となっており、注入装置61に対して電極積層体11がライン方向(図7の左右方向)に順次移送されるようになっている。移送される電極積層体11は、例えば金属製の治具Jによって保持されている。治具Jは、封止体12の側面12aに設けられた注入口50が注入装置61側を向くように電極積層体11を積層方向に挟んで保持する。なお、図7では、内部空間Vを見やすくするため、内部空間Vを仕切る構成として電極板15のみを簡略的に示している。
ベース部62は、例えば金属によって板状に形成されている。ベース部62の一面側には、例えばアルカリ耐性を有するゴムによって生成されたパッキン65が設けられている。ベース部62及びパッキン65には、チューブ64からの電解液Eを注入口50に注入させるためのノズル(注入部)66が設けられている。また、シリンジ63及びチューブ64は、ノズル66に向けて電解液Eの供給を行う部分である。ここでは、電極積層体11における内部空間Vの数(セル数)が24であり、ベース部62に設けられたノズル66の数及びシリンジ63及びチューブ64の数も24となっている。
減圧ポンプ68は、内部空間V及びチューブ64内の気体(ここでは空気)を排出する機構であり、配管を介してシリンジ63にそれぞれ接続されている。減圧ポンプ68は、不図示の制御装置からの制御に基づき、内部空間V及びチューブ64からの気体の排出を行う。また、流量制御弁69は、チューブ64内の電解液Eの液面Eaに接する気体の流量を制御する機構であり、減圧ポンプ68とシリンジ63とを接続する配管にそれぞれ設けられている。流量制御弁69は、不図示の制御装置からの制御に基づき、電解液Eを注入する際にチューブ64内の電解液Eの液面Eaに接する気体の流量を調整する。
液面センサ67は、チューブ64内での電解液Eの液面Eaの高さを検出する。本実施形態では、液面センサ67は、チューブ64に対して3段階に取り付けられており、シリンジ63側のラインF1、中央のラインF2、及びノズル66側のラインF3の3か所において電解液Eの液面Eaの高さを検出する。液面センサ67は、チューブ64内での電解液Eの液面Eaの高さの検出結果を制御装置に出力する。なお、液面センサ67は、必ずしも多段階に取り付ける必要はなく、単一の液面センサ67をチューブ64の任意の高さに取り付けるようにしてもよい。
注入工程では、内部空間Vへの電解液Eの注入を開始する前に、減圧ポンプ68により内部空間Vのそれぞれから気体を排出して減圧を行い、内部空間Vを真空状態とする。その後、シリンジ63を手動又は自動で操作することにより、シリンジ63内の電解液Eをチューブ64及びノズル66を介して内部空間Vに注入する。この注入工程では、全ての内部空間Vに対して電解液Eの注入を同時に実施する。
ところで、電極積層体11において、内部空間Vを仕切るバイポーラ電極14は、非常に薄い電極板により形成されているため、内部空間Vの容積が変化し易いという課題がある。このため、各内部空間Vに電解液Eを注入していくと、ある内部空間Vの容積が他の内部空間Vへの電解液Eの注入具合などによって小さくなり、当該内部空間Vに対する電解液Eの注入速度が低下してしまうことが考えられる。この場合、電解液Eが全ての内部空間Vに充填されるまでの時間が延び、蓄電モジュール4の生産効率が低下するおそれがある。
そこで、この注入工程では、電解液Eの注入を開始した後、液面センサ67による各内部空間Vへの電解液Eの注入速度の監視を行い(ステップS12:監視工程)、図8に示すように、電解液の注入速度が他の内部空間に比べて速い先行内部空間Vfを特定する(ステップS13:特定工程)。液面センサ67による先行内部空間Vfの特定方法に特に制限はなく、複数の先行内部空間Vfを特定してもよい。例えば電解液Eの液面Eaが液面センサ67のラインF1〜F3を通過した順位に閾値を設け、閾値に至るまでの順位の内部空間Vを先行内部空間Vfとして特定してもよい。順位の閾値は、F1〜F3のいずれか一つに対して設定してもよく、F1〜F3のそれぞれに対して設定してもよい。
先行内部空間Vfを特定した後、特定された先行内部空間Vfに対する電解液Eの注入速度を低下させる調整を実行する(ステップS14:調整工程)。調整工程では、先行内部空間Vfに接続されたチューブ64内を減圧ポンプ68で減圧することによって、先行内部空間Vfに対する電解液Eの注入速度を低下させる。これにより、図9に示すように、各内部空間Vに対する電解液Eの注入具合が均一化されることとなる。調整工程では、流量制御弁69によりチューブ64内の電解液Eの液面Eaに接する気体の流量を減少させることによって先行内部空間Vfに対する電解液Eの注入速度を低下させてもよい。減圧ポンプ68によるチューブ64内の減圧と、流量制御弁69によるチューブ64内の電解液Eの液面Eaに接する気体の流量減少とを組み合わせてもよい。
また、本実施形態では、調整工程において、特定工程で特定した複数の先行内部空間Vfのうち、電解液Eの注入速度が速い先行内部空間Vfほどチューブ64内の減圧度或いはチューブ64内の電解液Eの液面Eaに接する気体の流量の減少度を大きくし、電解液Eの注入速度を大きく低下させる。例えば上述したラインF1〜F3の通過順位に基づいて、通過順位が上位の先行内部空間Vfであるほど、チューブ64内を大きく減圧させ、或いはチューブ64内の電解液Eの液面Eaに接する気体の流量の大きく減少させる。
先行内部空間Vfに対する電解液Eの注入速度を低下させる調整を実行した後、各内部空間Vに対する電解液Eの注入を継続し、全ての内部空間Vに対する電解液Eの注入が完了したか否かを判断する(ステップS15:判断工程)。全ての内部空間Vに対する電解液Eの注入が完了していない場合、ステップS12〜ステップS15までの処理を繰り返し実行する。全ての内部空間Vに対する電解液Eの注入が完了した場合、注入工程を完了する。
以上説明したように、この蓄電モジュールの製造方法では、電解液Eの注入速度が他の内部空間Vに比べて速い先行内部空間Vfに対して電解液Eの注入速度を低下させる。このため、図9に示すように、各内部空間Vに対する電解液Eの注入速度の均一化が図られる。電解液Eの注入速度の均一化により、電解液Eの注入が先行する先行内部空間Vfによって他の内部空間Vの容積が小さくなってしまうことを回避できる。例えば先行内部空間Vfが存在すると、当該先行内部空間Vfに注入された電解液Eによってセルの壁(電極板15)が膨張し、隣接する内部空間Vを圧迫することが考えられる。
これに対し、電解液Eの注入速度が均一化されると、各内部空間Vの容積の増大が隣接する内部空間V,V間で打ち消され、特定の内部空間Vの容積が増大することを抑制できる。したがって、特定の内部空間Vに対する電解液Eの注入速度が低下した状態で当該内部空間Vに対する電解液Eの注入の完了を待つ場合に比べて、電解液Eが全ての内部空間Vに充填されるまでの時間を短縮することが可能となり、蓄電モジュール4の生産効率を高めることができる。
また、本実施形態では、調整工程において、電解液Eの注入速度が速い先行内部空間Vfほど電解液Eの注入速度の低下度を増加させている。これにより、各内部空間Vに対する電解液Eの注入速度の一層の均一化が図られる。
また、本実施形態では、注入工程において、内部空間Vを減圧すると共に、チューブ64に接続されたノズル66を用いて内部空間Vに電解液Eを注入し、調整工程において、チューブ64内を減圧することによって先行内部空間Vfに対する電解液Eの注入速度を低下させている。本実施形態では、内部空間Vの減圧に用いる減圧ポンプ68を用いてチューブ64内の減圧を行うので、先行内部空間Vfに対する電解液Eの注入速度の低下を簡便に実施できる。また、調整工程において、流量制御弁69を用いてチューブ64内の電解液Eの液面Eaに接する気体の流量を減少させることによっても、先行内部空間Vfに対する電解液Eの注入速度の低下を簡便に実施できる。
また、本実施形態では、監視工程において、チューブ64に設けた液面センサ67によって内部空間Vのそれぞれへの電解液Eの注入速度を監視している。液面センサ67を用いることで、電解液Eの注入速度の監視を簡便かつ精度良く行うことが可能となり、電解液Eの注入速度が他の内部空間Vに比べて速い先行内部空間Vfの特定が容易となる。さらに、本実施形態では、チューブ64に多段階に液面センサ67を取り付けているので、これにより、電解液Eの注入速度の監視を更に精度良く行うことが可能となる。
4…蓄電モジュール、11…電極積層体、14…バイポーラ電極、61…注入装置、64…チューブ(注入部)、66…ノズル(注入部)、67…液面センサ(監視部)、68…減圧ポンプ(注入部、調整部)、69…流量制御弁(注入部、調整部)、E…電解液、Ea…液面、V…内部空間、Vf…先行内部空間。
Claims (12)
- 複数のバイポーラ電極が積層された電極積層体を有する蓄電モジュールの製造方法であって、
前記電極積層体において隣り合うバイポーラ電極間に形成された複数の内部空間のそれぞれに電解液を注入する注入工程を備え、
前記注入工程は、
前記内部空間のそれぞれへの前記電解液の注入速度を監視する監視工程と、
前記電解液の注入速度が他の前記内部空間に比べて速い先行内部空間に対し、前記電解液の注入速度を低下させる調整工程と、を備える蓄電モジュールの製造方法。 - 前記調整工程では、前記電解液の注入速度が速い先行内部空間ほど前記電解液の注入速度の低下度を増加させる請求項1記載の蓄電モジュールの製造方法。
- 前記注入工程では、チューブに接続されたノズルを用いて前記内部空間に前記電解液を注入し、
前記調整工程では、前記チューブ内を減圧することによって前記先行内部空間に対する前記電解液の注入速度を低下させる請求項1又は2記載の蓄電モジュールの製造方法。 - 前記注入工程では、チューブに接続されたノズルを用いて前記内部空間に前記電解液を注入し、
前記調整工程では、前記チューブ内の前記電解液の液面に接する気体の流量を減少させることによって前記先行内部空間に対する前記電解液の注入速度を低下させる請求項1又は2記載の蓄電モジュールの製造方法。 - 前記監視工程では、前記チューブに設けた液面センサによって前記内部空間のそれぞれへの前記電解液の注入速度を監視する請求項3又は4記載の蓄電モジュールの製造方法。
- 前記監視工程では、前記チューブに多段階に取り付けた前記液面センサを用いる請求項5記載の蓄電モジュールの製造方法。
- 複数のバイポーラ電極が積層された電極積層体を有する蓄電モジュールの内部空間に電解液を注入する電解液注入装置であって、
前記電極積層体において隣り合うバイポーラ電極間に形成された複数の内部空間のそれぞれに電解液を注入する注入部を備え、
前記注入部は、
前記内部空間のそれぞれへの前記電解液の注入速度を監視する監視部と、
前記電解液の注入速度が他の前記内部空間に比べて速い先行内部空間に対し、前記電解液の注入速度を低下させる調整部と、を有する電解液注入装置。 - 前記調整部は、前記電解液の注入速度が速い先行内部空間ほど前記電解液の注入速度の低下度を増加させる請求項7記載の電解液注入装置。
- 前記注入部は、前記内部空間を減圧する減圧ポンプと、前記内部空間に前記電解液を供給するチューブと、前記チューブに接続されたノズルと、を有し、
前記調整部は、前記減圧ポンプによって前記チューブ内を減圧することにより前記先行内部空間に対する前記電解液の注入速度を低下させる請求項7又は8記載の電解液注入装置。 - 前記注入部は、前記内部空間に前記電解液を供給するチューブと、前記チューブに接続されたノズルと、前記チューブ内の前記電解液の液面に接する気体の流量を制御する流量制御弁と、を有し、
前記調整部は、前記流量制御弁によって前記チューブ内の前記気体の流量を減少させることにより前記先行内部空間に対する前記電解液の注入速度を低下させる請求項7又は8記載の電解液注入装置。 - 前記監視部は、前記チューブに設けた液面センサによって前記内部空間のそれぞれへの前記電解液の注入速度を監視する請求項9又は10記載の電解液注入装置。
- 前記液面センサは、前記チューブに多段階に取り付けられている請求項11記載の電解液注入装置。
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JP2018162670A JP2020035690A (ja) | 2018-08-31 | 2018-08-31 | 蓄電モジュールの製造方法及び電解液注入装置 |
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- 2018-08-31 JP JP2018162670A patent/JP2020035690A/ja active Pending
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