以下、図面を参照して、本発明に係る濾過装置の、一実施形態について説明する。
この濾過装置は、被処理水中に含まれる、砂や土等の懸濁物質や、その他の除去すべき物質などの固形分を沈殿除去し、かつ、沈殿除去した被処理水を更に濾過処理するものである。具体的には、この濾過装置は、例えば、産業用水処理分野等において、液体と固体の比重差を利用して、水や液体中の異物の分離・濃縮・回収・除去を行う固液分離装置に用いたり、下水処理分野における最初沈殿池や最終沈殿池に用いたりすることができ、利用箇所は特に限定されない。
図1に示すように、この実施形態の濾過装置10は、被処理水Wが貯留され、被処理水W中の固形分を沈殿させる沈殿槽20と、この沈殿槽20内に設置されて、前記固形分を沈殿させた被処理水Wを、上向流F1(図3参照:沈殿槽20の下方から上方に向かう流れ)により流通させて濾過する、濾過カセット50,50Aとを備えている。なお、この実施形態では、沈殿槽20内には、濾過カセットが複数個(ここでは3個)並列して設置されるようになっているが、沈殿槽20の幅方向Hの左右両側に配置される濾過カセット50,50に対して、その間に配置される濾過カセット50Aは、その構造が若干異なるものとなっている。
図2を併せて参照すると、この実施形態の沈殿槽20は、一対の外壁部21,21と、その間に平行に配置された2つの隔壁部23,23とを有し、両側を外壁部21及び/又は隔壁部23で囲まれた3列の水路が形成されている。各水路の上部には、所定の間隔で橋桁24が形成されている。また、沈殿槽20の下方には、底壁部25が配置されている。また、沈殿槽20の上方は開口部27をなしているが、この開口部27は、前記橋桁24によって複数の区画R1,R2,R3に分かれている。
なお、図3に示すように、沈殿槽20には、上流側から被処理水Wが流入して、下流側に向けて流動するようになっているが、この被処理水Wの流動方向を、以下の説明において「流動方向L」とする。また、沈殿槽20において、前記流動方向Lに直交する幅方向を、以下の説明において「幅方向H」とする。なお、前記流動方向L及び幅方向Hは、濾過カセット50の説明においても、同じ方向を意味するものとする。また、区画R1は、被処理水Wの流動方向Lに沿って長く延びているが、区画R2は、区画R1よりも流動方向Lに短い形状となっている。
図2に示すように、この実施形態では、一対の外壁部21,21及び2つの隔壁部23が、被処理水Wの流動方向Lに沿って平行に配置され、それらの間に3列の水路が形成されている。各水路には、橋桁24によって区画され、比較的長い2つの区画R1,R1と、比較的短い1つの区画R2と、末端の区画R3が、前記流動方向Lに沿って配置されている。
また、図3及び図6に示すように、各列の末端の区画R3には、後述する空洗管90(図8(a)参照)による空洗後の処理水を、図示しない洗浄排水槽へと送るための排出装置95が設けられている。更に図6に示すように、沈殿槽20の後述する排水路Dの下流側には、同排水路Dの下流開口を開閉させるための、ゲートGが開閉可能に設けられている。そして、ゲートGを開いた状態では、被処理水Wを、後述する排水路Dの下流開口から、沈殿槽20の更に下流側へと流動させることができ(矢印F4参照)、一方、ゲートGを閉じた状態では、空洗管90による空洗後の処理水を、沈殿槽20の下流側へと排出されることを抑制して、上記区画R3へと送ることが可能となっている(矢印F5参照)。
そして、図1、図4、及び図5に示すように、各水路を形成する両側壁部、ここでは、外壁部21及びそれに隣接する隔壁部23の間、又は、互いに隣接する隔壁部23,23の間には、少なくとも一対の受け桁29,29が架設されるようになっている。
この実施形態では、各区画R1,R2の、被処理水Wの流動方向Lの上流側及び下流側であって、外壁部21の内面及び隔壁部23の内面の対向する箇所、又は、隔壁部23,23の内面の対向する箇所に、それぞれブラケット31が固定されている。すなわち、各区画R1,R2内の壁部内面に、4個のブラケット31がそれぞれ固定されている。
また、図15や図16に示すように、各ブラケット31上には、油圧等によって伸縮可能とされたロッド33aを有する、ジャッキ装置33が設置されている。そして、沈殿槽20の幅方向Hに整合して配置された左右一対のブラケット31,31の、ジャッキ装置33,33のロッド33a,33a上に、断面略H字状(図7参照)をなした受け桁29の長手方向両端部が配置されて、同受け桁29が架設されている。すなわち、各区画R1,R2には、被処理水Wの流動方向Lに直交するように、その上流側及び下流側に、一対の受け桁29,29がそれぞれ架設されている。
なお、各受け桁29は、ジャッキ装置33を介して架設されているので、図15や図16に示すように昇降可能となっている。すなわち、この実施形態ではジャッキ装置33が、本発明における「昇降手段」をなしている。なお、昇降手段としては、例えば、パンタグラフ構造のジャッキアップ装置としたり、或いは、ネジ軸と受け部とからなる、ボールねじ構造等としたりしてもよく、受け桁を昇降可能な構造であればよい。
また、図9に示すように、各受け桁29の上面の幅方向中央には、受け桁29の長手方向に沿って細長板状に延びる、一本のレール35が設置されている。なお、この実施形態のレール35は、細長板状に延びる一本の突条をなしているが、例えば、互いに平行な一対の突条からなるレール等としたり、或いは、凹溝状に延びる形状としたりしてもよく、後述する濾過カセット側に設けた車輪を回転可能に支持可能な形状や構造であればよい。
また、図1、図2、及び図4に示すように、沈殿槽20の開口部27であって、一対の受け桁29,29よりも上方には、一対の受け桁29,29に直交する、一対の梁37,37が配置されている。この実施形態では、沈殿槽20の各区画R1,R2における開口部27の上方に、前記一対の受け桁29,29に直交して、一対の梁37,37が配置されている。また、一対の梁37,37の間隔は、濾過カセット50の幅(流動方向Lに直交する幅)よりも広くなっており、一対の梁37,37の間を濾過カセット50が通過可能となっている(図1及び図12(b)参照)。
なお、図1に示すように、外壁部21と梁37との間の空隙、及び、隔壁部23と梁37との間の空隙は、長板状をなした蓋板39によって閉塞されるようになっている。
更に、図1や図4に示すように、各区画R1,R2の対向する壁部の内側、ここでは、外壁部21の内側及びそれに隣接する隔壁部23の内側、又は、互いに隣接する隔壁部23,23の内側には、濾過カセット50により濾過された被処理水Wを排水するための排水路Dを形成する、一対の排水路形成壁部41,41が被処理水Wの流動方向Lに沿って延設されている。この実施形態では、図4に示すように、各排水路形成壁部41は、各壁部21,23の内面から水平方向に突出した底部41aと、該底部41aの突出方向先端から垂設した側部41bとからなる略L字形状をなすと共に、図1に示すように、前記流動方向Lに沿って樋状をなすように延びている。また、一対の排水路形成壁部41,41は、前記受け桁29の長手方向両端部の下方に位置している。言い換えると、一対の排水路形成壁部41,41の上方に、一対の受け桁29が架設されている。
更に図4に示すように、各排水路形成壁部41の内側面、すなわち、各排水路形成壁部41を構成する側部41bの内側面には、濾過カセット50の側部を支持するための、第1ウイング部材43が設けられている。この第1ウイング部材43は、取付部43aと、これに直角な受け部43bと、取付部43a及び受け部43bの間に取付けられた略三角板状の補強板43cとからなる略L字アングル状をなすと共に、排水路形成壁部41の長手方向に沿って延びた形状となっている。そして、この第1ウイング部材43は、その受け部43bを水平向きにして、排水路形成壁部41の側部41bの上端にほぼ整合する位置となるように、取付部43aを介して排水路形成壁部41の側部41bに取付けられている(図4参照)。
なお、以上説明した沈殿槽20の構造・形状はあくまでも一例であり、限定されるものではない。
次に、濾過カセット50,50Aについて説明する。この実施形態においては、沈殿槽20の各区画R1,R2内において、複数個(ここでは3個)並列して設置されているが、各区画R1,R2の幅方向Hに設置されるものが、濾過カセット50,50であり、その間に配置されるものが、濾過カセット50Aである。
そして、図1、図7、及び図8(a)に示すように、この濾過カセット50,50Aは、筐体51と、この筐体51内に配置された濾過材53と、筐体51に取付けられて、該筐体51を吊り上げ支持するハンガー55とを備えている。また、濾過カセット50,50Aにおいては、ハンガー55が筐体51に取付けられていると共に、筐体51内に濾過材53が配置されているため、筐体51と濾過材53とハンガー55とが、いわば一体化した構造となっている。
前記筐体51は、筐体51の骨格を形成する筐体フレーム60を有している。この実施形態の筐体フレーム60は、垂直方向に延びる複数の縦フレーム60aと、水平方向に延びる複数の横フレーム60bとを組み合わせてなり、沈殿槽20内に設置した状態で、被処理水Wの流動方向Lに長く延びる略長方形の箱状をなしている。更に、筐体フレーム60の幅(前記流動方向Lに直交する幅方向Hの長さ)は、前記一対の梁37,37の間を通過可能な大きさで形成されている。
なお、沈殿槽20の区画R2内に設置される濾過カセット50の筐体フレーム60は、区画R1内に設置される濾過カセット50の筐体フレーム60よりも、短い長さで形成されているが、その他の構造や形状は同一であるので、その説明は省略する。
また、筐体フレーム60は、その上方及び下方に、細長の上方開口部及び下方開口部が設けられていると共に、側方にも複数の側方開口部が設けられている。更に、筐体フレーム60の複数の側方開口部は、側壁61によって閉塞されて、筐体フレーム60の側面が側壁61によって囲まれており、筐体フレーム側面からの、被処理水Wや濾過材53の排出が規制されている。
また、筐体フレーム60の上方開口部及び下方開口部には、被処理水Wの通過は可能であるが、濾過材53の通過は阻止する、上方孔空き板63及び下方孔空き板65が配置されている。そして、筐体51には、これらの孔空き板63,65と、側壁61とで囲まれることで、図8(a)に示すように、内部空間66が画成されるようになっている。なお、この内部空間66は、筐体フレーム60の縦フレーム60aで分割されているわけではなく、筐体51の長手方向一端から他端に至るまで連通している。
また、この実施形態における上方孔空き板63及び下方孔空き板65は、略矩形板状をなすと共に、その上方又は下方から補強用のリブ63a,65aが複数立設された形状となっている。更に図8(a)に示すように、各上方孔空き板63及び下方孔空き板65には、その板厚方向に貫通した複数の通孔63b,65bがそれぞれ形成されている。また、各通孔63b,65bは、被処理水Wの通過は許容するが、濾過材53の通過を阻止可能な内径で形成されている。そして、図5や図7に示すように、各孔空き板63,65は、筐体フレーム60の長手方向に沿って、その上方開口部又は下方開口部に複数枚配置されている。
図10に示すように、この実施形態における濾過材53は、例えば、ポリウレタンや、ポリエチレン、発泡スチロール、スポンジ等からなる略円筒状をなしていると共に、その外面や内面に無数の凹凸53aを設けた形状となっている。また、濾過材53としては、水に浮く比重を有する材質や、水に浮く形状・構造であることが好ましい。このような濾過材53が筐体51内に複数個充填されることで、図8(a)に示すように、筐体51内であって、後述する上方孔空き板63及び下方孔空き板65の間に、濾過層57が形成されるようになっている。この濾過層57は、複数の濾過材53が充填されることで、濾過材53どうしの間に、3次元的な細かい隙間が形成されるようになっており(図8(a)参照)、この隙間によって、沈殿槽20内に貯留された被処理水Wの、沈殿により除去できない固形物を捕捉して、被処理水Wを濾過できるようになっている。
なお、沈殿槽20に設置された濾過カセット50,50Aは、上向流F1によって、下方孔孔空き板65の通孔65bから、被処理水Wが内部空間66(図8(a)参照)に流入して、濾過層57を通過して濾過処理されるのであるが、その際の上向流F1によって濾過材53が押し上げられて浮上するため、濾過層57は、内部空間66の上方寄りに偏位して配置される(図8(a)参照)。この際の内部空間66の容積は、内部空間66に配置された濾過材53の全体の容積よりも、30%以上大きくなるように設けられていることが好ましい。すなわち、図8(b)に示すように、濾過カセットの内部空間66の全体の容積を「S1」とし、内部空間66内に配置された濾過材53の全体の容積を「S2」としたとき、S1は、S2よりも30%以上大きいことが好ましい(言い換えると、S2はS1の70%以下であることが好ましい)。
一方、図7に示すように、前記ハンガー55は、筐体フレーム60の上端から延びる複数の延出フレーム67と、複数の延出フレーム67の上端に固定された、枠状フレーム69とを有している。この実施形態の場合、筐体フレーム60の幅方向Hに隣接配置された左右一対の縦フレーム60a,60aの上端から、延出フレーム67,67が上方に向けてそれぞれ延出しており、また、延出フレーム67,67の上端どうしは、連結部68によって連結されて補強が図られている。
また、枠状フレーム69は、断面略コ字状をなすと共に、筐体51を構成する筐体フレーム60の長手方向(被処理水Wの流動方向L)に延びる、一対の吊り下げアーム70,70を有している。各吊り下げアーム70は、延出フレーム67の上端部外側面に連結されている。また、各吊り下げアーム70には、筐体フレーム60の長手方向の両端部から、水平方向外方に向けて所定長さで突出する、突出部分70a,70aを有している。そして、一対の吊り下げアーム70,70の、隣接する突出部分70a,70aどうしが、吊り下げアーム70の延出方向に対して直交配置された、支持アーム71の両端部に連結されており、その結果、枠状フレーム69は略四角枠状をなしている。
上記構造をなしたハンガー55は、沈殿槽20に設けた一対の受け桁29,29に支持される、一対の支持部が設けられている。この実施形態では、図7に示すように、各支持アーム71には、その長手方向の所定箇所に、一対のブラケット73,73が設けられており、各ブラケット73には車輪75が回転可能に取付けられている。そして、図9に示すように、この車輪75は、前記受け桁29の上面に設置されたレール35上に回転可能に支持されるようになっており、その結果、濾過カセット50がレール35に沿って移動可能となる。すなわち、濾過カセット50は、沈殿槽20の幅方向Hに沿って移動可能となっている。なお、この実施形態における車輪75は、沈殿槽20側の受け桁29に設けた一本のレール35を跨るような一対のものからなるが、車輪としては、例えば、回転軸方向に所定長さで延びる1個のものであってもよく(この場合、レールは凹溝状であることが好ましい)、沈殿槽20側の受け桁29に設けたレール35上を回転可能な構造であればよい。
一方、沈殿槽20の各区画R1,R2内において、その幅方向Hの中央に配置される濾過カセット50Aは、図1に示すように、濾過カセット50のような車輪75が取付けられていない構造となっている。その代わりに、濾過カセット50Aの支持アーム71の外側面から、支持突部76が突設されており、この支持突部76が、受け桁29上に支持されるようになっている(図4参照)。
なお、上記濾過カセット50,50Aにおける、ハンガー55を構成する吊り下げアーム70の突出部分70a及び支持アーム71が、一対の受け桁29,29に支持される、本発明における「支持部」をなしている。
また、図7に示すように、一対の吊り下げアーム70には、ワイヤー挿通孔72aを有する吊り下げ片72が複数固設されている。そのため、図1に示すように、左右一対の吊り下げ片72,72のワイヤー挿通孔72a,72aにワイヤー1を挿通し、このワイヤー1を図示しないクレーンのフック3で引き掛けることで、ハンガー55を介して濾過カセット50,50Aを吊り下げ支持できるようになっている。
また、図7に示すように、筐体フレーム60の長手方向(被処理水Wの流動方向L)両端部に位置する、側壁61,61の上縁部からは、堰板77,77が上方に向けて延出している。各堰板77は、前記側壁61の上縁部から、ハンガー55を構成する一対の延出フレーム67,67の所定高さに至る高さで延びており、側壁61の上縁部及び一対の延出フレーム67,67の間の空隙を閉塞するものとなっている。これらの堰板77,77は、上向流F1(図3,図8(a)参照)によって濾過材53を通過して、濾過カセット50,50Aの上方開口部の、被処理水Wの流動方向L側の両端部から流出しようとする、被処理水Wを堰き止めるものである。
更に図7に示すように、筐体フレーム60の長手方向(被処理水Wの流動方向L)に沿った両側部には、前記堰板77が配置されておらず、被処理水Wを排出可能とする排出口79,79が設けられている。その結果、区画R1,R2の幅方向Hの両側に配置された一対の濾過カセット50,50の各排出口79から排出された被処理水Wは、図6の矢印F2に示すように、沈殿槽20の排水路Dへと流れると共に、更に図6の矢印F4に示すように、同排水路Dを下流側に向けて流動するようになっている。なお、一対の濾過カセット50,50の間に配置された濾過カセット50Aの排出口79から排出された被処理水Wは、図6の矢印F3に示すように、隣接する濾過カセット50側へ流動する。
また、図7に示すように、筐体フレーム60の長手方向に沿った両側部であって、その上端部外側面からは、第2ウイング部材80が所定長さでそれぞれ突出している。この第2ウイング部材80の一方は、沈殿槽20の区画R1,R2内に濾過カセット50を設置した際に、沈殿槽20側に設けた第1ウイング部材43の上方に対向する位置に配置可能となっている。また、濾過カセット50の第2ウイング部材80の他方は、濾過カセット50Aの第2ウイング部材80の下方に、対向して配置されるようになっている。
更に、濾過カセット50の、沈殿槽20側の第1ウイング部材43の上方に対向配置される、一方の第2ウイング部材80の下面側には、スポンジや発泡ゴム材等の多孔質弾性部材からなる、圧縮変形可能なパッキン85が取付けられている。このパッキン85は弾性部材からなることが望ましい。なお、パッキン85は、図4に示すように、沈殿槽20の排水路形成壁部41側に設けた、第1ウイング部材43の受け部43bに予め取付けておいてもよく、更に、第1ウイング部材及び第2ウイング部材の両方に予め取付けられていてもよい。
そして、沈殿槽20の各区画R1,R2の幅方向Hの両側に設置された濾過カセット50の、一方の第2ウイング部材80と、沈殿槽20側に設けた第1ウイング部材43との間に、図4に示すようにパッキン85が配置されており、同パッキン85が、濾過カセット50の自重によって押し潰されることで、第1ウイング部材43と第2ウイング部材80との隙間がシールされるようになっている。その結果、排水路形成壁部41と濾過カセット50との隙間が、パッキン85を介してシールされて、濾過カセット50の一側方の排出口79から排出される被処理水Wの漏れを防いで、沈殿槽20の排水路D側へ流動可能となっている。
また、沈殿槽20の各区画R1,R2内において、一対の濾過カセット50,50の間に配置された濾過カセット50Aの、その長手方向両側部から突出する一対の第2ウイング部材80,80は、図11(b)に示すように、一対の濾過カセット50,50の、第1ウイング部材43とは反対側の、他方の第2ウイング部材80,80の上方に載置される。
なお、濾過カセット50,50Aの、隣接する第2ウイング部材80,80の間には、被処理水Wの流動方向Lの上流側及び下流側に隙間ができるが、これらの隙間は閉塞板88によって閉塞されるようになっている。
これについて説明すると、図11(a)に示すように、濾過カセット50,50Aの、隣接する第2ウイング部材80,80の、長手方向両端部には、閉塞板支持部87がそれぞれ取付けられている。そして、これらの閉塞板支持部87,87の間に、閉塞板88とその内面側に位置する板状のパッキン85とが配置されると共に、一対の閉塞板支持部87,87に対して閉塞板88及びパッキン85を、ボルト89aやナット89bでネジ止め固定することによって、閉塞板支持部87,87の周縁部と、閉塞板88の幅方向両側部とによって、パッキン85が挟持されて圧縮変形する(図11(a)参照)。それによって、パッキン85を介して、濾過カセット50,50Aの第2ウイング部材80,80の、被処理水Wの流動方向Lの上流側及び下流側の隙間が閉塞されて、隣接する濾過カセット50,50Aどうしの隙間がシールされるようになっている。その結果、図4や図6の矢印F3に示すように、濾過カセット50Aの両側の排出口79,79から排出される被処理水Wを、その漏れを防いで、濾過カセット50Aの左右両側に位置する濾過カセット50,50側へと流動させることが可能となっている。
また、図5、図7、及び図8(a)に示すように、濾過カセット50の筐体51の内部には、濾過材53に下方から空気を吹き付けて、濾過材53の目詰まりを抑制するための、空洗管90が挿入配置されている。この実施形態では、図5に示すように、濾過カセット50の長手方向一端部(下流側の端部)の一方の角部から、空洗管90が挿入配置されている。図8(a)に示すように、この空洗管90は、水平に延出する水平パイプ91と、該水平パイプ91に対して垂設した垂直パイプ92とからなり、略L字状に屈曲した形状をなしている。また、水平パイプ91は、濾過カセット50,50Aの、長手方向全体についてカバーするように延びており、その範囲に位置する濾過材53を空洗可能となっている。そして、空洗管90の水平パイプ91が、筐体51の内部空間66の底部側であって、濾過層57の下方に位置するように、かつ、垂直パイプ92の上端が、筐体51の上方開口部から所定長さ突出するように、筐体51内に挿入配置されている。また、空洗管90の水平パイプ91には、図示しない空気吹き出し孔が複数形成されている。更に、垂直パイプ92の上端には、ホース等を介して、空気を供給するブロワー等が接続されており、水平パイプ91の空気吹き出し孔から、空気を吹き出し可能となっている。
なお、濾過カセットの長手方向両端部の角部の対角線上に、一対の空洗管90,90を挿入配置し、一方の空洗管90によって、濾過カセット50,50Aの幅方向半分の範囲を、長手方向全体についてカバーして、その範囲に位置する濾過材53を空洗可能とし、他方の空洗管90によって、濾過カセット50,50Aの幅方向の残り半分を、長手方向全体についてカバーして、その範囲に位置する濾過材53を空洗可能としてもよい。
以上説明した濾過カセット50,50Aは、例えば、SS400等の一般構造用圧延鋼材や、SUS304等のステンレス鋼などの、金属材料で形成することができる。また、以上説明した濾過カセット50,50Aの構造・形状はあくまでも一例であり、限定されるものではない。
次に、本発明の濾過装置10の作用効果について、濾過装置10による沈殿槽20内への濾過カセット50,50Aの設置工程と併せて説明する。
まず、図12(a)に示すように、沈殿槽20の各区画R1,R2の対向する壁部に、一対の受け桁29,29を架設する。ここでは、一対の排水路形成壁部41,41の上方であって、外壁部21の内面及び隔壁部23の内面の対向箇所に、ブラケット31,31をそれぞれ固定すると共に、これらの一対のブラケット31,31上に、ジャッキ装置33,33を設置し、更にこれらのジャッキ装置33,33のロッド33a,33a上に、受け桁29の長手方向両端部を配置する。これを各区画R1,R2の上流側及び下流側について行って、被処理水Wの流動方向Lに直交するように、一対の受け桁29,29を架設する。
また、図12(a)に示すように、ジャッキ装置33のロッド33aを伸ばして、ブラケット31に対して、受け桁29が離反した位置となるように上昇させておく。更に図12(b)に示すように、各排水路形成壁部41の内側面に、取付部43a(図4参照)を介して第1ウイング部材43をそれぞれ取付ける。
次いで、ハンガー55のワイヤー挿通孔72a(図7参照)に挿通されたワイヤー1を、図示しないクレーンのフック3で引き掛けて、ハンガー55を介して濾過カセット50を吊り上げる。そして、図12(b)に示すように、沈殿槽20の上方の開口部27に設けた一対の梁37,37の間から、濾過カセット50を下降させていき、ハンガー55の一対の支持部、ここでは支持アーム71に設けた車輪75を、一対の受け桁29,29上に設けたレール35,35上に支持させる。
その後、図13(a)に示すように、濾過カセット50を図示しない押し込み手段等によって、沈殿槽20の各区画R1,R2の、幅方向Hの一側に向けて押し込む。ここでは、外壁部21側に向けて濾過カセット50を押し込むことで、レール35上を車輪75が回転して、濾過カセット50をレール35に沿って移動させる。そして、図13(a)に示すように、濾過カセット50の一方の第2ウイング部材80が、沈殿槽20側の第1ウイング部材43の上方に対向する位置となるまで、濾過カセット50を外壁部21側に寄せることで、外壁部21側の排水路形成壁部41の側部41bに、濾過カセット50の筐体51の幅方向一側部が隣接した位置に設置される。
次いで、図13(b)に示すように、もう一個の濾過カセット50を、上述したのと同様に、ハンガー55を介して濾過カセット50を吊り上げた後、一対の梁37,37の間から濾過カセット50を降ろして、支持アーム71に設けた車輪75を、一対の受け桁29,29のレール35,35上に支持させる。その後、濾過カセット50を、沈殿槽20の各区画R1,R2の、幅方向Hの他側に向けて、ここでは、隔壁部23側に向けて押し込むことで、濾過カセット50をレール35に沿って移動させる。そして、図13(b)に示すように、一方の第2ウイング部材80が、沈殿槽20側の第1ウイング部材43の上方に対向する位置となるまで、もう一個の濾過カセット50を隔壁部23側に寄せることで、隔壁部23側の排水路形成壁部41の側部41bに、濾過カセット50の筐体51の幅方向一側部が隣接した位置に設置される。
更に、ハンガー55を介して濾過カセット50Aを吊り上げた後、一対の梁37,37の間から濾過カセット50Aを降ろして、図14に示すように、支持アーム71に設けた支持突部76を、一対の受け桁29,29上に支持させる。それにより、濾過カセット50Aの一対の第2ウイング部材80,80を、各区画R1,R2内の幅方向Hの両側に寄せて配置された一対の濾過カセット50,50の、他方の第2ウイング部材80,80の上方に載置する。
その後、図11(a)に示すように、濾過カセット50の第2ウイング部材80に取付けた閉塞板支持部87と、濾過カセット50Aの第2ウイング部材80に取付けた閉塞板支持部87との間に、閉塞板88及び板状のパッキン85を配置して、閉塞板支持部87に対して閉塞板88及びパッキン85をネジ止め固定する。これによって、図11(b)や図15に示すように、閉塞板支持部87,87の周縁部と、閉塞板88の幅方向両側部とによって、パッキン85が挟持されて圧縮変形して、同パッキン85を介して、濾過カセット50,50Aの第2ウイング部材80,80の隙間が閉塞されて、隣接する濾過カセット50,50Aどうしの隙間がシールされる。
上記状態から、図16に示すように、ジャッキ装置33,33のロッド33a,33aを縮ませて、ブラケット31に対して、受け桁29が近接した位置となるように下降させる。すると、濾過カセット50,50の一方の第1ウイング部材43と、沈殿槽20側の第2ウイング部材80,80との間に配置されたパッキン85,85が、濾過カセット50の自重によって押し潰されて、第1ウイング部材43と第2ウイング部材80との隙間がシールされて、排水路形成壁部41と濾過カセット50との隙間が、パッキン85を介してシールされる。以上のようにして、沈殿槽20の各区画R1,R2内に、複数個の濾過カセット50,50Aを並列して設置することができる。
上記のように、この濾過装置10においては、濾過カセット50,50Aを、ハンガー55を介してクレーン等によって吊り上げた後、沈殿槽20の所定位置に配置し、濾過カセット50,50Aを降ろして、ハンガー55の一対の支持部(支持アーム71)を、沈殿槽20の一対の受け桁29,29に支持させることで、濾過カセット50,50Aを設置することができる。
また、この実施形態においては、上述したように、ジャッキ装置33等の昇降手段を介して、一対の受け桁29,29を上昇させた状態で、濾過カセット50の車輪75をレール35上に支持させた後、濾過カセット50をレール35に沿って移動させて、第1ウイング部材43の上方に、濾過カセット50の第2ウイング部材80を配置し、その状態で図16に示すように昇降手段によって、一対の受け桁29,29を下降させることにより、第1ウイング部材43と第2ウイング部材80との間に配置されたパッキン85を押圧してシールすることができる。したがって、濾過カセット50を、レール35及び車輪75を介して移動させる際に、パッキン85が第1ウイング部材43や第2ウイング部材80に衝突して損傷することを防ぐことができる。
次に、被処理水Wの処理工程について説明する。すなわち、図3に示すように、沈殿槽20内に、上流側から被処理水Wが流入して貯留されると、被処理水W中の固形分が沈殿して沈殿槽20の底壁部25に溜る。なお、沈殿槽20の底壁部25に貯まった固形分は、図示しない排出手段によって、沈殿槽20内から排出可能となっている。
そして、固形分を沈殿させた被処理水Wは、上向流F1によって、沈殿槽20の各区画R1,R2に設置された濾過カセット50,50Aの、下方孔孔空き板65の通孔65bから、各濾過カセット50,50Aの内部空間66に流入する。その後、被処理水Wは、複数の濾過材53からなる濾過層57を通過することで濾過される。濾過された被処理水Wは、各濾過カセット50,50Aの排出口79から排出される。このとき、各区画R1,R2の幅方向Hの両側に寄って配置された一対の濾過カセット50,50からは、図6の矢印F2に示すように、その排出口79を通して、沈殿槽20の排水路D側へと流れる。また、一対の濾過カセット50,50の間に配置された濾過カセット50Aの排出口79,79から、図6の矢印F3に示すように、隣接する濾過カセット50側へと流れる。そして、排水路Dへと流れた被処理水Wは、図4の矢印F4に示すように下流側へと流れるが、このとき、排水路Dの下流側のゲートGが開いている場合は、同ゲートGを通って、沈殿槽20の更に下流側へ流動するようになっている。
このとき、この濾過装置10においては、図4や図11(a)等に示すように、沈殿槽20の内部において、複数個並列して設置された、隣接する濾過カセット50,50Aどうしの隙間、及び、排水路形成壁部41と濾過カセット50との隙間が、圧縮変形可能なパッキン85を介してシールされているので、上向流によって濾過処理された被処理水Wが、濾過カセット50,50Aどうしの隙間や、排水路形成壁部41と濾過カセット50との隙間から漏れることを防止して、被処理水Wを排水路D側に確実に流通させることができる。
また、隣接する濾過カセット50,50Aどうしの隙間や、排水路形成壁部41と濾過カセット50との隙間が、圧縮変形可能なパッキン85を介してシールされているので、図17に示す従来例のように、モルタル等を打設・養生させて、各隙間をシールさせる必要がなく、濾過構造の設置や撤去、或いは移設時において、濾過装置10の運転停止期間を短くすることができる。その結果、濾過カセット50,50Aどうしのシール性や、排水路形成壁部41と濾過カセット50とのシール性を確保しつつ、沈殿槽20内に濾過構造を迅速に設置することができる。
更に、この実施形態においては、沈殿槽20内の被処理水Wを上向流F1によって、下方孔空き板65の通孔65bから筐体51内に流入させて、濾過材53が配置された濾過層57を通過させて濾過し、更に上方孔空き板63の通孔65bから排出させると共に、この被処理水Wを、一対の堰板77,77によって堰き止めて、濾過カセット50,50Aの排出口79から排出させることができ、被処理水Wを濾過カセット50,50Aによって確実に濾過しつつ、濾過カセット50,50Aの排出口79から排出することができる。
また、この実施形態においては、図4や図16に示すように、排水路形成壁部41の内側面に設けた第1ウイング部材43と、濾過カセット50の一側部から突出した第2ウイング部材80との間に、パッキン85が配置されており、このパッキン85は、濾過カセット50の自重によって押し潰されて、第1ウイング部材43と第2ウイング部材80との隙間がシールされるので、パッキン85を十分に圧縮変形させることができ、第1ウイング部材43と第2ウイング部材80との隙間に対するシール性を、より高めることができる。
ところで、この濾過装置10を長期に亘って使用した場合には、濾過材53どうしの間に捕捉された固形物の量が多くなり、目詰まりが生じることがある。この目詰まりを抑制するために、空洗管90が濾過カセット50,50Aの筐体51内に挿入配置されているが、この空洗管90は次のようにして使用される。
すなわち、図6に示すように、沈殿槽20の排水路Dの下流側のゲートGを閉じた状態として、空洗管90の、垂直パイプ92の上端から、ホース等を介してブロワー等によって空気を供給する。すると、空洗管90の水平パイプ91の、複数の空気吹き出し孔から空気が噴出して、濾過材53の下方から空気が吹き付けられて、濾過材53が筐体51の内部で流動させる。それによって、濾過材53どうしの間に捕捉された固形物を除去して、その目詰まりを抑制して、被処理水Wの流入を停止することなく、濾過材53の濾過性能を維持することができる。なお、空洗管90による空洗後の、固形物を含有した処理水は、図6に示すように、区画R3へと送られて、排出装置95を介して図示しない洗浄排水槽へと移送されるようになっている。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。