JP2020031609A - 釣り餌および釣り餌の製造方法 - Google Patents

釣り餌および釣り餌の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】常温で長期間保存でき、常温での流通経路に乗せられる釣り餌および釣り餌の製造方法を提供する。【解決手段】第一の動物の構成部位の発酵した発酵構成部位又は/及び前記発酵に際して産生される発酵時液体をまぶし又は/及び浸透させた第二の動物の構成部位からなる釣り餌。第一の動物は魚類であり、前記発酵は酒盗を製造するための発酵である釣り餌。第二の動物は魚類である釣り餌。第二の動物の構成部位は、加熱されていない釣り餌。第二の動物の構成部位は少なくとも表面が着色剤で着色されている釣り餌。【選択図】図3

Description

本発明は、釣り餌に関し、特に常温かつ長期に保存可能な釣り餌および釣り餌の製造方法に関する。
従来、アジ、サバ、鰯などの海水魚の釣りや、一部の淡水魚の釣りには、対象魚の食いの良さや価格面からオキアミ類、ミミズ、ゴカイ、イソメなどの釣り餌が多用されている。オキアミ類は生き餌として流通しておらず、ゴカイ、イソメなどは生き餌として店頭販売される場合があるが、生きた状態で長期間維持するのは困難である。しかし、死んだ生餌を用いると、自己消化酵素が強いことなどから外気に触れると急速に変色(黒色化)や軟化を生じ好ましくない。そこで、漁獲されたオキアミ類等は漁獲後に急速冷凍された冷凍釣り餌の形態で流通している。釣りの使用時にはその冷凍釣り餌を釣りの開始時間に合わせて解凍して釣りに使用していた。一方、最近は流通が発達していろいろなものが通信販売されるようになっているが、冷凍状態でこれを行おうとすると配達に支払う経費が餌そのものの値段よりも高くなるという逆転現象が起きていた。
このような冷凍釣り餌では、取扱いが面倒で、使い勝手が悪かった。これを改善し、冷凍保存しなくても48時間程度保存ができ、刺し餌としてもまき餌としても機能する釣り餌が提案されている(特許文献1)。
特開2014−124151号公報
特許文献1の技術では、釣り餌を48時間程度保存するために、餌の水分調整を行って水分を少なくし、さらに塩分濃度を高くして、結果として常温保存性を高めるという目的を達成していた。
しかし、48時間程度保存できたとしてもそれ以上の常温での長期保存はできなかった。従って釣り餌を流通業者の流通倉庫に長期間保存したり、常温の流通経路に乗せることはできず、せいぜい釣りの前々日に実店舗で購入して、当日に利用する程度でしかなかった。
本発明の目的は、従来の課題を解決したものであり、常温で長期間保存でき、常温での流通経路に乗せられる釣り餌および釣り餌の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明において、以下の釣りを提供する。すなわち、第一の発明として、第一の動物の構成部位の発酵した発酵構成部位又は/及び前記発酵に際して産生される発酵時液体がまぶされ又は/及び浸透している第二の動物の構成部位からなる釣り餌(請求項1対応)。
前記構成に加え、第一の動物は魚類であり、前記発酵は酒盗を製造するための発酵である釣り餌(請求項2対応)。
前記構成に加え、第二の動物は魚類である釣り餌(請求項3対応)。
前記構成に加え、第二の動物の構成部位は、加熱されていない釣り餌(請求項4対応)。
前記構成に加え、第二の動物の構成部位は少なくとも表面が着色剤で着色されている釣り餌(請求項5対応)。
段落[0008]から[0012]のいずれか一に記載の釣り餌を前記発酵時液体とともに容器(袋も含む)に封入した釣り餌セット(請求項6対応)。
段落[0008]から[0012]のいずれか一に記載の釣り餌を用いて集魚を行う集魚方法(請求項7対応)。
段落[0008]から[0012]のいずれか一に記載の釣り餌を用いて魚を釣り上げる釣り方法(請求項8対応)。
第二の発明として、酒盗を準備する酒盗準備工程と、準備された酒盗を加熱・撹拌して酒盗の第一の動物構成部位を溶解して液状化して液状化酒盗とする加熱・撹拌工程と、加熱され液状化した液状化酒盗を冷却する冷却工程と、冷却された液状化酒盗に、切り身となった第二の動物構成部位を漬け込む漬込工程と、からなる第二の動物構成部位からなる釣り餌の製造方法(請求項9対応)。
前記構成に加え、前記漬込工程は対第二の動物構成部位重量%で12%以上19%以下の酒盗と、対第二の動物構成部位重量%で30%以上35%以下の塩を混合する酒盗塩混合工程を含む釣り餌の製造方法(請求項10対応)。
前記構成に加え、前記冷却工程の後に増粘剤又は/及びアルコールを液状化酒盗に加える増粘剤等追加工程をさらに有する釣り餌の製造方法(請求項11対応)。
前記構成に加え、前記漬込工程は、着色剤を加える着色剤追加工程を含む釣り餌の製造方法(請求項12対応)。
前記構成に加え、第二の動物構成部位は、魚類の構成部位である釣り餌の製造方法(請求項13対応)。
前記構成に加え、前記魚類の構成部位はサバフィレである釣り餌の製造方法(請求項14対応)。
前記構成に加え、漬込工程の後に漬込まれた状態で冷蔵保管をする冷蔵保管工程をさらに有する釣り餌の製造方法(請求項15対応)。
前記構成に加え、前記発酵時液体は、塩分を含有するものである釣り餌(請求項16対応)。
前記構成に加え、前記塩分の含有は発酵時液体の対全重量に対する重量%で15%以上、25%以下である釣り餌(請求項17対応)。
上述した構成によれば、常温で長期間保存でき、常温での流通経路に乗せられる釣り餌および釣り餌の製造方法を提供することができる。ここで常温とは、夏季の30度を超える温度も含み、長期とは、1か月以上の期間をいう。
実施形態の釣り餌の魚のフィレの状態図 図1の魚の切り身に浸透させる酒盗(液状体)を説明するための図 実施形態の釣り餌の使用方法を説明するための図 塩(食塩)のみの添加の実験結果を示す図 酒盗原材料の成分割合と酒盗抽出液浸透(添加)のみの実験結果を示す図 実施形態の釣り餌の製造工程図 塩(食塩29%)と酒盗抽出液とを合わせた実験結果を示す図 塩(食塩30%)と酒盗抽出液とを合わせた実験結果を示す図 塩(食塩31%)と酒盗抽出液とを合わせた実験結果を示す図 塩(食塩32%)と酒盗抽出液とを合わせた実験結果を示す図 塩(食塩33%)と酒盗抽出液とを合わせた実験結果を示す図 塩(食塩34%)と酒盗抽出液とを合わせた実験結果を示す図 塩(食塩35%)と酒盗抽出液とを合わせた実験結果を示す図 塩(食塩36%)と酒盗抽出液とを合わせた実験結果を示す図 実施例1の釣り餌の製造工程図 実施例2の他の釣り餌の製造工程図 実施例1又は2の釣り餌製造工程における漬け込み液作成と漬け込み作業の説明図 実施例1又は2の釣り餌の真空パッケージされた釣り餌を説明するための図 実施形態の釣り餌の釣果実験の説明図 実施形態の釣り餌の釣果実験結果を示す図
以下に、図を用いて本発明の実施形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる対応で実施しうる。
<実施形態1>
実施形態1は、主に請求項1、9〜17に対応する釣り餌および釣り餌の製造方法の実施形態である。
<実施形態1 概要>
実施形態では、第一の動物の構成部位の発酵した発酵構成部位又は/及び前記発酵に際して産生される発酵時液体がまぶされ又は/及び浸透している第二の動物の構成部位からなる釣り餌である。
<実施形態1 構成の説明>
「動物」とは、哺乳類のみならず、爬虫類、鳥類、両生類、魚類といった脊椎動物はもちろん、貝類、昆虫、カイメンなど、幅広い種類の生物を含むものである。
「第一の動物の構成部位」とは、発酵時液体を産生するために用いられる動物の構成部位である。魚類であれ、その他の種類の動物であれ、からなずしも全体を発酵に用いる必要はなく、発酵時液体を産生するに適している動物の部位を採用することができる。要は、腐敗でなく、いかに腐敗を防止して発酵させるか、という点から選ばれる動物の部位である。魚類であれば身の部分の他に消化器系の内臓などを利用することができる。
さらに、発酵に供するものであるので、前処理として十分に清潔に処理し、腐敗菌が入り込むことを防止できるようにしなければならない。なお、第一の動物の構成部位は主に発酵によって発酵液を産生するために用いられるものであり、動物の種類は一種類に限定されるものではない。例えば、カツオ、マグロ、サバ、イワシなど複数種類の魚類の胃や腸を同時に利用して発酵液を産生するように構成することも可能である。
「発酵」とは、生物、特に微生物等が栄養素として取り込んだ有機物を嫌気的に代謝してエネルギーを得るとともに、代謝物を産生する過程であり、微生物が発酵食品など人間等に有益な有機物を生成する過程全般を指す。発酵は、その副産物として生成される有機物によって、アルコール発酵、乳酸発酵などに分類される。さらに発酵は微生物が増殖する過程をも一般に含む。従って、発酵によって特有の代謝物が産生されるとともに、発酵に寄与した微生物が増殖する結果となる。
「発酵構成部位」とは、前記動物の発酵に寄与した部位を言う。前述のとおり、微生物によって発酵構成部位は徐々に代謝され、それと同時に発酵に寄与した微生物で満たされる結果となる。
「発酵時液体」とは、前述のとおり微生物の発酵過程によって産生される代謝物であって液体状のものを指す。必ずしも完全な液体のみをさすのでなく、液体に微小な個体状のものや、微小なゲル状のものが含まれている状態の全体を指すものであってもよい。一般には発酵によって産生される代謝物の大部分が液体状のものとなる。本明細書ではこの液体状のものを発酵時液体と称する。なお、この液体にも発酵に寄与した微生物が多く含まれる。そして、発酵に寄与した微生物の存在は腐敗菌などがそこに入り込んで生存することを防ぐという役割を果たす。
本発明では従来になかった発酵という要素を取り込み、発酵菌によって餌を満たすことによって腐敗菌の侵入や、増殖を防止し、もって長期間の常温保存を可能にしたものである。ここで、防腐剤などの化学薬品を利用しないのは、防腐剤は自然界の敏感な生物からは忌避され、例え釣り餌が長期間保存可能となっても、釣り餌として役に立たない一方、自然発酵によって長期保存を可能にした場合には自然の成り行きであるから魚に忌避されないという自然の仕組みを応用したものである。
なお、発酵時液体には、発酵の結果残された個体がある場合に、これをミキサーなどで液体とともに粉砕して個体を微粒化した処理をしたものも含む。さらに発酵時液体の性質を調整するために添加剤(Ph調整剤、増粘剤等)が添加されたもの、濃度調整を水やアルコール、お茶、コーヒー等で行ったものも発酵時液体に含まれる。
「第二の動物の構成部位」とは、釣り餌の本体となる部位である。釣り餌の本体は基本的に形があって、釣り針にひっかけられるものでなければならない。原料としては、例えば、図1(A)(B)に示すように、魚のフィレが使用され、サバフィレ、アジフィレ、サンマフィレ、イワシフィレ、コノシロフィレ、カツオフィレ、マグロフィレ(フィレが大きい場合は所定の大きさにカットする)や、カツオの皮、マグロの皮などが使用できる。魚のフィレとは、三枚おろしをした片身のことをいう。
大きな魚のフィレの場合は、所定の大きさにカットして使用しても良い。魚のフィレは、釣り餌用として使用するため、図3(C)に示すように、約5mm程度の厚さにカットしている。このフィレの厚みは、釣りで狙う対象魚の大きさに応じて変更してもよい。さらにフィレでなく、骨を含むような部材であってもよい。また、発酵時液体とのなじみを良くし、発酵時液体による香りや味が十分に素材に浸透するように、第二の動物の構成部位に多数の切り目(いわゆる隠し包丁的なもの)や多数の穴(花道の剣山のようなもので動物の部位を押し付けてつくる)が加工されていてもよい。
さらに第二の動物の構成部位は、エビ類のしっぽ、カニ類のカニ肉、貝の貝柱、貝の筋肉、その他の魚類の非腐敗性部位(主に肉質部位である)を用いてもよい。さらに、哺乳類の肉を利用することも可能である。哺乳類としては、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、鹿肉、鶉肉、ウサギ肉などである。これらも筋肉若しくは皮、清潔に清掃した消化器系臓器が利用される。昆虫としては例えば、コオロギ、バッタ、蝶などの幼虫類、蛆虫、セミの幼虫などを利用することができる。
なお、第一の動物と第二の動物とは同じ種類の動物であってもよいし、それぞれが又は一方が複数種類の動物であり一方の動物種が他方の動物種を包含する関係にあってもよい。
<実施形態1 一般的製造方法>
実施形態1の釣り餌の一般的製造方法は次のとおりである。
「ステップ1」 第一の動物の構成部位を準備する。第一の動物に関してはすでに説明したとおりである。
「ステップ2」 準備した第一の動物の構成部位を洗浄する。この場合に第一の動物の構成部位として適している物はその部位に含まれる自己酵素にて自然発酵が生じる動物の部位である。従って脳、目、皮、舌などの部位は好ましくない。好ましい部位としては胃、腸、食道、肝臓、腎臓、膵臓などである。洗浄はきれいな水を使い、ブラッシングを繰り返し、場合によってスプーン状の道具を用いて表面をしごく等の清掃作業を行う。第一の動物の構成部位は発酵が効率的に起こるように全体を細かく細分化する。細分化は0.1cmから5cm程度に細分化することが好ましい。
「ステップ3」 清浄になった第一の動物の構成部位に適量の塩(動物の構成部位の全重量に対する重量%で10%以上30%以下が好ましい)をまぶし、また場合によって発酵に影響がない殺菌性のある野菜などを細切りにしたり粉末化したものを加えて冷暗所に長期間(1か月以上12か月以内)保存する。これによって発酵が起こり、発酵時液体が産生される。なお、発酵終了時点で第一の動物の構成部位が残存している場合には、発酵時液体とともにミキシングなどして細粒化することが好ましいが、除外する処理を行ってもよい。
「ステップ4」 第二の動物の構成部位を準備する。第二の動物もすでに説明したとおりである。第二の動物の構成部位として適しているのはある程度の硬さがあって釣り針にしっかりと固定できる程度の硬さを維持できる素材である。従って動物の腎臓、肝臓、すい臓、脳、目、脂肪の塊などの部位は適していない。ある程度の厚さが要求されることから一般には筋肉部分、肉部分が好ましい。ただし、脂肪分が含まれているものでもよい。また血液成分はできる限り除去するのが好ましい。前記発酵時液体の浸透を邪魔することと、発酵時液体と反応して予定されている匂いが生じない事態を回避するためである。
「ステップ5」 準備した第二の動物の構成部位と準備した発酵時液体とを混合する。この混合の際には、塩をさらに添加することが好ましい。また混合の際には発酵時液体と塩を第二の動物の構成部位にすり込むように力を加えてしごく動作をするのが良い。
「ステップ6」 ステップ5が完了後、冷暗所にて所定期間保存する。この期間は1日から1週間程度である。この期間は第二の動物の構成部位のブロックの大きさ、特に厚さによって最適化される。およそ厚さが0.3cmから1cmにつき、1日程度を予定する。ただし、厚さは最大でも4cm以内に抑えることが好ましい。これによって第二の動物の構成部位に発酵時液体が浸透し、釣り餌が完成する。
「ステップ7」完成した釣り餌は発酵時液体とともにビニール袋等に清潔な環境で密封する。その後流通経路に乗せる。
<実施形態1 発酵時液体の 塩分含有(請求項16、請求項17対応)>
前記発酵時液体には、塩分が含有されている。この理由は、第一の動物構成部位を発酵させるに際して塩分(塩)を含有すると、第一動物構成部位の水分活性が下げられ、細菌の繁殖を抑え、腐敗を抑えるからである。前記塩分の含有は発酵時液体の対全重量に対する重量%で15%以上、25%以下が好ましい。食塩の量がこの範囲よりも少なすぎたり多すぎたりすると、自然発酵が適切に行われず、6か月から1年程度で発酵時液体(酒盗)を得ることはできない。
<実験>
本実施形態の釣り餌は、長期間に常温保存可能で、取扱い容易で、集魚効果(集魚剤)を備えたものを実現したものであり、常温で保存できるかを示す「常温保存性」、釣り人の手指に付着して汚れの原因になりやすいかを示す「付着性」、海中でひらひらと動き、釣りの対象魚の喰いつきやすさを示す「柔軟性」、第二の動物の構成部位の白色化を示す「変色」、釣りの対象魚の集魚性に影響を与える第二の動物の構成部位の「匂い」という評価項目(観点)から釣り餌の評価をサバフィレを用いて行った。
「常温保存性」とは、常温(例えば、気温25℃から35℃程度)状態での保存できる性質のことをいい、釣り餌の変質(主に腐敗性の観点)の度合いで判断する。
「付着性」とは、実験者の手指への付着の度合いをいう。後記する酒盗抽出液(図2参照)を用いる場合は、付着性が高まると、釣り餌として使用したときに手指が汚れやすくなることと、それに伴い手指に匂いがつきやすいことにより使用感が悪くなる。釣り餌が手にベタベタつくと、使用感が悪いので、取扱い容易性の観点から評価項目としている。
「柔軟性」とは、釣り餌の固い柔らかいなどの柔軟性のことをいう。釣り餌として使用したとき、柔軟性が高いと釣り餌が海中でひらひらと動き、釣りの対象魚の喰いつき度合いが良くなる。
「変色」とは、釣り餌の魚フィレの身が白色化する度合いのことをいう。魚フィレの身が白化すると釣り餌として使用したときに食いが悪くなることが知られている。
「匂い」とは、人間(試験者)の嗅覚で感じる度合いをいう。釣り餌の匂いにより魚の集魚効果が変わるので、評価項目としている。
<食塩添加実験1>
<食塩添加の目的>
なお、詳細は製造方法の説明にて行うが、釣り餌には適度の塩分が含まれていることが好ましい。この塩分は、発酵時液体に混入して結果として釣り餌に含まれる場合と、発酵時液体とは別に塩分を加えて結果として釣り餌に塩分が含まれる場合とがある。いずれにしても、食塩を使用することで水分活性を下げ、細菌の繁殖を抑え、腐敗を抑える。
<実験1内容>
第二の動物の構成部位としてサバフィレ(魚フィレ)を用いて食塩添加について実験を行った。
後述するような製造方法で、サバフィレ5kgに、サバフィレ総重量の0%〜70%に相当する食塩をサバフィレ表面に添加・塗布し、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に放置した状態で72時間放置した。その後、サバフィレの状態の変化を観察した。
<観察条件>
身崩れ・変色・異臭でサバフィレの変質、常温保存性を判断した。
柔軟性について、身の柔らかさで判断をした。この柔軟性は、魚の喰いに影響する。
<評価項目>
常温保存性について、
×:全体的に変質、△:部分的に変質、〇:ほとんど変質なし、◎:変質なし
柔軟性について
×:固い、△:やや硬い、〇:僅かに固い、◎:柔らかい
<評価結果>
図4に示すように、塩分10%では常温保存性は向上するものの、部分的な変質が見られた。
塩分20%以上では変質は見られなかった。
柔軟性は塩分60%以上で低下していった。
以上の結果から、第二の動物構成部位(サバフィレ)の重量に対して食塩を重量%で20%〜50%使用したとき、サバフィレの変質を防止することができる。
柔軟性については、柔軟性が高いほど餌として使用したときに水中でのひらひらとした動きが良くなるため、魚の喰いがよくなる。塩度50%以上では柔軟性が低下し60%では固さを感じるようになり、常温保存性と柔軟性を両立する範囲は塩分20%〜50%の範囲である。
<発酵時液体浸透(添加)実験2>
<発酵時液体:酒盗抽出液を第二の動物構成部位に浸透(添加)させる目的>
発酵時液体として酒盗抽出液を使用することで、第二の動物構成部位としての魚フィレ身の変色を抑える。
酒盗抽出液に含まれる塩分及び微生物により水分活性を下げ、腐敗を抑える。
酒盗抽出液の匂いを魚フィレに付加し集魚力を高める。
<実験2内容>
第二の動物構成部位としてサバフィレ(魚フィレ)を用いて酒盗抽出液について実験を行った。
後述するような製造方法で、サバフィレ5kgに、酒盗抽出液をサバフィレ5kgの総重量に対する割合で、0〜80%の範囲で添加・塗布し、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に放置した状態で72時間放置し、サバフィレの状態の変化を観察した。
ここで、酒盗抽出液の発酵時液体を産生するための投入原材料の成分割合は、図5(A)に示すように、カツオの胃:80%、食塩20%にて生成される酒盗抽出液に、アルコール1%、増粘剤0.50%を加えて使用した。なお、酒盗の生成には、カツオなどの肉(胃を含む)の投入原材料全重量に対する割合が75%以上で85%以下に、食塩の投入原材料全重量に対する割合が15%以上で25%以下が好ましい。食塩の量がこの範囲よりも少なすぎたり多すぎたりすると、自然発酵が適切に行われず、6か月から1年程度で酒盗(発酵時液体)を得ることはできない。
<観察条件>
身崩れ・変色・異臭でサバフィレの変質、常温保存性を判断した。また、変色について、サバフィレからドリップが出ることによる身の白化により判断した。
匂いについては酒盗の匂いを感じることができるかで判断した。
付着性については、手指への酒盗抽出液の付着で判断した。付着性が高まると、餌として使用したときに手指が汚れやすくなりことと、それに伴い手指に匂いが付きやすくなることにより使用感が悪くなる。
<評価項目>
常温保存性について、
×:全体的に変質、△:部分的に変質、〇:ほとんど変質なし、◎:変質なし
変色について、
×:白く変色、△:白っぽく変色、〇:部分的に白く変色、◎:変色なし
匂いについて(集魚に有効と考えられる匂い)
×:ほとんど感じられない、△:僅かに感じる、〇:やや感じる、◎:強く感じる
付着性について
×:かなり付着、△:やや付着、〇、僅かに付着、◎:ほとんど付着しない
<評価結果>
図5(B)に示すように、10%では全体的に変質が見られたが、変色は部分的なものに抑えられた。
20%では全体的に変質が見られたが、変色は抑えられた。
30%以上では常温保存性が向上し、部分的な変質が見られ、変色は抑えられた。
匂いについては20%以上で強く感じられた。
付着性については、酒盗抽出液の割合が上がるにつれ、高くなった。
以上の結果から、酒盗抽出液を添加することで変色を抑え、匂いを付加することができる。変色について、サバなどの赤身魚は、解凍時や冷蔵保管時、また常温での放置をしたときに身からドリップが出て、身が退色し白色に近いものになってしまうが、酒盗抽出液を対フィレ(第二動物構成部位)重量%で20%以上使用することで、酒盗抽出液の茶色い色が身に移り(まぶし又は/及び浸透する)、白く変色することを防止し、生のままに近い色を保つことができる。
<食塩+発酵時液体(酒盗抽出液)添加実験3>
第二の動物の構成部位としてサバフィレ(魚フィレ)を用いて食塩と酒盗抽出液とを合わせて実験を行った。実験結果を図7から図14に示す。
<実験3内容>
後述するような製造方法で、サバフィレ5kgに、対サバフィレ総重量の29%〜36%の塩(食塩)と、同じく9%〜21%の酒盗抽出液を添加・撹拌・塗り込みをし、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に放置した状態で72時間放置し、サバフィレの状態の変化を観察した。
<観察条件>
身崩れ・変色・異臭でサバフィレの変質、常温保存性を判断した。また、変色について、サバフィレからドリップが出ることによる身の白化により判断した。匂いについては酒盗の匂いを感じることができるかで判断した。付着性について、手指への酒盗抽出液の付着で判断した。柔軟性について、身の柔らかさで判断をした。
<評価項目>
常温保存性について、
×:全体的に変質、△:部分的に変質、〇:ほとんど変質なし、◎:変質なし
変色について、
×:白く変色、△:白っぽく変色、〇:部分的に白く変色、◎:変色なし
匂いについて
×:ほとんど感じられない、△:僅かに感じる、〇:やや感じる、◎:強く感じる
柔軟性について
×:固い、△:やや硬い、〇:僅かに固い、◎:柔らかい
付着性について
×:かなり付着、△:やや付着、〇、僅かに付着、◎:ほとんど付着しない
<評価結果>
図7に示すように、対サバフィレ総重量の29%の食塩に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したところ、常温保存性について、すべての濃度で変質は見られなかった。変色については対サバフィレ総重量の酒盗抽出液9%〜12%で部分的に変色したが、対サバフィレ総重量の酒盗抽出液13%〜21%では変色は抑えられた。匂いについて、対サバフィレ総重量の9%酒盗抽出液で僅かに感じるほどであり対サバフィレ総重量の酒盗抽出液10%〜12%ではやや感じるほどであったが、対サバフィレ総重量の酒盗抽出液13%〜21%では強く感じた。柔軟性について、いずれの濃度でも柔らかかった。付着性について、対サバフィレ総重量の9%〜17%酒盗抽出液では僅かに付着する程度で、対サバフィレ総重量の18%,19%酒盗抽出液ではやや付着、対サバフィレ総重量の20%,21%酒盗抽出液では手指にかなり付着し使用感が悪化した。ここで、図7の実験は、上述した実験3内容と同じ条件で行ったものである。
図8に示すように、対サバフィレ総重量の30%食塩に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したところ、常温保存性・変色・匂い・柔軟性については、対サバフィレ総重量の食塩29%に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したときと大きな差は見られなかった。付着性について、対サバフィレ総重量の9%〜19%酒盗抽出液では僅かに付着する程度であったが、対サバフィレ総重量の20%酒盗抽出液ではやや付着、対サバフィレ総重量の21%酒盗抽出液ではかなり付着となり使用感が悪化した。ここで、図8の実験は、上述した実験3内容と同じ条件で行ったものである。
図9に示すように、対サバフィレ総重量の31%食塩に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したところ、常温保存性・変色・匂い・柔軟性については、対サバフィレ総重量の30%食塩に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したときと大きな差は見られなかった。付着性について、対サバフィレ総重量の9%〜20%酒盗抽出液で僅かに付着する程度で、対サバフィレ総重量の21%酒盗抽出液ではやや付着となった。ここで、図9の実験は、上述した実験3内容と同じ条件で行ったものである。
図10に示すように、対サバフィレ総重量の32%食塩に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したところ、常温保存性・変色・匂い・柔軟性については、対サバフィレ総重量の31%食塩に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したときと大きな差は見られなかった。付着性について対サバフィレ総重量の9%〜13%酒盗抽出液でほとんど手指に付着せず、対サバフィレ総重量の14%〜20%酒盗抽出液では僅かに付着、対サバフィレ総重量の21%酒盗抽出液ではやや付着となった。ここで、図10の実験は、上述した実験3内容と同じ条件で行ったものである。
図11に示すように、対サバフィレ総重量の33%食塩に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したところ、常温保存性・変色・匂い・柔軟性については、対サバフィレ総重量の食塩32%に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したときと大きな差は見られなかった。付着性について、対サバフィレ総重量の9%〜16%酒盗抽出液では手指にほとんど付着せず、対サバフィレ総重量の17%〜20%酒盗抽出液では僅かに付着、対サバフィレ総重量の21%酒盗抽出液ではやや付着となった。ここで、図11の実験は、上述した実験3内容と同じ条件で行ったものである。
図12に示すように、対サバフィレ総重量の食塩34%に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したところ、常温保存性と柔軟性については、対サバフィレ総重量の食塩33%に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%の酒盗抽出液を添加したときと大きな差は見られなかった。変色については、対サバフィレ総重量の9%酒盗抽出液で白っぽく変色、対サバフィレ総重量の10%〜12%酒盗抽出液で部分的に白く変色、対サバフィレ総重量の13%〜21%酒盗抽出液では変色なしとなった。匂いについて、対サバフィレ総重量の酒盗抽出液9%,10%では僅かに感じ、対サバフィレ総重量の11%,12%酒盗抽出液ではやや感じ、対サバフィレ総重量の13%〜21%酒盗抽出液ではかなり感じた。ここで、図12の実験結果は、上述した実験3内容と同じ条件で行ったものである。
図13に示すように、対サバフィレ総重量の食塩35%に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したところ、常温保存性・変色・柔軟性については、対サバフィレ総重量の食塩34%に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したときと大きな差は見られなかった。匂いについて、対サバフィレ総重量の10%酒盗抽出液では僅かに感じる程度で、対サバフィレ総重量の15%,20%酒盗抽出液ではかなり感じた。付着性について対サバフィレ総重量の9%〜19%酒盗抽出液はほとんど付着せず、対サバフィレ総重量の20%酒盗抽出液では僅かに付着、対サバフィレ総重量の21%酒盗抽出液ではやや付着となった。ここで、図13の実験結果は、上述した実験3内容と同じ条件で行ったものである。
図14に示すように、対サバフィレ総重量の食塩36%に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したところ、常温保存性・柔軟性については、対サバフィレ総重量の食塩35%に同じく対サバフィレ総重量の9%〜21%酒盗抽出液を添加したときと大きな差は見られなかった。変色について、対サバフィレ総重量の9%,10%酒盗抽出液では白っぽく変色、対サバフィレ総重量の11%,12%酒盗抽出液では部分的に白く変色、対サバフィレ総重量の13%〜21%酒盗抽出液では変色なしとなった。匂いについて、対サバフィレ総重量の9%,10%酒盗抽出液ではほとんど感じられず、対サバフィレ総重量の11%〜13%酒盗抽出液では僅かに感じる、対サバフィレ総重量の14%〜20%酒盗抽出液ではやや感じる、対サバフィレ総重量の21%酒盗抽出液ではかなり感じるとなった。付着性について対サバフィレ総重量の9%〜19%酒盗抽出液ではほとんど付着しない、対サバフィレ総重量の20%,21%酒盗抽出液では僅かに付着となった。ここで、図14の実験結果は、上述した実験3内容と同じ条件で行ったものである。
以上の結果から、食塩と酒盗抽出液をサバフィレに添加することで、食塩の効果により常温での保存性が高まり、酒盗抽出液の効果により変色が防止され、匂いが付加されることにより集魚力が向上する。食塩と酒盗抽出液が混ざることにより、食塩が酒盗抽出液の付着性を低下させ、酒盗抽出液単体でサバフィレを漬け込むときよりも使用感が向上する。
対サバフィレ総重量の食塩29%では付着性の向上による使用感の悪化が見られ、対サバフィレ総重量の食塩36%では匂いの低下により集魚力が低下するため、対サバフィレ総重量の食塩30%〜35%の間が最適な食塩濃度と考えられる。
対サバフィレ総重量の酒盗抽出液の濃度は、対サバフィレ総重量の食塩濃度30%〜35%の値では、図7〜図14の中で良好な数値範囲を見ると、12%〜19%が最適だと考えられる。
これらのことから、第二の動物構成部位としてサバフィレ(魚フィレ)を用い、第二の動物構成部位(魚フィレ又は切り身)の重量に対して所定重量%の発酵時液体(酒盗抽出液)と所定重量%の食塩を加えて釣り餌を製造することにより、常温で長期間保存でき、常温での流通経路に乗せられる釣り餌を実現することができる。上記実験では、気温25℃の環境で行ったが、実際に製造した釣り餌を釣りの現場で使用したところ、夏季の30度を超える気温下での釣り餌の変質が見られなかったので、特別な保管環境(冷凍庫や冷蔵庫)を整備することなく、通常の常温環境下で保管し、密封した容器(袋を含む)に入れて釣り餌の形態で釣具店や通販サイトで販売することができる。数か月の長期間でも、釣り餌として十分使用可能である。
なお、サバの肉質から推定して、第二の動物構成部位として、サバ以外の魚を利用した場合にも同様の結果が得られると考えられる。同様の結果が得られると考えらえるフェレとしては、アジフィレ、サンマフィレ、イワシフィレ、コノシロフィレ、カツオフィレ、マグロフィレ(フィレが大きい場合は所定の大きさにカットする)や、カツオの皮、マグロの皮などが使用できる。
<実施形態1 釣りの場面での利用形態>
釣りの場面では上記説明した釣り餌をカッティングして、釣り針へ差込み、水中(海中)へ投入してあたりを待つ。
「カッティング」とは、実施形態の釣り餌(魚フィレ)をハサミやカッターで所定の幅にカットすることをいう。例えば、釣りに行く前日にカッターなどでカットしておき、密封容器(タッパーやチャック付き袋)などに入れて準備しておいても良いし、当日に現場で釣り餌の袋から釣り餌を取り出し、図3(B)に示すように、ハサミでカットしてもよい。カットする際は、魚フィレを横にして、例えば船釣りの場合は約1cm、磯釣りの場合はちょっと細めの約5mm、6mm程度にカットする。フィレの尾の方で釣り餌の長さが短くなった場合は、フィレを縦にして長くカットしてもよい。
「釣り針への差込」とは、図3(A)に示すように、釣り針をカットした釣り餌の端部に差し込むことをいう。釣り針の先端が釣り餌から突出してもよいし、釣り餌の内部にとどまって外部に露出しないように差込を行ってもよい。また、一つの釣り針に対して複数の釣り餌を差込してもよく、さらに異なる種類の第二の動物の構成部位からなる釣り餌を差込してもよい。また釣り餌を差込する直前又は差込した直後に酒盗液を塗り付けて匂いを強くするようにしてもよい。さらに、釣り餌が着色されている場合には、異なる着色の釣り餌を一つの釣り針に差込してもよい。
<実施形態1 製造方法:基本(請求項9対応)>
本実施形態の釣り餌の製造方法は、図6に示すように、酒盗を準備する酒盗準備工程(工程0601)と、準備された酒盗を加熱・撹拌して酒盗の第一の動物構成部位を溶解して液状化して液状化酒盗とする加熱・撹拌工程(工程0602)と、加熱され液状化した液状化酒盗を冷却する冷却工程(工程0603)と、冷却された液状化酒盗に、切り身(フィレ)となった第二の動物構成部位を漬け込む漬込工程(工程0604)と、からなる第二の動物構成部位からなる釣り餌の製造方法である。ここで、酒盗準備工程は、この製造工程とは別に予め、かつお、まぐろなどの内臓(胃や腸などであって、内面及び外面を十分に清浄にしたもの)に塩を加え、一定の温度管理の下、塩蔵で6ヶ月〜1年程度熟成させ、自己消化酵素により自然発酵された酒盗を準備する。加熱・撹拌工程0602は、準備された酒盗を30分から1時間程度40〜45℃以上で加熱・撹拌し完全に溶解させ、液状化した液状化酒盗を作る。冷却工程0603では、加熱された液状化酒盗を30℃以下まで冷却を行う。加熱された40〜45℃以上の液状化酒盗をフィレ(切り身)に漬け込むと、原料としてのフィレ(魚のフィレ)が変質する恐れがあるからである。漬込工程0604では、フィレに冷却された液状化酒盗を漬け込む作業を行う。この漬込工程における漬け込み作業風景を図17(B)に示す。
<実施形態1 製造方法:漬込工程に酒盗塩混合工程を含む(請求項10対応)>
釣り餌の製造方法において、前記漬込工程0604は対第二の動物構成部位重量%で12%以上19%以下の酒盗と、対第二の動物構成部位重量%で30%以上35%以下の塩を混合する酒盗塩混合工程を含む釣り餌の製造方法である。ここで、漬込工程0604では、上述した実験3の結果から第二の動物構成部位(魚のフィレや切り身)に対して重量%で12%以上19%以下の重量の液状化酒盗(酒盗)と対第二の動物構成部位(魚のフィレや切り身)重量%で30%以上35%以下の塩を混合する酒盗塩混合工程を有する。酒盗塩混合工程は、漬け込み液としての発酵時液体(液状化酒盗)と塩を混合する工程である。この酒盗塩混合工程における作業風景を図17(A)に示す。第二の動物構成部位としての魚のフィレや切り身の水分活性を所定値以下に下げて常温保存性を向上させるためと釣りで狙う対象魚の集魚力を向上するために、酒盗と塩(食塩)を混合する。これらの液状化酒盗と塩を合わせて原料としての魚のフィレや切り身の漬け込み液を作成し、魚のフィレ(切り身)の漬け込みを行う。
<実施形態1 製造方法:増粘剤、アルコール追加工程を含む(請求項11対応)>
釣り餌の製造方法において、前記冷却工程0603の後に増粘剤又は/及びアルコールを液状化酒盗に加える増粘剤等追加工程をさらに有する釣り餌の製造方法を採用することができる。増粘剤等追加工程は、冷却された液状化酒盗に増粘剤やアルコールを使用し、液状化酒盗の粘度を上げて漬け込み液(集魚剤のベースとなる)を作成した後に漬込工程0604の漬け込み作業を行う。ここで、酒盗原料の重量に対して増粘剤を約0.5%程度、酒盗原料の重量に対してアルコールを約1%程度使用する。このアルコールは増粘剤の溶媒として用いている。液状化酒盗を撹拌しながらアルコールに増粘剤を溶いたものを混合する。増粘剤を利用することで酒盗の粘度が向上し、第二の動物の構成部位に対する付着性が向上する。従って集魚効果が向上する。
増粘剤の種類としては、カラギナン(加工ユーケマ藻類、精製カラギナン、ユーケマ藻末)、多糖類、キサンタンガム、ペクチンなどを挙げることができるがこれに限定されるものではない。
<実施形態1 製造方法:漬込工程で着色剤追加工程を含む(請求項12対応)>
釣り餌の製造方法において、前記漬込工程0604は、着色剤を加える着色剤追加工程を含む釣り餌の製造方法であってもよい。着色剤追加工程は漬け込み作業を行う前に着色剤を加えても良いし、漬け込み作業と同時に着色剤を加えても良い。ここで、使用される着色剤の詳細については後記するので、ここでは説明を省略する。着色を行う場合は、魚フィレ全重量の0.05〜1%の着色剤(着色料)を着色剤重量の約100倍程度の水に溶き、漬け込み液に混合する。レッド、ブルー、イエローなどの色分けする場合は、漬け込み用の容器を別々に分けて使用する。そうしないと、色が混じってしまうからである。
<実施形態1 製造方法:第二の動物構成部位は、魚類の構成部位(サバフィレ)である(請求項13対応)(請求項14対応)>
釣り餌の製造方法において、第二の動物構成部位は、魚類の構成部位である釣り餌の製造方法を採用することができる。ここで、魚類の構成部位としては魚のフィレを用い、具体的にはサバフィレを用いる。釣り餌としてのサバフィレの厚みは柔軟性に影響を与えるため、フィレの厚みを約5mmにスライスして用いる。魚のフィレは種々のものが使用できるが、他の例については上述したので、ここでは省略する。また、魚のフィレ以外では、カツオの皮やマグロの皮を使用することができる。この場合は、釣り餌の使い勝手を考慮し、魚のフィレ程度の大きさ(中央幅が3cmから15cm程度で、全長が10cmから30cm程度)にカットして使用する。厚みは、約1〜5mm程度とする。
<実施形態1 製造方法:漬込後 冷蔵保存をする工程を含むもの(請求項15対応)>
釣り餌の製造方法において、漬込工程0604の後に漬込まれた状態で冷蔵保管をする冷蔵保管工程をさらに有する釣り餌の製造方法を採用することができる。冷蔵保管工程は酒盗抽出液と塩を混合した漬け込み液を第二の動物の構成部位としての魚フィレに浸透させる工程である。着色剤で着色する場合は、色分けした保管ケースを用いて別々に冷蔵保管する。所定温度以下で保管しないと、発酵時液体が未浸透の第二の動物の構成部位に細菌等が侵入し繁殖する恐れがあるからである。通常は10度以下に保つ冷蔵庫などを利用する。作業現場が低温管理されていれば、必ずしも冷蔵庫に入れなくてもよい。
このようにして製造された釣り餌は、第一の動物の構成部位の発酵によって産生された発酵時液体で特に塩分を含むものが第二の動物の構成部位に十分に浸透し、又は表面が前記発酵時液体でおおわれるように構成されるので、常温で長期間保存ができる効果が表れる。従って、常温での流通経路に乗せられる。このような釣り餌および釣り餌の製造方法を提供することができる。
<実施形態2>
実施形態2は、主に請求項2に対応する釣り餌の実施形態である。
<実施形態2 概要>
本実施形態2は、実施形態1を基本としつつ、第一の動物は魚類であり、前記発酵は酒盗を製造するための発酵であるものである。原則的に第二の動物の構成部位は限定されないが、代表的には第二の動物は魚類である。
<実施形態2 構成の説明>
第一の構成部位として魚類が適している。釣り餌としては魚類が日常的に食している魚類の匂いを餌に加えることが好ましいからである。そして、第一の動物の構成部位である魚類の構成部位を用いて発酵時産生液体として酒盗を生成するとともに第二の動物構成部位にその酒盗を浸透又は/及びまぶして用いる。
「魚類」とは、脊椎動物亜門から四肢動物を除外した動物群のことをいい、日常語で魚(さかな)と呼ばれる動物である。ここで、魚類の構成部位としては、カツオ、マグロの胃や腸など内臓や皮等を用い、清浄して使用する。骨のついたものでも良い。
「酒盗」とは、カツオ、マグロの胃や腸に食塩を追加し、一定温度で6ヶ月〜1年塩蔵熟成させ、自己消化酵素により自然発酵させたものをいう。本実施形態では、図2に示すように、この酒盗は液状化された状態の液状化酒盗を用いて釣り餌を製造する。
「第一の動物と第二の動物の関係」は、本実施形態は釣り餌用であるので、第一の動物の構成部位を用いて産生された酒盗を第二の動物構成部位に浸透又は/及びまぶして用いる。第二の動物構成部位は、魚類以外でも良く、豚肉や牛肉などやそれらの皮に酒盗を浸透又は/及びまぶして用いてもよい。第一の動物の魚類の構成部位によって産生された発酵時液体が第二の動物の構成部位が釣り餌本体を構成し、釣り餌に集魚効果を付与する機能を果たす関係である。
このように、実施形態2によれば、実施形態1に加え、集魚効果を有する動物の構成部位(魚、豚肉、牛肉、鹿肉等の皮)をベースとした釣り餌が実現できる。
<実施形態3>
実施形態3は、主に請求項3に対応する釣り餌の実施形態である。
<実施形態3 概要>
本実施形態3は、実施形態1又は実施形態2を基本としつつ、第二の動物は魚類である釣り餌である。
<実施形態3 構成の説明>
釣り餌として第二の構成部位は魚類の構成部位が適している。そして、第一の動物の構成部位の発酵時液体を用いてこれを浸透又は/及びまぶして釣り餌とする。例えば、第一の動物が魚類である場合には、この構成部位を用いて発酵時産生液体として酒盗を生成するとともに第二の動物構成部位としての魚類(魚のフィレ又は切り身)にその酒盗を浸透又は/及びまぶして用いる。
「魚類」とは、脊椎動物亜門から四肢動物を除外した動物群のことをいい、日常語で魚(さかな)と呼ばれる動物である。ここで、魚類の構成部位は、釣り餌本体を構成するので、魚のフィレ(切り身)が使用できる。
「第一の動物と第二の動物の関係」は、本実施形態は釣り餌用であるので、第一の動物と第二の動物は魚類の場合は、第二の動物の魚類の構成部位が釣り餌本体を構成しており、第一の動物の魚類の構成部位によって産生された発酵時液体が釣り餌に集魚効果を付与する機能を果たす関係である。
このように、実施形態3によれば、実施形態1又は2に加え、集魚効果を有する魚フィレ(切り身)等をベースとした釣り餌が実現できる。
<実施形態4>
実施形態4は、主に請求項4に対応する釣り餌の実施形態である。
<実施形態4 概要>
本実施形態4は、実施形態1〜3を基本としつつ、第二の動物の構成部位は、加熱されていない構成部位であるものである。
<実施形態4 構成の説明>
釣り餌本体を構成する第二の動物の構成部位は加熱されていないと、生エサに近い状態の釣り餌となり、釣りの釣果が期待できる。
「加熱されていない第二の動物の構成部位」とは、第二の動物構成部位である牛、豚、鳥類、両生類、魚類(甲殻類、節足類を含む。本明細書の全体を通じて同じ。)爬虫類、昆虫類、その他の動物の構成部位が加熱されていないことをいい、釣り餌の本体として用いられる。これら本体となるものは、例えば、第二の動物の構成部位が魚類である場合には、生魚フィレ(切り身)等や冷凍状態から解凍された魚のフィレ等、冷蔵された魚のフィレ(切り身)等が用いられる。生餌に近い状態の釣り餌を実現するため、加熱されない魚のフィレ(切り身)等を使用することが重要である。魚のフィレ等の入手容易性から冷凍の魚のフィレ等が望ましい。なおフィレ等には、骨を含んだものがあってもよく、さらに皮、消化管、胃、しっぽ、ひれ、なども含まれる。
このように、実施形態4によれば、実施形態1〜3に加え、集魚効果を有する生に近い魚フィレ(切り身)等をベースとした釣り餌が実現できる。
<実施形態5>
本実施形態5は、主に請求項5に対応する。
<実施形態5 概要>
本実施形態5は、実施形態1〜実施形態4を基本としつつ、第二の動物の構成部位は少なくとも表面が着色剤で着色されている釣り餌である。
<実施形態5 構成の説明>
釣りの対象魚の喰いをよくするため、着色剤を用い、第二の構成部位に対して表面などに着色剤を浸透させて色付けする。
<着色剤>
着色剤は、釣り餌をルアーのように色分けして魚の食いをよくする役割を果たす。例えば、レッド、ブルー、イエロー、グリーンなどの着色を行う。着色剤(着色料)としては、食用色素と食用色素でないもの (粘膜以外に使用する外用医薬品、医薬部外品及び化粧品用法定色素)が使用できる。食用色素の例としては、食用赤色3号、食用青色1号、食用黄色4号、食用赤色2号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用青色2号、食用赤色40号などが挙げられる。
また、食用色素でないもの例としては、黄色202号(1)、黒色401号が挙げられる。
<着色剤で着色されている第二の動物の構成部位>
第二の動物の構成部位は、着色剤で着色されている。天候(晴天、雨、曇など)や海水や川の濁り具合、朝、昼、夜などの時間によってルアーのように釣り餌を使い分けすることができる。この着色は、魚の食いに影響したり、釣り人の気分に応じて餌の色を変えることによって、釣りを楽しむことができる。
<表面>
第二の構成部位の表面は、着色剤により着色されているので、色がついている。生の釣り餌などでは、第二の動物の構成部位由来の色彩に制限されないで魚が興味を持つ各種の色を採択できる。構成部位が魚フィレの場合は、その素材では存在しない色の釣り餌が実現できる。何色も、例えば5色用意することにより、ルアーの置き換えのような使い方ができる。ルアーであると、プラスチックやシリコンなどの材料で作製されているため、魚が飲み込んでしまい、釣れなかった場合は、魚の体内にルアーが留まることになり、環境的にも良くない。しかし、本釣り餌は生の魚フィレ等に色づけしたので、魚が食べても安全であり、環境への影響も少ない。
このように、実施形態5によれば、実施形態1〜4に加え、通常の生エサでは実現できないカラフルなルアーのような使いかたができ、生エサに近い釣り餌なので、環境にも良い釣り餌を実現できる。
<実施形態6>
本実施形態6は、主に請求項6に対応する。
<実施形態6 概要>
本実施形態6は、実施形態1〜実施形態5に記載の釣り餌を前記発酵時液体とともに容器(袋も含む)に封入した釣り餌セットである。
<実施形態6 構成の説明>
釣り店や通販の流通に乗せるため、釣り餌は容器に密封した形態で釣り餌セットを構成する。
「容器」とは、製造された釣り餌を入れる(封入する)ものをいい、袋や箱状のものを指す。釣り餌の長期保存に供するために、封入は密封状態にするのが望ましい。さらに、釣り餌の常温保存性を向上させるため、真空パッケージ化してもよい。
このように、実施形態6によれば、密封した容器(袋を含む)に入れて釣り餌の形態で釣具店や通販サイトで販売することができる。数か月の長期間でも、釣り餌として十分使用可能である。
<実施形態7>
本実施形態7は、主に請求項7に対応する。
<実施形態7 概要>
本実施形態7は、実施形態1〜実施形態5に記載の釣り餌を用いて集魚を行う集魚方法である。
<実施形態5 構成の説明>
釣り餌に集魚機能を持たせて利用する。
「集魚」とは、釣りのポイントに入れた釣り餌の近くに釣りの対象魚を集めることをいう。本発明に係る釣り餌は、通常の状態で釣り針に差し込んで釣りを行うだけでも、通常のまき餌や、籠内の寄せ餌のような効果を得られる。なぜなら、第二の動物の構成部位にしみ込んだ発酵時液体が急速に海中に広がって魚の臭覚に訴えるからである。魚類は臭覚が敏感であり、特に発酵時液体はにおいが強いので十分な集魚効果を得られる。
さらに、従来のまき餌として利用したり、籠に詰めて利用しても十分な集魚効果を得られる。
このように、実施形態7によれば、釣り餌に浸透した酒盗抽出液による集魚効果により、釣りの対象魚の集魚力を向上させることができる。
<実施形態8>
本実施形態8は、主に請求項8に対応する。
<実施形態8 概要>
本実施形態8は、実施形態1〜実施形態5に記載の釣り餌を用いて魚を釣り上げる釣り方法である。
<実施形態8 構成の説明>
本釣り餌を用いて釣りの対象魚の魚釣りを行う。
「魚釣り」とは、実施形態の釣り餌を用いて船釣り、磯釣り、川(湖を含む)釣り等を行うことをいう。釣り餌を釣りのポイントに入れたときは、発酵時液体(酒盗抽出液)のにおいが釣り針に差し込んだ釣り餌の近くに広がり、釣りの対象魚の喰いつきをよくすることができる。
このように、実施形態8によれば、釣り餌に浸透した酒盗抽出液による集魚効果により、釣りの対象魚の集魚力を向上させ、餌自体も生エサに近いので、釣り人にとっては釣果が期待できる。なお、巻き網漁法などで魚を一定の領域に集合させるために本発明の釣り餌を利用することも考えられ、本実施形態でいう「釣り上げる」には、巻き網漁法で魚を捕獲するものも含めて権利範囲を解釈することとする。
図15に従って魚フィレにサバフィレを用いた釣り餌製造工程の実施例1について説明する。
まず、厚みを約5mm程度にカットした冷凍サバフィレ5kgを4時間〜6時間程度かけて流水で解凍する(工程1501)。
次に、解凍した各サバフィレには、水(水分)がついているので、水分を調整するため、10分〜30分程度かけて液切りを行う(工程1502)。
次に、液切りを行った全サバフィレの計量を行う(工程1503)。後記の工程で集魚剤のベースとなる酒盗抽出液と食塩の加える量を計算するためである。
一方、集魚剤のベースとなる酒盗抽出液の作成を行う。まず、6ヶ月〜1年塩蔵で熟成させた酒盗原料の計量を行う(工程1505)。先に計量した液切り後のサバフィレの全重量に対する重量%の割合で計量する。ここでは、酒盗原料30kgを使用する。
次に、酒盗原料30kgを容器に入れ、30分〜1時間程度かけて40〜45℃以上で加熱・撹拌する(工程1506)。ここで、加熱・撹拌は、酒盗原料につぶつぶが残っている状態から完全に液状化した酒盗抽出液とするために行う。
次に、液状化した酒盗抽出液はまだ暖かいので、1〜1.5時間かけて冷却を行う(工程1507)。冷却は、酒盗抽出液が30℃以下になるまで行う。
次に、1〜1.5時間経過後、酒盗抽出液の粘度を上げるため、酒盗抽出液にアルコールを溶媒として増粘剤を混合する(工程1508)。これで、図2に示すような集魚剤のベースとなる酒盗抽出液が完成となる。
次に、図17(A)に示すように、サバフィレ原料重量に対して酒盗抽出液を13%、同じくサバフィレ原料重量に対して食塩を32%使用し漬け込み液を作成する(工程1504)。
次に、図17(B)に示すように、容器に所定枚数のサバフィレを並べ、サバフィレを漬け込む(工程1509)。
次に、サバフィレに漬け込み液を浸透させるため、24時間以上冷蔵保管する(工程1510)。漬け込み後冷蔵保管時間は、24時間以上あれば良く、例えば24時間〜36時間程度あれば十分である。
次に、漬け込み液によって冷蔵保管すると、塩分濃度の作用により水(水分)が漬け込んだサバフィレからしみ出すので、10分から30分程度かけて再度の充填のための液切りを行う(工程1511)。
サバフィレを1つ、又は2つ程度単位で袋詰めを行い、真空引きを行い、密封(シール)する(工程1513)。ここで、袋詰めを行っているが、プラスチックなどの容器で真空パッケージ化しても良い。また、できあがった釣り餌は真空パッケージ化されているので、かなりの長期保存が可能となっている。
真空パッケージ化された釣り餌セットにラベルを貼り、倉庫に入庫される(工程1514、1515)。
これにより、通常の釣具店や通販サイトで釣り餌セットを販売することができる。常温保存可能で特別な保管する必要がなくなり、物流コストも安くなる。
図16に従って魚フィレにサバフィレを用いた釣り餌製造工程の実施例2について説明する。図16の実施例2では、釣り餌に着色剤(着色料)を追加する工程(工程1609)を有している点が異なるだけで、工程1601〜1608、工程1610〜1616は実施例1と同様であるので、説明を省略する。
以下、着色剤追加工程1609について説明する。
着色剤追加工程1609は、サバフィレ全重量の0.05〜1%の着色剤(着色料)を着色剤重量の100倍の水に溶き、漬け込み液に混合する工程である。このように、着色剤を漬け込み液に混合してから工程1610の漬け込みを行う。
このように、本実施形態等によれば、発酵時液体(酒盗抽出液)と塩を配合したものに漬け込むことによって生エサに近い状態で常温長期保存可能な釣り餌となっている。また、本釣り餌は発酵時液体(酒盗抽出液)を使用することで身の柔軟性を生エサに近い状態で保持することができる。本釣り餌は発酵時液体(酒盗抽出液)を使用することで身の変色を防止し、生エサに近い状態を保持することができる。本釣り餌は発酵時液体(酒盗抽出液)を使用することで集魚効果を付与することができる。本釣り餌は着色料を発酵時液体(酒盗抽出液)と塩を混ぜたものに加え、それに漬け込むことによって色を浸透させ、時間や天候など海の状況に左右される魚の活性に合わせた色の使い分けを可能にしている。
このようにして製造された釣り餌の釣果実験を行ったので、以下では釣果実験結果について説明する。
<釣果実験>
<釣果実験の目的>
本発明の生サバ釣り餌(酒盗抽出液浸透)の有効性を調べるために、塩漬けサバ釣り餌との比較実験を行った。
<釣果実験内容>
・場所:小田原早川港沖
・日時:2018年6月22日、6:50〜14:00
・天候:晴れ
・潮:小潮
・水深:200〜220m
・使用餌:生サバ釣り餌(酒盗抽出液浸透)、塩漬けサバ釣り餌
・人数:4人
<使用餌について>
生サバ釣り餌(酒盗抽出液浸透)構成成分
サバフィレ重量に対しての使用割合
・酒盗抽出液・・・13%
・食塩・・・・・・32%
・増粘剤・・・・・0.06%
・アルコール・・・0.1%
塩漬けサバ釣り餌構成成分
酒盗抽出液を使用せず塩のみで餌を作製した。
サバフィレ重量に対しての使用割合
・食塩・・・・・・32%
釣り餌は両方とも、サバの頭部側から尻尾側にかけての線に垂直に幅1cmでカットし使用した。
<釣果実験方法>
図19に示すように、釣り船を使用し、右舷で1人(A)が生サバ釣り餌(酒盗抽出液浸透)を使用し1人(B)が塩漬けサバ釣り餌を使用、左舷でも右舷と同様の条件(塩漬けサバ釣り餌使用者:C、生サバ釣り餌(酒盗抽出液浸透)使用者:D)で釣り餌を使用して計4人で釣果実験を行った。
<釣果実験結果>
図20(A)は本実施形態の生サバ釣り餌(酒盗抽出液浸透)を使用した使用者(A,D)の釣果を示し、図20(B)は塩漬けサバ釣り餌を使用者(B,C)の釣果を示し、図20(C)それらの釣果の比較検討結果を示す。ここで、船上のA,B,C,Dは使用者の釣り場を示す。
釣れた魚種は使用者A,B,C,D(船上の釣り場も示す)を合計して、キンメダイ・シロムツ・クロムツ・カサゴ・ユメカサゴ・メダイ・サバの計7種であった。
本実施形態の生サバ釣り餌(酒盗抽出液浸透)を使用した使用者(A, D)の釣果は、図20(A)に示すように、使用者Aは、キンメダイ1匹、シロムツ4匹、カサゴ2匹、メダイが1匹という釣果であった。
使用者Dは、シロムツ1匹、クロムツ1匹、カサゴ4匹という釣果であった。
使用者A+Dは、使用者AとDの釣果を合計して、キンメダイ1匹、シロムツ5匹、クロムツ1匹、カサゴ6匹、メダイ1匹という釣果であった。
塩漬けサバ釣り餌を使用した使用者(B, C)の釣果は、図20(B)に示すように、使用者Bは、カサゴ2匹、ユメカサゴ1匹という釣果であった。
使用者Cは、シロムツ1匹、カサゴ3匹、ユメカサゴ1匹、サバ1匹という釣果であった。
使用者B+Cは、使用者BとCの釣果を合計して、シロムツ1匹、カサゴ5匹、ユメカサゴ2匹、サバ1匹という釣果であった。
以上の釣果から、釣果合計匹数を比較すると、本実施形態の生サバ釣り餌使用の使用者A,Dが14匹、塩漬けサバ釣り餌を使用の使用者B,Cが9匹となっている。本実施形態の生サバ釣り餌(酒盗抽出液浸透)を使用した者の方が塩漬けサバ釣り餌を使用した者より釣果合計匹数が多くなっており、本実施形態の生釣り餌(サバ)は塩漬けサバ釣り餌よりも魚の喰いが良いものと考えられる。両釣り餌の差は、酒盗抽出液の含有の有無であり、酒盗抽出液を添加したことによる匂いの付加と身の変色の防止が釣果に影響していると考えられる。本実施形態の生釣り餌(サバ)には、酒盗抽出液製造過程で使用されるアルコールと増粘剤も含まれているが、こちらはアルコールのサバフィレ重量に対する含有率が0.1%、増粘剤のサバフィレ重量に対する含有率が0.06%と微少なものであるため影響は無いものと考える。
本実施形態の生釣り餌(サバ)を使用した方は、魚が釣れるときの傾向として餌をつけてから海中に投入し、ポイントについた直後に魚が針にかかることが多かったが、これは餌に含まれる酒盗抽出液の量が餌の投入直後には多く、魚の喰いが良かったためだと考えられる。
<餌の大きさによる釣果の差について>
釣り餌の大きさの変化による釣れる魚の変化は、本実施形態の生釣り餌のサバではあまり考えられない。ただし、同じ魚種で比較すると小さな魚体の魚の方が大きな魚体の魚よりも相対的に口が小さいため、小さな餌の方が針にかかりやすくなり釣りやすくなると考えられる。
海や狙う魚(釣りの対象魚)の状況にあわせて、潮が濁っているときは大きな餌を使い魚が餌を見つけやすくすることや、小さな魚が多いときは餌を小さくして針にかかりやすくするといった餌の使い分けは適宜考えられる。
0601 酒盗準備工程
0602 加熱・撹拌工程
0603 冷却工程
0604 漬込工程

Claims (17)

  1. 第一の動物の構成部位の発酵した発酵構成部位又は/及び前記発酵に際して産生される発酵時液体がまぶされ又は/及び浸透している第二の動物の構成部位からなる釣り餌。
  2. 第一の動物は魚類であり、前記発酵は酒盗を製造するための発酵である請求項1に記載の釣り餌。
  3. 第二の動物は魚類である請求項1又は請求項2に記載の釣り餌。
  4. 第二の動物の構成部位は、加熱されていない請求項1から請求項3のいずれか一に記載の釣り餌。
  5. 第二の動物の構成部位は少なくとも表面が着色剤で着色されている請求項1から請求項4のいずれか一に記載の釣り餌。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一に記載の釣り餌を前記発酵時液体とともに容器(袋も含む)に封入した釣り餌セット。
  7. 請求項1から請求項5のいずれか一に記載の釣り餌を用いて集魚を行う集魚方法。
  8. 請求項1から請求項5のいずれか一に記載の釣り餌を用いて魚を釣り上げる釣り方法。
  9. 酒盗を準備する酒盗準備工程と、
    準備された酒盗を加熱・撹拌して酒盗の第一の動物構成部位を溶解して液状化して液状化酒盗とする加熱・撹拌工程と、
    加熱され液状化した液状化酒盗を冷却する冷却工程と、
    冷却された液状化酒盗に、切り身となった第二の動物構成部位を漬け込む漬込工程と、
    からなる第二の動物構成部位からなる釣り餌の製造方法。
  10. 前記漬込工程は対第二の動物構成部位重量%で12%以上19%以下の酒盗と、対第二の動物構成部位重量%で30%以上35%以下の塩を混合する酒盗塩混合工程を含む請求項9に記載の釣り餌の製造方法。
  11. 前記冷却工程の後に増粘剤又は/及びアルコールを液状化酒盗に加える増粘剤等追加工程をさらに有する請求項9又は請求項10に記載の釣り餌の製造方法。
  12. 前記漬込工程は、着色剤を加える着色剤追加工程を含む請求項9から請求項11のいずれか一に記載の釣り餌の製造方法。
  13. 第二の動物構成部位は、魚類の構成部位である請求項9から請求項12のいずれか一に記載の釣り餌の製造方法。
  14. 前記魚類の構成部位はサバフィレである請求項13に記載の釣り餌の製造方法。
  15. 漬込工程の後に漬込まれた状態で冷蔵保管をする冷蔵保管工程をさらに有する請求項9から請求項14のいずれか一に記載の釣り餌の製造方法。
  16. 前記発酵時液体は、塩分を含有するものである請求項1から請求項5のいずれか一に記載の釣り餌。
  17. 前記塩分の含有は発酵時液体の対全重量に対する重量%で15%以上、25%以下である請求項16に記載の釣り餌。
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