以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態の一態様について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、内燃機関システム1の構成を示す概略図である。図1では、信号の流れを破線の矢印で示している。以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
内燃機関システム1は、内燃機関2、吸気装置3および制御装置4を含んで構成される。内燃機関2は、例えば、レシプロエンジンである。また、内燃機関2は、例えば、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程が繰り返し行われる4ストロークエンジンである。内燃機関2は、シリンダブロック10、シリンダヘッド11およびピストン12を含んで構成される。
シリンダブロック10には、円筒形状のシリンダ13が形成されている。シリンダ13には、ピストン12が摺動可能に収容されている。クランクケース14は、シリンダブロック10と一体成形される。クランクケース14には、シリンダ13に連通するクランク室15が形成されている。クランク室15には、クランクシャフト16が収容されている。ピストン12は、コネクティングロッド17に連結されている。コネクティングロッド17は、クランクシャフト16に連結されている。
シリンダブロック10には、シリンダ13の開口を覆うようにシリンダヘッド11が接合されている。シリンダ13、シリンダヘッド11およびピストン12に囲まれた空間は、燃焼室18となる。
シリンダヘッド11には、燃焼室18に開口する吸気ポート20および排気ポート21が形成されている。図示を省略するが、吸気ポート20および排気ポート21は、1個のシリンダ13に対してそれぞれ2個設けられている。また、シリンダヘッド11には、吸気バルブ22、吸気カム23、排気バルブ24および排気カム25が設けられている。吸気バルブ22および吸気カム23は、吸気ポート20ごとに設けられている。排気バルブ24および排気カム25は、排気ポート21ごとに設けられている。
吸気カム23は、クランクシャフト16の回転に基づいて吸気バルブ22を往復移動させる。吸気バルブ22は、吸気カム23にしたがって、吸気ポート20における燃焼室18に臨む開口部26を開閉する。吸気バルブ22については、後に詳述する。
排気カム25は、クランクシャフト16の回転に基づいて排気バルブ24を往復移動させる。排気バルブ24は、排気カム25にしたがって、排気ポート21における燃焼室18に臨む開口部27を開閉する。
また、シリンダヘッド11には、インジェクタ30および点火プラグ31が設けられている。インジェクタ30は、燃焼室18に燃料を噴射する。なお、インジェクタ30は、吸気ポート20に設けられてもよい。点火プラグ31は、空気と燃料との混合気に点火する。ピストン12は、混合気の燃焼によりシリンダ13内で往復運動をする。ピストン12の往復運動は、コネクティングロッド17を通じて、クランクシャフト16の回転運動に変換される。
吸気装置3は、吸気ポート20を含む吸気流路42、吸気バルブ22、空気圧縮部51、第1バルブ52、空気噴射部53、圧縮空気流路54、回収ポート60を含む還流路63、第2バルブ62を含んで構成される。
吸気ポート20には、インテークマニホールド40が接続されている。インテークマニホールド40は、集合部で複数の分岐路に分岐している。インテークマニホールド40の各分岐路は、複数の吸気ポート20にそれぞれ接続される。インテークマニホールド40の集合部は、吸気管41に接続される。吸気ポート20、インテークマニホールド40、吸気管41は、シリンダ13(燃焼室18)に吸気(空気)を導入する吸気流路42を形成する。以下では、吸気流路42を通る吸気の流れに沿って、内燃機関2から遠い方を上流と呼び、内燃機関2に近い方を下流と呼ぶ。
吸気管41には、上流側から順に、エアクリーナ43、スロットルバルブ44が設けられる。エアクリーナ43は、外部から吸入された空気に混合されている異物を除去する。スロットルバルブ44は、アクセル開度に応じてアクチュエータ45によって開閉される。燃焼室18に送られる吸気量は、スロットルバルブ44の開閉に応じて調整される。
吸気管41におけるエアクリーナ43とスロットルバルブ44との間には、第1流通管50が接続されている。第1流通管50は、空気圧縮部51および第1バルブ52を介して空気噴射部53に接続されている。第1流通管50は、吸気流路42から分岐される圧縮空気流路54を形成する。以下では、圧縮空気流路54において、空気噴射部53から遠い方を上流と呼び、空気噴射部53に近い方を下流と呼ぶ。
空気圧縮部51は、例えば、高圧ポンプである。空気圧縮部51は、空気圧縮部51よりも上流側の第1流通管50を通じて吸気流路42内の空気を取得して圧縮する。空気圧縮部51は、圧縮した空気を、空気圧縮部51よりも下流側の第1流通管50を通じて空気噴射部53に供給する。以後、空気圧縮部51によって圧縮された空気を圧縮空気と呼ぶことがある。
第1バルブ52は、空気圧縮部51と空気噴射部53との間に設けられている。第1バルブ52は、例えば、電磁弁であり、圧縮空気流路54を開閉する。第1バルブ52は、開状態となることで圧縮空気を空気噴射部53に供給し、閉状態となることで空気噴射部53への圧縮空気の供給を停止する。
空気噴射部53は、吸気ポート20に設けられる。空気噴射部53は、圧縮空気を吸気バルブ22に噴射する。具体的には、空気噴射部53は、第1バルブ52が開状態となると、圧縮空気を吸気バルブ22に噴射し、第1バルブ52が閉状態となると、圧縮空気の噴射を停止する。空気噴射部53については、後に詳述する。
また、シリンダヘッド11には、吸気ポート20に連通する回収ポート60が形成されている。回収ポート60には、第2流通管61が接続されている。第2流通管61は、第2バルブ62を介して、エアクリーナ43とスロットルバルブ44との間に接続されている。回収ポート60および第2流通管61は、吸気流路42の下流側と上流側とを連通する還流路63を形成する。還流路63は、吸気流路42の下流側の流体を吸気流路42の上流側に還流させる。以下では、還流路63において、吸気ポート20に近い方を上流と呼び、吸気ポート20から遠い方を下流と呼ぶ。
第2バルブ62は、例えば、還流路63における比較的下流側(吸気ポート20から遠い方)に設けられている。第2バルブ62は、例えば、電磁弁であり、還流路63を開閉する。
ここで、吸気流路42におけるスロットルバルブ44よりも上流側は、内燃機関システム1外から空気を吸い込み易くするため、常に負圧となるように制御される。また、吸気流路42におけるスロットルバルブ44よりも上流側は、吸気ポート20内に比べ、圧力が低くなるように制御される。
このため、第2バルブ62が開状態となると、吸気ポート20内の流体が還流路63を通じて、吸気流路42のうちスロットルバルブ44よりも上流側に移動する。一方、第2バルブ62が閉じられると、還流路63を通じた流体の移動は起こらない。
排気ポート21には、エキゾーストマニホールド70が接続されている。エキゾーストマニホールド70は、複数の分岐路が集合部で1つにまとめられる。エキゾーストマニホールド70の各分岐路は、複数の排気ポート21にそれぞれ接続される。エキゾーストマニホールド70の集合部は、排気管71に接続される。排気ポート21、エキゾーストマニホールド70、排気管71は、シリンダ13(燃焼室18)から排出される排気が通る排気流路72を形成する。排気管71には、触媒73が設けられる。触媒73は、例えば、三元触媒などであり、排気に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を除去する。
また、内燃機関システム1には、アクセル開度センサ80、クランク角センサ81、フローメータ82が設けられている。アクセル開度センサ80は、アクセルペダルの踏込み量に応じたアクセル開度を検出する。クランク角センサ81は、クランクシャフト16の回転角度であるクランク角を検出する。フローメータ82は、吸気管41におけるスロットルバルブ44の下流側に設けられており、燃焼室18へ供給される吸気量を検出する。
制御装置4は、例えば、ECU(Engine Control Unit)である。制御装置4は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成され、内燃機関システム1を統括制御する。制御装置4は、プログラムを実行することで、駆動制御部90およびバルブ制御部91として機能する。
駆動制御部90は、クランク角センサ81によって検出されたクランク角に基づいて現時点のエンジン回転数を導出する。駆動制御部90は、現時点のエンジン回転数およびアクセル開度センサによって検出されたアクセル開度に基づいて、目標トルクおよび目標エンジン回転数を導出する。駆動制御部90は、目標トルクおよび目標エンジン回転数に基づいて目標空気量を決定し、目標空気量に基づいて目標スロットル開度を決定する。そして、駆動制御部90は、目標スロットル開度でスロットルバルブ44が開閉されるようにアクチュエータ45を駆動させる。
また、駆動制御部90は、目標空気量に基づいて燃料の目標噴射量を決定し、目標噴射量に基づいて目標噴射時期および目標噴射期間を決定する。駆動制御部90は、インジェクタ30を目標噴射時期および目標噴射期間で駆動させ、目標噴射量の燃料を噴射させる。また、駆動制御部90は、目標エンジン回転数およびクランク角に基づいて目標点火時期を決定し、点火プラグ31を目標点火時期で駆動させて点火させる。
バルブ制御部91は、クランク角センサ81によって検出されたクランク角にしたがって、第1バルブ52および第2バルブ62の開閉を制御する。バルブ制御部91は、吸気行程の終了から吸気バルブ22が吸気ポート20の開口部26を完全に閉じるまでの期間、第1バルブ52および第2バルブ62を開状態にさせ、その他の期間、第1バルブ52および第2バルブ62を閉状態にさせる。また、バルブ制御部91は、内燃機関2の始動時に空気圧縮部51の運転を開始させ、内燃機関2の停止時に空気圧縮部51の運転を停止させる。バルブ制御部91については、後に詳述する。
図2は、吸気ポート20の部分拡大図である。図3は、吸気バルブ22の斜視図である。図2および図3では、圧縮空気の流れを実線の矢印A1で示している。また、図2では、混合気などの未燃焼燃料を含む流体の流れを一点鎖線の矢印A2で示している。なお、図2では、排気バルブ24の表記を省略している。
吸気バルブ22は、軸部101および傘部102から構成される。軸部101は、棒状に形成されている。傘部102は、略円盤状に形成されている。軸部101の先端は、傘部102の中央に連続している。換言すると、傘部102は、軸部101の先端において軸部101の長手に交差する方向に突出している。吸気バルブ22は、軸部101が吸気ポート20側に位置し、傘部102が燃焼室18側に位置するように配置される。また、吸気バルブ22は、軸部101の長手方向が開口部26における開口面の法線方向に一致するように配置される。
シリンダヘッド11の吸気ポート20付近には、バルブガイド103が設けられている。バルブガイド103は、略円筒状に形成されている。バルブガイド103には、吸気バルブ22の軸部101が挿通される。バルブガイド103の中心軸は、軸部101の中心軸に重なる。バルブガイド103は、吸気バルブ22を、軸部101の長手方向に摺動可能に支持する。
軸部101における傘部102とは反対側端には、吸気カム23(図2および図3では図示略)が設けられている。吸気バルブ22は、吸気カム23の回転にしたがって、軸部101の長手方向(換言すると、開口部26における開口面の法線方向)に往復移動する。吸気ポート20の開口部26は、傘部102が吸気ポート20側へ移動して接触すると閉じられ、傘部102が燃焼室18側へ移動して離れると開かれる。
吸気ポート20の開口部26には、バルブシート104が設けられている。バルブシート104は、例えば、リング状に形成される。バルブシート104は、開口部26が吸気バルブ22によって閉じられたとき、開口部26と傘部102との間に隙間が生じることを防止する。
空気噴射部53は、略円筒状に形成されており、バルブガイド103の周囲に設けられている。つまり、空気噴射部53は、吸気バルブ22の軸部101の周囲に設けられている。空気噴射部53には、圧縮空気が噴射される空気噴射口105が設けられている。空気噴射口105は、傘部102における軸部101側の面(裏面)である傘裏部106に臨むように設けられている。空気噴射口105の開口面は、軸部101を囲むリング状となっている。
空気噴射部53は、空気噴射口105から圧縮空気を噴射する。空気噴射口105から噴射された圧縮空気は、軸部101に沿って傘裏部106に向かって移動する。そして、傘裏部106に到達した圧縮空気は、傘裏部106に沿って傘部102の周縁に向かって移動する。つまり、空気噴射部53は、軸部101および傘裏部106を覆うように圧縮空気を噴射する。
回収ポート60には、吸気ポート20に開口する回収口107が設けられている。回収口107は、吸気流路42と還流路63とを連通させる。回収口107は、バルブシート104の近傍、すなわち、吸気ポート20の開口部26の近傍に設けられる。具体的には、回収口107は、空気噴射口105と吸気ポート20の開口部26との間(さらに具体的には、空気噴射口105とバルブシート104との間)に設けられる。回収口107の開口面積は、例えば、空気噴射口105の開口面積よりも大きい。
なお、回収ポート60は、吸気ポート20の周囲に複数設けられてもよい。この場合、複数の回収口107は、吸気ポート20の開口部26の周方向に分散して設けられてもよい。また、この場合、複数の回収ポート60は、第2流通管61に集合される。
図4は、吸気装置3の動作タイミングを説明する説明図である。図4では、吸気行程の開始時点のクランク角を0度としている。また、各行程は、クランク角が180度進むごとに切り替わる。
吸気バルブ22は、排気行程から吸気行程へ移る少し前に開き始め、吸気行程中に開口部26を開状態に維持する。このため、吸気行程では、吸気流路42および開口部26を通じてシリンダ13内に空気が導入される。
また、吸気行程では、インジェクタ30から燃料がシリンダ13内に噴射される。このため、吸気行程では、燃焼室18において、空気と燃料とからなる混合気が生成される。混合気は、未燃焼燃料を含む流体である。
吸気バルブ22は、吸気行程から圧縮行程へ移った直後には開口部26を完全に閉じていない。そして、吸気バルブ22は、吸気行程の終了(圧縮行程の開始)から所定クランク角分の時間の経過後に開口部26を完全に閉じる。図4では、吸気バルブ22が開口部26を完全に閉じるときのクランク角をクランク角CA1で示している。クランク角CA1は、例えば、180度から270度の間に設定される。
吸気行程から圧縮行程へ移ると、ピストン12は、下死点から上死点へ移動する。また、上述のように、圧縮行程へ移った直後から所定クランク角分の時間が経過するまでは、開口部26が開いている。このため、圧縮行程へ移った直後から開口部26が完全に閉じるまでの間、燃焼室18内の未燃焼燃料を含む流体の一部は、ピストン12の上死点への移動に応じて、開口部26を通じて吸気ポート20へ押し出される(図2の一点鎖線の矢印A2を参照)。
つまり、吸気行程の終了から吸気バルブ22が開口部26を完全に閉じるまでの期間は、未燃焼燃料を含む流体が燃焼室18から吸気ポート20に押し出される期間に相当する。以後、吸気行程の終了から吸気バルブ22が開口部26を完全に閉じるまでの期間のことを吹き戻し期間と呼ぶことがある。また、未燃焼燃料を含む流体のことを、未燃焼流体と呼ぶことがある。なお、未燃焼流体は、混合気に限らず、例えば、エンジンオイルが混ざったブローバイガスであってもよい。
また、吸気バルブ22の傘裏部106付近や吸気ポート20の開口部26付近の温度は、燃焼室18内の温度よりも低く、かつ、吸気流路42の上流側(例えば、スロットルバルブよりも上流側)の温度よりも高い。
このため、吸気バルブ22の傘裏部106付近や吸気ポート20の開口部26付近では、燃焼室18から押し出された未燃焼流体の不完全燃焼が生じる。つまり、吸気バルブ22の傘裏部106付近や吸気ポート20の開口部26付近は、不完全燃焼を生じ易い所定の温度範囲内の温度となっている。その結果、吸気バルブ22の傘裏部106および吸気ポート20の開口部26には、煤などのデポジットが堆積する。吸気バルブ22および吸気ポート20にデポジットが堆積すると、吸気抵抗が増加し、内燃機関2の性能が低下するおそれがある。
そこで、本実施形態の吸気装置3は、軸部101および傘裏部106を覆うように空気噴射部53から圧縮空気を噴射する(図2および図3の実線の矢印A1を参照)。
具体的には、バルブ制御部91は、吸気行程中、第1バルブ52を閉状態にさせる。例えば、バルブ制御部91は、第1バルブ52に閉弁を示す信号を送信し、第1バルブ52は、その閉弁を示す信号にしたがって閉状態となる。なお、バルブ制御部91は、第1バルブ52に信号を送信しないことをもって、第1バルブ52を閉状態としてもよい。第1バルブ52が閉状態になると、圧縮空気は噴射されない。
バルブ制御部91は、吸気行程から圧縮行程へ切り替わると、第1バルブ52を開状態にさせる。例えば、バルブ制御部91は、第1バルブ52に開弁を示す信号を送信し、第1バルブ52は、その開弁を示す信号にしたがって開状態となる。第1バルブ52が開状態になると、空気噴射口105から圧縮空気が噴射される。
バルブ制御部91は、開口部26が吸気バルブ22によって完全に閉じられるまで(クランク角がクランク角CA1以上になるまで)、第1バルブ52を開状態に維持させる。第1バルブ52が開状態に維持されている間、圧縮空気は噴射され続ける。
バルブ制御部91は、開口部26が吸気バルブ22によって完全に閉じられると(クランク角がクランク角CA1以上になると)、第1バルブ52を閉状態にさせる。つまり、開口部26が吸気バルブ22によって完全に閉じられると、圧縮空気の噴射が停止される。そして、バルブ制御部91は、次の吸気行程が終了するまで、第1バルブ52を閉状態に維持させる。つまり、開口部26が吸気バルブ22によって完全に閉じられてから次の吸気行程が終了するまでの期間、圧縮空気は噴射されない。
このように、バルブ制御部91は、吹き戻し期間に、第1バルブ52を開状態にさせて、空気噴射部53に圧縮空気を噴射させる。
本実施形態の吸気装置3は、吹き戻し期間に傘裏部106に圧縮空気を噴射するため、傘裏部106が圧縮空気の層(換言すると、エアカーテン)によって保護され、燃焼室18から押し出される未燃焼流体が傘裏部106に接触することを防止することができる。このため、本実施形態の吸気装置3は、吸気バルブ22の傘裏部106にデポジットが堆積することを防止することができる。
なお、多気筒の内燃機関2の場合、空気噴射部53および第1バルブ52は、吸気バルブ22ごとに設けられる。そして、バルブ制御部91は、シリンダ13ごとに第1バルブ52の開閉制御を行う。なお、空気圧縮部51は、複数の第1バルブ52(空気噴射部53)について共用されてもよい。
また、本実施形態の吸気装置3は、圧縮空気の噴射に加え、還流路63を通じて未燃焼流体を吸気流路42の上流に移動させる。
具体的には、バルブ制御部91は、吸気行程中、第2バルブ62を閉状態にさせる。例えば、バルブ制御部91は、第2バルブ62に閉弁を示す信号を送信し、第2バルブ62は、その閉弁を示す信号にしたがって閉状態となる。なお、バルブ制御部91は、第2バルブ62に信号を送信しないことをもって、第2バルブ62を閉状態としてもよい。第2バルブ62が閉状態になると、還流路63を通じた未燃焼流体の移動は起こらない。
バルブ制御部91は、吸気行程から圧縮行程へ切り替わると、第2バルブ62を開状態にさせる。例えば、バルブ制御部91は、第2バルブ62に開弁を示す信号を送信し、第2バルブ62は、その開弁を示す信号にしたがって開状態となる。
第2バルブ62が開状態になると、吸気ポート20内の圧力よりもスロットルバルブの上流側の圧力の方が低いため、燃焼室18から押し出された未燃焼流体が、回収口107を介して還流路63に導かれる(図2の一点鎖線の矢印A2を参照)。そして、還流路63に導かれた未燃焼流体は、還流路63を通じて、スロットルバルブ44の上流側の吸気管41内に移動する。
バルブ制御部91は、開口部26が吸気バルブ22によって完全に閉じられるまで(クランク角がクランク角CA1以上になるまで)、第2バルブ62を開状態に維持させる。第2バルブ62が開状態に維持されている間、燃焼室18から押し出された未燃焼流体は、還流路63を通じてスロットルバルブ44の上流側に移動し続ける。
バルブ制御部91は、開口部26が吸気バルブ22によって完全に閉じられると(クランク角がクランク角CA1以上になると)、第2バルブ62を閉状態にさせる。つまり、開口部26が吸気バルブ22によって完全に閉じられると、還流路63を通じた未燃焼流体の移動が停止される。そして、バルブ制御部91は、次の吸気行程が終了するまで、第2バルブ62を閉状態に維持させる。つまり、開口部26が吸気バルブ22によって完全に閉じられてから次の吸気行程が終了するまでの期間、還流路63を通じた未燃焼流体の移動は起こらない。
このように、バルブ制御部91は、吹き戻し期間に第2バルブ62を開状態にさせて、吸気ポート20の開口部26付近に存在する未燃焼流体を、還流路63を通じて吸気流路42の上流側に移動させる。
本実施形態の吸気装置3は、吹き戻し期間に未燃焼流体を吸気流路42の上流側へ移動させることで、温度が不完全燃焼を生じ易い温度範囲内にある吸気ポート20の開口部26付近に未燃焼流体が滞留することを防止することができる。このため、本実施形態の吸気装置3は、吸気バルブ22の傘裏部106および吸気ポート20の開口部26にデポジットが堆積することを、より効果的に防止することができる。
なお、還流路63を通じて吸気流路42の上流側に移動される流体は、未燃焼流体に限らない。例えば、空気噴射部53から噴射された圧縮空気も、還流路63を通じて吸気流路42の上流側に移動されてもよい。
また、吸気流路42の上流側の温度は、上述のように吸気ポート20の開口部26付近の温度に比べて低く、不完全燃焼が生じる温度よりも低い。このため、吸気流路42の上流側に移動された未燃焼流体の不完全燃焼は起こらない。その結果、吸気流路42の上流側では、移動された未燃焼流体に起因するデポジットが堆積しない。
なお、多気筒の内燃機関2の場合、回収ポート60および第2バルブ62は、吸気ポート20ごとに設けられる。そして、バルブ制御部91は、シリンダ13ごとに第2バルブ62の開閉制御を行う。
図5は、バルブ制御部91の動作を説明するフローチャートである。バルブ制御部91は、所定時間間隔ごとにクランク角センサ81からクランク角を取得する(S100)。次に、バルブ制御部91は、クランク角が、吸気行程の終了を示す180度よりも小さいか否かを判定する(S110)。
クランク角が180度よりも小さい場合(S110におけるYES)、バルブ制御部91は、第1バルブ52を閉状態とし(S120)、第2バルブ62を閉状態とする(S130)。なお、直前の第1バルブ52および第2バルブ62が閉状態である場合には、バルブ制御部91は、第1バルブ52および第2バルブ62の閉状態を維持させる。
一方、クランク角が180度よりも小さくない(180度以上の)場合(S110におけるNO)、バルブ制御部91は、クランク角が、吸気バルブ22により開口部26が完全に閉じる時点を示すクランク角CA1よりも大きいか否かを判定する(S140)。
クランク角がクランク角CA1よりも大きくない(クランク角CA1以下の)場合(S140におけるNO)、バルブ制御部91は、第1バルブ52を開状態とし(S150)、第2バルブ62を開状態とする(S160)。なお、直前の第1バルブ52および第2バルブ62が開状態である場合には、バルブ制御部91は、第1バルブ52および第2バルブ62の開状態を維持させる。
一方、クランク角がクランク角CA1よりも大きい場合(S140におけるYES)、バルブ制御部91は、第1バルブ52を閉状態とし(S120)、第2バルブ62を閉状態とする(S130)。なお、直前の第1バルブ52および第2バルブ62が閉状態である場合には、バルブ制御部91は、第1バルブ52および第2バルブ62の閉状態を維持させる。
以上のように、本実施形態の吸気装置3は、圧縮空気を吸気バルブ22に噴射することに加え、還流路63を通じて未燃焼流体を吸気流路42の下流側から上流側に還流させる。
したがって、本実施形態の吸気装置3によれば、吸気バルブ22および吸気ポート20へのデポジットの堆積の抑制効果を高くすることが可能である。
また、本実施形態の吸気装置3では、空気噴射部53の空気噴射口105が、傘部102に臨むように軸部101の周囲に設けられている。このため、本実施形態の吸気装置3は、圧縮空気によって傘裏部106を効率よく保護することができる。
また、本実施形態の吸気装置3では、還流路63の上流側の回収口107が、空気噴射口105と吸気流路42の開口部26との間に位置するように設けられている。このため、本実施形態の吸気装置3は、燃焼室18から押し出された未燃焼流体を、還流路63を通じて効率よく移動させることができる。
また、本実施形態の吸気装置3のバルブ制御部91は、吸気行程の終了から吸気バルブ22が吸気流路42の開口部26を完全に閉じるまでの期間(吹き戻し期間)、第1バルブ52を開状態にさせて、空気噴射部53に圧縮空気を噴射させる。このため、本実施形態の吸気装置3は、傘裏部106をより効率よく保護することができる。
また、本実施形態の吸気装置3のバルブ制御部91は、吹き戻し期間以外の期間において、第1バルブ52を閉状態にさせて、空気噴射部53に圧縮空気の噴射を停止させる。これにより、吸気行程では、余分に圧縮空気が噴射されない。このため、本実施形態の吸気装置3は、混合気の空燃比の制御に影響が生じることを抑制することができる。
また、本実施形態の吸気装置3のバルブ制御部91は、吸気行程の終了から吸気バルブ22が吸気流路42の開口部26を完全に閉じるまでの期間(吹き戻し期間)、第2バルブ62を開状態にさせて、還流路63を通じて未燃焼流体を移動させる。このため、本実施形態の吸気装置3は、燃焼室18から押し出された未燃焼流体をより効率よく移動させることができる。
また、本実施形態の吸気装置3のバルブ制御部91は、吹き戻し期間以外の期間において、第2バルブ62を閉状態にさせて、還流路63を通じた未燃焼流体の移動を停止させる。これにより、吸気行程では、吸気流路42の下流側の空気が還流路63を通じて吸気流路42の上流側に移動しない。このため、本実施形態の吸気装置3は、吸気行程における吸込み効率が低下することを防止することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、第1バルブ52および第2バルブ62の両方が、吹き戻し期間において開状態となっていた。しかし、吹き戻し期間の全期間にわたって第1バルブ52および第2バルブ62の両方を開状態にさせる態様に限らない。例えば、バルブ制御部91は、吹き戻し期間のうちの一部の期間において第1バルブ52および第2バルブ62を開状態にさせてもよい。この態様においても、吸気バルブ22および吸気ポート20へのデポジットの堆積を抑制することができる。
また、上記実施形態では、第1バルブ52の開閉タイミングと第2バルブ62の開閉タイミングとが一致していた。しかし、第1バルブ52の開閉タイミングと、第2バルブ62の開閉タイミングとがずれてもよい。例えば、吹き戻し期間の前半において第1バルブ52を開状態とするとともに第2バルブ62を閉状態とし、吹き戻し期間の後半において第2バルブ62を開状態とするとともに第1バルブ52を閉状態としてもよい。この態様においても、吸気バルブ22および吸気ポート20へのデポジットの堆積を抑制することができる。ただし、第1バルブ52の開閉タイミングと第2バルブの開閉タイミングを一致させる方が、吸気バルブ22および吸気ポート20へのデポジットの堆積をより効果的に抑制することができる。
なお、上記実施形態において、バルブ制御部91が、本発明の第1のバルブ制御部および第2のバルブ制御部に相当する。