JP2020029551A - 熱収縮透湿性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、透湿性に加えて熱収縮性を備えるフィルム及びその製造方法、積層体、紙おむつ及びその製造方法を提供することを、その課題とする。【解決手段】 ポリエステル系エラストマーを主成分とし、かつ以下の特徴1〜4を全て備えることを特徴とする、フィルム。特徴1:透湿度が1,000g/(m2・day)以上である。特徴2:130℃で1分間加熱したときの収縮率の最大値が40%以上である。特徴3:前記収縮率が最大値となる方向をX方向としたときに、X方向における収縮後の回復率が80%以上である。特徴4:前記ポリエステル系エラストマーの融点P(℃)が130℃を超える。【選択図】なし

Description

本発明は、熱収縮性と透湿性に優れたフィルムに関するものである。
近年、医療、衣料、及び衛生材等の分野では、機能性や生産効率化の追求に伴い、従来よりも高い機能や生産適性を持つフィルムが望まれており、種々の開発がなされている。
特に、近年需要増加が著しい紙おむつの用途ではこの傾向が顕著である。例えば、紙おむつの構成材料である防漏材として、ポリエチレンよりなる透湿防水フィルムと不織布の積層体よりなるバックシートが用いられることが一般的である中で、ポリエチレンよりなるフィルムの代替としてより機能性に優れたフィルムの検討がなされている。このようなフィルムとしては、例えば、透湿性と防臭性を有するポリエステル系エラストマーフィルムや(特許文献1)、透湿性と生産時の取り扱い適性に優れた延伸ポリエステル系エラストマーフィルム等が開示されている(特許文献2)。
一方、紙おむつに代表される衛生材には、装着時の身体への密着性や排泄を行った際の排泄物の漏れを抑制することも求められる。そのため、紙おむつ等の脚周り相当部や胴周り相当部にギャザーと呼ばれる伸縮性部材が広く用いられており、その製造方法としては特許文献3に記載されるように、不織布、フィルム、吸収体等を予め積層して接合することで得られた積層体に対して、ウレタンのような伸縮性を有する材料からなる糸を伸張した状態で接合して積層体内にギャザー部を形成する方法が一般的である。
特開平8−84749号公報 特表2009−506198号公報 特開平8−215245号公報
上記のように既存の紙おむつは、フィルム、不織布、及び吸収体等の材料を接合して積層体とする工程や、ウレタンのような伸縮性を有する材料からなる糸で接合する工程等、複雑な工程を経て製造されているのが現状であり、その構造も複雑である。このような状況下では、機能性や生産効率化の追求の観点から、複数の役割を果たす材料が強く求められている。しかしながら、特許文献1及び2に記載のフィルムは、既存のポリエチレンフィルムの透湿防水フィルムとしての機能を改善するものの、機能性や生産効率化の面では更なる改善の余地がある。
本発明はかかる従来技術の欠点を鑑み、透湿性に加えて熱収縮性を備えるフィルムを提供することを、その課題とする。本発明のフィルムは、透湿性に加えて熱収縮性にも優れるため、衛生材のギャザー部の形成等に好適に用いることができる。
上記課題を解決するため、本発明は、下記の構成からなる。
(1) ポリエステル系エラストマーを主成分とし、かつ以下の特徴1〜4を全て備えることを特徴とする、フィルム。特徴1:透湿度が1,000g/(m・day)以上である。特徴2:130℃で1分間加熱したときの収縮率の最大値が40%以上である。特徴3:前記収縮率が最大値となる方向をX方向としたときに、X方向における収縮後の回復率が80%以上である。特徴4:前記ポリエステル系エラストマーの融点P(℃)が130℃を超える。
(2) 結晶核剤を含むことを特徴とする、(1)に記載のフィルム。
(3) 前記ポリエステル系エラストマーが、平衡吸水率が1.0%以上であるポリエステル系エラストマーであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のフィルム。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載のフィルムと不織布とを有することを特徴とする、積層体。
(5) 前記積層体を前記X方向と平行な長辺を有する30cm×20cmの長方形として、130℃で1分間加熱したときに、前記X方向と平行な一対の長辺が皺構造を呈することを特徴とする、(4)に記載の積層体。
(6) (1)〜(3)のいずれかに記載のフィルムを含むことを特徴とする、紙おむつ。
(7) 胴周り及び脚周りギャザー部の少なくとも一方が、(1)〜(3)のいずれかに記載のフィルムを含むことを特徴とする、(6)に記載の紙おむつ。
(8) (1)〜(3)のいずれかに記載のフィルムの製造方法であって、融点P(℃)が130℃を超えるポリエステル系エラストマーを主成分とするシートを、50℃以上P−25℃以下の温度Q(℃)で熱処理する熱処理工程、シートを50℃よりも低い温度R(℃)で2倍以上10倍以下に延伸してフィルムとする延伸工程、及びR<S<Qの関係にある温度S(℃)でフィルムを熱固定する熱固定工程をこの順に有することを特徴とする、フィルムの製造方法。
(9) (6)又は(7)に記載の紙おむつの製造方法であって、(1)〜(3)のいずれかに記載のフィルム、吸収体、及び不織布が積層された構造を有する紙おむつ前駆体の、脚回り相当部又は胴回り相当部を加熱してギャザーを形成するギャザー形成工程を有することを特徴とする、紙おむつの製造方法。
本発明により、透湿性に加えて熱収縮性を備えるフィルムを提供することができる。本発明のフィルムは、透湿性だけでなく熱収縮性にも優れるため、紙おむつ等の衛生材の胴回りや脚周りギャザー等の伸縮部材等に好適に用いることができる。
本発明のフィルムは、ポリエステル系エラストマーを主成分とし、かつ以下の特徴1〜4を全て備えることを特徴とする。特徴1:透湿度が1,000g/(m・day)以上である。特徴2:130℃で1分間加熱したときの収縮率の最大値が40%以上である。特徴3:前記収縮率が最大値となる方向をX方向としたときに、X方向における収縮後の回復率が80%以上である。特徴4:前記ポリエステル系エラストマーの融点P(℃)が130℃を超える。以下に、本発明を実施するための望ましい形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(ポリエステル系エラストマー)
本発明のフィルムは、透湿性、熱収縮性、及び収縮後の回復性の観点から、ポリエステル系エラストマーを主成分とすることが重要である。ここで、ポリエステル系エラストマーを主成分とするとは、フィルム中の樹脂成分全体を100質量%としたときに、ポリエステル系エラストマーを50質量%以上100質量%以下含むことをいう。フィルム中のポリエステル系エラストマーの含有量は、熱収縮性及び収縮後の回復性の観点から、フィルム中の樹脂成分全体を100質量%としたときに、80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。なお、ポリエステル系エラストマーは、本発明の効果を損なわない限り一種類でも複数種類でもよく、後者の場合におけるポリエステル系エラストマーの含有量は、ポリエステル系エラストマーに相当する全ての成分を合算して算出するものとする。
また、本発明のフィルムにおいては、熱収縮性を確保する観点から、ポリエステル系エラストマーの融点P(℃)が130℃を超えることが重要である。融点P(℃)は、示差走査熱量計(DSC)により、測定サンプルを20℃から280℃まで昇温速度20℃/分で昇温させ、その過程において観測される融解ピークの値を読み取ることで測定することができる。なお、融解ピークが複数観測された場合は、最も高い温度を融点とする。
このような態様とすることにより、130℃までの温度であれば加熱によってフィルムが融解しないため、フィルムの熱収縮性を十分に確保することができる。ポリエステル系エラストマーの融点P(℃)の上限は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、成形性の観点から280℃となる。なお、ポリエステル系エラストマーが複数種類含まれる場合においては、樹脂成分全体を100質量%としたときに、融点P(℃)が130℃を超えるポリエステル系エラストマーが合計で50質量%以上100質量%以下含まれていれば、ポリエステル系エラストマーの融点P(℃)が130℃を超えるものとみなすことができる。
本発明においてエラストマーとは、25℃でゴム弾性を有する高分子量体をいい、ポリエステル系エラストマーとは、結晶性を有するポリエステル構造のブロック単位からなるハードセグメントと、25℃未満のガラス転移温度を有し、ゴム弾性を発現するブロック単位からなるソフトセグメントを有するブロックコポリマーをいう。
フィルムの主成分に相当する樹脂成分が不明である場合においては、フィルムの主成分がポリエステル系エラストマーであるか否かは、以下の要件1〜3を全て満たすか否かで判断することができる。なお、フィルムの中の樹脂成分の分離や含有量測定の方法は特に限定されず、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の公知の方法を用いることが可能である。
要件1:後述するX方向における収縮後の回復率が80%以上である。
要件2:フィルムを構成する樹脂成分を100質量%としたときに50質量%以上含まれる樹脂成分を特定し、その樹脂成分について、20℃から280℃まで昇温速度20℃/分で昇温する前述のDSC測定を行った際、上記温度範囲内に吸熱ピークが観察される。
要件3:要件2で特定した樹脂成分について、赤外分光スペクトル(IR)測定を行った際、1,720±20cm−1の範囲内にピークが観察される。
具体的には、X方向における収縮後の回復率が80%以上であることは、フィルムの主成分がエラストマーであることの指標である。また、DSC測定の昇温過程における吸熱ピークは当該樹脂が結晶性であることの指標であり、IR測定における1,720±20cm−1の範囲におけるピークは当該樹脂がポリエステル系であることの指標である。すなわち、上記要件1〜3を全て満たす場合、フィルムの主成分がポリエステル系エラストマーであると判断することができる。
但し、フィルムを構成する樹脂成分を100質量%としたときに50質量%以上含まれる樹脂成分が存在しない場合における要件2の該非は、フィルムを構成する樹脂成分全てについてDSC測定を行い、昇温過程における吸熱ピークが観察された樹脂成分の合計が50質量%以上であるか否かで判断することができる。要件3の該非についても同様である。
本発明のフィルムに用いることができるポリエステル系エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントとソフトセグメントの組み合わせが、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステルであるブロック共重合体、及び芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体等が挙げられる。中でも、フィルムとしたときの透湿性の観点から、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体であることが好ましい。
また、フィルムとしたときの透湿性の観点からは、ポリエステル系エラストマーが、平衡吸水率が1.0%以上であるポリエステル系エラストマーであることも好ましい。ここで、「ポリエステル系エラストマーが、平衡吸水率が1.0%以上であるポリエステル系エラストマーである」とは、フィルム中のポリエステル系エラストマーを100質量%としたときに、50質量以上100質量%以下を平衡吸水率が1.0%以上であるポリエステル系エラストマーが占めることをいい、平衡吸水率とはASTM−D570に従い、試料を水中に23℃で24時間浸漬した前後での試料の質量変化から求めた吸水率をいう。なお、上記観点からは、フィルム中のポリエステル系エラストマーが、平衡吸水率が1.0%以上であるポリエステル系エラストマーのみであることがより好ましい。また、平衡吸水率の上限は本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、ポリエステル系エラストマーの水への溶解を抑制してフィルムとしての形態を維持する観点から、50%となる。
すなわち、本発明のフィルムにおけるポリエステル系エラストマーとしては、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体であって、平衡吸水率が1.0%以上であるものを用いることが特に好ましい。芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体であって、平衡吸水率が1.0%以上であるポリエステル系エラストマーとしては、例えば、東レ・デュポン社製の“ハイトレル”(登録商標)のG3548LNグレード(平衡吸水率:3.6%)、及びHTR8206グレード(平衡吸水率:30.0%)等が挙げられる。
(フィルムの透湿度)
本発明のフィルムは、その透湿度が1,000g/(m・day)以上であることが重要である。フィルムの透湿度を1,000g/(m・day)とすることにより、医療、衣料、及び衛生材等の用途において人体に着用して用いる場合、人体とフィルム間の湿度を低減し、快適性を与えることができる。上記観点から、フィルムの透湿度は1,500g/(m・day)以上であることがより好ましい。また、フィルムの透湿度は、人体にフィットしているときの快適性の観点からは大きければ大きいほど好ましく上限は特にないが、衛生材に適用する水準の防水性を確保する点も考慮すると、上限は8,000g/(m・day)あれば十分である。なお、ここでフィルムの透湿度とは、25℃、相対湿度90%に設定した恒温恒湿装置にて、測定に際し塩化カルシウムとフィルムの距離は調整しない点以外はJIS Z0208(1976)に規定された方法と同様の方法を用いて測定するフィルムの透湿度をいう。
本発明のフィルムの透湿度を1,000g/(m・day)以上又は上記の好ましい範囲とするための方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、フィルム中のポリエステル系エラストマーの種類や含有量を調整する方法、フィルム厚みを調整する方法が挙げられる。具体的には、平衡吸水率が1.0%以上であるポリエステル系エラストマーの含有量を上記の好ましい範囲で増やすことや、フィルムの厚みを小さくすること等により、フィルムの透湿度を大きくすることができる。
(収縮率、回復率)
本発明のフィルムは、130℃で1分間加熱したときの収縮率の最大値が40%以上であることが重要である。130℃で1分間加熱したときの収縮率(以下、単に収縮率ということがある。)の最大値を40%以上とすることにより、本発明のフィルムを不織布等との積層体として紙おむつ等に用いる際に、伸縮特性を発現させたい位置を部分的に加熱することにより、フィルムの収縮に追従して不織布等の非伸縮材料が皺状の弛みを形成し、積層体の収縮部分に収縮方向と反対の方向への伸張性を与えることができる。なお、130℃で1分間加熱したときの収縮率の最大値が100%を下回る場合に上記効果が発現する観点から、130℃で1分間加熱したときの収縮率の最大値の上限は100%未満の値となる。
このとき、収縮率の最大値が大きいほど弛み量も大きくなるため、フィルムにより高い伸張性を与えることができる。この観点から、フィルムの収縮率の最大値は50%以上100%未満であることがより好ましく、60%以上100%未満であることがさらに好ましい。
なお、「収縮率の最大値」は、以下の手順によりX方向を特定して、X方向における収縮率を測定することにより決定することができる。先ず、フィルムの面内の1点を中心として半径5cmの円を描くように、5°ごとに直径に該当する直線をマーキングしてX方向特定用のサンプルを作製する。次いで、温度を130℃に調節したオーブンで当該サンプルを1分間加熱し、加熱により最も直径が短くなる方向を特定する(この方向を、X方向とする。)。
次いで、このX方向を長辺とする150mm×10mmの短冊状にフィルムをカットして、当該フィルムの重心を中点とし、かつX方向と平行な50mmの直線(以下、直線Lということがある。)を引いて収縮率測定用サンプルとする。次いで、直線Lに触れないように片側の短辺付近をクリップで把持した当該サンプルを、温度を130℃に調節したオーブンに投入して1分間加熱した後、直線Lの長さY(mm)を測定する。こうして得られたY(mm)を用いて下記式1により収縮率(%)を計算し、得られた値が収縮率の最大値(%)となる。
式1: 収縮率(%)=(50−Y)×100/50。
本発明のフィルムは、X方向における収縮後の回復率が80%以上であることが重要である。X方向における収縮後の回復率を80%以上とすることにより、熱収縮したフィルムはX方向への伸張性とともに回復性を有することとなる。そのため、フィルムを不織布等と重ね合わせて紙おむつ等に用いる場合に、X方向に収縮するギャザー機能を与えることができる。
紙おむつ等の衛生材におけるギャザーの役割が、装着時の身体への密着性や排泄を行った際の排泄物の漏れを抑制する点であることを踏まえると、フィルムのX方向における収縮後の回復率は大きいほど好ましい。具体的には、フィルムのX方向における収縮後の回復率は、85%以上であることがより好ましい。また、フィルムの収縮後の回復率の上限は、形態保持の観点から100%となる。
X方向における収縮後の回復率は、以下の手順で測定することができる。先ず、JIS K−7127(1999)に規定された方法に従って、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、フィルムを歪100%の位置までX方向に伸長させた後、続けて同じ速度でそのチャックを歪0%に向かってリターンバックさせて、応力−歪測定を行う。このとき、リターンバックの過程で最初に応力値が0を示したときの歪をZ(%)として記録した後、得られたZ(%)を用いて下記式2により回復率を計算し、得られた値がX方向における収縮後の回復率となる。
式2: 回復率(%)=100−Z。
本発明のフィルムの収縮率の最大値を40%以上又は上記の好ましい範囲とするための方法は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、フィルム中のポリエステル系エラストマーの含有量を調整する方法、後述する製造方法において延伸倍率を調整する方法等が挙げられる。具体的には、ポリエステル系エラストマーの含有量を上記の好ましい範囲で増やすことや、延伸倍率を大きくすること等により、フィルムの収縮率の最大値を大きくすることができる。なお、本発明のフィルムのX方向における収縮後の回復率を80%以上又は上記の好ましい範囲とするための方法も同様である。
(フィルムの厚み)
本発明のフィルムの厚みは、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、ハンドリング性、及び生産性の観点から、3μm以上50μm以下であることが好ましい。フィルムの厚みは、走査型電子顕微鏡でフィルム断面の写真を観察することにより測定することができる。フィルムの厚みを3μm以上とすることで、フィルムのコシが強くなるため取り扱い性が向上し、また、ロール巻姿や巻出し性も良好となる。一方、フィルムの厚みを50μm以下とすることで、透湿性を発現しやすくなる。さらに、フィルムの機械強度及び透湿度を好ましい範囲とする観点から、フィルムの厚みは、5μm以上20μm以下であることがより好ましい。
(結晶核剤)
本発明のフィルムは、ポリエステル系エラストマーの収縮性発現の上で重要な役割を果たす結晶成分の量や大きさを調整する観点から、結晶核剤を含んでいることが好ましい。ポリエステル系エラストマーのように、結晶性のハードセグメントと常温で柔軟なソフトセグメントを有する結晶性の熱可塑性エラストマーでは、ハードセグメント部分に形成された結晶が擬似架橋点として機能することで、架橋ゴムのように回復性を示すことが知られている。後述する延伸及び熱固定によりポリエステル系エラストマーを主成分とするフィルムを引き伸ばすと、擬似架橋点の間でソフトセグメントが引き伸ばされた緊張状態となる。このような状態にあるフィルムを、例えば130℃以上の高温にさらすと、擬似架橋点によるソフトセグメントの拘束が緩んで収縮が起こる。一方、結晶核剤には、結晶生成の基点となる核の生成を促進して結晶の数を増やす効果があるため、結晶性の熱可塑性エラストマーに結晶核剤を適用して、擬似架橋点の役割を果たす結晶の数を増やすことにより、延伸及び熱固定によるソフトセグメントの緊張状態を強くすることができ、結果、高い収縮率を与えやすくなる。
本発明のフィルムにおける結晶核剤は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、公知の無機結晶核剤や有機結晶核剤を単独で又は組み合わせて使用できる。無機結晶核剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化亜鉛、マイカ、タルク、カオリン、クレー、及びモンモリロナイト等を単独で又は複数種類組み合わせて用いることが好ましい。有機結晶核剤としては、例えば、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビス−12−ジヒドロキシステアリン酸アミド及びトリメシン酸トリシクロヘキシルアミドなどの有機アミド系化合物、銅フタロシアニン及びピグメントイエロー110などの顔料系核剤、ジベンジリデンソルビトール、ビス(4−エチルベンジリデンソルビトール)などの誘導体、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、安息香酸ナトリウム、安息香酸アルミニウム等の有機カルボン酸金属塩、及びリン酸エステル系金属塩等を単独で又は組み合わせて用いることができる。これらの中でも、コスト、結晶核剤効果や機械強度の観点から、結晶核剤は、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムの少なくとも一方であることが好ましい。
本発明のフィルムにおける結晶核剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、使用する樹脂の種類等に応じて適宜調整することが可能であるが、フィルムの結晶核剤効果と機械強度を両立する観点から、フィルムにおける樹脂成分全体を100質量部としたときに、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましい。なお、結晶核剤が複数成分である場合、その含有量は全成分を合計して算出する。
(不織布との積層体)
本発明の積層体は、本発明のフィルムと不織布とを有する。このような積層体は、例えば、本発明のフィルムと不織布とを積層及び接合することにより得ることができ、積層及び接合する方法の詳細は後述する。不織布とは、繊維を熱、機械的又は化学的な作用によって接着又は絡み合わせてシート状にしたものをいう。
本発明の積層体に用いることができる不織布としては、例えば、湿式不織布、レジンボンド式乾式不織布、サーマルボンド式乾式不織布、スパンボンド式乾式不織布、ニードルパンチ式乾式不織布、ウォータージェットパンチ式乾式不織紙布、フラッシュ紡糸式乾式不織布等の他、目付や厚みが均一にできる抄紙法により製造された不織布が挙げられる。中でも、コストや引張強さ等の面から、スパンボンド式乾式不織布を用いることが好ましい。
本発明のフィルムと不織布を積層及び接合する方法としては、例えば、凹凸彫刻が施されたロールと一対のロールにより押圧し、これらのロールに熱や超音波、高周波により熱を付与して接着を行うエンボス加工や、低融点の接着成分を有する粉体を散布して熱処理を行うことで接着するシンター加工、ホットメルト接着剤等をスプレー状やスパイラル状に散布して接着するホットメルト加工等が挙げられる。
また、本発明の積層体は、前記積層体をX方向と平行な長辺を有する30cm×20cmの長方形として、130℃で1分間加熱したときに、X方向と平行な一対の長辺が皺構造を呈することが好ましい。ここでX方向とは、先に定義したフィルムのX方向をいう。皺構造とは、フィルムと不織布の非接合位置において不織布がフィルムから脱離することにより形成される山と接合位置で形成される谷を連続的に含んだ凹凸構造をいう。なお、このときの加熱は表面温度が130℃になるように加熱した一対のゴムロールを通すことで行うものとする。
積層体をこのような態様とすることにより、上記のように積層体を防漏材として適用した紙おむつの脚周り相当部や胴周り相当部を部分的に加熱した場合、本発明のフィルムが透湿防水フィルムの役割を果たすとともに、加熱により皺構造を形成した部分がギャザーとして機能する。なお、皺構造における山と谷は、本発明の効果を損なわない限り必ずしも交互に繰り返している必要はない。
本発明の積層体をこのような態様とする方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば本発明のフィルムとポリプロピレン系樹脂を主成分とするスパンボンド式乾式不織布を、スチレン系樹脂を主成分とするホットメルト接着剤を用いて積層及び接合し、積層体とする方法が挙げられる。
(フィルムの製造方法)
本発明のフィルムの製造方法は、融点P(℃)が130℃を超えるポリエステル系エラストマーを主成分とするシートを、50℃以上P−25℃以下の温度Q(℃)で熱処理する熱処理工程、シートを50℃よりも低い温度R(℃)で2倍以上10倍以下に延伸してフィルムとする延伸工程、及びR<S<Qの関係にある温度S(℃)でフィルムを熱固定する熱固定工程をこの順に有することを特徴とする。
本発明のフィルムの製造方法は、収縮率と収縮後の回復率を高める観点から、融点P(℃)が130℃を超えるポリエステル系エラストマーを主成分とするシートを、50℃以上P−25℃以下の温度Q(℃)で熱処理する熱処理工程を有することが重要である。このようなシートに対して温度Q(℃)での熱処理を行うことにより、ポリエステル系エラストマーのハードセグメントにおける結晶の形成が促進されて擬似架橋点の数が増加する。そのため、後述する延伸工程や熱固定工程を経て得られるフィルムのX方向における収縮率を容易に高くすることができる。
熱処理温度は、ポリエステル系エラストマーのハードセグメントにおける結晶化を促進させる観点からは高いほど好ましいが、その一方でロールtoロール方式での熱処理を想定した場合、融点に近い温度領域ではシートの粘着や強度の低下による搬送不良が起こりやすくなる。これらの観点から、温度Q(℃)は70℃以上P−25℃以下であることが好ましく、100℃以上P−25℃以下であることがより好ましい。
本発明のフィルムは、熱処理工程を経たシートを50℃よりも低い温度R(℃)で2倍以上10倍以下に延伸してフィルムとする延伸工程、及びR<S<Qの関係にある温度S(℃)でフィルムを熱固定する熱固定工程をこの順に有することが重要である。このような態様とすることにより、延伸工程で加えられた歪がフィルム内部にエネルギーとして蓄積され、熱固定温度よりも高い温度に暴露した際に、蓄積されたエネルギーが解放されてフィルムに収縮性が発現する。
延伸工程における延伸倍率は、フィルム内部に蓄積されたエネルギーを大きくして収縮性を向上させる観点と、延伸による機械強度低下を抑制する観点から、3倍以上6倍以下であることがより好ましく、3.5倍以上6倍以下がさらに好ましい。また、フィルム内部に蓄積されたエネルギーを大きくして収縮性を大きくする観点から、シートの延伸温度R(℃)は引張応力が高くなる低温領域とすることが好ましい。具体的には、延伸温度R(℃)は40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましい。なお、延伸温度R(℃)の下限は、結露等によるフィルムの品位低下を踏まえると5℃である。
(紙おむつ、及び紙おむつの製造方法)
本発明の紙おむつは、本発明のフィルムを含むことが重要である。本発明の紙おむつにおいて、本発明のフィルムを含む部位は特に限定されないが、本発明のフィルムが加熱により高い収縮率を発現する観点から、胴周り及び脚周りギャザー部の少なくとも一方が、本発明のフィルムを含むことが好ましい。ギャザー部とは、伸縮可能なひだ状の部分をいう。このような態様とすることにより、伸縮性に優れるギャザー部の形成容易性と、尿や便の漏れの軽減と装着時のフィット感を両立することができる。本発明の紙おむつを得る手段は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば後述する紙おむつの製造方法等が挙げられる。
本発明の紙おむつの製造方法は、生産性向上の観点から、本発明のフィルム、吸収体、及び不織布が積層された構造を有する紙おむつ前駆体の、脚回り相当部又は胴回り相当部を加熱してギャザーを形成するギャザー形成工程を有することが重要である。ここで吸収体とは、排泄物を吸収保持する役割を有した構成体を指す。吸収体を構成する材料としては、例えばパルプ材料と吸水性ポリマーが挙げられる。このような吸収剤において、パルプ材料は、排泄物を吸収体内で拡散させるとともに一時的に吸収する役割を担い、吸水性ポリマーは、後述する表面不織布のような繊維材料に一時的に吸収された液体を保持して表面への逆戻り防止する役割を担う。
一般的な紙おむつは、表面不織布とバックシートの間に吸収体を配置した構成をとる。なお、表面不織布とは装着時に人肌側に位置する不織布を指し、バックシートとは透湿防水フィルムと不織布を有する積層体であって装着時に衣服側に位置する積層体を指す。このような構成とすることで、紙おむつは、人肌側における排泄物の滞留及び衣服側における排泄物の漏れを軽減することができる。
また、一般的な紙おむつにおけるギャザーは、通常紙おむつ前駆体の胴回り相当部又は脚回り相当部に、ウレタン糸のような伸縮性に優れた糸を伸張した状態で接合した後に張力を開放して自然長に戻すことにより形成される。一方、本発明の紙おむつの製造方法は、脚回り相当部又は胴周り相当部を加熱してフィルムを収縮させるだけでギャザー部を形成ことができるため、ギャザー部の形成がより容易となる。
(フィルムの製造方法の具体例)
次に、本発明のフィルムを製造する方法について具体的に説明するが、本発明のフィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
本発明のフィルムを得るにあたり、融点P(℃)が130℃を超えるポリエステル系エラストマーとして、ハードセグメントとソフトセグメントの組み合わせが芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体であり平衡吸水率が1.0%以上の原料を用いる。上記の原料に加えて結晶核剤等、複数の原料を用いる場合は、各成分を溶融混練することにより樹脂組成物とすることが好ましい。溶融混練の方法については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸又は二軸押出機などの公知の混合機を用いることができる。中でも生産性の観点から、単軸又は二軸押出機の使用が好ましい。
次に、ポリエステル系エラストマー又は上記した方法により得られた樹脂組成物を用いて、インフレーション法、チューブラー法、Tダイキャスト法などの公知のフィルムの製造方法により、無配向シートを得る。その後、得られた無配向シートを、50℃以上P−25℃以下の温度Q(℃)で熱処理することにより、結晶化を促進させる。熱処理を行う方法としては、例えば、Q(℃)に加熱したロール上を搬送する方法を用いることができる。温度Q(℃)は、得られるフィルムの収縮率と収縮後の回復率を高める観点から、70℃以上P−25℃以下であることが好ましく、100℃以上P−25℃以下であることがより好ましい。
さらに、熱処理した無配向シートを、50℃よりも低い温度R(℃)で、少なくとも一方向に2倍以上10倍以下、好ましくは3倍以上6倍以下、より好ましくは3.5倍以上6倍以下の倍率で延伸し、R(℃)を超えQ(℃)未満の温度S(℃)で熱固定することにより、延伸後の形態を固定化する。
延伸及び熱固定の方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、表面温度をR(℃)に設定したロール上を搬送しながらロール間の周速差で長手方向に延伸を行うロール式縦一軸延伸を行った後、S(℃)に加熱したロール上を搬送して熱固定を行う方法や、テンター装置を用いて、R(℃)で幅方向にシートを延伸し、S(℃)で熱固定するテンター式横一軸延伸方法を用いることができる。なお、長手方向とはフィルムが走行する方向若しくは得られたフィルムロールの巻き方向をいい、幅方向とは長手方向とフィルム面内で直交する方向をいう。
R(℃)は、結露等によるフィルムの品位低下を抑えつつフィルム内部に蓄積されたエネルギーを大きくして収縮性を大きくする観点から、5℃以上40℃以下であることが好ましく、5℃以上30℃以下であることがより好ましい。
さらに、フィルムを製膜した後に、印刷性、ラミネート適性、コーティング適性などを向上させる目的で各種の表面処理を施しても良い。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、及び酸処理などが挙げられる。いずれの方法をも用いることができるが、連続処理が可能であり、既存の製膜設備への装置設置が容易な点や処理の簡便さから、コロナ放電処理が好ましい。
こうして得られたフィルムは、一旦広幅の巻き取り機で中間ロールとして巻き取ることができる。また、得られた中間ロールよりフィルムを巻き出して、所望の幅となるようにスリッターで長手方向と平行に切断し、再度巻き取ることによりフィルムロールとすることができる。なお、1本の中間ロールより得るフィルムロールは、1本であっても複数本であってもよい。
(その他用途など)
本発明のフィルムは透湿性を備えたフィルムであり、医療、衣料、及び衛生材用フィルムとして好適に用いることができる。本発明のフィルムを衛生材用フィルムとして用いる場合は、例えば、テープタイプ紙おむつ、パンツタイプ紙おむつ、生理用ナプキン、及び尿取りパッド等の衛生用品として好適に用いることができる。本発明のフィルムは、熱収縮性と収縮後の回復性を備えるため、装着時の身体への密着性や排泄を行った際の排泄物の漏れを抑制するためのギャザーとして有用である点を踏まえると、テープタイプ紙おむつやパンツタイプ紙おむつに特に好適に用いることができる。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
[測定及び評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示すような条件で行った。
(1)フィルムの厚み(μm)
フィルムの幅方向のセンター部からサンプル片を切り出し、ウルトラミクロトームを用いて該サンプル片の長手方向−厚み方向断面(以下、フィルム断面ということがある。)を観察面とするように−100℃で超薄切片を採取した。走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ社製 S−3400N)を用いて倍率500倍〜1,500倍でフィルム断面の写真を撮影し、顕微鏡の測長機能を用いて各点における厚みを測定した。測定は、観察箇所を変えて10回行い、得られた値の平均値をフィルムの厚み(μm)とした。なお、ここで厚み方向とは、長手方向と幅方向に垂直な方向をいう。また、フィルムの厚みは、小数第1位を四捨五入して得られた値とした。
(2)フィルムの透湿度(g/(m・day))
25℃、相対湿度90%に設定した恒温恒湿装置にて、JIS Z0208(1976)に規定された方法に従って透湿カップを用いて測定した。測定は3回行い、得られた値の平均値をフィルムの透湿度(g/(m・day))とした。但し、上記JISの規定とは異なり、測定に際し塩化カルシウムとフィルムの距離は調整しなかった。なお、フィルムの透湿度はフィルムの巻外面を透湿カップ側に配置して測定した。また、本測定に用いた冶具、吸湿剤は以下のとおりである。
透湿カップ:6cmφ、2.5cm深さのカップ
吸湿剤:塩化カルシウム(和光純薬工業(株)製、水分測定用)、20g。
(3)X方向の特定
フィルムの面内の1点を中心として半径5cmの円を描くように5°ごとに直径に該当する直線をマーキングしたサンプルを作製した。次いで、温度を130℃に調節したオーブンで当該サンプルを1分間加熱し、加熱により最も直径が短くなる方向をX方向とした。
(4)130℃で1分間加熱したときの収縮率の最大値(%)
「(3)X方向の特定」にて特定したX方向を長辺とする150mm×10mmの短冊状にフィルムをカットし、当該フィルムの重心を中点とし、かつX方向と平行な50mmの直線(以下、直線Lということがある。)を引いてサンプルとした。次いで、直線Lに振れないように片側の短辺付近をクリップで把持した当該サンプルを、温度を130℃に調節したオーブンに投入して1分間加熱した後、直線Lの長さY(mm)を測定した。得られたY(mm)を用いて下記式1により収縮率(%)を計算した。同様の測定を5回繰り返し、得られた値の平均値を130℃で1分間加熱したときの収縮率の最大値(%)とした。
式1: 収縮率(%)=(50−Y)×100/50。
(5)X方向における収縮後の回復率(%)
島津製作所社製“オートグラフ”(登録商標) AG−ISを用いて、JIS K−7127(1999)に規定された方法に従って、温度23℃、相対湿度65%においてフィルムを歪100%の位置まで「(3)X方向の特定」にて特定したX方向に伸長させた後、続けて同じ速度でそのチャックを歪0%に向かってリターンバックさせて、応力−歪測定を行った。リターンバックの過程で最初に応力値が0を示したときの歪をZ(%)として記録し、得られたZ(%)を用いて下記式2により回復率を計算した。同様の測定を5回繰り返し、得られた値の平均値をX方向における収縮後の回復率(%)とした。
式2: 回復率(%)=100−Z
なお、サンプルの伸長とリターンバックの具体的な手順は以下のとおりとした。先ず、温度23℃、相対湿度65%に調整した恒温室の中で、初期引張チャック間距離を50mmとして、X方向を長辺とする150mm×10mmの短冊状のフィルムサンプルをチャックに挟んだ。その後、引張速度200mm/分で片側のチャックを引張方向に移動させ、チャックの移動距離が50mmに達した後、チャックを初期位置に向けて圧縮速度200mm/分で移動させた。
(6)融点(℃)
サンプル5mgを採取し、示差走査熱量分析装置DSCII型(Seiko Instrument(株)製)を用いて、20℃から280℃まで昇温速度20℃/分で昇温し昇温過程において観測される融解ピークの値を融点として読み取った。なお融解ピークが複数観測された場合は、最も高い温度を融点とした。
(7)熱処理温度(℃)、延伸温度(℃)、熱固定温度(℃)
熱処理ロール、延伸ロール、熱固定ロールの一部を黒色の油性ペンで塗りつぶして光沢を消し、放射温度計(シロ産業社製、品番:MB8R−4110C)を用いて、各ロールから50cm離れた位置より光沢を消した部分の温度(℃)を測定し、それぞれ熱処理温度(℃)、延伸温度(℃)、及び熱固定温度(℃)とした。
[フィルムの原料]
各実施例及び各比較例のフィルムの製造には、以下の原料を用いた。
[樹脂]
(A1) ポリエステル系エラストマー(商品名:“ハイトレル”(登録商標)G3548LN、東レ・デュポン(株)製、融点:154℃、平衡吸水率:3.6%)、使用前には回転式真空乾燥機にて90℃で5時間乾燥した。
(A2) ポリエステル系エラストマー(商品名:“ハイトレル”(登録商標)3046、融点:160℃、平衡吸水率:0.7%)
(A3) 熱可塑性エチレン樹脂(商品名:NUC8506、日本ユニカー(株)製、平衡吸水率0.1%)。
(A4) ポリエステル系エラストマー(商品名:“ハイトレル”(登録商標)HTR8206、東レ・デュポン(株)製、融点:200℃、平衡吸水率:30.0%)
[結晶核剤]
(B1) 硫酸バリウム(商品名:BMH−40、平均粒径:5.0μm、堺化学工業(株)製)
(B2) 炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1800、平均粒径:2.8μm、備北粉化製)
(B3) タルク(商品名:“ミクロエース”(登録商標)SG−95、平均粒径2.5μm、日本タルク(株)製)
なお、各結晶核剤の平均粒径は、日機装(株)製マイクロトラックMT3300を用いて、JIS Z8825(2013)に規定された方法に従ってレーザー回折散乱法により測定した。
[フィルムの作製]
(実施例1)
A1、B1を表1に記載の配合比となるようにシリンダー温度190℃のスクリュー径44mmの真空ベント付二軸押出機に供給して溶融混練し、均質化した後にペレット化して組成物を得た。この組成物のペレットを、回転式ドラム型真空乾燥機を用いて、温度100℃で5時間真空乾燥した。次いで、真空乾燥した組成物のペレットをシリンダー温度200℃、スクリュー径60mmの単軸押出機に供給して溶融混練し、得られた溶融樹脂組成物を直径250mm、リップクリアランス1.0mm、温度を190℃に設定した環状ダイスに導き、ブロー比2.0にてバブル状に上向きに押出してインフレーション法により製膜した。その後、シート状物を冷却リングにより空冷してダイス上方のニップロールで折りたたんだ後、両端部をエッジカッターにて切断して2枚に切り開きロール状に巻き取った。このとき、引き取り速度を調整することにより、厚み50μmの無配向シートを得た。次いで、得られた無配向シートを110℃に加熱したロール上を搬送してシートの熱処理を行った。シートを冷却後、ロール式延伸機にて延伸区間の入り側ロールと出側ロールの周速を変化させることで、延伸温度30℃で長手方向に5倍に延伸した。さらに延伸後の収縮が起こらないように、延伸出側ロールと同じ周速の90℃に加熱したロール上で1秒間熱処理した後、冷却ロール上で冷却し、厚み15μmの一軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの物性及び評価結果を表1に示す。
(実施例2〜8、比較例1〜9)
表1、2に記載のとおりに、各成分の配合比、及び無配向シートの厚みを変更した以外は実施例1と同様にして、フィルムを得た。得られたフィルムの物性及び評価結果を表1、2に示す。なお、比較例6及び9では延伸前シートの延伸性が悪く所定の倍率まで延伸できず、フィルムを得ることができなかった。
(実施例9、比較例10)
表1,2に記載のとおりに、各成分の配合比を変更しするとともに、単軸押出機のシリンダー温度を230℃、環状ダイスの温度を220℃とした以外は、実施例1と同様にして、フィルムを得た。得られたフィルムの物性及び評価結果を表1,2に示す。
(実施例10)
実施例1で得られたフィルムをX方向が長辺となるように、30cm×20cmの長方形状にカットした。続いて、同じサイズにカットしたポリプロピレン製のスパンボンド系乾式不織布2枚と、市販の紙おむつより採取した30cm×10cmの長方形状の吸収体を準備し、短辺の中心が重なるようにスパンボンド式乾式不織布/フィルム/吸収体/スパンボンド乾式不織布の順に重ね、各材料間の界面にスチレン系ホットメルト接着剤を塗布して接合することにより、紙おむつ前駆体を得た。得られた紙おむつ前駆体の長辺方向を進行方向として、表面温度が130℃になるように加熱した一対のゴムロールを通すことで、紙おむつの脚回り部に相当する一対の長辺を加熱した。加熱に伴い長辺及びその周辺でフィルムの収縮が起こり、皺構造が形成された。得られた皺構造はフィルムの回復性により伸縮性を有しており、脚回りギャザー機能を与えることができた。
(実施例11)
実施例1で得られたフィルムをX方向が短辺となるように、30cm×20cmの長方形状にカットした。続いて、同じサイズにカットしたポリプロピレン製のスパンボンド系乾式不織布2枚と、市販の紙おむつより採取した30cm×10cmの長方形状の吸収体を準備し、短辺の中心が重なるようにスパンボンド式乾式不織布/フィルム/吸収体/スパンボンド乾式不織布の順に重ね、各材料間の界面にスチレン系ホットメルト接着剤を塗布して接合することにより、紙おむつ前駆体を得た。得られた紙おむつ前駆体の短辺方向を進行方向として、表面温度が130℃になるように加熱した一対のゴムロールを通すことで、紙おむつの胴回り部に相当する一対の短辺を加熱した。加熱に伴い短辺及びその周辺でフィルムの収縮が起こり、皺構造が形成された。得られた皺構造はフィルムの回復性により伸縮性を有しており、胴回りギャザー機能を与えることができた。
Figure 2020029551
Figure 2020029551
表1、2における、「フィルム中の樹脂成分(質量%)」は、フィルム中の樹脂全体を100質量%として算出した。表1、2における「結晶核剤(質量部)」は、フィルム中の樹脂成分全体を100質量部として算出した。
本発明のフィルムは透湿性を備えたフィルムであり、医療用フィルム、衣料用フィルム、及び衛生材用フィルムとして好適に用いることができる。また本発明のフィルムは、さらに熱収縮性と収縮後の回復性を備えるため、屈曲性や密着性を与えるのに用いられる伸縮性の糸の代替としても用いることができる。

Claims (9)

  1. ポリエステル系エラストマーを主成分とし、かつ以下の特徴1〜4を全て備えることを特徴とする、フィルム。
    特徴1:透湿度が1,000g/(m・day)以上である。
    特徴2:130℃で1分間加熱したときの収縮率の最大値が40%以上である。
    特徴3:前記収縮率が最大値となる方向をX方向としたときに、X方向における収縮後の回復率が80%以上である。
    特徴4:前記ポリエステル系エラストマーの融点P(℃)が130℃を超える。
  2. 結晶核剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のフィルム。
  3. 前記ポリエステル系エラストマーが、平衡吸水率が1.0%以上であるポリエステル系エラストマーであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムと不織布とを有することを特徴とする、積層体。
  5. 前記積層体を前記X方向と平行な長辺を有する30cm×20cmの長方形として、130℃で1分間加熱したときに、前記X方向と平行な一対の長辺が皺構造を呈することを特徴とする、請求項4に記載の積層体。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムを含むことを特徴とする、紙おむつ。
  7. 胴周り及び脚周りギャザー部の少なくとも一方が、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムを含むことを特徴とする、請求項6に記載の紙おむつ。
  8. 請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムの製造方法であって、
    融点P(℃)が130℃を超えるポリエステル系エラストマーを主成分とするシートを、50℃以上P−25℃以下の温度Q(℃)で熱処理する熱処理工程、
    シートを50℃よりも低い温度R(℃)で2倍以上10倍以下に延伸してフィルムとする延伸工程、
    及びR<S<Qの関係にある温度S(℃)でフィルムを熱固定する熱固定工程をこの順に有することを特徴とする、フィルムの製造方法。
  9. 請求項6又は7に記載の紙おむつの製造方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム、吸収体、及び不織布が積層された構造を有する紙おむつ前駆体の、脚回り相当部又は胴回り相当部を加熱してギャザーを形成するギャザー形成工程を有することを特徴とする、紙おむつの製造方法。
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