JP2020028214A - リニアモータ機構および二軸ステージ - Google Patents

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卓 岩出
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敏史 竹上
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博史 酒井
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Abstract

【課題】コイルの発熱に起因する問題を生じさせずに真空中で使用することが可能なリニアモータ機構および二軸ステージを提供する。【解決手段】真空チャンバ10内に固定子および可動子が配置されるリニアモータ機構1であり、固定子であるコイル3と、可動子である磁石5と、を備え、コイル3を内包するコイル保持部2が真空チャンバ10に固定され、真空チャンバ10は開口部13を有し、開口部13を介してコイル保持部2の一部が外気に露出している。【選択図】図1

Description

本発明は、真空チャンバ内で用いられるリニアモータ機構および二軸ステージに関するものである。
たとえば走査型電子顕微鏡(SEM)は数百倍程度の高倍率での観察が可能であるため、観察対象(ワーク)を観察可能な位置へ配置するためには、ワークの搬送装置には高精度な位置決め精度が求められる。このような高精度の位置決めを実現する手段として、近年ではリニアモータ機構を用いることが検討されている。
リニアモータ機構は、特許文献1および特許文献2に記載の通り固定子および可動子に永久磁石およびコイルが用いられ、コイルに所定の電流を流すことにより、永久磁石が形成する磁界との作用により推力が発生し、可動子が所定方向に移動する。このリニアモータ機構による位置決め精度は、たとえばボールねじによるものと比較して高いため、高精度の位置決めを必要とする装置の位置決め機構としてリニアモータ機構は好適に用いられうる。
特開2010−213425号公報 特開2002−291220号公報
しかし、従来走査型電子顕微鏡のように真空環境内でワークを搬送する手段としてリニアモータ機構を用いる場合、発熱対策が困難であるといった問題があった。具体的には、コイルに所定の電流を流す際にコイルの電気抵抗にもとづくジュール熱が発生するが、真空中では対流による熱伝導が皆無であるため、熱が発散せずにコイルにこもる可能性が高い。そして、この熱により搬送装置の構成部材に熱膨張が生じた場合、位置決めに誤差が生じて搬送精度が悪化するおそれがあった。
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、コイルの発熱に起因する問題を生じさせずに真空中で使用することが可能なリニアモータ機構および二軸ステージを提供することを目的としている。
上記課題を解決するために本発明のリニアモータ機構は、真空チャンバ内に固定子および可動子が配置されるリニアモータ機構であり、前記固定子であるコイルと、前記可動子である磁石と、を備え、前記コイルを内包するコイル保持部が前記真空チャンバに固定され、前記真空チャンバは開口部を有し、当該開口部を介して前記コイル保持部の一部が外気に露出していることを特徴としている。
上記リニアモータ機構によれば、コイル保持部が真空チャンバに固定され、真空チャンバは開口部を有し、当該開口部を介してコイル保持部の一部が外気に露出していることにより、コイルで生じたジュール熱はコイル保持部を伝わってコイル保持部の外気に露出している部分において発散するため、コイルに熱がこもることを防ぐことができる。そのため、熱の問題を生じさせずにこのリニアモータ機構を真空中で使用することができる。
また、前記コイル保持部は、外気に露出している部分から前記コイルの近傍へ冷媒を通す冷却経路を内包すると良い。
この構成によれば、真空環境を冷媒が経由することなく、真空チャンバ内に位置するコイルを冷媒によって冷却することが可能である。
また、前記コイル保持部は、前記コイル保持部を貫通し、前記コイルが外周に配置される略円柱状の中空部を有し、前記磁石を有する略円柱状のシャフト部が前記中空部に通された状態で変位すると良い。
この構成によれば、真空環境によるコイル保持部の中空部の変形に起因するコイルと磁石との相対位置の変動が小さくなるため、コイルと磁石とを可能な限り接近させて推力を大きくすることができる。
また、前記コイル保持部は、前記コイルの長さ方向における前記コイルの外周を取り囲む筒部を備え、前記磁石は、前記コイルの長さ方向において前記コイルよりも寸法が小さく、前記筒部が挿通される貫通穴を有し、前記筒部の外周面に沿って前記コイルの長さ方向に移動可能であり、前記筒部の内側の空間は、前記真空チャンバ内の空間と遮断され、前記真空チャンバの前記開口部を介して外気に露出する構成であっても良い。
この構成によれば、リニアモータ機構自身のフットプリントを比較的小さくすることができる。
また、上記課題を解決するために本発明の二軸ステージは、真空チャンバ内でワークを二つの軸方向に搬送する二軸ステージであり、前記ワークを保持するワーク保持部と、前記ワーク保持部を第1の方向に搬送する第1の搬送部と、前記ワーク保持部を第2の方向に搬送する第2の搬送部と、を備え、前記第1の搬送部および前記第2の搬送部は共にコイルを固定子とし、磁石を可動子とするリニアモータ機構により駆動し、前記第1の搬送部の前記コイルを内包する第1のコイル保持部および前記第2の搬送部の前記コイルを内包する第2のコイル保持部が前記真空チャンバに固定され、前記真空チャンバは開口部を有し、当該開口部を介して前記第1のコイル保持部の一部および前記第2のコイル保持部の一部が外気に露出していることを特徴としている。
上記二軸ステージによれば、第1のコイル保持部および第2のコイル保持部が真空チャンバに固定され、真空チャンバは開口部を有し、当該開口部を介して第1のコイル保持部の一部および第2のコイル保持部の一部が外気に露出していることにより、コイルで生じたジュール熱は第1のコイル保持部および第2のコイル保持部を伝わって第1のコイル保持部の外気に露出している部分および第2のコイル保持部の外気に露出している部分において発散するため、コイルに熱がこもることを防ぐことができる。そのため、熱の問題を生じさせずにこの二軸ステージを真空中で使用することができる。
本発明のリニアモータ機構および二軸ステージによれば、コイルの発熱に起因する問題を生じさせずに真空中で使用することができる。
本発明のリニアモータ機構を示す概略図である。 本発明の他の実施形態におけるリニアモータ機構を示す概略図である。 本発明の他の実施形態におけるリニアモータ機構を示す概略図である。 本発明の二軸ステージを示す概略図である。 本発明の二軸ステージを示す概略図である。
次に、本発明のリニアモータ機構の実施の形態について説明する。ここで、図1(a)は、本発明のリニアモータ機構の正面図、図1(b)は側面図である。
リニアモータ機構1は、固定子としてコイル3、可動子として永久磁石を有するシャフト部5を有しており、コイル3に所定の電流を流すことによって、永久磁石を有するシャフト部5が形成する磁界との作用により推力が発生し、シャフト部5が所定の方向に変位する。
なお、図1ではこのシャフト部5が移動する方向をX軸方向とし、水平面上でX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向およびY軸方向と直交する方向、すなわち鉛直方向をZ軸方向と呼ぶ。
シャフト部5は、略円柱状の形状を有し、円柱の中心軸方向(図1におけるX軸方向)に磁石のN極とS極とが交互に繰り返し配列された形態を有する。
これらコイル3およびシャフト部5は、真空チャンバ10内の空間に配置されている。そして図示しない真空ポンプが作動することにより、真空チャンバ10内の空間は減圧され、略真空状態となる。
コイル3は、コイル保持部2に内包された形態を有する。コイル保持部2は、このコイル保持部2を貫通する略円柱状の中空部を有し、この中空部の軸方向はシャフト部5の軸方向(X軸方向)と同じである。コイル3は、コイル保持部2の内部でこの中空部を取り囲むように配置されている。すなわち、コイル3がこの中空部の外周に配置される形態をとる。
コイル保持部2の中空部の直径はシャフト部5の直径よりも2mm程度大きい。そして、シャフト部5がこの中空部を貫通するように配置されることによって、シャフト部5の一部をコイル3が囲む形態がとられる。そして、この状態でコイル3に電流が流されることにより、コイル3に流された電流にもとづいてシャフト部5が変位する。
コイル保持部2はたとえばアルミ合金、チタン合金といった、熱伝導率が比較的高い金属材料から構成されている。また、コイル保持部2全体はリジッドな構成であり、シャフト部5の変位に起因してコイル保持部2が変形することは無い。また、コイル3はたとえば銅線などから構成されている。
また、本実施形態では、コイル3は、コイル3を保護するための樹脂からなるモールド部4に被覆されており、このモールド部4とともにコイル3はコイル保持部2の内部に固定および保持され、また、外気と触れることの無いようコイル保持部2内で密封されている。
ここで、本発明では、真空チャンバ10の外壁部には開口13が設けられており、コイル保持部2は、この開口13を貫通するように配置される。すなわち、コイル保持部2は、真空チャンバ10の内部に位置して略真空環境に接する部分と、真空チャンバ10の外部に位置して外気に露出している部分とが存在している。また、コイル保持部2の外気に露出している部分はフランジ形状を有しており、このフランジ部にはOリング6が設けられている。このOリング6を真空チャンバ10の外壁部とコイル保持部2のフランジ部とではさんで押しつぶすように、ボルトなどでコイル保持部2が真空チャンバ10に固定されることにより、開口13があっても真空チャンバ10の内部の気密性は維持される。そして、コイル保持部2が真空チャンバ10に固定されることによって真空チャンバ10内でのコイル3の配置は固定され、コイル3に所定の電流が流された際には、シャフト部5のみが変位する。
また、コイル保持部2の内部には、真空チャンバ10の外部からコイル3に電流を供給する電源ケーブル11、および、水などの冷却媒体を真空チャンバ10の外部であり外気と接する部分からコイル3の近傍へ流すための冷却経路であり、コイル3の冷却を補助するための冷却配管12が設けられている。
次に、本発明のリニアモータ機構の効果について説明する。
コイル3と、永久磁石を有するシャフト部5とで構成されるリニアモータ機構1では、コイル3に電流を流した際、コイル3の電気抵抗にもとづくジュール熱が発生する。ここで、コイル3は真空チャンバ10の内部に配置されているため、真空チャンバ10の内部が略真空の状態である場合、このジュール熱がコイル3から真空チャンバ10内の周囲環境に発散することは皆無である。そのため、従来ではコイル3に熱がこもる可能性があった。
ここで、本発明ではコイル3を内包するコイル保持部2の一部が真空チャンバ10の開口部13を介して外気に露出しているため、図1(a)の矢印でイメージを表したように、コイル3で生じたジュール熱はコイル保持部2を伝わり、コイル保持部2の外気に露出している部分において積極的に発散する。そのため、コイル3に熱がこもることを防ぐことができ、その結果、コイル3の発熱に起因する問題を生じさせずに、このリニアモータ機構1を真空中で使用することができる。
また、コイル3は固定子であり、コイル保持部2の内部に保持されることにより、真空チャンバ10に対して位置が固定されているため、電源ケーブル11および冷却配管12を真空環境中で引き回す必要が無い。また、コイル3、モールド部4もコイル保持部2内で密封されているため、コイル3、モールド部4、電源ケーブル11、および冷却配管12は真空環境と触れることが無い。したがって、コイル3、モールド部4、電源ケーブル11、および冷却配管12を真空仕様といった特殊な仕様にする必要が無い。したがって、各部材の材料を選択する際の選択肢が狭まること無く、また、高価な材料を使用する必要が無い。
特に、流体を流す可撓性の配管を真空環境内で引き回すことは、微小でも配管の破損が起きると真空環境を壊すことになるため、真空環境内ではこのような配管を引き回さないのが一般的である。そこで、真空チャンバ10に固定されたコイル保持部2の内部に冷却配管12を設けることにより、真空環境を冷媒が経由することなく、真空チャンバ10内に位置するコイル3を冷媒によって冷却することが可能である。
また、本発明では、コイル保持部2を通して電源ケーブル11が真空チャンバ10の外部から内部に誘導されるため、一般には碍子などで構成される電流導入端子(フィードスルー)を別途設ける必要が無く、この点からもコスト面でメリットを有する。
また、本実施形態では、コイル保持部2は、コイル保持部2を貫通し、コイル3が外周に配置される略円柱状の中空部を有し、略円柱状のシャフト部5がこの中空部に通された状態で変位する形態を有している。この構成により、真空チャンバ10の真空ポンプが作動してコイル保持部2の中空部とシャフト部5の間の部分が略真空状態となった場合であっても、コイル保持部2の中空部の壁面およびシャフト部5にかかる応力が一部に集中することが無いため、コイル保持部2の中空部およびシャフト部5の変形を最小限にとどめることができる。したがって、コイル3とシャフト部5の磁石との相対位置の変動は小さくなり、コイル3およびシャフト部5が干渉しないという条件下で両者を可能な限り接近させることができ、所定の電流をコイル3に流した際のリニアモータ機構1の推力を可能な限り大きくすることができる。
次に、本発明の他の実施形態におけるリニアモータ機構を図2に示す。ここで、図2(a)はリニアモータ機構の正面図、図2(b)は側面図であり、図1に示した各構成部材と同じ形態の構成部材には、図2でも同じ符号を付した。
この実施形態におけるリニアモータ機構21では、可動子である永久磁石は、バー25のように略直方体の形状を有しており、変位する方向(図2におけるX軸方向)に磁石のN極とS極とが交互に繰り返し配列された形態を有する。また、コイル23はバー25と対向する面を有し、図1の実施例と同様にコイル保持部22に内包されている。なお、本実施形態では、コイル23はバー25の下面とのみ対向する形態を有しているが、バー25の側面とも対向する形態を有していても良い。
また、コイル保持部22は真空チャンバ10を貫通し、一部が外気に露出している。
この実施形態のリニアモータ機構21においても、図1の実施例と同様に、コイル23で生じたジュール熱がコイル保持部22を伝わり、コイル保持部22の外気に露出している部分から発散することにより、コイル23に熱がこもることを防ぐことができる。
また、コイル23とともにコイル23に電流を供給する電源ケーブル11およびコイル23を冷却する媒体を流すための冷却配管12がコイル保持部22に内包されるため、電源ケーブル11を真空仕様など特殊な仕様にする必要が無く、コスト面でメリットを享受することができるとともに、冷却配管を真空環境内で引き回すことなくコイル保持部22内の冷却配管12を冷媒が通ることによってコイル23を冷却することができる。
ただし、この実施形態のようにコイル保持部22のバー25と対向する面が角部を有する形状であった場合、コイル保持部22の外側の環境が略真空状態であることによってコイル保持部22のバー25と対向する面にかかる応力が一部に集中する可能性があり、この応力集中によってコイル保持部22のバー25と対向する面が変形する可能性がある。この場合、コイル保持部22のバー25と対向する面に変形が生じてもこの面とバー25が干渉することが無いよう、図2(a)に距離dで示す、コイル23とバー25との間の距離は、先の実施形態におけるコイル3とシャフト5との間の距離よりも大きくする必要がある。
次に、本発明のさらに他の実施形態におけるリニアモータ機構を図3に示す。ここで、図3(a)はリニアモータ機構の正面図、図3(b)は側面図であり、a−a矢視図である。図1に示した各構成部材と同じ形態の構成部材には、図2でも同じ符号を付した。
コイル32は鉄芯などの芯部35にらせん状に巻き付けられた形態を有し、このらせんが延びる方向であるコイル32の長さ方向(図3(a)、(b)におけるX軸方向)において、磁石33の寸法はコイル32の寸法より小さい。
また、コイル32はコイル保持部34に内包されており、磁石33は、コイル保持部34のうちコイル32の長さ方向においてコイル32を取り囲む部分である筒部341の外周よりもわずかに大きな寸法の貫通孔331を有する。コイル32が挿通された筒部341がこの貫通孔331に挿通されることによって、筒部341を挟んでコイル32が磁石33の貫通孔331の中にある状態となる。そして、コイル32に所定の電流を流すことによって、磁石33が形成する磁界との作用により推力が発生し、磁石33が筒部341の外周面に沿って変位する。
コイル保持部34は、筒部341、フランジ342、および柱部343とで構成されており、コイル32を真空チャンバ10内の空間と遮断するよう、保持する。
筒部341は、両端部に開口を有する筒状体である。コイル32は、この開口から筒部341に挿入され、接着材などで固定される。これにより、コイル32の長さ方向においてコイル32は筒部341に取り囲まれる。なお、本実施形態では、コイル32は円柱状の芯部35に巻き付けられており、筒部341は円筒状である。これに対し、たとえば芯部35が四角柱状であり、筒部341の開口が四角形状であっても良い。また、筒部341の内径はコイル32の巻径よりもわずかに大きく、本実施形態ではコイル32の巻径が約24mmであるのに対し、筒部341の内径は約25mmである。
また、筒部341の肉厚は約0.3mmと薄く、コイル32と磁石33とは十分に接近している。また、筒部341はステンレス、アルミニウム、もしくはセラミックなどの非磁性体の材料から構成されている。このため、筒部341が介在することがコイル32と磁石33との間で発生する推力へ及ぼす影響は小さい。なお、磁石33の貫通孔331の径は、本実施形態では約26mmである。
フランジ342は、筒部341の両端近傍に配置される。フランジ342は内径が筒部341の外径より大きな凹部を有し、この凹部の底面に筒部341の端面が押し当てられることにより、筒部341の両端部において筒部341が当て決めされ、筒部341の位置がずれたり振動したりすることが防止される。また、フランジ342の凹部の側壁面と筒部341の外周面との間にはOリングが配置されており、フランジ342の凹部の側壁面と筒部341の外周面との間において気密性が確保されている。また、フランジ342の凹部の底面には、径が筒部341の外径よりも小さくフランジ342の反対面まで貫通する貫通穴が設けられている。
柱部343は、筒部341の両端側に設けられ、フランジ342と当接および連結され、また、真空チャンバ10の底面と当接および連結される。これにより、コイル保持部34全体およびコイル保持部34に内包されるコイル32が真空チャンバ10に対して固定される。
また、柱部343のフランジ342と対向する面および真空チャンバ10の底面と対向する面にはそれぞれ開口が設けられ、柱部343の内部にはこれらの開口を連通する貫通穴が設けられている。
また、真空チャンバ10の底面を形成する金属板の柱部343と対向する部分には開口13が設けられており、柱部343の貫通穴およびフランジ342の貫通穴を介して真空チャンバ10の開口13と筒部341の内側の空間とが連通している。すなわち、コイル保持部34の一部である筒部341の内側の空間、フランジ342の貫通穴、および柱部343の貫通穴は、真空チャンバ10の開口13を介して外気に露出しており、かつ、真空チャンバ10の内部の空間から遮断されている。なお、柱部343とフランジ342、および柱部343と真空チャンバ10はOリングを挟んで連結されており、気密性が確保されている。
このように筒部341の内側の空間、フランジ342の貫通穴、および柱部343の貫通穴が外気に露出し、ここにコイル32が配置されることにより、真空チャンバ10の内部が減圧された際にもコイル32の周囲の圧力は大気圧を維持している。また、コイル32に電力を供給するための電源ケーブル11、および芯部35を冷却するための冷却配管12を真空環境を通すことなく真空チャンバ10の外側まで引き出すことができる。そのため、コイル32、電源ケーブル11および冷却配管12を真空仕様といった特殊な仕様にする必要が無い。したがって、各部材の材料を選択する際の選択肢が狭まること無く、また、高価な材料を使用する必要が無い。また、冷却配管12では下げきれなかったコイル32からの発熱も、大気圧の環境を経由して真空チャンバ10の外側まで放出させることができる。
また、上記の通りコイル32の長さ方向(図3(a)、(b)におけるX軸方向)において、コイル32の寸法より小さい寸法の磁石33を変位させる形態とすることにより、図1で示したようにシャフト状の磁石を変位させる形態と比較して所定のストロークを確保するために必要なリニアモータ機構自身のフットプリントを小さくすることができる。
次に、本発明のリニアモータ機構を使用した二軸ステージを図4および図5を用いて説明する。ここで、図4は二軸ステージの斜視図であり、図5(a)は二軸ステージの正面図、図5(b)は二軸ステージの側面図である。
なお、実際の二軸ステージでは、位置決め精度を高めるために、図示した以外のリニアスライダを複数設けているが、本説明では説明を簡便にするため、これらリニアスライダの図示は省略した。
二軸ステージ100は、ワーク保持部102を有し、ワーク保持部102が2つの軸方向(X軸方向およびY軸方向)に変位することによってワーク保持部102に保持されたワークをXY平面上の任意の位置に搬送する。このようにワーク保持部2をX軸方向およびY軸方向に変位させるために、ワーク保持部102をX軸方向に変位させるための第1の搬送部110およびワーク保持部102をY軸方向に変位させるための第2の搬送部120が設けられ、これら第1の搬送部110および第2の搬送部120として図1に示すようなリニアモータ機構1が用いられている。
第1の搬送部110は、略円筒状に配置されたコイルを内包し、コイルが配置された範囲の内側に位置する略円柱状の中空部を有するリジッドな第1のコイル保持部112、および永久磁石を有する略円柱状のシャフト部115を有し、シャフト部115が第1のコイル保持部112の中空部を通り、X軸方向と平行になるように真空チャンバ101内に配置されている。
また、第1のコイル保持部112は、真空チャンバ101を貫通し、第1のコイル保持部112と真空チャンバ101とでOリング116をはさんで押しつぶすように、真空チャンバ101にボルト固定されている。これによって、第1のコイル保持部112およびその中のコイルは真空チャンバ101に対して固定され、第1のコイル保持部112の一部は外気に露出している。
また、二軸ステージ100は、ワーク保持部102のY軸方向への移動を案内するためにY軸方向に延びるレール105を上面に有する略平板状のYテーブル103を備え、Yテーブル103のY軸方向の両端部には、それぞれ、シャフト部115の両端に設けられたブラケット117を介して上記第1の搬送部110が取り付けられている。また、Yテーブル103のY軸方向の両端部に取り付けられた2つの第1の搬送部110は、互いに同期して駆動する。すなわち、それぞれの第1の搬送部110が同じ速度、同じ移動量となるように駆動する。
また、レール105には、2つの方向(X軸方向およびY軸方向)へ延びる2つの溝部を上下に有し、2つの方向に対するスライダの役割を果たす二軸スライドブロック107の一方の溝部が通されている。そして、二軸スライドブロック107には、ブラケット108を介してワーク保持部102が固定されている。
このような構成により、第1の搬送部110が駆動してシャフト部115がX軸方向に変位すると、図5(a)にハッチングで示すブラケット117、Yテーブル103、Yテーブル103に固定されたレール105、レール105に通された二軸スライドブロック107、およびブラケット108を介して二軸スライドブロック107に固定されたワーク保持部102がX軸方向に移動する。このとき、二軸スライドブロック107は、以下に説明するレール106に案内されて、X軸方向に移動する。
第2の搬送部120は、略円筒状に配置されたコイルを内包し、コイルが配置された範囲の内側に位置する略円柱状の中空部を有するリジッドな第2のコイル保持部122、および永久磁石を有する略円柱状のシャフト部125を有し、シャフト部125が第2のコイル保持部122の中空部を通り、Y軸方向と平行になるように真空チャンバ101内に配置されている。
また、第2のコイル保持部122は、真空チャンバ101を貫通し、第2のコイル保持部122と真空チャンバ101とでOリング116をはさんで押しつぶすように、真空チャンバ101にボルト固定されている。これによって、第2のコイル保持部122およびその中のコイルは真空チャンバ101に対して固定され、第2のコイル保持部122の一部は外気に露出している。
また、二軸ステージ100は、ワーク保持部102のX軸方向への移動を案内するためにX軸方向に延びるレール106を下面に有する略平板状のXテーブル104を備え、Xテーブル104のX軸方向の両端部には、それぞれ、シャフト部125の両端に設けられたブラケット127を介して上記第2の搬送部120が取り付けられている。また、Xテーブル104のX軸方向の両端部に取り付けられた2つの第1の搬送部120は、互いに同期して駆動する。すなわち、それぞれの第2の搬送部120が同じ速度、同じ移動量となるように駆動する。
また、レール106には、上記二軸スライドブロック107のもう一方の溝部が通されている。そして、上記の通り、二軸スライドブロック107には、ブラケット108を介してワーク保持部102が固定されているが、ワーク保持部102はXテーブル104の上方に位置し、二軸スライドブロック107はXテーブル104の下方に位置するため、ブラケット108はXテーブル104との干渉を避けてYテーブルの上下に位置するワーク保持部102と二軸スライドブロック107とを接続する役割を果たす。
このような構成により、第2の搬送部120が駆動してシャフト125がY軸方向に変位すると、図5(b)にハッチングで示すブラケット127、Xテーブル104、Xテーブル104に固定されたレール106、レール106に通された二軸スライドブロック107、およびブラケット108を介して二軸スライドブロック107に固定されたワーク保持部102がY軸方向に移動する。このとき、二軸スライドブロック107は、上記のレール105に案内されて、Y軸方向に移動する。
上記の構成の二軸ステージ100では、第1の搬送部110、第2の搬送部120とも、固定子であるコイルを内包する第1のコイル保持部112および第2のコイル保持部122は真空チャンバ101に対して変位することなく、ワーク保持部102がX軸方向およびY軸方向に移動可能である。そのため、第1のコイル保持部112、第2のコイル保持部122とも上記の通り真空チャンバ101の開口部を介して外気に露出している形態をとることが可能であり、コイルから生じた熱を真空チャンバ101の外へ逃がすことができる。
また、第1のコイル保持部112の内部および第2のコイル保持部122の内部に冷却配管を設けることにより、真空チャンバ101内に位置するコイルを流体の冷媒を用いて冷却することができる。
従来の二軸ステージでは、下軸の搬送ステージの上に上軸の搬送ステージが搭載される形態を有していることが多く、この場合、下軸の搬送ステージの駆動にともない、上軸の搬送ステージでは可動子だけでなく固定子であるコイルも真空チャンバ内で変位する。そのため、少なくとも上軸の搬送ステージに関しては本発明のようなコイルの発熱に対する対策をとりにくい。特に、流体が流れる可撓性の配管を真空環境内で引き回すことは、微小でも配管の破損が起きると真空環境を壊すことになるため、真空環境内ではこのような配管を引き回さないのが一般的であり、上軸の搬送ステージに対しては冷媒による冷却は実質的に不可能である。また、この上軸のコイルへ電流を流す電源ケーブルは真空チャンバ内で引き回される。そのため、少なくとも上軸の搬送ステージにかかる電源ケーブルを真空仕様にするなど特殊な対策を必要とする。これに対し、上記の構成の二軸ステージでは、全てのリニアモータ機構に対して電源ケーブルに真空仕様を必要としないと同時に、全てのリニアモータ機構に対してコイルからの発熱への対策をとることが可能である。
以上のリニアモータ機構および二軸ステージにより、コイルの発熱に起因する問題を生じさせずに真空中で使用することが可能である。
ここで、本発明の制御機構は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、上記の説明では、二軸ステージはワーク保持部をXY方向に移動させるものであるが、これに限らずたとえばXZ方向、YZ方向などでも良い。また、ワーク保持部を移動させる2つの方向は必ずしも直交しなくても良い。
また、図1に示す形態の説明では、コイル保持部が真空チャンバの開口部を貫通し、コイル保持部の一部が完全に真空チャンバの外部に位置することによって、真空チャンバの開口部を介してコイル保持部の一部が外気に露出している形態を形成しているが、これに限らず、たとえば図3に示す形態もそうであるが、コイル保持部全体は真空チャンバ内に配置されるものの、コイル保持部が配置される位置に真空チャンバの開口部があり、この開口部を介してコイル保持部の一部が真空チャンバの外部から見えるような形態であっても良い。
1 リニアモータ機構
2 コイル保持部
3 コイル
4 モールド部
5 シャフト
6 Oリング
10 真空チャンバ
11 電源ケーブル
12 冷却配管
13 開口
21 リニアモータ機構
22 コイル保持部
23 コイル
25 バー
31 リニアモータ機構
32 コイル
33 磁石
34 コイル保持部
35 芯部
100 二軸ステージ
101 真空チャンバ
102 ワーク保持部
103 Yテーブル
104 Xテーブル
105 レール
106 レール
107 二軸スライドブロック
108 ブラケット
110 第1の搬送部
112 第1のコイル保持部
115 シャフト部
116 Oリング
117 ブラケット
120 第2の搬送部
122 第2のコイル保持部
125 シャフト部
126 Oリング
127 ブラケット
331 貫通孔
341 筒部
342 フランジ
343 柱部

Claims (5)

  1. 真空チャンバ内に固定子および可動子が配置されるリニアモータ機構であり、
    前記固定子であるコイルと、
    前記可動子である磁石と、
    を備え、
    前記コイルを内包するコイル保持部が前記真空チャンバに固定され、前記真空チャンバは開口部を有し、当該開口部を介して前記コイル保持部の一部が外気に露出していることを特徴とする、リニアモータ機構。
  2. 前記コイル保持部は、外気に露出している部分から前記コイルの近傍へ冷媒を通す冷却経路を内包することを特徴とする、請求項1に記載のリニアモータ機構。
  3. 前記コイル保持部は、前記コイル保持部を貫通し、前記コイルが外周に配置される略円柱状の中空部を有し、前記磁石を有する略円柱状のシャフト部が前記中空部に通された状態で変位することを特徴とする、請求項1もしくは2のいずれかに記載のリニアモータ機構。
  4. 前記コイル保持部は、前記コイルの長さ方向における前記コイルの外周を取り囲む筒部を備え、
    前記磁石は、前記コイルの長さ方向において前記コイルよりも寸法が小さく、前記筒部が挿通される貫通穴を有し、前記筒部の外周面に沿って前記コイルの長さ方向に移動可能であり、
    前記筒部の内側の空間は、前記真空チャンバ内の空間と遮断され、前記真空チャンバの前記開口部を介して外気に露出していることを特徴とする、請求項1もしくは2のいずれかに記載のリニアモータ機構。
  5. 真空チャンバ内でワークを二つの軸方向に搬送する二軸ステージであり、
    前記ワークを保持するワーク保持部と、
    前記ワーク保持部を第1の方向に搬送する第1の搬送部と、
    前記ワーク保持部を第2の方向に搬送する第2の搬送部と、
    を備え、
    前記第1の搬送部および前記第2の搬送部は共にコイルを固定子とし、磁石を可動子とするリニアモータ機構により駆動し、
    前記第1の搬送部の前記コイルを内包する第1のコイル保持部および前記第2の搬送部の前記コイルを内包する第2のコイル保持部が前記真空チャンバに固定され、前記真空チャンバは開口部を有し、当該開口部を介して前記第1のコイル保持部の一部および前記第2のコイル保持部の一部が外気に露出していることを特徴とする、二軸ステージ。
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