以下、本発明に係るクレーン機能を備えた油圧ショベルの実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1において、クレーン機能を備えた油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とからなる車体を有している。上部旋回体3の前部左側には、オペレータが搭乗するキャブ3Aが設けられ、上部旋回体3の前部中央には、作業装置(フロント装置)4が俯仰の動作が可能に設けられている。
作業装置4は、上部旋回体3の前側に俯仰の動作が可能に取付けられたブーム5と、ブーム5の先端側に回動可能に取付けられたアーム6と、アーム6の先端側に回動可能に取付けられたバケット7と、ブーム5を駆動するブームシリンダ8と、アーム6を駆動するアームシリンダ9と、バケット7を駆動するバケットシリンダ10とを含んで構成されている。
ここで、バケット7には、左,右方向に離間して2枚のブラケット7Aが設けられ、各ブラケット7A間には、アーム6の先端部が配置されている。バケット7は、これら各ブラケット7Aおよびアーム6に挿通された支持軸11を中心として、アーム6の先端部に回動可能に支持されている。
アーム6の先端側とバケットシリンダ10のロッド10Aの先端部との間には、左,右方向に離間して2本の連結リンク12が設けられている。各連結リンク12の一端側は、支持軸13を介してアーム6の先端側に回動可能に支持され、各連結リンク12の他端側は、連結軸14を介してバケットシリンダ10のロッド10Aの先端部に回動可能に連結されている。
バケットリンク15は、バケット7とバケットシリンダ10との間に設けられ、バケット7とバケットシリンダ10のロッド10Aとの間を連結している。このバケットリンク15は、内部に後述するクレーン作業用のフック26が格納されたフック付きバケットリンクとして構成されている。
バケットリンク15の長さ方向の一端側は、連結軸14を介して連結リンク12と共にバケットシリンダ10のロッド10Aの先端部に回動可能に連結されている。バケットリンク15の長さ方向の他端側は、後述の連結軸20を用いてバケット7の各ブラケット7Aに回動可能に連結されている。ここで、バケットリンク15は、後述する左,右のシリンダ側ボス16,17と、左,右のバケット側ボス18,19と、左,右の連結板21,22と、閉塞板23と、開口部24とを備えた箱状をなし、例えば鋳造等の手段を用いて一体形成されている。
左シリンダ側ボス16および右シリンダ側ボス17は、それぞれ左,右方向に延びる筒状に形成され、左,右方向に間隔をもって対向配置されている。左シリンダ側ボス16の内周側には、円筒状のブッシュ16Aが挿嵌され、右シリンダ側ボス17の内周側には、円筒状のブッシュ17Aが挿嵌され、これら各ブッシュ16A,17A内には連結軸14が挿通されている。左,右のシリンダ側ボス16,17間には、バケットシリンダ10のロッド10Aの先端部が配置され、左,右の連結リンク12間には、左,右のシリンダ側ボス16,17が配置されている。この状態で、これら各シリンダ側ボス16,17、バケットシリンダ10のロッド10A、各連結リンク12が、連結軸14によって回転可能に連結されている。
左バケット側ボス18および右バケット側ボス19は、それぞれ左,右方向に延びる円筒状に形成され、左,右方向に間隔をもって対向配置されている。左バケット側ボス18の内周側には、円筒状のブッシュ18Aが挿嵌され、右バケット側ボス19の内周側には、円筒状のブッシュ19Aが挿嵌され、これら各ブッシュ18A,19A内には連結軸20が挿通されている。左,右のバケット側ボス18,19間には、後述するフック用ボス27が配置され、バケット7に設けられた左,右のブラケット7A間には、左,右のバケット側ボス18,19が配置されている。この状態で、これら各バケット側ボス18,19、フック用ボス27、バケット7の各ブラケット7Aが、連結軸20によって回転可能に連結されている。
左連結板21は、左シリンダ側ボス16と左バケット側ボス18との間を連結している。右連結板22は、右シリンダ側ボス17と右バケット側ボス19との間を連結している。これら左連結板21と右連結板22とは、左,右方向で対をなしている。ここで、左連結板21と右連結板22とは、各シリンダ側ボス16,17および各バケット側ボス18,19の外径寸法と同等の幅寸法を有し、左,右方向で間隔をもって対面している。
閉塞板23は、左,右の連結板21,22の幅方向の一側の端面間を閉塞している。この閉塞板23は、四角形の平板状に形成され、左連結板21の幅方向の一側の端面と右連結板22の幅方向の一側の端面との間を左,右方向に延び、左連結板21と右連結板22との間を連結した状態で閉塞している。閉塞板23には、後述するフック保持機構31が取付けられると共に、後述する貫通孔49が設けられている。
開口部24は、左,右の連結板21,22の幅方向において閉塞板23とは反対側となる幅方向の他側の端面21A,22A間に設けられている。開口部24は、図2に示すように、バケットリンク15の左,右方向および長さ方向の中央部に配置された四角形の開口として形成され、後述するフック26が挿通されるものである。
フック格納空間25は、バケットリンク15を構成する左,右のシリンダ側ボス16,17、左,右のバケット側ボス18,19、左,右の連結板21,22、閉塞板23等によって囲まれた空間として形成されている。フック格納空間25は、バケットリンク15内にフック26を格納するために設けられ、開口部24を通じてバケットリンク15の外部に連通している。
クレーン作業用のフック26は、フック格納空間25内に格納されている。フック26は、左,右のバケット側ボス18,19に連結軸20を用いて揺動可能に支持されている。フック26は、図1中に二点鎖線で示すように、バケットリンク15の外部に取出されることにより、ロープ等を介して吊荷(いずれも図示せず)を吊下げて運搬するクレーン作業に用いられる。一方、油圧ショベル1がバケット7を用いた掘削作業を行うときには、図3等に示すように、フック26はバケットリンク15のフック格納空間25内に格納される。ここで、フック26は、後述のフック用ボス27、継手部材28、鉤部材30等を含んで構成されている。
フック用ボス27は、バケットリンク15の各バケット側ボス18,19間に連結軸20を中心として回動可能に取付けられている。フック用ボス27の内周側にはブッシュ27Aが挿嵌され、このブッシュ27A内に連結軸20が挿通されている(図2参照)。フック用ボス27の外周側には一対のブラケット27Bが設けられ、各ブラケット27Bは、一定の間隔をもって対面している。
継手部材28は、フック用ボス27の各ブラケット27Bに軸29を介して回動可能に取付けられている。この継手部材28は、軸受等(図示せず)を介して鉤部材30を回転可能に支持する円筒部28Aと、この円筒部28Aに一体形成され、フック用ボス27の各ブラケット27B間に配置された取付部28Bとを含んで構成されている。継手部材28の取付部28Bは、フック用ボス27の各ブラケット27Bに、軸29を中心として回動可能(揺動可能)に取付けられている。
鉤部材30は、継手部材28の円筒部28Aに軸受(図示せず)を介して回転自在に支持されている。鉤部材30は、J字状に形成され、クレーン作業時に吊荷用のロープ等を引掛けるものである。このため、鉤部材30にはロープ抜止め具30Aが設けられ、鉤部材30に引掛けたロープが抜出すのを、ロープ抜止め具30Aによって抑える構成となっている。
従って、フック26は、連結軸20を中心として回動することにより、図5および図6に示すように、バケットリンク15のフック格納空間25に対して出し入れされる。フック26は、フック格納空間25内に格納された状態で、後述するフック保持機構31によって保持される構成となっている。
フック保持機構31は、バケットリンク15のフック格納空間25内に設けられている。フック保持機構31は、油圧ショベル1がクレーン作業を行わないときに、フック26をフック格納空間25内に保持するものである。ここで、フック保持機構31は、後述する基板32と、一方のガイド部材33と、他方のガイド部材36と、ロック部材39とを含んで構成されている。
基板32は、バケットリンク15のフック格納空間25内に位置して閉塞板23に設けられている。基板32は、バケットリンク15の開口部24よりも面積が小さい四角形の平板状に形成され、複数のボルト32Aを用いて閉塞板23に着脱可能に取付けられている。閉塞板23とは反対側となる基板32の表面32B側には、一方のガイド部材33と他方のガイド部材36とが設けられている。
一方のガイド部材33は、バケットリンク15の右連結板22側に位置して基板32に設けられている。一方のガイド部材33は、他方のガイド部材36との間でフック26の鉤部材30を左,右両側から挟むことにより、バケットリンク15に格納されるフック26をフック格納空間25へとガイドするものである。
ここで、一方のガイド部材33は、鋼板材等を用いて長方形の平板状に形成された2枚の一方のガイド板33Aを有している。各一方のガイド板33Aは、バケットリンク15の各連結板21,22の長さ方向において一定の間隔をもって対面している。各一方のガイド板33Aは、溶接等の手段を用いて基板32の表面32Bに固着され、基板32から突出する各一方のガイド板33Aの突出端は、開口部24に向けて延在している。各一方のガイド板33Aは、連結板33Bによって連結され、基板32に対する取付強度が高められている。各一方のガイド板33Aの突出端側には、後述するロック部材支持軸34の両端部が取付けられると共に、後述するストッパピン35の両端部が取付けられている。
ロック部材支持軸34は、各一方のガイド板33Aの突出端側に設けられ、バケットリンク15の各連結板21,22の長さ方向に延在している。ロック部材支持軸34の両端部は、各一方のガイド板33Aにそれぞれ回転可能に挿通され、軸方向に抜止めされている。ロック部材支持軸34は、各一方のガイド板33A間で後述するロック部材39を回転可能に支持すると共に、後述するロック部材付勢ばね40が取付けられるものである。
ストッパピン35は、ロック部材支持軸34の近傍に位置して各一方のガイド板33Aの突出端側に設けられ、バケットリンク15の各連結板21,22の長さ方向に延在している。ストッパピン35の両端部は、各一方のガイド板33Aの突出端側にそれぞれ固定的に挿通されている。ストッパピン35は、ロック部材支持軸34を中心として回転するロック部材39が当接することにより、ロック部材39の可動範囲を規制すると共に、ロック部材付勢ばね40の一端40Aが掛止めされるものである。
他方のガイド部材36は、バケットリンク15の左連結板21側に位置して基板32に設けられ、一方のガイド部材33と、左,右方向で対向している。他方のガイド部材36は、バケットリンク15の閉塞板23から開口部24に向けて立上る断面逆L字型の立上り板36Aと、立上り板36Aと基板32との間に配置された2枚の四角形状の側板36B,36Cと、立上り板36Aに設けられた長溝孔36Dとを含んで構成されている。
ここで、立上り板36Aは、バケットリンク15の閉塞板23から開口部24に向けて突出する縦板部36A1と、縦板部36A1の突出端からバケットリンク15の左連結板21に向けて延びる横板部36A2とを有している。各側板36B,36Cは、立上り板36Aの両側に設けられ、各連結板21,22の長さ方向に一定の間隔をもって対面している。長溝孔36Dは、2枚の側板36B,36C間に位置して立上り板36Aの縦板部36A1に形成され、バケットリンク15の閉塞板23から開口部24に向けて延在している。各側板36B,36C間には、後述する変位板42が回動可能に設けられ、この変位板42が長溝孔36Dを通過する構成となっている。
ここで、図5に示すように、一方のガイド部材33と他方のガイド部材36との間には、フック26の移動方向(矢示A方向)に延びるガイド空間37が形成され、このガイド空間37内にフック26の鉤部材30を挿入することにより、一方のガイド部材33と他方のガイド部材36とが、鉤部材30を左,右両側から挟込んでガイドする構成となっている。
一方、バケットリンク15のフック格納空間25内には、他方のガイド部材36と、バケットリンク15を構成する左連結板21と、閉塞板23とによって区画されるセンサ収容室38が形成されている。このセンサ収容室38は、より具体的には、他方のガイド部材36を構成する立上り板36Aと2枚の側板36B,36Cとによって囲まれる空間として形成され、後述する変位板42、フック検出装置45のセンサ部45A、磁石46等が配置されている。
ロック部材39は、ロック部材支持軸34を介して各一方のガイド板33A間に回動可能に支持されている。ロック部材39は、図5に示すように、フック26をフック格納空間25内に格納したときに、フック26の鉤部材30に係合するフック係合部39Aと、フック26をフック格納空間25内に格納するときに、フック26の鉤部材30によって押圧される被押圧部39Bと、ストッパピン35に当接するストッパ部39Cと、フック26の鉤部材30からフック係合部39Aを離脱させるために作業者によって操作される操作部39Dとを有している。
ロック部材39は、ロック部材支持軸34を中心としてフック26の移動方向(図5中の矢示A方向)と直交する方向(左,右方向)に回動し、図5中に実線で示すフック保持位置と、二点鎖線で示すフック解放位置との間で回動変位する。ロック部材39は、フック保持位置においてフック係合部39Aを鉤部材30に係合させることにより、フック26を各ガイド部材33,36間で固定し、フック格納空間25内に保持する。一方、ロック部材39は、操作部39Dを矢示B方向に回動させる操作によってフック解放位置に変位する。これにより、ロック部材39は、鉤部材30をフック係合部39Aから離脱させ、フック26をフック格納空間25から取出させる。
ロック部材付勢ばね40は、ロック部材39を挟んでロック部材支持軸34の軸方向の両側にそれぞれ設けられている。各ロック部材付勢ばね40は、例えばねじりコイルばねによって形成されている。ロック部材付勢ばね40の一端40Aは、ストッパピン35に掛止めされ、ロック部材付勢ばね40の他端40Bは、ロック部材39のうち被押圧部39Bとは左,右方向の反対側となる周縁部に掛止めされている。これにより、ロック部材付勢ばね40は、ロック部材39をフック保持位置に向けて常時付勢し、ロック部材39は、ストッパ部39Cがストッパピン35に当接した位置で安定する。
他方のガイド部材36を構成する2枚の側板36B,36C間には、変位板支持軸41が回転可能に設けられている。変位板支持軸41は、バケットリンク15を構成する各連結板21,22の長さ方向に延在し、変位板支持軸41の軸方向の両端は、各側板36B,36Cに回転可能に挿通されている。変位板支持軸41の軸方向の中間部には、後述する変位板42が固定されている。
変位部材としての変位板42は、変位板支持軸41に取付けられた状態で、他方のガイド部材36の各側板36B,36C間に形成されたセンサ収容室38内に配置されている。変位板42は、長溝孔36Dの溝幅よりも小さな板厚を有する平板状に形成され、各側板36B,36Cと対面している。変位板42のうち開口部24側は取付部42Aとなり、この取付部42Aは、変位板支持軸41の軸方向中間部に固定されている。従って、変位板42は、変位板支持軸41を中心として左,右方向に回動する。一方、変位板42のうち閉塞板23側は回動部42Bとなり、この回動部42Bは、他方のガイド部材36の立上り板36Aに形成された長溝孔36Dを通過することにより、図5に示す如くフック検出装置45のセンサ部45Aによって検出される検出位置と、図6に示す如くセンサ部45Aの検出範囲から外れた非検出位置との間で変位する。
ここで、変位板42のうちガイド空間37側に位置する周縁部は、フック26がフック格納空間25に格納されるときに、フック26の鉤部材30によって押圧される被押圧部42Cとなっている。変位板42は、フック格納空間25にフック26が格納されたときには、このフック26によって被押圧部42Cが押圧されることにより検出位置(図5の位置)を保持し、フック格納空間25からフック26が取出されたときには、後述する変位板付勢ばね44によって非検出位置(図6の位置)を保持する。
変位板42の回動部42Bには、変位板支持軸41の近傍に位置してストッパピン43が設けられている。ストッパピン43は、長溝孔36Dの溝幅よりも大きい長さ寸法を有し、変位板支持軸41の軸方向と平行して延びている。ストッパピン43は、変位板42の回動部42Bが長溝孔36Dを通じて非検出位置に向けて変位したときに立上り板36Aに当接し、変位板42を非検出位置に保持するものである(図6参照)。
変位板付勢ばね44は、変位板42を挟んで変位板支持軸41の軸方向の両側にそれぞれ設けられている。各変位板付勢ばね44は、例えばねじりコイルばねによって形成され、変位板付勢ばね44の一端44Aは、立上り板36Aの横板部36A2に掛止めされ、変位板付勢ばね44の他端44Bは、変位板42のうち被押圧部42Cとは左,右方向の反対側となる周縁部に掛止めされている。これにより、変位板付勢ばね44は、変位板42を非検出位置に向けて常時付勢し、変位板42は、ストッパピン43が立上り板36Aに当接した非検出位置で安定する。
フック検出装置45は、フック格納空間25内に位置してフック保持機構31に取付けられている。即ち、フック検出装置45は、基板32の近傍に位置して他方のガイド部材36の側板36Bに取付けられている。図3に示すように、フック検出装置45は、側板36Bから側板36Cに向けて突出した円柱状のセンサ部45Aと、センサ部45Aに隣接した円柱状の電源部45Bと、電源部45Bに隣接した小径な棒状のアンテナ部45Cとを含む1個のユニットとして構成されている。他方のガイド部材36の側板36Cには、円板状の磁石46が取付けられている。フック検出装置45のセンサ部45Aは、磁石46と間隔をもって対面し、センサ部45Aと磁石46との間には、検出位置と非検出位置との間で変位する変位板42が出入りする構成となっている。
即ち、変位板42が検出位置(図5に示す位置)にあるときには、センサ部45Aと磁石46との間に変位板42が配置され、変位板42が非検出位置(図6に示す位置)にあるときには、センサ部45Aと磁石46との間から変位板42が離脱する。センサ部45Aは、変位板42が非検出位置にあるときには、磁石46からの磁界を検出することにより、フック26がフック格納空間25から取出されたことを検出する。また、センサ部45Aは、変位板42が検出位置にあるときには、磁石46からの磁界が遮断されることにより、フック26がフック格納空間25内に格納されたことを検出する。
このように、フック検出装置45のセンサ部45Aは、検出位置と非検出位置とに変位する変位板42を検出することにより、フック26がフック格納空間25内に格納されているか否かを間接的に検出する。フック検出装置45のアンテナ部45Cは、センサ部45Aからの検出信号を後述するコントローラ62に無線信号として送信する。電源部45Bは、例えば電池によって構成され、センサ部45Aおよびアンテナ部45Cに駆動用の電力を供給している。
ここで、センサ部45Aの外周面には雄ねじが形成され、この雄ねじには、他方のガイド部材36の側板36Bを挟んで複数(例えば3個)のナット45Dが螺合している。これら各ナット45Dは、フック検出装置45を側板36Bに固定すると共に、センサ部45Aが変位板42を検出するときの距離を調整する機構を構成している。即ち、センサ部45Aの雄ねじに対する各ナット45Dの螺入量を調整し、センサ部45Aが側板36Bからセンサ収容室38内に突出する寸法を変化させることにより、センサ部45Aが変位板42を検出するときの距離が適宜に調整される。
保護カバー47は、フック検出装置45のうち側板36Bからセンサ収容室38とは反対側に突出した部位に設けられている。保護カバー47は、電波を通し易い樹脂材料等の非金属性材料を用いて中空な段付き円筒状に形成され、例えばフック検出装置45の電源部45B、アンテナ部45Cを外周側から取り囲むように覆っている。これにより、例えば油圧ショベル1がバケット7を用いて掘削作業を行うときに、土砂等がフック格納空間25内に侵入した場合に、フック検出装置45を土砂等から保護することができる構成となっている。また、保護カバー47の側板36Bの近くの外周面には、長さ方向と直交する方向に延びる切欠溝47Aが形成されている。
他方のガイド部材36の側板36Bのうちセンサ収容室38とは反対側となる面には、保護カバー47の上側に位置してカバー抜止め具48が設けられている。カバー抜止め具48は、ボルト48Aを用いて側板36Bに取付けられ、ボルト48Aから下方に突出した突出端48Bが、保護カバー47の切欠溝47Aに係合している。これにより、保護カバー47は、ナット45Dとカバー抜止め具48との間に挟持され、フック検出装置45に対して抜止めされている。
貫通孔49は、フック保持機構31が取付けられた閉塞板23に設けられている。図2に示すように、貫通孔49は、フック検出装置45のアンテナ部45Cに対応した位置で閉塞板23を板厚方向に貫通し、フック格納空間25に開口している。これにより、バケットリンク15の向きによって、フック検出装置45のアンテナ部45Cと後述する受信アンテナ50との間に閉塞板23が配置された場合でも、アンテナ部45Cから送信された無線信号(電波)が、貫通孔49を通じて受信アンテナ50に到達することができる構成となっている。
受信アンテナ50は、キャブ3Aの外部に設けられている。受信アンテナ50は、例えばケーブル(図示せず)を介してコントローラ62に接続され、フック検出装置45のアンテナ部45Cから送信された無線信号、即ちフック26がフック格納空間25内に格納されているか否かを示す信号を受信してコントローラ62に出力するものである。
中継器としての中継アンテナ51は、作業装置4を構成するブーム5の先端側(アーム6側)に設けられている。ここで、油圧ショベル1が掘削作業を行うときに、例えば図7中の二点鎖線で示すように、作業装置4が地中深くまで縦穴を掘削している場合には、フック検出装置45のアンテナ部45Cから送信された無線信号が、受信アンテナ50に届き難くなることがある。これに対し、ブーム5の先端側に設けられた中継アンテナ51が、アンテナ部45Cから送信された無線信号を中継して受信アンテナ50に送信することができる構成となっている。これにより、掘削作業時においても、フック検出装置45のアンテナ部45Cから送信された無線信号を、中継アンテナ51、受信アンテナ50を介してコントローラ62に送信することができる。
次に、バケットシリンダ10を制御する油圧系統について図8を参照して説明する。
バケットシリンダ10は、油圧ポンプ52およびタンク53からなる油圧源に、主管路54,55を介して接続されている。主管路54,55の途中には、例えば6ポート3位置の油圧パイロット式の方向制御弁56が設けられている。方向制御弁56は油圧パイロット部56A,56Bを有し、各油圧パイロット部56A,56Bにパイロット圧が供給されないときには、方向制御弁56は中立位置(a)を保持し、油圧ポンプ52から吐出した圧油をタンク53に排出する。油圧パイロット部56Aにパイロット圧が供給されたときには、方向制御弁56は切換位置(b)に切換えられ、油圧ポンプ52からの圧油をバケットシリンダ10のロッド側油室10Bに供給すると共に、ボトム側油室10C内の圧油をタンク53に排出することによりバケットシリンダ10を縮小させる。油圧パイロット部56Bにパイロット圧が供給されたときには、方向制御弁56は切換位置(c)に切換えられ、油圧ポンプ52からの圧油をバケットシリンダ10のボトム側油室10Cに供給すると共に、ロッド側油室10B内の圧油をタンク53に排出することにより、バケットシリンダ10を伸長させる。
パイロット操作弁57は、油圧ショベル1のキャブ3A内に配置され、オペレータによって操作されるものである。パイロット操作弁57と方向制御弁56の油圧パイロット部56Aとの間は、パイロット管路58を介して接続され、パイロット操作弁57と方向制御弁56の油圧パイロット部56Bとの間は、パイロット管路59を介して接続されている。これらパイロット管路58,59の途中には、3ポート2位置の電磁弁60,61がそれぞれ設けられている。
電磁弁60は、電磁パイロット部60Aにコントローラ62からの信号が出力されていないときには、パイロット管路58を連通させる連通位置(d)を保持し、コントローラ62からの信号が出力されたときには、パイロット管路58を遮断する遮断位置(e)に切換えられる。一方、電磁弁61は、電磁パイロット部61Aにコントローラ62からの信号が出力されていないときには、パイロット管路59を連通させる連通位置(f)を保持し、コントローラ62からの信号が出力されたときには、パイロット管路59を遮断する遮断位置(g)に切換えられる。従って、コントローラ62から電磁弁60,61の電磁パイロット部60A,61Aに信号が出力されたときには、電磁弁60,61が遮断位置(e),(g)に切換えられることにより、パイロット操作弁57を操作してもバケットシリンダ10は作動しない状態を保持する。
次に、フック検出装置45からの検出信号等に基づいて油圧ショベル1の作業モードを切換えるコントローラ62について図8を参照して説明する。
コントローラ62は、油圧ショベル1に搭載され、フック検出装置45からの検出信号、後述する手動選択スイッチ64等からの信号に基づいて、油圧ショベル1を、フック26を用いたクレーン作業を行うときのクレーン作業モードと、バケット7を用いた掘削作業を行うときの掘削作業モードとに切換えるものである。
コントローラ62の入力側には、受信アンテナ50、キースイッチ63、手動選択スイッチ64等が接続されている。キースイッチ63は、キャブ3A内に配置され、油圧ショベル1のエンジン65を始動するときにオペレータによって操作される。手動選択スイッチ64は、キャブ3A内に配置され、例えばフック検出装置45からの検出信号に拘わらず、オペレータがクレーン作業モードと掘削作業モードとを任意に選択するために操作される。
コントローラ62の出力側には、エンジン65、モニタ画面66、電磁弁60,61の電磁パイロット部60A,61A等が接続されている。コントローラ62は、フック検出装置45、キースイッチ63、手動選択スイッチ64等から入力される信号に基づいて、油圧ショベル1をクレーン作業モードと掘削作業モードとに切換える制御を行う。
本実施の形態では、フック26がフック格納空間25から取出された取出し位置(図6の位置)にあるときには、フック検出装置45はコントローラ62にON信号を出力し、フック26がフック格納空間25に格納された格納位置(図5の位置)にあるときには、フック検出装置45はコントローラ62にOFF信号を出力する。また、フック検出装置45が不調になった場合には、フック検出装置45はコントローラ62にOFF信号を出力する。この場合、フック26が取出し位置にある状態でフック検出装置45が不調となったときには、フック検出装置45はコントローラ62にOFF信号を出力するが、コントローラ62は、後述する図9の制御処理によってクレーン作業モードを保持する構成となっている。また、フック26が取出し位置にあるとき(クレーン作業時)には、誤って手動選択スイッチ64が掘削作業モード側に切換えられたとしても、コントローラ62は、図9の制御処理によってクレーン作業モードを保持する構成となっている。
コントローラ62がクレーン作業モードを実行するときには、コントローラ62は、例えば上部旋回体3の旋回時にフック26によって吊下げた吊荷が荷振れするのを抑えるために、エンジン65の回転数を制限(低下)する。また、コントローラ62は、電磁弁60,61の電磁パイロット部60A,61Aに信号を出力することにより、パイロット操作弁57の操作に関わらずバケットシリンダ10の伸縮動作を禁止する。さらに、コントローラ62は、ブーム5およびアーム6の回動角を個別に検出する角度センサ、フック26に吊下げられた吊荷の重量を検出する荷重センサ(いずれも図示せず)から入力される検出信号等に基づいて、例えば作業装置4の姿勢に応じた吊荷の定格荷重や車体の安定度を演算し、この演算結果をモニタ画面66に表示させる。
一方、コントローラ62が掘削作業モードを実行するときには、コントローラ62は、電磁弁60,61の電磁パイロット部60A,61Aに対する信号の出力を停止し、パイロット操作弁57の操作に応じたバケットシリンダ10が伸縮動作を許す。また、コントローラ62は、エンジン65の回転数に対する制限を解除すると共に、モニタ画面66に、クレーン作業時とは異なる表示、例えば燃料計、エンジン冷却水の水温計等の表示を行う。
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、クレーン作業を行うために、バケットリンク15からフック26を取出す作業について説明する。
この場合、フック26は、図3および図4に示すようにフック格納空間25内に格納された格納位置にあり、フック26の鉤部材30は、図5に示すように、フック保持機構31を構成する一方のガイド部材33と他方のガイド部材36との間に配置されている。鉤部材30の内周側には、フック保持位置に保持されたロック部材39のフック係合部39Aが係合している。一方、変位板42は、被押圧部42Cがフック26の鉤部材30に押圧されることにより、変位板付勢ばね44に抗して検出位置を保持する。従って、フック検出装置45のセンサ部45Aは、磁石46からの磁界が変位板42によって遮断されることによりフック26がフック格納空間25内にあることを検出し、アンテナ部45Cは、センサ部45Aからの検出信号(OFF信号)を無線信号として受信アンテナ50を介してコントローラ62に送信する。
この状態で、ロック部材39の操作部39Dを矢示B方向に操作し、ロック部材39を図5中の二点鎖線で示すフック解放位置に回動変位させる。これにより、ロック部材39のフック係合部39Aがフック26の鉤部材30から離脱するので、図6に示すように、フック26を、一方のガイド部材33と他方のガイド部材36との間から抜取ることができる。これにより、フック26は、連結軸20を中心として、バケットリンク15のフック格納空間25から離脱し、図1中に二点鎖線で示される位置へと移動する。
このとき、変位板42は、フック26との係合が解除されることにより、変位板付勢ばね44によって図5の検出位置から図6の非検出位置へと回動し、ストッパピン43が他方のガイド部材36の立上り板36Aに当接することにより非検出位置を保持する。従って、フック検出装置45のセンサ部45Aは、磁石46からの磁界によってフック26がフック格納空間25から取出されたことを検出し、アンテナ部45Cは、センサ部45Aからの検出信号(ON信号)を無線信号として受信アンテナ50等を介してコントローラ62に送信する。
このようにして、バケットリンク15から取出されたフック26に対し、ロープ等を用いて吊荷(いずれも図示せず)を吊下げることにより、例えば上部旋回体3を旋回させつつブーム5、アーム6に俯仰の動作を行わせることにより、吊荷を所望の場所へと搬送するクレーン作業を行うことができる。
次に、バケット7を用いた掘削作業を行うため、フック26をバケットリンク15のフック格納空間25に格納する場合には、フック26を把持し、連結軸20を中心としてフック格納空間25に向けて回動させる。そして、図6に示すように、フック保持機構31を構成する各ガイド部材33,36間に形成されたガイド空間37内に、フック26の鉤部材30を挿入する。
このとき、ロック部材39は、ロック部材付勢ばね40によってフック保持位置を保持し、変位板42は、変位板付勢ばね44によって非検出位置を保持している。これに対し、フック26の鉤部材30が、ロック部材39の被押圧部39Bを押圧することにより、ロック部材39は、ロック部材付勢ばね40に抗していったんフック解放位置へと回動する。そして、鉤部材30の外周がロック部材39のフック係合部39Aを乗越えると、ロック部材39は、ロック部材付勢ばね40によって自動的にフック保持位置に復帰する。
一方、フック26の鉤部材30が、変位板42の被押圧部42Cを押圧することにより、変位板42は、変位板付勢ばね44に抗して検出位置へと回動し、この検出位置を保持する。これにより、フック検出装置45のセンサ部45Aは、フック26がフック格納空間25内にあることを検出し、アンテナ部45Cは、受信アンテナ50等を介してコントローラ62にOFF信号を送信する。
このようにして、フック26をバケットリンク15のフック格納空間25に格納した状態で、ブーム5、アーム6に俯仰の動作を行わせつつ、バケットシリンダ10によってバケット7を回動させることにより、土砂等の掘削作業を行うことができる。
ここで、本実施の形態によれば、フック検出装置45のセンサ部45Aが、変位板42の変位に応じてフック26がフック格納空間25内にあるか否かを検出し、フック検出装置45のアンテナ部45Cは、センサ部45Aによる検出結果を無線信号として、受信アンテナ50を介してコントローラ62に送信する。従って、フック格納空間25内にフック26があるか否かの情報を、ケーブルを用いることなく無線信号によってコントローラ62に送信することができる。この結果、例えば従来技術のようにフックセンサとコントローラとの間をケーブルを介して接続する場合に比較して、ケーブルの破損による不具合を回避することができるので、フック26がフック格納空間25に格納されているか否かをフック検出装置45によって長期に亘って正確に検出することができる。
また、本実施の形態では、バケットリンク15の閉塞板23のうちフック検出装置45のアンテナ部45Cに対応した位置に、閉塞板23を板厚方向に貫通する貫通孔49が設けられている。これにより、バケット7を用いた掘削作業時に、バケットリンク15の向きによってフック検出装置45のアンテナ部45Cと受信アンテナ50との間に閉塞板23が配置された場合でも、アンテナ部45Cから送信された無線信号(電波)を、貫通孔49を通じて受信アンテナ50に到達させることができる。
また、油圧ショベル1がバケット7を用いて掘削作業を行うときに、例えば図7中の二点鎖線で示すように、作業装置4が地中深くまで縦穴内に挿入された場合には、フック検出装置45のアンテナ部45Cから送信された無線信号が、受信アンテナ50に届き難くなることがある。これに対し、ブーム5の先端側に中継アンテナ51を設けることにより、アンテナ部45Cから送信された無線信号を、中継アンテナ51を介して受信アンテナ50に送信することができる。これにより、地中深く縦穴を掘削する場合においても、フック検出装置45のアンテナ部45Cから送信された無線信号を、中継アンテナ51、受信アンテナ50を介して的確にコントローラ62に送信することができる。
さらに、本実施の形態では、フック検出装置45のうち側板36Bからセンサ収容室38とは反対側に突出した部位、即ち電源部45Bおよびアンテナ部45Cが保護カバー47によって覆われている。これにより、油圧ショベル1がバケット7を用いて掘削作業を行うときに、土砂等がバケットリンク15のフック格納空間25内に侵入したとしても、この土砂等がフック検出装置45に衝突するのを保護カバー47によって抑えることができ、フック検出装置45を土砂等から保護することができる。
しかも、フック検出装置45を、フック保持機構31を構成する他方のガイド部材36に設けることにより、フック保持機構31とフック検出装置45とを一つのユニットとして形成することができる。この結果、バケットリンク15とはサイズが異なる他のバケットリンクに対しても、ユニット化されたフック保持機構31とフック検出装置45とを容易に取付けることができる。
次に、本実施の形態では、フック26がフック格納空間25内にあるか否かに応じてフック検出装置45から送信される検出信号、手動選択スイッチ64から出力される信号等に基づいて、コントローラ62がクレーン作業モードと掘削作業モードとを切換えるようになっており、以下、コントローラ62が実行する制御処理について、図9を参照して説明する。
まず、フック26がフック格納空間25から取出された取出し位置にあり、手動選択スイッチ64によってクレーン作業モードが選択されている場合について述べる。コントローラ62による制御処理がスタートすると、ステップ1において、キャブ3A内に配置されたキースイッチ63が、エンジン65を始動するためにON操作されたか否かを判定する。ステップ1で「NO」と判定している間はこの判定を繰返し、ステップ1で「YES」と判定したときにはステップ2に進む。ステップ2では、初期設定として制御フラグを「0」に設定し、ステップ3に進む。
ステップ3では、フック検出装置45から送信される検出信号がON信号で、かつ制御フラグが「0」であるか否かを判定する。この場合、フック26がフック格納空間25から取出された取出し位置(図6の位置)にあるときには、フック検出装置45はON信号を送信する。また、ステップ2では制御フラグが「0」に設定されている。従って、フック26が取出し位置にあるときには、ステップ4に進んで制御フラグを「1」に設定し、ステップ5に進む。
ステップ5では、クレーン作業モードに応じた制御を行う。例えばコントローラ62は、電磁弁60,61の電磁パイロット部60A,61Aに信号を出力し、これら電磁弁60,61を遮断位置(e),(g)に切換える。これにより、パイロット操作弁57を操作してもバケットシリンダ10は作動せず、バケット7は、例えば図1に示す姿勢に固定される。また、コントローラ62は、上部旋回体3の旋回時にフック26によって吊下げた吊荷が荷振れするのを抑えるために、エンジン65の回転数を制限する。
さらに、コントローラ62は、ブーム5およびアーム6の回動角を個別に検出する角度センサ、フック26に吊下げられた吊荷の重量を検出する荷重センサ(いずれも図示せず)から入力される検出信号等に基づいて、例えば作業装置4の姿勢に応じた吊荷の定格荷重や車体の安定度を演算し、この演算結果をモニタ画面66に表示させる。従って、オペレータは、モニタ画面66を目視することにより、クレーン作業の作業状態を監視することができ、クレーン作業を安全に行うことができる。
ステップ5を実行した後には、ステップ6に進み、キースイッチ63がOFF操作されたか否かを判定する。ステップ6で「YES」と判定したときには、キースイッチ63がOFF操作されてエンジン65が停止するので、制御処理を終了する。一方、ステップ6で「NO」と判定したときには、ステップ3に進む。この場合、ステップ4で制御フラグが「1」に設定されているので、ステップ3では「NO」と判定され、ステップ7に進む。
ステップ7では、キャブ3A内に配置された手動選択スイッチ64が、クレーン作業モードを選択しているか否かを判定する。ステップ7で「YES」と判定したときには、ステップ5に進んでクレーン作業モードを保持する。このように、フック26が取出し位置にあり、手動選択スイッチ64によってクレーン作業モードが選択されているときには、上述のステップ5、6、3、7を繰返すことにより、クレーン作業モードを保持することができる。
次に、フック26がフック格納空間25内(格納位置)にあるか、フック検出装置45が不調である場合に、手動選択スイッチ64によって掘削作業モードが選択された場合について述べる。この場合には、ステップ1、2、3を進んだ後、ステップ3で「NO」と判定し、ステップ7に進む。
この場合、キャブ3A内に配置された手動選択スイッチ64によって掘削作業モードが選択されているので、ステップ7では「NO」と判定し、制御フラグを「0」に設定した後、ステップ9に進む。
ステップ9では、掘削作業モードに応じた制御を行う。例えばコントローラ62は、電磁弁60,61の電磁パイロット部60A,61Aに対する信号の出力を停止し、これら電磁弁60,61を連通位置(d),(f)に切換える。これにより、パイロット操作弁57の操作に応じてバケットシリンダ10が伸縮し、バケット7を用いて土砂を掘削することができる。また、コントローラ62は、エンジン65の回転数に対する制限を解除すると共に、モニタ画面66に、例えば燃料計、エンジン冷却水の水温計等のクレーン作業時とは異なる表示内容を表示する。
ステップ9を実行した後には、ステップ6に進み、ステップ6で「NO」と判定したときには、ステップ3に進む。この場合、フック検出装置45からOFF信号が送信されているので、ステップ3では「NO」と判定され、ステップ7に進む。従って、手動選択スイッチ64によって掘削作業モードが選択されているときには、上述のステップ9、6、3、7、8を繰返すことにより、掘削作業モードを保持することができる。
ここで、クレーン作業モードを実行しているときに、フック検出装置45が不調となった場合には、フック検出装置45からOFF信号が送信される。この場合には、ステップ3で「NO」と判定されてステップ7に進むので、手動選択スイッチ64によってクレーン作業モードが選択されている限り、上述のステップ5、6、3、7を繰返す。従って、クレーン作業中にフック検出装置45が不調になった場合でも、クレーン作業モードを保持することにより、安定したクレーン作業を継続することができる。
次に、クレーン作業モードを実行しているときに、誤って手動選択スイッチ64が掘削作業モードに切換えられた場合には、コントローラ62は、ステップ7において「NO」と判定し、ステップ8、9、6を経由してステップ3に進む。この場合には、ステップ8で制御フラグが「0」に設定されているので、ステップ3では「YES」と判定し、ステップ4、5、6を経由してステップ3に進む。この場合には、ステップ4で制御フラグが「1」に設定されているので、ステップ3では「NO」と判定し、再びステップ7、8、9、6を経由してステップ3に進む。
このように、クレーン作業モードを実行しているときに、誤って手動選択スイッチ64が掘削作業モードに切換えられた場合には、コントローラ62は、上述したステップ5、6、3、7、8、9、6、3、4を繰返す。そして、ステップ5、6、3、7、8、9、6、3、4を繰返す間に、手動選択スイッチ64をクレーン作業モードに切換えることにより、クレーン作業モードを保持することができる。このように、油圧ショベル1のクレーン作業時に、誤って手動選択スイッチ64が掘削作業モードに切換えられたとしても、油圧ショベル1が急に掘削作業モードに切換わるのを抑え、クレーン作業モードを保持することができる。この結果、クレーン作業中の油圧ショベル1の安定性を保持することができる。
かくして、本実施の形態による油圧ショベル1は、バケットリンク15に設けられたフック26と、バケットリンク15のフック格納空間25内に設けられ、フック26をフック格納空間25内に保持するフック保持機構31と、フック保持機構31に設けられフック格納空間25内に格納されたフック26によって変位する変位板42と、変位板42を検出することによりフック26がフック格納空間25内にあるか否かを検出するフック検出装置45と、フック検出装置45によりフック26がフック格納空間25内にあると検出されたときにはバケット7を用いた掘削作業モードに切換え、フック検出装置45によりフック26がフック格納空間25から取出されたと検出されたときにはフック26を用いたクレーン作業モードに切換える制御を行うコントローラ62とを含んで構成される。
そして、フック検出装置45は、変位板42を検出して信号を出力するセンサ部45Aと、センサ部45Aの出力を無線信号としてコントローラ62に送信するアンテナ部45Cと、電源部45Bとを含む1個のユニットとして構成され、フック検出装置45は、フック格納空間25内でフック保持機構31に取付けられる構成としている。
この構成によれば、フック検出装置45のセンサ部45Aは、変位板42の変位に応じてフック26がフック格納空間25内にあるか否かを検出し、フック検出装置45のアンテナ部45Cは、センサ部45Aによる検出結果を無線信号としてコントローラ62に送信する。これにより、フック格納空間25内にフック26があるか否かの情報を、ケーブルを用いることなくコントローラ62に送信することができる。この結果、例えば従来技術のようにフックセンサとコントローラとの間をケーブルを介して接続する場合に比較して、ケーブルの破損による不具合を回避することができるので、フック26がフック格納空間25に格納されているか否かをフック検出装置45によって長期に亘って正確に検出することができる。
しかも、フック検出装置45は、フック格納空間25内でフック保持機構31を構成する他方のガイド部材36に取付けられるので、フック保持機構31とフック検出装置45とを一つのユニットとして形成することができる。この結果、バケットリンク15とはサイズが異なる他のバケットリンクに対しても、ユニット化されたフック保持機構31とフック検出装置45とを容易に取付けることができる。
実施の形態によれば、フック検出装置45は、アンテナ部45Cおよび電源部45Bを覆う保護カバー47を備えている。この構成によれば、油圧ショベル1がバケット7を用いて掘削作業を行うときに、土砂等がバケットリンク15のフック格納空間25内に侵入したとしても、この土砂等がフック検出装置45のアンテナ部45Cおよび電源部45Bに衝突するのを保護カバー47によって保護することができる。
実施の形態によれば、バケットリンク15は、バケットシリンダ10側に位置する左,右のシリンダ側ボス16,17と、バケット7側に位置する左,右のバケット側ボス18,19との間を連結し間隔をもって配設された左,右の連結板21,22と、左,右の連結板21,22の一側の端面21A,22A間を閉塞しフック保持機構31が取付けられる閉塞板23と、左,右の連結板21,22の他側の端面間に設けられフック26が出入りする開口部24とを備えた箱状に形成され、閉塞板23には、フック検出装置45のアンテナ部45Cに対応した位置でフック格納空間25に開口する貫通孔49が設けられている。この構成によれば、バケット7を用いた掘削作業時に、バケットリンク15の向きによってフック検出装置45のアンテナ部45Cと受信アンテナ50との間に閉塞板23が配置された場合でも、アンテナ部45Cから送信された無線信号(電波)を、貫通孔49を通じて受信アンテナ50に到達させることができる。
実施の形態によれば、作業装置4を構成するブーム5とアーム6とのうち一方の部材には、フック検出装置45とコントローラ62との間でアンテナ部45Cからの無線信号を中継する中継アンテナ51が設けられている。この構成によれば、油圧ショベル1の作業装置4が、地中深く縦穴を掘削する場合においても、フック検出装置45のアンテナ部45Cから送信された無線信号を、中継アンテナ51、受信アンテナ50を介して的確にコントローラ62に送信することができる。
なお、実施の形態では、フック検出装置45のアンテナ部45Cから送信される無線信号を中継するための中継アンテナ51を、作業装置4を構成するブーム5の先端側に設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばアーム6の基端側(ブーム5側)に設ける構成としてもよい。
また、実施の形態では、左,右のシリンダ側ボス16,17、左,右のバケット側ボス18,19、左,右の連結板21,22、閉塞板23が、鋳造により一体形成された箱状のバケットリンク15を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば左,右のシリンダ側ボス、左,右のバケット側ボス、左,右の連結板、閉塞板を、それぞれ別部材として形成し、これらを溶接等の手段を用いて箱状に形成したバケットリンクにも適用することができる。