以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るトンネル支保工10の側面図である。トンネル支保工10は、トンネル掘削に伴い露出する地山の崩落防止のために、掘削直後の坑壁に沿って建て込まれるアーチ状の鋼製支保工であり、トンネル軸方向に沿って一定間隔毎に設置される。本実施形態におけるトンネル支保工10は、H形断面を有するH形鋼によって形成されている。より詳しくは、トンネル支保工10は、一対の円弧状の鋼製支保工10L,10Rの天端部(上端部)同士を一体に連結することでアーチ状に形成されている。以下、鋼製支保工10Lを「左側鋼製支保工」と呼び、鋼製支保工10Rを「右側鋼製支保工」と呼ぶ。
左側鋼製支保工10Lは、第1本体部111、第1天端継手板121、第1底板131を有する。第1本体部111は、ウェブ111a、当該ウェブ111aに直交する一対の地山側フランジ111b及び内空側フランジ111cから構成されるH形鋼である。また、第1本体部111における一端には第1天端継手板121が溶接され、他端には第1底板131が溶接されている。第1天端継手板121及び第1底板131は四角形の鋼製平板であり、第1本体部111のH形断面に対して直交方向に延在している。右側鋼製支保工10Rについても同様に、第2本体部112、第2天端継手板122、第2底板132を有する。第2本体部112は、ウェブ112a、当該ウェブ112aに直交する一対の地山側フランジ112b及び内空側フランジ112cから構成されるH形鋼である。また、第2本体部112における一端には第2天端継手板122が溶接され、他端には第2底板132が溶接されている。第2天端継手板122、第2底板132は四角形の鋼製平板であり、第2本体部112のH形断面に対して直交方向に延在している。本実施形態では、第1天端継手板121及び第2天端継手板122は合同の正方形平面を有している。図1に示すように、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rは、第1天端継手板121及び第2天端継手板122が互いに突き合わされた状態で連結されている。
図1に示す符号2は、定着アンカーである。定着アンカー2は、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rに設けられており、アンカー部材に相当する。本実施形態においては、左側鋼製支保工10Lにおける第1本体部111のウェブ111aと、右側鋼製支保工10Rにおける第2本体部112のウェブ112aに、定着アンカー2が凸設されている。図2は、第1本体部111と第2本体部112に設けられた定着アンカー2を説明する図である。定着アンカー2は、例えば、ウェブ111a,112aから垂直に立設する軸部と、軸部の先端に設けられると共に軸部よりも拡径された頭部からなる。但し、定着アンカー2の形状は適宜変更することができる。また、本実施形態において、第1本体部111は、ウェブ111aの両面に定着アンカー2が凸設されている。また、第2本体部112は、ウェブ112aの両面に定着アンカー2が凸設されている。図2及び図3において、ウェブ111a,112aの延伸方向に沿って、定着アンカー2を1列に配列する例を示しているが、定着アンカー2の配列パターンは特に限定されない。
図3は、実施形態1に係るトンネル支保構造1を説明する図である。図3における符号3は、一次吹付けコンクリート層である。また、符号6は、二次吹付けコンクリート層である。なお、図3には、トンネル支保工10の右側鋼製支保工10Rが図示されている。本実施形態のトンネル構築方法において、切羽8の掘削によってトンネルTの側面に地山7が露出した後、この地山7に対して一次コンクリートの吹付け施工が行われることで、一次吹付けコンクリート層3が形成される。その後、トンネル坑壁面に沿って一次吹付けコンクリート層3の内空側に上述したアーチ状のトンネル支保工10が建て込まれる。トンネル支保工10は、トンネルTの坑口側に位置する既設のトンネル支保工10に対して、切羽8側に隣接し、トンネルTの軸方向に所定の間隔(例えば、1.0m〜1.5m程度)で配列される。トンネル支保工10の建て込みは、一対のブーム先端に取り付けられたハンドを備えたエレクタ装置を用いて行われる。以下、トンネル支保工10の建て込み
方法について詳しく説明する。
図4は、実施形態1に係るトンネル支保工10の建て込みシステムSの概略構成図である。図中、符号100はトンネル支保工10の建て込みを行うエレクタ装置、符号200はエレクタ装置100を搭載すると共に自走可能な作業車(重機)である。符号300はレーザ光による測距・測角儀(測量機)である自動追尾型トータルステーション、符号400はトータルステーション300を制御するトータルステーションコントローラ、符号500はトータルステーションコントローラ400と無線による送受信を可能とするトータルステーション側アンテナである。
エレクタ装置100は、操縦席に搭載されたディスプレイ装置であるモニタ101、エレクタコントローラ102、エレクタ側アンテナ103、操作盤104、キーボード105、ポンティングデバイス106等を有する。
トータルステーション300は、レーザ光を照射してプリズム等を含むターゲット9を自動追尾し、その測距・測角を行うことで、ターゲット9の位置を測定(測量)する測量機であり、トンネルT内において座標が既知の地点(座標既知地点)に設置される。本実施形態では、切羽8に建て込むトンネル支保工10(左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R)にターゲット9を取り付け、トンネル支保工10(左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R)の移動に伴いターゲット9を自動追尾することから、そのようなターゲットの自動追尾、および視準に障害が無いところを選んで設置するとよい。例えば、トンネル床面に設置しても良いし、天井部に架台を架設して、トータルステーション300を架台上に設置しても良い。
トータルステーションコントローラ400は、例えば携帯可能なコンピュータを含んで構成されている。トータルステーションコントローラ400は、コンピュータに組み込まれたソフトウェアによってトータルステーション300の各種の機構を自動制御すると共に、トータルステーション300の測量データを処理する。更に、トータルステーションコントローラ400は、エレクタコントローラ102側との無線通信によりデータの送受信が可能であり、且つ、エレクタコントローラ102側からの指令によりトータルステーション300の各種の機構を無線遠隔操作することが可能である。
図5は、実施形態1に係る作業車200の上面図である。図6は、実施形態1に係る作業車200の側面図である。作業車200は、エレクタ装置100および吹付け装置600を備えている。エレクタ装置100は、同一構成の一対のブーム17L,17Rを備えている。一対のブーム17L,17Rは、これらに付設される駆動機構の作動によって伸縮動作、傾動動作、揺動動作、回動動作が自在である。また、各ブーム17L,17Rの先端には、同一構成の一対のハンド18L,18Rが連結されている。一対のハンド18L,18Rは、これらに付設される駆動機構の作動によって回転動作および揺動動作が自在であり、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rをそれぞれ着脱自在に挟圧把持(保持)することができる。
以下では、符号17Lで示すブームを「左側ブーム」と呼び、符号17Rで示すブームを「右側ブーム」と呼ぶ。また、符号18Lで示すハンドを「左側ハンド」と呼び、符号18Rで示すハンドを「右側ハンド」と呼ぶ。エレクタ装置100は、左側ハンド18Lに左側鋼製支保工10Lを着脱自在に把持し、右側ハンド18Rに右側鋼製支保工10Rを着脱自在に把持することができる。本実施形態において、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rは、アーチ状のトンネル支保工10が2分割された一対の支保材であり、切羽8の近傍に誘導された後、これらを切羽8で組み立ててアーチ状のトンネル支保工10を形成する。
図7は、実施形態1に係るトンネル支保工へのターゲットの取付け位置を示す図である。図7に示すように、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rは左右対称な円弧状である。ここで、左側鋼製支保工10Lは、その上端部と下端部にそれぞれ第1ターゲット9aと第2ターゲット9bが取り付けられる。また、右側鋼製支保工10Rは、その上端部と下端部にそれぞれ第3ターゲット9cと第4ターゲット9dが取り付けられる。ここで、第1ターゲット9a〜第4ターゲット9dを「ターゲット9」と総称する。図8は、実施形態1に係るターゲット9を示す図である。ターゲット9は、ホルダ91の基端部に設けられた磁石92と、ホルダ91の先端に設けられたプリズム93を有する。左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rは鋼製であるため、ホルダ91に設けられた磁石92の磁力によって左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rに対してターゲット9を着脱自在に取り付けることができる。
また、図7に示す例では、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの内空側フランジ111c,112cにターゲット9が取り付けられるようになっている。本実施形態では、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの内空側フランジ111c,112cに、各ターゲット9を取り付ける際の目印が予めペンキ等で標示されている。また、各ターゲット9は、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの内空側フランジ111c,112cに取り付けた状態において、その取付け面からプリズム93中心までの高さHpは一定である。
次に、図5及び図6を参照して吹付け装置600について説明する。吹付け装置600は、左側ブーム17Lおよび右側ブーム17Rの間に配設されており、アーム601と、アーム601に支持される吹付けロボット602と、吹付けロボット602の先端側に設けられる吹付けノズル603等を備えている。アーム601は、伸縮動作、傾動動作等が可能である。また、吹付けロボット602は、吹付けノズル603の傾動動作、回動動作等が可能である。その他、吹付け装置600は、コンクリートポンプ、急結剤供給装置、コンプレッサ、高圧水ポンプ等を備えている。吹付けロボット602は、コンクリートポンプから供給された吹付けコンクリートを吹付けノズル603から吐出させることで、吹付けコンクリートを切羽8に吹付けることができる。
次に、本実施形態におけるトンネル支保工10の建て込み方法について説明する。NATM工法は、(1)切羽8を発破又は機械によって掘削→(2)ズリの搬出→(3)一次吹付けコンクリートの吹付け、トンネル支保工の建て込み、二次吹付けコンクリートの吹付け→(4)ロックボルトの打設を1サイクルとして繰り返すことで、トンネルTを軸方向に延伸させる工法である。本実施形態では、(2)ズリの搬出工程が終了した後、エレクタ装置100を搭載した作業車200を切羽8近傍に配置する(エレクタ配置工程)。その際、エレクタ装置100の各ハンド18L,18Rには、それぞれ左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを、トンネル軸(トンネル延伸方向)に沿って把持した状態で作業車200を切羽8近傍まで自走させ、トンネル支保構造1を新設する新設区間に作業車200を配置する。
そして、本実施形態においては、エレクタ配置工程に後続して、以下に説明する先行一次吹付け工程、先行支保工建て込み工程、天端連結及び吹付け併行作業工程、後行支保工建て込み工程を順次行う。具体的例は後述するが、先行一次吹付け工程は、左右片側の上半部に対応する第1トンネル坑壁面に対して一次吹付けコンクリートを吹付ける工程である。また、先行支保工建て込み工程は、先行一次吹付け工程において一次吹付けコンクリートを吹付けた第1トンネル坑壁面に沿って、左右一対の上半鋼製支保工のうちの一方である第1上半鋼製支保工を左右一対のハンドのうちの一方である第1ハンドに把持した状態で所定の第1建て込み位置に位置合わせすると共に第1上半鋼製支保工を第1建て込み
位置に位置決め保持する工程である。また、天端連結及び吹付け併行作業工程は、左右一対の上半鋼製支保工のうちの他方である第2上半鋼製支保工を、他方のハンドである第2ハンドによって把持した状態で当該第2ハンドを駆動させることにより、第2上半鋼製支保工の天端板を、第1建て込み位置に保持されている第1上半鋼製支保工の天端板に突き合わせて一対の天端板同士を相互に連結する支保工連結作業と、第1建て込み位置に保持されている第1上半鋼製支保工及び第1トンネル坑壁面に対する二次吹付けコンクリートの吹付け作業と、を併行して行う工程である。
後行支保工建て込み工程は、支保工連結工程の後、第2のハンドを駆動させて、第2トンネル坑壁面に沿って第2上半鋼製支保工を所定の第2建て込み位置に位置合わせすると共に第2上半鋼製支保工を第2建て込み位置に位置決め保持する。
更に、本実施形態の先行支保工建て込み工程においては、上述した先行支保工建て込み作業と、上半部における前記第1トンネル坑壁面と反対側の第2トンネル坑壁面(すなわち、上記先行一次吹付け工程において一次吹付けコンクリートを吹付けなかった方の第2トンネル坑壁面)に対して一次吹付けコンクリートを吹付ける後行一次吹付け作業を併行して行う。
以下、先行一次吹付け工程、先行支保工建て込み工程、天端連結及び吹付け併行作業工程、後行支保工建て込み工程の具体例について説明する。
まず、先行一次吹付け工程について説明する。図9Aは、エレクタ配置工程が完了した直後におけるトンネルTの新設区間において、トンネル軸方向から切羽8を眺めた状態を示している。符号WRは、トンネル上半部における地山7の右側半分(右上半部)のトンネル坑壁面(以下、「右側上半坑壁面」という)である。また、符号WLは、トンネル上半部における左側半分(左上半部)のトンネル坑壁面(以下、「左側上半坑壁面」という)である。本実施形態では、右側上半坑壁面WRに沿って右側鋼製支保工10Rが建て込まれ、左側上半坑壁面WLに沿って左側鋼製支保工10Lが建て込まれる。ここでは、右側上半坑壁面WRを上述した第1トンネル坑壁面とし、左側上半坑壁面WLを上述した第2トンネル坑壁面として、まず右側上半坑壁面WRに対して一次吹付けコンクリートを左側上半坑壁面WLに先行して吹付ける例を説明する。
図9Bは、右側上半坑壁面WRへの一次吹付けコンクリートの吹付けが完了した状況を示す。すなわち、図9Bに示す状態において、右側上半坑壁面WRにだけ一次吹付けコンクリート層3が形成されることで、先行一次吹付け工程が完了した状態を示している。なお、上記の通り、右側上半坑壁面WRへの一次吹付けコンクリートの吹付けは、吹付け装置600における吹付けロボット602の吹付けノズル603からコンクリートを吐出させることで行われる。
図9Cは、先行支保工建て込み工程を説明する図である。先行支保工建て込み工程では、図9Bにおいて説明した先行一次吹付け工程において一次吹付けコンクリートを吹付けた右側上半坑壁面WRに沿って、第1上半鋼製支保工としての右側鋼製支保工10Rを第1ハンドとしての右側ハンド18Rに把持した状態で所定の第1建て込み位置に位置合わせすると共に右側鋼製支保工10Rを第1建て込み位置に位置決め保持する先行支保工建て込み作業を行う。更に、この先行支保工建て込み工程においては、図9Bで説明した先行一次吹付け工程において一次吹付けコンクリートを吹付けていない方の左側上半坑壁面WL、すなわち、上半部における右側上半坑壁面WRと反対側に位置する左側上半坑壁面WLに対して一次吹付けコンクリートを吹付ける後行一次吹付け作業を、先行支保工建て込み作業と併行して行う。図9Cには、右側上半坑壁面WRに沿った第1建て込み位置に右側鋼製支保工10Rを位置合わせしつつ、吹付け装置600の吹付けノズル603によ
る左側上半坑壁面WLへの一次吹付けコンクリートの吹付け作業(後行一次吹付け作業)を同時併行で行っている状況を概略的に示している。なお、右側鋼製支保工10Rの第1建て込み位置への位置合わせは、右側鋼製支保工10Rを把持する右側ハンド18Rを駆動することで行われる。
図9Dは、左側上半坑壁面WLに対する一次吹付けコンクリートの吹付け作業(後行一次吹付け作業)と、右側鋼製支保工10Rの第1建て込み位置への位置合わせ及び保持を行う先行支保工建て込み作業が完了した状態、すなわち、先行支保工建て込み工程が完了した状態を示す。図9Dに示す状態において、左側上半坑壁面WLにも一次吹付けコンクリート層3が形成され、且つ、右側鋼製支保工10Rは右側ハンド18Rに保持されることで、第1建て込み位置に位置決めされている。
なお、図9C及び図9Dで説明した先行支保工建て込み作業において、エレクタコントローラ102は、トータルステーションコントローラ400を介してトータルステーション300を無線遠隔操作し、右側鋼製支保工10Rに取り付けた各ターゲット9(第3ターゲット9c、第4ターゲット9d)を自動追尾して、各ターゲット9の座標を順次自動測量する。ここで、トータルステーション300は、座標既知地点(x0,y0,z0)に設置されている。このように座標既知地点に設置されたトータルステーション300からレーザ光を照射して各ターゲット9c、9dを視準して測距・測角を行うことで、各ターゲット9c、9dの位置座標(x3,y3,z3)、(x4,y4,z4)を求めることができる。そして、各ターゲット9c、9dの位置座標を含む測量データは、トータルステーションコントローラ400側からエレクタコントローラ102へと順次無線送信される。エレクタコントローラ102は、トータルステーション300から取得した各ターゲット9の測量データに基づいて、右側鋼製支保工10Rを所定の第1建て込み位置へと誘導するための右側ハンド18Rの駆動量を算出する。なお、エレクタコントローラ102が算出した右側ハンド18Rの移動量は、モニタ101に表示される。本実施形態におけるトータルステーション300は各ターゲット9を自動追尾し、視準することができる。従って、右側ハンド18Rの駆動によって右側鋼製支保工10Rを第1建て込み位置に位置合わせするために必要な右側ハンド18Rの移動量は、モニタ101にリアルタイムで表示することができ、オペレータはモニタ101を見ながら操作盤104を順次操作することで右側鋼製支保工10Rを簡単に第1建て込み位置へと誘導できる。
次に、図9Eを参照して、天端連結及び吹付け併行作業工程について説明する。天端連結及び吹付け併行作業工程の支保工連結作業においては、第2上半鋼製支保工としての左側鋼製支保工10Lを、第2ハンドとしての左側ハンド18Lによって把持した状態で左側ハンド18Lを駆動させることにより、左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121(天端板)を、第1建て込み位置に保持されている右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122(天端板)に突き合わせ、一対の天端板同士である第1天端継手板121及び第2天端継手板122を相互に連結する。図9Eは、左側ハンド18Lを駆動して、右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122に左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121を接近させている状況を示している。また、本実施形態の天端連結及び吹付け併行作業工程においては、第1建て込み位置に保持されている右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WRに対する二次吹付けコンクリートの吹付け作業を、左側鋼製支保工10Lにおける第1天端継手板121及び右側鋼製支保工10Rにおける第2天端継手板122の連結作業(支保工連結作業)と同時併行して行う。右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WRに対する二次吹付けコンクリートの吹付けは、例えば、右側鋼製支保工10Rの脚部112d(図1を参照)から行い、順次上方へ向けて二次吹付けコンクリートを吹付けてもよい。その際、右側鋼製支保工10Rの脚部112dに設置された第4ターゲット9dを取り外した状態で、脚部112dへの二次吹付けコンクリートの吹付けを行う。
なお、支保工連結工程においても、トータルステーション300を無線遠隔操作し、各ターゲット9を自動追尾して、これらの座標を順次自動測量する。具体的には、トータルステーション300からレーザ光を照射して各ターゲット9を視準して測距・測角を行うことで、第1ターゲット9a〜第3ターゲット9cの位置座標(x1,y1,z1)、(x2,y2,z2)、(x3,y3,z3)を求める。エレクタコントローラ102は、トータルステーション300から取得した各ターゲット9の測量データに基づいて、左側ハンド18Lを相対移動させるためのそれぞれの駆動量を設定し、左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121及び右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122が当接するように左側ハンド18Lを駆動する。
次に、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結構造について説明する。
図10は、実施形態1に係る左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する連結構造30を示す概略図である。連結構造30は、左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121、右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122、第1天端継手板121に凹設された雌型連結部40、第2天端継手板122に凸設された雄型連結部50等を含む。図10は、図9Eに示されるように、左側鋼製支保工10Lにおける第1天端継手板121と右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122が連結構造30を介して連結される前の状態、即ち、第1天端継手板121と第2天端継手板122が離間した状態を示している。
ここで、符号121aは、第1天端継手板121の外面、符号121bは第1天端継手板12Lの内面である。符号122aは、第2天端継手板122の外面、符号122bは第2天端継手板122の内面である。図11Aに、第1天端継手板121の外面121a側から眺めた雌型連結部40を示し、図11Bに、第1天端継手板121の内面121b側から眺めた雌型連結部40を示す。また、図12Aに第2天端継手板122の内面122b側から眺めた雄型連結部50を示し、図12Bに、第2天端継手板122の外面122a側から眺めた雌型連結部40を示す。
なお、符号121cは第1天端継手板121の上縁、符号121dは第1天端継手板121の下縁、符号121eは第1天端継手板121の左右の側縁である。また、符号122cは第2天端継手板122の上縁、符号122dは第2天端継手板122の下縁、符号122eは第2天端継手板122の左右の側縁である。図11A及び図11Bに、第1天端継手板121の高さ方向及び幅方向を図示し、図12A及び図12Bに、第2天端継手板122の高さ方向及び幅方向を図示する。第1天端継手板121の高さ方向は側縁121eの延伸方向と平行であり、且つ、第1本体部111が第1天端継手板121と連結する位置におけるウェブ111aの延伸方向と平行である。また、第1天端継手板121の幅方向は上縁121c及び下縁121dの延伸方向と平行であり、且つ、第1本体部111が第1天端継手板121と連結する位置における地山側フランジ111b及び内空側フランジ111cの延伸方向と平行である。また、第2天端継手板122の高さ方向は側縁122eの延伸方向と平行であり、且つ、第2本体部112が第2天端継手板122と連結する位置におけるウェブ112aの延伸方向と平行である。第2天端継手板122の幅方向は上縁122c及び下縁122dの延伸方向と平行であり、且つ、第2本体部112が第2天端継手板122と連結する位置における地山側フランジ112b及び内空側フランジ112cの延伸方向と平行である。
図11A及び図11Bに示すように、第1天端継手板121には、符号A1で示される第1領域と、符号A2で示される第2領域にそれぞれ雌型連結部40が設けられている。第1領域A1は、第1天端継手板121の平面領域のうち、第1本体部111のウェブ111aを境に一方側に位置すると共に、地山側フランジ111b、内空側フランジ111
c及びウェブ111aによって囲まれた領域である。第2領域A2は、第1天端継手板121における平面領域のうち、第1本体部111のウェブ111aを境に他方側に位置すると共に、地山側フランジ111b、内空側フランジ111c及びウェブ111aによって囲まれた領域である。同様に、図12A及び図12Bに示すように、第2天端継手板122には、符号A1で示される第1領域と、符号A2で示される第2領域にそれぞれ雌型連結部40が設けられている。第1領域A1は、第2天端継手板122における平面領域のうち、第2本体部112のウェブ112aを境にして一方側に位置すると共に、地山側フランジ112b、内空側フランジ112c及びウェブ112aによって囲まれた領域である。第2領域A2は、第2天端継手板122の平面領域のうち、第2本体部112のウェブ112aを境にして他方側に位置すると共に、地山側フランジ112b、内空側フランジ112c及びウェブ112aによって囲まれた領域である。
まず、第2天端継手板122に凸設された雄型連結部50について説明する。第2天端継手板122には、雄型連結部50が設けられる位置に一対の開口孔122hが穿設されている。雄型連結部50は、棒状の雄型係止部材51を有している。雄型係止部材51は、第2天端継手板122の開口孔122hよりも若干小径の軸部材であり、その基端部に雄ネジ51aが刻設されている。また、雄型係止部材51の中間部には環状の鍔部51bが設けられている。また、雄型係止部材51の鍔部51bよりも先端側の部位における外周部には、雄ネジ51cが形成されている。雄型係止部材51の雄ネジ51cは、雄型係止部材51の外周に複数並設された周方向の雄側係止溝である。また、雄型係止部材51の先端部51dには、先端に向かって縮径するテーパ面51eが形成されている。
また、第2天端継手板122の外面122a側における開口孔122hの周囲には、周囲よりも一段凹んだザグリ部122gが形成されている。雄型係止部材51の鍔部51bは、第2天端継手板122の開口孔122hの径よりも大きい。雄型係止部材51の基端側を、第2天端継手板122の外面122a側から開口孔122hに挿通し、鍔部51bをザグリ部122gに配置した状態で基端部の雄ネジ51aにナット52を螺着する。その結果、雄型係止部材51が第2天端継手板122から突出した状態で、第2天端継手板122に雄型係止部材51を固定することができる。
次に、雌型連結部40について説明する。第1天端継手板121は、雌型連結部40が設けられる位置に一対の開口孔121hが穿設されており、その内面121bには金属製の円筒状のケーシング41が溶接wpなどによって固定されている。ケーシング41は、その軸心を開口孔121hの略中央部に位置させている。ケーシング41内には、収納室42が形成されている。収納室42の先部(前部)には、その内周面を後端側から先端側にかけて内径が徐々に縮径するテーパ面43aを有するテーパ穴43が形成されている。また、収納室42の中間部にはバネ収納部42aが形成されており、収納室42の後部内周に雌ネジ45が刻設されている。また、テーパ穴43の先端部には、挿入口48が開口形成されている。ケーシング41の前端部に位置する挿入口48は、第1天端継手板121に形成された開口孔121hと略同径で、開口孔121hと連通している。また、ケーシング41が第1天端継手板121に固定された状態で挿入口48が開口孔121hと重なった位置に配置されている。
また、テーパ穴43内には、分割された雌型係止部材46が軸方向に摺動可能に配置されている。本実施形態では、図13に示すように、周方向に3つに分割してなる楔形の雌型係止部材46が、ケーシング41の軸(前後)方向に摺動可能に配設されている。図13は、図10におけるX−X矢視断面図である。ここで、雌型係止部材46の外面は、テーパ穴43におけるテーパ面43aに沿って摺動可能なテーパ面46aとして形成されている。雌型係止部材46のテーパ面46aは、先端側から後方にかけて外径が徐々に拡大している。更に、各雌型係止部材46の内面には、雌ネジ46bが形成されている。雌ネ
ジ46bは、各雌型係止部材46の内面に、複数並設された周方向の雌側係止溝である。雌ネジ46bは、ケーシング41の軸心を中心とする円弧で且つ、軸心に沿った方向に刻設されている。以上より、複数個の雌型係止部材46によって雌ネジ穴が形成され、各雌型係止部材46のテーパ面46aがテーパ穴43のテーパ面43aに沿って後退することにより、その雌ネジ穴が拡径され、前方(先方)へ移動することにより当該雌ネジ穴が縮径するようになる。なお、各雌型係止部材46の内面に形成された雌ネジ46bは、雄型係止部材51の先端側外周部に形成された雄ネジ51cと噛合させることができる。
また、収納室42のバネ収納部42aには、雌型係止部材46を前方(先方)に押圧(弾性付勢)する押圧部材である押圧ばね44が、各雌型係止部材46の後端に設けられるばね受け47と蓋板49との間に圧縮した状態で収納されており、押圧ばね44の押圧力によって各雌型係止部材46を常時前方に押圧している。蓋板49は、収納室42の後部内周側に刻設された雌ネジ45に螺着されることで、押圧ばね44を圧縮した状態に保持することができる。なお、蓋板49の外面には、六角穴49aが設けられており、六角レンチによって蓋板49をケーシング41から着脱自在になっている。
以上のように構成される雌型連結部40及び雄型連結部50において、各雌型係止部材46の内面に形成された雌ネジ46bと雄型係止部材51の外周部に形成された雄ネジ51cは、ネジピッチが、JISに規定する細目ネジのピッチよりも小さく形成されている。また、本実施形態の雌型連結部40では各雌型係止部材46の内面に螺旋状の雌ネジ46bを形成したが、雌ネジ46bに代えて、各雌型係止部材46の周方向に伸びる環状の山部と環状の谷部を交互かつ並行に配置した並行溝を各雌型係止部材46の内面に設けても良い。同様に、雄型連結部50においては、雄型係止部材51の外周部に形成した雄ネジ51cに代えて、雄型係止部材51の周方向に伸びる環状の山部と環状の谷部を交互かつ並行に配置した並行溝を雄型係止部材51の外周面に設けても良い。
次に、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する際の連結構造30の動作について説明する。図10に示すように、左側鋼製支保工10Lにおける第1天端継手板121と右側鋼製支保工10Rにおける第2天端継手板122を接近かつ対峙(対向)させた状態から、第1天端継手板121の開口孔121hに雄型連結部50(雄型係止部材51)が挿入されるように、第1天端継手板121及び第2天端継手板122の離間距離を徐々に狭めてゆく。
ここで、雄型係止部材51の外径は、第1天端継手板121の開口孔121h及び雌型連結部40(ケーシング41)の挿入口48よりも若干小径で、且つ、各雌型係止部材46がテーパ穴43(テーパ面43a)の最前進位置に配置された状態で、各雌型係止部材46によって形成される雌ネジ穴の直径よりも若干大径に設定されている。第2天端継手板122に凸設された雄型係止部材51が第1天端継手板121の開口孔121hを通じて、雌型連結部40の挿入口48から侵入すると、押圧ばね44の押圧力によって前端部にテーパ穴43(テーパ面43a)の最前進位置に位置決めされている各雌型係止部材46の前端面46cに雄型係止部材51の先端部51dが当接する。そして、雄型係止部材51が押圧ばね44の押圧力に抗して、各雌型係止部材46をテーパ面43aに沿って、雌型連結部40(ケーシング41)の軸方向後方に向かって後退させることで、各雌型係止部材46におけるテーパ面46aの雌ネジ46bによって形成されている雌ネジ穴を拡径しつつ雄型係止部材51が収納室42内に挿入される。
そして、第1天端継手板121の外面121aと第2天端継手板122の外面122aとが当接することで面接触し、雌型連結部40における収納室42内への雄型係止部材51の挿入が完了することで、それ以上の収納室42内への雄型係止部材51の挿入が停止されると、各雌型係止部材46は押圧ばね44の押圧力によって前方(先方)に押し戻さ
れると共に、各雌型係止部材46のテーパ面46aによって形成される雌ネジ穴が縮径する。その結果、図14に示すように、雌型連結部40における各雌型係止部材46の雌ネジ46b(雌側係止溝)及び雄型連結部50における雄型係止部材51の雄ネジ51c(雄側係止溝)が相互に噛合する。これによって、図1に示したように、第1天端継手板121及び第2天端継手板122が面接触した状態で、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rが一体に連結される。なお、本実施形態においては、雌型連結部40に対して雄型係止部材51が挿入及び係止された状態において、第1天端継手板121及び第2天端継手板122の各外縁同士の位置がすべて合致するように設定されている。すなわち、第1天端継手板121の雌型連結部40と第2天端継手板122の雄型係止部材51が連結された状態において、第1天端継手板121の上縁121c、下縁121d、一対の側縁121eがそれぞれ第2天端継手板122の上縁122c、下縁122d、一対の側縁122eに重なるようになっている。
ここで、図14に示したように、雌型連結部40の雌ネジ46bと雄型連結部50(雄型係止部材51)の雄ネジ51cが噛合した状態で、第1天端継手板121及び第2天端継手板122を離反する方向に外力が作用した場合、雌型連結部40における収納室42から雄型係止部材51を引き抜く方向に引き抜き力が作用する。この引き抜き力は、互いに噛み合う雄ネジ51cと雌ネジ46bを介して各雌型係止部材46に伝達される。ところで、各雌型係止部材46のテーパ面46aは後方側から前方にかけて外径が徐々に縮小している。そのため、上記引き抜き力が各雌型係止部材46に作用しても、各雌型係止部材46がテーパ穴43の前方に向かって変位することが制限される。すなわち、本実施形態に係る連結構造30によれば、雌型連結部40の収納室42から雄型係止部材51を引き抜く方向に外力が作用しても、当該外力に対抗して連結状態を維持することができる。つまり、実施形態における連結構造30によれば、雌型連結部40の挿入口48から雄型連結部50(雄型係止部材51)を挿入する動作だけで、雌型連結部40に対して雄型連結部50が連結されるため、簡単に左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを一体に締結できる。また、雌型連結部40における収納室42から雄型係止部材51を引き抜く方向に引き抜き力が作用しても、雌型連結部40及び雄型連結部50の連結が解除されることを抑制できる。
以上のようにして、左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121及び右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122の連結が行われることで、支保工連結作業が完了する。本実施形態における連結構造30は、エレクタ装置100のハンド操作によってワンタッチで連結されるワンタッチ継手として機能する。これによれば、従来のように、切羽近傍に組まれた作業足場やエレクタ装置のマンケージ等に人員を配置してトンネル天端付近まで人員を移動させ、一対の鋼製支保工の天端に位置する継手板同士をボルトとナットによって締結するといった切羽付近での人手作業を行う必要がないため、従来よりも安全性や施工性を向上させることができる。
更に、本実施形態の天端連結及び吹付け併行作業工程においては、第1建て込み位置に保持されている右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WRに対する二次吹付けコンクリートの吹付け作業を、左側鋼製支保工10Lにおける第1天端継手板121及び右側鋼製支保工10Rにおける第2天端継手板122の支保工連結作業と同時併行して行うため、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結が完了した時点で、右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WRに対する二次吹付けコンクリートの吹付け作業の全部、或いは一部を残して完了した状態となっている。
なお、右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WRに対する二次吹付けコンクリートの吹付け時において、右側鋼製支保工10Rを把持する右側ハンド18Rや、第3ターゲット9cにコンクリートが掛らないようにする。これらの箇所については、右側ハンド1
8Rによる右側鋼製支保工10Rの把持を解除した後、第3ターゲット9cを右側鋼製支保工10Rから取り外した後に二次吹付けコンクリートを吹付ければよい。また、本実施形態においては、上記のように、右側鋼製支保工10Rの脚部112d側から二次吹付けコンクリートの吹付けを行う。そのため、脚部112d側に吹付けた二次吹付けコンクリートが凝結硬化後は、支保工連結作業の途中で右側鋼製支保工10Rを把持する右側ハンド18Rの把持を解除してもよい。また、本実施形態における右側鋼製支保工10Rには、定着アンカー2がウェブ112aの両面に凸設されているため、定着アンカー2を介して右側鋼製支保工10Rと二次吹付けコンクリートと間の定着性が非常に優れたものとなる。
図15は、天端連結及び吹付け併行作業工程が完了した状態を示している。図15において、トンネルの新設区間における右上半部には、二次吹付けコンクリート層6が形成されている。
天端連結及び吹付け併行作業工程が完了すると、次に、後行支保工建て込み工程が行われる。後行支保工建て込み工程においては、左側ハンド18Lを駆動させて、左側上半坑壁面WL(第2トンネル坑壁面)に沿って左側鋼製支保工10L(第2上半鋼製支保工)を所定の第2建て込み位置に位置合わせすると共に左側鋼製支保工10Lを第2建て込み位置に位置決め保持する。なお、後行支保工建て込み工程を行う際に、左側ハンド18Lが左側鋼製支保工10Lを把持する位置を変更してもよい。
具体的には、トータルステーション300を無線遠隔操作し、左側鋼製支保工10Rに取り付けた各ターゲット9(第1ターゲット9a、第2ターゲット9b)を自動追尾して、各ターゲット9の座標を順次自動測量する。そして、エレクタコントローラ102は、トータルステーション300から取得した各ターゲット9の測量データに基づいて、左側鋼製支保工10Lを所定の第2建て込み位置へと誘導するための左側ハンド18Lの駆動量を算出する。なお、エレクタコントローラ102が算出した左側ハンド18Lの移動量は、モニタ101に表示される。オペレータはモニタ101を見ながら操作盤104を順次操作することで左側鋼製支保工10Lを簡単に第2建て込み位置へと誘導できる。なお、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結が完了した時点で、左側鋼製支保工10Lは、既に第2建て込み位置の近傍に位置しているため、後行支保工建て込み工程における左側鋼製支保工10Lの移動量を少なくすることができる。
そして、後行支保工建て込み工程が完了すると、図16に示すように、左側ハンド18Lによって左側鋼製支保工10Lを第2建て込み位置に位置決め保持した状態で、左側鋼製支保工10L及び左側上半坑壁面WLに二次吹付けコンクリートを吹付ける。左側鋼製支保工10L及び左側上半坑壁面WLへの二次吹付けコンクリートの吹付けは、吹付け装置600における吹付けノズル603からコンクリートを吐出させることによって行われ、例えば、左側鋼製支保工10Lの脚部111d(図1を参照)から行い、順次上方へ向けて二次吹付けコンクリートを吹付けてもよい。また、左側鋼製支保工10L及び左側上半坑壁面WLへの二次吹付けコンクリートの吹付けは、左側鋼製支保工10Lに設置された第1ターゲット9a及び第2ターゲット9bを取り外した状態で行われる。また、左側鋼製支保工10L及び左側上半坑壁面WLへの二次吹付けコンクリートの吹付け時において、左側鋼製支保工10Lの脚部111dに先行して吹付けたコンクリートが凝結硬化した後は、左側鋼製支保工10Lを把持している左側ハンド18Lの把持を解除してもよい。また、本実施形態における左側鋼製支保工10Lには、定着アンカー2がウェブ111aの両面に凸設されているため、定着アンカー2を介して左側鋼製支保工10Lと二次吹付けコンクリートと間の定着性が非常に優れたものとなる。
図17は、左側鋼製支保工10L及び左側上半坑壁面WLへの二次吹付けコンクリート
の吹付けが完了し、新設区間における左上半部に二次吹付けコンクリート層6が形成された状態となっている。以上の工程により、図17に示すように、新設区間に対するアーチ状のトンネル支保工10の建て込み、及び上半部におけるトンネル坑壁面への二次吹付けコンクリート層6の構築が完了する。なお、図17に示すように、二次吹付けコンクリート層6は、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rにおける内空側フランジ111c,112cに概ね達する厚さを有している。その後は、必要に応じてロックボルトを二次吹付けコンクリート層6及び一次吹付けコンクリート層3を貫通させて地山7に打設することで、トンネルTにおける支保構造の構築の1サイクル分が完了する。
以上のように、本実施形態におけるトンネルの構築方法によれば、先行一次吹付け工程において、左右片側の上半部に対応する右側上半坑壁面WR(第1トンネル坑壁面)に対して一次吹付けコンクリートを吹付けておき、その後の先行支保工建て込み工程において、右側上半坑壁面WRに沿って右側鋼製支保工10R(第1上半鋼製支保工)を右側ハンド18R(第1ハンド)に把持した状態で所定の第1建て込み位置に位置合わせすると共に右側鋼製支保工10Rを第1建て込み位置に位置決め保持する先行支保工建て込み作業と、先行一次吹付け工程において一次吹付けコンクリートを吹付けていない方の左側上半坑壁面WL(第2トンネル坑壁面)に対して一次吹付けコンクリートを吹付ける後行一次吹付け作業を併行して行うようにしたので、施工時間の短縮化を実現できる。
例えば、左側上半坑壁面WL(第2トンネル坑壁面)に対して一次吹付けコンクリートを吹付けている間に、第1建て込み位置への右側鋼製支保工10Rの建て込みを完了させることで、後行する左側上半坑壁面WL(第2トンネル坑壁面)に対する一次吹付けコンクリートの吹付け作業と別枠で右側鋼製支保工10Rを建て込むためだけに時間を費やす必要がなくなる。それゆえ、右側鋼製支保工10Rの建て込み作業に要する時間を実質的にゼロにできる。あるいは、右側鋼製支保工10Rを第1建て込み位置に建て込んでいる間に左側上半坑壁面WL(第2トンネル坑壁面)に対する一次吹付けコンクリートの吹付けを完了させることで、右側鋼製支保工10Rの建て込み作業と別枠で左側上半坑壁面WL(第2トンネル坑壁面)に対して一次吹付けコンクリートを吹付けるためだけに時間を費やす必要がなくなる。それゆえ、左側上半坑壁面WL(第2トンネル坑壁面)に対する一次吹付けコンクリートの吹付け作業に要する時間を実質的にゼロにできる。
更に、本実施形態の天端連結及び吹付け併行作業工程においては、第1建て込み位置に保持されている右側鋼製支保工10R(第1上半鋼製支保工)及び右側上半坑壁面WR(第1トンネル坑壁面)に対する二次吹付けコンクリートの吹付け作業を、右側鋼製支保工10R及び左側鋼製支保工10Lの天端継手板121,122同士の連結作業と併行して行うようにしたので、施工時間の短縮化を実現できる。
例えば、右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WR(第1トンネル坑壁面)に対して二次吹付けコンクリートを吹付けている間に、右側鋼製支保工10R及び左側鋼製支保工10Lの連結作業を完了させることで、上記二次吹付けコンクリートの吹付け作業と別枠で右側鋼製支保工10R及び左側鋼製支保工10Lを連結するためだけに時間を費やす必要がなくなる。それゆえ、右側鋼製支保工10R及び左側鋼製支保工10Lの連結作業に要する時間を実質的にゼロにできる。
あるいは、右側鋼製支保工10R及び左側鋼製支保工10Lの連結作業を行っている間に、右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WRに対する二次吹付けコンクリートの吹付け作業を完了させることで、上記連結作業と別枠で右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WRに二次吹付けコンクリートを吹付けるためだけに時間を費やす必要がなくなる。それゆえ、上記二次吹付けコンクリートの吹付け作業に要する時間を実質的にゼロにできる。
また、本実施形態におけるトンネルの構築方法によれば、エレクタ装置100を操作するオペレータと、吹付け装置600を操作するオペレータ、すなわち、実質的に二人のオペレータだけでトンネル支保構造1を構築するための作業を行うことができる。従って、従来に比べて少ない作業員でトンネルを構築することができる。
また、本実施形態におけるトンネルの構築方法によれば、作業車200に搭載したエレクタ装置100の一対のハンド18L,18Rに左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを把持した状態で、二次吹付けコンクリートの吹付け作業を行うため、新設した右側鋼製支保工10R及び左側鋼製支保工10Lを既設の右側鋼製支保工10R及び左側鋼製支保工10Lに対してつなぎ材を介して連結する作業を省略できる。これによれば、切羽8の近傍に組まれた作業足場やエレクタ装置のマンケージ等に人員を配置して、つなぎ材の設置作業を行う必要がないため、従来よりもトンネルを構築する際の安全性や施工性を向上させることができる。
なお、実施形態1においては、先行一次吹付け工程において右側上半坑壁面WR(第1トンネル坑壁面)に対して一次吹付けコンクリートを吹付けておき、その後の先行支保工建て込み工程において、右側鋼製支保工10R(第1上半鋼製支保工)の先行支保工建て込み作業と、左側上半坑壁面WL(第2トンネル坑壁面)に対する後行一次吹付け作業とを併行して行うようにしたが、これには限られず、先行一次吹付け工程において右側上半坑壁面WR(第1トンネル坑壁面)及び左側上半坑壁面WL(第2トンネル坑壁面)に対する一次吹付けコンクリートの吹付けを一斉に行ってもよい。このような場合においても、天端連結及び吹付け併行作業工程において、第1建て込み位置に保持されている右側鋼製支保工10R(第1上半鋼製支保工)及び右側上半坑壁面WR(第1トンネル坑壁面)に対する二次吹付けコンクリートの吹付け作業と、右側鋼製支保工10R及び左側鋼製支保工10Lを連結する支保工連結作業を併行して行うことで、従来に比べて支保構造を構築するための施工時間の短縮化を実現できる。
<変形例>
なお、上記の実施形態においては、右側上半坑壁面WRを第1トンネル坑壁面とし、左側上半坑壁面WLを上述した第2トンネル坑壁面として、左側上半坑壁面WLに先行して、まず右側上半坑壁面WRに対して一次吹付けコンクリートを吹付ける例を説明したが、逆に、右側上半坑壁面WRに先行して左側上半坑壁面WLに対する一次吹付けコンクリートの吹付けを行ってもよいのは勿論である。この場合、左上半部と右上半部における各工程を入れ替えて行えばよい。
すなわち、先行一次吹付け工程においては、図18に示すように、右側上半坑壁面WRに先行して左側上半坑壁面WLに対する一次吹付けコンクリートの吹付けを行うことで、左側上半坑壁面WLに一次吹付けコンクリート層3を形成する。
次に、先行支保工建て込み工程においては、図19に示すように、一次吹付けコンクリート層3が形成された左側上半坑壁面WLに沿って、左側鋼製支保工10L(第1上半鋼製支保工)を左側ハンド18L(第1ハンド)に把持した状態で所定の第1建て込み位置に位置合わせすると共に左側鋼製支保工10Lを第1建て込み位置に位置決め保持する先行支保工建て込み作業と、右側上半坑壁面WRに対して一次吹付けコンクリートを吹付ける後行一次吹付け作業を、併行して行う。
図20は、右側上半坑壁面WRに対する一次吹付けコンクリートの吹付け作業(後行一次吹付け作業)と、左側鋼製支保工10Lの第1建て込み位置への位置合わせ及び保持を行う先行支保工建て込み作業が完了した状態、すなわち、先行支保工建て込み工程が完了した状態を示す。図20に示す状態において、右側上半坑壁面WRにも一次吹付けコンク
リート層3が形成され、且つ、左側鋼製支保工10Lは左側ハンド18Lに保持されることで、第1建て込み位置に位置決めされている。
次に、天端連結及び吹付け併行作業工程においては、図21に示すように、右鋼製支保工10R(第2上半鋼製支保工)を、右側ハンド18R(第2ハンド)によって把持した状態で右側ハンド18Rを駆動させることにより、右鋼製支保工10Rの第2天端継手板122を、第1建て込み位置に保持されている左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121に突き合わせ、第1天端継手板121及び第2天端継手板122を相互に連結する支保工連結作業を行う。図21は、右側ハンド18Rを駆動して、左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121に右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122を接近させている状況を示している。また、支保工連結作業においては、第1建て込み位置に保持されている左側鋼製支保工10L及び左側上半坑壁面WLに対する二次吹付けコンクリートの吹付け作業を、第1天端継手板121及び第2天端継手板122を連結する支保工連結作業と同時併行して行う。左側鋼製支保工10L及び左側上半坑壁面WLに対する二次吹付けコンクリートの吹付けは、例えば、左側鋼製支保工10Lの脚部111dから行い、順次上方へ向けて二次吹付けコンクリートを吹付けてもよい。その際、左側鋼製支保工10Lの脚部111dに設置された第2ターゲット9bを取り外した状態で二次吹付けコンクリートの吹付けを行う。
また、左側鋼製支保工10L及び左側上半坑壁面WLに対する二次吹付けコンクリートの吹付け時において、左側ハンド18Lや、第1ターゲット9aにコンクリートが掛らないようにする。これらの箇所については、左側ハンド18Lによる左側鋼製支保工10Lの把持を解除した後、第1ターゲット9aを左側鋼製支保工10Lから取り外した後に二次吹付けコンクリートを吹付ければよい。また、本実施形態においては、上記のように、左側鋼製支保工10Lの脚部111d側から二次吹付けコンクリートの吹付けを行う。そのため、脚部111d側に吹付けた二次吹付けコンクリートが凝結硬化後は、支保工連結作業の途中で左側鋼製支保工10Lを把持する左側ハンド18Lの把持を解除してもよい。なお、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結構造については、図10〜図14で説明した通りである。図22は、天端連結及び吹付け併行作業工程が完了した状態を示す。図22に示す状態において、左側鋼製支保工10L及び右鋼製支保工10Rが連結され、且つ、左上半部において二次吹付けコンクリート層6が形成された状態となる。
そして、天端連結及び吹付け併行作業工程が完了すると、次に、後行支保工建て込み工程が行われる。後行支保工建て込み工程においては、右側ハンド18Rを駆動させて、右側上半坑壁面WR(第2トンネル坑壁面)に沿って右側鋼製支保工10R(第2上半鋼製支保工)を所定の第2建て込み位置に位置合わせすると共に右側鋼製支保工10Rを第2建て込み位置に位置決め保持する。なお、後行支保工建て込み工程を行う際に、右側ハンド18Rが右側鋼製支保工10Rを把持する位置を変更してもよい。
そして、後行支保工建て込み工程が完了すると、図23に示すように、右側ハンド18Rによって右側鋼製支保工10Rを第2建て込み位置に位置決め保持した状態で、右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WRに二次吹付けコンクリートを吹付ける。右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WRへの二次吹付けコンクリートの吹付けは、例えば、右側鋼製支保工10Rの脚部112dから行い、順次上方へ向けて二次吹付けコンクリートを吹付けてもよい。また、右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WRへの二次吹付けコンクリートの吹付けは、右側鋼製支保工10Rに設置された第3ターゲット9c及び第4ターゲット9dを取り外した状態で行われる。また、右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WRへの二次吹付けコンクリートの吹付け時において、右側鋼製支保工10Rの脚部112dに先行して吹付けたコンクリートが凝結硬化した後は、右側鋼製支保工1
0Rを把持している右側ハンド18Rの把持を解除してもよい。以上の工程により、図17に示すように、新設区間に対するアーチ状のトンネル支保工10の建て込み、及び上半部におけるトンネル坑壁面への二次吹付けコンクリート層6の構築が完了する。
本変形例においても、実施形態1と同様、トンネルの施工時間の短縮化を実現でき、しかも従来に比べて少ない作業員でトンネルを構築することができる。また、本変形例においては、先行一次吹付け工程において左側上半坑壁面WL(第1トンネル坑壁面)に対して一次吹付けコンクリートを吹付けておき、その後の先行支保工建て込み工程において、左側鋼製支保工10L(第1上半鋼製支保工)の先行支保工建て込み作業と、右側上半坑壁面WR(第2トンネル坑壁面)に対する後行一次吹付け作業とを併行して行うようにしたが、これには限られず、先行一次吹付け工程において左側上半坑壁面WL(第1トンネル坑壁面)及び右側上半坑壁面WR(第2トンネル坑壁面)に対する一次吹付けコンクリートの吹付けを一斉に行ってもよい。このような場合においても、天端連結及び吹付け併行作業工程において、第1建て込み位置に保持されている左側鋼製支保工10L(第1上半鋼製支保工)及び左側上半坑壁面WL(第1トンネル坑壁面)に対する二次吹付けコンクリートの吹付け作業と、右側鋼製支保工10R及び左側鋼製支保工10Lを連結する支保工連結作業を併行して行うことで、従来に比べて支保構造を構築するための施工時間の短縮化を実現できる。
また、本実施形態における左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結構造30によれば、図10に示したように、雄型係止部材51の先端部51dに、先端に向かって縮径するテーパ面51eが形成されている。このため、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R(雌型連結部40及び雄型連結部50)を連結する支保工連結工程の際に、雌型連結部40の挿入口48と雄型係止部材51の中心位置が相対的に多少ずれていたとしても、第1天端継手板121の開口孔121hの縁部に沿って雄型係止部材51のテーパ面51eを摺動させることで、雌型連結部40における挿入口48と雄型係止部材51の中心同士の位置ずれ量が減少する方向に雄型係止部材51をガイドすることができる。つまり、雄型係止部材51の先端部51dにテーパ面51eを設けることによって、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R(雌型連結部40及び雄型連結部50)を連結する際に雌型連結部40の挿入口48と雄型係止部材51の平面位置が多少ずれていても、雄型係止部材51を雌型連結部40の挿入口48へと円滑に導くことができる。なお、雄型係止部材51の先端部51dに形成するテーパ面51eのディテールは適宜変更できる。例えば、雄型係止部材51の先端部51dを円錐形状として形成しても良い。この場合、当該円錐形状の側面がテーパ面51eとして形成される。
<実施形態2>
次に、実施形態3におけるトンネルの構築方法について説明する。図24は、実施形態3に係るエレクタ装置100の一対のブーム17L,17R及びハンド18L,18Rの詳細を示す図である。各ブーム17L,17Rの先端には伸縮自在な伸縮アーム170を有しており、伸縮アーム170の先端には、振れ止めストッパー171が設けられている。振れ止めストッパー171は、伸縮アーム170に対して所定のストローク量の伸縮が自在となっている。振れ止めストッパー171は、伸縮アーム170の伸縮方向と同軸方向に伸縮自在となっている。振れ止めストッパー171は、例えばゴム製であってもよい。
実施形態2においては、右側ハンド18Rに把持した右側鋼製支保工10Rを所定の位置(例えば、正規の建て込み位置)に保持する際に、ブーム17Rの先端に配置される振れ止めストッパー171を前方の切羽方向に伸長させ、振れ止めストッパー171を切羽8に当接させる。このように、ブーム17Rの振れ止めストッパー171を切羽8に当接させることで突っ張っておくことで、右側鋼製支保工10Rを安定して定位置に保持する
ことができる。同様に、左側ハンド18Lに把持した左側鋼製支保工10Lを所定の位置(例えば、正規の建て込み位置)に保持する際に、ブーム17Lの先端に配置される振れ止めストッパー171を前方の切羽方向に伸長させ、振れ止めストッパー171を切羽8に当接させる。このように、ブーム17Lの振れ止めストッパー171を切羽8に当接させることで突っ張っておくことで、左側鋼製支保工10Lを安定して定位置に保持することができる。
これにより、吹付け装置600の吹付けノズル603から吐出される吹付けコンクリートの脈動に起因して振動が発生しても、各ハンド18L,18Rが振動することを抑制できる。
例えば、実施形態1の図9Eで説明した天端連結及び吹付け併行作業工程において、第1建て込み位置に保持されている右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WRに対する二次吹付けコンクリートの吹付け作業を、左側鋼製支保工10Lにおける第1天端継手板121及び右側鋼製支保工10Rにおける第2天端継手板122の連結作業と併行して行う際に、ブーム17Rの伸縮アーム170に設けられた振れ止めストッパー171を伸長させ、切羽8に当接させることで控えを取る。これにより、二次吹付けコンクリートの吹付けに起因して振動が発生しても、右側鋼製支保工10Rを把持する右側ハンド18Rが揺れることを抑制できる。したがって、右側鋼製支保工10R及び右側上半坑壁面WRに吹付けた直後の二次吹付けコンクリート層6に亀裂が入ることを抑制できる。
同様に、後行支保工建て込み工程の後、図16に示したように、左側ハンド18Lによって左側鋼製支保工10Lを第2建て込み位置に位置決め保持した状態で、左側鋼製支保工10L及び左側上半坑壁面WLに二次吹付けコンクリートを吹付ける際にも、ブーム17Lの伸縮アーム170に設けられた振れ止めストッパー171を伸長させ、切羽8に当接させることで控えを取る。これにより、二次吹付けコンクリートの吹付けに起因して振動が発生しても、左側鋼製支保工10Lを把持する左側ハンド18Lが揺れることを抑制できる。したがって、左側鋼製支保工10L及び左側上半坑壁面WLに吹付けた直後の二次吹付けコンクリート層6に亀裂が入ることを抑制できる。
<実施形態3>
次に、実施形態3に係る左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rについて説明する。ここでは、実施形態1との相違点を中心に説明する。なお、実施形態1と共通する要素については共通の符号を付すことで詳しい説明を省略する。
図25は、左側鋼製支保工10Lの第1本体部111に設けられた第1定着アンカー2A及び第2定着アンカー2Bを説明する図である。図25は、第1本体部111の一部を示している。図26は、右側鋼製支保工10Rの第2本体部112に設けられた第1定着アンカー2A及び第2定着アンカー2Bを説明する図である。図26は、第2本体部112の一部を示している。
図25中の符号1111は、ウェブ111aの第1ウェブ面であり、符号1112は、ウェブ111aの第2ウェブ面である。ウェブ111aの第1ウェブ面1111は、左側鋼製支保工10Lがトンネル坑壁面に沿って建て込まれる際に、切羽8側に対向する方の面である。ウェブ111aの第2ウェブ面1112は、第1ウェブ面1111の反対側の面であり、左側鋼製支保工10Lがトンネル坑壁面に沿って建て込まれる際に、坑口側に面する。図25に示すように、第1定着アンカー2Aは、ウェブ111aの第1ウェブ面1111から垂直に突出するアンカー部材である。また、第2定着アンカー2Bは、ウェブ111aの第2ウェブ面1112から垂直に突出するアンカー部材である。図25に示すように、第2ウェブ面1112に突設される第2定着アンカー2Bは、第1ウェブ面1
111に突設される第1定着アンカー2Aよりも長い寸法を有している。
図26中の符号1121は、ウェブ112aの第1ウェブ面であり、符号1122は、ウェブ112aの第2ウェブ面である。ウェブ112aの第1ウェブ面1121は、右側鋼製支保工10Rがトンネル坑壁面に沿って建て込まれる際に、切羽8側に対向する方の面である。ウェブ112aの第2ウェブ面1122は、第1ウェブ面1121の反対側の面であり、右側鋼製支保工10Rがトンネル坑壁面に沿って建て込まれる際に、坑口側に面する。図26に示すように、第1定着アンカー2Aは、ウェブ112aの第1ウェブ面1121から垂直に突出するアンカー部材である。また、第2定着アンカー2Bは、ウェブ112aの第2ウェブ面1112から垂直に突出するアンカー部材である。図26に示すように、第2ウェブ面1122に突設される第2定着アンカー2Bは、第1ウェブ面1121に突設される第1定着アンカー2Aよりも長い寸法を有している。
図27は、実施形態3における左側鋼製支保工10Lの第1本体部111における地山側フランジ111b及び右側鋼製支保工10Rの第2本体部における地山側フランジ112bに溶接された金網4を説明する図である。金網4は格子形状を有しており、金網4の1メッシュ(1マス)は、例えば150mm角程度であってもよい。金網4は、第1本体部111における地山側フランジ111b、第2本体部における地山側フランジ112bにそれぞれ予め溶接等によって固着されている。また、金網4は、地山側フランジ111b,112bの長手方向における全長に亘って配置されている。なお、図25及び図26においては、便宜上、金網4の図示を省略している。
また、金網4のうち、符号4Aによって示される部分は、地山側フランジ111b,112bにおける切羽側縁部1113,1123から側方に突出している部分(以下、「切羽側突出部」という)であり、符号4Bによって示される部分は、地山側フランジ111b,112bにおける坑口側縁部1114,1124から側方に突出している部分(以下、「坑口側突出部」という)である。なお、地山側フランジ111b,112bにおける切羽側縁部1113,1123は、鋼製支保工10L,10Rがトンネル坑壁面に沿って建て込まれる際に、切羽8側に対向する方の側縁部である。また、地山側フランジ111b,112bにおける坑口側縁部1114,1124は、切羽側縁部1113,1123の反対側に位置する側縁部であり、鋼製支保工10L,10Rがトンネル坑壁面に沿って建て込まれる際に坑口側に面する。
図27に示すように、金網4は、切羽側縁部1113,1123から切羽側突出部4Aが側方に突出する第1突出長さに比べて、坑口側突出部4Bが坑口側縁部1114,1124から側方に突出する第2突出長さの方が長い。また、図27中、符号5は、スペーサーである。スペーサー5は、金網4の坑口側突出部4Bと第2定着アンカー2Bとの間隔を適正な寸法に維持するように設置される部材である。スペーサー5は、例えば基端部が第2定着アンカー2Bに溶接され、先端部が金網4の坑口側突出部4Bに結束線等により結束され、或いは溶接されている。
図28は、新設区間において、エレクタ装置100の右側ハンド18R(左側ハンドL)に把持した右側鋼製支保工10R(左側鋼製支保工10L)を所定の建て込み位置に位置合わせを行い、保持している状態を示す。この状態で、例えば、新設区間における金網4の坑口側突出部4Bの端部と、既設区間における金網4の切羽側突出部4Aとを1メッシュ程度重ね合せ、結束線や番線等で結束したり、溶接する等して互いに一体化させる。
本実施形態における第1定着アンカー2Aは、新設区間に右側鋼製支保工10R(左側鋼製支保工10L)を建て込む際に、切羽8と干渉しない長さに設定されており、例えば、地山側フランジ111b,112bの切羽側縁部1113,1123からの突出長さは
150mm程度であってもよい。また、第2定着アンカー2Bは、新設区間に右側鋼製支保工10R(左側鋼製支保工10L)を建て込む際に、既設側に隣接する右側鋼製支保工10R(左側鋼製支保工10L)の第1定着アンカー2Aと干渉しない長さに設定されている。本実施形態においては、第2定着アンカー2Bの長さを、第1定着アンカー2Aよりも長い寸法に設定することで、二次吹付けコンクリートとの付着面積を十分に確保することができる。また、第1定着アンカー2Aの長さを切羽8と干渉しない長さに設定し、第2定着アンカー2Bの長さを、既設側に隣接する第1定着アンカー2Aと干渉しない長さに設定することで、良好な施工性が確保することができる。
また、本実施形態においては、金網4が、地山側フランジ111b,112bに予め固着されているため、施工性に優れている。また、金網4は、切羽側突出部4Aの第1突出長さは、新設区間に右側鋼製支保工10R(左側鋼製支保工10L)を建て込む際に、切羽8と干渉しない長さに設定されており、例えば、第1定着アンカー2Aが切羽側縁部1113,1123からの突出する長さと同等であってもよい。また、金網4における坑口側突出部4Bの第2突出長さを、切羽側突出部4Aの第1突出長さより長くすることで、新設区間における金網4の坑口側突出部4Bの端部を、既設区間における金網4の切羽側突出部4Aを重ね合せて定着を確保することが容易となる。
また、本実施形態においては、地山側フランジ111b,112bから側方への突出長さが大きい金網4の坑口側突出部4Bと第2定着アンカー2Bとの間にスペーサー5を配置するようにしたので、金網4の坑口側突出部4Bと第2定着アンカー2Bとの間隔を適正な寸法に確保することが容易となる。なお、スペーサー5を配置する際の数、間隔等については適宜変更することができる。また、金網4の切羽側突出部4Aと第1定着アンカー2Aとの間にスペーサー5を配置してもよい。
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4について説明する。図29は、実施形態4に係る鋼製支保工の連結構造を説明する図である。図29には、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rのうち、雌型連結部40が設けられる左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121及びその周辺構造を示している。図29(a)は、左側鋼製支保工10Lにおける第1天端継手板121近傍の縦断面図である。図29(b)は、図29(a)のA矢視正面図である。図29(c)は、図29(a)のB−B矢視断面図である。なお、図29には図示していないが、本実施形態における右側鋼製支保工10Rは、実施形態1と同一構造である。また、第1天端継手板121に凹設される雌型連結部40及び第2天端継手板122に凸設される雄型連結部50(雄型係止部材51)についても、実施形態1と同一構造である。
図29(a)乃至(c)に示すように、実施形態4に係る第1天端継手板121の外周縁にはガイド部材70が設けられている。ガイド部材70は、全体で概略ラッパ形状を呈し、第1天端継手板121の外周縁を覆うようにして設けられている。ガイド部材70は、平板状の鋼板によってそれぞれ形成された上方ガイド壁71、下方ガイド壁72、及び一対の側方ガイド壁73を有する。図示のように、上方ガイド壁71は、第1天端継手板121の上縁121cから第1天端継手板121に対して垂直方向に延設されている。一方、下方ガイド壁72は第1天端継手板121の下縁121dから第1天端継手板121に対して斜め方向に延設され、一対の側方ガイド壁73は第1天端継手板121の側縁121eから第1天端継手板121に対して斜め方向に延設されている。
次に、実施形態4における左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する際の動作について説明する。図30は、実施形態4における左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する際の動作を説明する図である。左側鋼製支保工10L及び
右側鋼製支保工10R(雌型連結部40及び雄型連結部50)を連結する支保工連結工程において、ガイド部材70が第2天端継手板122をガイドして雌型連結部40の挿入口48に雄型連結部50の雄型係止部材51を導く。本実施形態における連結構造30は、左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121、右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122、第1天端継手板121に凹設された雌型連結部40、第2天端継手板122に凸設された雄型連結部50、ガイド部材70を含む。
図30に示す例では、右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122における下縁122dがガイド部材70の下方ガイド壁72に当接し、当該下方ガイド壁72の表面を摺動することによって、雌型連結部40における挿入口48(第1天端継手板121の開口孔121h)と雄型連結部50における雄型係止部材51の中心同士の高さ方向のずれ量が徐々に減少する。また、本実施形態では、第2天端継手板122の上縁122cが、ガイド部材70における上方ガイド壁71に当接した状態で、雌型連結部40における挿入口48と雄型係止部材51の中心同士の高さ方向のずれ量が零となるように設定されている。また、図30に図示していないが、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを相対的に接近させていく過程で、右側鋼製支保工10Rにおける第2天端継手板122の側縁122eがガイド部材70の側方ガイド壁73の表面に沿って摺動することで、雌型連結部40における挿入口48(第1天端継手板121の開口孔121h)と雄型連結部50における雄型係止部材51の中心同士の幅方向のずれ量が徐々に減少する。
以上のように、本実施形態におけるガイド部材70は、ガイド部材70の先端側から基端側(第1天端継手板121との接続端)にかけてガイド部材70によって囲まれた有効面積が徐々に絞られている。そのため、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時に第1天端継手板121及び第2天端継手板122を徐々に接近させることにより、第1天端継手板121の外周縁に設けられたガイド部材70が第2天端継手板122をガイドする。これにより、雌型連結部40における挿入口48と雄型係止部材51の中心同士が位置合わせされる。つまり、雄型係止部材51を雌型連結部40の挿入口48(第1天端継手板121の開口孔121h)に導くことができる。そして、雌型連結部40の挿入口48から雄型係止部材51が挿入されることで、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結が完了する。
また、本実施形態におけるガイド部材70は、上方ガイド壁71が第1天端継手板121の上縁121cから第1天端継手板121に対して垂直方向に延設されている。その結果、ガイド部材70における上方ガイド壁71が、第1天端継手板121の上縁121cから外方に大きくはみ出すことがない。これによれば、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結作業時において、ガイド部材70の上方ガイド壁71が、トンネル坑壁の天端部に干渉(衝突)し難くすることができる。但し、ガイド部材70は、上記形状に特段限られず、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時に、雌型連結部40における挿入口48の位置に雄型係止部材51が接近するようにガイドすることができれば、種々の形状を採用することができる。例えば、上述したガイド部材70はラッパ形状を有し、基端側から先端側にかけて広がった形状を採用していたが、これには限られない。また、ガイド部材70は、第1天端継手板121の外周縁における一部に設けられていても良い。
<実施形態4の変形例>
ここで、図31A及び図31Bは、実施形態4の変形例に係るガイド部材を示す図である。図31Aに示すガイド部材70Aは、第1天端継手板121の外周縁の4辺(4面)から第1天端継手板121に対して垂直に突設された上方ガイド壁71A、下方ガイド壁72A、及び一対の側方ガイド壁73Aを有している。ここで、ガイド部材70Aの上方ガイド壁71Aは第1天端継手板121の上縁121cの中央部に立設し、下方ガイド壁
72Aは第1天端継手板121の下縁121dの中央部に立設し、一対の側方ガイド壁73Aは第1天端継手板121の各側縁121eの中央部に立設している。図31Aに示す例では、上方ガイド壁71A、下方ガイド壁72A、及び側方ガイド壁73Aの幅寸法が、第1天端継手板121の上縁121c、下縁121d、及び側縁121eにおける各辺の長さに比べて小さく設定されており、ガイド部材70Aにおける上方ガイド壁71Aと側方ガイド壁73Aとの間、下方ガイド壁72Aと側方ガイド壁73Aとの間には、それぞれ隙間Gが形成されている。
上記のように、図31Aに示すガイド部材70Aは、第1天端継手板121における外周縁の全周を覆わず、第1天端継手板121における外周縁の一部のみを覆っている。これによれば、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結作業時において、エレクタ装置100のオペレータが第1天端継手板121に凹設された雌型連結部40を目視し易い。
なお、図31Aに示すガイド部材70Aにおいて、第1天端継手板121の外面121aに対するガイド部材70A(上方ガイド壁71A、下方ガイド壁72A、及び一対の側方ガイド壁73Aの高さ)の突出寸法は、第2天端継手板122の外面122aから突出する雄型係止部材51の突出長さより大きな寸法に設定されている。これにより、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時に、ガイド部材70Aによって第2天端継手板122を好適にガイドし、雌型連結部40における挿入口48の位置に雄型係止部材51を円滑に導くことができる。例えば、第1天端継手板121の外面121aに対するガイド部材70Aの突出寸法は、第2天端継手板122の外面122aに対する雄型係止部材51の突出長さに比べて20〜30mm程度大きな寸法に設定しても良い。
次に、図31Bに示すガイド部材70Bについて説明する。ガイド部材70Bは、第1天端継手板121の外周縁において角部を形成する2辺(2面)のみに設けられたガイド壁を有している。具体的には、ガイド部材70Bは、第1天端継手板121の上縁121cから立設する上方ガイド壁71Bと、第1天端継手板121の一方の側縁121eから立設する一の側方ガイド壁73Bを有している。ここで、図31Bに示すように、上方ガイド壁71Aの幅寸法は、当該上方ガイド壁71Aが設けられている第1天端継手板121における上縁121cの長さよりも小さい。また、側方ガイド壁73Bの幅寸法は、当該側方ガイド壁73Bが設けられている第1天端継手板121における側縁121eの長さよりも小さい。
図31Bに示すガイド部材70Bは、第1天端継手板121における外周縁のうち、角部を形成する2辺のみから突設する上方ガイド壁71B及び側方ガイド壁73Bから構成されているため、上方ガイド壁71B及び側方ガイド壁73B間に形成される隙間Gをより一層大きく確保することができる。よって、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時における雌型連結部40の視認性を一段と高めることができる。また、互いに直交する上方ガイド壁71B及び側方ガイド壁73Bによって入隅部が形成されるため、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時に第2天端継手板122における上縁122c及び側縁122eからなる角部を上記入隅部に当接するようにして、第2天端継手板122を適正な位置にガイドすることができる。その結果、雌型連結部40の挿入口48に雄型係止部材51を好適に導くことができ、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを円滑に連結できる。
なお、図31Bに示すガイド部材70Bにおける側方ガイド壁73Bは、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時において、切羽8に面する方(すなわち、エレクタ装置100に面していない方)の側縁121eに設置されている。本実施形態におけるガイド部材70Bによれば、第1天端継手板121における下縁121d、及び、切
羽8に面していない方(すなわち、エレクタ装置100に面する方)の側縁121eがガイド壁によって覆われておらず、開放されているため、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rの連結時にエレクタ装置100のオペレータが第1天端継手板121の雌型連結部40をより一層目視し易くなる。
<実施形態5>
次に、本発明の実施形態5について説明する。図32及び図33は、実施形態5に係る鋼製支保工の連結構造を説明する図である。図32に、実施形態5における左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121の周辺構造を示す。図33に、実施形態5における右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122の周辺構造を示す。
図32(a)は、実施形態5に係る左側鋼製支保工10Lにおける第1天端継手板121近傍の縦断面図である。図32(b)は、図32(a)のC矢視正面図である。図32(c)は、実施形態5に係る第1天端継手板121の概略斜視図である。図33(a)は、実施形態5に係る右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122近傍の縦断面図である。図33(b)は、図33(a)のD矢視正面図である。図33(c)は、実施形態5に係る第2天端継手板122の概略斜視図である。なお、図32(c)において、左側鋼製支保工10Lにおける第1本体部111の図示を省略している。また、図33(c)において、右側鋼製支保工10Rにおける第2本体部112の図示を省略している。
実施形態5における左側鋼製支保工10Lの第1天端継手板121は、凹面形状S1を有している。また、実施形態5における右側鋼製支保工10Rの第2天端継手板122は、上記凹面形状S1と相補的な凸面形状S2を有しており、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rが連結される際に第1天端継手板121及び第2天端継手板122同士が面接触するように構成されている。
より具体的には、第1天端継手板121は、外面121a側が凹面(凹面形状S1)となるように略V字形状(谷型)に折られた折板構造を有している。第1天端継手板121の外面121aは、平坦な凹底面部1210と、当該凹底面部1210の両側に形成された上斜面部1211及び下斜面部1212を含む。平坦な凹底面部1210を基準として、当該凹底面部1210に対する上斜面部1211及び下斜面部1212の傾斜角度は等しい。一方、第2天端継手板122は、外面122a側が凸面(凸面形状S2)となるように略V字形状(山型)に折られた折板構造を有している。第2天端継手板122の外面122aは、平坦な凸頂面部1220と、当該凸頂面部1220の両側に形成された上斜面部1221及び下斜面部1222を含む。
ここで、第1天端継手板121に設けられる一対の雌型連結部40は、凹底面部1210に配列されている。ここで、凹底面部1210は、凹面形状S1を有する第1天端継手板121において、相対的に最も凹んだ領域である。また、第2天端継手板122に設けられる一対の雄型連結部50(雄型係止部材51)は凸頂面部1220に配列されている。ここで、凸頂面部1220は、凸面形状S2を有する第2天端継手板122において、相対的に最も隆起した領域である。また、雌型連結部40及び雄型連結部50については、上述までの実施形態と共通である。本実施形態においては、雌型連結部40に対して雄型係止部材51が挿入及び係止された際に、第1天端継手板121及び第2天端継手板122の各外縁同士の位置がすべて合致し、且つ、第1天端継手板121の外面121a及び第2天端継手板122の外面122aが面接触するようになっている。より詳しくは、第1天端継手板121の凹底面部1210、上斜面部1211及び下斜面部1212がそれぞれ、第2天端継手板122の凸頂面部1220、上斜面部1221及び下斜面部1222と隙間を生じさせることなく面接触するように調整されている。
図34は、実施形態5における左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する際の動作を説明する図である。図示のように、本実施形態における鋼製支保工の連結構造においては、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結する際に、第1天端継手板121の凹面に沿って雄型連結部50の雄型係止部材51が摺動する。図34に示す例では、右側鋼製支保工10Rにおける上斜面部1211の表面に沿って雄型連結部50の雄型係止部材51が摺動することでガイドされ、雌型連結部40における挿入口48と雄型係止部材51の中心同士が一致する方向に雄型係止部材51が導かれる。これにより、雌型連結部40における挿入口48から収納室42内に円滑に雄型係止部材51を挿入することができ、雌型連結部40に対して雄型係止部材51を係合することができる。
なお、本実施形態においては、凹面形状S1を有する第1天端継手板121のうちの最も凹んだ領域である凹底面部1210に雌型連結部40を配置し、凸面形状S2を有する第2天端継手板122のうちの最も隆起した領域である凸面形状S2を有する第2天端継手板122において、相対的に最も隆起した領域である凸頂面部1220に雄型連結部50(雄型係止部材51)を配置するようにした。これによれば、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R(雌型連結部40及び雄型連結部50)を連結する支保工連結工程において、第1天端継手板121の凹面に沿って雄型係止部材51をガイドする際に、雌型連結部40の挿入口48に対してより一層円滑に雄型係止部材51を導くことができる。なお、図34に示す例では、第1天端継手板121の上斜面部1211を雄型係止部材51のガイド面として機能させる例を示したが、第1天端継手板121の下斜面部1212に沿って雄型係止部材51を摺動させることで、下斜面部1212を雄型係止部材51のガイド面として機能させても良い。なお、本実施形態における雌型連結部40及び雄型連結部50の構造は、上述までの実施形態と同様である。
また、図34に示すように、雌型連結部40に雄型係止部材51が締結された状態では、第1天端継手板121の外面121a及び第2天端継手板122の外面122aが面接触されている。すなわち、第1天端継手板121の凹底面部1210、上斜面部1211及び下斜面部1212がそれぞれ、第2天端継手板122の凸頂面部1220、上斜面部1221及び下斜面部1222と面接触していることから、第1天端継手板121及び第2天端継手板122間の応力伝達を確実に行うことができる。なお、図32乃至図34に示す例では、第1天端継手板121の凹面形状S1及び第2天端継手板122の凸面形状S2を相補関係にある略V字形状とする場合を説明したが、凹面形状S1及び凸面形状S2は種々の組み合わせが採用できる。
<実施形態6>
次に、実施形態6に係る左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rについて説明する。図35Aは、実施形態6に係る第1天端継手板121の正面図である。図35Bは、実施形態6に係る第1天端継手板121の背面図である。図35Cは、実施形態6に係る左側鋼製支保工10Lの第1本体部111における天端部近傍の側面図である。ここで、符号121aは、第1天端継手板121の外面、符号121bは第1天端継手板121の内面である。符号121cは第1天端継手板121の上縁、符号121dは第1天端継手板121の下縁、符号121eは第1天端継手板121の第1側縁、符号121fは第1天端継手板121の第2側縁である。ここで、第1天端継手板121の下縁121dは、左側鋼製支保工10Lおよび右側鋼製支保工10Rが連結される際にトンネルTの内空側に対向し、上縁121cはその反対側、すなわち地山7側に対向する。また、第1天端継手板121の第2側縁121fは、左側鋼製支保工10Lおよび右側鋼製支保工10Rが連結される際にトンネルTの切羽8側に対向し、第1側縁121eはその反対側、すなわち作業車200(エレクタ装置100)側に対向する。
図35Bにおいて、第1天端継手板121に接続される第1本体部111の端部形状(H形状)を破線で示す。また、図35Aおよび図35Bに、第1天端継手板121の上下方向(高さ方向)および横幅方向を図示する。第1天端継手板121の上下方向は、第1側縁121eおよび第2側縁121fの延伸方向と平行であり、且つ、第1本体部111が第1天端継手板121と連結する位置におけるウェブ111aの延伸方向と平行である。また、第1天端継手板121の横幅方向は上縁121cおよび下縁121dの延伸方向と平行であり、且つ、第1本体部111が第1天端継手板121と連結する位置における地山側フランジ111bおよび内空側フランジ111cの延伸方向と平行である。図35Cに示すように、第1本体部111におけるウェブ111aのうち、当該ウェブ111aが第1天端継手板121に接続される前端部には、切欠き部1110が設けられている。切欠き部1110は、ウェブ111aの上下方向中央に設けられている。切欠き部1110は、図37に示す雌型連結部40のケーシング41との干渉を抑制するために設けられた、ウェブ111aを肉厚方向に貫通する切欠き開口である。
図36Aは、実施形態6に係る第2天端継手板122の正面図である。図36Bは、実施形態6に係る第2天端継手板122の背面図である。図36Cは、実施形態6に係る右側鋼製支保工10Rの第2本体部112における天端部近傍の側面図である。ここで、符号122aは、第2天端継手板122の外面、符号122bは第2天端継手板122の内面である。また、符号122cは第2天端継手板122の上縁、符号122dは第2天端継手板122の下縁、符号122eは第2天端継手板122の第1側縁、符号122fは第2天端継手板122の第2側縁である。ここで、第2天端継手板122の下縁122dは、左側鋼製支保工10Lおよび右側鋼製支保工10Rが連結される際にトンネルTの内空側に対向し、上縁122cはその反対側、すなわち地山7側に対向する。また、第2天端継手板122の第2側縁122fは、左側鋼製支保工10Lおよび右側鋼製支保工10Rが連結される際にトンネルTの切羽8側に対向し、第1側縁122eはその反対側、すなわち作業車200(エレクタ装置100)側に対向する。
図36Bにおいて、第2天端継手板122に接続される第2本体部112の端部形状を破線で示す。また、図36Aおよび図36Bに、第2天端継手板122の上下方向および横幅方向を図示する。
図35Aおよび図35Bに示すように、第1天端継手板121は略正方形の平面形状を有している。また、図36Aおよび図36Bに示すように、第2天端継手板122も、第1天端継手板121と同様、略正方形の平面形状を有している。そして、第1天端継手板121および第2天端継手板122の上下寸法は互いに等しく、且つ、第1天端継手板121および第2天端継手板122における横幅寸法も互いに等しい。つまり、第1天端継手板121および第2天端継手板122は互いに合同な正方形の平面形状を有しており、それぞれ上縁121c,122c同士、下縁121d,122d同士、第1側縁121e,122e同士、第2側縁121f,122f同士の寸法が等しい。
第1天端継手板121の平面中央位置には、単一の雌型連結部40が凹設されている。第1天端継手板121の平面中央位置とは、第1天端継手板121の上下方向の中央位置であって且つ横幅方向の中央位置を意味する。また、第2天端継手板122の平面中央位置には、単一の雄型連結部50が凸設されている。第2天端継手板122の平面中央位置とは、第2天端継手板122の上下方向の中央位置であって且つ横幅方向の中央位置を意味する。本実施形態において、左側鋼製支保工10Lおよび右側鋼製支保工10Rを連結する連結構造30は、第1天端継手板121に中央配置された単一の雌型連結部40と、第2天端継手板122に中央配置された単一の雄型連結部50を含んで構成されている。
図37は、実施形態7に係る左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10Rを連結す
る連結構造30を示す概略図である。図37は、左側鋼製支保工10Lと右側鋼製支保工10Rが連結構造30を介して連結される前の状態、即ち、第1天端継手板121の外面121aと第2天端継手板122の外面122aが対向した状態で互いに離間した状態を示している。また、図37においては、第1天端継手板121に接続される第1本体部111と、第2天端継手板122に接続される第2本体部112の図示を便宜上省略している。
まず、第2天端継手板122に凸設された雄型連結部50について説明する。第2天端継手板122の中央位置、すなわち雄型連結部50が設けられる位置には、貫通孔である開口孔122hが穿設されている。また、雄型連結部50は、棒状の雄型係止部材51を有している。雄型係止部材51は、第2天端継手板122の開口孔122hよりも若干小径の軸部材であり、その基端部に雄ネジ51aが刻設されている。また、雄型係止部材51の外周部には、所定の範囲に亘って雄ネジ51cが形成されている。また、雄型係止部材51の先端部51dには、先端に向かって縮径するテーパ面51eが形成されている。雄型係止部材51の雄ネジ51cは、雄型係止部材51の外周に複数並設された周方向の雄側係止溝である。また、雄型係止部材51の先端部51dには、先端に向かって縮径するテーパ面51eが形成されている。
ここで、第2天端継手板122における開口孔122hの穿設位置には、ナット52が第2天端継手板122の内面122bに溶接wpなどによって固着されている。雄型係止部材51は、その基端側を、第2天端継手板122の外面122a側から開口孔122hに挿通し、ナット52に雄ネジ51aを螺着することで、図37に示すように外面122aから突出した状態で第2天端継手板122に装着することができる。これにより、雄型連結部50は、雄型係止部材51の中心軸が第2天端継手板122の中央位置と一致するように、第2天端継手板122に凸設される。なお、図36Cに示すように、右側鋼製支保工10Rの第2本体部112におけるウェブ112aのうち、第2天端継手板122との接続端には切欠き部1120が設けられており、雄型連結部50における雄型係止部材51を螺着するためのナット52とウェブ112aが干渉しないようになっている。切欠き部1120は、ナット52、およびナット52に螺着された雄型係止部材51の基端側がウェブ112aと干渉することを抑制するために設けられた、ウェブ112aを肉厚方向に貫通する切欠き開口である。なお、図36A〜図36Cに示す符号CL2は、第2天端継手板122に凸設される雄型連結部50における雄型係止部材51の中心軸を示す。中心軸CL2は、第2天端継手板122の中心位置を通り、且つ第2天端継手板122の法線方向に平行に伸びている。
次に、第1天端継手板121に凹設された雌型連結部40について説明する。第1天端継手板121の中央位置、すなわち雌型連結部40が設けられる位置には、貫通孔である開口孔121hが穿設されている。また、第1天端継手板121における開口孔121hの穿設位置には、金属製の円筒状のケーシング41第1天端継手板121の内面121bに溶接wpなどによって固着されている。なお、ケーシング41は、ウェブ111aにおける第1天端継手板121との接続端に設けられた切欠き部1110(図35Cを参照)に配置されているため、ウェブ111aと干渉することが抑制されている。また、図37に示すように、第1天端継手板121に形成された開口孔121hの縁部には、第1天端継手板121の厚さ方向における内面121b側から外面121a側に向かって徐々に拡径するテーパ面1215が形成されている。ケーシング41の内部構造については、実施形態1と同様であり説明を省略する。なお、図35A〜図35Cに示す符号CL1は、第1天端継手板121に凹設される雌型連結部40におけるケーシング41(収納室42)の中心軸を示す。中心軸CL1は、第1天端継手板121の中心位置を通り、且つ第1天端継手板121の法線方向に平行に伸びている。また、雌型連結部40および雄型連結部50の連結時の動作については、実施形態1で説明した通りである。
更に、本実施形態における鋼製支保工の連結構造30においては、第1天端継手板121に単一配置された雌型連結部40と、第2天端継手板122に単一配置された雄型連結部50を連結する一本掛け連結構造を採用したので、ケーシング41(収納室42)の中心軸CL1と雄型係止部材51の中心軸CL2の位置合わせを行うだけで、第1天端継手板121および第2天端継手板122が平面的に捻じれた状態(第1天端継手板121及び第2天端継手板122の各外縁同士が重ならず、ずれた状態)になっていても、ケーシング41(収納室42)に雄型係止部材51を挿入することで、左側鋼製支保工10Lおよび右側鋼製支保工10Rをより一層容易に連結することができる。
また、本実施形態における鋼製支保工の連結構造30によれば、上記のように、左側鋼製支保工10Lおよび右側鋼製支保工10Rの連結後においても、ケーシング41に対する雄型係止部材51の中心軸CL2周りの回転動作は許容されるため、上記連結後に、第1天端継手板121および第2天端継手板122が全面的に面接触するように位置調整を行うことができる。これにより、第1天端継手板121の雌型連結部40と第2天端継手板122の雄型係止部材51が連結された状態において、第1天端継手板121の上縁121c、下縁121d、第1側縁121e、第2側縁121fがそれぞれ第2天端継手板122の上縁122c、下縁122d、第1側縁122e、第2側縁122fに重なるように位置合わせを容易に行うことができる。
更に、本実施形態における鋼製支保工の連結構造30によれば、第1天端継手板121における中央位置に単一の雌型連結部40を凹設し、第2天端継手板122における中央位置に単一の雄型連結部50を凸設するようにした。これによれば、第1天端継手板121および第2天端継手板122の中心位置同士を連結することができるため、左側鋼製支保工10Lおよび右側鋼製支保工10Rを一体に連結することで得られたトンネル支保工10は、様々な荷重方向に対して安定的に荷重を支えることができるようになる。但し、本実施形態における鋼製支保工の連結構造30において、雌型連結部40は第1天端継手板121の中央位置から偏心した位置に偏心配置されていても良い。同様に、雄型連結部50が第2天端継手板122の中央位置から偏心した位置に偏心配置されていても良い。
また、本実施形態においては、第1天端継手板121における開口孔121hの縁部にもテーパ面1215が形成されているため、左側鋼製支保工10L及び右側鋼製支保工10R(雌型連結部40及び雄型連結部50)を連結する際に、雌型連結部40の挿入口48と雄型係止部材51の中心位置が相対的に多少ずれていたとしても、第1天端継手板121の開口孔121hにおけるテーパ面1215に沿って雄型係止部材51が摺動することで、雌型連結部40における挿入口48と雄型係止部材51の中心同士の位置ずれ量が小さくなる方向に雄型係止部材51をガイドすることができる。これによれば、雄型係止部材51を雌型連結部40の挿入口48へと円滑に導くことができる。
なお、本実施形態における鋼製支保工の連結方法においては、左側鋼製支保工10Lおよび右側鋼製支保工10Rを連結する直前まで、図38に示すような挿入口塞ぎ部材60を用いて、雌型連結部40のケーシング41の挿入口48を塞ぎ、養生しておくことが好ましい。挿入口塞ぎ部材60は、例えば六角ボルトを加工して形成された養生用ボルトであり、ケーシング41におけるテーパ穴43よりも挿入口48側の内周面に、挿入口塞ぎ部材60を螺着可能とするためのネジ加工を施しておくと良い。これにより、ケーシング41の収納室42内に異物(埃、塵、溶接カス等)が入り込むことを抑制することができる。また、第1天端継手板121の内面121bに雌型連結部40のケーシング41を溶接する際、挿入口塞ぎ部材60に係る養生用ボルトを用いてケーシング41を第1天端継手板121の開口孔121hに位置決めしておくことで溶接の作業性に優れ、且つ精度良く溶接作業を行うことができる。また、特に限定されないが、第1天端継手板121に対
する雌型連結部40(ケーシング41)の溶接作業は、左側鋼製支保工10Lおよび右側鋼製支保工10Rを連結する直前に、切羽8から十分に離れた安全な場所で行うようにしても良い。
また、本実施形態における雄型連結部50の雄型係止部材51は、図37に示したように、第2天端継手板122の内面122bに溶接したナット52に基端側を螺着することで第2天端継手板122に装着することが可能である。第2天端継手板122(ナット52)への雄型係止部材51の取り付けは、左側鋼製支保工10Lおよび右側鋼製支保工10Rを連結する直前に、切羽8から十分に離れた安全な場所で行うことが好ましい。左側鋼製支保工10Lおよび右側鋼製支保工10Rを連結する直前に、雄型係止部材51を第2天端継手板122に取り付けることで、第2天端継手板122の外面122aから突出する雄型係止部材51が折れ曲がったり、損傷する等のリスクを低減することができる。なお、第2天端継手板122に溶接されたナット52に対しては、図39に示す養生用ボルト61を外面122a側から螺着しておいても良い。養生用ボルト61は、挿入口塞ぎ部材60と同様、例えば六角ボルトを加工して作製することができる。なお、図39に示す養生用ボルト61も、第2天端継手板122の内面122bにナット52を溶接する際のナット52の位置決めに用いることができる。図39に示すように、第2天端継手板122を間に挟んで、養生用ボルト61とナット52を螺着させることで、第2天端継手板122の開口孔122hの位置にナット52を仮固定することができる。そのため、第2天端継手板122にナット52を溶接する際の作業性に優れ、且つ精度良く溶接作業を行うことができる。
<変形例>
次に、実施形態6の変形例について説明する。図40Aは、実施形態6の変形例に係る左側鋼製支保工10Lの第1本体部111における天端部近傍の側面図である。図40Bは、実施形態6の変形例に係る左側鋼製支保工10Lの第1本体部111における天端部近傍の上面図である。図41Aは、実施形態6の変形例に係る右側鋼製支保工10Rの第2本体部112における天端部近傍の側面図である。図41Bは、実施形態6の変形例に係る右側鋼製支保工10Rの第2本体部112における天端部近傍の上面図である。実施形態6の変形例において、実施形態6と同一の構成要素については同じ符号を付すことで詳しい説明を割愛し、実施形態1との相違点を中心に説明する。
実施形態6の変形例に係る左側鋼製支保工10Lの第1本体部111には、一組の補強板710A,710Bが設けられている。補強板710A,710Bは矩形板状を有する鋼材であり、第1本体部111の上下のフランジ、すなわち地山側フランジ111bおよび内空側フランジ111cと、第1天端継手板121の内面121bに対して溶接等によって接合されている。図40Aおよび図40Bに示すように、補強板710A,710Bは、ウェブ111aを挟んでそれぞれ両側に配置されており、ウェブ111aと離間した状態でウェブ111aに沿って対向配置されている。
図40Aおよび図40Bに示す符号R1は、補強板710A,710Bが設けられる補強区間を示したものである。図40Aおよび図40Bに示す例では、補強板710A,710Bを配置する補強区間R1を、切欠き部1110が形成されている切欠き形成区間に対応させているが、この切欠き形成区間よりも長い区間に亘って補強板710A,710Bを設けるようにしても良い。また、本変形例において、補強板710A,710Bの部材厚さは、ウェブ111aの部材厚と同等以上とすることが好ましい。これらによって、第1本体部111の天端側端部(前端部)の補強効果をより一層高めることができる。
また、図40Bに示すように、第1本体部111における補強板710A,710Bは、ケーシング41と干渉しない偏心位置に設けられている。具体的には、補強板710A
,710Bのそれぞれにおける中心軸CL1との離間寸法が、ケーシング41の半径よりも大きな寸法に設定されており、これによって補強板710A,710Bがケーシング41と干渉しないようになっている。なお、図40Bに示す例では、ウェブ111aの両側に一対の補強板710A,710Bを配置しているが、片側だけに補強板を設けるようにしても良い。
同様に、図41Aおよび図41Bに示すように、右側鋼製支保工10Rの第2本体部112の前端部にも、一組の補強板720A,720Bが設けられている。補強板720A,720Bは、矩形板状を有する鋼材であり、第2本体部112の上下のフランジ、すなわち地山側フランジ112bおよび内空側フランジ112cと、第2天端継手板122の内面122bに対して溶接等によって接合されている。図41Aおよび図41Bに示すように、補強板720A,720Bは、ウェブ112aを挟んでそれぞれ両側に配置されており、ウェブ112aと離間した状態でウェブ112aに沿って対向配置されている。
図41Aおよび図41Bに示す符号R2は、補強板720A,720Bが設けられる補強区間を示したものである。図41Aおよび図41Bに示す例では、補強板720A,720Bを配置する補強区間R2を、切欠き部1120が形成されている切欠き形成区間に対応させているが、この切欠き形成区間よりも長い区間に亘って補強板720A,720Bを設けるようにしても良い。また、本変形例において、補強板720A,720Bの部材厚さは、ウェブ112aの部材厚と同等以上とすることが好ましい。これらによって、第2本体部112の天端側端部(前端部)の補強効果をより一層高めることができる。
以上のように、本実施形態においては、第1本体部111におけるウェブ111aの切欠き部1110に対応する区間に一対の補強板710A,710Bを設置し、第2本体部112におけるウェブ112aの切欠き部1120に対応する区間に一対の補強板720A,720Bを設置するようにしたため、第1本体部111および第2本体部112の天端側端部(前端部)を好適に補強することができる。
以上、本発明の実施形態及び変形例を説明したが、本発明に係るトンネルの構築方法はこれらに限られず、可能な限りこれらを組み合わせることができる。