JP2020026470A - 難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物 - Google Patents

難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】難燃剤としてハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤を用いたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の耐トラッキング性を向上するとともに、当該樹脂組成物からなる成形品に接触する金属部材の腐蝕を抑制することを課題とする。【解決手段】難燃剤としてハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤を用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物において、当該難燃剤の製造工程におけるクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族化合物の量を抑えることで、上記の課題を解決する。【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びその製造方法に関する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)は、機械的特性、電気的特性、耐熱性など各種特性に優れるため、エンジニアリングプラスチックとして自動車部品や電気・電子機器部品など種々の用途に広く利用されている。これらのうち、電気・電子機器部品用途では、トラッキング等による発火を防ぐため、使用される材料には難燃性が要求されている。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、それ自体では難燃性が不足するため、難燃剤を添加した難燃性樹脂組成物として使用されている。
このようなポリブチレンテレフタレート樹脂に添加される難燃剤の一種としてハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤があり、その例としては特許文献1に紹介されているようなポリペンタブロモベンジルアクリレート(PBBPA)がある。この難燃剤を製造する方法として特許文献1の段落[0004]には、モノマーであるペンタブロモベンジルアクリレートを、エチレングリコールモノメチルエーテルや、メチルエチルケトン、エチレングリコールジメチルエーテル中で重合する方法やクロロベンゼン中で重合する方法が例示されている。
これらのうち、ハロゲン化芳香族化合物であるクロロベンゼンを溶媒として重合した場合、最終的にPBBPA中に不純物として微量のクロロベンゼンが存在することになる。そして、これを添加して難燃化したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物もクロロベンゼンを含有することとなる。
このクロロベンゼンは一般的には安定した化合物であるが、高温環境下において、特に金属酸化物やアルカリ金属系化合物などの金属と接触した場合、脱塩素化が起こり、塩化水素等の化合物が発生することがある。そのため、これを含む組成物をインサート成形や端子圧入など金属部材と接触する成形品に用いると、当該金属部材の腐蝕が生じるといった問題が起こる場合がある。ここで、前述した電気・電子部品用途においては、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品が電気絶縁部材として、導電部である金属部材と組み合わせて用いられるため、その金属部材を腐蝕させないことが要求される。また、成形品が金属部材と組み合わせて用いられる場合のみに限らず、成形品自体を成形する過程において、成形機のスクリュやシリンダ、あるいは金型といった金属部材の腐蝕の観点からも、これを抑制することが求められる。
ところでポリブチレンテレフタレート樹脂は、それのみであれば耐トラッキング性に優れる樹脂である。しかし、ポリブチレンテレフタレート樹脂には、機械的強度等の各種特性を調整するための強化用充填剤や各種安定化剤、あるいは上述の難燃剤等の種々の添加剤が使用されるのが通常であり、その種類によっては耐トラッキング性が損なわれる場合がある。特にPBBPAなどの臭素系難燃剤は、炭化が起こりやすいことから耐トラッキング性を低下させうる。そこで、難燃性と耐トラッキング性を両立するため、例えば特許文献2では、臭素系難燃剤ではなくリン系難燃剤を添加した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が開示されているが、リン系難燃剤はコストや成形品からの浸み出しといった点で不利となる場合がある。そこで、ポリブチレンテレフタレート樹脂の耐トラッキング性を確保しつつ難燃性を向上することが求められている。
特表2015−532350号公報 国際公開2014/021101号パンフレット
本発明は、難燃剤としてハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤を用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物において、耐トラッキング性の低下を抑制するとともに、当該成形品と接触する金属部材の腐蝕を抑制することを課題とする。
本発明者は、上記を課題とする研究の過程で、難燃剤としてハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤を用い、特定の耐トラッキング性向上剤を含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物において、当該ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に含有される、クロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族化合物の量を抑える、特に当該難燃剤の製造工程に由来するハロゲン化芳香族化合物の量を抑えることで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(8)に関する。
(1)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、(B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤3〜50質量部と、(C)オレフィン系エラストマ、アクリル系コアシェル型エラストマ、直鎖状ポリオレフィン樹脂、及びこれらの組み合わせから選択される1種以上の耐トラッキング性向上用樹脂5〜100質量部と、(D)タルク、マイカ、無機金属化合物、及びこれらの組み合わせから選ばれる1種以上の耐トラッキング性向上用充填剤0〜100質量部と、(E)トリアジン化合物、ベンゾグアニン化合物、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートのテレフタル酸エステル化合物、アラントイン化合物、グリコールウリル化合物、及びこれらの組み合わせから選択される1種以上の窒素系化合物0〜80質量部とを含有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、ヘッドスペースガスクロマトグラフ法(150℃、1時間加熱)により測定される、前記難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量が0.5ppm未満であることを特徴とする、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(2)(B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤が、一般式(I)で表されるブロム化アクリル重合体を含有する、(1)に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
Figure 2020026470

(式中、Xは、水素原子または臭素原子であり、少なくとも1つ以上のXは臭素原子であり、mは10〜2000の数である。)
(3)(B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤が、ポリペンタブロモベンジルアクリレートを含有する、(1)または(2)に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(4)前記難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物が、ハロゲン化ベンゼンを含有する、(1)から(3)のいずれかに記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(5)前記難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物が、クロロベンゼンを含有する、(1)から(4)のいずれかに記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法であって、(B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の製造工程を有し、該工程で用いる溶媒中のハロゲン化芳香族化合物の含有量が1000ppm以下であることを特徴とする、製造方法。
(7)(B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の製造工程において、溶媒としてハロゲン化芳香族化合物を用いない、(6)に記載の製造方法。
(8)(B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の製造工程において、溶媒としてエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、エチレングリコールジメチルエーテルおよびジオキサンからなる群から選択される一以上の溶媒を用いる、(6)又は(7)に記載の製造方法。
本発明によれば、難燃剤としてハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤を用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物において、当該難燃剤の製造工程におけるクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族化合物の量を抑えることで、当該ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物と接する金属部材の腐蝕を抑制することができる。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
[難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物]
以下、本実施形態の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の各成分の詳細を例を挙げて説明する。
((A)ポリブチレンテレフタレート樹脂)
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂である。本実施形態において、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上含有する共重合体であってもよい。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されないが、0.60dL/g以上1.2dL/g以下であるのが好ましく、0.65dL/g以上0.9dL/g以下であるのがより好ましい。このような範囲の固有粘度のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。また、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂を調製することができる。ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、例えば、o−クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の調製において、コモノマー成分としてテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を用いる場合、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8−14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4−16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5−10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)を用いることができる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8−12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6−12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の調製において、コモノマー成分として1,4−ブタンジオール以外のグリコール成分を用いる場合、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール等のC2−10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2−4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を用いることができる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2−6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−カルボキシ−4’−ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε−カプロラクトン等)等のC3−12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、樹脂組成物の全質量の10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましく、30〜70質量%であることがさらに好ましい。
((B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤)
本発明に用いられる(B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤としては、下記一般式(I)で示されるブロム化アクリル重合体が挙げられる。
Figure 2020026470


式中のXは、水素原子または臭素原子であり、少なくとも1つ以上が臭素である。Xの数は、一構成単位中1〜5であるが、難燃化の効果から3〜5であることが好ましい。平均重合度mは10〜2000であり、好ましくは15〜1000の範囲である。平均重合度が10より低いものは、熱安定性が悪化し、2000を超えると添加したポリブチレンテレフタレート樹脂の成形加工性を悪化させる。また、上記ブロム化アクリル重合体は1種又は2種以上混合使用してもよい。
本発明に用いられる(B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤は、当該難燃剤自体である上記のブロム化アクリル重合体以外に、不純物として、重合時の溶媒やブロム化アクリル重合体の分解物に由来するハロゲン化芳香族化合物を含有しうるが、そのような不純物である、難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量は、例えば、(B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤を粉砕した試料を、ヘッドスペース中で加熱処理した際の発生ガスを、ガスクロマトグラフにより測定し、ハロゲン化芳香族化合物に由来するガス発生量から求めることができる。
一般式(I)で表されるブロム化アクリル重合体は臭素を含有するベンジルアクリレートを単独で重合することによって得られるが、類似構造のベンジルメタクリレート等を共重合させてもよい。臭素含有ベンジルアクリレートとしては、ペンタブロモベンジルアクリレート、テトラブロモベンジルアクリレート、トリブロモベンジルアクリレート、又はその混合物が挙げられる。中でも、ペンタブロモベンジルアクリレートが好ましい。また、共重合可能な成分であるベンジルメタクリレートとしては、上記したアクリレートに対応するメタクリレートが挙げられる。さらにはビニル系モノマーとの共重合も可能であり、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレートのようなアクリル酸エステル類、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル類、スチレン、アクリロニトリル、フマル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸又はその無水物、酢酸ビニル、塩化ビニルなどが挙げられる。また、架橋性のビニル系モノマー、キシリレンジアクリレート、キシリレンジメタクリレート、テトラブロムキシリレンジアクリレート、テトラブロムキシリレンジメタクリレート、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼンも使用できる。これらはベンジルアクリレートやベンジルメタクリレートに対し等モル量以下、好ましくは0.5倍モル量以下が使用される。
(B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の製造方法として、上記のブロム化アクリル重合体の製造法の一例を示すと、ブロム化アクリルのモノマーを溶液重合あるいは、塊状重合にて所定の重合度に反応させる方法が挙げられる。溶液重合の場合、溶媒中のハロゲン化芳香族化合物の含有量が1000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることがさらに好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。溶媒としてハロゲン化ベンゼンや、クロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族化合物を用いないことがより好ましい。また、溶液重合の際の溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテルや、メチルエチルケトン、エチレングリコールジメチルエーテルおよびジオキサンなどの非プロトン性溶媒が好ましい。
上記のブロム化アクリル重合体等の(B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤は、残留ポリアクリル酸ナトリウム等の反応副生成物を除去するために、水及び/又はアルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液にて洗浄されることが好ましい。なお、本明細書において、「アルカリ(土類)金属イオンを含有する」とは、アルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンを含有することを意味している。アルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液はアルカリ(土類)金属塩を水に投入することで容易に得られるが、塩化物イオン、リン酸イオン等を含まないアルカリ(土類)金属である水酸化物(例えば水酸化カルシウム)が最適である。アルカリ(土類)金属塩として、例えば水酸化カルシウムを用いる場合、水酸化カルシウムは一般に20℃において100gの水中に0.126g程度可溶であり、水溶液濃度は溶解度までであれば特に規定はない。また、水及び/又はアルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液による洗浄の手法も特に限定されず、ブロム化アクリル重合体を適当な時間、水及び/又はアルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液に浸漬させる等の手法で良い。上記、水及び/又はアルカリ(土類)金属イオンを含有する水溶液による洗浄処理を終えたブロム化アクリル重合体は、一般的に温水抽出分中の乾固分が100ppm以下のものとなり、このようなブロム化アクリル重合体を用いる場合、その成形品表面に異物を発生させることが殆どなくなる。
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、前述の不純物である、難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量が、0.5ppm未満であり、好ましくは0.3ppm以下、より好ましくは0.1ppm以下である。難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の、難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量が上記範囲であることにより、当該ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いたインサート成形品において、金属端子の腐蝕を抑制することができる。このような難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量は、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を粉砕した試料を、ヘッドスペース中で加熱処理した際の発生ガスを、ガスクロマトグラフにより測定し、ハロゲン化芳香族化合物に由来するガス発生量から求めることができる。
上記樹脂の難燃化において、アンチモン系の難燃助剤をあわせて使用することが好ましい。難燃助剤の代表的なものとしては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。さらに、燃焼した樹脂が滴下することによる延焼を防ぐ目的で、ポリテトラフルオロエチレン等の滴下防止剤をあわせて使用することも好ましい。
(B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤及びアンチモン系難燃助剤の樹脂に対する添加の範囲は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して前記重合体3〜50質量部であり、5〜40質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましい。アンチモン系難燃助剤1〜40質量部の範囲が好ましい。ブロム化アクリル重合体及びアンチモン系難燃助剤の添加量が過少であると十分な難燃性を付与することができず、過大であると成形品としての物性を悪化させることがある。
((C)耐トラッキング性向上用樹脂)
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、耐トラッキング性を向上させるために、(C)耐トラッキング性向上用樹脂が補助的に添加される。
(C)耐トラッキング性向上用樹脂としては、耐トラッキング性が高いのみならず、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂との加工温度が近く、相溶性の良い樹脂を用いることができる。このような(C)耐トラッキング性向上用樹脂としては、オレフィン系エラストマ、アクリル系コアシェル型エラストマ、直鎖状ポリオレフィン樹脂、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
オレフィン系エラストマとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EP共重合体)、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPD共重合体)、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、EP共重合体およびEPD共重合体から選択された少なくとも一種の単位を含む共重合体、オレフィンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体(エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等)などが含まれる。好ましいオレフィン系エラストマには、EP共重合体、EPD共重合体、オレフィンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体が含まれ、特にエチレンエチルアクリレートが好ましい。これらのオレフィン系エラストマは単独でまたは二種以上組み合わせて使用することができる。
アクリル系コアシェル型エラストマは、コア層がゴム成分(軟質成分)、シェル層が硬質成分で構成されるポリマーであり、コア層のゴム成分にアクリル系ゴムを用いるものである。コア層に用いるアクリル系ゴムは、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満(例えば−10℃以下)であるのが好ましく、−20℃以下(例えば−180℃以上−25℃以下)であるのがより好ましく、−30℃以下(例えば−150℃以上−40℃以下)であるのが特に好ましい。
ゴム成分として用いるアクリル系ゴムは、アルキルアクリレート等のアクリル系モノマーを主成分として重合して得られる重合体が好ましい。アクリル系ゴムのモノマーとして用いるアルキルアクリレートは、ブチルアクリレート等のアクリル酸のC1〜C12のアルキルエステルが好ましく、アクリル酸のC〜Cのアルキルエステルがより好ましい。
アクリル系ゴムは、アクリル系モノマーの単独重合体でもよく、共重合体でもよい。アクリル系ゴムがアクリル系モノマーの共重合体である場合、アクリル系モノマー同士の共重合体でも、アクリル系モノマーと他の不飽和結合含有モノマーとの共重合体であってもよい。アクリル系ゴムが共重合体である場合、アクリル系ゴムは架橋性モノマーを共重合したものであってもよい。
シェル層には、ビニル系重合体が好ましく用いられる。ビニル系重合体は、例えば、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、メタクリル酸エステル系単量体、及びアクリル酸エステル単量体の中から選ばれた少なくとも一種の単量体を重合あるいは共重合させて得られる。かかるアクリル系コアシェル型エラストマのコア層とシェル層は、グラフト共重合によって結合されていてもよい。このグラフト共重合化は、必要な場合には、コア層の重合時にシェル層と反応するグラフト交差剤を添加し、コア層に反応基を与えた後、シェル層を形成させることによって得られる。グラフト交差剤として、シリコーン系ゴムを使用する場合は、ビニル結合を有したオルガノシロキサンあるいはチオールを有したオルガノシロキサンが用いられ、好ましくはアクロキシシロキサン、メタクリロキシシロキサン、ビニルシロキサンが使用される。
直鎖状ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等、実質的に側鎖を有しないポリオレフィン樹脂であって、ASTM D2857法で測定した粘度平均分子量が1万〜100万であるものが好ましい。
(C)耐トラッキング性向上用樹脂の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、5〜100質量部であり、10〜90質量部または20〜80質量部であっても良い。ただし、難燃性の低い樹脂では、多量に添加することで組成物としての燃焼性を悪化させるおそれがあるため、耐トラッキング性向上用樹脂の含有量は、本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物全体に対し、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
((D)耐トラッキング性向上剤)
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、耐トラッキング性をさらに向上させるために、(D)耐トラッキング性向上剤が補助的に添加される。
(D)耐トラッキング性向上剤の具体例としては、タルク、マイカ、無機金属化合物が挙げられ、これらのいずれか、またはこれらのいずれかを組み合わせたものを用いることができる。
タルクとしては、公知のものを使用することができ、好ましくは体積平均粒子径が1〜10μmのタルク、または嵩比重が0.4〜1.5の圧縮微粉タルクを用いることができる。
マイカとしては、公知のものを使用することができ、好ましくは体積平均粒子径が10〜60μmのマイカを用いることができる。
無機金属化合物としては、無機酸(リン酸及びケイ酸以外の無機酸、例えば、炭酸、ホウ酸、スズ酸、タングステン酸、硫酸など)の金属塩、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、アルミナ水和物(ベーマイト)など)、金属硫化物(硫化亜鉛、硫化モリブデン、硫化タングステンなど)等を挙げることができ、好ましいものとして、硫酸バリウム、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、スズ酸亜鉛が挙げられる。
これらの(D)耐トラッキング性向上剤は、無機化合物および/または有機化合物で表面処理(表面被覆)されていてもよく、表面処理に用いられる無機化合物としては、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカ、ジルコニア、水酸化ジルコニウム、ジルコニア水和物、酸化セリウム、酸化セリウム水和物、水酸化セリウム等のアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、セリウム等の無機酸化物、水酸化物が好ましく挙げられる。また、これらの無機化合物は水和物であってもよい。これらの中でも、水酸化アルミニウム、シリカが好ましく、シリカを用いる場合は、SiO・nHOで表されるシリカ水和物であることが特に好ましい。また、表面処理に用いられる有機化合物としては、エポキシ化合物やアミン化合物が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ、ノボラック型エポキシ等のエポキシ化合物およびモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジクロルヘキシルアミン等のアミン化合物がより好ましい化合物として例示することができる。
(D)耐トラッキング性向上剤の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0〜100質量部であり、0〜90質量部または0〜80質量部であっても良い。
((E)窒素系化合物)
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、耐トラッキング性をさらに向上させるために、(E)窒素系化合物が補助的に添加される。
(E)窒素系化合物としては、トリアジン化合物、ベンゾグアニン化合物、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートのテレフタル酸エステル化合物、アラントイン化合物、グリコールウリル化合物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
トリアジン化合物の具体例としては、シアヌル酸、トリメチルシアヌレート、トリエチルシアヌレート、トリ(n−プロピル)シアヌレート、メチルシアヌレート、ジエチルシアヌレート、イソシアヌル酸、トリメチルイソシアヌネート、トリエチルイソシアヌレート、トリ(n−プロピル)イソシアヌレート、ジエチルイソシアヌネート、メチルイソシアヌレート、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート化合物、ジメラミンホスフェート化合物、メラミンポリホスフェート化合物、ビスメラミンジンコホスフェート、ビスメラミンアルミノトリホスフェート、硫酸メラミン、アンメリド、アンメリン、ホルモグアナミン、グアニルメラミン、シアノメラミン、アリールグアナミン、メラム、メレム、メロンなどが挙げられる。
(E)窒素系化合物の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0〜80質量部であり、0〜70質量部または0〜60質量部であっても良い。
(充填剤)
本発明の組成物には必要に応じて充填剤が使用される。このような充填剤は、機械的強度、耐熱性、寸法安定性等の性能に優れた性質を得るためには配合することが好ましく、特に剛性を高める目的で有効である。これは目的に応じて繊維状、粉粒状又は板状の充填剤であり、(C)耐トラッキング性向上剤とは異なる化合物が用いられる。
繊維状充填剤としては、円形断面ガラス繊維、扁平断面ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などが挙げられる。なお、フッ素樹脂、アクリル樹脂などの高融点の有機質繊維状物質も使用することができる。
粉粒状充填剤としては、ガラスビーズ、ガラス粉、石英粉末、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイト、その他、炭化珪素、窒化珪素、各種金属粉末等が挙げられる。
また、板状無機充填剤としては、ガラスフレーク、各種金属箔等が挙げられる。
充填剤の種類は特に限定されず、1種又は複数種以上の充填剤を添加することができる。特に、円形断面ガラス繊維、扁平断面ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ウォラストナイトを使用することが好ましい。
充填剤の添加量は特に規定されるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して200質量部以下が好ましい。充填剤を過剰に添加した場合は成形性に劣り靭性の低下が見られる。
(添加剤)
さらに本発明の組成物には、その目的に応じ、種々の所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂等に添加される公知の物質を添加併用することができる。例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤、流動性向上剤、靱性向上剤、耐加水分解性向上剤、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤以外の難燃剤、耐トラッキング性向上用樹脂以外の樹脂等いずれも配合することが可能である。
なお、意匠性等の要求から、本発明の組成物を着色して用いる場合、特に暗色系の着色においては、耐トラッキング性の観点から、着色剤としてはカーボンブラックではなく、黒色あるいは暗色系の有機染料や有機顔料を添加することが望ましい。
また、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤以外の難燃剤としてリン系難燃剤を添加する場合は、有機ホスフィン酸金属塩、有機ジホスフィン酸金属塩、縮合リン酸エステル(レゾルシノールホスフェート類、ハイドロキノンホスフェート類、ビフェノールホスフェート類等)、ホスファゼン化合物(環状フェノキシホスファゼン、鎖状フェノキシホスファゼン、架橋フェノキシホスファゼン等)などを用いることができ、成形品からの浸み出しの観点からは、エチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、メチルエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛などの有機ホスフィン酸金属塩が好ましい。また、ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤以外の難燃剤としてハロゲン系難燃剤を添加する場合は、ハロゲン化エポキシ系難燃剤、ハロゲン化フェノキシ系難燃剤、ハロゲン化ポリフェニレンエーテル系難燃剤、ハロゲン化スチレン系難燃剤、ハロゲン化フタルイミド系難燃剤、ハロゲン化ポリカーボネート系難燃剤等のハロゲン系難燃剤を挙げることができるが、耐トラッキング性を低下させないためには、これらハロゲン系難燃剤中に含まれる遊離臭素、遊離塩素、遊離硫黄の含有量がそれぞれ0.5質量%以下のものであることが好ましい。
[難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法]
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の形態は、粉粒体混合物であってもよいし、ペレット等の溶融混合物(溶融混練物)であってもよい。本発明の一実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法は、(B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の製造工程を有している。当該工程については上記のとおりであるからここでは記載を省略する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、当該技術分野で知られている設備及び方法を用いて製造することができる。例えば、必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。押出機又はその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。また、全ての成分をホッパから同時に投入してもよいし、一部の成分はサイドフィード口から投入してもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、特性評価は以下の方法により行った。
(1)ハロゲン化芳香族化合物含有量
表1に示す成分、組成(質量部)でドライブレンドした材料を、30mmφのスクリュを有する2軸押出機((株)日本製鋼所製)に供給して260℃で溶融混練し、得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを粉砕したものを試料とした。試料を5gとり、20mlのヘッドスペース中に150℃で1時間放置した後、装置:横河ヒューレット・パッカード社製HP5890A、カラム:HR−1701(0.32mm径×30m)を用い、50℃で1分間保持後、5℃/minで昇温させ、ガスクロマトグラフにより、ハロゲン化芳香族化合物に由来するガス発生量を測定し、ハロゲン化芳香族化合物の含有量をppmで示した。結果を表1に示す。
(2)金属腐蝕性
表1に示す成分、組成(質量部)でドライブレンドした材料を、30mmφのスクリュを有する2軸押出機((株)日本製鋼所製)に供給して260℃で溶融混練し、得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレット50gを、1cm×1cmの銀板とともに300mlのガラス製共栓ビンに入れ栓をして、150℃のギアオーブン中で500時間静置した後、銀板の表面を目視にて確認し、腐蝕が発生していないものを○、腐蝕が発生していたものを×として評価した。結果を表1に示す。
(3)難燃性
表1に示す成分、組成(質量部)でドライブレンドした材料を、30mmφのスクリュを有する2軸押出機((株)日本製鋼所製)に供給して260℃で溶融混練し、得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを、140℃で3時間乾燥させた後、シリンダ温度250℃、金型温度70℃にて射出成形し、UL94に準拠し、厚さ1/32インチの試験片を作製して燃焼性を評価した。結果を表1に示す。
(4)耐トラッキング性
表1に示す成分、組成(質量部)でドライブレンドした材料を、30mmφのスクリュを有する2軸押出機((株)日本製鋼所製)に供給して260℃で溶融混練し、得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物について、UL746Aに準拠して、比較トラッキング指数(CTI)のPLC(Performance Level Category)等級を判定した。PLC等級が最高ランクの「0」である場合は「○」、そうでない場合は「×」と評価した。結果を表1に示す。
Figure 2020026470

表中のN.D.は検出限界(0.1ppm)以下であることを示す。
含有量の単位は、質量部である。
表1に記載の各成分の詳細は下記の通りである。
(A)PBT樹脂:ウィンテックポリマー株式会社製、末端カルボキシル基濃度20meq/kg、固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂
(B−1)PBBPA1:溶媒にエチレングリコールモノメチルエーテルを使用して重合したポリペンタブロモベンジルアクリレート(難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物含有量8ppm)
(B−2)PBBPA2:溶媒にクロロベンゼンを使用して重合したポリペンタブロモベンジルアクリレート(難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物含有量150ppm)
(C−1)耐トラッキング性向上用樹脂1:コア層がアクリル系ゴム、シェル層がビニル系重合体のアクリル系コアシェル型エラストマ(ローム・アンド・ハース・ジャパン社製、パラロイドEXL2314)
(C−2)耐トラッキング性向上用樹脂2:エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(オレフィン系エラストマ、住友化学工業社製、BONDFAST 7M)
(D)タルク:松村産業社製、クラウンタルクPP
(E)窒素系化合物:メラミンシアヌレート(BASF社製、Melapur MC50)
ガラス繊維:日本電気硝子社製、ECS03T−127(平均繊維径13μm、平均繊維長3mmの円形断面ガラス繊維)
三酸化アンチモン:日本精鉱社製、PATOX−M
滴下防止剤:ポリテトラフルオロエチレン

Claims (8)

  1. (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、
    (B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤3〜50質量部と、
    (C)オレフィン系エラストマ、アクリル系コアシェル型エラストマ、直鎖状ポリオレフィン樹脂、及びこれらの組み合わせから選択される1種以上の耐トラッキング性向上用樹脂5〜100質量部と、
    (D)タルク、マイカ、無機金属化合物、及びこれらの組み合わせから選ばれる1種以上の耐トラッキング性向上用充填剤0〜100質量部と、
    (E)トリアジン化合物、ベンゾグアニン化合物、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートのテレフタル酸エステル化合物、アラントイン化合物、グリコールウリル化合物、及びこれらの組み合わせから選択される1種以上の窒素系化合物0〜80質量部とを含有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、
    ヘッドスペースガスクロマトグラフ法(150℃、1時間加熱)により測定される、前記難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物の含有量が0.5ppm未満であることを特徴とする、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  2. (B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤が、一般式(I)で表されるブロム化アクリル重合体を含有する、請求項1に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
    Figure 2020026470

    (式中、Xは、水素原子または臭素原子であり、少なくとも1つ以上のXは臭素原子であり、mは10〜2000の数である。)
  3. (B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤が、ポリペンタブロモベンジルアクリレートを含有する、請求項1または2に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  4. 前記難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物が、ハロゲン化ベンゼンを含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  5. 前記難燃剤以外のハロゲン化芳香族化合物が、クロロベンゼンを含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法であって、
    (B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の製造工程を有し、該工程で用いる溶媒中のハロゲン化芳香族化合物の含有量が1000ppm以下であることを特徴とする、製造方法。
  7. (B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の製造工程において、溶媒としてハロゲン化芳香族化合物を用いない、請求項6に記載の製造方法。
  8. (B)ハロゲン化ベンジルアクリレート系難燃剤の製造工程において、溶媒としてエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、エチレングリコールジメチルエーテルおよびジオキサンからなる群から選択される一以上の溶媒を用いる、請求項6又は7に記載の製造方法。
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